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(別添1)

「若年者向けキャリア・コンサルティング研究会」報告書(概要)


第1 「若年者向けキャリア・コンサルティング研究会」設置の趣旨
 若年者層におけるフリーターの増加や高い離職率が深刻な問題となっており、このような状況を放置すれば、若年者にとっては、知識・技能が習得できず、当面の就職困難や将来にわたる能力不足等の問題が、また、社会的には、中・長期的な生産性の低下等による経済の脆弱化などの問題が懸念される。
 こうした状況の中、若年者に対し、早い時期から職業意識の啓発や適切な自己理解に基づく職業選択、さらに就職後の能力開発や職場定着を支援することなどにより、若年者を職業的自立に導く専門家として、若年者向けキャリア・コンサルタントの養成を推進することが求められている。
 このため、厚生労働省は、中央職業能力開発協会に委託をして、「若年者向けキャリア・コンサルティング研究会」を設置した。研究会委員には、学識経験者に加え、大学、高校等での現場の経験を有する方々にも参加をいただき、若年者向けキャリア・コンサルタントに必要な能力要件と養成カリキュラムについて検討を行った。

第2 若年者向けキャリア・コンサルティングの意義・目的
 最近の若年者の特徴として、働く意義を見出せず就業意欲や職業意識も希薄であることから、キャリア形成に向けた前向きな行動をとることができないこと等が指摘されている。
 本来「働く」ということは、一人前の大人として社会参加するという意義を有するだけでなく、仕事を通じて自己実現を図ることの喜びや達成感を味わうことでもある。若年者に働く喜び、働くことの意義を理解させ、安定的就業に導く支援を行うことは、若年者本人の生涯だけでなく、我が国の将来をも左右する重要な取組みの一つである。
 こうしたことから、キャリア・コンサルティングの重要性を認識した上で、本報告書においては、若年者向けキャリア・コンサルティングの目的を「若年者を安定的就業に導くために、働く意義の理解を進めることにより就業意欲を喚起し、職業生活設計とそれを踏まえた職業選択を自己決定できるように支援すること」と定義した。
 また、支援の対象は、「フリーターや早期離職者、就業経験のない学卒未就職者(中退者を含む。)、学生等」とし、主な支援の担い手は、「学校外の若年者就労支援施設等における相談・支援担当者、大学・短大・専門学校等の就職支援担当者、キャリア・コンサルタント(標準レベル)で若年者向けキャリア形成支援分野での活躍を希望する者等」とした。

第3 若年者向けキャリア・コンサルティングに係る能力要件の策定の必要性
 若年者向けキャリア・コンサルティングにおける対象(若年者)は、自己が未だ確立されておらず社会的に未成熟な状態にあり、この点が社会人向けのキャリア・コンサルティングとは異なる特性である。
 厚生労働省において「キャリア・コンサルティング実施のために必要な能力等に関する調査研究報告書」(平成14年4月)で示した能力要件(「標準レベルの能力」という。)は、様々な場面において実施されるキャリア・コンサルティングについて、共通の能力のみを整理・記述したものであり、若年者に特有のものについてまでは、言及していない。
 このため、本研究会では、特に若年者向けキャリア・コンサルタントに必要な能力要件と養成カリキュラムについて検討を行った。

第4 若年者向けキャリア・コンサルティング実施に必要な能力
 標準レベルの能力を基に、若年者向けキャリア・コンサルティング実施に必要な能力として、強調すべき点、追加すべき点を示した。
 若年者向けキャリア・コンサルティング実施に必要な能力の特徴と、若年者向けキャリア・コンサルティングを実施する上でのポイントは次のとおりである。
 若年者に対しては特に職業意識の啓発が重要であるが、職業意識の啓発は、自己理解、仕事理解、啓発的経験、意思決定の支援等様々な側面からの働きかけの中で進んでいくことを理解していること。
 若年者を取り巻く企業の採用行動をはじめとする需要サイドの大きな変化を十分理解し、この理解の基に若年者向けキャリア・コンサルティングが行えること。
 若年者にとっては、アイデンティティーが確立していないこと等から生じる悩み多き苦しい時期であり、メンタルへルス上の問題に陥りやすいことを理解していること。
 就業するということは、それまでの学校生活から社会に飛び込むといった大転機を迎えることであり、若年者が自ら大転機に直面しているということを認識し、受け止め、それに対応できるよう支援ができること。
 若年者に対するキャリア・コンサルティングでは、特にグループワークが有効な方法であることを理解し、グループを有効活用した支援ができること。
 若年者は、簡易な方法による検査結果から短絡的に自分の方向を決定してしまう傾向も見受けられるため、アセスメント・ツールは自己理解のための一つの側面であり、その結果だけを信用することは危険であることについて認識させることができること。
 キャリア・コンサルティングを実施する上では、若年者の自発的な行動を待つだけでなく、一歩踏み込んだ積極的・能動的な働きかけができること。

第5 若年者向けキャリア・コンサルタント養成のためのモデルカリキュラム
 本研究会では、標準レベルの能力をすでに有するキャリア・コンサルタントが、さらに若年者向けキャリア・コンサルティングを実施する上で必要な能力を獲得することを前提に、追加的に行うべき訓練を示した。

第6 今後の課題
 今般検討を行った若年者向けキャリア・コンサルタントに必要な能力要件と養成カリキュラムについては、現今の喫緊の課題に対応するため、限られた時間の中で策定したものであることに留意すべきであり、今後、実践の結果等を踏まえ、適宜見直しを行い、改善していくことが必要である。


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