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医療制度改革試案

−少子高齢社会に対応した医療制度の構築−


 この医療制度改革試案は、少子高齢社会に対応した医療制度の実現に向けて、広く国民の論議に供するため、厚生労働省としてとりまとめたものである。
 今後、平成14年度予算編成までに成案を得、所要の法律改正案を次期通常国会に提出するものとする。


厚生労働省
平成13年9月25日



目次

第1 医療制度改革の基本方向

第2 保健医療システムの改革−21世紀保健医療ビジョン−

I 健康づくり、疾病予防の推進

II 医療提供体制の改革

1 今後の我が国の医療の目指すべき姿
2 当面進めるべき施策

第3 持続可能で安定的な医療保険制度の構築

I 医療保険制度の課題と平成14年度医療制度改革

II 医療保険制度の改革

1 給付の見直し
2 保険料の見直し
3 国民健康保険制度の財政基盤の強化
4 その他

III 高齢者医療制度の改革

1 老人医療費の伸び率管理制度の導入
2 対象年齢の見直し
3 患者一部負担の見直し
4 公費負担の重点化
5 老人医療費拠出金の算定方法の見直し
6 その他

IV 診療報酬・薬価基準等の見直し

V その他

1 保険者に関する規制緩和等
2 パート労働者や派遣労働者に対する社会保険の適用
3 徴収の一元化とレセプト審査の改革

(別添) 「21世紀の医療提供の姿」



第1 医療制度改革の基本方向


 国民の生命と健康を支える医療制度は、年金制度と並ぶ社会保障の基盤であり、これまで世界最高の平均寿命や高い保健医療水準を実現してきたが、急速な少子高齢化、低迷する経済状況、医療技術の進歩、国民の意識の変化など医療を取り巻く環境は大きく変化している。

 こうした環境変化に対応し、良質で効率的な医療を国民が享受していけるようにするためには、保健医療システム、診療報酬体系、医療保険制度といった医療制度を構成する各システムを、大きく転換していかなければならない。

○ 保健医療システムについては、健康づくり・疾病予防の推進を図るとともに、情報の開示、患者の選択の拡大、医療提供体制における機能分化・集約化等を進めることにより国民が安心・信頼できる質の高い医療サービスが効率的に提供される仕組みへと見直す。

○ こうした医療提供体制の構築に向け、診療報酬についても、基本に立ち返り、医療技術や医療機関の運営コストが適切に反映される診療報酬体系としていく。

○ 医療保険制度については、国民皆保険を基本に、各制度・世代を通じた給付と負担の公平化を図るとともに、保険者の統合・再編成や規模の拡大など運営基盤を強化しつつ、持続可能で安定的な制度を構築する。

○ 特に、高齢化の進展に伴いその重要度が増している高齢者医療制度については、急速に増大する老人医療費への対応が必要であり、世代間の公平な負担を実現するとともに、後期高齢者への施策の重点化・公費負担の拡充を図ることにより、保険者にとって重圧となっている拠出金を縮減する。

○ また、高齢者医療制度と密接に関連する介護保険制度との関係について、その実施状況を踏まえつつ、両制度の整合性に留意し、将来の介護保険制度の見直しにあわせて検討を進める。


 以上のような基本方向に向けて、当面する保険財政の破局を防ぐとともに、中長期的に持続可能な制度を確立するため、以下の事項を内容とする平成14年度医療制度改革を進める。



第2 保健医療システムの改革
−21世紀保健医療ビジョン−


I.健康づくり、疾病予防の推進

 21世紀の我が国を、すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするために、健康寿命の延長、生活の質の向上を実現する健康づくり、疾病予防の取組みを推進する。

(1)健康日本21の推進

○ 「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」(平成12年3月〜)を更に進め、多様な主体の連携のもと、生活習慣を見直し、健康づくりに取り組もうとする個人を支援する。

○ 住民に身近な市町村による実施計画づくりを進めるとともに、2005年度を目途に中間評価、2010年度に最終評価を行い、それを踏まえた運動の展開を図る。

(2)健康教育の推進、情報提供の徹底等

○ 生活習慣の見直しによる健康づくりの支援として、栄養・運動・休養・たばこ・アルコール等に関する健康教育の推進、情報提供の徹底等を図る。

(3)生涯を通じた保健事業の一体的な推進

○ 老人保健法・健康保険法・労働安全衛生法等に基づく各保健事業等において、生涯を通じた健康づくり・疾病予防を相互に連携しつつ一貫性を持って展開する。

(4)基盤整備

○ 調査研究の推進、人材育成・資質の向上等健康づくり・疾病予防の基盤整備を図る。

 これらの事項を内容とする健康増進法(仮称)の制定など法的基盤 の整備を含め、その推進方策を検討する。


II.医療提供体制の改革

1.今後の我が国の医療の目指すべき姿

 我が国医療提供体制について、今後一層質の高い効率的なものにしていくためには、国民全体で共有できる医療の将来像を形成することが不可欠であり、このため、国民や関係者の議論の契機として将来像のイメージを提示する。

○ 以下の事項を柱とする医療の将来像のイメージを「21世紀の医療提供の姿」(別添)として提示する。

(1)患者の選択の尊重と情報提供

  • 患者の視点の尊重と自己責任
  • 情報提供のための環境整備

(2)質の高い効率的な医療提供体制

  • 質の高い効率的な医療の提供
  • 医療の質の向上

(3)国民の安心のための基盤づくり

  • 地域医療の確保、医療の情報化等

○ 今回の将来像のイメージの提示を契機として、国民や関係者による活発な議論が行われ、これによる国民各層の幅広い合意に沿った医療提供体制の改革を進めていくものとする。


