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第2章 自殺予防対策
第1節 自殺予防対策の目的
 自殺予防対策の最終的な目的は、各年齢において自殺死亡率を減少させることであるが、そのためには、後述するさまざまな対策の積み重ねが必要である。これらの対策を一つ一つ進めることにより、自殺死亡率の減少とともに、すべての人々がより健康で暮らしやすく、生きがいを持てる社会の実現が図られることとなる。
  (参考) 平成12年(2000年)に策定された「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」においては、平成22年(2010年)までに自殺による死亡数を2万2千人に減らすこと、また同年に策定された「健やか親子21」においても、10代の自殺死亡率を減少することが、目標として設定されている。

第2節 自殺予防対策の理念及び視点
 自殺予防対策の実施に当たり、自殺を考えている人がどういう状況にあるかということを理解する努力が必要である。自殺を考えている人は、同時にいかに生きるかを考えているといわれており、自殺を考えている人を含めてすべての人々に対し、生きる勇気と力を取り戻させるような支援体制や環境をつくっていくことが重要である。一人ひとりが社会や他者とのつながりを持つための支援、自殺を考えている人への適切な支援、不幸にして自殺が行われた場合の周囲の者に対する適切な支援等を進めると同時に、これらの支援が円滑に行われるような環境づくりが必要である。

 また、生命の尊さや生きることの意味を考え、生きる誇りと自信を育てる教育や心の健康問題に関する正しい知識の普及・啓発等、心の健康の保持・増進に関する取組も重要であることは言うまでもない。さらに、自殺死亡者の増加には、「生きる不安」や「ひとりぼっち(孤独感)」の状況が背景にあることから、人の心が豊かに育ち、交流することができるような、人と人との絆を重視した「温かな社会づくり」が必要である。たとえば、「生きることを支える」ということを共通のテーマにして、地域の健康づくり活動を発展させた仲間づくり、参加意識・役割意識を育てるような地域活動等、生きる力を取り戻せるような活動も要求されている。

 自殺を効果的に予防していくためには、自殺の実態を継続的に把握しつつ、多角的な視点から対策を検討する必要がある。
 ○ 実施主体について
  ・国民、保健医療福祉関係機関、教育関係機関、マスメディア、事業者団体、労働組合、事業場、ボランティア団体、国及び地方公共団体等がそれぞれの特性を活かして役割分担を図りつつ、相互の連携を重視する視点
 ○ 対象者について
  ・自殺を考えている人や、自殺未遂者、その家族・友人等の周囲の者、さらに自殺死亡者の家族・友人等の周囲の者、各々のニーズに応じた支援と環境づくりを行う視点
  ・国民各層に対し、心の健康問題に関する正しい理解を普及・啓発する視点
 ○ 対策を行う場について
  ・個人に対する対策にとどまらず、家族・地域・職場での支援、環境づくり等、社会全体で対策を実施していく視点
 ○ 原因を踏まえた対策の在り方について
  ・実態調査等により自殺の背景・原因を十分に明らかにしつつ、適切に対策を企画する視点
  ・自殺の背景として重要な「うつ病」に関する対策の推進等を含め、自殺の背景・原因に応じて対策を実施していく視点
 ○ 段階別の予防対策について
  ・予防医学で用いられる一次、二次及び三次予防の考え方と同様に、自殺の原因等を評価し、自殺の蓋然性が低い段階でその予防を図ること(普及・啓発や教育:プリベンション)、現に起こりつつある自殺の危険に介入し、自殺を防ぐこと(危機介入:インターベンション)、不幸にして自殺が生じてしまった場合に他の人に与える影響を最小限とし、新たな自殺を防ぐこと(事後対策:ポストベンション)の3つの段階に応じ、対策を実施する視点


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