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(4) 少子化、女性の社会進出、就業形態の変化に対する対応

(4−1) 公的年金制度における次世代育成支援策

《少子・高齢化の進行と総合的な次世代育成支援策の取組》

 我が国で進行している少子・高齢化は、欧米主要国と比較しても、程度とその進行スピードが著しく、将来の我が国の社会経済全体に大きな影響を及ぼすことが予想される。このような国際的にも著しい程度の少子化の進行が継続するという見通しを前に、職場や地域などを含めた社会全体や政府をあげて、従来にも増して本格的に次世代育成支援策に取り組むことが必要である。

《公的年金制度における次世代育成支援策》

 このように少子化に対して総合的な次世代育成支援対策が講じられようとしている中で、公的年金制度においてもその一環として次世代育成支援に向けた対応をどのように考えていくかが課題となる。

 これについては、公的年金制度において次世代育成支援を行うことに肯定的な見解がある。その理由としては、(1)公的年金制度にとって将来の高齢者世代を支える現役世代となる次世代を育成することは本質的に重要な課題であるという考えや、(2)単に育児支援を果たす者への配慮という視点だけでなく、世代を超えた支え合いである公的年金制度において、次世代の育成に対して社会(加入者)全体で支援し、子育てについて公的年金制度を中立的な仕組みとする考え、(3)さらに、今後、一層高くなる保険料を負担しながら次世代を育成する現役世代の理解を得るため、次世代育成支援という形で負担の還元を行うことも有効という考え方等が挙げられる。
 これに対して、公的年金制度は老後の所得保障を行うために運営されているものであり、趣旨の異なる次世代育成支援は保育サービスの充実等の子育て環境の整備で考えるべきではないかといった否定的な見解もある。

 現在、公的年金制度においても、育児休業期間に対して一定の配慮措置を講じるという形で次世代を育成する者への支援が行われているが、公的年金制度における次世代育成支援をさらに拡充すべきという考え方からは、下記のような方法が考えられる。

(1) 育児期間に対する配慮措置の拡充

   現在の育児休業期間に対する配慮措置を拡充し、多様な働き方の実現を図ることと併せて、育児期間において収入が下がり又はなくなる場合に、将来の年金額計算において配慮を行うことなどについて検討する。
 この場合、次のような点が論点となる。
  •  現在の配慮措置は第2号被保険者のうち育児休業取得者のみを対象としているが、第2号被保険者として育児期間も働き続けている者、第1号被保険者、さらには育児を理由として離職し第3号被保険者となった者等も対象とするかどうか

  •  配慮措置の具体的内容として、報酬比例年金について、年金額算定上の賃金の配慮や加入期間の加算といった措置を講じるかどうか

  •  第1号被保険者に対して配慮措置を採ろうとする場合、基礎年金の給付で配慮を行うことはできないが、保険料負担の面で配慮を行うかどうか

(2) 年金資金を活用した次世代育成支援策の検討

   教育に伴う経済的負担の問題が少子化の背景にあると指摘されていることを踏まえ、学生が安心して学べるよう育英奨学金を充実させることと併せて、若者自身が資金を借りて就学し、社会の「支え手」となることを社会全体で支援するとともに、若者が公的年金を身近に感じられるよう、年金資金を活用した貸付制度も含めて新たな貸付制度についても検討する。

 いずれにしても、平成16年の年金改革では、少子・高齢化の急速な進行とその克服に向けた政策努力を年金制度においてどのように受け止めて年金改革を考えていくかについて、幅広い観点に立って十分に検討していくとともに、公的年金制度における次世代育成支援についても、その財源の在り方を含めて、今後、さらに議論を深め、適切な結論を得ることとする。

(4−2) 支え手を増やす取組

《支え手を増やす取組の意義》

 今後、急速な少子・高齢化の進行が見込まれる中で、我が国経済社会を活力あるものとしていくためには、社会の支え手を増やすことが重要な課題である。

 また、雇用の流動化など、就業形態を含めて個人の生き方が多様化する中で、働く意欲を持つ者が多様な形で働き、その能力を発揮できる社会を構築していくことが必要であり、このためには社会保障制度や雇用を含む社会・経済制度全体を改革していくことが、強く求められている。