2.当面進めるべき施策

 今後の医療の方向性を念頭に置きつつ施策を進めていくこととし、当面、次のような課題に取り組むこととする。

(1)根拠に基づく医療の推進

○ 「根拠に基づく医療」(Evidence-based Medicine: EBM)を実施するため、質の高い最新医学情報を医療従事者や患者に提供するデータベースを整備する。(平成14年度より逐次実施)

○ EBMの考え方に基づいた診療ガイドラインについて、学会による作成を支援する。

(2)医療のIT化の推進

(ア)保健医療情報のグランドデザインの策定

○ 保健医療分野におけるIT化を推進するため、保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザインを策定し、平成14年度から5年間の保健医療の情報化計画・目標達成のための道筋と推進方策を示す。(平成13年度)

(イ)医療のIT化の推進

○ 電子カルテシステムの導入促進のため、用語、コード、様式などの標準化を平成15年度の完成を目途に進める。

○ 患者情報にアクセスする資格を認証するシステム(電子認証システム)について、技術面・制度面から検討を進め、結論を得る。(平成15年度)

○ 病歴等診療情報の病院・診療所間での共有、効果的活用による地域連携診療体制の充実に向け、電子カルテによる診療情報提供共有化モデル事業を実施する。(平成14年度)

○ 電子カルテの施設外保存を可能とする規制緩和を行う。(平成13年度)

(ウ)レセプト電算処理の推進

○ 大病院を中心にレセプト電算処理の計画的推進を図るとともに、次の取組みを行う。

(3)医療を担う適切な人材の育成・確保

○ 臨床研修の必修化に向け、研修目標や研修プログラムなど臨床研修の具体的な在り方について検討するとともに、研修医と研修病院の広域でのマッチング方式等について検討し、平成15年度までに結論を得る。

(4)広告規制の緩和

○ 客観的で検証可能な事項について、広告規制の更なる緩和を検討し、医療機関が広告可能な事項の拡充を図る。(平成13年度)

(5)医業経営の近代化・効率化

○ 医療機関の経営情報開示の在り方、医療法人における組織、運営など医業経営の近代化・効率化方策を検討するため、検討会を設置する。(平成13年度)

(6)医療安全対策の総合的推進

○ 今後の我が国の中長期的かつ体系的な医療安全対策のグランドデザインを策定する。(平成14年度)

○ 人的・組織的要因、医薬品・医療用具等物的要因の両面から、医療安全の推進のための具体的方策を検討する。(平成14年度)

(7)小児救急医療対策の推進

○ 小児救急患者を2次医療圏の範囲を超え広域で受け入れる「小児救急医療拠点病院」を新たに整備する。また、在宅当番医制における小児の初期救急対応のモデル的取組みを推進する。(平成14年度)



第3 持続可能で安定的な医療保険制度の構築

I.医療保険制度の課題と平成14年度医療制度改革

 我が国の医療制度を取り巻く諸課題について、平成14年度医療制度改革において取り組むとともに、高齢化がピークを迎える時期においても国民皆保険が安定的に運営されるよう、医療保険制度の在り 方について検討を進める。

○ 我が国の医療保険制度は、歴史的に被用者保険を基本に発展してきたが、自営業者や無職者など被用者以外の者を国民健康保険が全てカバーすることにより、昭和36年に国民皆保険を実現した。

○ その後、国民皆保険の礎となっている国民健康保険は、急速な高齢化の進展や産業・就業構造の変化に伴い、中高齢層が偏在するなど運営基盤が大きく変容し、老人医療費無料化制度の実施もあいまって、急速に財政悪化を招くに至った。

○ このため、制度間の負担の公平を図る観点から、昭和58年には老人保健制度が、昭和59年には退職者医療制度がそれぞれ創設されたほか、その後も累次の改正が行われ、国民皆保険の維持が図られてきた。

○ しかしながら、近年、高齢化の一層の進展等により、老人医療費が増嵩を続け、拠出金の負担の増大が保険財政に対する大きな圧迫要因となっている。また、一般の医療保険制度においては、かねてより制度間で給付率が異なる点などについて格差の是正が求められてきた。

○ 今般の平成14年度医療制度改革においては、現下の社会経済状況の下で早急に対応が求められているこうした課題に対処するため、増大する老人医療費の抑制、後期高齢者への施策の重点化、制度間の給付率の統一などの措置を講じることとする。

○ この平成14年度医療制度改革の実現により、医療保険制度は当面その安定が見込まれるが、皆保険実施後40年を経た現在、被用者保険と国民健康保険の二つの体系から成り立つ現行制度は、以下のような問題に直面している。

○ これらの課題を克服し、高齢化がピークを迎える時期においても国民皆保険の安定的な運営が確保されるためには、

(1) 国民の間に著しい負担や給付の格差が生じないこと
(2) 給付に必要な保険料の徴収など保険者事務が着実に行われること
(3) 効率的な保険運営が確保されること

といった条件を満たすことが必要であり、今後、これらを念頭に置きつつ、医療保険制度の改革に取り組む必要がある。特に、国民健康保険の今後を考える時、保険者間の統合は避けて通れない。今後の医療保険制度の在り方について早急に検討を開始し、結論を得るものとする。


