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資料3

都道府県労働局雇用均等室が扱った指導事例の概要


<事例1> 上司との性的な噂を流され、辞めてほしいと言われた例
− 相談窓口の存在を知らなかったため、相談できず −

(相談内容)
 アルバイトで清掃の仕事をしている女性労働者Aは、上司Bとの身に覚えのない性的な噂を職場で流された。その後、Aは、Bから「そのような噂がある人は辞めてもらわないと困ると本社が言っているので辞めてほしい」と言われ、ショックを受けた。このような形で辞めなければならないことが納得できないが、会社のどこに相談すればよいかわからず、都道府県労働局雇用均等室に相談した。

(都道府県労働局雇用均等室の対応)
 都道府県労働局雇用均等室が会社に対して事情聴取を行った結果、セクシュアルハラスメントの相談・苦情窓口は設置されていたが、従業員に対する周知が不十分であったために、Aが相談・苦情窓口の存在を知らなかったことが判明した。
 また、Aに辞めるように言ったのは、人事権のないBが独断で行ったものであった。
 都道府県労働局雇用均等室は、Aが復帰できるように再発防止のための取組を実施するよう指導した。また、Aが相談・苦情窓口があることを知らなかったため、会社の対応が遅れたことを指摘し、相談・苦情窓口について十分周知するよう助言した。今回の事案については、Aは会社から退職勧奨を受けたと思っているので、Aに対して会社としての対応を説明するよう助言、指導した。

(会社の対応)
 相談・苦情窓口及び会社の方針について従業員への周知徹底を図るとともに、現場責任者に対する教育を徹底した。
 また、会社は、Aに対して事実確認をするとともに、退職する必要はないことを説明した。噂の出所を突き止めることはできなかったが、Bに対しては、現場責任者として問題が以前よりあったため、異動をさせた。

<事例2> セクシュアルハラスメントについて相談したことを理由に、 契約更新しないといわれた例
− 会社の対応が形式的で、相談・苦情窓口が機能せず −

(相談内容)
 契約社員で勤務する女性労働者Cは、直属の上司Dから身体への接触を受ける等のセクシュアルハラスメントを受け、人事部に設置されている相談・苦情窓口担当者に相談したところ、対応を一任するように言われた。しかし、その後経過説明がないまま放置され、Dからのセクシュアルハラスメント行為はなくなったものの、Dから「セクシュアルハラスメントについて会社に相談したことにより職場の秩序を乱したので契約更新しない」と告げられた。
 セクシュアルハラスメントを相談したことを理由に、契約更新されないのは納得できないとして、Cは都道府県労働局雇用均等室に相談した。

(都道府県労働局雇用均等室の対応)
 都道府県労働局雇用均等室が、会社に対して事情聴取を行ったところ、相談・苦情窓口担当者が当事者双方から事実確認を行った際、Dからは、セクシュアルハラスメント行為の事実を認めCに謝罪し、Cを契約期間満了によって雇い止めすることとしたとの報告を受けたので、問題は解決したとの認識であったことが判明した。
 都道府県労働局雇用均等室は、会社がDの謝罪の内容を事実確認していないこと、セクシュアルハラスメントについて会社に相談したことを理由に契約を更新しないことはCへの不利益な取扱いと考えられることを指摘した上で、会社の対応が形式的であり、相談・苦情窓口が機能していないことから、適切な対応を行うよう助言した。

(会社の対応)
 相談・苦情窓口担当者が、当事者双方に改めて事実確認を実施したところ、Dの一連の行為はセクシュアルハラスメントに対する認識の低さが原因であったことが判明したため、人事部からDに対して注意喚起を行った。また、相談・苦情窓口担当者の前で、DからCへの謝罪が行われた。さらに、再発防止のため、全社員に対する啓発研修を実施するとともに、相談・苦情窓口が機能するよう、相談・苦情窓口担当者の外部研修への参加、相談対応マニュアルの充実を行うこととした。
 また、Cと改めて雇用継続について話し合った結果、Cの契約を更新することとした。

