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 平成14年9月6日
食品保健部企画課
担当 : 林 ・小澤 〈内線2446〉


食品衛生法の一部を改正する法律(平成14年法律第104号)の
施行について

 9月6日、各都道府県知事等に対して、別添のとおり通知いたしましたので、お知らせ致します。




食発第0906001号
平成14年9月6日





 都道府県知事 
 政令市市長
 特別区区長



殿

厚生労働省医薬局食品保健部長     



食品衛生法の一部を改正する法律(平成14年法律第104号)の施行
について


 平成14年8月7日付けで公布された「食品衛生法の一部を改正する法律(平成14年法律第104号。以下「改正法」という。)」が、平成14年9月7日付けで施行される。
 また、改正法の施行のため、地域保健対策強化のための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う特別区の事務等の経過措置に関する政令の一部を改正する政令(平成14年政令第293号。以下「改正政令」という。)が同年9月4日に、食品衛生法施行規則の一部を改正する省令(平成14年厚生労働省第118号。以下「改正省令」という。)が同月6日に公布され、それぞれ同月7日に施行される。
 今回、改正法により新たに設けられる食品衛生法(昭和22年法律第233号。以下「法」という。)第4条の3及び第9条の2の規定(これらの規定を法第29条第1項において準用する場合を含む。以下「新設規定」という。)並びに改正省令の趣旨並びに内容並びに施行に当たり留意すべき事項は、下記のとおりであるので、ご了知頂くとともに、管内市町村、関係団体、関係機関等への周知をお願いする。
 また、新設規定の運用指針及びその考え方の詳細について、別添のとおり「食品衛生法第4条の3第1項及び第9条の2第1項等に基づく特定食品等の販売、輸入等禁止処分の取扱い指針(ガイドライン)」として整理したので、併せて内容をご了知頂くとともに、管内市町村、関係団体、関係機関等への周知をお願いする。


第一 改正法の趣旨等
 改正法の趣旨
   BSE問題、偽装表示事件等を契機に、食の安全に対する国民の不安と不信がますます高まる中で、厚生労働省においては、国民の食に対する安心と信頼を回復するため、法改正をはじめ、食品の安全確保に関する従来の施策を抜本的に見直すこととしているところである。
 このような中で、一部の輸入食品について、法に基づき定める残留農薬基準値を超えるものが相次いで発見され、検疫所における検査を順次強化したにもかかわらず、高い頻度で基準違反が発見されたことに加え、検疫所の全輸入届出検査で違反が発見されずに、国内流通段階においてこれが判明したものが出るなど、国民への健康影響が懸念されることとなった。
 この事例を通じて、残留農薬など分布の不均質性が高い危害物質を含むものについては、命令検査等によりすべての貨物(全ロット)を検査対象としても、検体については抽出(サンプリング)に依らざるを得ない改正前の法に基づく検査制度のみでは、食品衛生上の危害発生防止に自ずと限界があることが再認識された。
 国産の食品については、違反が発見されるたびごとに、採取、製造、加工等の段階で食品衛生上の規制措置を個別に講ずることができるものの、原因不明等により、既存の法第4条等に基づく規制措置のみでは対応困難な違反食品等が出現する可能性も否定できない。
 このようなことから、輸入品であるか国産品であるかを問わず、厚生労働大臣が食品衛生上の危害の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、特定の国若しくは地域において製造等がなされ、又は特定の者により製造等がなされた特定の食品等について、検査を要せずに販売、輸入等を禁止できる仕組みを創設することとされ、このための食品衛生法の一部を改正する法律案が、平成14年7月19日に衆議院厚生労働委員長により提案され、同月23日の衆議院本会議での可決を経て、同月31日に参議院本会議にて可決・成立し、同年8月7日に公布されたものである。
 改正政令の趣旨及び内容並びに改正省令の趣旨
   改正政令は、改正法の施行に伴う条ずれの形式的改正を行うものである。
 また、改正省令は、新設規定に基づき厚生労働大臣が禁止処分を行うに当たって勘案する事由等について、食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号。以下「施行規則」という。)において必要となる規定の整備を行うものである。