 年金制度においても、女性や高齢者等の支え手を増やすことは、支え手自身の年金保障の充実につながるとともに、少子高齢社会においても安定的な制度運営を行っていく上で重要である。

 また、就労抑制的な仕組みについては見直しを進め、個人にとって多様な選択が可能となる制度としていくことが必要である。

 さらに、女性や高齢者等の支え手を増やす取組に当たっては、高齢者雇用の推進、短時間労働者の能力の有効発揮、さらには多様就労型ワークシェアリングなど雇用政策面での取組との連携が重要である。

《多様な働き方への対応−短時間労働者等に対する厚生年金の適用》

 就労形態の多様化に伴い、厚生年金の適用のなかった者に対して年金保障が充実されるようにするとともに、年金制度の支え手を増やす観点から、短時間労働者等に対する厚生年金の適用を行う方向で検討する。

 また、短時間労働者等に対する厚生年金の適用は、多様な働き方にふさわしい年金保障の充実を通じて、その処遇・労働条件の改善を図る上での基盤整備にも資する。

 短時間労働者等に対する厚生年金の適用に当たって、具体的な給付と負担の在り方をどのようにするかについては、下記に掲げる論点等について、今後更に検討を続ける。

(1)  新たに厚生年金が適用される者に関する給付と負担の在り方について、どのように考えるか。また、新たな保険料負担が生ずることについて、理解が得られるか。

(2)  短時間労働者等に対して厚生年金の適用を拡大することにより、賃金の低い被保険者が増加することになるが、このことが年金財政に対してどのような影響を与えるか。

(3)  短時間労働者等について、医療保険における取扱いをどう考えるか。

《高齢者の就労促進−在職老齢年金制度の見直しなど》

 現在、年金の支給開始年齢が65歳へ段階的に引き上げられる途上にあるが、高齢者(特に60歳台前半層)の就労を促進していく観点から、現行の在職老齢年金の見直しや、就労(賃金、働き方等)に対してできる限り中立的となる新たな仕組み等について、検討する。例えば、60歳台前半の年金受給者が就労する場合には、年金を65歳以降に繰り下げて受給することを選択できる仕組みなどが考えられる。

《年金改革と次世代育成支援策、雇用対策の総合的な推進》

 雇用対策は、働き方の見直し等を通じて次世代育成の支援となるとともに、女性や高齢者等の支え手を増やすことを通じて、女性の年金の充実とともに年金制度の安定化にもつながる。また、次世代育成支援策は、将来の勤労世代を確保するとともに、年金制度の将来の支え手を増やすこととなる。

 このように、平成16年の年金改革と少子化対策、雇用対策は総合的に推進していくことが必要であり、これらを一体的に進めていく。

(4−3) 女性と年金

《女性と年金》

 女性の社会進出、家族や就業の形態の多様化等が進み、年金制度が女性のライフスタイルの多様化に対応しきれなくなっている。このため、「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会」では、「女性自身の貢献がみのる年金制度」を目指して、個人の多様な選択に対して中立的な制度を構築するとともに、年金の支え手を増やし、併せて女性に対する年金保障の充実を図るという視点から、第3号被保険者制度等の年金制度設計上検討していくべき具体的な課題について、その考え方や論点をとりまとめたところである。

 今後、この検討会報告書を踏まえつつ、さらに幅広い議論を重ね、国民的合意が形成され、適切な結論が見出されたものについては、平成16年の年金改革に盛り込む。

《第3号被保険者制度の在り方−検討会における6つの見直し案》

 第3号被保険者制度については、上述の検討会の報告書において、「社会保障制度としての年金制度の基本に関わる大きな問題である。・・・必要な改革が行われることを強く望む。」とされ、第3号被保険者制度の見直しに関して6つの案に整理し、それぞれの提案の利点及び論点について、踏み込んだ議論が行われた。

