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厚生労働省発表
平成13年11月8日
厚生労働省職業安定局
高齢・障害者雇用対策部
障害者雇用対策課
電話番号03-5253-1111
(内線 5852)
夜間直通03-3595-1173

「今後の障害者雇用施策について」
「障害者雇用問題研究会」報告

1.趣旨

 障害者雇用問題研究会(座長 保原喜志夫 天使大学教授)は、平成12年11月より、経済情勢や職場環境の変化等に対応した施策の推進、雇用と保健福祉の連携強化、精神障害者の雇用施策の充実等を課題とし、13回にわたり議論を行い、このたび、その結果がとりまとめられた。

2.報告の主な内容

(1) 障害者の職域等雇用の場の拡大

(1) 特例子会社制度の活用等による環境整備
 特例子会社及び他の子会社を合わせた企業グループでの雇用率算定を可能とすることにより、親会社の責任の下で企業グループ全体での障害者雇用への取組を促すことが必要。

(特例子会社制度とは、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を持った場合に、子会社に雇用されている労働者数を親会社に合算して、実雇用率を計算できることとするもの。)
(2) 除外率制度の縮小
 除外率及び除外職員について、準備期間を置いて、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小を進めていくことが必要。
(除外率とは、障害者の就業が困難とされる職種の労働者が相当の割合を占める業種に設けられている障害者雇用義務の軽減措置。国、地方公共団体では除外職員を設定。)

(2) 障害者への総合的支援の充実
(1) 就業・生活面からの支援の強化
 身近な地域で、就業面及び生活面で一体的かつ総合的な支援を展開するため、「障害者就業・生活支援センター」(仮称)による支援事業の推進が必要。
(2) 職場適応のための人的支援の強化
 知的障害者、精神障害者等の特性を踏まえた、事業所内での職場適応を援助する外部の専門家による人的支援事業(職場適応援助者(ジョブコーチ)事業)の推進が必要。
(3) 精神障害者の雇用の促進
(1) 雇用支援の対象とすべき精神障害者の範囲
 精神障害者保健福祉手帳の交付該当者(手帳所持者及び申請すれば交付される者)とすることが適当。手帳を所持していない精神障害者については、プライバシーに十分配慮した把握・確認方法の構築が必要。
(2) 精神障害者の雇用支援施策
 特性に応じた総合的な施策の推進、ネットワークの構築、採用後精神障害者施策の強化等を実施することが必要。
(3) 雇用義務制度の対象とする方向での取組
 雇用支援施策の積極的展開による関係者の理解、採用後精神障害者の実態把握等の課題を解決するための取組がまず必要。このため、関係者の参画する調査研究の場を早期に設け、検討を進めていくことが必要。


障害者雇用問題研究会報告概要

1. 現状

 (1) 障害者雇用の状況

○ 我が国の障害者雇用の状況は、さらに厳しさを増している雇用失業情勢の下、有効求職者数は過去最高、障害者の解雇届出者数も高水準である等厳しい状況にある。
○ 企業の実雇用率の改善のテンポは鈍化しており、平成12年6月で1.49%と前年から横ばいであり、雇用率未達成企業の割合は過去最高の55.7%である。

 (2) 施策の進展

○ 平成9年の障害者雇用促進法の改正以後、新たな取組が進んできている。
○ 知的障害者の雇用義務化による企業の取組、特例子会社の設立、あっせん型の「障害者雇用支援センター」による事業が進展し、「障害者緊急雇用安定プロジェクト」は大きな成果を上げ「障害者雇用機会創出事業」につながっている。
○ 精神障害者に焦点を当てた事業の充実も進められてきている。

2. 課題

 (1) 経済情勢や職場環境の変化等に対応した施策の推進

○ 厳しい経済情勢の下、企業組織の再編等が進む一方で、職場環境の改善等によるバリアの低減等、障害者雇用を取り巻く状況が変化している。
○ 障害者の雇用の場の確保、職域拡大のため、企業組織の変化等に合わせた雇用しやすい条件の整備や、除外率制度についての縮小に向けた取組が必要となっている。

 (2) 雇用と保健福祉の連携強化

○ 就業を希望する障害者が増加する中で、就業支援と生活支援が必要な障害者も増加しており、きめ細かな職業的自立支援策の充実・強化が重要である。
○ 厚生労働省の発足による統合のメリットを生かして、障害者の雇用施策と保健福祉施策の連携を強化する等総合的な施策の推進を図ることが求められている。

 (3) 精神障害者の雇用施策の充実

○ 近年、医療・福祉の進展等により、社会参加や就業への可能性を持つ精神障害者の増加が見られており、就業を希望する精神障害者も大きく増加している。
○ 精神障害者の雇用促進のための施策の一層の充実が必要であり、雇用率制度のあり方についての検討も求められている。

3. 今後の施策の方向

 (1) 障害者の職域等雇用の場の拡大
 障害者の雇用の場の確保に大きく寄与している雇用率制度により、障害者雇用をさらに促進し、雇用におけるノーマライゼーションの実現を図ることが求められている。

  (1) 特例子会社制度の活用等による環境整備

○ 従来障害者雇用を困難と考えていた企業においても、障害者雇用を進める方法として特例子会社制度が活用されている。障害者雇用の実績などから、障害者本人にとってメリットが大きいこと、企業にとって障害者雇用に積極的に取り組む契機となるという点で、特例子会社制度が評価されるようになっており、その経営の安定及び発展、設立促進が必要である。
○ 分社化による事業のスリム化の進展、持株会社制度の導入等による企業再編成の進展、国際会計基準の導入等の状況に対応し、特例子会社制度を活用した障害者の雇用の場を拡大するため、以下のことを行うべきである。

○ 重度障害者多数雇用事業所についても、先駆的な取組が期待されるため、引き続き支援が必要である。
  (2) 除外率制度の縮小
○ 職場環境の整備等が進む中、障害者にとって困難と考えられていた職種においても就業可能性が高まっており、特例子会社制度、助成金の充実などの条件整備が図られている。また、障害者の資格欠格条項の見直しが進められている。
○ 民間企業の除外率、国及び地方公共団体の除外職員は、以下の点で不合理がある。


○ したがって、企業の除外率については、職場環境の整備等を更に進めつつ、今後、周知・啓発を行いながら、準備期間を置いて、廃止の方向で一定の期間をかけて、段階的に除外率を引き下げ、縮小を進めていくべきである。
○ 国及び地方公共団体の除外職員も、企業との均衡を考慮して、同様に、廃止の方向に進めていくべきであり、この場合、実態も踏まえ機関ごとの除外率に転換を図り、縮小を進めていくべきである。
  (3) 雇用率達成指導と助成措置の改善
○ 個々の事業主に対して障害者雇用を促すため、障害者雇用率達成努力に大きな問題のある企業名の公表も含め、引き続き厳正な雇用率達成指導が必要である。
○ 障害者雇用の環境整備を図る助成金については、手続きの簡素化を含め確実・迅速な処理、支給基準の明確な周知等により、より利用しやすい仕組みとするとともに、ニーズに合致した内容の改善等の検討が必要である。
○ 調整金と報奨金の支給額の在り方については、納付金徴収対象となる企業の範囲と併せて、今後、経済情勢も見つつ、検討することが必要である。
  (4) 試行的雇用を活用した障害者の雇用機会の創出
○ 事業主に障害者雇用への理解を深めるきっかけ作りを行う「障害者雇用機会創出事業」については、その成果を踏まえ、今後さらに事業の推進が必要である。
  (5) 多様な雇用・就業形態への対応
○ 事業所での常用雇用だけでなく、在宅勤務、短時間勤務、派遣労働等など多様な形態が生じており、障害者の特性を踏まえた対応が望まれる。派遣労働については派遣先企業に対して、障害者の作業環境への適応等に係る助言等の支援が重要である。
○ 関係団体等からの適切な情報提供などにより、自営業も含めた職場の拡大の促進も図ることが必要である。

