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おわりに

 はじめにも触れたように、現在のモニター報告は治療を目的に来院する患者から原因と思われる家庭用品等について情報を収集するシステムである。特定の家庭用品による健康被害の報告の変動があれば、その情報の周知をはかり、当該物品による被害の拡大を防止すること、また、必ずしも容易ではないが、そこから原因となった化学物質を特定し、必要な対策をとることにより新たな健康障害を未然に防止することを目指している。また、(財)日本中毒情報センターに問い合わせのあった事例に関する情報は、主に電話によって収集されたものであり、医学的により詳細な内容を把握したり、予後を明確にすることは困難であるが、モニター病院で収集している以外の情報が消費者より直接寄せられており、家庭用品等による健康被害をモニターするうえで重要な役割を果たしている。
 本モニター報告は平成14年度で24回目となった。ここ数年、報告件数において上位を占める製品はほとんど変動していない。それだけ広く普及し、使用されているものでもあるのだが、引き続き注意の喚起と対策の整備を呼びかけ、注意により避けられる健康被害例を減少させるべく努めていく必要がある。特に、次亜塩素酸系(塩素系)の洗浄剤・漂白剤と酸性洗浄剤の混合による塩素ガス発生死亡事故が過去に発生し、これらの混合使用に対して広く注意喚起が行われて久しいが、幸い死亡という痛ましい事例はないにせよ、いまだにガス発生事故事例の報告が存在している。この中には有機酸や食酢等との混合事例もあり、タイプの異なる洗浄剤の混合使用を戒めると同時に、それ以外でも混合すると危険があり得るものをより具体的に明示し啓発していく必要がある。また、塩素系と酸性のものではないが、タイプの異なる複数の漂白剤等類の同時・混合使用により、別のガスを発生させる例もあり、注意の喚起と同時に、混合使用できるもの、できないものを何らかの形でわかりやすく伝えていく工夫も必要であろう。これらの注意喚起に加え、今までにない化学物質による、新たな健康被害が生じていないか、特に注意すべき事例はないか等、引き続きモニターしていくことも本制度に課せられた役割である。
 昨今、危機管理と言うことが盛んに叫ばれているが、危機管理というものは常日頃の連絡体制を効率よく運営することにより十分なされ得ることであり、平時のそのシステムの構築こそが最も重要である。本制度がそれに応え得るよう今後とも継続・充実をはかっていきたい。


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