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「精神・神経の障害認定に関する専門検討会」(座長:原田憲一 元東京大学医学部教授)において、その検討結果が「精神・神経の障害認定に関する専門検討会報告書」(以下「専門検討会報告書」という。)として取りまとめられたことを踏まえて、厚生労働省では神経系統の機能又は精神の障害に関する認定基準を全面的に改正し、本日付けで厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あて通達した。 |
1 | 労災保険においては、業務や通勤が原因で負傷し、又は、疾病にかかり、その傷病が治っても身体等に後遺障害が残った場合には、その後遺障害の程度(等級)に応じた給付(障害(補償)給付)が行われる。 この障害の程度は障害等級として認定されるが、これを認定する基準として障害等級認定基準(以下「認定基準」という。)が設けられている。 今般、専門検討会報告書の内容を踏まえ、精神・神経の認定基準について全面的に改正したものである。 なお、精神・神経の認定基準の全面的な改正は昭和50年以来となる。 |
2 | 主な改正内容
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3 | 厚生労働省としては、今回の認定基準の改正により障害認定がこれまでより迅速かつ適正に行われるものと考えている。 なお、本認定基準は平成15年10月1日以降治ゆした後遺障害について適用となる。 |
1 | 非器質性精神障害 非器質性精神障害の認定基準については、外傷性神経症に係る認定基準のみ設けられていたところであるが、うつ病やPTSD等の精神障害の労災認定の増加傾向に鑑み、業務上の非器質性精神障害の後遺障害一般に関して適用する基準を設定するとともに、障害認定の時期を示したこと
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2 | 脳の器質的損傷による障害 認定基準の明確性の向上を図る観点から、脳の器質的損傷に基づく障害については高次脳機能障害(注1)と身体性機能障害に区分した上で、高次脳機能障害と身体性機能障害のそれぞれについて以下のような基準を策定するとともに、両者が併存した場合の取扱いを示した
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3 | せき髄損傷による障害 せき髄損傷による後遺障害についても、認定基準の明確性の向上を図る観点から、せき髄損傷に通常伴って生じる神経因性膀胱障害等の障害も含めて評価する基準を設定したこと 障害認定に当たっては、麻痺に着目し、麻痺の範囲及びその程度により障害等級を認定(1、2、3、5、7、9、12級)することとしたこと |
4 | その他
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注1 | 高次脳機能障害が存する場合には、耳が聞こえても言葉を理解することができず、「会話をすることができないこと」等の症状を呈することがある。 また、「段取りをつけて物事を行うことができない」、「仕事に対する意欲や注意の集中を持続することができない」、「突然興奮したり、怒り出す」等の症状を呈することがある。 |
注2 | RSDとは、外傷後に生じる慢性疼痛であり、激しい痛みを生じることがある。 |
第1級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの (給付基礎日額の313日分を年金(年額)として支給) |
第2級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの (給付基礎日額の277日分を年金(年額)として支給) |
第3級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの (給付基礎日額の245日分を年金(年額)として支給) |
第5級 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの (給付基礎日額の184日分を年金(年額)として支給) |
第7級 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの (給付基礎日額の131日分を年金(年額)として支給) |
第9級 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの (給付基礎日額の391日分を一時金で支給) |
第12級 | 局部にがん固な神経症状を残すもの (給付基礎日額の156日分を一時金で支給) |
第14級 | 局部に神経症状を残すもの (給付基礎日額の56日分を一時金で支給) |
※1 | 障害(補償)給付は、1〜7級までは年金として、9級以下は一時金としてそれぞれの障害等級に対応する給付基礎日額が支給される。 |
※2 | 給付基礎日額とは、給付額の算定の基礎となるものであり、原則として労基法第12条に定める平均賃金に相当する額をもってその額とするとされている。 平均賃金に相当する額とは、原則として「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した」額のことである。 |
1 | 非器質性精神障害
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2 | 高次脳機能障害
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3 | 脳損傷による麻痺
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