急速な少子化の進行は、我が国経済社会の様々な分野に深刻かつ重大な影響を及ぼすこととなる。経済的な影響としては、労働力人口の減少等により、国内市場の縮小、労働力供給の減少、労働生産性の伸び悩み等をもたらし、ひいては経済成長率の低下につながるおそれがある。また、人口に占める高齢者の割合を高め、社会保障等についての働く世代の負担を増大させることとなる。一方、社会的な影響としては、子ども同士の交流の機会の減少等により子どもの健やかな成長への影響が懸念されるとともに、平成18年をピークに総人口が減少することによる問題も生じることとなる。こうした中で、今後、国、地方公共団体、企業等の様々な主体が一体となって、少子化の流れを変えるためのもう一段の対策を推進することが喫緊の課題となっている。
特に、職場環境を取り巻く状況に関しては、国民の声としても、「子育てしながら働きやすい職場環境」が子育て家庭への支援として最も求められているとともに、育児休業についても「職場の雰囲気」を理由に断念した労働者が多いなど、「男性を含めた働き方の見直し」や「仕事と子育ての両立の支援」が求められており、これに対応した企業における職場環境整備への取組が急務となっている。このような中で、企業においては、労働力の再生産の観点等から、国、地方公共団体等と連帯し、迅速かつ重点的に取組を推進することが求められている。
こうした状況を踏まえ、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される社会の形成に資することを目的として、次世代育成支援対策推進法案が本年3月17日に第156回通常国会に提出されたところである。同法案においては、各企業が、それぞれの実情に応じた行動計画を策定し、主体的に働き方の見直しや仕事と子育ての両立支援等に取り組む枠組みを整備することとしている。
企業が行動計画を策定・実施することにより、「働き方の見直し」等を図り、職場の雰囲気を子育てしながら働きやすいものとすることは、労働者やその家族のみならず、企業経営にとってもプラスである。
労働者にとっては、
・ | 子育てと仕事の両立負担が軽減する。 |
・ | 家族とのコミュニケーションが増大する。 |
・ | 継続就業が可能になるとともに、職場への定着意識が高まる。 |
・ | 子供の健全育成 |
・ | 配偶者等の子育ての負担やストレスの軽減 |
・ | 妊娠、出産を理由とする退職者が減少することにより、経験を積み、ノウハウをもった人材が定着する。 |
・ | 労働者の仕事への意欲が高まることにより、生産性が向上する。 |
・ | 行動計画の策定・実施を通じて、業務の非効率な部分のチェックや労働者の多能化促進等の業務効率化を図ることができる。 |
・ | 育児経験を活かした新商品やサービスの開発が可能になる。 |
・ | 募集・採用に当たって応募者が増加する。 |
・ | 企業イメージが向上する。 |
企業を取り巻く経済情勢は厳しいが、少子化の流れを変えるための次世代育成支援対策は、企業活動を将来にわたり十分に発展させるための環境づくりであり、ただちに着手しなければならない「未来への投資」である。
そうした「未来への投資」である次世代育成支援対策のために、一つ一つの企業が、経営の観点、労働者の要望等自社の実情を的確に把握した上で、適切かつ十分な行動計画を策定し、実施することは、よりよい企業経営の礎を築くための必要不可欠な取組である。