<事例3> 社長からセクシュアルハラスメントを受けた例
− 会社の幹部が社長の親族ばかりで相談できず −

(相談内容)
 女性労働者Eは、勤務する会社の社長Fから性的関係を迫られ、それ以後精神的にショックを受け、休みがちになった。会社に相談しようとしたが、専務、部長等の会社の幹部は社長の親族であったため、相談できずにいた。しかし、Eは社長から暴言等を浴びるようになったため、我慢できなくなり都道府県労働局雇用均等室に相談した。

(都道府県労働局雇用均等室の対応)
 都道府県労働局雇用均等室が会社に対して事情聴取を行ったところ、セクシュアルハラスメント防止対策は講じられていなかった。
 都道府県労働局雇用均等室は、セクシュアルハラスメント防止のための方針の明確化、相談・苦情窓口の設置を行うよう助言、指導した。今回の事案でも、EがFからのセクシュアルハラスメントについて会社に相談できなかった実態を踏まえ、相談・苦情窓口の設置にあたっては、親族以外の者を担当者とする等の配慮を行うよう助言した。
 また、EとFに対しても会社が改めて事情聴取を行い、事実確認の上、適切な措置を講じるよう助言、指導した。

(会社の対応)
 セクシュアルハラスメント防止のための方針を就業規則に記載するとともに、今回の事案については、社長は弁護士を通じてEの要望を聞き、謝罪と慰謝料を支払うことでEの納得を得た。
 相談・苦情窓口については、幹部等に社長の親族が多いことから、従業員が相談しやすいように当該弁護士に依頼し、氏名、連絡先等を全員に周知した。

<事例4> 会社に相談したが、セクシュアルハラスメントに当たらないとされた例
− セクシュアルハラスメントへの対応が支店長任せになっており、窓口の周知も不十分 −

(相談内容)
 支店にパートタイマーとして勤務していた女性労働者Gは、職場で同僚Hと2人きりになったとき身体を触られる、車で待ち伏せされてホテルに連れ込まれそうになる等のセクシュアルハラスメント行為を受けた。
 このような行為に対して本人に抗議をしたが、Hの態度が改まらないので、上司に相談したところ、G及びHの事情聴取を行ったが、後日、その上司から「本件はセクシュアルハラスメントに当たらない。」と言われた。また、なるべく内々にしてほしいとほのめかされた。Gは、会社のこのような態度が納得できず、都道府県労働局雇用均等室に相談した。

(都道府県労働局雇用均等室の対応)
 都道府県労働局雇用均等室が会社に対して事情聴取を行ったところ、男女雇用機会均等法が改正された時に、支店長会議でセクシュアルハラスメント防止の必要性について説明したが、店舗ごとの周知徹底は支店長任せにしており、周知徹底されていない店舗があることが判明した。また、セクシュアルハラスメントの相談・苦情窓口担当者も本社の人事部長と決めていたが、周知が十分になされていなかった。
 これらの状況を踏まえ、都道府県労働局雇用均等室は会社に対して、セクシュアルハラスメント防止についての方針は、各店舗ごとに周知徹底する必要があること、相談・苦情窓口担当者についても氏名、相談方法等を明確にし、あわせて周知する必要があることを助言、指導した。また、今回の事案についても、女性労働者に我慢を強いるのではなく、再度事情聴取を行い、事実確認を十分行った上で、必要な措置を講じるよう助言、指導した。

(会社の対応等)
 会社は再度G及びHに対して事情聴取を行い、その結果に基づきHを減給処分とすることを懲罰委員会で決定した。また、Hを異動させ、Gと違う職場で勤務させることとした。
 また、全店舗でセクシュアルハラスメント防止のための方針及びセクシュアルハラスメントの苦情・相談窓口担当者を徹底するよう指示を出し、幹部をはじめとして従業員研修を行っていくこととした。

