平成15年6月27日 食品保健部基準課、監視安全課 中垣 基準課長 担当:安川(内線4280) 桑崎 輸入食品安全対策室長 担当:磯貝(内線2474) 美上(内線2477) |
標記については、在京EU代表部より本年4月7日付けの書簡により、一部のニトロフラン系合成抗菌剤(フラゾリドン、ニトロフラゾン)の代謝物AOZ(3−アミノ−2−オキサゾリドン)及びセミカルバジドを含有するインド産の原料を使用したベルギー産粉卵が我が国に輸出されている旨の情報提供を受け、厚生労働省の対応を4月9日に公表したところですが、本日開催の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性部会(以下、「毒性部会」と略す。)におけるニトロフラン代謝物の安全性に関する検討結果を受け、今後の対応を以下のとおりとしますのでお知らせします。
I 毒性部会で了承した事項
1 | ニトロフラン類の代表的化合物であるフラゾリドンは遺伝毒性を有する発がん物質である可能性が高いと認められる。フラゾリドンの代謝物であるAOZについては、発がん性試験結果は報告されていないが、in vitro及びin vivoの遺伝毒性試験においていずれも陽性と判断されることから、発がん性を有する可能性は極めて高いと考えられる。入手した資料からみる限り、許容1日摂取量(ADI)を設定することは適当でないと考えられる。 |
2 | セミカルバジド及びその親化合物であるニトロフラゾンは、発がん性を示した試験結果があることから、発がん物質であると考えられる。発がん性のメカニズムは明らかではないものの、入手した資料からみる限り、ADIを設定することは適当でないと考えられる。 |
3 | 1,2に基づき、AOZやセミカルバジドが検出された食品については、流通しないようにすることが適当である。 |
4 | AOZ又はセミカルバジドが検出された粉卵を原料の一つとして製造された加工食品については、入手した資料からみる限り、フラゾリドンの発がん性試験の用量と実際の残留量には大きな差があることなどから、直ちに人の健康確保に大きな支障があるとは考えられず、回収を行うような類のものではないと考える。 なお、EUにおいても加工食品については回収の対象としていない。 |
II 今後の対応
1 | EUの情報によりAOZ又はセミカルバジドが検出された既に輸入済みの粉卵については、輸出国への積み戻し等を行うよう指導する。 |
2 | 今後、ベルギー産及びインド産の粉卵及び液卵については、輸入時において、輸入者に対してAOZ及びセミカルバジド検査結果の提出を求め、これらの物質が検出されたものについては、輸出国への積み戻し等を行うよう指導する。 また、今後輸入される他国産の粉卵及び液卵についても、初回輸入時等に自主検査を指示する。 なお、EUにおいてAOZ及びセミカルバジドの残留モニタリング検査の実施対象食品としてあげられている家きん肉、養殖水産物については、検疫所での検査実施体制が整い次第、モニタリング検査を開始する。 |
(参考)
● | ニトロフラン系合成抗菌剤とは フラン系の合成抗菌剤の総称であり、フラゾリドン、ニトロフラゾン、ジフラゾン等が含まれる。わが国では、昭和56年フラゾリドンに発がん性が、他のニトロフラン系合成抗菌剤には変異原性が疑われたため、再評価が行われ、家きんと牛への使用が取り消された。また、平成11年の再評価において、豚に対する使用も対象外となり、現在では、動物用医薬品として承認のあるものはニトロフラゾンとニフルスチレン酸ナトリウムのみであり、ニトロフラゾンの使用対象として食用畜水産物への使用は認められていない。 EU、欧米においても、ニトロフラン系合成抗菌剤の食用畜水産物への使用は禁止されている。 なお、ニトロフラン代謝物AOZはフラゾリドンから、同じく代謝物セミカルバジドはニトロフラゾンから生成される。 |
● | EUにおけるニトロフラン系合成抗菌剤代謝物の規制 本年3月13日付委員会決定(2003/181/EC)により、家きん肉及び養殖水産物におけるニトロフラン代謝物(AOZ、セミカルバジド等)について、ニトロフラン系合成抗菌剤の使用規制の一環として、不使用の確認の検出限界(MRPL)を1ppbとすることが示され、EU各国においてモニタリング検査が実施されるようになった。 |
● | 今回AOZ又はセミカルバジドが検出されたベルギー産粉卵に関する情報 在京EU代表部の本年4月7日付文書により、厚生労働省に情報提供のあったインド産の原料を用いたベルギー産粉卵は、ベルギーBELOVO社及びインドSKM社の製品であった。 平成14年1月から平成15年4月の輸入自粛時点までベルギーBELOVO社の製品は1,064トン、インドSKM社の製品は1,220トン輸入された。 なお、現在、検疫所において保留している貨物は、BELOVO社で11トン、SKM社で24トンである。 EUにおいて、粉卵のニトロフラン代謝物の検査の結果、ニトロフラン代謝物が陽性と連絡を受けた対象製品の数量は、下表のとおりである。 ベルギーBELOVO社製造分(平成14年1月〜平成15年4月輸入分)
インドSKM社製造分(平成14年1月〜平成15年4月輸入分)
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