第3号被保険者に関する保険料負担の考え方
現行 【第3号被保険者に係る保険料負担を負担能力に応じて負担―夫―定率負担】
 通常は所得のない第3号被保険者に独自の保険料負担を求めることとせず、第3号被保険者に係る拠出金負担は、夫の加入する被用者年金制度全体で定率負担するもの。
第I案 【第3号被保険者に係る保険料負担を負担能力に応じて負担―妻―定率負担】
 潜在的な持分権の具体化による賃金分割を行った上で、妻自身にも分割された賃金に対して定率の保険料負担を求めるという仕組み。
 個人で負担し個人で給付を受けるという考え方を、応能負担の仕組みを維持しながら貫くことができ、片働き、共働きを通じて、夫と妻それぞれに給付と負担の連動が明確となる。また、報酬比例部分も含め、離婚した場合の年金給付の在り方が明確となる。
第II案 【第3号被保険者に係る保険料負担を受益に着目して負担―妻―定額負担】
 第2号被保険者の定率保険料は第3号被保険者の基礎年金に係る拠出金負担分を除いて設定し、それとは別に、第3号被保険者たる妻自身に、第1号被保険者と同額(現在13,300円)の保険料負担を求めるという仕組み。
 第3号被保険者も含めて個々人全員が受益に着目した負担という考え方から保険料負担を行うことにより、第3号被保険者に係る保険料負担についての不公平感を解消できる。
第III案 【第3号被保険者に係る保険料負担を受益に着目して負担―夫―定額負担】
 第2号被保険者の定率保険料は第3号被保険者の基礎年金に係る拠出金負担分を除いて設定し、第3号被保険者のいる世帯の夫には、それに第1号被保険者の保険料と同額(13,300円)を加算した保険料負担を求めるという仕組み。
 所得のある者から保険料負担を求めるという考え方を貫きつつ、受益に着目した負担という考え方を導入することにより、第3号被保険者に係る保険料負担についての不公平感を解消できる。
第IV案 【第3号被保険者に係る保険料負担を受益に着目して負担―夫―定率負担】
 まず第2号被保険者の定率保険料を第3号被保険者の基礎年金に係る拠出金負担分を除いて設定し、第3号被保険者のいる世帯の夫には、それに第3号被保険者に係る拠出金負担に要する費用を第3号被保険者のいる世帯の夫の賃金総額で割った率を加算した保険料負担を求めるという仕組み。
 被用者の保険料負担に係る応能負担の考え方を貫きつつ、第3号被保険者について世帯単位での受益に着目した負担という考え方を導入することにより、第3号被保険者に係る保険料負担についての不公平感を解消できる。
第V案 【第3号被保険者に係る保険料負担をより徹底した形で負担能力に応じて負担―夫―定率負担】
 夫の賃金が高くなると専業主婦世帯の割合が高まることに着目し、高賃金者について、標準報酬上限を引き上げて、保険料の追加負担を求めるという仕組み。
 片働き世帯が相対的に高賃金であることに着目して、高賃金者の保険料負担を引き上げることにより、実質的に第3号被保険者に係る保険料負担についての不公平感を縮減できる。
第VI案  第3号被保険者を、育児・介護期間中の被扶養配偶者に限るという仕組み(その余の期間については、他案のいずれかの方法で保険料負担を求める。)。
 第3号被保険者としてのメリットを受けられる期間を育児等の活動を行っている期間に限定することにより、第3号被保険者に係る保険料負担についての不公平感を縮減できる。

注:  上記表では、便宜上、第2号被保険者=夫、第3号被保険者=妻として記載している。

 これら6つの見直し案の考え方等を踏まえ、第3号被保険者制度の見直しに向け、以下の4つの案に整理した。今後、これらをもとに、さらに議論を深め、適切な結論を得ることとする。

《夫婦間の年金権分割案(方法I)》

 上記第I案は、様々な生活実態に応じて必要な保障を行う公的年金の機能を確保しつつ、個人の単位での給付と負担の関係を完結するため、賃金分割という仕組みを取り入れる考え方である。

