1 | 再分配による所得分布の変化(表1) |
(1) | 平成10年の平均当初所得(年額)は583.1万円、平均再分配所得は612.9万円であった。 |
(2) | 再分配によって、100万円未満、900万円以上の所得階級の世帯数が減少し、100万円以上900万円未満の世帯数が増加した。つまり、再分配後の世帯分布は当初の分布より中央に集中しており、再分配により所得格差が縮小していることがわかる。 |
2 再分配による十分位階級別所得構成比の変化(表2)
(1) | 表2は当初所得及び再分配所得について、十分位階級別の所得構成比を示したものである。 所得の十分位階級とは、世帯を所得の低い方から高い方に並べてそれぞれの世帯数が等しくなるように十等分したもので、低い方のグル−プから第1・十分位、第2・十分位……第10・十分位という。 所得の構成比は所得総額に対する各階級の所得額の割合、累積構成比はそれを第1・十分位から順次累積したものである。 |
(2) | 第1及び第2・十分位の当初所得の累積構成比は0.8%であるが、再分配所得の累積構成比は4.8%と4ポイント上昇している。 第6〜10・十分位では再分配所得の構成比が当初所得の構成比を下回っており、特に第10・十分位の構成比は、当初所得の31.3%から再分配所得では28.2%に3.0ポイント低下している。 |
(3) | 前回調査(平成8年)と比較すると、当初所得については第2〜第7・十分位で構成比が低下し、第8〜第10・十分位で上昇している。再分配所得では第1〜8・十分位で構成比が低下し、第10・十分位で上昇している。 |
3 再分配によるジニ係数の変化(表3)
(1) | 所得分配・所得再分配の状況は、世帯を所得の低い順に並べ、世帯数の累積比率を横軸に、所得額の累積比率を縦軸にとって描いたロ−レンツ曲線によっても観察できる。所得が完全に均等に分配されていれば、ロ−レンツ曲線は、原点を通る傾斜45度の直線(均等分布線)に一致し、不均等であればあるほどその直線から遠ざかる。一世帯が所得を独占し、他の世帯の所得がゼロである完全不均等の場合には、ロ−レンツ曲線はABC線になる。(図1) |
(2) | ジニ係数は、ロ−レンツ曲線と均等分布線とで囲まれた面積の均等分布線より下の三角形の面積に対する比率によって、分配の均等度を表わしたものである。したがって、ジニ係数は0から1までの値をとり、0に近いほど分布が均等、1に近いほど不均等ということになる。 |
(3) | 平成11年調査では当初所得のジニ係数0.4720に対して再分配所得のジニ係数は0.3814となり、再分配によって均等化が進んでいる。 | ||||
(4) | 再分配によるジニ係数の改善度は、19.2%で、過去の調査に比べて最高の値となっている。 (注)
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(5) | 社会保障による改善度は、17.1%で前回の15.7%より改善の度合いが大きく、過去の調査に比べて最高の値となっている。 |
4 当初所得階級別一世帯当たり平均金額(表4、図2)
(1) | 一世帯当たり平均当初所得は583.1万円であり、この当初所得から税金(54.1万円)、社会保険料(54.0万円)を差し引き、社会保障給付(137.9万円)を加えて、再分配所得は612.9万円となっている。 |
(2) | 再分配の状況を当初所得階級別にみると、当初所得が500万円未満の階級で再分配係数がプラス(つまり、再分配所得が当初所得を上回っている。)となっている。 |
(3) | 当初所得に対する社会保障の受給総額の比率は、23.7%であり、社会保険料の比率9.3%との差し引き14.4%が一世帯当たり平均で社会保障によってプラスになっている。 |
社会保障の受給額の比率(B) 23.7% |
− | 社会保険料(A) 9.3% |
=14.4% |
当初所得階級 | 当初 所得 (A) (万円) |
税・社会保険料 控除前所得 (万円) |
再分配 所得 (B) (万円) |
再分配係数
|
拠出(万円) | 受給 総額 (万円) |
|||||
税金 | 社会 保険料 |
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総数 | 583.1 | 665.7 | 612.9 | 5.1 | 54.1 | 54.0 | 137.9 | ||||
50 万円未満 | 4.6 | 212.2 | 281.1 | 5,971.9 | 7.4 | 12.1 | 295.9 | ||||
50 〜 100 | 74.6 | 203.2 | 252.6 | 238.4 | 7.4 | 12.0 | 197.4 | ||||
100 〜 150 | 123.1 | 208.0 | 219.0 | 77.9 | 5.8 | 14.1 | 115.8 | ||||
