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厚生労働省においては、平成13年4月に使用者が労働時間を適正に把握する責務があること及び労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置を明確にした「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」を策定し、この通達に基づき監督指導の重点課題として、賃金不払残業(所定時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を支払うことなく労働を行わせることをいう。いわゆるサービス残業のこと。)の解消に取り組んできたところである。
これに加え、事業場における賃金不払残業の実態を最もよく知る立場にある労使に対して主体的な取組を促すとともに、これまでの厚生労働省による対応をさらに強化した「賃金不払残業総合対策要綱」を平成15年5月23日に策定した。その一環として、同日に「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(以下「指針」という。)を策定し、この指針の集中的な周知等を図り、賃金不払残業の解消に努めているところである。
この度、厚生労働省においては、このような賃金不払残業に係る監督指導の状況等を、以下により取りまとめたところであり、今後とも賃金不払残業の解消に向けて努力していくこととしている。
1 | 賃金不払残業に係る是正支払の状況 これまでの監督指導の実績を検証するため、賃金不払残業の是正状況について、平成14年10月から平成15年3月までの状況の取りまとめを行った。(別添1) |
2 | 賃金不払残業の具体的事例 労使当事者の意識改革と労使の主体的な取組を促すため、最近における賃金不払残業の是正事例、送検事例を取りまとめた。(別添2) |
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業種 | 企業数 | 対象労働者数 | 是正支払額(万円) |
製造業 | 129 | 20,940 | 220,613 |
鉱業 | 0 | 0 | 0 |
建設業 | 22 | 1,017 | 11,568 |
運輸交通業 | 15 | 459 | 5,404 |
貨物取扱業 | 1 | 10 | 151 |
農林業 | 1 | 12 | 193 |
畜産・水産業 | 0 | 0 | 0 |
商業 | 97 | 16,499 | 242,282 |
金融・広告業 | 45 | 15,184 | 150,142 |
映画・演劇業 | 0 | 0 | 0 |
通信業 | 3 | 712 | 29,121 |
教育・研究業 | 6 | 321 | 3,795 |
保健衛生業 | 12 | 2,065 | 6,403 |
接客娯楽業 | 26 | 2,630 | 11,170 |
清掃・と畜業 | 4 | 142 | 881 |
官公署 | 0 | 0 | 0 |
その他の事業 | 42 | 3,882 | 42,176 |
計 | 403 | 63,873 | 723,899 |
1企業平均額 | 1,796 | ||
1労働者平均額 | 11 |
(注) | 対象事案は、平成14年10月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計100万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの |
業種 | 企業数 | 対象労働者数 | 是正支払額(万円) |
製造業 | 34 | 14,668 | 184,032 |
鉱業 | 0 | 0 | 0 |
建設業 | 3 | 476 | 7,403 |
運輸交通業 | 1 | 79 | 1,343 |
貨物取扱業 | 0 | 0 | 0 |
農林業 | 0 | 0 | 0 |
畜産・水産業 | 0 | 0 | 0 |
商業 | 20 | 13,535 | 218,563 |
金融・広告業 | 17 | 13,300 | 139,161 |
映画・演劇業 | 0 | 0 | 0 |
通信業 | 1 | 660 | 28,732 |
教育・研究業 | 2 | 107 | 2,510 |
保健衛生業 | 1 | 492 | 1,967 |
接客娯楽業 | 3 | 1,855 | 4,268 |
清掃・と畜業 | 0 | 0 | 0 |
官公署 | 0 | 0 | 0 |
その他の事業 | 7 | 1,850 | 31,778 |
計 | 89 | 47,022 | 619,757 |
1企業平均額 | 6,964 | ||
1労働者平均額 | 13 |