 (2) 障害者への総合的支援の充実
 職業リハビリテーションは保健福祉との連携強化を図る中で新たな施策の展開が可能となっており、障害者の特性に合わせたきめ細かな支援の充実が求められている。

  (1) 就業・生活面からの支援の強化

○ 身近な地域で、就業面及び生活面で一体的かつ総合的な支援が展開できるよう、雇用、保健福祉、教育等の関係機関の支援ネットワークの拠点として、「障害者就業・生活支援センター」(仮称)による支援事業を全国に展開していくべきである。
  (2) 職場適応のための人的支援の強化
○ 事業所内で職場適応を援助する外部の専門家による人的支援を行うため、地域障害者職業センターにより、職場適応援助者(ジョブコーチ)による人的支援事業の全国展開を行うべきである。
○ 地域障害者職業センターにおいては、社会福祉法人など障害者の就労支援の経験のある機関を活用することが必要である。
  (3) 障害者の職業準備訓練、職業能力開発の促進
○ 地域障害者職業センター、障害者職業総合センターの事業の充実が必要である。
○ 障害者職業能力開発校については、障害者のニーズにあった能力開発等が必要であり、知的障害者養護学校の職業教育の分野で協力が期待される。
  (4) 福祉的就労から雇用への移行の推進
○ 福祉的就労から雇用への移行が進むよう、授産施設等に対する雇用関係の情報提供等による施設側の意識改革、適正な方法による「施設外授産」の実施により、施設利用者の雇用につなげるきっかけを作ることが重要である。
○ 就業が継続できなくなった障害者について、社会福祉施設等に一時的に受け入れる等「双方向性」の確保を含め、再度就職できる仕組みの充実が必要である。
  (5) 地域におけるネットワークの形成
○ 日常的支援を安定して行うには、職業生活を送る身近な地域で「障害者就業・生活支援センタ ー」を拠点として、ネットワークを構築することが効果的である。これと公共職業安定所が連携しながらこうした役割を果たすことも重要である。
○ 専門的な職業リハビリテーションを実施し、都道府県で中心となって専門的な知識・技術等によりネットワークの形成を促す機関として、地域障害者職業センターがその役割を果たすものと考えられる。
  (6) 雇用支援の人材の確保・育成
○ 障害者の就業支援のネットワークを支える人材の確保が重要であり、ジョブコーチ事業等を担う人材の育成等を図ることが重要である。
  (7) 職場での障害者の権利擁護
○ 職場において障害者の権利が擁護されるため、障害者雇用連絡会議や個別労働紛争解決制度の活用等が考えられる。
 (3) 精神障害者の雇用の促進
 「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」報告における課題の整理も踏まえて、本研究会で、今後の施策の方向を取りまとめた。

  (1) 雇用支援の対象とすべき精神障害者の範囲

○ 障害者雇用促進法の雇用支援の対象となる精神障害者については、精神障害者保健福祉手帳の交付該当者に相当する障害を有する者(手帳所持者及び申請すれば交付される者)とすることが適当である。手帳を所持していない精神障害者については、プライバシーに十分配慮した把握・確認方法を構築することが必要である。
○ 精神障害者に対する雇用支援を進めることを明確にすることが必要である。

  (2) 精神障害者の雇用支援施策

  ア. 特性に応じた総合的な対策の推進

○ 職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用を図るとともに、障害者雇用機会創出事業についてもさらに活用されることが必要である。
○ 精神障害者を雇い入れた事業主に対しては、特定求職者雇用開発助成金の期間延長等の支援措置の拡充が必要である。また、支援対象となる労働時間の下限の引下げ等の検討を進めることが必要である。
○ 「グループ就労を活用した精神障害者の雇用促進モデル事業」について、その状況を踏まえ、今後、拡充を検討することが必要である。
  イ. ネットワークの構築
○ 雇用と医療・福祉の間の双方向のシステムを円滑に機能させつつ、関係機関の総合的な支援が行えるよう、「障害者就業・生活支援センター」の活用が必要であり、精神障害者社会復帰施設等における取組を促すことが必要である。
○ 「地域雇用支援ネットワークによる精神障害者職業自立支援事業」や「医療機関等と連携した精神障害者のジョブガイダンス事業」等の拡充が必要である。
  ウ. 採用後精神障害者施策の強化
○ 採用後精神障害者への支援のため、関係機関の密接な連携の下での企業や精神障害者本人に対する相談体制の確立や円滑な復帰のためのウォームアップの場の確保等が必要である。特に職場のメンタルヘルス対策との連携も必要である。
○ 障害者雇用継続助成金等については、採用後精神障害者を対象とする必要がある。
また、納付金に基づく助成金についても同様の検討が必要である。
  エ. きめ細かな啓発・広報の展開
○ 精神障害者の雇用の促進と安定を図るためには、関係者や社会全体の理解の促進が重要であり、障害者団体等とも連携したきめ細かな啓発・広報が必要である。
  (3) 雇用義務制度
○ 精神障害者も雇用義務制度の対象とする方向で取り組むことが適当と考えられるがそのためには雇用支援施策の積極的展開と拡充を図りつつ、その実績を周知することにより、当事者を含む関係者の十分な理解を得るとともに、対象とする精神障害者の把握・確認方法の確立、採用後精神障害者を含む精神障害者の実態把握等制度適用に必要な準備を的確に講じるべきであり、関係機関・組織の十分な連携の下に、こうした課題を解決するための取組を図ることがまず必要である。
○ このためにも、今後、こうした実態把握等の取組を行うため、関係者の参画する調査研究の場を早期に設け、継続的に検討を進めていくことが必要である。

  (4)その他

(1) 障害者雇用促進施策の検討について
(2) 障害者のニーズの変化と政策施策に係る評価について
(3) 障害者の範囲・種別の捉え方等について
(4) 経済的自立のための所得確保について


障害者雇用問題研究会報告
− 今後の障害者雇用施策について −

はじめに

 我が国の障害者雇用施策は、昭和35年の「身体障害者雇用促進法」制定により本格化した。ついで、昭和51年の同法の改正により身体障害者雇用率制度が導入され、さらに平成9年の知的障害者の雇用義務化など状況の変化を踏まえた見直しが行われて、障害者雇用率制度を中心として、雇用の促進が図られてきた。
 昨今の障害者雇用の状況は、全般の経済情勢と同様に厳しいものがあるが、経済・就業構造等の変化に的確に対応するとともに、近年開始された新たな施策の取組の芽を育てていくことが求められている。
 さらに、本年1月の厚生労働省の発足は、保健福祉施策との一層の連携を可能とし、障害者の雇用施策の充実強化につながることが期待される。
 こうした中、本研究会は、高齢・障害者雇用対策部長の依頼に基づき、平成12年11月より、前回の見直しの契機となった平成8年8月の障害者雇用問題研究会報告及び平成9年1月の障害者雇用審議会意見書において今後の検討課題とされた除外率制度及び精神障害者の雇用義務制度をも含め、障害者雇用施策全般について、13回にわたり鋭意検討を行ってきた。特に、精神障害者の雇用施策については、1年程早くスタートした「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」(岡上和雄座長)の報告を踏まえ、障害者雇用施策全般を考える中で検討を行った。
 今般、その結果を、今後の障害者雇用施策の方向として取りまとめたので、報告する。