II.医療保険制度の改革

1.給付の見直し(平成14年度実施)

 医療保険制度全体について、給付の公平化を図る観点から、各制度を通じ7割を基本とし給付率を統一するとともに、少子高齢化への対応として高齢者や乳幼児に対する給付の重点化を図る。

(1)給付率の一元化

(ア)給付率の7割への統一

○ 被用者保険及び国民健康保険の給付率を7割に統一する。

(イ)高齢者に係る給付率の見直し(IIIを参照)

○ 老人保健制度の医療の対象となる75歳以上の者等に係る給付率は9割とする。

○ 70歳以上75歳未満の者に係る給付率は8割とする。

(ウ)乳幼児に係る給付率の見直し

○ 3歳未満の乳幼児に係る給付率は8割とする。

(2)高額療養費に係る自己負担限度額の見直し

○ 高額療養費に係る自己負担限度額について、政府管掌健康保険の平均標準報酬月額の25%程度の水準(現行22%)に引き上げる。

○ 低所得者については、現行の限度額を据え置く。

(3)薬剤一部負担金制度の廃止

○ 平成12年健康保険法改正法附則に基づき、今般の制度改正全般の見直しと併せ、一般制度に係る外来薬剤一部負担金制度を廃止する。


2.保険料の見直し(平成15年度実施)

 近年の賃金形態の多様化等を踏まえ、被用者保険における保険料負担の公平を図るとともに、深刻な財政状況となっている政府管掌健康保険の保険料率の見直しを行う。

(1)総報酬制の導入

○ 被用者保険の保険料について、平成15年度より総報酬制を導入する。(厚生年金と同時実施)

(2)政府管掌健康保険の保険料率の引上げ

(ア)政府管掌健康保険の保険料率の引上げ

○ 平成15年度の総報酬制の導入にあわせて、保険収支の均衡に必要な保険料率を設定する。

(イ)保険料率上限の見直し

○ 被用者保険の保険料率上限等について、所要の見直しを行う。


3.国民健康保険制度の財政基盤の強化(平成15年度実施)

 国民健康保険制度の財政基盤の強化を図るため、共同事業の拡充や 保険者財政支援等所要の措置を講ずる。

(1)高額医療費共同事業の拡充等

○ 都道府県単位で行われている高額医療費共同事業について、その事業規模を拡大するとともに、支援措置の法制化等を図る。

(2)財政安定化支援事業の見直し

○ 財政安定化支援事業の見直しにあわせて、保険者の財政運営を支援する制度を創設する。

(3)保険料算定方法の見直し

○ 保険料の算定に係る所得控除額について、負担の公平化の観点から見直しを行う。


4.その他

○ その他所要の措置を講ずる。


III.高齢者医療制度の改革

1.老人医療費の伸び率管理制度の導入(平成14年度実施)

 高齢者医療制度の持続可能性を確保するため、老人医療費の伸びが経済の動向と大きく乖離しないよう、その伸び率を抑制する仕組みを新たに導入する。

○ 老人医療費の伸び率管理制度は、以下のように、(1)老人医療費の伸び率の目標値の設定、(2)目標値を踏まえた診療報酬の合理化、保健事業の推進等による医療の効率化等の推進、(3)目標を超過した場合の措置から成る仕組みとする。

(1) 老人医療費の伸び率の目標値の設定

 毎年度の老人医療費の総額の伸び率について、高齢者数の伸び率に一人当たり国内総生産の伸び率を乗ずることにより、目標値を設定する。

(2) 目標値を踏まえた医療の効率化等の推進

 上記の目標値を踏まえ、診療報酬の合理化、保健事業の推進等により、医療の効率化等に取組み、その達成に努める。

(3) 目標値を超過した場合の措置

 各年度の老人医療費の伸び率が目標値を超過した場合には、超過相当分を基礎として算定した調整率を次々年度の診療報酬支払額に乗ずる措置を講ずる。

2.対象年齢の見直し(平成14年度より順次実施)

 老人保健制度創設以降の高齢者の状況の変化、今後の高齢化の一層の進展等を踏まえ、給付の重点化を図り、支え手を増やす観点から、対象年齢を引き上げる。

(1)対象年齢の引上げ

○ 老人保健制度の医療の対象者の年齢を引き上げ、現行の70歳以上の者を75歳以上の者とする。

(2)65歳以上の寝たきりの者等の取扱い

○ 65歳以上の寝たきりの者等については、引き続き、老人保健制度の対象とする。


3.患者一部負担の見直し(平成14年度実施)

 高齢者の患者一部負担について、負担能力に応じた適切な負担を求める観点から、低所得者にきめ細かな措置を講じつつ、定率1割負担の徹底を図る。また、一定以上の所得の者には、一般の者との均衡に配慮しつつ、応分の負担を求める。