第二 改正法及び改正省令の概要
I 食品又は添加物の販売、輸入等の禁止及びその解除
 1  食品又は添加物の販売、輸入等の禁止
(1)  厚生労働大臣は、特定の国若しくは地域において製造等がなされ、又は特定の者により製造等がなされた食品又は添加物(以下、第二において「食品等」という。)について、
 (1) 法違反の食品等が相当程度あり、
 (2) 食品衛生上の危害発生の防止のために特に必要があると認める場合に
薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、販売、輸入等を告示をもって禁止することができることとされた。(法第4条の3第1項関係)
(2)  (1)(1)の認定に当たっては、以下の事由からみて、法違反の食品等が相当程度あるか否かを判断することとした。(施行規則第1条の2第1項関係)
 検査命令、収去検査及び国、都道府県等の行政指導に基づく自主検査の結果、法違反の食品等の総数の当該食品等の検査件数全体に対する割合がおおむね5%以上であること
 当該食品等が製造等される国又は地域における食品衛生に関する規制及び措置の内容、当該食品等に係る検査体制、検査結果等の食品衛生上の管理の状況
 当該食品等を原因とする食中毒その他当該食品等に起因し、又は起因すると疑われる健康被害が生じたこと
 当該食品等を汚染し、又は汚染するおそれがある事態が発生したこと
(3)  (1)(2)の認定に当たっては、以下の事項を総合的に勘案することとした。(施行規則第1条の3関係第1項)
 当該食品等が人の健康を損なうおそれの程度
 (1)(1)の認定に当たって勘案した(2)のアからエまでに掲げる事項
 当該食品等で法違反のものが引き続き販売、輸入等される可能性
 当該食品等による食品衛生上の危害発生防止について、販売、輸入等禁止以外の方法により期待できる効果
 2  関係行政機関の長への協議
 厚生労働大臣は、法第4条の3第1項の規定による販売、輸入等を禁止しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならないこととされた。(法第4条の3第2項関係)
 3  禁止の解除
(1)  法第4条の3第3項の販売、輸入等の禁止が行われた場合において、厚生労働大臣は、当該処分に利害関係を有する者の申請に基づき、又は必要に応じ、当該処分に係る特定の食品等に起因する食品衛生上の危害発生のおそれがないと認めるときは薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、当該処分の全部又は一部を告示をもって解除するものとされた。(法第4条の3第3項関係)
(2)  当該特定の食品等に起因する食品衛生上の危害発生のおそれがないと認めるに当たっては、解除しようとする禁止処分の対象とされている特定の食品等について、1の(3)に掲げる事項を勘案しなければならないこととした。(施行規則第1条の4第1項)
(3)  また、法第4条の3第3項の規定による解除の申請は、
(1)  申請者の住所及び氏名(法人の場合は、その名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名)
(2)  解除を申請する食品等の範囲
(3)  その他厚生労働大臣が必要と認める事項
を記載した申請書に、解除を申請する食品等に起因する食品衛生上の危害発生のおそれがなくなったことを証する書類を添えて、厚生労働大臣に提出することによって行うこととした。(施行規則第1条の5第1項関係)
II 器具又は容器包装に係る販売、輸入等の禁止処分及びおもちゃに関する準用
 1  器具又は容器包装について、改正法によりIと同様の改正が行われるとともに(法第9条の2等関係)、改正省令により施行規則においてIと同様の規定整備を行うこととした。(施行規則第4条の4から第4条の7まで)
 2  また、法第29条の規定に基づき厚生労働大臣が指定するおもちゃについて、改正法により法第4条の3及び法第9条の2の規定が準用され、I及びII1と同様の改正が行われるとともに、改正省令により施行規則においてもI及びII1と同様の規定整備を行うこととした。(法第29条第1項等関係)
III その他
 1  新設規定による禁止に違反した場合の行政処分及び罰則の規定の整備(法第22条及び第23条関係)
 営業者が新設規定による禁止に違反して販売、輸入等した食品等又は器具等について、厚生労働大臣又は都道府県知事等が廃棄させ、又はその他営業者に対し、食品衛生上の危害を除去するために必要な措置をとることを命ずることができることとするとともに、営業者が新設規定による禁止に違反して販売、輸入等を行った場合に、営業許可の取消し、営業禁止又は営業停止の処分の対象となることとされた。
 また、新設規定による禁止に違反した者については、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処することとされた。
 2  罰則の引上げ
 法第30条から第32条の2までにおいて規定されている罰則について、罰金の額が20万円以下とされていたものは200万円以下に、10万円以下とされていたものは100万円以下に、3万円以下とされていたものは30万円以下に改正された。(法第30条から第32条の2まで関係)
 なお、罰則の見直し、強化については、今後、更に検討を行う予定としている。

