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平成14年7月25日

「社会保障負担等の在り方に関する研究会」報告書について

 「社会保障負担等の在り方に関する研究会」は、このたび、6回の研究会を経て、報告書をとりまとめた。

 ※1
 本研究会は、国立社会保障・人口問題研究所の研究の一環として行われたものであり、平成14年度厚生労働科学研究事業「社会保障負担の在り方に関する研究」(主任研究者:国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析部長)の一部をなすもの。

 ※2
 研究会メンバーは以下の通り。
(世話人)神野直彦 東京大学経済学部教授 小西秀樹 学習院大学経済学部教授
(世話人)山崎泰彦 上智大学文学部教授 駒村康平 東洋大学経済学部助教授
跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授 菊池馨実 早稲田大学法学部教授
岩本康志 一橋大学大学院経済学研究科教授 長沼建一郎 日本福祉大学社会福祉学部助教授
大沢真知子 日本女子大学人間社会学部教授 宮武剛 埼玉県立大学保健医療福祉学部教授

 報告書では、社会保障負担等の在り方について、社会保険料のみならず税の在り方も含めて検討するとともに、次のような論点が整理されている。
(1) 社会保険と税の適切な組み合わせなど公平な負担の在り方に関する構造的な事項
(2) 能力に応じた公平な負担の賦課の在り方に関する各般の事項
(3) 社会保障負担の水準等に関する事項
(4) 今後検討すべき論点

 本報告書は、上記の趣旨に鑑み、社会保障審議会等における社会保障に関する制度横断的検討の参考となるものであるが、厚生労働省の公式見解を示すものではない。


(照会先)厚生労働省政策統括官付
   社会保障担当参事官室政策企画官
           西村 淳
     (電話 03-5253-1111内線7705)


「社会保障負担等の在り方に関する研究会」報告書

 社会保障に関しては、少子高齢化を踏まえ、中長期的な観点から、医療・年金・介護といった分野毎の議論を超えた制度横断的な見直しを行うことにより、公平で安定的な制度を構築することが求められている。
 本研究会においては、各制度毎に給付内容の異なることを念頭に置きつつも、社会保障負担等の在り方について、制度横断的観点から総合的かつ体系的に検討を行った。
 その際、
 ・ 社会保険料のみならず税の在り方も含めて検討すること
 ・ 現実の制度を踏まえつつも理論的にあるべき制度の姿を描くこと
 ・ 今後の各方面における制度見直し等の検討のための論点を整理すること
を目指した。
 本研究会で議論された事項は多岐にわたるが、これまでの6回(合宿を含む)の研究会を経て、
(1)社会保険と税の適切な組み合わせなど公平な負担の在り方に関する構造的な事項
(2)能力に応じた公平な負担の賦課の在り方に関する各般の事項
(3)社会保障負担の水準等に関する事項
(4)今後検討すべき論点
の4つについて大枠をとりまとめたので、ここに報告する。
 なお、本研究会報告を受けて、社会保障審議会において制度設計などの議論が、国立社会保障・人口問題研究所において制度改正モデルに基づく試算や海外事例研究などのより詳細な研究が、それぞれ行われることを期待したい。

 本研究会は、厚生労働省の「研究」として行われたもので、厚生労働省の政策に関する公式見解を示すものではない。本研究会での議論は、平成14年度厚生労働科学研究事業「社会保障負担の在り方に関する研究」(主任研究者:国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析部長)の一部をなすものである。


「社会保障負担等の在り方に関する研究会」報告書・目次

1 公平な負担のための社会保障制度の構造の在り方について
(1)社会保険と税
  (1) 財源調達(社会保険財源と税財源)
  (2) 財政方式(社会保険方式と税方式)
  (3) 財源の確保(国庫負担割合の引上げ等)
(2)社会保険制度の構造(保険者の分立等)

2 能力に応じた公平な負担の賦課の在り方について
(1)負担能力の把握とバランスのとれた賦課
  (1) 資産
  (2) 消費
  (3) 定額負担
  (4) 相続
(2)各種控除等による家族等の負担能力の評価
  (1) 高齢者
  (2) 児童
  (3) 被扶養配偶者
(3)低所得者の取り扱い
(4)事業主負担
(5)その他公平な負担のために
  (1) 徴収
  (2) 情報提供
  (3) 社会保障番号

3 社会保障負担の水準等について
(1)現役世代の負担水準
  (1) 負担の上限
  (2) 世代間の公平
(2)分野間のバランス
  (1) 年金・医療・福祉間のバランス
  (2) 高齢者関係と児童関係のバランス
  (3) 公的社会保障でカバーすべき部分と個人で対応すべき部分のバランス

4 今後検討すべき論点
(1)今後の検討に向けて
  (1) 中長期的課題と当面の課題
  (2) 制度設計と試算
(2)残された課題
  (1) 支え手を増やす
  (2) 給付の在り方
  (3) 労働保険や生活保護との関係
  (4) 年金財政の問題

