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平成15年2月13日

平成13年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告について

 家庭用品に係る健康被害病院モニター報告制度は、家庭用品等に係る健康被害の実態を把握、家庭用品の安全対策を一層推進することを目的として、皮膚科領域8病院、小児科領域8病院、(財)日本中毒情報センターの協力を得て健康被害情報を収集している。今般、平成13年度の報告を家庭用品専門家会議(危害情報部門)(座長:新村眞人 東京慈恵会医科大学皮膚科教授)において検討し、その結果をとりまとめた。
 概要は別添のとおり。厚生労働省としては、地方公共団体、関係業界団体等に対し本報告を周知するとともに引き続き本制度を通じ、家庭用品に含有される化学物質による健康被害の実態の把握に努めることとする。


照会先 厚生労働省医薬局審査管理課
化学物質安全対策室
室長: 松田 勉(2421)
室長補佐: 角井一郎(2423)
主査: 浦上憲治(2798)
電話代表: 5253-1111


(別添)

平成13年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告(概要)

 本制度は、モニター病院(皮膚科、小児科各8施設)の医師が家庭用品等による健康被害とした事例(皮膚障害、小児の誤飲事故)について、また、(財)日本中毒情報センターが収集した家庭用品等による吸入事故等と思われる事例について、それぞれ厚生労働省に報告する方法により行っているものである。
 平成13年度に報告された事例の件数は、皮膚科182件(前年度225件)、小児科886件(同789件)、吸入事故等615件(同546件)で合計1,683件(同1,560件)であった。なお、死亡事例は報告されていない。

(1)家庭用品が原因と考えられる皮膚障害に関する報告
 (1) 健康被害の概要
原因家庭用品は、装飾品が46件、洗剤が44件等であった。
患者の性別では、女性が143件(78.6%)と大半を占めた。そのうち20代の女性が50件と全体の27.5%を占め、前年度と比較して増加しており、年齢・性
別集計で最も多かった。
障害の種類のうち主なものは、アレルギー性接触皮膚炎が98件、刺激性皮膚炎が52件、KTPP型*の手の湿疹が21件等であった。
KTPP(keratodermia tylodes palmaris progressiva:進行性指掌角皮症)
 手の湿疹の1種で、水仕事、洗剤等の外的刺激により起こる。まず、利き手から始まることが多く、皮膚は乾燥し、落屑、小亀裂を生じ、手掌に及ぶ。程度が進むにつれて角質の肥厚を伴う。

 (2) 原因製品別結果と考察
 (装飾品)
装飾品に関する報告件数は46件(22.0%)であった。
製品別の内訳のうち主なものは、ネックレスが20件、ピアスが16件、イヤリング
が10件、指輪が6件、ブレスレットが3件であった。
アレルギー性接触皮膚炎が41件(89.1%)と障害報告事例の大半を占めた。
44件についてパッチテストが実施され、前年度同様ニッケルにアレルギー反応を示した例が33件と最も多かった。
汗を大量にかくような運動をする際には装飾品類をはずすことが望ましい。また、ピアスは表皮より深部に接触する可能性が高く、初めて装着したり、種類を変更したりした際には、症状の発現に特に注意して使用する必要がある。症状が発現した場合には、専門医を受診するとともに、原因製品の装着を避け、装飾品を使用する場合には別の素材のものに変更することが必要である。
 (洗剤)
洗剤に関する報告件数は44件(21.1%)であった。
製品の種別のうち主なものは、洗濯用洗剤が21件、台所用洗剤が17件であった。
障害の種類のうち主なものは、刺激性の皮膚炎が25件、KTPP型の手の湿疹が14件、アレルギー性接触皮膚炎が6件等であった。
原液での使用など、不適切な使用法を避け、使用上の注意・表示をよく読んで正しく使用することが重要である。また、使用者の必要に応じて、保護手袋を装着することや、使用後保護クリームを塗ることなどの工夫も有効と思われる。それでもなお、症状が発現した場合は原因と思われる製品の使用を中止し、専門医を受診することを推奨する。
 
 (3) 全般的な留意事項
 家庭用品を主な原因とする皮膚障害は、原因家庭用品との接触によって発生する場合がほとんどであり、家庭用品を使用することにより接触部位に痒み、湿疹等の症状が発現した場合には、原因と考えられる家庭用品の使用を極力避け、様子をみることが必要である。再度使用して同様の症状が発現する場合には、同一の素材のものの使用は避けることが賢明であり、症状が改善しない場合には、専門医の診療を受けることが必要である。
 また、毎年誤使用から障害が発生した事例が見受けられることからも、日頃から使用前には必ず注意書をよく読み、正しい使用方法を守ること、自己の体質について認識し、製品の素材について注意を払うことが大切である。

