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平成14年3月4日

フィブリノゲン製剤使用後の肝炎発生数等に関する
三菱ウェルファーマ(株)からの追加報告について

1.概要

 ウェルファイド株式会社(現三菱ウェルファーマ株式会社)は、平成13年3月19日付けで厚生労働省が発出した薬事法第69条第1項の規定による報告命令に基づき、フィブリノゲン製剤の納入先医療機関及び個々の医師に対し、当該製剤投与者の肝炎発生状況等についてアンケート調査(回収期限平成13年4月30日)を実施したところであり、その結果について、同年5月18日、厚生労働省に報告が行われた。
 しかしながら、上記回収期限の後平成13年末までの間に、同社に対し、新たに37医療機関215名の医師等から回答があったことから、同社においては、フィブリノゲン使用によると思われる肝炎発生率及び発生数について推計値を再計算し、平成14年3月4日厚生労働省に報告した。

2.平成13年5月18日付け報告と今回の報告の比較

(1) 平成13年5月18日付け報告からの主な変更点は以下のとおりである。

  5月18日報告 今回の報告(増加分)
回答数 医療機関数 1,821 1,849
医師等の数 2,743 2,958
アンケートで
把握された
使用症例数
静注 3,663.5 3.922.5
2,228.5 3,297.0
5,892.0 7,219.5
上記のうち
肝炎発生例数
静注 142.5 180.5
13.5 48.5
156.0 229.0
推定
肝炎発生率
静注 3.9% 4.6%
0.6% 1.5%
推定
肝炎発生概数
静注 8,051 9,409
474 1,185
8,525 10,594

(2) 平成13年5月18日付けで報告された以下の調査結果については、変更がない。

(1) 医療機関や患者の特定を行うことが困難であること
・ 昭和39年から昭和54年までの期間について、当該製剤の医療機関への納入状況等の記録が残されていない。
・ 納入記録が残っている医療機関においても、診療録の保存期間が10年以内とされている場合が8割を超える。
(2) 極めて広範囲の医療現場で使用されていたこと
・ データの残っている昭和55年以降において、7千を超える医療機関等に当該製剤が納入されている。
・ 産婦人科疾患、内科疾患、手術等、20を超える診療科において広く使用されていた。

3.厚生労働省の対応

○ 平成13年5月18日付けで報告された調査結果により、フィブリノゲン製剤を使用した医療機関や患者を特定することが困難であること、極めて広範囲の医療現場で使用されていたことなどが明らかになった。

○ したがって、医療機関及び患者を特定して検査の実施等を呼びかけることは現実的に不可能であるので、肝炎有識者会議の報告書を踏まえ、輸血を受けた患者等とあわせて一般国民全体を対象とする対策の中で、感染の可能性について情報提供、検査推奨及び相談指導を行うとともに、感染者が医療を適切に受けられるよう、普及啓発等を中心として対応している。

<一般対策の具体例>

(1) すでに実施したもの

・ 政府公報(テレビ番組など)による国民への幅広い呼びかけ
・ C型肝炎に関する問答集(Q&A)の周知(フィブリノゲン製剤を使用された疾患名を含め、ホームページに掲載)
・ 肝臓週間の活用(ポスターによる検査の推奨、パネルディスカッションなど)
・ HIV検査とあわせた肝炎ウイルス検査
(2) 平成14年度から実施するもの
・ 老人保健法に基づく基本健康診査における肝炎ウイルス検査
・ 政府管掌健康保険等の生活習慣病予防健診における肝炎ウイルス検査
・ 保健所における肝炎ウイルス検査

(照会先)
厚生労働省医薬局血液対策課
西田 林 (内線2905)


平成14年3月4日

厚生労働大臣 坂口 力 殿

三菱ウェルファーマ株式会社
取締役社長 飯田 晉一郎

「命令書(厚生労働省発医薬第166号)別紙2に対するご報告」
以後の経過について

 平成13年3月19日付命令書(厚生労働省発医薬第166号)をもって平成13年5月18日を期限として報告が求められておりました同命令書別紙2のフィブリノゲン製剤使用後の肝炎発生状況に関しましては、ご命令を踏まえて納入先医療機関及び個々の医師に対して平成13年3月21日から平成13年4月末を回収期限としてアンケート調査(以下、「今回の調査」という。)を行い、その結果は、5月16日分まで集計して平成13年5月18日にご報告(以下、「5月18日報告」という。)申し上げました。しかしながら、その後も調査を継続された医療機関もあり、平成13年12月末迄に37医療機関から215枚のアンケート追加提出を受けましたが、今後新たな情報が弊社に寄せられる可能性は殆どないと考えられる段階に至りましたので、すべてのアンケートにつき再集計し下記の通りご報告申し上げます。

1.「今回の調査」の対象

 「5月18日報告」時点以降、8施設から新たに調査協力が得られ、フィブリノゲン製剤の使用の有無を調査できた医療機関も28施設増加した。また、医師記載アンケートを回収できた医療機関は28施設増え、医師アンケートの回収枚数は215枚増加して2,958枚となった。