 本報告書が障害者雇用施策の一層の推進につながることを望みたい。


目次

1 現状
 (1) 障害者雇用の状況
 (2) 施策の進展

2 課題
 (1) 経済情勢や職場環境の変化等に対応した施策の推進
 (2) 雇用と保健福祉の連携強化
 (3) 精神障害者の雇用施策の充実

3 今後の施策の方向
 (1) 障害者の職域等雇用の場の拡大
  (1) 特例子会社制度の活用等による環境整備
  (2) 除外率制度の縮小
  (3) 雇用率達成指導と助成措置の改善
  (4) 試行的雇用を活用した雇用機会の創出
  (5) 多様な雇用・就業形態への対応

 (2) 障害者への総合的支援の充実
  (1) 就業・生活面からの支援の強化
  (2) 職場適応のための人的支援の強化
  (3) 障害者の職業準備訓練、職業能力開発の促進
  (4) 福祉的就労から雇用への移行の推進
  (5) 地域におけるネットワークの形成
  (6) 雇用支援の人材の確保・育成
  (7) 職場での障害者の権利擁護

 (3) 精神障害者の雇用の促進
  (1) 雇用支援の対象とすべき精神障害者の範囲
  (2) 精神障害者の雇用支援施策
  (3) 雇用義務制度

 (4) その他
  (1) 障害者雇用促進施策の検討について
  (2) 障害者のニーズの変化と政策実施に係る評価について
  (3) 障害の範囲・種別の捉え方等について
  (4) 経済的自立のための所得確保について


1. 現状

(1) 障害者雇用の状況

 我が国の最近の雇用失業情勢をみると、平成13年9月の完全失業率が5.3%と過去最高水準となるなど、さらに厳しさを増しており、こうした中で、障害者の雇用の状況は、以下のとおり、厳しい状況にある。
 公共職業安定所に求職登録する障害者数(有効求職者数)は、平成12年度末で、約13万2千人と過去最高であり、平成7年度末の約8万8千人から大幅に増加している。障害種別に見ると、特に、知的障害者、精神障害者の伸びが大きく、重度の身体障害者の割合も増加している。これらは厳しい雇用情勢の反映というだけでなく、就職が困難と考えられていた障害者も就業意識が高まってきたことの現れという側面もあるものと考えられる。
 また、障害者の解雇届出者数も高水準にあり、平成12年度は2,517人と前年度の2,425人を上回るものとなっている。
 企業の実雇用率については、改善を続けているが、近年は厳しい雇用失業情勢を反映して改善のテンポは鈍化しており、平成12年6月現在の企業の実雇用率は1.49%と前年から横ばいである。雇用率未達成企業の割合は過去最高の55.7%となり、半数を超える企業が未達成の状態である。企業の規模別に見ると、これまで低かった1,000人以上の大企業では雇用率が上昇しているが、なお多くの企業(74.5%)が未達成である。一方、これまで高かった100人未満の中小企業の雇用率が大幅に低落している。
 国、地方公共団体の実雇用率については、法定雇用率2.1%が適用される機関で2.35%、2.0%が適用される都道府県等の教育委員会では1.22%となっている。

(2) 施策の進展

 このような厳しい状況ではあるが、様々な施策が実施され、障害者雇用に向けた新たな取組が行われている。
 平成9年の障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)の改正により、知的障害者の雇用義務化が行われたことにより、企業における知的障害者の雇用への取り組みが進んできている。
 また、障害者雇用のために企業が設ける「特例子会社」は平成9年の認定基準の改正により設立が進み、平成13年8月現在で112社、雇用されている障害者は約2,800人に達している。業務内容については、障害者の特性に応じた再編成を行い、生産現場だけではなく、データ入力、メール配送、清掃など幅広い分野に及んでおり、中堅・大企業を親会社とする企業にも障害者の職場が広がっている。
 さらに、市町村レベルで障害者の雇用に係る支援を行う「障害者雇用支援センター」は平成9年の法改正により、社会福祉法人を活用したあっせん型の設立が可能となり、平成13年度で施設設置型13か所、あっせん型21か所が設置されている。平成11年度からは、生活支援センターと組み合わせて雇用支援と生活支援を一体的に行う「障害者就業・生活総合支援事業」が試行的に実施され、地域のネットワークを活用した障害者の雇用支援が成果を上げている。
 さらにまた、日本障害者雇用促進協会を中心に様々な職業リハビリテーションサービスの拡充も行われてきている。障害者の基本的な労働習慣の体得や仕事への適性を見極めるため地域障害者職業センターが模擬的な場所で訓練を行う「職業準備訓練」の充実のみならず、職場実習、試行的雇用(トライアル雇用)を通じて障害者の就職につなげていく手法も進んでいる。こうした中で、地域障害者職業センターにおいて就職前の職場定着を支援する「職域開発援助事業」が11年度から全国実施となり、障害者の就業体験の機会を提供する「障害者就業体験支援事業」も平成10年度から実施された。特に、雇用情勢が急速に悪化する中、平成11年1月から実施された、障害者の雇用のきっかけ作りを行う「障害者緊急雇用安定プロジェクト」は、平成13年6月までで、6,407人が職場実習を行い、4,990人がトライアル雇用に移行し、最終的に4,176人が本雇用に移行する等、中小企業を含め大きな成果を上げたが、この成果を踏まえ、平成13年度から、トライアル雇用を行う「障害者雇用機会創出事業」が実施されている。
 以上の施策に加えて、精神障害者に焦点を当てた事業の充実も進められてきており、平成11年度から、求職活動の準備段階における支援として、公共職業安定所の職員が医療機関等で就職活動に関するガイダンスを実施する「医療機関等と連携した精神障害者のジョブガイダンス事業」、職業準備訓練等の前段階の職業リハビリテーションとして、地域障害者職業センターが医療、福祉等の関係機関と連携して実施する「地域雇用支援ネットワークによる精神障害者職業自立支援事業」が実施されている。また、平成12年度から、知的障害者、精神障害者等の就職後の職場定着のための支援として、「職場適応援助者(ジョブコーチ)による就職後の人的支援パイロット事業」が実施されており、中小企業を中心に利用され、障害者の雇用の安定に効果を上げている。