(2)家庭用品等に係る小児の誤飲事故に関する報告
 (1) 健康被害の概要
誤飲事故の原因製品は、タバコが401件、医薬品・医薬部外品が122件等であった。
上位品目の全件数に占める割合の長期的傾向を見ると、変動はあるもののタバコの占める割合が依然として多かった。
誤飲事故全体の約57%が午後4時から午後10時の間に発生していた。
 
 (2) 原因製品別考察
 (タバコ)
タバコに関する報告件数は401件(45.3%)で、小児科報告件数の約半数を占めていた。これは例年と同様の傾向であった。
事故は生後6〜11か月の乳児に発生が集中(264件,65.8%)しており、さらに12〜17か月の幼児とあわせると報告例の91.0%を占めた。
タバコや灰皿は乳幼児の手の届かないところに保管するなど、生後6か月からの1年間は特にそれらの取扱いや置き場所に細心の注意を払うことが必要である。
 (医薬品・医薬部外品)
医薬品・医薬部外品に関する報告件数は122件(13.8%)であった。
誤飲事故は、各年齢層においてみられたが、特に1〜2歳児に多い傾向があった。
誤飲事故の大半は、医薬品等の保管を適切に行っていなかった場合や、保護者が目を離したすきに発生していた。小児の医薬品の誤飲は症状が発現する可能性が高く、保管・管理に十分留意する必要がある。
 (3) 全般的な留意事項
 乳幼児は、身の回りのあらゆるものを分別なく口に入れてしまうことから、保護者は子供の周囲の環境に気を付けなければならない。食品類であっても状況次第では危険なものになるということを認識する必要がある。特に重篤な事例に陥る可能性のあるものについて認識し、対象物品には特に注意を怠らないよう努めることが重要である。また、毎年最も報告の多いタバコの誤飲事故は、発生が集中している生後6か月からの1年間の期間に保護者が一層注意を払うことにより、事故の発生を減らすことが可能と思われる。
 乳幼児の口に入るサイズはおよそ直径3cmといわれており、このサイズ以下のものには注意が必要である。

(3)家庭用品が原因と考えられる吸入事故等に関する報告
 (1) 健康被害の概要
吸入事故等の原因製品は、殺虫剤類(医薬品等を含む)が133件、洗浄剤が123件等であった。
防水スプレー、防虫剤に関する報告件数が、それぞれ15件、16件から3件、6件に減少したが、これらの変化については今後も経時的に追う必要があると考える。
主な製品形態は、スプレー式の製品が215件(うち、ポンプ式90件)、次いで液状の製品が213件等であった。
年齢別の内訳では256件(41.6%)が9歳以下の子供の事例であった。
性別の内訳では女性が331件と全体の53.8%を占めた。
 
 (2) 原因製品別考察
 (殺虫剤)
殺虫剤(医薬品等を含む)に関する事例は、133件(21.6%)であった。極端な大量使用や燻煙後に十分に換気をせずに室内に入った事例など、誤使用と思われる例も見られた。
 (洗浄剤)
洗浄剤に関する事例は123件(20.0%)であり、そのうち最も多かったのが、次亜塩素酸系の製品で50件であった。そのうちの多くはポンプ式スプレー製品であった。
風呂場やトイレのような狭い場所で十分な換気をせずに使用した事例があった。
また、酸性物質と混合し、塩素ガスを発生させてしまった事例も未だにみられた。
塩素ガスは有毒であり、危険である。
屋内で使用する際には、換気状況が良好であることを確認のうえ、適正量を使用することが重要である。
 
 (3) 全般的な留意事項
 今回も、子供の健康被害に関する問い合わせが多くあった。保護者は家庭用品等の使用や保管には十分注意するとともに、事業者も子供のいたずらや誤使用等による健康被害が生じないような方策を施した製品開発が重要である。
 事故の発生状況をみると、使用方法や製品の特性について正確に把握していれば事故の発生を防ぐことができた事例も多数あったことから、消費者も日頃から使用前には必ず注意書をよく読み、正しい使用方法を守ることが重要である。未だに塩素ガスを発生させた事例が見られることからも、事業者にあっては、より安全性の高い製品開発に努めるとともに、消費者に製品の特性等について表示等により継続的な注意喚起をし、適正使用方法の推進を図る必要がある。

平成13年度家庭用品に係る健康被害病院モニター報告


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