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第4部 石綿含有建材の代替可能性について

1.押出成形セメント板
 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、4種類の商品すべてについて石綿の使用を必要とする理由はないと回答があった。また、これらの商品について、代替見込み時期は2003年〜2005年頃と回答があった。
 一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
 押出成形セメント板の規格については、日本工業規格「押出成形セメント板(ECP)」の原案が策定されているところである。既に製造されている非石綿製品で使用されている代替繊維には、ワラストナイト、パルプ、有機繊維、セピオライト等がある。
 押出成形セメント板については、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
 ・既に商品化されている非石綿製品があり、技術的に非石綿製品への代替化は可能であると考えられること。
 ・厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカー、メーカー団体及びユーザー団体から石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。
 ・安全確保の観点から石綿製品の製造、使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

2.住宅屋根用化粧スレート
 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、7種類の商品すべてについて石綿の使用を必要とする理由はないと回答があった。また、これらの商品について、代替見込み時期は2003年後半と回答があった。
 一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
 住宅屋根用化粧スレートについては、日本工業規格「JIS A5423 住宅屋根用化粧スレート」で性能等が規定されている。既に製造されている非石綿製品に使用されている代替繊維には、パルプ、ワラストナイト、ビニロン、セピオライト等がある。
 住宅屋根用化粧スレートについては、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
 ・既に商品化されている非石綿製品があり、技術的に非石綿製品への代替化は可能であると考えられること。
 ・厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカー、メーカー団体及びユーザー団体から石綿製品の使用が不可欠であるとの回答がなかったこと。
 ・安全確保の観点から石綿製品の製造、使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