第三 国産食品等の取扱いについて
   国産の食品等については、原因不明等により、法の他条項及び他の食品衛生規制に関する法律の規定に基づく食品衛生上の危害発生防止措置を講ずることができない違反食品等が発見された場合に、厚生労働省は、当該食品等の生産地又は製造所等を所管する都道府県等と協議しながら、新設規定に基づく禁止処分の発動に向けた検討を開始することとするので、このような違反食品等を発見した都道府県等においては、速やかに厚生労働省に報告されたい。
 なお、国産の食品等については、各都道府県、政令市(保健所を設置する市)及び特別区において、引き続き、違反率の多寡にかかわらず、違反食品等が発見されるたびごとに、当該食品等の生産地又は製造所等を所管する都道府県等との連携を図りながら、食品衛生法等に基づく採取、製造、加工等の段階での食品衛生上の規制措置を個別に講ずるようお願いする。

第四 法違反者等の名称等の公表
   改正法により、厚生労働大臣並びに都道府県知事、政令市長及び特別区長は、食品衛生上の危害の発生を防止するため、法又は法に基づく処分に違反した者の名称等を公表し、食品衛生上の危害の状況を明らかにするよう努めることとされた。(法第29条の2関係)
 本条の規定に基づく公表対象、時期、方法等については、以下をご参考の上、適切な運用を図られるようお願いする。
 1  「法又は法に基づく処分に違反した者」の意義
 「法又は法に基づく処分に違反した者」とは、次の(1)から(3)までの者をいうものとする。
 なお、違反が軽微なもの(当該者の故意、重大な過失等によるものか否か、当該違反による健康影響の程度、当該違反に対する社会的な関心の程度等を勘案して判断する。)であって、当該違反について直ちに改善が図られたもの以外の法違反については、原則として、書面による行政指導(行政手続法(平成5年法律第88号)第2条第6号に規定する行政指導をいう。以下同じ。)の対象である。
 (1)  次に掲げる規定に違反した営業者で、法第22条、第23条若しくは第24条の規定による処分をされ、又は書面による行政指導を受けたもの
  • 法第4条(不衛生食品等の販売等の禁止)
  • 法第4条の2(新開発食品の販売禁止)
  • 法第4条の3第1項(食品等の包括的輸入禁止)
  • 法第5条(病肉等の販売等の制限)
  • 法第6条(添加物等の販売等の制限)
  • 法第7条第2項(規格及び基準に合わない食品等の販売等の禁止)
  • 法第9条(有毒器具等の販売等の禁止)
  • 法第9条の2第1項(器具等の包括的輸入禁止)
  • 法第10条第2項(規格及び基準に合わない器具等の販売等の禁止)
  • 法第11条第2項(表示がない食品等の販売禁止)
  • 法第12条(虚偽の又は誇大な表示又は広告の禁止)
  • 法第14条第1項(食品等の検査に不合格添加物等の販売等の禁止)
  • 法第15条第4項(検査結果の通知を受ける以前の販売等の禁止)
  • 法第19条の17第1項(食品衛生管理者の非配置)
  • 法第19条の18第3項(有毒物質の混入防止等の措置基準の非遵守)
 (2)  次に掲げる規定に違反した指定検査機関であって、法第19条の13の規定による処分をされ、又は書面による行政指導を受けたもの
  • 法第19条の3第1号、第3号(指定を受けることができないもの)
  • 法第19条の4第1号(指定の適格要件)
  • 法第19条の6第1項、第3項(業務規程)
  • 法第19条の10(役員等の解任命令)
  • 法第19条の12(適合措置命令)
 (3)  次に掲げる規定による基準又は条件に違反した営業者であって、法第23条又は第24条の規定による処分をされ、又は書面による行政指導を受けたもの
  • 法第20条(営業施設の業種別基準の非遵守)
  • 法第21条第2項第1号又は第3号(営業許可の欠格)
  • 法第21条第3項(営業許可条件の不適合)
 2  公表時期
 処分又は書面による行政指導を行った後、速やかに公表するものとする。
 3  公表内容
 (1)  処分又は書面による行政指導を受けた営業者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)
 (2)  処分又は書面による行政指導の対象となった食品等
 (3)  処分又は書面による行政指導の対象のとなった施設等
 (4)  処分又は書面による行政指導を行った理由
 (5)  処分又は書面による行政指導の内容
 (6)  処分又は書面による行政指導指導を行った措置状況
 4  公表方法
 報道記者発表、ホームページに掲載すること等により公表するものとする。