付 メンバー表


1 公平な負担のための社会保障制度の構造の在り方について

(1)社会保険と税

 社会保障制度に係る負担方式としては、医療・年金・介護など主なものについては社会保険方式で、その他生活保護などについては税方式であり、社会保険方式においては、社会保険財源を主としつつ、税財源も投入されてきた。今後、社会保障費用の増大が見込まれる中で、社会保険方式と税方式、社会保険財源と税財源の組合せを適切なものにし、国民の納得の得られるように負担を求めていく必要がある。

  (1) 財源調達(社会保険財源と税財源)

  (2) 財政方式(社会保険方式と税方式)

  (3) 財源の確保(国庫負担割合の引上げ等)

(2)社会保険制度の構造(保険者の分立等)

 現在は、職種・地域により加入する社会保険制度が異なり、制度間・保険者間で財政調整する仕組みになっているが、雇用構造の変化により地域(国民)保険制度である国民健康保険及び国民年金の財政構造が弱体化したことなどにより、分立した保険制度間の不公平感や、各制度の持続可能性への不安感が高まっている。このような問題に対応し、被用者保険制度と地域(国民)保険制度で成り立っている現在の社会保険制度の構造について、中長期的にそのあるべき姿を考えていく必要がある。

2 能力に応じた公平な負担の賦課の在り方について

(1)負担能力の把握とバランスのとれた賦課

 現在、社会保険料は被用者は報酬のみに、それ以外は定額の要素を加味して(国民年金では定額のみで)賦課されているが、高齢化などにより社会保障負担が増大せざるを得ない中で、保険料引上げへの過重感、高齢者の資産に賦課されていないことや自営業者の所得が十分把握されていないこと(クロヨン問題)への不公平感が高まっている。負担能力を適切に把握し、その能力に応じた公平な負担の賦課をおこなうことで、社会保障負担について国民に理解を得られるようにしていく必要がある。この場合、社会保険負担と税負担とを合わせて考える必要がある。
 なお、ここでは、所得・消費・資産等のバランスのとれた公平な負担の賦課の方法について論じるものであって、負担の水準の問題は別に後で論じることとする。

  (1) 資産

  (2) 消費

  (3) 定額負担

  (4) 相続

(2)各種控除等による家族等の負担能力の評価

 現在、高齢者や被扶養配偶者については、各種控除等により負担が軽減されているが、世代間公平や働く女性との公平の観点から、不公平感が高まっており、負担の適正化を求めるべきである。また、子どもを持つ親の負担を軽減する適切な方法を考えることが求められている。

  (1) 高齢者

  (2) 児童

  (3) 被扶養配偶者

(3)低所得者の取扱い

 全国民の保険料負担を前提とした皆保険制度においては、低所得のため保険料負担が困難な者をどのようにカバーするかが問題になる。これまでは、保険料の減免や国庫負担の投入による保険料水準全体の引き下げにより、低所得者も社会保険制度でカバーし、皆保険制度を維持してきた。

(4)事業主負担

(5)その他公平な負担のために

  (1) 徴収

  (2) 情報提供

  (3) 社会保障番号

3 社会保障負担の水準等について

 本研究会では、負担の賦課の在り方を主たる検討テーマにしたが、負担の水準についても若干の検討を行った。

(1)現役世代の負担水準

  (1) 負担の上限

  (2) 世代間の公平

(2)分野間のバランス

 社会保障負担の合計が過重なものにならないためには、各分野間の相互調整を行い、バランスのとれたものにしていく必要がある。

  (1) 年金・医療・福祉間のバランス

  (2) 高齢者関係と児童関係のバランス

  (3) 公的社会保障でカバーすべき部分と個人で対応すべき部分のバランス

4 今後検討すべき論点

(1)今後の検討に向けて

  (1) 中長期的課題と当面の課題

  (2) 制度設計と試算

(2)残された課題

 本研究会では、社会保障の負担という観点からの検討を行ったが、時間等の関係からなお検討し切れなかったものがあった。また、社会保障の制度横断的検討の観点から今後検討すべき問題については以下のものがある。

  (1) 支え手を増やす

  (2) 給付の在り方

  (3) 労働保険や生活保護との関係

  (4) 年金財政の問題


「社会保障負担等の在り方に関する研究会」メンバー

(世話人) 神野直彦  東京大学経済学部教授
(世話人) 山崎泰彦  上智大学文学部教授
跡田直澄  慶應義塾大学商学部教授
岩本康志  一橋大学大学院経済学研究科教授
大沢真知子  日本女子大学人間社会学部教授
小西秀樹  学習院大学経済学部教授
駒村康平  東洋大学経済学部助教授
菊池馨実  早稲田大学法学部教授
長沼建一郎  日本福祉大学社会福祉学部助教授
宮武剛  埼玉県立大学保健医療福祉学部教授


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