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厚生労働省発表
平成14年12月12日
労働基準局安全衛生部
化学物質調査課
課長  寺岡 忠嗣
調査官 角元 利彦
副主任中央労働衛生専門官
      樋口 清高
電話 03-3502-6756
    03-5253-1111
       内線5511, 5515

ダイオキシン類による健康影響等の調査結果について
―大阪府豊能郡美化センター等廃棄物焼却施設関係労働者―

 厚生労働省は、中央労働災害防止協会に「清掃作業従事者のダイオキシンばく露による健康影響に係る調査研究委員会(ダイオキシン健康影響調査委員会:委員長 高田 勗)」を設置し、廃棄物焼却施設労働者の健康影響について調査を実施している。今般、平成13年度に実施された大阪府豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査及び全国7施設(うち1施設は解体工事現場)の廃棄物焼却施設労働者の調査の結果判明した血液中ダイオキシン類濃度の分析結果等を報告する。
1. 豊能郡美化センター関係労働者の血液中ダイオキシン類濃度は、平成10年度から年々減少してきており、平成13年度調査の値は平成10年度調査の値の44.3%となっている。
2. 全国の廃棄物焼却施設労働者(6施設、104名)の血液中ダイオキシン類濃度は平均21.3pg-TEQ/g脂肪で、平成12年度に環境省が行った一般住民の測定値と同程度であった。また、廃棄物焼却施設解体工事現場労働者(1施設、6名)の血液中ダイオキシン類濃度は、解体前後の値に有意な差は認められず、いずれの値も20pg-TEQ/g脂肪台で、平成12年度に環境省が行った一般住民の測定値と同程度であった。
3. 医師による皮膚視診等の結果からは、豊能郡美化センター関係労働者、全国の廃棄物焼却施設労働者及び解体工事現場労働者のいずれもダイオキシン類のばく露によると疑われる所見は認められなかった。
4. 全国の廃棄物焼却施設労働者を対象とした健康影響調査は、平成11年度から3年間にわたり計26施設、452名について実施してきており、これらの対象者にダイオキシン類によると思われる明らかな健康影響は認められなかったところである。

(参考)
ダイオキシン類とは、ポリ塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン類(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDFs)及びコプラナーPCBをいう。
1pg(ピコグラム)とは、1グラムの1兆分の1の質量である。
TEQとは、ダイオキシン類の毒性を、最も毒性が強い2,3,7,8-TCDD(四塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン)の毒性に換算して表したものである。


(別添)

調査概要

1 豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査
(1)調査対象者
 豊能郡美化センター関係労働者のうち、焼却炉関連設備内作業の支援は行うが焼却炉関連設備内には立ち入らない者(13名)及び焼却炉関連設備内に立ち入って作業に従事する者(14名)のうち本人が希望した者17名を調査対象者とした。これは、平成10年度の調査でこれらの作業従事労働者の血液中ダイオキシン類濃度が高かったためである。
 なお、焼却炉関連設備とは、焼却炉、電気集じん機、湿式洗煙塔等をいう。
(2)血液中ダイオキシン類濃度
 調査対象者17名の血液中ダイオキシン類濃度は、平均126.7pg-TEQ/g脂肪(最小値19.6 pg-TEQ/g脂肪、最大値484.0 pg-TEQ/g脂肪)であった。平成10年度から継続して調査対象となっている17名の血液中ダイオキシン類濃度の平均値は、平成10年度286.3 pg-TEQ/g脂肪、平成11年度256.1 pg-TEQ/g脂肪、平成12年度152.3 pg-TEQ/g脂肪と年々減少してきており、平成13年度調査の値は平成10年度調査の値の44.3%となっている。

豊能郡美化センター関係労働者17名の
血液中ダイオキシン類濃度(平均値)の経年変化
図

(3)医師による問診及び皮膚視診
 平成10年度から継続して実施している医師による問診や、皮膚科医師による皮膚視診等の結果からは、ダイオキシン類のばく露によると疑われる所見を有する者は認められなかった。
(4)血液・血清生化学検査等
 血液・血清生化学検査及び免疫機能検査の結果、肝機能等、基準値の範囲を超える検査項目が認められたが、血液中ダイオキシン類濃度との関連からは、ダイオキシン類ばく露による影響とは判断できなかった。
 なお、肝炎と考えられる者が1名認められるが、飲酒等の生活習慣等の関与も考えられ、ダイオキシン類ばく露によるものとは判断できなかった。
(5)まとめ
 今回の調査の結果からは、ダイオキシン類ばく露によると思われる健康影響は認められなかった。