(1)患者一部負担割合の見直し

○ 老人保健制度の医療の対象者の患者一部負担は定率1割負担とする。

(ア)一定以上の所得の者

○ 一般の者と同等以上の所得を有する者については定率2割負担とする。

(イ)70歳以上75歳未満の者

○ 70歳以上75歳未満の者については定率2割負担とする。

(2)自己負担限度額の見直し等

○ 自己負担限度額について、低所得者に配慮しつつ見直しを行うとともに、以下のような措置を講じる。

(ア)一定以上の所得の者に係る自己負担限度額の特例

○ 一般の者と同等以上の所得を有する者に係る自己負担限度額については、一般の者の場合と同額とする。

(イ)低所得者対策の拡充

○ 住民税非課税世帯に属する者に係る自己負担限度額(24,600円)及び老齢福祉年金受給者に係る自己負担限度額(15,000円)を据え置く。

○ 現在、老齢福祉年金受給者のみが対象となっている負担軽減措置の対象者の範囲を拡大する。

(ウ)外来に係る負担の見直し

○ 外来の患者一部負担に係る月額上限制(3千円又は5千円)は廃止し、上記の自己負担限度額を適用する。


4.公費負担の重点化(平成14年度より順次実施)

 公費負担については、今後見込まれる急速な後期高齢者の増加等を踏まえ、制度の安定化を図る観点から、対象年齢の引上げにあわせ、公費負担の割合を引き上げる。

○ 老人医療に係る公費負担の割合を現行の3割から5割へ引き上げる。

○ 公費負担の割合は、対象年齢の引上げにあわせ、5年かけて毎年度一定率引き上げる。

○ 一定以上の所得の者に係る医療費については、公費負担の対象としない。


5.老人医療費拠出金の算定方法の見直し(平成14年度実施)

 老人医療費拠出金の負担の一層の公平を図るため、今般の対象年齢の引上げとあわせて、拠出金の算定方法の見直しを行う。

(1)老人加入率上限の撤廃

○ 老人医療費拠出金の算定に係る老人加入率の上限(30%)を撤廃する。

(2)退職者に係る老人医療費拠出金の負担の見直し

○ 退職者に係る老人医療費拠出金については、退職者医療制度において、負担するものとする。(現行では退職者医療制度によりその1/2を負担)


6.その他

○ その他所要の措置を講ずる。


IV.診療報酬・薬価基準等の見直し

 診療報酬については、患者の立場に立ったあるべき医療の姿を踏まえ、基本的な考え方の再検討を行い、基礎的な医療の充実を図るとともに、医療技術や医療機関の運営コストが適切に反映されるように体系的な見直しを進める。薬価基準の見直しを含め、一部については年度末までに結論を得るものとする。

○ 技術料や病院運営コスト等を踏まえた診療報酬体系の構築のため、医療機関のコストや部門別収支の検証・分析を進める。

○ あわせて、現在試行が進められている診断群別診療報酬支払い方式の調査検討を急ぐ。

 次期改定においては、上記の視点を踏まえつつ、最近の経済の動向、保険財政の状況等を勘案し、以下のような事項を中心に見直しを行う。

○ 高齢者の心身の特性に応じた報酬体系等の見直し

 療養病床については、医療保険適用病床と介護保険適用病床の機能をより明確化し、これに応じた報酬体系の見直しを行うことにより機能分化を促進するとともに、これとあわせて、長期入院に係る医療保険の給付の在り方を見直す。

○ 包括払いの拡大等支払い方式の見直し

 出来高払いと包括払いそれぞれの長所・短所等を踏まえた最善の組み合わせを基本としつつ、医療内容や医療機関の特性に応じた包括払いの拡大を図る。

○ 生活習慣病等に対する生活指導の重視

 生活習慣病をはじめとする慢性疾患においては、生活指導が重要であり、日々の診療において十分取り入れられるよう配慮する。

○ 特定療養費制度の拡大

 医療技術の急速な進歩に対応するため、新規技術の保険導入ルールや手続きの一層の明確化を図るとともに、これとあわせて、特定療養費制度の拡大を図る。

○ 薬価基準等の見直し

 薬価について適正化を進めるとともに、先発品と後発品、画期的新薬等に関し、算定ルールの見直しを図る。あわせて、保険医療材料価格についても適正化を進める。

○ 医療に係る情報提供の推進

 患者に対する診療情報の提供を推進するとともに、205円ルールの見直しなど医療事務の透明化を図る。


V.その他

 医療保険制度の運営の効率化等を図るため、保険者の自主的な事業運営の推進や規制緩和等の措置を講じる。
 また、保険料徴収や審査に関する事務の合理化・効率化を進める。

1.保険者に関する規制緩和等

(1)保険者による直接審査等(平成13年度より順次実施)

○ 保険者と医療機関の合意により、保険者自らがレセプトの審査支払いを行うこと及びその民間委託を可能とする。

○ 社会保険診療報酬支払基金の審査業務の在り方を見直すとともに、レセプト電算処理の推進等による業務の効率化や情報公開を推進する。

(2)保険者と医療機関の契約(平成14年度)

○ 健康保険法等の規定に基づき、保険者と医療機関が保険診療につき診療報酬に係る個別の契約を締結することを可能とする。

(3)レセプト電算処理の推進(平成13年度より順次実施)

○ レセプト電算処理に参加する地域や医療機関の個別指定制度の廃止等を行う。(第2のIIを参照)

(4)健康保険組合に関する規制緩和の推進(平成13年度より順次実施)

○ 健康保険組合の事業所編入等に関する認可基準の見直しや、各種届出事務に係る規制緩和を推進する。


2.パート労働者や派遣労働者に対する社会保険の適用

(1)パート労働者に対する社会保険の適用の在り方について、引き続き検討を行い、年金の次期再計算時に向けた議論を踏まえ、結論を得る。

(2)派遣労働者の就労実態等を踏まえた健康保険組合の設立を認めるとともに、適用基準の明確化等を行う。(平成14年度)