表1 「今回の調査」の対象
  5月18日報告   12月末現在 増減
納入先医療機関等 7,004 7,004 ±0
調査対象医療機関注1) 5,548 5,556 +8
使用有無を調査できた軒数 3,852 3,880 +28
医師アンケート回収軒数 1,821 1,849 +28注2)
医師アンケート回収枚数 2,743 2,958 +215
注1) 納入先医療機関等から、特定不能のもの、医療目的以外で納入されたもの、廃院、調査協力が得られなかった医療機関等を除いた軒数
注2) 「5月18日報告」以後に37施設から215枚の医師アンケートが寄せられたが、そのうち新規な施設は28施設であった。

 なお、今回の調査で確認できたカルテの保管期間は次のとおりであった。
  5月18日報告   12月末現在 増減
カルテの保管期間が明らかな軒数 4,903軒 4,910軒 +7
カルテの保管期間が10年以内の軒数 4,140軒 4,146軒 +6
10年以内の占める率 84.4%   84.4% ±0


2.「今回の調査」における主な使用診療科と使用症状について

表2 当該製剤を静注で使用した診療科と主な使用疾患・用途
  5月18日報告   12月末現在 増減
使用疾患・用途を回答した医師等 963 989 +26
診療科数 22 22 ±0
主な診療科(回答件数ベース) 産婦人科、外科、内科、小児科の順 変化なし

表3 当該製剤をフィブリン糊として使用した診療科と主な使用疾患・用途
  5月18日報告   12月末現在 増減
使用疾患・用途を回答した医師等 377 401 +24
診療科数 23 23 ±0
主な診療科(回答件数ベース) 外科、心臓(血管)外科、脳(神経)外科、
整形外科、産婦人科の順
変化なし


3.「今回の調査」による肝炎発生率、発生概数の推定

○ 使用症例数と肝炎発生の有無の両方に整合性のある具体的な記載があり、肝炎発生率の推定に使用できたアンケート枚数は、5月18日報告の 654枚から33枚増えて 687枚となった。これに基づく使用症例数、肝炎発生例数、推定肝炎発生率を表4に示す。
 なお、これらの数値は輸血等との併用例を含んでいる。

表4 フィブリノゲン製剤(全体)の使用症例数注1)、肝炎発生例数注1)及び推定肝炎発生率注2)
フィブリノゲン
製剤
使用症例数 肝炎発生例数 推定肝炎発生率
  5月18日
報告
  12月末
現在
5月18日
報告
  12月末
現在
5月18日
報告
  12月末
現在
全体 静注 3,663.5 3,922.5 142.5 180.5 3.9% 4.6%
2,228.5 3,297.0 13.5 48.5 0.6% 1.5%
5,892.0 7,219.5 156.0 229.0 2.6% 3.2%

(医師アンケートで使用症例数と肝炎発生の有無の両方に整合性のある具体的な記載のあった枚数は「5月18日報告」では654枚、12月末では687枚。)
注1)使用症例数と肝炎発生例数はアンケート回答に基づく実数
注2)推定肝炎発生率はアンケート回答に基づく推定値


 静注での使用症例数は、5月18日報告時点から259例増えて3,922.5例となり、肝炎発生例数も38例増えて180.5例となった。これは、一大学の一診療科から、「静注での使用症例数104例、肝炎発生例数34例」との報告が新たに寄せられたことによる。
 なお、当該診療科での肝炎発生例34例はすべて輸血等との併用症例であった。
 フィブリン糊としての使用症例数も5月18日報告時点から1068.5例増加し、肝炎発生例数も35例増えた が、これは主として、一医療機関(上記の静注での一大学とは別の医療機関)から「糊としての使用症例数 950例、肝炎例数 29例(うち、輸血等との併用例 27例)」との情報が新たに得られたためである。当該医療機関では、昭和55年2月から昭和63年6月までの心臓血管外科での手術例 2,768例について調査が実施された。

○ 肝炎発生概数の「5月18日報告」と12月末現在の推定結果は次のとおりである。

表5 5月18日報告時点でのフィブリノゲン製剤投与後の推定肝炎発生概数
フィブリノゲン
製剤
推定使用
数量注1)
平均
使用量
推定使用
者数注2)
推定肝炎
発生率
推定肝炎
発生概数注3)
全体 静注 445,900本 2.16本 206,435例 3.9% 8,051例
92,400本 1.17本 78,974例 0.6% 474例
538,300本 285,409例 3.0% 8,525例

表6 12月末現在のフィブリノゲン製剤投与後の推定肝炎発生概数
フィブリノゲン
製剤
推定使用
数量注1)
平均
使用量
推定使用
者数注2)
推定肝炎
発生率
推定肝炎
発生概数注3)
全体 静注 445,900本 2.18本 204,541例 4.6% 9,409例
92,400本 1.17本 78,974例 1.5% 1,185例
538,300本 283,515例 3.7% 10,594例
注1) 推定使用数量は、データの残っている昭和55年度以降の納入数量から、静注での使用量とフィブリン糊としての使用量を仮定したもの
注2) 推定使用者数=推定使用数量÷平均使用量
注3) 推定肝炎発生概数=推定投与例数×推定肝炎発生率

 平均使用量は、糊としての使用では変化がなかったが、静注では5月18日報告の2.16本から2.18本となり、推定使用者数はわずかに減少した。しかし、上記の推定肝炎発生率の変動に伴い、推定肝炎発生概数は合計で約2,000例増加し10,594例となった。また、全体の推定使用者数から見た推定肝炎発生率も0.7%増えて3.7%となった。なお、これらの数値は輸血等との併用例を含んでいる。

以上


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