食品衛生法第4条の3第1項及び第9条の2第1項等に基づく
特定食品等の販売、輸入等禁止処分の取扱い指針(ガイドライン)


I  趣旨
   食品衛生法(以下「法」という。)第4条の3第1項及び第9条の2第1項(法第29条第1項により準用される場合を含む。)において、厚生労働大臣は、特定の国又は地域において採取、製造、加工等がなされ、又は特定の者により採取、製造、加工等された特定の食品、添加物、器具・容器包装、乳幼児用おもちゃ(以下「特定食品等」という)について、法第4条の3第1項各号又は第9条の2第1項各号に該当する食品等(以下「違反食品等」という。)が相当程度含まれるおそれがあると認められる場合において、人の健康を損なうおそれの程度等を勘案して、特に必要があると認めるときはあらかじめ関係行政機関の長に協議し、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて、当該特定食品等の販売、採取、製造、輸入等を禁止することができるとされており、本制度の運用方針及びその考え方を整理したものである。


II  処分の発動についての厚生労働省における検討
 処分の発動についての検討開始
   特定食品等について、以下の(1)から(3)のいずれかに該当する場合は、処分の発動に向けた検討を開始し、2の調査・検討に着手するものとする。
(1)  法第15条第1項から第3項まで若しくは第17条第1項の規定による検査又は行政指導による営業者による自主検査の結果、違反食品等が相当数発見された場合
  ア 輸入食品の場合
 (ア)  「相当数発見された」の判断基準について
 輸入食品全般についての命令検査の違反率の分布状況からみて、概ね違反率5%以上の特定食品等について、「相当数発見された」と判断するものとする。
 (イ)  検査結果を確認する範囲について
(1)  信頼限界95%(注)で違反率5%未満であることを確認するには少なくとも60件以上検査しなければならないこと、及び当該特定食品等の正確な違反状況は全数検査以降であることを考慮し、検査命令(行政指導により全届出について自主検査を実施する特定食品等については、当該自主検査とする。以下「検査命令等」という。)開始後、検査件数が60件となった時点において、当該検査の違反率が概ね5%以上であるかどうかで判断するものとする。
(注)  「信頼限界」とは、ある調査結果から推定値を求めたとき、当該推定値の範囲内に真の値を含む可能性のこと。我が国の輸入食品の検疫所におけるモニタリング検査については、信頼限界95%で違反率1%未満であることを確認するための検体数を設定していることから同様の考え方を採った。
(2)  検査命令等開始後の最初の60件の違反率が概ね5%未満であっても、その後の違反率の動向を確認するため、違反が発見されるたびごとに、直近の60件の検査結果を確認し、違反率が5%以上であるかどうかを判断するものとする。
  イ 国産食品の場合
   国産食品については、輸入食品の場合と異なり、違反率の多寡にかかわらず、違反食品等が発見されるたびごとに、食品衛生法等に基づき、採取、製造、加工等する段階での食品衛生上の規制措置を個別に講ずることを基本とする。具体的には、各都道府県等において、法第17条に基づき製造施設、卸売市場等において過去の食品群ごとの違反実績等を踏まえた検査を行い、違反食品等を発見した場合には、必要に応じ、当該違反食品等の違反の原因となった製造者等に対する法第22条に基づく当該食品の回収命令、法第23条に基づく営業禁止等の措置又は法第24条に基づく改善命令等を講ずるとともに、違反の原因が農薬や医薬品等にある場合には、関係部署と連携して、生産者指導等を実施することとする。
 ただし、原因不明等により、他条項に基づく食品衛生上の危害発生防止措置を講ずることができない違反食品等が発見された場合については、厚生労働省は、当該食品の生産地又は製造所等を所管する都道府県等と協議しながら、本条項に基づく処分の発動に向けた検討を開始することとする。このため、このような違反食品等を発見した都道府県等は厚生労働省に報告を行うものとする。
(2)  生産地、製造地等において、当該特定食品等の飲食に起因し、又は起因することが疑われる食中毒その他の健康被害が生じたとの情報がある場合
  ア 輸入食品の場合
   当該食品により当該食品の輸出国、当該食品の輸出先である第三国又はわが国で健康被害が発生した場合
  イ 国産食品の場合
   当該食品によりわが国又は当該食品の輸出先で健康被害が発生した場合。この場合の取扱いについては、(1)イに準ずる。
(3)  生産地、製造地等において、当該特定食品等を汚染し、又は汚染するおそれがある事態が発生したとの情報がある場合
   具体的には、原子力発電所事故による放射性核種放出、飼料汚染による畜産物汚染、加工食品の有毒有害物質混入などが想定される。