2. 課題

(1) 経済情勢や職場環境の変化等に対応した施策の推進

 厳しい経済情勢の下、グローバル化の進展等により、持株会社による企業組織の再編等が進められているとともに、製造現場の縮小、サービス産業の職場の増加がみられる。一方で、技術革新による機械化、生産・事務作業におけるIT化の進展、職場環境の改善等によるバリアの低減等、障害者雇用を取り巻く状況の変化が進んでいる。
 このような状況に対応して、法定雇用率が達成されるよう、障害者の雇用の場を確保し、新たな職域の拡大を図るとともに、企業組織の変化等に合わせて障害者を雇用しやすい条件整備を行うことが必要となっている。
 こうした中で、雇用率を算定する上で、障害者の就業が困難と考えられた職種のある業種に設定されている除外率については、技術革新、作業環境の変化等により、実態に合わなくなってきており、縮小に向けた取組が必要となっている。
 この問題については、平成9年の障害者雇用審議会意見書においても、「今後、除外率設定業種における障害者の雇用促進を図りつつ、除外率制度については、基本的に縮小を前提とした検討を行い、次回の法定雇用率の見直しに併せて措置することが適当である。」とされているところである。

(2) 雇用と保健福祉の連携強化

 就業を希望する障害者が増加する中で、知的障害者、精神障害者、重度身体障害者など、安定した職業生活を維持するためには、就業支援だけでなく、生活習慣の形成や日常生活の自己管理などへの生活支援、医療面での支援を行うことが必要である障害者も増加している。こうした中で、障害者の多様なニーズに応えるきめ細かな職業的自立支援策の充実・強化を図ることが重要である。
 また、厚生労働省の発足による統合のメリットを生かして、障害者の雇用施策と保健福祉施策の連携を強化し、就業面と生活面の両面からの支援の強化、個々の障害者の多様な能力に着目して福祉的就労から雇用につなげる施策の展開など総合的な施策の推進を図ることが求められている。

(3) 精神障害者の雇用施策の充実

 近年、医療・福祉の進展等により、社会参加や就業への可能性を持つ精神障害者の増加が見られており、就業を希望する精神障害者も大きく増加している。そのため、精神障害者の雇用促進のための施策の一層の充実が必要であり、施策の対象となる精神障害者の範囲の整理、その特性にあった施策の充実、採用後に精神障害を有するようになった者への対応、関係者や社会全体の理解の促進、雇用率制度の在り方についての検討等が求められている。
 この問題については、平成9年の障害者雇用審議会意見書においても、「精神障害者の雇用率制度については、一層の雇用支援策の充実を図りつつ、障害者プランの計画期間である平成14年度までに、引き続き検討を加え、適切な措置を講じていくことが必要である。」とされているところである。

3. 今後の施策の方向

(1) 障害者の職域等雇用の場の拡大

 我が国の障害者雇用施策においては、雇用率制度は最も重要な柱の1つであって、雇用率の達成が、企業、国、地方公共団体等が障害者雇用を進める上での目標となり、これまでも障害者の雇用の場の確保、職域の拡大に大きく寄与してきた。
 こうした中で、各事業所において、バリアフリー化の進展により施設設備の整備等が図られ、様々な職場・職域で障害者雇用が進んでおり、障害者が障害のない者と一緒に働けるように働きやすい職場の環境整備を更に進めていくことが重要である。
 すなわち、雇用率制度によって障害者雇用をさらに促進することにより、制度の基本理念である雇用におけるノーマライゼーションの実現を図ることが求められている。

(1) 特例子会社制度の活用等による環境整備

 従来障害者雇用を困難と考えていた企業においても、障害者雇用を進める方法として、特例子会社制度が活用されている。特例子会社については、ノーマライゼーションの観点からの議論も行われたが、これまでの障害者雇用における実績などから、以下のように評価されるようになっている。

ア. 障害者本人にとってメリットの大きい制度である

イ. 企業にとって障害者雇用に積極的に取り組む契機となる制度である
 また、これまでの実績を見ると、障害者雇用は困難としていた企業においても、特例子会社の設立を契機として障害者の特性に合った業務を創出することができており、また、特例子会社を有する企業の実雇用率は総じて高くなっており、全体としての障害者雇用の促進に対する寄与も大きくなっている。
 これらを踏まえると、障害者の職域及び雇用の場の拡大を図るため、特例子会社について、経営の安定及び発展を図るとともに、設立を促進するための施策展開が必要である。
 しかしながら、特例子会社制度については、昨今の経済経営環境の変化により、以下の点への対応が迫られている。

ア.分社化による事業のスリム化等が進展する中で、親会社が特例子会社制度の活用によって障害者の雇用促進を図るという方策を変更せざるをえなくなったり、それぞれの会社で雇用率を達成するため、分社化した子会社へ特例子会社で雇用されていた障害者を配置転換することが必要となる等、障害者の雇用を前向きに進めていくことが困難な状況が生じている。

イ.持株会社制度の導入による企業合併、企業グループの再編成が進展しており、既に設立されている特例子会社の親会社が、持株会社等による企業グループに吸収された場合に特例子会社の経営及び障害者雇用が不安定化する恐れがある。

ウ.国際会計基準の導入により企業グループの連結決算が行われ、企業会計上の子会社の範囲は、従来の持株基準から支配力基準に拡大してきている。
このような状況に対応し、特例子会社制度を活用して障害者の雇用の場の拡大が図れるようにするためには、特例子会社に関する雇用率算定方式について、次のような見直しを行い、親会社の責任の下で、企業グループ全体での障害者雇用の促進に取り組むことを促す仕組みを構築すべきである。

ア.企業グループの中で、他の子会社と特例子会社との間に一定程度の出資、仕事発注等の関係があり、親会社が特例子会社及び他の子会社も含めて障害者雇用の促進に責任を有することができると認められる場合には、親会社が中心となって、特例子会社及び他の子会社を合わせてグループで雇用率の算定を行えるようにすること

イ.特例子会社と親会社の関係においては、現在、持株基準をもとに保有する議決権が1/2を超えていることを要件としているところであるが、これを支配力基準に拡大すること
また、障害者雇用に大きな役割を果たしてきた重度障害者多数雇用事業所については、中小企業が多く、経済経営情勢が厳しい中ではあるが、引き続き障害者雇用への先駆的な取組を行い、障害者雇用のノウハウを各方面に提供することが期待されるため、引き続き支援が必要である。
国、地方公共団体については、出資関係などがないことから特例子会社のような仕組みを取ることはできないが、企業における特例子会社の取組事例等を踏まえた障害者の雇用制度の在り方を検討する必要がある。また、障害者を雇用する企業に対し、優先的に業務を発注し、障害者の雇用の継続が図られるようにすることも必要である。

(2) 除外率制度の縮小

 現在、雇用率算定の基礎として企業については除外率、国及び地方公共団体には除外職員が設けられている。この雇用率制度における除外率制度については、昭和51年の身体障害者雇用審議会の意見書において、できるだけ縮小する方向で全体的な見直しについて検討することとされ、また、納付金の額の算定における除外率の適用については、法附則において定められた暫定措置であり、一定の条件を満たせば速やかに廃止することとされていた。
 こうした中で、平成9年の障害者雇用促進法の改正においては、技術革新、作業環境の改善等を踏まえ、事業主間の経済的負担の不公平の是正を図る観点から、調整金及び報奨金の支給の際の雇用率の算定には除外率を適用しないこととされた。 さらに、その後の障害者雇用を取り巻く状況を見ても、職場環境の整備等が進む中で、障害者が就業することが困難と考えられていた職種においても就業可能性が高まっており、数多くの雇用事例が生じている。企業が障害者雇用を進める上でも、特例子会社制度、各種助成金の充実などの条件整備が図られてきている。
 また、障害者の社会経済活動への参加を促進する観点から、平成11年より各種施策に係る障害者の資格欠格条項の見直しが進められ、本年6月には「障害者等に係る欠格事由の適正化を図るための医師法等の一部を改正する法律」の制定により、国民の健康及び安全に関する資格制度等において定められている障害者に係る欠格事由についても適正化が図られたところである。
 教育の現場においても、障害者である教員がいることは、児童・学生の障害者に対する理解が進むことになるということが指摘されている。
 一方で、除外率の設定による業種ごとの障害者雇用への取組状況を見ると、除外率が高い業種は、除外率が低い業種や非設定業種に比べて一般に障害者雇用への取組が不十分であり、除外率を設定していることにより業種間で不公平が生じている。
 以上のことから、現行の除外率・除外職員については、次のような不合理があり、見直しが必要となっている。