3.徴収の一元化とレセプト審査の改革

○ 年金、医療、介護、労働の保険料徴収については早急に一元化するための準備を開始する。また、インターネットによるレセプト送付を認め、効率的な審査を行うことにより事務費の削減を行う。



(別添)

21世紀の医療提供の姿



21世紀の医療提供の姿

I.我が国の医療提供体制の現状と課題

1.医療提供体制の効率性
2.競争が働きにくい医療提供体制
3.国民の安心できる医療の確保
4.医療提供体制に共通する情報基盤等の近代化・効率化

II.今後の我が国の医療の目指すべき姿

1.患者の選択の尊重と情報提供

(1)患者の視点の尊重と自己責任
(2)情報提供のための環境整備

2.質の高い効率的な医療提供体制

(1)質の高い効率的な医療の提供
(2)医療の質の向上

3.国民の安心のための基盤づくり

III.当面進めるべき施策

1.医療の質の向上と効率化
2.情報提供の推進とこれによる医療機関相互の競争の促進
3.安心でき、信頼される医療提供体制の確立
4.情報化基盤等医療基盤の近代化・効率化

(参考1)医療提供体制の各国比較
(参考2)我が国の急性期病床の必要数(試算)



21世紀の医療提供の姿


I.我が国の医療提供体制の現状と課題

 我が国の医療は、国民皆保険制度の整備とどの医療機関でも受診が可能なフリーアクセスの仕組みの下で、全般的な生活水準や公衆衛生の向上、医療関係者の努力等とも相まって、世界最高の平均寿命・健康寿命を達成し、WHO(世界保健機関)の評価においても、我が国の保健システムは世界最高と評価されている。
 しかし、近年、少子高齢化の進展、医療技術の進歩、国民の意識の変化等を背景として、以下のような課題も指摘されている。


1.医療提供体制の効率性

○ 我が国の医療提供体制は、病院については、諸外国に比べ人口当たり病床数は多いが、全体としてみれば、病床当たりの医療従事者が少なく、平均在院日数が長い現状にある。また、機能分化が十分に進んでいないことから、専門的な治療等について、個々の医療機関における技術の集積が進みにくい現状にある。このため、全体として重点化・効率化を進めることが課題となっている。また、医療機関の地域偏在、公的医療機関等の役割の明確化等の課題も指摘されている。
→ (参考1


2.競争が働きにくい医療提供体制

○ 医療については、患者保護の観点から広告が規制されていることに加え、客観的情報も不足し、患者が医療機関を選択しにくい状況にある。このため、患者の選択を通じた医療機関相互の競争が働きにくくなっている。


3.国民の安心できる医療の確保

○ 近年、医療安全や、小児救急をはじめとした救急時の医療など、安心できる医療の確保への要請が強い。

○ また、診療内容や治療の選択肢に関する情報や、他の医師・歯科医師の意見を求めることなどへの患者ニーズが増大している。


4.医療提供に共通する情報基盤等の近代化・効率化

○ 医療におけるIT化の推進や病名等の用語・様式等の標準化が遅れており、医療サービスに関する比較可能な客観的情報の提供を困難にし、医療の近代化・効率化を結果として妨げているという指摘がある。

○ また、医業経営に関する近代化・効率化が課題となる中で、関連制度の再検討も課題となっている。


II.今後の我が国の医療の目指すべき姿

 我が国の医療提供体制について、上記の様々な課題を解決し、一層質の高い効率的なものにしていくことが求められている。
 我が国の医療提供体制は、国民皆保険制度の下で、民間医療機関等数多くの関係者に支えられており、このような医療提供体制を21世紀にふさわしいものに変革していくためには、医療関係者、医療を受ける患者をはじめとした国民全体で共有できる医療の将来像を形作っていくことが不可欠である。

 ここでは、医療の将来像として、主要なものについて以下のとおり提示する。これは、この提示を契機として国民や関係者による活発な議論が行われることを通じて、国民各層の幅広い合意に沿った医療提供の変革の推進に資することを狙いとするものである。
 また、医療提供に携わる関係者だけでなく、情報公開の進展に連動して、患者の側においても責任ある参画が求められる。

(将来像のイメージの概要)

1.患者の選択の尊重と情報提供
○患者の視点の尊重と自己責任
○情報提供のための環境整備
2.質の高い効率的な医療提供体制
○質の高い効率的な医療の提供
○医療の質の向上
3.国民の安心のための基盤づくり
○地域医療の確保、医療の情報化等
  
医療の目指すべき姿の実現


将来像のイメージ

1.患者の選択の尊重と情報提供

(1)患者の視点の尊重と自己責任

(患者の立場を尊重した医療と患者の自己責任)

○ 患者への治療方針や治療方法の選択肢の説明が適切に行われ、患者と医師・歯科医師の信頼関係の下、患者の選択を尊重した医療が提供される。

○ また、他の医師・歯科医師の意見を求めることや患者相談への対応等、患者の選択や患者の意向が尊重される。

○ 患者においても、適切な情報提供と選択のための様々な援助を得て、自らの健康の保持のための努力を行い、自覚と責任をもって医療に参加するようになる。

(患者の選択を通じた医療の質の向上及び効率化)

○ 患者は、医療に関する客観的な情報を活用して医療機関を選択していく。これにより、医療機関側は医療の質や患者サービスの向上により競うこととなり、この結果、医療の重点化・効率化と質の向上が進む。