(注) | 対象事案は、平成14年10月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計1000万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの |
平成13年4月〜平成15年3月 | |||
業種 | 企業数 | 対象労働者数 | 是正支払額(万円) |
製造業 | 303 | 39,862 | 437,255 |
鉱業 | 1 | 12 | 193 |
建設業 | 60 | 3,491 | 36,976 |
運輸交通業 | 42 | 1,460 | 21,474 |
貨物取扱業 | 4 | 84 | 809 |
農林業 | 2 | 23 | 453 |
畜産・水産業 | 0 | 0 | 0 |
商業 | 249 | 32,153 | 509,937 |
金融・広告業 | 100 | 34,979 | 319,538 |
映画・演劇業 | 1 | 101 | 506 |
通信業 | 6 | 805 | 29,915 |
教育・研究業 | 25 | 1,337 | 18,191 |
保健衛生業 | 40 | 4,113 | 16,819 |
接客娯楽業 | 79 | 7,199 | 40,573 |
清掃・と畜業 | 10 | 458 | 4,146 |
官公署 | 0 | 0 | 0 |
その他の事業 | 94 | 9,118 | 100,932 |
計 | 1,016 | 135,195 | 1,537,717 |
1企業平均額 | 1,514 | ||
1労働者平均額 | 11 |
(注) | 対象事案は、平成13年4月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計100万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの |
平成13年4月〜平成15年3月 | |||
業種 | 企業数 | 対象労働者数 | 是正支払額(万円) |
製造業 | 71 | 24,882 | 292,289 |
鉱業 | 0 | 0 | 0 |
建設業 | 10 | 1,603 | 24,054 |
運輸交通業 | 4 | 296 | 9,810 |
貨物取扱業 | 0 | 0 | 0 |
農林業 | 0 | 0 | 0 |
畜産・水産業 | 0 | 0 | 0 |
商業 | 42 | 22,142 | 449,542 |
金融・広告業 | 42 | 32,396 | 296,761 |
映画・演劇業 | 0 | 0 | 0 |
通信業 | 1 | 660 | 28,732 |
教育・研究業 | 6 | 582 | 13,453 |
保健衛生業 | 3 | 1,540 | 6,027 |
接客娯楽業 | 8 | 2,579 | 18,169 |
清掃・と畜業 | 1 | 234 | 2,098 |
官公署 | 0 | 0 | 0 |
その他の事業 | 20 | 4,019 | 76,419 |
計 | 208 | 90,933 | 1,217,354 |
1企業平均額 | 5,853 | ||
1労働者平均額 | 13 |
(注) | 対象事案は、平成13年4月から平成15年3月までの間に、定期監督及び申告処理において割増賃金の不払いに係る指導の結果、合計1000万円以上の割増賃金の是正支払いがなされたもの |
賃金不払残業事例1(本社が労働時間短縮に向けての委員会を設置した例)
1 | 会社概要 業種:小売業(スーパーマーケット) 労働者数:企業全体で約200名 その他:本店ほか数店舗あり |
2 | 事例の概要 |
(1) | 労働基準監督署の指導状況 労働基準監督官(以下「担当官」という。)が当該会社に対して臨検監督を実施したところ、労働者数名について、20時間分を上限としてそれ以上の時間外労働に対する割増賃金の支払がないことが疑われた。そのことを担当官が副社長に問いただしたところ、「36協定の範囲内の月20時間を超えるような時間外労働はさせないように各店舗の店長へ徹底しており、何ら問題ない。」との認識を示した。 このため、担当官は、自己申告によって把握した労働時間と実際の労働時間とが合致しているか否かについての実態調査を行うよう指導した。これを受け、会社は、把握している時間外労働時間数と実際の時間外労働時間数との乖離がないかどうかの社内調査を行うため、副社長が各店舗を巡回し、店長と共に全社員に対して本部で打ち出した時間外労働時間数に誤りがないかどうかの確認・面談を、約1ヶ月間にわたって行った結果、労働者からの自己申告によって把握している時間外労働時間数より実際の時間外労働時間数が多い社員がいることが明らかとなった。また、一部社員の時間外労働を申告した書類を店長が自分の机の引き出しに残したままにしていたため、時間外労働時間数を把握できず、割増賃金の支払がなかったことも明らかとなった。このため、担当官は、労働基準法第37条違反として、その是正を求めた。 |