ア.障害者が障害のない者と同等に生活し活動する社会をめざすノーマライゼーションの理念から見て、一部の業種や職種においては障害者の雇用義務を課さないこととする仕組みには問題があること

イ.技術革新、職場環境の整備等により、従来障害者が就業できないとされていた職種にも就業が可能となっている等、実態に合わなくなってきていること

ウ.当該業種、職種における障害者の雇用機会を少なくし、障害者の職域を狭めることになること。特に、各種資格制度の門戸が障害者にも開かれつつある中で、就業の場が閉ざされているとの印象を与えかねないこと
しかしながら、直ちに除外率・除外職員を廃止することについては、職場環境の整備、採用等の面から困難な点があるものと考えられる。
したがって、企業の除外率については、職場環境の整備等を更に進めつつ、今後、周知・啓発を行いながら、準備期間を置いて、廃止の方向で一定の期間をかけて、段階的に除外率を引き下げ、縮小を進めていくべきである。
この場合、除外率適用業種において、除外率縮小と併せて障害者雇用への取組が推進されるよう、該当業種に対する啓発の強化をはじめ環境の整備が必要である。
また、国及び地方公共団体の除外職員についても、企業の除外率設定の基礎であることから、企業との均衡を考慮して、同様に、廃止の方向に進めていくべきであり、この場合、現行の仕組みは当該職種に障害者が就業できないという印象を与えかねないこと、段階的に縮小を図る方法をとることができないことから、職員構成等の実態も踏まえ機関ごとの除外率に転換を図り、一定の期間をかけて、段階的に除外率を引き下げ、縮小を進めていくべきである。

(3) 雇用率達成指導と助成措置の改善

雇用率の低い事業主等に対しては、公共職業安定所等において障害者雇用率達成のための指導を行っており、特に雇用率の低い事業主には、雇入れ計画の作成命令、雇入れ計画の適正実施の勧告、特別指導、企業名の公表という段階を踏んだ指導を行っている。こうした措置は、個々の事業主に対して障害者雇用を促す上で大きな役割を果たしており、障害者雇用率達成努力に大きな問題のある企業名の公表も含め、引き続き厳正な雇用率達成指導が必要である。
一方、障害者を雇用する事業主に対する支援としては、障害者雇用納付金制度による事業主間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整があるが、事業主からは調整金や報奨金の支給時期が年末であるために年度内に計画的に活用しづらいとの指摘もある。このため、調整金及び報奨金の支給時期の早期化について検討することが必要である。
障害者雇用の環境整備を図る上で、納付金制度に基づく助成金も大きな役割を果たしている。しかしながら、助成金を利用する事業主からは、助成金の支給基準が明確に周知されていない点があること、申請から支給までの手続きの事務が複雑で相当の時間を要するといった問題が指摘されている。このため、助成金については、OA機器により作成した申請書・請求書の提出を可とするなど手続きの簡素化を含め、確実、迅速な処理を進めるよう努めるとともに、支給基準の明確な周知を図り、事業主がより利用しやすい仕組みとすることが必要である。
また、施設の新設などの際に少数の事業主に多額の助成金が支給されるよりも、障害者雇用に貢献している多数の事業主に助成措置が行われるようにすべきとの意見もある。このため、施設設置の助成金の支給対象とする範囲のあり方、障害者雇用を進める多数の事業主が利用できる助成金の充実等の見直しを行うことが必要である。
さらに、都道府県障害者雇用促進協会、地域障害者職業センターにおいて、事業主に雇用管理のノウハウを提供する事業が実施されているが、その推進に当たっては相互の連携を図るとともに、助成金事業との一層の連携を図ることが必要である。
この他、障害者雇用については、事業主をはじめ社会全体の理解の促進が重要である。このため、障害者雇用が進んでいない業種等における障害者雇用への取組、知的障害者、精神障害者の雇用の取組が推進されるよう、事業主のニーズを踏まえた好事例やマニュアルを活用し、より効果的な啓発、講習を行うとともに、障害者雇用促進月間などの機会を活用しつつ、広報・啓発活動についての積極的な展開が必要である。
なお、現行では、従業員数56人以上の企業に雇用義務が課されているが、法定雇用率に達しない場合に納付金を支払う義務は暫定措置として従業員数301人以上の企業を対象としたことから、法定雇用率を超えて雇用した場合の調整金(1人当たり月2万5千円)は従業員数301人以上の企業を対象とし、従業員数300人以下の企業に対しては報奨金(1人当たり月1万7千円)が支給されている。これについては、小規模の障害者多数雇用事業所も障害者を雇用する際には大企業と同じ負担をしていることから、調整金と報奨金を一本化するとともに、併せて、納付金制度の対象となる範囲を従業員数301人以上の企業とする措置を見直し、対象企業を従業員数56人以上の企業に広げるべきとの意見もあり、今後、経済情勢も見つつ、その在り方について検討することが必要である。

(4) 試行的雇用を活用した雇用機会の創出

障害者雇用をめぐる状況が厳しい中で、事業主に障害者雇用への理解を深めるきっかけ作りを行い、積極的に障害者の雇用機会を創出することが重要である。
こうした観点から平成11年1月から「障害者緊急雇用安定プロジェクト」が実施され、多数の障害者が雇用に結びついたが、その要因として企業が、職場実習と試行的雇用(トライアル雇用)を通じて無理なく障害者雇用の経験ができたこと、障害者の能力・適性を実際に4ヶ月にわたって見極めることができたこと、適性に応じた実習、訓練が可能になったこと等企業の実態を踏まえた施策の展開が行われたことがあげられている。特に、事業主団体が強力に事業を推進したことも要因として大きく、行政、企業、支援団体が一体となって事業を推進した地域で活発に利用され成果を上げている。
障害者緊急雇用安定プロジェクトを受けて、平成13年度から開始された「障害者雇用機会創出事業」についても、この事業での経験を生かし、事業主団体の協力も得て、地域での関係機関との連携を図りながら、活用を進めるとともに、その成果を踏まえ、今後さらに事業を推進することが必要である。
また、障害者雇用機会創出事業の前段階として、職場実習が必要な場合がある。これに対しては、「職場適応訓練」等の既存の事業を活用することが考えられるが、特に短期間の職場適応訓練である「職場実習」の活用を図ることが重要である。
さらに、医療リハビリテーションの一環として実施されている「精神障害者社会適応訓練事業」から障害者雇用機会創出事業のトライアル雇用への円滑な移行が図られるようにすることが必要である。

