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(別添)

労審発109号
平成15年2月18日

厚生労働大臣
  坂口 力 殿

労働政策審議会
  会長  西川 俊作


 平成15年2月13日付け厚生労働省発基第0213001号をもって諮問のあった「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」については、本審議会は、下記のとおり答申する。



別紙「記」のとおり。


(別紙)

平成15年2月18日

労働政策審議会
 会長  西川 俊作 殿

労働条件分科会
 分科会長  西村 健一郎

「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」について


 平成15年2月13日付け厚生労働省発基第0213001号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本分科会は、下記のとおり報告する。



1 要綱については、おおむね妥当と考える。

2 なお、労働者側委員からは、次のとおり意見があった。

(1) 要綱第一の有期労働契約について、その契約期間の上限の原則を1年から3年に延長することについては、企業において、期間の定めのない労働者の雇用に代えて有期契約労働者の雇用にするケースや、新規学卒者の採用に当たって3年の有期労働契約とすることにより事実上の若年定年制となるケースが増大するのではないか、との強い懸念があり、直ちにはこれを認めにくい。これらの懸念を払拭するためにも、今後トラブルの発生状況を把握し、有期労働契約の果たす役割など有期労働契約の在り方について、速やかに検討する必要がある。

(2) 要綱第二の一の解雇については、要綱の規定が建議における文言とは異なり「(前略)解雇することができること。ただし、(後略)」となっていることから、この規定を設けることに伴い、解雇に関する裁判における主張立証に関して、使用者に主張立証活動を行わせている現行の取り扱いに影響が生ずるのではないかとの強い懸念がある。これらの懸念を払拭するためには現行の取り扱いに影響が生じないことを立法者意思として明確にすべきである。

(3) 要綱第三の二の企画業務型裁量労働制については、その対象とする事業場を事業運営上の重要な決定が行われる事業場に限定しないものとすることに伴い、企業において無原則な拡大につながることのないよう、対策を講ずるべきである。


(参考1)

厚生労働省発基第0213001号


労働政策審議会
  会長  西川 俊作  殿


 厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)第9条第1項第1号の規定に基づき、別紙「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」について、貴会の意見を求める。


平成15年2月13日

厚生労働大臣  坂口  力


 労働基準法の一部を改正する法律案要綱
第一 有期労働契約
 一 期間の定めのある労働契約については、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、契約期間の上限を三年(次のいずれかに該当する労働契約にあっては、五年)とするものとすること。
 専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(1に掲げる労働契約を除く。)
 二 厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができるものとすること。
 三 行政官庁は、二の基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができるものとすること。
第二 労働契約の終了
 一 解雇
 使用者は、この法律又は他の法律の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇することができること。ただし、その解雇が、客観的かつ合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするものとすること。
 二 解雇理由の明示
 労働者が、解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由を記載した文書の交付を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならないものとすること。
 三 就業規則
 就業規則の記載事項のうち、退職に関する事項に解雇の事由を含むことを明らかにするものとすること。
第三 裁量労働制
 一 専門業務型裁量労働制
 専門業務型裁量労働制の導入に当たって労使協定で定めなければならない事項として、専門業務型裁量労働制の対象業務に従事する労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置並びに当該労働者からの苦情の処理に関する措置を当該協定で定めるところにより使用者が講ずることとする旨その他厚生労働省令で定める事項を追加するものとすること。
 二 企画業務型裁量労働制
 企画業務型裁量労働制の対象とする事業場は、事業運営上の重要な決定が行われる事業場に限定しないものとすること。
 企画業務型裁量労働制の導入に当たって労使委員会が行う決議の要件は、その委員の五分の四以上の多数とするものとすること。
 労使委員会の委員のうち、労働者を代表する委員について、当該事業場の労働者の過半数の信任を得ていることとする要件は、廃止するものとすること。
 労使委員会の設置に係る行政官庁に対する届出は、廃止するものとすること。
 企画業務型裁量労働制を導入した使用者が定期的に報告を行う事項は、その対象となる労働者の労働時間の状況に応じた当該労働者の健康及び福祉を確保するための措置の実施状況に限るものとすること。
 労使委員会において、労働時間に関して労使協定により定めることとされている事項について決議を行う場合の当該決議の要件は、その委員の五分の四以上の多数とするものとすること。
第四 その他
 その他所要の整備を行うものとすること。
第五 附則
 一 施行期日
 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
 二 この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるものとすること。
 三 関係法律について所要の改正を行うものとすること。


(参考)

労働条件分科会委員・臨時委員

区分 委員氏名 現職名
公益代表  アラキ タカシ
 荒木 尚志
東京大学法学部教授
 イマダ サチコ
 今田 幸子
日本労働研究機構統括研究員
 イワデ  マコト
 岩出  誠
弁護士
 ニシムラ ケンイチロウ
○西村 健一郎
京都大学法学部教授
 ワカバヤシ ユキノリ
 若林 之矩
中央職業能力開発協会理事長
 ワタナベ  アキラ
 渡辺  章
東京経済大学現代法学部教授
 ワダ   オサム
 和田  攻
埼玉医科大学教授
労働者代表  オウミ ナオト
 逢見 直人
UIゼンセン同盟常任中央執行委員
 コヤマ マサキ
 小山 正樹
JAM副書記長
 サトウ ノリユキ
 佐藤 雅是
日本化学産業労働組合連盟事務局長
 タジマ ケイイチ
 田島 恵一
全国一般労働組合書記長
 タツイ ヨウジ
 龍井 葉二
日本労働組合総連合会総合労働局長
 マツシマ  ミノル
 松島  稔
日本都市交通労働組合中央執行委員長
 ヤマグチ ヨウコ
 山口 洋子
日本サービス・流通労働組合連合中央執行委員
使用者代表  アサオカ  トオル
 浅岡  徹
株式会社神戸製鋼所取締役常務執行役員
 オクタニ レイコ
 奥谷 禮子
株式会社ザ・アール代表取締役社長
 キリク  タカシ
 紀陸  孝
日本経済団体連合会常務理事
 サトウ
 佐藤 みどり
有限会社八王子自動車教習所代表取締役社長
 ハラカワ コウジ
 原川 耕治
全国中小企業団体中央会調査部長
 ヤマダ ヨウスケ
 山田 洋輔
三菱化学株式会社常務取締役
 ワタナベ ヨシヒデ
 渡邊 佳英
大崎電気工業株式会社代表取締役社長

○ 分科会長


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