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厚生労働省発表
平成15年11月28日
担当 厚生労働省労働基準局監督課
課長及川  桂
副主任中央労働基準監察監督官
吉松美貞
電話 03(5253)1111(内線5428)
夜間直通 03(3502)6742


賃金不払残業で72億円を是正支払い
― 平成14年10月〜平成15年3月 ―


 厚生労働省においては、平成13年4月に使用者が労働時間を適正に把握する責務があること及び労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を明確にした「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」を策定し、この通達に基づき監督指導の重点課題として、賃金不払残業(所定時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせることをいう。いわゆるサービス残業のこと。)の解消に取り組んできたところである。
 これに加え、事業場における賃金不払残業の実態を最もよく知る立場にある労使に対して主体的な取組を促すとともに、これまでの厚生労働省による対応をさらに強化した「賃金不払残業総合対策要綱」を平成15年5月23日に策定した。その一環として、同日に「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(以下「指針」という。)を策定し、この指針の集中的な周知等を図り、賃金不払残業の解消に努めているところである。
 この度、厚生労働省においては、このような賃金不払残業に係る監督指導の状況等を、以下により取りまとめたところであり、今後とも賃金不払残業の解消に向けて努力していくこととしている。

 1 賃金不払残業に係る是正支払の状況
 これまでの監督指導の実績を検証するため、賃金不払残業の是正状況について、平成14年10月から平成15年3月までの状況の取りまとめを行った。(別添1
 2 賃金不払残業の具体的事例
 労使当事者の意識改革と労使の主体的な取組を促すため、最近における賃金不払残業の是正事例、送検事例を取りまとめた。(別添2


(別添1)

賃金不払残業に係る是正支払の状況

 対象事案
 平成14年10月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告に基づく監督等を行い、その是正を指導した結果、不払いになっていた割増賃金の支払いが行われたもののうち、1企業当たり合計100万円以上の割増賃金の支払額となったもの。

 割増賃金の是正支払の状況
 是正企業数は403企業、対象労働者数は63,873人、支払われた割増賃金の合計は72億3,899万円である。企業平均では1,796万円、労働者平均では11万円である。(表1
 そのうち、1企業当たり1,000万円以上の割増賃金の支払いが行われた事案をみると、是正企業数は89企業(全体の22.1%)、対象労働者数は47,022人(全体の73.6%)、支払われた割増賃金の合計額は61億9,757万円(全体の85.6%)である。企業平均では6,964万円、労働者平均では13万円である。(表2

<参考>
 平成13年4月から平成15年3月までの2年間における状況
 (平成13年4月〜平成14年9月分は平成14年12月13日発表)
 是正企業数は1,016企業、対象労働者数は135,195人、支払われた割増賃金の合計は153億7,717万円である。企業平均では1,514万円、労働者平均では11万円である。(表3
 そのうち、1企業当たり1,000万円以上の割増賃金の支払いが行われた事案をみると、是正企業数は208企業(全体の20.5%)、対象労働者数は90,933人(全体の67.3%)、支払われた割増賃金の合計額は121億7,354万円(全体の79.2%)である。企業平均では5,853万円、労働者平均では13万円である。(表4

 業種別等の状況
 対象労働者数では製造業、支払われた割増賃金額では商業、企業数では製造業が最も多くなっている。
 1企業での最高支払額は、4億8,835万円(商業)で、次いで3億7,652万円(金融・広告業)、3億3,197万円(金融・広告業)の順である。

1  100万円以上の割増賃金の是正支払事案(表1)

業種 企業数 対象労働者数 是正支払額(万円)
製造業 129 20,940 220,613
鉱業 0 0 0
建設業 22 1,017 11,568
運輸交通業 15 459 5,404
貨物取扱業 1 10 151
農林業 1 12 193
畜産・水産業 0 0 0
商業 97 16,499 242,282
金融・広告業 45 15,184 150,142
映画・演劇業 0 0 0
通信業 3 712 29,121
教育・研究業 6 321 3,795
保健衛生業 12 2,065 6,403
接客娯楽業 26 2,630 11,170
清掃・と畜業 4 142 881
官公署 0 0 0
その他の事業 42 3,882 42,176
403 63,873 723,899
  1企業平均額 1,796
1労働者平均額 11
(注)対象事案は、平成14年10月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計100万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの

2  1千万円以上の割増賃金の是正支払事案(表2)

業種 企業数 対象労働者数 是正支払額(万円)
製造業 34 14,668 184,032
鉱業 0 0 0
建設業 3 476 7,403
運輸交通業 1 79 1,343
貨物取扱業 0 0 0
農林業 0 0 0
畜産・水産業 0 0 0
商業 20 13,535 218,563
金融・広告業 17 13,300 139,161
映画・演劇業 0 0 0
通信業 1 660 28,732
教育・研究業 2 107 2,510
保健衛生業 1 492 1,967
接客娯楽業 3 1,855 4,268
清掃・と畜業 0 0 0
官公署 0 0 0
その他の事業 7 1,850 31,778
89 47,022 619,757
  1企業平均額 6,964
1労働者平均額 13
(注)対象事案は、平成14年10月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計1000万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの

1  100万円以上の割増賃金の是正支払事案(表3)

平成13年4月〜平成15年3月
業種 企業数 対象労働者数 是正支払額(万円)
製造業 303 39,862 437,255
鉱業 1 12 193
建設業 60 3,491 36,976
運輸交通業 42 1,460 21,474
貨物取扱業 4 84 809
農林業 2 23 453
畜産・水産業 0 0 0
商業 249 32,153 509,937
金融・広告業 100 34,979 319,538
映画・演劇業 1 101 506
通信業 6 805 29,915
教育・研究業 25 1,337 18,191
保健衛生業 40 4,113 16,819
接客娯楽業 79 7,199 40,573
清掃・と畜業 10 458 4,146
官公署 0 0 0
その他の事業 94 9,118 100,932
1,016 135,195 1,537,717
  1企業平均額 1,514
1労働者平均額 11
(注)対象事案は、平成13年4月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計100万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの

2  1千万円以上の割増賃金の是正支払事案(表4)

平成13年4月〜平成15年3月
業種 企業数 対象労働者数 是正支払額(万円)
製造業 71 24,882 292,289
鉱業 0 0 0
建設業 10 1,603 24,054
運輸交通業 4 296 9,810
貨物取扱業 0 0 0
農林業 0 0 0
畜産・水産業 0 0 0
商業 42 22,142 449,542
金融・広告業 42 32,396 296,761
映画・演劇業 0 0 0
通信業 1 660 28,732
教育・研究業 6 582 13,453
保健衛生業 3 1,540 6,027
接客娯楽業 8 2,579 18,169
清掃・と畜業 1 234 2,098
官公署 0 0 0
その他の事業 20 4,019 76,419
208 90,933 1,217,354
  1企業平均額 5,853
1労働者平均額 13
(注)対象事案は、平成13年4月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計1000万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの


賃金不払残業事例1(本社が労働時間短縮に向けての委員会を設置した例)
 会社概要
 業種:小売業(スーパーマーケット)
 労働者数:企業全体で約200名
 その他:本店ほか数店舗あり
 事例の概要
(1)労働基準監督署の指導状況
 労働基準監督官(以下「担当官」という。)が当該会社に対して臨検監督を実施したところ、労働者数名について、20時間分を上限としてそれ以上の時間外労働に対する割増賃金の支払がないことが疑われた。そのことを担当官が副社長に問いただしたところ、「36協定の範囲内の月20時間を超えるような時間外労働はさせないように各店舗の店長へ徹底しており、何ら問題ない。」との認識を示した。
 このため、担当官は、自己申告によって把握した労働時間と実際の労働時間とが合致しているか否かについての実態調査を行うよう指導した。これを受け、会社は、把握している時間外労働時間数と実際の時間外労働時間数との乖離がないかどうかの社内調査を行うため、副社長が各店舗を巡回し、店長と共に全社員に対して本部で打ち出した時間外労働時間数に誤りがないかどうかの確認・面談を、約1ヶ月間にわたって行った結果、労働者からの自己申告によって把握している時間外労働時間数より実際の時間外労働時間数が多い社員がいることが明らかとなった。また、一部社員の時間外労働を申告した書類を店長が自分の机の引き出しに残したままにしていたため、時間外労働時間数を把握できず、割増賃金の支払がなかったことも明らかとなった。このため、担当官は、労働基準法第37条違反として、その是正を求めた。
(2)当該会社の改善状況
 その結果、会社においては、社内調査を踏まえて実際の時間外労働時間数に応じた割増賃金(企業全体で対象労働者約60名に対して賃金総額約800万円)を支払い、また、担当官の指導を踏まえ、各店舗の店長に対し、労働時間管理を徹底し、実際の時間外労働時間数を本部へ報告するよう指示を徹底した。
 その後、会社としては、労働時間を短縮するための委員会(副社長、労務担当役員、各店舗の店長、本社部長クラスで構成)を本社に設置し、月1回各店舗の店長を本店に集め、時間外労働削減に向けての改善報告を店長から行わせることとした。また、同委員会においては、月45時間を超える労働者が出た部門については労働時間短縮を検討することとした。さらに、月30時間を超える時間外労働がある部門とその人数を委員会の場で発表することとしており、発表された部門を統括している店長に対しては、時間外労働を月20時間以内に収めるよう業務改善が指示され、後日委員会において改善結果(シフト体制の見直し、他部門からの応援、社員の戦力アップのための再教育等)を発表することとしている。