2 全国の廃棄物焼却施設労働者の健康影響調査(平成13年度)
(1)調査対象者
 自治体の協力が得られた一般廃棄物焼却施設3施設及び(社)全国産業廃棄物協会連合会を通じて協力が得られた産業廃棄物焼却施設3施設の計6施設の労働者104名を調査対象とした。また、併せて協力が得られた解体工事現場1ヶ所の労働者8名を対象に解体の前後に調査を行ったが、対象者のうち2名が解体後の調査時に欠席したため、調査対象者は解体前8名、解体後6名となった。
(2)血液中ダイオキシン類濃度
 廃棄物焼却施設労働者104名の施設ごとの血液中ダイオキシン類濃度は、平均21.3pg-TEQ/g脂肪(最小値3.5 pg-TEQ/g脂肪、最大値66.7 pg-TEQ/g脂肪)で、平成12年度に環境省が行った一般住民の測定値と同程度であった。

全国6施設の施設ごとの労働者の血液中ダイオキシン類濃度
(単位 pg-TEQ/g脂肪)
  対象者数 検査項目 平均値 最小値 最大値
施設A 14名 ダイオキシン類合計 17.7 8.5 34.1
PCDDs+PCDFs 10.8 5.8 16.4
(2,3,7,8-TCDD) (0.7) (0.1) (1.3)
コプラナーPCB 6.9 2.0 18.3
施設B 16名 ダイオキシン類合計 24.0 7.9 58.5
PCDDs+PCDFs 14.1 4.9 30.6
(2,3,7,8-TCDD) (1.1) (0.1) (1.9)
コプラナーPCB 9.9 1.5 27.9
施設C 22名 ダイオキシン類合計 21.5 8.0 66.7
PCDDs+PCDFs 12.4 5.2 24.5
(2,3,7,8-TCDD) (1.1) (0.1) (2.6)
コプラナーPCB 9.1 2.4 42.1
施設D 11名 ダイオキシン類合計 14.0 6.2 28.8
PCDDs+PCDFs 8.4 4.8 18.0
(2,3,7,8-TCDD) (1.0) (0.5) (1.9)
コプラナーPCB 5.6 1.3 16.8
施設E 12名 ダイオキシン類合計 18.3 3.5 43.1
PCDDs+PCDFs 10.9 2.7 22.7
(2,3,7,8-TCDD) (0.7) (0.1) (1.5)
コプラナーPCB 7.4 0.9 27.6
施設F 29名 ダイオキシン類合計 25.2 11.4 51.8
PCDDs+PCDFs 14.8 8.0 29.3
(2,3,7,8-TCDD) (1.2) (0.4) (2.4)
コプラナーPCB 10.4 3.4 22.5
全体 104名 ダイオキシン類合計 21.3 3.5 66.7
PCDDs+PCDFs 12.5 2.7 30.6
(2,3,7,8-TCDD) (1.0) (0.1) (2.6)
コプラナーPCB 8.7 0.9 42.1
 *ダイオキシン類合計の平均値は、PCDDs、PCDFs及びコプラナーPCBそれぞれの平均値の和である。

 また、解体工事労働者8名の解体前の血液中ダイオキシン類濃度は、平均20.8 pg-TEQ/g脂肪(最小値7.4 pg-TEQ/g脂肪、最大値60.2 pg-TEQ/g脂肪)であった。うち、解体後の調査時に欠席した2名を除く同一の6名の血液中ダイオキシン類濃度は、解体前が平均22.7 pg-TEQ/g脂肪(最小値7.4 pg-TEQ/g脂肪、最大値60.2 pg-TEQ/g脂肪)、解体後が平均24.1 pg-TEQ/g脂肪(最小値9.2 pg-TEQ/g脂肪、最大値61.2 pg-TEQ/g脂肪)であった。解体前後の値に有意な差は認められず、また、いずれの値も、平成12年度に環境省が行った一般住民の測定値とほぼ同じであった。

解体工事労働者8名の解体前の血液中ダイオキシン類濃度
(単位 pg-TEQ/g脂肪)
  検査項目 平均値 最小値 最大値
解体前 ダイオキシン類合計 20.8 7.4 60.2
PCDDs+PCDFs 10.6 6.0 24.6
(2,3,7,8-TCDD) (0.6) (0.1) (2.1)
コプラナーPCB 10.2 1.3 35.6
 *ダイオキシン類合計の平均値は、PCDDs、PCDFs及びコプラナーPCBそれぞれの平均値の和である。