(2)情報提供のための環境整備

(医療における標準化・情報化の進展)

○ 医療における病名等の用語等の標準化と医療の情報化が進むことにより、医療機関ごとの診療実績等のデータ分析や、医療機関相互の比較を客観的に行う環境が整う。

(情報提供の在り方)

○ 患者の選択を可能にするため、急性期医療を担う病院を中心として、医療機関の専門性、診療実績(手術件数等)等や機能について適切に情報提供がなされる。

○ 医療機関の広告に関する規制の逐次見直しにより情報提供が進むとともに、患者に対して適切な保健医療の情報が提供されるための場が整備され、医療の情報開示のルールが定着する。

(患者向けの標準的診療ガイドラインの提供)

○ 「根拠に基づく医療」(Evidence-based Medicine:EBM)による文献データベースと、主要疾病の標準的診療ガイドラインが整備され、患者向けに、分かりやすい形で、最新の標準的診療ガイドライン等が提供される。


2.質の高い効率的な医療提供体制

(1)質の高い効率的な医療の提供

(情報開示・患者の選択を通じた機能分化のプロセス)

○ 病院病床の機能分化は、公私の役割分担を踏まえつつ、各医療機関自身の選択により進められていく。今後さらに情報開示と患者の選択が進むことにより、機能分化・集約化が促進される。

(急性期医療の効率化・重点化と質の向上)

○ 急性期病床においては、医療従事者の手厚い配置と治療の重点・集中化により、早期退院が可能になる。外来については、専門外来・特殊外来等への特化が進み、他の病院・診療所との連携が進む。これにより、平均在院日数が短縮化されるとともに、急性期に必要な病床数は集約化し、一定の数に収れんしていく。
→ (参考2

(病院病床の機能分担)

○ 急性期病床の集約化・在院日数の短縮化により、急性期病床以外の病院病床は、リハビリテーションや長期療養のための病床となるなど、機能分担が進み、患者の状態に応じた最も適切な医療が適切な場所で提供されるようになる。

(診療所等の役割)

○ 診療所や病床数の少ない地域密着型の病院においては、他の病院との連携の下、住民に最も身近な医療機関として、それぞれの特性に応じ、患者に密接な医療の提供拠点となる。

(医療従事者の適切な確保)

○ 医師、歯科医師、看護婦等の医療従事者については、将来の需給を見通した十分な計画性をもった養成が進められ、適正な供給数が確保されるとともに、地域的な偏在や診療分野間の格差が解消する方向に進む。

(2)医療の質の向上

(医師・歯科医師の資質向上のための臨床研修等の充実)

○ 適切な研修制度が確立され、すべての医師・歯科医師がそれぞれ総合的な診療能力を修得し、患者とより良い信頼関係を築ける十分な診療能力を有する医師・歯科医師として診療に従事する。

○ また、臨床研修終了後も、個々の医師・歯科医師の専門性に応じて、必要な知識及び技能を修得する機会が確保されている。

(「根拠に基づく医療」(EBM)の普及)

○ 「根拠に基づく医療」(Evidence-based Medicine:EBM)による文献データベースと、主要疾病の標準的診療ガイドラインが整備され、インターネット等によりどの地域のどの医療機関であっても最新の医学情報を容易に参照できる環境が整う。

(医療における標準化の進展)

○ 病名等の用語等の標準化、入院診療計画(いわゆるクリティカルパス)による院内の治療手順の標準化等、医療の質の向上に資する標準化が進む。

(第三者評価の普及)

○ 大多数の病院が日本医療機能評価機構等による第三者評価を受けるとともに、結果内容等については、インターネット等で広く提供される。

(医療技術の進歩とそれを踏まえた対応)

○ 遺伝子研究やこれを応用した治療法の開発、臓器移植や生殖医療等、医療技術の進歩、医療の高度化が進み、こうした医学・医療の最新の成果を、臨床現場において国民が効果的かつ効率的に選択して利用できるようになる。

(生活の質(QOL)を重視したケアの提供)

○ 長期慢性疾患の患者等継続的なケアを必要とする患者に対して、生活の質(Quality of Life:QOL)を重視した医療が提供される。

○ 入院医療においては、良質な療養環境が提供されるとともに、患者の社会復帰を目指したケアが提供される。また、外来機能の専門化・高度化、在宅ケアの充実等により、入院医療が主に担ってきた医療が社会生活を営みながら受けることができるようになる。


3.国民の安心のための基盤づくり

(地域で充足する医療)

○ 地域医療計画に基づき定められた二次医療圏において、地域の特性を生かしつつ、必要な医療の提供が確保されるとともに、医療機関相互の機能分担と連携が図られ、地域全体としては、医療圏内で通常の医療需要の充足が図られる。

(国民が安心できる医療提供の確保)

○ 医療安全対策や小児救急の確保対策等、現下の課題となっている諸問題については、患者の視点を十分に踏まえ、国民に真に安心できる医療を提供できるという観点から、行政と関係者との相互協力により解決が図られる。

(医療機関内や医療機関相互の情報化)

○ 大多数の医療機関において電子カルテ等院内情報システム等が導入され、電子的に診療記録や検査指示等が作成・伝達・保存される。これにより、医療機関内で患者データの一元管理と共有化が進む。