賃金不払残業事例2(時間外労働の自己申告について30分あるいは60分単位での端末入力しかできないために労働時間が適正に管理されていなかった例)
 会社概要
 業種:保険業
 労働者数:企業全体で約900名
 事例の概要
(1)労働基準監督署の指導状況
 労働基準監督官(以下「担当官」という。)が当該会社に対して臨検監督を実施し、出勤簿と建物への入退館時刻を記録した電子データとを比較したところ、実際の労働時間と乖離が認められ、さらには、休日において入退館の記録がされているにもかかわらず、出勤簿においては出勤扱いされていないなど会社において把握している勤務実態報告(出勤簿)と実際の労働時間とに乖離が認められた。
 また、当該会社では、フレックスタイム制を採用しており、労働者の自己申告によって労働時間の把握を行っており、担当官に応対した総務担当室長は当初「適正な自己申告を制限するような措置、指示は出していないはず。」と述べていたが、担当官が、実際の労働時間との乖離の事実を追求したところ、会社が適正な労働時間の把握をしていなかった事実を認めた。
 このため、担当官は、労働基準法第37条違反として、その是正を求めた。
 併せて、フレックスタイム制による始業・終業時刻の端末への入力がそれぞれ30分単位、60分単位でしか入力できないなど自己申告をシステム的に制限している事実も確認されたため、その改善も指導した。
(2)当該会社の改善状況
 このため、会社は担当官の指導を踏まえ、過去の実際の時間外労働時間数を調査し、不足している割増賃金(企業全体で対象労働者約800名に対して賃金総額約1億7,000万円)を支払ったほか、フレックスタイム制による始業・終業時刻の端末への入力については、分単位で入力できるようにシステムを改良した。
 また、全労働者に対しては、労働時間の適正な申告を行うよう周知・指導を行うとともに、労働時間の管理手法として、管理部門から各課長に対し、労働者の建物への出退館時刻を記録した電子データを1週間単位で送付し、各課長はそのデータと勤務実態報告(出勤簿)とを比較・照合し、労働者の労働時間が適正に申告されているか確認することとし、不適正な事案が確認された場合には、速やかに対応策を検討し、問題解決を図ることとした。
 さらに、今後、労使協議を毎月実施し、労働時間の適正な管理体制の確立に向けて積極的な取組を行うこととするほか、過重労働による健康障害防止の対策についても、産業医を活用するなど全社的に取り組むこととした。