3. 繊維強化セメント板
(1)繊維強化セメント板(平板)の調査結果等
 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、40種類の商品中30種類の商品については安全確保の観点から石綿の使用を必要とする理由はないと回答、10種類の商品については石綿の使用が必要と回答、うち、3種類の商品については安全確保のために、7種類の商品については安全確保以外の理由で必要と回答があった。
 石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品は経年変化についての信頼性や強度が欠ける、非石綿製品に代替化するための製造法の転換が困難等の回答があった。
 また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期については、2005年頃とする商品がある他、2008年、2007〜2012年頃とする商品があり、さらに時期未定又は代替不可能とする商品があるとの回答があった。
 一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回答があった。
(2)繊維強化セメント板(波板)の調査結果等
 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、52種類の商品のうち23種類の商品については安全確保の観点から石綿の使用を必要とする理由はないと回答、29種類の商品については石綿の使用が必要と回答、うち、8種類の商品については安全確保のために、21種類の商品については安全確保以外の理由で必要と回答があった。
 石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品の耐久性や強度の不足、危険物倉庫・高温高圧機器設置工場の火災・爆発時の被害軽減、化学工場・沿岸地域の工場の建屋の腐食防止、高電圧取扱建屋の感電事故防止、代替化する場合の成形上の問題・設備投資が必要・コストアップ、葺き替え補修等の回答があった。
 また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期については、2004〜2005年頃とする商品がある他、時期未定又は代替不可能とする商品があるとの回答があった。
 一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回答があった。
(3)繊維強化セメント板(平板及び波板)のヒアリング結果
 委員会においてメーカー及びメーカー団体からヒアリングを行ったところ、主に次のような意見があった。
 ・繊維強化セメント板(平板)に比べ繊維強化セメント板(波板)の代替化は遅れているが、一部の非石綿製品については商品化されている。
 ・繊維強化セメント板(波板)については「JIS A5430 繊維強化セメント板」の性能基準(本体の性能基準及び附属書1で示された性能基準等)を満足する試作品が開発されている。
 ・代替繊維を用いた製品は、石綿製品と比較して収縮率が大きく、製造当初の強度は技術的に確保できるが耐久性が低い。
 ・繊維強化セメント板(波板)については業界全体で非石綿化の取組みを行ってきているが、特に大波板については非石綿製品の強度、長期の耐久性等を考慮に入れた慎重な検討が必要である。
 ・非石綿製品についてはプレスで密度を高め強度を上げることとなるため、大型のプレス機が必要である。
 ・
山むね、波の・・・
きさき
等の役物スレートは非石綿繊維製品への代替が不可能なため金属製品に代替することになるが、
その場合には、耐防火性能に係る国土交通大臣の認定を取得する必要があると考えられる。
 ・非石綿化を図るためには技術の革新や製造設備の投資のための支援措置が必要である。
 一方、ユーザー団体からヒアリングを行ったところ、アンケート調査の結果と異なり、平板及び波板のいずれも石綿製品を使用しなければならない理由はないとの意見があった。
(4)関連規格等
 繊維強化セメント板については、日本工業規格「JIS A5430 繊維強化セメント板」で平板、波板ともに性能等が規定されている。既に製造されている非石綿製品で使用されている代替繊維は、パルプ、ビニロン繊維が中心である。
(5)繊維強化セメント板の代替可能性について
 厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリングにおいて、石綿製品メーカーから、一部の製品を除き非石綿製品への代替化は困難であるとの意見が出されたが、高圧プレス装置の導入等の製造設備の変更、混和材料の添加等の原材料の変更、製造方法の変更等の必要がある場合があるものの、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
 ・技術的な可能性
(1)既に商品化されている非石綿の繊維強化セメント板があること
(2) 「JIS A5430 繊維強化セメント板」で規定されたスレートの性能基準(曲げ破壊荷重、吸水率、透水性、難燃性、耐衝撃性)に適合する非石綿製品があること
(3)建築基準法の不燃材料として国土交通大臣に認定されている非石綿の繊維強化セメント板があること
(4)欧州において屋根材、外装材の非石綿化が進んでおり、代替品として、石綿以外の繊維を使用した製品のほか、金属が使用されている例もあり、金属等の非繊維製品への代替化も可能であると考えられること
等から、技術的には非石綿製品への代替化は可能であると考えられること
 ・関連規格等の状況
 平成12年6月施行の改正建築基準法において不燃材料の基準が性能規定化されたこと、繊維強化セメント板の日本工業規格については、平成13年3月の改正により石綿を含まない製品の性能基準がISO規格の内容を附属書として取り込むことにより規格化されたこと(「附属書1 繊維強化セメント板−長尺波板」で性能基準として破壊荷重、たわみ、透水性、耐凍結融解性、見掛け密度、耐温水浸せき性、耐加熱散水性、難燃性を規定。「附属書2 繊維強化セメント平板」で性能基準として曲げ強度、透水性、耐凍結融解性、見掛け密度、耐温水浸せき性、耐加熱散水性、難燃性を規定)等から非石綿製品への代替化が促進されやすい状況になっていること
 ・ユーザーの認識
 厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリングの結果から判断して、建材製品のユーザーは安全確保の観点から石綿製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられること
 ・安全確保上の必要性
 非石綿繊維を用いた代替品は石綿製品に比べて耐久性が低下するとのデータがあるものの、屋根材として使用する場合の踏み抜き等による作業者の墜落の危険性は石綿製品も同様にあり、通常の使用においては、非石綿製品に代替化することにより新たに安全上の問題が発生することはないと考えられること、化学工場等の建屋に防火性能上の観点から石綿製品が不可欠であるという理由は特にないと考えられること等、安全確保の観点から石綿製品の製造・使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること

4.窯業系サイディング
 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品メーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、2種類の商品のいずれも安全確保以外の理由で石綿の使用が必要と回答があった。
 石綿の使用が必要な理由としては、防火対策、非石綿製品の耐久性の不足、非石綿製品へ代替化する場合のコストアップ等の回答があった。
 また、これらの商品の非石綿製品への代替見込時期は、2005年の商品と2007年の商品があると回答があった。
 一方、石綿製品のユーザー団体からは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、1団体から防火対策上石綿の使用が必要と回答があった。
 窯業系サイディングの規格については、日本工業規格「JIS A5422 窯業系サイディング」で性能等が規定されている。既に製造されている非石綿製品で使用されている代替繊維には、パルプ、ガラス長繊維、アクリル繊維等がある。
 委員会においてメーカー、メーカー団体からヒアリングを行ったところ、次のような意見があった。
 ・非石綿製品を既に販売しているが、製造コストの問題から改良の研究を続けている。
 ・開発中の非石綿製品については性能上の問題は無く、生産性と原料のコストアップが問題である。
 ・特に高い耐凍害性を有する製品については、代替化は困難である。
 一方、ユーザー団体からヒアリング行ったところ、アンケート調査の結果と異なり、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないとの意見があった。 窯業系サイディングについては、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
 ・既に商品化されている非石綿製品があること。
 ・建築基準法の不燃材料として国土交通大臣に認定されている非石綿製品があること。
 ・厚生労働省が実施したアンケート調査及び本委員会が実施したヒアリングの結果から判断して、建材製品のユーザーは石綿製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられること。
 ・安全確保の観点から石綿製品の製造・使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

5.石綿セメント円筒
 厚生労働省が実施したアンケート調査結果において、石綿製品のメーカーからは、「石綿を使用しなければ安全確保等が困難か」との設問に対し、2種類の商品のいずれも安全確保以外の理由で石綿の使用が必要と回答があった。
 石綿の使用が必要な理由としては、煙突、集合排気筒として高温で使用されるため代替品がないこと等の回答があった。
 一方、石綿製品のユーザーからは、「安全確保等の観点から石綿の使用がやむを得ないか」との設問に対し、安全確保の観点から石綿製品の使用を必要とする理由はないと回答があった。
 石綿セメント円筒の規格については、日本工業規格「JIS A5405 石綿セメント円筒」で原料、品質等が規定されている。
 委員会においてメーカーからヒアリングを行ったところ、次のような意見があった。
 ・「JIS A5405 石綿セメント円筒」で規定されている耐熱性能等を満足する代替繊維はない。
 ・金属、ほうろう等の製品が普及しつつあり非繊維製品への代替は可能。
 ・生産量は年々減少しており、代替化のためにコストをかけることは困難。
 石綿セメント円筒については、次に示す理由により非石綿製品への代替化が可能と考えられる。
 ・金属、ほうろう等の製品が普及しつつあり、非繊維製品への代替は可能であること。
 ・厚生労働省が実施したアンケート調査結果から判断して建材製品のユーザーは石綿製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられること。
 ・安全確保の観点から石綿製品の製造、使用等が必要という具体的な理由は特にないと考えられること。

6.石綿含有建材の代替可能性について
 石綿を含有する建材製品については、代替繊維を用いた製品で、JIS等の規格に適合又は国土交通省により不燃材としての認定を受けたものが一部製造され、既に商品化されていること等から、当該製品に必要な性能を有する非石綿製品の製造は概ね技術的に可能と考えられる。平成12年6月に施行された改正建築基準法において不燃材料の基準が性能規定化されたことや、関連するJIS規格においても性能規定化されてきていることからも、非石綿製品への代替化が促進されやすくなっていると考えられる。非石綿繊維製品への代替化は困難と考えられるものが一部あるものの、それらについては金属等の非繊維製品への代替化が可能と考えられる。また、代替品の使用により防火、耐火、耐腐食、耐久性等の観点からの安全の確保が困難となるおそれがあるとは考えられない。さらに、建材製品のユーザーは、安全確保上石綿含有製品の使用が不可欠とは認識していないと考えられる。
 これらのことから、石綿を含有する建材製品の使用は安全確保等の観点から不可欠なものではなく、かつ、技術的に非石綿製品への代替化が可能であると考えられる。


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