1.給付と負担の具体的見直しに当たっての基本方針
(1) 公的年金制度の堅持 |
公的年金は、高齢者の生活のため不可欠なものであり、高齢期の親の生活の安定を通じ、現役世代も安心して社会で能力を発揮できる。 |
(2) 保険料負担の上限の設定 |
世代間の公平に配慮し、現役世代の負担が過重なものとならないよう、保険料負担の上限を設けることが適当。 |
(3) 公的年金の役割を踏まえた給付水準の調整 |
個人の人生設計に組み込まれている年金の給付水準の過度の調整や急激な見直しは行えない。また、老後生活の支えとしてふさわしい給付水準の下限を明確にする。 |
(4) 国庫負担割合の引上げ |
平成12年改正法附則に明記された基礎年金に対する国庫負担割合の2分の1への引上げは、今回改正で行うこととし、その道筋をつける。その実現には、多額の安定した財源の確保が必要となることから、その財源の在り方も含め、十分議論を尽くし、国民の理解を得る努力をしていく。 |
2.「保険料固定方式」の導入
○ | 最終的な保険料水準を固定し、少子化等の社会経済情勢の変動に応じて給付水準を自動的に調整する「保険料固定方式」を基本として、年金を支える社会全体の所得や賃金の変動に応じて、時間をかけて緩やかに給付水準を調整。 |
○ | 少子化や経済状況等の変動に幅があることを念頭におき、事務当局にいくつかの試算を行わせた。以下では、給付と負担の在り方に関わる今後の議論のために、試案として、いくつかの基本的考え方を提示。 |
3.保険料負担の上限と給付の水準
○ | 厚生年金の保険料は、年収の20%を超えない水準を基本。 国民年金の保険料は、月額18,000円台(平成11年度価格)までにとどめることを基本。 |
○ | 将来の給付水準は、平均的な片働き世帯の所得代替率(現役世代の平均的なボーナス込みの手取り賃金に対する新規裁定時の年金額の割合)で見て、概ね50%から50%台半ば程度を確保。 |
4.給付と負担の均衡を図るための財政期間
〜積立金の在り方
○ | 財政均衡を図るための期間及び積立金の在り方については、2つの考え方がある。 |
<将来にわたって均衡を考え積立金水準を維持する考え方>
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<100年程度の長期の均衡を考え積立金水準を抑制する考え方>
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(注) | いずれの考え方によっても、保険料引上げと給付水準調整の方法に変わりはなく、どこまで給付水準を調整し、いつ終了するかの見通しに違いが現れる。 |
5.「マクロ経済スライド」による給付調整
○ | 年金制度を支える力である社会全体の所得や賃金とのバランスを図るため、現役世代の総賃金等の変動により給付水準を調整することを基本とする。(マクロ経済スライド) | |||||||||||
○ | 既に年金を受給している者も対象とした調整については、引き続き検討する。 調整を行う場合には、高齢者の生活に配慮し、給付水準の調整は名目額を維持する(前年度の年金額を下回らない)範囲とする。 | |||||||||||
○ | 労働力人口の変動の実績を反映する自動調整を基本とする。 あわせて、できる限り将来の現役世代の負担を過重にしないよう、寿命の伸びなども勘案して、早い時期に調整が終わるような給付水準調整とする。 | |||||||||||
○ | 今後、次世代育成支援策を推進していった結果、少子化の進行に改善が見られれば、給付水準も想定より改善されることとなる。 | |||||||||||
○ | 試算結果の概要 <最終保険料率20%、基準ケース>
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○ | 社会経済情勢の変動による給付水準調整には、一定の下限が必要。この下限の水準は、現役世代の可処分所得の状況と高齢夫婦世帯の消費支出の状況との比率なども参考に、50%を下回らないことが適当。 |
6.持続的で安定した制度を目指して
(1) | 最終的な保険料負担の上限を年収の20%を超えない水準としつつ、将来の給付水準は、概ね50%から50%台半ば程度を確保していくのが適切。 また、総合的な次世代育成支援策の積極的推進はもとより、経済活性化のための対策にも積極的に取り組み、将来の給付水準が50%台半ばで維持できることを目指していきたい。 |
(2) | また、国民年金保険料の納付率の急激な低下の問題については、この8月に設置した国民年金特別対策本部において、徹底した収納対策に取り組んでいく。 そのためには、国民年金保険料の納付が国民の義務であることの理解の徹底とともに、保険料納付の有利さ、大切さの理解の促進も必要。 |
(3) | 積立金の水準の在り方やその運用の在り方についても、基本的な議論を行い、今回の改革の中で結論を出していく。 |
(4) | その他、短時間労働者への厚生年金の適用拡大、第3号被保険者制度の見直しや離婚時の年金分割など女性と年金に関わる課題、次世代育成支援など、個別分野にわたる改革にも引き続き取り組んでいく。 |