 しかしながら、潜在的な持分権の具体化による賃金分割という仕組みは、現在、我が国の税制、労働法制等の社会制度に組み込まれていない。こうした中で、現段階で年金制度が先行して採用することには、慎重な判断が求められる。また、雇用関係のない第3号被保険者について、事業主負担を求めることや、事業主を経由した保険料の特別徴収(いわゆる天引き徴収)は困難と考えられる。さらに、医療保険について同様に見直すのかという問題もある。

 このような論点を踏まえつつ、第I案の考え方を生かすとすれば、保険料負担については、従来どおり、第2号被保険者が勤務する事業所を通じて、その報酬額に応じた保険料を納付することとする一方、年金給付算定上、世帯賃金が分割されたものとして評価するという仕組みも考えられる。いわば、夫婦の間での年金権の分割を行うことにより、同一世帯内において、個人がそれぞれ負担を行い、給付を受けると擬制する考え方である。

《負担調整案(方法II)》

 上記第II案、第III案及び第IV案は、第3号被保険者に関して、基礎年金という受益に着目した何らかの保険料負担を求める考え方である。

 第II案及び第III案のように、基礎年金について受益に応じた負担を求めるという考え方を徹底させるとすれば、第3号被保険者だけではなく、第2号被保険者についても、基礎年金に関して国民年金保険料と同等の定額負担を求めることとなる。しかしながら、そうした場合、現在やむを得ず第1号被保険者に対して採られている定額保険料の仕組みを一般化し、定額保険料の負担上昇に伴う問題を一層拡大することとなる。

 この考え方を修正しつつ生かすとすれば、基礎年金に関する負担のすべてを受益に応じた負担とするのではなく、被用者グループにおいて、応能負担(定率保険料)と応益負担(定額保険料)を組み合わせる(=負担の一部を受益に応じた負担とする)ことが考えられる。(方法II−1)

 また、第IV案のように、第3号被保険者に関する保険料負担を、被用者グループ全体ではなく、第3号被保険者を抱える第2号被保険者の間で定率負担により求めるという考え方もある。(方法II−2)

《給付調整案(方法III)》

 女性と年金検討会では十分に検討されていないが、第3号被保険者に関して、保険料負担を求めないが、基礎年金給付を減額するという方法も考えられる。

 この場合、第3号被保険者に関する基礎年金給付の在り方としては、例えば、次のような仕組みが考えられる。

(1)  国民年金の免除者と同様の取扱いとし、給付は国庫負担部分に限る。この場合、国民年金の免除者と同様の扱いをすることについて合意が可能か等の問題がある。(方法III−1)

(2)  現行制度では、被用者年金の被保険者全体の保険料拠出により、第3号被保険者に関する保険料負担全額を賄っているが、これを保険料負担の一部分に限ることにより、給付についても一部とする。(例えば、国民年金の半額免除者と同様の扱いとする。)(方法III−2)

《第3号被保険者縮小案(方法IV)》

 現実に約1,000万人の第3号被保険者が存在していること等を踏まえ、当面、現行の第3号被保険者制度を維持しつつ、短時間労働者等に対する厚生年金の適用及びそれに伴う被扶養配偶者認定基準の見直しにより、その対象者を縮小していくという仕組みが考えられる。

 この場合、片働き世帯が共働き世帯よりも相対的に高賃金であることに着目して、標準報酬上限を引き上げて保険料の追加負担を求める一方、現行の標準報酬の上限を超える部分は給付に反映されない仕組みとし(女性と年金検討会の上記第V案)、実質的に第3号被保険者に関する保険料負担についての不公平感を縮減することも考えられる。

《育児期間等に関する取扱い》

 なお、第3号被保険者を育児・介護期間中の被扶養配偶者に限るという考え方(女性と年金検討会の上記第VI案)については、前述の年金制度における次世代育成支援策の在り方と併せて検討する。

《4つの案の仕組みの概略、主な論点の整理》

 以上の4つの案に関して、現時点で考えられる仕組みの概略や主な論点を整理すると、以下のとおりである。

1 夫婦間の年金権分割案 (方法I)