賃金不払残業事例3(使用者が労働者に時間外労働時間の報告をさせなかった例)
 会社概要
 業種:銀行業
 労働者数:企業全体で約1000名
 その他:本店ほか多数店舗あり
 事例の概要
(1)労働基準監督署の指導状況
 労働基準監督官(以下「担当官」という。)が当該会社に対して臨検監督を実施したところ、あらかじめ調査して把握していた労働者の退社時間と会社に記録されていた出勤管理簿の時間外労働時間に乖離が見られた。この原因を調べたところ、支店長は、職場事務室の鍵を閉める鍵当番については、退社時間に応じた時間外労働に対する割増賃金を支払うこととしていたが、鍵当番以外の者については時間外労働を行った場合においても自己申告をさせないという取扱いをしていたことが判明した。このため、本社の労務管理担当役員に来署を求め、当該会社について労働基準法第24条及び同法第37条違反として、その是正を求めた。これに加え、同役員が、全店舗に同様の問題があることを認めたことから、全店舗についても実態を確認し、是正を図るよう指示した。
 また、労働時間管理の適正化についての会社の認識が不十分だったとして、(1)対象労働者に対して、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を適正に記録するよう十分な説明をすること、(2)自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施する必要があること、(3)労働者の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと、など自己申告制の運用を適正に行うよう指導した。
(2)当該会社の改善状況
 会社は、担当官の指導を踏まえ、過去に行われた実際の時間外労働時間数に応じた割増賃金(企業全体で対象労働者約500名に対して賃金総額約1,700万円)を支払い、適正な労働時間管理を行うため、従来、時間外労働を行った場合にのみ管理者が労働時間を記録していたものを、時間外労働の有無にかかわらず、始業・終業時刻を自己申告させ、これを管理者が確認する方法(新たな管理台帳を作成)とした。
 また、会社は、労働時間管理上の問題点やその解消の検討を行うことを目的とする『リフレッシュ運動』を展開することとし、労使での協議委員会を毎月開催することとし、(1)定時退社日を設定し、定時退社前1時間の間は管理者は新規業務指示を行わないこととする、(2)年2回の定時退社週間の設定、(3)最長退社目標時間を20時と設定することとし、それ以降の時間外労働については報告を求め、また、19時以降の本支店間の電話連絡を禁止する、などの措置を講ずることとした。

賃金不払残業事例4(夜間臨検によって賃金不払残業を確認した例)
 会社概要
 業種:製造業(電気機械器具製造)
 労働者数:企業全体で約800名
 事例の概要
(1)労働基準監督署の指導状況
 労働基準監督官(以下「担当官」という。)が当該会社に対して臨検監督を実施したところ、勤務状況表(各人が自ら出退勤時刻をパソコンに入力するもの)によると、フレックスタイム制が適用される大部分の労働者が、標準勤務時間帯(8時15分から17時)に出退勤していることとなっていることが判明したので、フレックスタイム制が適正に運用されているのか、あるいは本当に同時刻に出退勤しているのか疑われたが、事実確認は行えなかった。
 このため、担当官は、上記臨検の数日後の夜7時過ぎに再び臨検監督を実施し、時間外労働を行っている労働者の氏名・人数を確認したところ、約80名の労働者が時間外労働を行っていたことが判明した。さらに、数日後、勤務状況表を提出させたところ、夜間臨検をした当日のみが突出して退勤時刻が長くなっており、労働者が実際の労働時間を会社に申告しているとは言い難い状況が認められた。
 このため、担当官は、夜間に臨検監督した結果を会社の人事担当課長へ示し、労働時間を適正に管理しているかどうかを追求したところ、「労働者から自己申告のあった勤務状況表にある出退勤時刻が実際の出退勤時刻と相違があることは認識していた」との回答があった。そこで、担当官は実際の労働時間を把握するよう社内調査の実施を指示した。その結果、会社の社内調査で、勤務状況表と実際の労働時間数との間に乖離が認められた。このため、担当官は、労働基準法第37条違反として、その是正を求めた。
(2)当該会社の改善状況
 当該会社は、担当官の指導に従い、社内調査結果によって把握した時間外労働時間数に応じた割増賃金の不足額(企業全体で対象労働者約500名に対して総額約8,000万円)を支払うとともに、労使一体となって労務管理委員会(使用者側が取締役、労務管理責任者など約5名、労働者側が労働組合執行役員約5名ずつの計約10名で構成)を設置し、労働時間管理の適正化の方法を検討した結果、労働者の自己申告制を廃止し、タイムカードを導入し、労働時間を適正に管理することとしたところである。