150 〜 200 | 171.4 | 263.3 | 297.3 | 73.5 | 11.2 | 18.6 | 155.7 | ||||
200 〜 250 | 221.4 | 296.2 | 316.5 | 43.0 | 13.1 | 23.1 | 131.3 | ||||
250 〜 300 | 270.7 | 350.0 | 367.7 | 35.8 | 15.0 | 34.1 | 146.1 | ||||
300 〜 350 | 319.6 | 389.6 | 383.3 | 19.9 | 19.0 | 35.7 | 118.4 | ||||
350 〜 400 | 371.0 | 436.5 | 424.2 | 14.3 | 22.4 | 37.9 | 113.6 | ||||
400 〜 450 | 421.5 | 483.0 | 464.0 | 10.1 | 27.4 | 42.9 | 112.8 | ||||
450 〜 500 | 472.3 | 528.2 | 493.4 | 4.5 | 29.7 | 49.3 | 100.1 | ||||
500 〜 600 | 544.9 | 588.7 | 538.3 | -1.2 | 35.3 | 56.0 | 84.7 | ||||
600 〜 700 | 643.9 | 689.1 | 619.3 | -3.8 | 45.6 | 64.4 | 85.4 | ||||
700 〜 800 | 743.6 | 791.0 | 703.1 | -5.4 | 56.2 | 76.2 | 92.0 | ||||
800 〜 900 | 847.0 | 891.2 | 780.9 | -7.8 | 68.6 | 83.7 | 86.2 | ||||
900 〜 1,000 | 943.1 | 983.4 | 866.8 | -8.1 | 84.3 | 83.3 | 91.3 | ||||
1,000 万円以上 | 1,560.7 | 1,614.1 | 1,372.2 | -12.1 | 183.9 | 113.2 | 108.6 |
図2 当初所得階級別一世帯当たり再分配金額
5 世帯類型別所得再分配状況(表5)
(高齢者世帯)
(1) | 高齢者世帯の平均当初所得は122.2万円であるが、再分配所得は392.9万円、再分配係数は221.4%となっている。 |
(2) | 高齢者世帯の社会保障給付の内訳は、年金・恩給68.4%、医療30.2%、その他1.3%となっている。 |
(母子世帯)
母子世帯の平均当初所得は198.9万円であるが、再分配所得は239.1万円であり、再分配係数は20.2%となっている。
6 世帯主の年齢階級別所得再分配状況(表6)
(1) | 世帯主の年齢階級別にみると、平均当初所得が最も高いのは50歳代(853.3万円)で、次いで40歳代(741.9万円)、30歳代(609.9万円)の順となっている。 |
(2) | 再分配所得については、50歳代(771.2万円)、40歳代(677.8万円)、60歳代(612.3万円)の順となっている。 |
(3) | 再分配係数をみると、30歳代(−10.3%)、50歳代(−9.6%)、40歳代(−8.6%)が低くなっており、再分配係数がプラスになるのは60歳以上になってからである。 |
(1) | 地域ブロック別にみると、平均当初所得が最も高いのは、東海(678.3万円)で、次いで北陸(645.9万円)、関東I(623.3万円)の順となっており、最も低いのは、南九州(455.3万円)となっている。 |
(2) | 再分配所得については、東海(688.0万円)が最も高く、次いで北陸(673.0万円)、関東II(630.8万円)の順となっており、最も低いのは北海道(525.8万円)となっている。 |
地域ブロックの分類
北海道 | |
東北: | 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県 |
関東I: | 埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県 |
関東II: | 茨城県、栃木県、群馬県、山梨県、長野県 |
北陸: | 新潟県、富山県、石川県、福井県 |
東海: | 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県 |
近畿I: | 京都府、大阪府、兵庫県 |
近畿II: | 滋賀県、奈良県、和歌山県 |
中国: | 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県 |
四国: | 徳島県、香川県、愛媛県、高知県 |
北九州: | 福岡県、佐賀県、長崎県、大分県 |
南九州: | 熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 |