《考え方》

 様々な生活実態に応じて必要な保障を行う公的年金の機能を確保しつつ、年金給付算定上、世帯の賃金が分割されたものとして評価することにより、夫婦の間で年金権の分割を行い、同一世帯内において個人はそれぞれ負担を行い、給付を受けると擬制する考え方。

《仕組みの概略》

 第2号被保険者と第3号被保険者の夫婦において、保険料負担は、従来どおり、第2号被保険者が勤務する事業所を通じて、その標準報酬に応じた保険料を納付する。

 年金給付については、第2号被保険者の標準報酬が第3号被保険者との間で分割されたものとして評価する。この場合、第3号被保険者は、基礎年金に加えて、報酬比例年金を有する。

夫婦間の年金権分割案(方法T)

《考えられる主な論点》

(1)  障害厚生年金や遺族厚生年金を含め、第2号被保険者の年金権が減少することとなるが、これについてどう考えるか。

(2)  支え手を増やすという平成16年の年金改革の基本的方向性との関係について、どう考えるか。

(3)  女性と年金問題のうち、離婚時の年金分割は別途検討すべき課題であるが、年金権の分割の考え方を、離婚時だけではなく、婚姻期間中にも及ぼすことについて、どう考えるか。また、第2号被保険者と第3号被保険者の夫婦以外の夫婦に対しても、年金権の分割の仕組みを整備するかどうか。

(4)  財産権である年金受給権保護の観点からは、被用者とその被扶養配偶者に対して夫婦間の年金権分割の仕組みを強制することは困難ではないかとも考えられる。この場合、選択的な仕組みとすることが必要であるが、夫婦間の年金権分割を選択しない場合の取扱いについて、どう考えるか。

2 負担調整案 (方法II)

《考え方》

 第3号被保険者に対し、基礎年金という受益に着目した何らかの保険料負担を求める考え方。具体的には、2つの仕組みが考えられる。

(1) 方法II−1

《仕組みの概略》

 基礎年金に関する負担について、被用者グループにおいて、応能負担(定率保険料)と応益負担(定額保険料)を組み合わせる。(負担の一部を受益に応じた負担とする。)

 例えば、第2号及び第3号被保険者に対して一律に国民年金保険料の半額(現在は、13,300円/2=6,650円)に相当する定額保険料の負担を求め、残りの費用については第2号被保険者の間で定率で負担する。

負担調整案(方法Uー1)

《考えられる主な論点》

(1)  受益に着目した負担を求める考え方を導入することについて、どう考えるか。

(2)  現在やむを得ず第1号被保険者に対して採られている定額保険料の仕組みを被用者グループにも一部及ぼすことにより、定額保険料の負担上昇に伴う問題が被用者グループにも及ぶことについて、どう考えるか。

(3)  国民年金保険料の半額に相当する定額保険料を第2号及び第3号被保険者に対して求めることについて、第1号被保険者との公平性の観点を含め、どう考えるか。

(4)  医療保険についても同様に見直しして、被扶養配偶者の受益に着目した保険料負担を求めることとするかどうか。

(2) 方法II―2

《仕組みの概略》

 まず第2号被保険者の定率保険料を第3号被保険者の基礎年金に関する拠出金負担分を除いて設定する。

 第3号被保険者に関する拠出金負担に要する費用を、第3号被保険者を抱える第2号被保険者の間で定率で負担する。

負担調整案(方法Uー2)

《考えられる主な論点》

(1)  受益に着目した負担を求める考え方を導入することについて、どう考えるか。また、受益に応じた負担であるにもかかわらず、第3号被保険者を抱える第2号被保険者の中で、報酬の高い者の方が大きい負担を負うことについて、どう考えるか。

(2)  片働き世帯の第2号被保険者に課される保険料率が、共働き世帯の夫と妻に課されるものよりも高くなることについて、事業主の理解が得られるか。また、雇用行動に何らかの影響を及ぼす可能性はないか。

(3)  世帯として同一の給与収入がある場合、年金給付の太宗を占める老齢年金に関して、世帯としての給付が同一であるにもかかわらず、片働き世帯の方が共働き世帯よりも負担が重くなるというアンバランスについて、どう考えるか。

