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第3章 ものづくり基盤技術に係る学習の現状と課題

(1)経済のグローバル化に対応した教育・研究の推進

 我が国製造業の直面する諸課題に対しては、「知」の源泉である大学と産業界が相互に啓発しあう新しいパートナーシップを構築することが不可欠。

 製造業の競争力強化のためには、技術革新が肝要であり、大学等公的研究機関における技術革新の源泉となる質の高い基礎研究の推進が重要。
 新産業の創出を促進し、製造業の国際競争力を高めるためには、産学連携の推進が重要。
 日本の大学がより一層活力に富み、国際競争力のあるものになるよう、大学の構造改革を推進。

日米の大学における実質研究費の蓄積額(2000年時点) 図

大学(国立大学)の構造改革の方針

○ 国立大学の再編・統合
各大学の枠にとらわれない抜本的改革によるパワーアップ

○ 新しい「国立大学の法人」への早期移行
自主性・自律性の拡大と民間的発想の経営手法の導入

○ 第三者評価による競争原理の導入
「21世紀COEプログラム」により世界的教育研究拠点の形成

活力に富み国際競争力のある大学づくり

(具体的事例)
<産学連携の実績>
 平成12年度において、企業等と国立大学等の共同研究は、約4,000件(10年前の約4.6倍)、国立大学等における企業等からの受託研究は約6,400件(10年前の約2.9倍)。
 大学等技術移転促進法(通称)に基づき実施計画を承認された技術移転機関(TLO)は、平成14年1月現在で全国で26機関。

(2)学校教育におけるものづくり教育の現状

 初等中等教育においては、専門高校において実践的な教育を行うとともに、体験的な学習等により、児童・生徒のものづりに対する興味・関心を高めることが重要。また、高等教育おいては、ものづくりに関する実践的な教育の充実等を図るとが重要。

 初等中等教育においては、
 工業高校等の専門高校を中心に実践的な教育を行うとともに、インターンシップを推進。
 学習指導要領に基づき、「総合的な学習の時間」を含めた各教科等において、ものづくりなどの体験的な学習を積極的に実施。
 科学技術・理科教育を振興。

インターンシップ実施状況 科学技術・理科大好きプラン

(具体的事例)
<高等学校におけるインターンシップの実施例>
 三重県立桑名工業高校では、2年生全員が5日間にわたるインターンシップを実施。生徒は、働くことや職業に対する見方・考え方等についての理解を深めるなど、大きな成果をあげている。また、受け入れ企業側からは、会社の活性化につながる、これを機会に優秀な生徒が地元に留まってくれれば、との感想が寄せられている。
 〔高等学校におけるインターンシップ実施率〕(平成12年度) TR>
  公立高校全体 31.9%
  工業高校 59.9%

<各教科におけるものづくり教育の例>
小学校段階
「理科」モーターなどの道具作り
「図画工作」材料や用具などを使った工作
中学校段階
「理科」身近な物質を用いた電池の製作
「美術」工芸の制作
「技術・家庭」木材加工、金属加工等
高等学校段階
(普通教育)
「理科」プラスチック等の材料の構造や性質を探究
「芸術」工芸のデザインや制作などの創造活動
(専門教育)
「工業」ものづくりに必要とされている基礎的・基本的な知識・技術の習得等

<理科におけるものづくりの事例>
 山梨県甲府市立相川小学校では、4年生の理科において、電気のはたらきを学習した後、発展的な学習として、レモンや備長炭などで電池をつくり、モーターを回したりした。子どもたちは、身近な素材から電池がつくれることに驚き、探究心をふくらませることができた。

 高等教育においては、大学の理工系学部、高等専門学校や専門学校などの高等教育機関で、ものづくりを中心に据えた実的な教育を実施するとともにインターンシップを推進。また社会人を対象とした学習機会の拡充を図る。

高等専門学校の現状

設置者の別 国立 公立 私立 合計
学校数 54(35) 5(2) 3(1) 62(38)
学科数 238 18 10 266
学級数 238 23 11 272
入学定員 9,520 920 435 10,875
在学者数 48,540 4,490 2,230 55,260

科学技術・理科大好きプラン

資料:文部科学省調べ
(注)( )は、専攻科を設置する学校数で内数である。

高等専門学校卒業者の職業別就職状況

区分 人数 割合
  (人) (%)
専門的技術的職業従事者 5,281 90.7
  機械・電気技術者 2,843 48.8
鉱工業技術者 475 8.2
土木技術者 711 12.2
その他の技術者 1,160 19.9
その他の専門的職業従 92 1.6
事者    
事務従事者 138 2.4
販売従事者 41 0.7
サービス・保安職業従事者 160 2.8
運輸通信従事者 136 2.3
上記以外の職業 64 1.1
合計 5,820 100.0

職業別就職状況
資料:文部科学省「平成13年度学校基本
調査報告書」

インターンシップ実施状況

(具体的事例)
<創造的なものづくり教育の実践事例>
 東京工業大学では、「たたら製鉄」として、レンガで反応炉を築き、掃除機を利用した送風機を回し、砂鉄と木炭を交互に挿入して実際に鉄を作っている。また、できた鋼を日本刀作成と同じ工法を経て包丁を作ることにより、ものづくりの楽しさを体得させている。

<大学におけるインターンシップの実施例>
 金沢大学工学部では、3年次に「学外技術体験講習」を開設し、企業等において設計・製造等の実務を1〜2週間体験するインターンシップを実施。
 〔高等教育におけるインターンシップ実施率〕(平成12年度)
  大学 33.5%
  短期大学 21.1%
  高等専門学校 83.9%