○ さらに、医療機関の間でネットワークによる画像等の検査結果の電送が普及し、円滑な患者紹介・逆紹介が行われるとともに、在宅においてかかりつけ医(歯科医)の診療を受けることができ、また、高度医療を提供する医療機関から離れた地域に居住する場合であっても、専門医による読影などを受けることができるようになる。


III.当面進めるべき施策

 II.に示した今後の医療の方向性を念頭におき、患者の視点を十分に踏まえつつ、国においては、医療法等の法規制、診療報酬等による経済的評価、税制による支援、公的融資等の総合的な取組を推進し、地方自治体による施策の実施、関係団体の自主的な取り組み、国民の参画等、目指すべき将来の医療の実現に向けて関係者が一体となって取り組めるよう支援を行っていく。


1.医療の質の向上と効率化

(医療法改正の円滑な施行と支援)

○ 平成13年3月に施行された医療法改正による、平成15年8月末までの一般病床と療養病床への新たな病床区分の円滑な施行を図るため、国庫補助、税制、社会福祉・医療事業団の政策融資等による適切な支援を行う。(平成13年度より逐次実施)

(病院病床の機能の明確化・重点化)

○ 急性期医療を担う病院の果たすべき機能の明確化を図る。臨床研修病院等において、急性期医療の姿を率先して取り入れることとする。

○ 急性期病床以外の病床が担うべき機能・役割について、例えば以下のような明確化を図る。

(1) 医療ニーズの高い回復期のリハビリテーションを専門に行う病床(回復期リハビリテーション病床)。

(2) 専門特化・医療の重点化を図り、専門領域の医療を提供(専門病床)。

(3) 生活の質に配慮した質の高い療養サービスを提供(療養病床)。

○ 地域のニーズに応じ、入院医療及び外来医療の機能を明確化させた上で合わせ持つなど、複数の機能を同一の医療機関内に有する形態(ケアミックス型)についても明確化を図る。

(公私の役割分担も踏まえた医療機関相互の連携の促進)

○ 医療における機能分化・重点化を推進するとともに、地域における公的医療機関の役割も踏まえた医療機関の機能分担、連携の促進という観点に立って、地域のニーズを反映した地域医療計画の策定・見直しを推進する。(平成13年度より逐次実施)

2.情報提供の推進とこれによる医療機関相互の競争の促進

(医療機関に関する情報提供の推進)

○ 医療における比較可能な客観的情報を提供するためには、情報基盤の整備が必要であり、電子カルテシステムの導入等医療のIT化を積極的に推進する。

○ 医師・歯科医師の専門性や病院の機能を含め、広告規制の更なる緩和を検討し、医療機関が広告可能な事項の拡充を図る。(平成13年度)

○ 日本医療機能評価機構の評価の普及を図る。このため、国公立病院・国公立大学病院において率先して受審するとともに、臨床研修病院等について受審や受審結果の公表の義務付けを行う方向で検討する。

(患者に対する情報提供の推進)

○ 患者に対する十分な説明と意思の尊重、患者の診療への参加等を目的としたカルテ等診療情報の開示の推進、EBMに基づく最新の標準的診療ガイドラインの情報提供等、患者に対する情報提供推進のための環境整備を進める。

○ 各種情報のデータベース化・ネットワーク化を行い、国民が容易に医療に関する情報にアクセスできる環境を整える。


3.安心でき、信頼される医療提供体制の確立

(医療を担う適切な人材の育成・確保)

○ 平成16年度からの臨床研修必修化後の臨床研修の具体的在り方について、次のような方向で、医道審議会医師分科会医師臨床研修部会において検討する。

○ 平成18年度から必修化される歯科医師の臨床研修においても、総合的な歯科医療を行うことができる歯科医師の養成を目指すこととし、臨床研修プログラム等必修化後の臨床研修の具体的在り方について、歯科医師臨床研修必修化に向けた体制整備に関する検討会において基礎的な検討を行う。(平成17年度までに結論)

○ また、臨床研修終了後も、生涯にわたり資質の向上を図っていくため、生涯学習を受けられる機会の確保に努める。

(看護婦等の確保・資質の向上)

○ 看護婦等について、子育てをしながら仕事を継続できる環境の整備などの確保策を推進する。

○ また、就業中の看護婦等が、継続的に専門知識と技能を向上させていくことができるように、インターネットを活用したシステムを開発するなど、看護婦等の資質の向上を支援する。(平成14年度)

(根拠に基づく医療(EBM:Evidence-based Medicine)の推進)

○ 国の医療全体に関わる基盤整備として、関連文献を批判的・客観的に評価し、収集した文献データベースやこれに基づいて作成された診療ガイドラインを整備するとともに、これを医療関係者、患者双方に提供するなど、EBMを包括的に推進する。(平成14年度より逐次実施)

(医療安全対策の総合的推進)

○ 本年5月に厚生労働省に設置された「医療安全対策検討会議」において、医療安全に関する中長期的なグランドデザインを作成する。(平成14年度)

○ これに合わせ、人的・組織的要因、医薬品・医療用具等物的要因の両面から、医療安全の推進のための具体的な方策を検討する。(平成14年度)

○ 患者の安全を守るための医療関係者の共同行動(Patient Safety Action)により、関係団体と協力しながら、幅広い医療安全対策を推進する。(平成13年度)

(小児救急をはじめとする救急医療等の充実・確保)

○ 小児科の不採算性や小児科医の負担の増大、保護者の専門医指向による大病院への救急患者の集中など、小児救急の現状を巡って指摘されている事項を踏まえ、小児救急の特性に合わせた救急医療体制を早急に整備する。(平成14年度)