(4)  被用者間での違いは、第3号被保険者の有無だけではなく、例えば性別の違い(平均的には、女性の方が給付期間が長い。)や子供の有無(次世代育成の負担を年金制度としては考慮していない。)のように様々なものがある中で、第3号被保険者の有無に着目して保険料率に差を設けることについて、どう考えるか。社会保険制度の下で国民が共有すべき社会的なリスクをどう考えるか。

(5)  医療保険についても同様に見直しして、被扶養配偶者の受益に着目した保険料負担を求めることとするかどうか。

3 給付調整案 (方法III)

《考え方》

 第3号被保険者に対し、保険料負担を求めない代わりに、基礎年金給付を減額する考え方。具体的には、2つの仕組みが考えられる。

(1) 方法III−1

《仕組みの概略》

 第3号被保険者について国民年金の免除者と同様の取扱いとし、基礎年金給付は国庫負担部分に限る。

 現在であれば、基礎年金給付は1/3となり、基礎年金国庫負担割合の1/2への引上げ後であれば、基礎年金給付は1/2となる。

 第3号被保険者が基礎年金の満額給付を得るために、任意の追加納付制度を設けることも考えられる。

給付調整案(方法Vー1)

《考えられる主な論点》

(1)  第3号被保険者期間に関する基礎年金の給付水準が下がることについて、どう考えるか。

(2)  第3号被保険者を国民年金の免除者と同様の扱いとすることについて、どう考えるか。また、「原則として免除」という被保険者類型を設けることについて、どう考えるか。

(3)  第3号被保険者を国民年金の免除者と同様に取り扱うことから、基礎年金拠出金単価を算定する際の拠出金算定対象者数から第3号被保険者を除くことになるため、結果として基礎年金拠出金単価が高くなる。

(2) 方法III−2

《仕組みの概略》

 現行制度では、被用者年金の被保険者全体の保険料拠出により、第3号被保険者に関する保険料負担全額を賄っているが、これを保険料負担の一部分に限ることにより、基礎年金給付についても一部とする。

 この場合、例えば、国民年金の半額免除者と同様の扱いとすると、国庫負担割合が1/2であれば、基礎年金給付は3/4となる。

 方法III−1同様、第3号被保険者が基礎年金の満額給付を得るために、任意の追加納付制度を設けることも考えられる。

給付調整案(方法Vー2)

《考えられる主な論点》

(1)  第3号被保険者期間に関する基礎年金の給付水準が下がることについて、どう考えるか。

(2)  被用者年金の被保険者全体の保険料拠出により、第3号被保険者に関する保険料負担の一部を賄うという考え方について、どう考えるか。また、第3号被保険者を国民年金の免除者と同様の扱いとすることについて、どう考えるか。

(3)  第3号被保険者を国民年金の半額免除者と同様に取り扱うとすれば、基礎年金拠出金単価を算定する際の拠出金算定対象者数として、第3号被保険者を1/2人と評価することになるため、結果として基礎年金拠出金単価が高くなる。

4 第3号被保険者縮小案(方法IV)

《考え方》

 現実に約1,000万人の第3号被保険者が存在していること等を踏まえ、当面、現行の第3号被保険者制度を維持しつつ、その対象者を縮小していく考え方。

《仕組みの概略》

 短時間労働者等に対する厚生年金の適用拡大及びそれに伴う被扶養配偶者認定基準の見直しにより、その対象者を縮小していく。

 この場合、片働き世帯が共働き世帯よりも相対的に高賃金であることに着目して、標準報酬上限を引き上げて保険料の追加負担を求める一方、現行の標準報酬の上限を超える部分は給付に反映されない仕組みとし、実質的に第3号被保険者に関する保険料負担についての不公平感を縮減することも考えられる。

第3号被保険者縮小案(方法W)

《考えられる主な論点》

 第3号被保険者制度として残った者の状況も踏まえて、さらに制度そのもの在り方について、どう考えるか。


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