<大学等体験入学事業の事例>
 明石工業高等専門学校では、平成7年度より体験入学事業を行っており、平成13年度は、県内の中学生、保護者703名を対象に、工作機械を使用したものづくり体験、設計製図の体験、航空写真の分析、建築設計や都市計画などの体験授業を行った。

(2)ものづくりに係る生涯学習の現状

 青少年をはじめとする国民の「科学技術離れ」「理科離れ」が指摘されている中、ものづくりに関する学習の機会を様々な場で提供できる体制を整備することが必要。

 国民の「科学技術離れ」「理科離れ」が指摘されている中、科学館、公民館、博物館における行事の実施や、学校開放、放送大学における各種講座の開設など、様々な場においてものづくりをはじめとした各種の学習機会の提供が行われている。

第3回国際数学・理科教育調査結果

理科の成績
  小学校 中学校
昭和45年(第1回) 1位/16国 1位/18国
昭和58年(第2回) 1位/19国 2位/26国
平成 7年(第3回) 2位/26国 3位/41国
平成11年(第3回追跡調査) 実施していない 4位/38国
(注)小学校については昭和45年及び58年は5年生、平成7年は4年生の成績。中学校については各年とも2年生の成績。

理科に対する意識
  理科が「好き」または「大好き 理科の勉強は楽しい 将来、科学を使う仕事がしたい 生活の中で大切
平成7年 56%(73%) 53%(73%) 20%(47%) 48%(79%)
平成11年 55%(79%) 50%( − ) 19%( − ) 39%( − )
前回との差 △1 △3 △1 △9
(注)(  )内は国際平均値
( − )内については国際平均値は発表されていない

資料:国際教育到達度評価学会(IEA)「第3回国際数学・理科教育調査」

(具体的事例)
<国民の科学技術に対する理解の増進のための取組み事例>

○ロボット創造国際競技大会(ロボフェスタ)
 平成13年度にはロボット競技、展示、フォーラム等を通じ、青少年をはじめとする国民が、ものづくりの楽しさと最先端科学技術を体験できる世界初の国際的総合イベント「ロボッ創造国際競技大会(ロボフェスタ)2001」が関西地域及び神川県において開催され、約56万人の参加が得られた。

○マルチメディアを活用した取組
 科学技術振興事業団は、「サイエンス・チャンネル」としてCS放送等を通じて国民に科学技術に関する情報を提供するめのテレビ番組の作成や、最新のコンピューター技術によっ仮想的に科学技術を体験できる「バーチャル科学館」の開発実施した。

○大学・研究機関の公開
 研究施設を一般市民に公開し、研究活動の紹介や講演会などを実施する大学の研究所や大学共同機関が多くなっている。えば、国立天文台においては、青少年を含む一般市民を対象「天体観望会」を毎月2回実施。また、東京大学生産技術研所では、一般公開の中で中高生を対象とした見学コースや産研究交流の展示を設けるなど、社会に開かれた研究所づくり推進。また、平成13年度の「科学技術週間」においては、全各地の研究施設や科学館等において、施設の一般公開や実験作教室、講演会の開催など約850件のイベントを開催。

○子ども科学技術白書
 文部科学省では、児童生徒を対象に科学技術に対する興味を持つきっかけを与えることを目的として、科学技術白書の内をもとに、平成11年度以降「子ども科学技術白書」を毎年発し、都道府県教育委員会、都道府県立図書館、科学館及び総博物館等に配布している。

<大学子ども開放プランの例>
 名古屋工業大学において、「ものづくりに挑戦!(未来への体験)」と題し、ワイヤ放電加工機を使用したプレート作りや、普通旋盤を操作してのペーパーウエイト製作、液体窒素を作る実験等を行った。
 中学生が普段触れることができない工作機械に触れる体験をとおして、機械操作の安全を身をもって実感できる機会となった。また、製作や実験を通して工学や「現在の中学校での勉強」の大切さや意味を考える契機となった。

<国立科学博物館の取組事例>
 小・中学生を対象とした、ガラス工作、ろうそく製作等の実習用のシナリオ・テキスト等、科学に対する興味・関心を増進させるための学習プログラムを開発・実施し、その成果を全国の博物館、公民館、学校等に普及を図っている。

 専修学校においては、実践的な職業教育や専門的な技術教育等を実施しているほか、社会人の再教育機関としての役割も担っており、ものづくりをはじめとした多様な学習機会を提供。

(具体的事例)
<産学連携によるプログラム開発の例>
 産業界のニーズを踏まえた、ニットについての豊富な知識・技術を有する即戦力となる人材を育成するため、ファッション関連企業と専修学校の連携のもと、マーケティングリサーチから製品化まで一貫したニットデザイン企画に係る先進的な教育プログラムの開発を実施している。

<全国専門学校ロボット競技会>
 平成13年度に実施された第10回大会においては、自律型ロボット対戦競技と有線型ロボット対戦競技が行われた。前者については、センサー技術と高度なプログラミング技術が、後者については、設計・製作技術が競われた。

<専修学校開放講座の例>
 新潟コンピューター専門学校では、小学生高学年程度とその保護者を対象として「音と光に反応する科学作業ロボット製作講座」を実施した。ロボットを組み立てることにより、ものづくりの楽しさや親子のふれあいが体感できたとともに、ICやセンサーの取り付けなどのメカニックな工程により、科学に対する興味・関心を深めることができた。


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