同一解体工事労働者6名の解体前後の血液中ダイオキシン類濃度
(単位 pg-TEQ/g脂肪)
  検査項目 平均値 最小値 最大値
解体前 ダイオキシン類合計 22.7 7.4 60.2
PCDDs+PCDFs 11.4 6.0 24.6
(2,3,7,8-TCDD) (0.7) (0.1) (2.1)
コプラナーPCB 11.3 1.3 35.6
解体後 ダイオキシン類合計 24.1 9.2 61.2
PCDDs+PCDFs 12.8 7.2 26.2
(2,3,7,8-TCDD) (0.9) (0.5) (1.6)
コプラナーPCB 11.3 2.0 35.0
 *ダイオキシン類合計の平均値は、PCDDs、PCDFs及びコプラナーPCBそれぞれの平均値の和である。

(3)医師による問診及び皮膚視診
 労災病院の医師による問診(既往歴、現病歴、自覚症状等)や、皮膚科医師による皮膚視診等の結果からは、ダイオキシン類のばく露によると疑われる所見を有する者は認められなかった。
(4)血液・血清生化学検査等
 血液・血清生化学検査及び免疫機能検査の各項目と血液中ダイオキシン類濃度との関連を統計的に解析したところ、明らかな関係は認められなかった。
(5)まとめ
 本調査の結果、調査対象者に焼却施設内作業に基づくダイオキシン類ばく露によると思われる健康影響は認められなかった。

 過去3年間の全国の廃棄物焼却施設労働者の調査結果分析
 全国の廃棄物焼却施設労働者を対象とした調査は、平成11年度から13年度までの3年間にわたり計26施設、452名について実施してきたところである。
 このうち、血液の採取ができなかった等により測定ができなかった者を除いた441名の血液中ダイオキシン類濃度は、平均25.5 pg-TEQ/g脂肪(最小値3.5 pg-TEQ/g脂肪、最大値133 pg-TEQ/g脂肪)であった。
 調査対象者のうち全ての検査項目を満たしている者から、性差を考慮して女性を除いた412名について、血液中ダイオキシン類濃度と各種検査項目の関連を統計的に解析した結果、焼却施設内作業に基づくダイオキシン類ばく露によると思われる明らかな健康影響は認められなかった。


(参考)
 ○一般住民の血液中ダイオキシン類濃度の測定結果例
大阪府能勢町地域及び埼玉県地域住民の血液中ダイオキシン類濃度
(単位 pg-TEQ/g脂肪)
  大阪府能勢町地域 埼玉県地域
  施設周辺地区 対照地区 施設周辺地区1 施設周辺地区2 対照地区
12年度 28 33 23 24 22
11年度(参考) 29 30 27 27 -
平成12年度環境省調査より

 ○皮膚視診については、労災病院の皮膚科医師により次の点を中心に診察を行った。
(1)過去の事例からダイオキシンによる皮膚症状として予測されるざ瘡様皮疹の有無
(2)対象者から訴えのあった皮膚症状
(3)露出部分に見られた皮膚症状

 ○血液・血清生化学検査については、以下の25項目について行った。
赤血球数(万/ul)、白血球数(/ul)、ヘモグロビン(g/dl)、ヘマトクリット値(%)、血小板数(万/ul)、総蛋白(g/dl)、アルブミン(g/dl)、総ビリルビン(mg/dl)、GOT(IU/l)、GPT(IU/l)、乳酸脱水素酵素(IU/l)、アルカリフォスファターゼ(IU/l)、γ-GTP(IU/l)、ロイシンアミノペプチダーゼ(IU/l)、クレアチンキナーゼ(IU/l)、アミラーゼ(IU/l)、総コレステロール(mg/dl)、HDLコレステロール(mg/dl)、中性脂肪(mg/dl)、血清鉄(μg/dl)、尿素窒素(mg/dl)、クレアチニン(mg/dl)、尿酸(mg/dl)、血糖(mg/dl)、HbA1c(%)

 ○免疫機能検査については、リンパ球を分離し、PHAによるリンパ球幼若化検査、CON-Aによるリンパ球幼若化検査、NK細胞活性検査、モノクローナル抗体によるリンパ球表面マーカーの解析(CD3,CD4,CD8,CD4/CD8比、CD19,CD56)を実施した。


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