 生産地、製造地等における食品衛生上の管理状況の調査・検討
   生産地、製造地等における
  • 法令等による規制及び措置の内容
  • 国又は政府(都道府県等を含む。以下「政府等」という。)による検査体制
  • 政府等による検査結果等に基づく規制の遵守状況
等の食品衛生上の管理状況について現地の実態調査を含め調査・検討し、食品衛生上の管理が不十分と認められる場合には3の判断を行うものとする。ただし、1の(2)及び(3)のうち現に健康被害が生じている場合については、緊急の対応が必要なことから、この段階の調査・検討を省略して3の判断を行うものとする。
(1)  確認すべき事項
   具体的には、以下のアからエに掲げる危害要因の区分に応じて、各区分の(2)に掲げる事項の確認を行う。
  ア 生産・製造段階で意図的に使用されるもの
(1) 危害要因:残留農薬、残留医薬品、添加物等
(2) 検討対象となる管理状況:使用規制、検査体制、検査結果、その他の管理体制
  イ 環境からの汚染によるもの
(1) 危害要因:環境汚染物質(ダイオキシン類等)、食中毒微生物、自然毒(アフラトキシン等)等
(2) 検討対象:汚染防止措置、検査体制、検査結果、その他の管理体制
  ウ 事故によるもの
(1) 危害要因:放射性核種、その他の有毒有害物質
(2) 検討対象:汚染防止措置、検査体制、検査結果、その他の管理体制
  エ 食品の本来成分が有毒有害であるもの
(1) 危害要因:有毒動植物
(2) 検討対象:採取規制、検査体制、検査結果、その他の管理体制
(2)  調査・検討の進め方
 
 初めに、特定食品等の対象範囲が国又は地域である場合には、当該特定食品等の採取、製造、加工等が行われている国又は地域の政府等を通じて書面による調査を行う。また、特定食品等の対象範囲が特定の者が採取、製造、加工等する食品である場合には、当該特定の者を通じた書面による調査を行う。
 書面による調査の結果、さらに発動に向けた検討が必要な場合には、アに掲げる政府等又は特定の者との協議を開始するとともに、当該特定食品の採取、製造、加工等を行っている現地の実態調査を行うこととする。
 なお、アに掲げる政府等又は特定の者が調査に協力しないなど適切な情報提供を行わない場合には、当該政府等又は特定の者による食品衛生上の管理が不適切であるとみなすこととする。