賃金不払残業事例5(割増賃金の支払をしていないにもかかわらず、支払った旨の虚偽報告があったため送致した例)
 事業場概要
 業種:社会福祉施設
 労働者数:企業全体で約60名
 事例の概要
(1)労働基準監督署の指導状況
 労働基準監督官(以下「担当官」という。)が当該事業場に対して臨検監督を実施し、賃金台帳やタイムカード等といった関係資料を突合したところ、時間外労働に対する割増賃金の不払が確認されたため、労働基準法第37条違反を指摘し、是正を求めた。
(2)当該事業場の改善状況
 当該事業場の理事長は、担当官から指摘された事項に対し、改めて時間外労働の実態を把握し、これに基づき計算した割増賃金額を支払った旨の報告書を提出し、併せて労働者ごとに支払ったとされる割増賃金額が記載された賃金台帳の写しの提出もあった。
 しかし、その後、所轄労働基準監督署へ提出された報告書の内容は虚偽であって、割増賃金の支払いは未だ一部しか行われていないとの申立てが相次いだ。
 このため、所轄労働基準監督署は、当該事業場は虚偽報告を行った疑いがあり、重大悪質な事案であると判断し、労働基準法違反被疑事件として刑事訴訟法に基づく捜査を開始することとした。
 関係者からの聴き取りなど捜査を進めていく中で当該事業場の理事長ら幹部達は、所轄労働基準監督署に対して是正の報告を行うに当たって協議を行い、実際の時間外労働時間数よりも少ない時間数を労働基準監督署へ報告すること、割増賃金を支払う労働者の範囲を職種によって限定すること、1月4時間を超える時間外労働に対する割増賃金は支払わないこと、1月4時間を上限とすること、を労働者に周知し、時間外労働の報告を抑制していたことなどが新たな事実として判明した。
 また、当該事業場においては、労働時間管理を、IDカードをタイムレコーダーに通してコンピューターにてそのデータを管理していたが、そのデータを改ざんすることにより、時間外労働時間数を過小に記録しており、未払いの割増賃金額は、労働者約40名に対して、1ヶ月分約230万円であることも判明した。
 なお、担当官は、捜査の中で被疑者が、労働基準法違反容疑を否認していたことなどから、当該事業場に対する捜索差押を実施するとともに、被疑者を逮捕し取調べを行った上で、検察庁へ送致した。


労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準 (PDF:115KB)


「賃金不払残業総合対策要綱」の策定について


 賃金不払残業の解消を一層推進するため、次の対策を盛り込んだ「賃金不払残業総合対策要綱」(通称:サービス残業総合対策要綱)を取りまとめるとともに、下記1の指針を策定した。なお、要綱、指針ともに5月23日付けで都道府県労働局に通達した。
 「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の策定
 企業の本社と労働組合等が一体となって企業全体としての主体的な取組を促すことにより、賃金不払残業の解消を一層推進するために、新たに「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(通称:サービス残業解消対策指針)(通達)を策定する。
 具体的には、
 労使に求められる役割
 職場風土の改革
 企業内チェック体制の整備
 労使の協力(企業内労使協議組織の設置)
 適正な労働時間管理を行うために事業主が講ずべき措置の徹底
などに関する記述を盛り込み、労使の理解と協力を求める。

 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」の実施と労使に対する協力要請
 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」に設定し、賃金不払残業の解消と労働時間管理の適正化のためのキャンペーン活動を実施し、労使の主体的な取組を促す。
 併せて、この時期に、賃金不払残業に係る重点監督を実施する。

 地域産業労働懇談会の場を活用した周知徹底等
 地域産業労働懇談会など都道府県単位で労使の参集を得る場を活用し、労働時間管理適正化の周知徹底と気運の醸成を図る。

 的確な監督指導等の実施と「賃金不払残業重点監督月間」の設定
(1) 的確な監督指導等の実施
 労働時間適正把握基準の周知徹底を図るとともに、的確な監督指導を実施し、特に重大悪質な賃金不払残業については厳正かつ積極的な司法処分を行う。
 また、本社等において賃金不払残業の排除について一定の対策を行っているにもかかわらず問題がみられる企業については、監督指導時に、必要に応じて、労働組合等からも実態把握を行う。
(2) 「賃金不払残業重点監督月間」の設定
 「賃金不払残業重点監督月間」と位置づけ、賃金不払残業に係る重点監督を実施する。

 賃金不払残業に係る事例等の収集・取りまとめ
 賃金不払残業に係る送検事例、是正事例等を収集・整理の上、取りまとめて公表することにより、労使当事者の意識改革と労使の主体的な取組を促す。


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