(5) 多様な雇用・就業形態への対応

障害者の雇用形態については、事業所での常用雇用だけでなく、在宅勤務、短時間勤務、派遣労働等など多様な形態が生じているが、労働条件の面にも留意しつつ、障害者の特性を踏まえた対応が望まれる。
特に、短時間勤務については、直ちにフルタイムで働くことが困難な障害者にとって必要な形態であるため、後述するようにこうした場合の支援方策の検討が必要である。また、通勤が困難な重度障害者の雇用・就労の一形態として期待される在宅就労についても、IT技術の進展により一層の普及が期待されるようになり、その推進のため、仕事の受発注や技能の向上に係る援助を行う支援機関の育成を検討することが必要である。さらに、派遣労働については、雇用責任は派遣元にあるものの、労働者が職務に従事する派遣先企業に対して、障害者を活用しやすくするという観点から、障害者の作業環境への適応等に係る助言等の支援を行うことが重要である。
また、関係機関の支援を受けながら、障害者がグループで企業における就労を体験する形態も見られており、ここからさらに雇用へつなげていけるようにすることが必要である。

さらに、障害者による専門技術を生かした起業の例も見られており、関係団体等からの適切な情報提供などが行われるようにして、自営業も含めた職場の拡大の促進を図ることが必要である。

(2) 障害者への総合的支援の充実

 障害者の職業リハビリテーションは、公共職業安定所における職業紹介相談、地域障害者職業センターにおける職業評価、職業準備訓練、障害者職業能力開発校における職業訓練などを中心に実施してきたが、保健福祉との連携強化を図る中で新たな施策の展開が可能となっており、障害者の特性に合わせたきめ細かな支援の充実も求められている。また、こうした中で関係機関の連携によって職業リハビリテーションの効果を高めることが必要となっている。

(1) 就業・生活面からの支援の強化

障害者の雇用を進める上で、就職や職場適応などの就業面の支援ばかりでなく、生活習慣の形成や日常生活の自己管理などへの生活支援も重要であり、身近な地域で、就業面及び生活面で一体的かつ総合的な支援が展開できる体制が必要である。
このため、平成11年度から、試行的に実施してきた「障害者就業・生活総合支援事業」の成果を踏まえ、身近な地域において、雇用、保健福祉、教育等の関係機関が連携して、障害者の就業面及び生活面について一体的に支援を行うためのネットワークの拠点として、「障害者就業・生活支援センター」(仮称)による支援事業を全都道府県で実施し、全国に展開していくべきである。
この場合、実施主体としては、社会福祉法人、民法法人、医療法人、市町村といった幅広い主体が実施できるようにするとともに、保健福祉施策における障害者生活支援事業と合わせた事業の展開を図ることが必要である。
事業内容については、これまでの試行事業の状況を踏まえ、障害者に対する就業に関する相談及びこれに伴う日常生活上の相談、障害者の求職活動についての助言・相談、職業準備訓練及び職場実習のあっせん、就職後の雇用管理に関する助言・相談、障害者の雇用支援をするボランティアに関する情報の収集・提供・研修等が考えられる。
また、教育の分野においては、今後、養護学校生等の職業生活への個別移行プログラムを策定し、雇用、保健福祉等の関係機関と連携して就労支援を図ろうとしているところであるが、こうした動きも踏まえつつ、養護学校卒業生の在職者等のフォローアップについても、障害者就業・生活支援センターで実施することが期待される。
さらに、事業の推進に当たっては、都道府県、市町村においても地域の障害者への援助であることを踏まえ、必要な支援を行うことが重要である。
こうした観点から、可能な地域においては、地域雇用開発促進法の制度を活用し、地域求職活動援助事業として地域求職活動援助計画に位置づけ、国、都道府県、市町村の協力の下、事業が推進されることが望まれる。
なお、障害者就業・生活支援センターの事業が適切に推進されるよう、事業内容の評価を十分に行っていくことが必要である。

(2) 職場適応のための人的支援の強化

知的障害者、精神障害者等については、職場環境に慣れるまでに時間を要する傾向がある等の障害特性により、就職又は職場適応に課題を有する者も多い。このような障害者に対しては、事業所内において、就職前後を通じて、障害者の職場適応を援助する外部の専門家による障害特性を踏まえた直接的、専門的なきめ細かな人的支援を図ることが有効である。
平成12年度から、「職場適応援助者(ジョブコーチ)による人的支援パイロット事業」が実施されている。ジョブコーチの支援内容としては、障害者への取組として職場の人間関係の改善や職務内容の理解の向上等を図るとともに、事業主等への取組として障害者が抱えている課題への助言、作業指導の方策の助言等があり、集中支援期を経て事業主の支援体制への円滑な移行を図ることとしている。
今後、この試行事業の成果を踏まえ、地域障害者職業センターで就職前の支援に限定して実施してきた「職域開発援助事業」を就職前後の支援に改組発展させて、ジョブコーチによる人的支援事業の全国展開を行うべきである。
この際、地域障害者職業センターにおいては社会福祉法人など障害者の就労支援の経験のある機関を活用し、保健福祉機関との連携を図るようにすることが必要である。また、企業での障害者の雇用管理の経験を積んだ者をジョブコーチとして活用することも期待される。

(3) 障害者の職業準備訓練、職業能力開発の促進

障害者が雇用されるためには、基本的労働習慣の形成、職場のルールの理解等の職業準備性を高めるとともに、職業に必要な能力の開発及び向上を図ることが必要である。特に厳しい経済情勢や技術革新の進展の下、産業構造、職業構造の変化が著しい中で、企業のニーズを踏まえて、障害者の希望、適性に合った訓練を実施することが必要である。一方で、障害者自身においても自らの職業能力を高めていく取組も求められている。
こうした中、地域障害者職業センターが実施する職業準備訓練や職業講習がより適切に行われるよう、障害者職業総合センターでは、職業リハビリテーションに関する調査・研究とそれに基づく職業リハビリテーション技法の開発を行っており、引き続き効果的な技法の開発とそれによる職業リハビリテーションサービスの充実に努めることが必要である。
障害者職業能力開発校については、現在全国で19校、2,750人の定員となっている。産業構造の変化に伴い、サービス業への就職拡大が図れるようにするなど、訓練内容を不断に見直し、障害の重度化・重複化、障害者の高齢化や訓練ニーズの多様化等に対応した能力開発が行われるようにするとともに、知的障害者、精神障害者等の特に配慮を必要とする障害者の職業能力開発の在り方を検討し、これらの障害者のニーズに応えていくことが必要である。また、視覚障害者に配慮したIT技術の習得のための機器・プログラムの導入なども進めることが必要である。なお、近年養護学校等の卒業生の就職率が低下傾向にあるが、障害者職業能力開発校において、知的障害者養護学校の職業教育の分野で協力を図るなど教育機関との連携を強化することが期待される。
また、事業所、社会福祉法人等を活用した「障害者能力開発施設」については、現在18施設となっており、これらの施設においては、様々な訓練科目が実施されているが、企業のニーズに合った内容とするためには、地元の行政機関の指導及び十分な連携の下で、一層の改善を図っていくことが必要である。
なお、就業した障害者については企業内で能力を高めていくことになるが、このための方策やこれに見合ったキャリアアップの方策についての検討を行うことも必要である。 さらに、障害者の職業能力について、その向上を図るためだけでなく、これを事業主をはじめとする国民一般に広く周知し、その理解を深めることが重要である。その観点からは、障害者技能競技大会の意義は大きく、その充実を図ることなどにより、障害者の能力開発について積極的な啓発を進めていくことが必要である。