 処分を発動するか否かの判断
   2の調査・検討の結果、食品衛生上の管理が不十分と認められ又は不十分とみなされた場合に、
  • (1)の人の健康を損なうおそれの程度
  • 1の違反率等の状況
  • 2の食品衛生上の管理の状況
  • (2)の今後の輸入等の可能性
を勘案して当該特定食品の潜在的な危険の程度を判断し、さらに、
  • (3)の期待できる効果
により本処分による防止の必要性を判断のうえ、厚生労働省として最終的な発動の要否を判断する。
(1)  人の健康を損なうおそれの程度
   以下の状況・指標等を基に、当該特定食品等による人の健康を損なうおそれの程度がどの程度であるかを判断するものとする。
 おそれの程度が高い場合は発動の必要性は高いものと判断する。
 なお、摂取量を見込むに当たっては、国民栄養調査などの各種統計に基づく我が国国民の平均的な摂取量を基本としつつ、必要に応じて、年齢差や性差、地域差、我が国における当該食品等の摂食形態、利用方法等を踏まえて、通常考え得る最大摂食量を考慮するものとする。
  ア 人の健康を損なうおそれが特に高い場合
     当該特定食品等を原因とした健康被害が発生している場合
  イ 人の健康を損なうおそれが高い場合
(1) 当該特定食品等から検出された危害物質が発ガン性を有する場合
(2) 当該特定食品等の摂取量及び危害物質検出値からみて、当該特定食品等から検出された危害物質について、最小発症量を超えて摂取することが想定される場合
(3) 当該特定食品等の摂取量及び残留農薬検出値からみて、当該特定食品等から検出された農薬について、急性参照値を超えて摂取することが想定される場合
  ウ 人の健康を損なうおそれがあると認められる場合
(1) 当該特定食品等の摂取量及び危害物質検出値からみて、当該特定食品等から検出された危害物質について、他食品からの摂取等も考慮すると、許容一日摂取量(ADI)を超えて摂取することが想定される場合
(2) 当該特定食品等の摂取量及び危害物質検出値からみて、当該特定食品等から検出された危害物質について、他食品からの摂取等も考慮すると、耐用一日摂取量(TDI)を超えて摂取することが想定される場合
(2)  当該食品が今後とも採取、製造、輸入等される可能性
   2の調査・検討の結果に基づく今後の食品衛生上の管理状況についての改善見込み、当該特定食品の在庫の状況及び今後の販売等の見込み等を勘案して、当該特定食品等について、引き続き、同様の状況のものが、採取、製造、加工、輸入等される可能性を検討するものとする。
 可能性が高い場合は発動の必要性は高いものと判断する。
(3)  検査命令等の本処分以外の方法によって危害発生の防止について期待できる効果
   当該特定食品等から検出される危害物質の分布の不均質性が高い場合や、当該危害物質の検査の検出感度が低い等有効な検査方法が確立されていない場合については、検査命令等の本処分以外の方法による危害発生防止の効果が期待できず、本処分の発動の必要性が高いと考えられることから、これらの事項を勘案して、個別の検査により違反が発見される都度、輸入、販売等を禁止する方法により当該特定食品等に起因する食品衛生上の危害発生が防止できる効果を見込む。
 効果が低い場合は発動の必要性は高いものと判断する。

III  特定食品等の対象の捉え方についての考え方
   本処分の及ぼす影響にかんがみ、特定食品等の対象範囲については、食品衛生上の危害発生防止のために合理的なものとする。
1. 国、地域又は者の範囲について
(1)  違反の主たる要因が、政府等の法令等に基づく規制や検査体制等、当該特定食品等の採取、製造、加工等が行われている国又は地域に共通して認められる場合については、当該国又は地域を対象とすることを基本とするものとする。
(2)  違反の主たる要因が、当該特定食品等を採取、製造、加工等する個別の者にあることが明確である場合については、当該特定の者を対象とするものとする。
(3)  なお、事故等を原因とする場合については、当該事故等が食品衛生上の危害に影響を及ぼす可能性がある範囲を科学的に分析して、当該範囲のすべての食品を対象とすることを基本とする。
2. 食品の範囲について
(1)  食品の種類の分け方については、「食品、添加物等の規格基準」(昭和  34年厚生省告示第370号)において基準又は規格が別に設けられている食品の種類ごとに細分することを基本とする。
(2)  そのうえで、危害要因が特定できる場合には当該要因が合理的に及ぶと考えられる範囲を対象とするものとする。
(3)  事故等を原因とする場合については、当該事故等が食品衛生上の危害に影響を及ぼす可能性がある範囲を科学的に分析して、当該範囲に限定するものとする。