○ また、心筋梗塞・脳卒中の死亡率の低減等を目指して平成13年度から5か年計画で実施されているメディカル・フロンティア戦略も踏まえ、救命救急センターの体制強化、ドクターヘリ事業の普及など、救急医療体制の一層の高度化を図る。(平成13年度より逐次実施)

(患者の生活の質を踏まえた望ましい終末期医療の検討)

○ できるだけ住み慣れた場所で最期を迎えられるよう、在宅、施設(介護施設等)、病院、それぞれにおける終末期のサービスの充実を図る。

○ このため、在宅医療の充実、介護施設等での医療の確保の検討等、看取りが行える環境の整備を図るとともに、国民の意識醸成が前提であるリビングウィル・尊厳死等については、意識調査・実態調査を行い、検討を行う。(平成14年度)


4.情報化基盤等医療基盤の近代化・効率化

(医療におけるIT化の推進)

○ 保健医療分野におけるIT化を推進するため、保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザインを策定し、平成14年度から5年間の保健医療の情報化計画・目標達成のための道筋と推進方策を示す。(平成13年度)

(電子カルテの導入促進)

○ 電子カルテシステムの導入促進のため、用語、コード、様式などの標準化を平成15年度の完成を目途に進めるとともに、医療施設近代化の観点からの助成、電子カルテの共有による病診連携(病院と地域の診療所の連携)のシステム開発等を行う。(平成14年度)

○ 患者情報にアクセスする資格を認証するシステム(電子認証システム)について、技術面・制度面から検討を進め、結論を得る。(平成15年度)

○ 電子カルテの施設外保存を可能とする規制緩和を行う。(平成13年度)

(医療における標準化の推進)

○ 医療における標準化の推進のため、EBMデータベースの整備(平成14年度より逐次実施)、適切な入院診療計画(いわゆるクリティカルパス)の普及促進、傷病名に関する国際疾病名分類の普及や用語・コードの標準化(平成15年度までに実施)等、情報基盤の整備に取り組む。

(レセプト電算処理システムの推進)

○ 診療報酬の請求について、磁気媒体に収録した診療報酬請求書(レセプト)で行うことを進め、医療機関、審査支払機関及び保険者を通じた一貫したシステムを構築し、業務の効率化を図る。

○ このため、傷病名マスターの見直し、大病院への参加の働きかけや、導入事例の紹介、事務効率化のメリットの広報、個別指定制度の廃止等の検討を行う。(平成13年度より逐次実施)

○ インターネットを利用したオンライン請求等レセプトのペーパーレス化の検討(平成14年度)

(医業経営の近代化・効率化)

○ 医療機関の経営情報開示の在り方、医療法人における組織、運営など医業経営の近代化・効率化方策を検討するため、検討会を設置する。(平成13年度)

(医薬品等の研究開発促進等)

○ ゲノム科学など先端科学の進展を踏まえ、低・非侵襲的な治療法の開発、難病の克服、患者の生活の質(Quality of Life:QOL)の向上など医療の進歩に貢献する画期的な新薬や医療機器等の研究開発を促進する。

○ 来年夏までに医薬品産業構造のあり方等に関する産業ビジョンを策定する(平成14年度)とともに、安価で良質な後発品の使用促進、流通の効率化、IT活用による情報提供の推進など産業の振興を図る。(平成13年度より逐次実施)


(参考1) 医療提供体制の各国比較(1998)

国名 人口千人当たり病床数 病床百床当たりの医師数 病床百床当たりの看護職員数 平均在院日数
日本 13.1 12.5 43.5 31.8
ドイツ 9.3 37.6 99.8 12.0
フランス 8.5 35.2 69.7(1997) 10.8(1997)
イギリス 4.2 40.7 120 9.8(1996)
アメリカ 3.7 71.6 221 7.5(1996)

(日本は厚生省調べ、諸外国はOECD Health Data 2000)


(参考2)我が国の急性期病床の将来数試算

  試算A 試算B 試算C 試算D 試算E
試算の考え方 現状の入院受療率を基礎とした受療率見込み及び将来人口により試算 先進諸国における全病床数に占める急性期病床数の割合により試算 先進諸国における人口当たりの病床数により試算 現状の入院回数を基礎とし、平均在院日数を15日として試算 現状の入院回数を基礎とし、平均在院日数を10日として試算
病床数
(年度)
100万床
(2015年度)
60万床
(1997年度)
50−60万床
(2015年度)
63万床
(2010年度)
42万床
(2010年度)

試算A: 「日本の将来人口推計(平成9年1月推計)」による2015年の年齢階級別人口及び同年の年齢階級別受療率推計(1996年の受療率に基づき後期高齢者(75歳以上)の受療率を現状と同一と推計する等)から試算
試算B: 全病床数における急性期病床の割合及び医療施設の病床数(介護老人保健施設及び特別養護老人ホームの入所定員を含む)により試算
試算C: OECD先進諸国の人口1000人当たりの急性期病床が4〜5床であることから、それに2015年の日本の人口をかけあわせて試算
試算D: 療養型病床群等を除いた一般病床における3か月以内の入院患者から算出した性年齢別人口当たり入院回数、及び2010年の将来人口を基に、平均在院日数を15日として試算
試算E: 試算Dで、平均在院日数を10日として試算


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