(4) 福祉的就労から雇用への移行の推進

障害者の雇用を進める上で、授産施設における福祉的就労から企業等における雇用につなげることは重要な経路であるが、現状では、授産施設においては施設での作業訓練から雇用につなげるという本来期待される機能が十分に果たされておらず、障害者の社会福祉施設から雇用への移行は極めて限られたものとなっており、雇用への移行の機能の強化が図られるべきである。
また、福祉的就労の工賃は低額であり、障害年金等と併せても、経済的に自立した生活を営むことが困難な場合があるため、雇用への移行の機能の強化は、賃金収入による所得の確保を通じた障害者の経済的自立の促進にも資するものである。
こうした観点から、授産施設等に対する雇用関係の情報提供等による施設側の意識改革、雇用への移行を意識した作業内容の改善が図られるようにするとともに、企業内で授産施設の利用者である障害者が作業訓練を行う「施設外授産」を適正な方法で実施し、施設利用者を企業における雇用につなげるきっかけ作りを行うことが必要である。
一方で、就職はしたものの就業が継続できなくなった障害者について、離職後も十分フォローを行い、必要に応じて社会福祉施設等に一時的に受け入れる等「双方向性」の確保を含め、再度就職に向かうことができるような仕組みの充実を図ることが必要である。

(5) 地域におけるネットワークの形成

事業所での就業を支えるには、各支援機関が分断的に支援を行うのではなく、各支援機関の有する専門的な知識や技能を有効に活用し、相互に連携のとれた支援を行う必要がある。そのためには、様々なレベルで関係支援機関によるネットワークを構築するとともに、各分野の専門支援機関がネットワークを支えていくことが必要である。
特に、障害者に対し、必要な就業・生活両面からの日常的支援を安定して行うには、障害者が職業生活を送っている身近な地域で障害者就業・生活支援センターを拠点として、就業・生活支援に関し市町村等のレベルでの関係機関のネットワークを構築することが効果的であるため、障害者就業・生活支援センターによる支援を拡充していくことが必要である。この場合、同センターと職業紹介機能を有する公共職業安定所との連携も重要である。
一方、この就業・生活両面での日常的な支援のネットワークが機能するためには、それだけでは十分な対応が困難であると認められる障害者に対して専門的な職業リハビリテーションサービスを実施することが必要である。また、専門的な知識・技術等に基づき、都道府県レベルで中心となって、就業・生活支援センター等支援機関を育成・支援指導し、日常的な支援のネットワークの形成を促すような機関が必要である。このためには、基本的に都道府県ごとに設立されており、専門的な職業リハビリテーションサービスを推進している地域障害者職業センターがその役割を果たすものと考えられる。同時に、地域障害者職業センターを中心として、精神保健福祉センター等保健福祉機関などとの都道府県レベルでのネットワーク形成も必要である。
また、地方労働局と都道府県の関係部局との連携強化を図る「障害者雇用連絡協議会」において、必要に応じて労使団体、障害者団体等との連絡・調整を行う等、引き続き地域の実情に応じて障害者雇用の取組の促進を図ることが重要である。

(6) 雇用支援の人材の確保・育成

関係機関による障害者の就業支援のネットワークを形成する上で、これを支える人材の質量を確保していくことが重要である。このためには、今後、特に、障害者職業センターにおいて、ジョブコーチ事業を担う人材の専門性を高めるとともに、障害者就業・生活支援センターの支援者の育成を図ることが重要である。
また、障害者職業センターの職業カウンセラーと、学校教育や福祉部門の専門職との連携がとれるようにするとともに、福祉、保健、教育、医療等の各分野で就業支援を行う人材の育成を積極的に行い、各地域で活躍できるようにすることが必要である。
公共職業安定所においては、地域での職業相談業務が円滑に実施されるよう、職業相談員の一層の活用を図ることが重要であり、適切な研修の実施により職業相談員の資質の向上を図るとともに、障害者団体、障害者雇用企業等における活動経験者など専門的知識を有する者を活用することも検討することが必要である。
企業においては、職場での障害者の支援が十分に行われるよう、障害者雇用推進者及び障害者職業生活相談員による活動の活性化を図ることが必要がある。また、職場で医療面からも障害者を支えることが重要であり、このため、産業医の役割に着目し、産業医に対する障害者雇用支援に係る資質向上を図ることが必要である。

(7) 職場での障害者の権利擁護

 職場において障害者の権利が擁護されるためには、労働関係機関等において障害者からの申し出等に対応できるようにすることが重要である。
 このため、公共職業安定所、労働基準監督署、福祉機関、人権擁護関係機関等から構成される「障害者雇用連絡会議」の活用等により、関係機関の連携の下、障害者が職業生活を送る上での問題が生じた場合に迅速な対応が図られるようにすることが必要である。
 また、労働条件その他労働関係に関する事項について、個々の労働者と事業主との間で紛争が生じた場合に解決を援助する仕組みとして、都道府県労働局毎に置かれた紛争調整委員会によるあっせん等の個別労働紛争解決制度が設けられており、障害を有することを理由とした労働関係の紛争についても、今後活用が図られるものと考えられる。

(3) 精神障害者の雇用の促進

精神障害者の雇用促進の在り方については、「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」報告において課題の整理が行われたところである。本研究会においては、こうした課題の整理も踏まえて、検討を進め、今後の施策の方向を取りまとめた。

(1) 雇用支援の対象とすべき精神障害者の範囲

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律においては、広く精神疾患を有する者を精神障害者と規定するとともに、日常生活や社会生活に相当の制限を受ける障害の状態にある精神障害者に対して各種の支援策を講ずるため、精神障害者保健福祉手帳を交付することとしている。
一方、障害者雇用促進法には定義されてはいないが、一定の範囲の精神障害者については、職場適応訓練や各種助成金等の雇用支援施策の対象とすることとしている。すなわち、@)長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な障害者であって、A)精神分裂病、そううつ病又はてんかんにかかっている者及びこれら以外の者のうち手帳の交付を受けている者で、B)症状が安定し、就労が可能な状態にある者としている。
障害者雇用促進法の支援対象の要件と障害者基本法の対象となる障害者の要件がほぼ同等であることから、雇用支援の対象となる精神障害者については、精神障害者保健福祉手帳の交付該当者に相当する障害を有する者(手帳所持者及び申請すれば交付される者)とすることが適当である。この場合、手帳取得の普及促進を図るとともに、手帳を所持していない精神障害者については、プライバシーに十分配慮した把握・確認方法を構築することが必要である。
こうした点を踏まえて、精神障害者に対する雇用支援を進めることを明確にすることが必要である。