IV  指定に向けた手続き
 関係行政機関の長の協議
(1)  趣旨
   本処分が影響を与えうる範囲は、法の他条項に基づく販売禁止等の規定と異なり、食品衛生の確保等の厚生労働省の所掌事務の範囲に留まらない可能性があることから、他の関係行政機関の長の意見を聴くこととするものである。
(2)  関係行政機関の長の範囲
   上記趣旨を踏まえ、以下のものを関係行政機関の長として協議を行う。
 正式の協議は、2の審議会の答申後に行うことを基本とする。
 協議を受けた関係行政機関は、本処分が国民の健康保護を最優先として、食品衛生上の危害発生防止の観点から実施されるものであることに十分留意して、迅速に協議に応じるものとする。
  • 円滑な外交関係を確保するとともに、WTO/SPS協定を始めとする国際約束との整合性を確保する必要があることから、外務大臣(禁止処分の対象となる特定食品等(以下「対象食品等」という。)が外国で採取、製造、加工等される特定食品等(以下「輸入食品等」という。)である場合に限る。)
  • 対外貿易の円滑な実施を確保する等の観点から、経済産業大臣(対象食品等が輸入食品等である場合に限る。)
  • 対象食品等に係る生産、製造業等に影響を与えうること、国内における農薬、飼料等の安全確保施策を所管していること等から、農林水産大臣
  • 塩及び酒類に係る製造業に影響を与えうること等から、財務大臣(対象食品等が塩及び酒類に係るものである場合に限る。)
 なお、厚生労働省は、上記機関に限らず、事案の性質等に応じ、関係機関と十分に連携を図るものとする。
2.  薬事・食品衛生審議会の意見聴取
    厚生労働省は、薬事・食品衛生審議会に諮問を行い、指定が必要と考えられる理由を根拠資料等とともに説明する。
  審議会は、厚生労働省の判断の妥当性を検討のうえ、所要の答申を行う。
3.  WTO/SPS通報
    対象食品等が輸入食品等である場合には、当該禁止処分の告示に先立ち、対象となる国、地域又は者に対し、処分の内容を伝達するとともに、WTO/SPS協定に基づく通報を行う。

V  販売・輸入禁止処分の解除
1.  申請者等
   法に規定する「利害関係を有する者」とは、相手国政府等のほか、処分の対象となっている特定食品等を採取する者、製造する者、輸入する者等である。
 厚生労働大臣は、これらの利害関係者の申請に基づき、あるいは、指定対象となった国又は地域の政府等との協議等に基づく厚生労働大臣の必要性の判断により、指定の一部又は全部解除に向けた検討を行う。
2.  申請に当たり必要な書類等
   利害関係者からの申請を受け付けるに当たっては、以下の4.に掲げる事項について確認ができる資料を添付させるものとする。
3.  解除の検討対象の範囲
   解除の検討開始が、利害関係者の申請に基づく場合については、当該申請の趣旨に従うものとする。例えば、A国のB食品を指定した場合に、A国でB食品を製造している事業者の一つであるC事業者から、自ら製造したB食品についての解除申請がなされた場合については、当該C事業者が製造するB食品のみの解除に向けた検討を行うものとする。
 ただし、当該申請を契機として、申請の範囲より広い範囲の禁止の解除の検討を開始することは可能である。
4.  解除に当たり確認すべき事項
   解除を行うためには、当該特定食品等の全部又は一部に起因する食品衛生上の危害が発生するおそれがないことを確認しなければならないが、その確認に当たっては、IIの3の判断に当たり勘案した事項(IIの1、2及び3に掲げる事項)を勘案するものとする。
 特に、食品衛生上の管理の状況について、原則として現地調査を行い、以下に掲げる危害要因に応じて、以下に掲げる事項を確認する。
   
 生産・製造段階で意図的に使用されるもの
  • 使用規制が設定され遵守されていること
  • 検査体制が確立され検査が実施されていること
  • 使用規制及び検査体制の遵守が検査結果により確認されること
  • その他の必要な管理体制が整備されていること
 
 環境からの汚染によるもの
  • 汚染防止措置が設定され遵守されていること
  • 検査体制が確立され検査が実施されていること
  • 使用規制及び検査体制の遵守が検査結果により確認されること
  • その他の必要な管理体制が整備されていること
 
 事故によるもの
  • 汚染防止措置が設定され遵守されていること
  • 検査体制が確立され検査が実施されていること
  • 使用規制及び検査体制の遵守が検査結果により確認されること
  • その他の必要な管理体制が整備されていること
 
 食品の本来成分が有毒有害であるもの
  • 採取規制が設定され遵守されていること
  • 検査体制が確立され検査が実施されていること
  • 使用規制及び検査体制の遵守が検査結果により確認されること
  • その他の必要な管理体制が整備されていること
5.  解除の手順
(1)  禁止処分の発動の際と同様、薬事・食品衛生審議会への諮問を行うものとし、審議会から所要の答申を得る。
(2)  法律上は関係行政機関の長への協議の規定はないが、必要に応じ、関係省庁への事前情報提供等を行うものとする。
(3)  解除後も、検査命令等を実施するなど、必要に応じて検査体制を強化して、安全性の確認を行うものとする。


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