<事例5> 上司からのセクシュアルハラスメントはなかったとし、対応が行われなかった例
− 防止対策が講じられず −

(相談内容)
 契約社員で勤務している女性労働者Iは、上司Jから、以前より身体を触られるなどのセクシュアルハラスメントを受けていた。Iは、Jに行為をやめるように訴えたが、反省している様子も見えないので、支店長に訴えた。しかしその後も行為が続いたので、支店長に対応状況を確認したところ、「Jから事情を聞いたが、そのような事実はないと言っているので、そのままにしている。」と言われた。会社のこのような対応に納得ができず、Iは都道府県労働局雇用均等室に相談した。

(都道府県労働局雇用均等室の対応)
 都道府県労働局雇用均等室が会社から事情聴取したところ、
(1) 当該支店では防止対策が講じられていなかったこと
(2) 支店長はJに対して注意をし、その後Jの行動を見守っていたが、問題がなかったのでそれ以上の対応はしなかったこと
が判明した。
 都道府県労働局雇用均等室は、セクシュアルハラスメントに関する方針の明確化、相談・苦情窓口の設置及び従業員に対しての周知・啓発を行うよう行政指導を行った。
 また、本事案についても、事実確認を行い適切な対応を図ること、Iに対して会社の対応を説明するよう助言した。

(会社の対応)
 都道府県労働局雇用均等室の指導を受け、会社は、事業所の運営基本方針に「セクシュアルハラスメント防止」を追加した。また、相談・苦情窓口については、担当者を決め、社内メールでの相談もできるようにした。
 本事案については、本社人事部が、I、J、支店長の3者から事情を聴取し、その結果、Jに対し厳重注意をするとともに、JがIに謝罪することとなった。

<事例6> 上司からセクシュアルハラスメントを受け、退職に追い込まれそうになった例
− 相談後職場環境が悪化、再度相談するも会社は関知せず −

(相談内容)
 女性労働者Kは、上司Lと同僚男性に誘われ、飲みに行ったが、同僚男性が先に帰宅し、Lと2人きりになり、Lからホテルに誘われた。Kはショックを受けたが、とにかく断り帰宅した。
 その日以降、Lの行動のすべてが不快に感じ、耐えられなくなったため、部長に相談した。部長、K、Lの3人で話し合いの場を持ち、その場でLはKに謝罪したが、部長からLに対して何のコメントもなかった。
 話し合い後、Lの態度が一変し、Kに対してつらくあたり、事務的なこと以外Kに話しかけなくなったため、Kは職場でいたたまれない状況になった。退職についても考えるようになり、再度、部長に相談したが、謝罪は済んでいるとしてとりあってもらえなかった。また、部長は、部全員にKが退職するということを話した。
 結局、Kは辞めざるを得ない状態になったが、LはKが辞めることでほっとしている様子であり、何の処分も受けずに勤務していることに納得がいかず、Kは都道府県労働局雇用均等室に相談した。

(都道府県労働局雇用均等室の対応)
 都道府県労働局雇用均等室が会社に対して事情聴取を行ったところ、会社は就業規則にセクシュアルハラスメント防止についての方針を明記するとともに、管理職に職場の状況をチェックさせ定期的に報告させていた。セクシュアルハラスメントの苦情・相談窓口についても会社と組合に設置し、文書で周知していた。
 都道府県労働局雇用均等室では、会社の問題として再度行為者に対する対応を含めて、就業規則に沿った処理をするよう助言し、併せて再発防止策を講じるよう助言した。

(会社の対応等)
 会社として本事案の内容を再確認し、対策を検討した結果、就業規則にのっとり厳重注意にすることとした。また、再発防止対策として、従業員研修を実施し、再度会社の方針等について説明を行うこととした。
 Kは退職の決意をしていたが、会社に慰留され、Kの希望により、新たな部署に異動して勤務を続けることとなった。


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