(2) 精神障害者の雇用支援施策

ア.特性に応じた総合的な施策の推進
精神障害者については、対人関係の形成が困難であったり、フルタイムの勤務が困難な者が多いといった障害特性から、就職を希望しても、雇用やその定着が円滑に行えない者が多い。このため、職場内での支援を受けたり、短時間労働やグループによる就労形態等により一定期間実際の企業で働く経験を経ることにより、一般雇用へ進めていくことが重要である。
こうした観点から、働く職場において直接的な人的支援を行う職場適応援助者(ジョブコーチ)は、新しい環境に慣れるのに時間がかかり、雇用管理により配慮を要する者も多い等の特性がある精神障害者の職場適応支援策として有効であるため、その活用が図られるべきである。
障害者雇用機会創出事業についても、障害者を短期間雇用することで本格的な雇用のきっかけづくりの機会を提供するものであり、精神障害者についてもさらに活用されるよう、ノウハウの蓄積、普及が図られることが必要である。
また、精神障害者を雇い入れた事業主に対する支援については、特定求職者雇用開発助成金の支給期間の延長等の助成措置の拡充が必要である。
さらに、現行の雇用支援施策となる労働時間の下限は週20時間であるが、就職を希望する精神障害者の中には、最初から週20時間以上働くことは困難な者も多いことから、今後は、精神障害者を対象とした雇用支援施策のうち、可能なものについては、労働時間が週20時間未満の者も対象にするか、あるいは少なくとも労働時間が週20時間になった時点で支援の対象にすることを検討することが必要である。
このほか、平成13年度より「グループ就労を活用した精神障害者の雇用促進モデル事業」が実施されているが、その状況を踏まえ、今後、拡充を検討することが必要である。

イ.ネットワークの構築
精神障害者の雇用支援を行うには、関係機関によるネットワークを形成し、雇用と医療・福祉の間の双方向のシステムを円滑に機能させつつ、関係機関の総合的な支援を行うことが必要である。このためには、障害者就業・生活支援センターが有効であり、精神障害者社会復帰施設等における取組を促すため、事業内容についての弾力的な対応を図るとともに、精神障害者の支援のノウハウを広めることが必要である。
また、公共職業安定所等の労働行政関係機関と医療・福祉等の関係機関が連携して総合的支援を行うため、「地域雇用支援ネットワークによる精神障害者職業自立支援事業」や「医療機関等と連携した精神障害者のジョブガイダンス事業」等の拡充を図ることが必要である。
さらに、こうした地域のネットワークを支える人材の育成・確保も必要である。

ウ.採用後精神障害者施策の強化
採用後に精神障害を有した者(採用後精神障害者)は、比較的規模の大きい企業等を中心に多数存在する中で、円滑な職場復帰や雇用の安定が大きな課題となっており、早急な対応が求められている。
採用後精神障害者の支援については、これまで実施されてきた職場のメンタルヘルス対策としての健康管理施策での対応に加え、地域障害者職業センターをはじめとする労働機関のみならず、医療・保健機関や福祉機関も含めた関係機関の総合的な支援が必要であることから、関係機関の密接な連携の下に、企業や精神障害者本人に対する相談体制を確立することが必要である。
また、採用後精神障害者の円滑な職場復帰には、復職前に一定期間ウォームアップをする場を確保することや、企業の対応だけでなく、ピアカウンセリングや配偶者をはじめとする家族に対するカウンセリングも行われること等が重要であり、これを支援するための施策が必要である。この場合、特に職場のメンタルヘルス対策として実施されている健康管理施策との連携が重要である。
さらに、現在身体障害者のみを対象としている障害者雇用継続助成金についても、採用後精神障害者をその対象とすることが必要である。また、納付金に基づく助成金についても同様の検討が必要である。

エ.きめ細かな啓発・広報の展開
精神障害者の雇用の促進と安定を図るためには、事業主のみならず、職場の同僚、精神障害者を支える医療・福祉関係者や家族、さらには精神障害者本人も含めた理解の促進ととともに、社会全体の理解の促進が重要である。
このため、精神障害者の雇用の実態を直接目にする機会を提供していくとともに、精神障害者の雇用事例集や雇用管理マニュアル等の作成・配付とともに、障害者団体等とも連携したきめ細かな啓発・広報が必要である。

(3) 雇用義務制度

精神障害者を雇用義務制度の対象とするかどうかを検討するに当たっては、次のような整理ができる。
すなわち、雇用義務制度を適用することの意義としては、
ア.精神障害者に対する様々な支援制度の推進力となる

イ.雇用義務制度の対象とすることが、社会的啓発や関係者の理解の促進に役立つ 等のことが考えられる。
一方、問題点としては、

ア.採用後精神障害者を含む精神障害者の実態把握と雇用に関する問題の解決が優先されるべきである。現段階では、採用後精神障害者の雇用義務制度上の位置付けの検討等も不十分である

イ.まず、企業の中に精神障害者の雇用管理のノウハウが蓄積されることが必要である

ウ.プライバシーに配慮した把握・確認方法の確立や本人の意思に反して雇用義務制度の対象とされること(いわゆる「掘り起こし」)の防止が必要である
等のことが考えられる。
また、雇用義務制度の対象としなくとも、精神障害保健福祉手帳取得者であって雇用された者についてのみ、平成9年の障害者雇用促進法の改正以前の知的障害者のように、各企業の実雇用率算定の対象とみなすべきとの考え方もあるが、これについては、採用後精神障害者の掘り起こしが懸念されること、身体障害者及び知的障害者の雇用に与える影響が大きいと考えられること等の問題がある。
以上のことから、いずれにしても、精神障害者も雇用義務制度の対象とする方向で取り組むことが適当と考えられるが、そのためには、雇用支援施策の積極的展開と拡充を図りつつ、その実績を周知することにより、当事者を含む関係者の十分な理解を得るとともに、対象とする精神障害者の把握方法及び確認方法の確立、採用後精神障害者を含む精神障害者の実態把握等制度適用に必要な準備を的確に講じるべきであり、関係機関・組織の十分な連携の下に、こうした課題を解決するための取組を図ることがまず必要である。
このためにも、今後、こうした実態把握等の取組を行うため、関係者の参画する調査研究の場を早期に設け、継続的に検討を進めていくことが必要である。

(4) その他

(1) 障害者雇用促進施策の検討について
 障害者雇用を促進するための施策の在り方については、当面の方向として上記のとおりとりまとめたが、障害者雇用の状況、諸外国の動向等も踏まえて、不断に検討を進めることが必要である。

(2) 障害者のニーズの変化と政策実施に係る評価について
 障害者雇用施策が効果的に進められるためには、対象者の年齢・性別や医療・福祉の進展等による障害者の雇用ニーズの変化に対応するとともに、雇用率以外にも各施策の運用の状況、実績を継続的に評価できるような仕組みが必要である。特に、今後、福祉、教育等とも連携して実施するに当たっては、事業成果の交流を図ることができるよう評価の指標も確立させておくことが重要である。こうした点を含め、評価の方法についても検討を行うことが必要である。

(3) 障害の範囲・種別の捉え方等について
 近年、これまでの身体障害、知的障害、精神障害の三障害の整理では当てはまりにくい高次脳機能障害、学習障害、高機能自閉症等が注目されるようになっており、今後これらについての適切な評価手法を確立するとともに、障害の範囲・種別の捉え方、認定基準の在り方等についても、保健福祉分野、雇用分野等を通じて適切な取扱いが行われるよう、今後検討を行うことが必要である。

(4) 経済的自立のための所得確保について
 障害年金の受給者については、雇用による賃金を得ることができれば年金と賃金を合わせた所得により地域で自立した生活を送ることができる可能性は大きく広がることになる。したがって、最低賃金制度の下で、障害者が年金と多様な雇用形態による賃金によって、所得確保が適切に図られるようにするということが重要であるとの意見もあり、その関係の在り方については全体の障害者施策の在り方を検討する中での課題である。


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