(2) | 当該会社の改善状況 その結果、会社においては、社内調査を踏まえて実際の時間外労働時間数に応じた割増賃金(企業全体で対象労働者約60名に対して賃金総額約800万円)を支払い、また、担当官の指導を踏まえ、各店舗の店長に対し、労働時間管理を徹底し、実際の時間外労働時間数を本部へ報告するよう指示を徹底した。 その後、会社としては、労働時間を短縮するための委員会(副社長、労務担当役員、各店舗の店長、本社部長クラスで構成)を本社に設置し、月1回各店舗の店長を本店に集め、時間外労働削減に向けての改善報告を店長から行わせることとした。また、同委員会においては、月45時間を超える労働者が出た部門については労働時間短縮を検討することとした。さらに、月30時間を超える時間外労働がある部門とその人数を委員会の場で発表することとしており、発表された部門を統括している店長に対しては、時間外労働を月20時間以内に収めるよう業務改善が指示され、後日委員会において改善結果(シフト体制の見直し、他部門からの応援、社員の戦力アップのための再教育等)を発表することとしている。 |
賃金不払残業事例2(時間外労働の自己申告について30分あるいは60分単位での端末入力しかできないために労働時間が適正に管理されていなかった例)
1 | 会社概要 業種:保険業 労働者数:企業全体で約900名 | ||||
2 | 事例の概要
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賃金不払残業事例3(使用者が労働者に時間外労働時間の報告をさせなかった例)
1 | 会社概要 業種:銀行業 労働者数:企業全体で約1000名 その他:本店ほか多数店舗あり | ||||
2 | 事例の概要
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賃金不払残業事例4(夜間臨検によって賃金不払残業を確認した例)
1 | 会社概要 業種:製造業(電気機械器具製造) 労働者数:企業全体で約800名 | ||||
2 | 事例の概要
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賃金不払残業事例5(割増賃金の支払をしていないにもかかわらず、支払った旨の虚偽報告があったため送致した例)
1 | 事業場概要 業種:社会福祉施設 労働者数:企業全体で約60名 | ||||
2 | 事例の概要
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労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準 (PDF:115KB)
賃金不払残業の解消を一層推進するため、次の対策を盛り込んだ「賃金不払残業総合対策要綱」(通称:サービス残業総合対策要綱)を取りまとめるとともに、下記1の指針を策定した。なお、要綱、指針ともに5月23日付けで都道府県労働局に通達した。
1 | 「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」の策定 企業の本社と労働組合等が一体となって企業全体としての主体的な取組を促すことにより、賃金不払残業の解消を一層推進するために、新たに「賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(通称:サービス残業解消対策指針)(通達)を策定する。 具体的には、
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2 | 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」の実施と労使に対する協力要請 「賃金不払残業解消キャンペーン月間」に設定し、賃金不払残業の解消と労働時間管理の適正化のためのキャンペーン活動を実施し、労使の主体的な取組を促す。 併せて、この時期に、賃金不払残業に係る重点監督を実施する。 | ||||||||||
3 | 地域産業労働懇談会の場を活用した周知徹底等 地域産業労働懇談会など都道府県単位で労使の参集を得る場を活用し、労働時間管理適正化の周知徹底と気運の醸成を図る。 | ||||||||||
4 | 的確な監督指導等の実施と「賃金不払残業重点監督月間」の設定
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5 | 賃金不払残業に係る事例等の収集・取りまとめ 賃金不払残業に係る送検事例、是正事例等を収集・整理の上、取りまとめて公表することにより、労使当事者の意識改革と労使の主体的な取組を促す。 |