I 平成12年度における主要施策の推進状況
少子化対策推進基本方針に基づき、関係各省において、平成12年度に実施された主要施策については、以下のとおりである。
なお、少子化対策推進基本方針の具体的実施計画である「新エンゼルプラン」において、数値目標を掲げて取り組むこととされた各施策についての平成12年度の進捗状況は別紙のとおりである。
※ 担当省庁名の表記は、省庁再編後の省庁名による。
1 固定的な性別役割分業や職場優先の企業風土の是正 |
○ 固定的な性別役割分担意識を是正し、男女共同参画社会の形成を促進していくため、男女共同参画社会基本法に基づく、男女共同参画基本計画を平成12年12月に策定
○ 仕事と家庭が両立できる様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組みを行うファミリー・フレンドリー企業を表彰
優良賞1企業(セイコーエプソン株式会社) 努力賞4企業
2 仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備 |
○ 改正雇用保険法に基づき、平成13年1月1日から、育児休業給付の給付率を引上げ(25% → 40%)
○ 育児休業を取得した労働者の代替要員を確保し、かつ育児休業を取った労働者を原職等に復帰させた事業主に対して支給する育児休業代替要員確保等助成金を創設(平成12年4月)
○ 在宅ワークを安心して行うことができるようにし、かつ、後に紛争が起こることを 未然に防止するため、在宅ワークの契約条件の文書明示や適正化などの最低限のルールとして、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を策定(平成12年6月)
○ 子育てをしながら働き続けることのできる環境を整備するため、テレワークセンターの施設整備等により、テレワーク・SOHOを促進
3 安心して子どもを産み、ゆとりをもって健やかに育てるための家庭や地域の環境づくり |
○ 児童に対する虐待の禁止、児童虐待の防止に関する国及び地方公共団体の責務、児童虐待を受けた児童の保護のための措置等を定める児童虐待の防止等に関する法律が平成12年5月に成立・公布され、同年11月に施行
○ 土曜日や日曜日などに医師、保健婦等により妊娠から子育てについての相談や情報提供をデパート等で実施
○ 21世紀の母子保健のビジョンを示す「健やか親子21」を策定(平成12年11月)
○ 地域で子どもを育てる環境を整備し、親と子どもたちの様々な活動を振興する体制を整備するため、「全国子どもプラン(緊急3ヶ年戦略)」に基づき、子どもたちの体験活動機会の充実などに資する施策を推進
○ 親が家庭を見つめ直し、自信を持って子育てに取り組んでいく契機となるよう、「家庭教育手帳」を母子保健の機会等を通じて乳幼児を持つ親に配布するとともに、「家庭教育ノート」を学校を通じて小学生等を持つ親に配布
○ 子育てやしつけに関する悩みや不安を持つ親に対して、気軽に相談に乗ったり、きめ細やかなアドバイス等を行う「子育てサポーター」を配置し、小学校の余裕教室等における様々な交流事業を実施するなど子育て支援ネットワークの形成を促進
○ 児童手当について、支給対象年齢を3歳未満から義務教育就学前まで拡大(平成12年6月)
4 利用者の多様な需要に対応した保育サービスの整備 |
○ 認可保育所をつくりやすくし、待機児童の解消等に柔軟に対応するため、認可保育所の設置主体制限の撤廃、施設自己所有規制の見直し等の規制緩和を実施(平成12年3月、9月)
・ 従前、市町村と社会福祉法人に限定していた設置主体制限を撤廃し、株式会社、NPO、学校法人、農協なども保育所設置が可能に(12年3月末から) ・ 従前は自己所有が原則だった土地建物について、賃貸方式を容認(12年3月から) ・苦情解決の仕組みの導入(苦情受付窓口の設置などを義務づけ・12年9月から) |
○ 低年齢児の保育需要の増加に対する応急措置として、家庭的保育事業(いわゆる保育ママ)を実施する市町村に対し、必要な経費の補助制度を創設
○ 全国の保育所情報(名称、所在地、利用人員、利用時間等)、子育て支援情報、児童虐待関連情報、SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防等広範な子育て関連情報をインターネットで提供する「i―子育てネット」の創設(平成13年2月)
http://www.i-kosodate.net
5 子どもが夢を持ってのびのびと生活できる教育の推進 |
○ 子どもたちにゆとりの中で特色ある教育を展開し、豊かな人間性や自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育むことをねらいとした新しい学習指導要領の趣旨や内容等について関係者の理解の推進
○ 高校生が幼稚園等において、保育などに関する体験活動に取組み、子育ての意義などに対する認識を深めるとともに、幼稚園においても、異年代の高校生との交流等を通じた教育活動を推進
○ 校長が行う学校運営に関し、保護者や地域住民の意見を聞くための学校評議員制度を導入(平成12年4月)
○ 学校教育や地域教育での農業体験学習の推進を図るため、文部科学省とも連携し、小・中学生等のグループ作りの支援や農業体験学習指導者の登録等を実施
○ 都市と農村の交流機会の増大を図るため、人材育成のためのスクールの設置、小・中学校の授業の一環としての農業・農村体験活動や交流情報の受発信体制の強化
6 子育てを支援する住宅の普及など生活環境の整備 |
○ 特定優良賃貸住宅制度の活用や公団賃貸住宅の供給による良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進
○ 住宅金融公庫融資の活用により、良質なファミリー向け民間賃貸住宅の供給を促進するとともに、3大都市圏において一次取得者が初めて共同住宅を取得する際の融資額の加算等の施策を実施
○ 妊婦等の公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上を促進するため、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)が施行(平成12年11月)
○ 授乳コーナー、ベビールームの設置やバリアフリー化等公共施設等の改良を体系的・一体的に行う地方単独事業に対して「共生のまち推進事業」において地方財政措置により支援
少子化対策の推進体制等 |
○ 少子化対策推進基本方針に基づく重点施策の具体的実施計画として策定した新エンゼルプランの各種施策を推進 (別紙参照)
○ 農林水産業における少子化対策に取り組む際の基本的な視点及び対応方策のヒントを示すものとして、「農林水産業・農山漁村における少子化対策推進ビジョン」をとりまとめ(平成12年12月)
○ 平成12年4月の中教審報告「少子化と教育について」の提言等に基づき、幼稚園教育の振興、幼児期の家庭教育及び地域社会における子育て支援の充実を内容とする「幼児教育振興プログラム」を決定(平成13年3月)
○ 少子化への対応を推進する国民会議による少子化問題についての全国キャンペーン、 シンポジウムの開催等を支援。標語・シンボルマークの優秀作品の総理大臣表彰等を実施
II 平成13年度において講じようとする施策
関係各省において、少子化対策推進基本方針に基づいて講じようとしている施策のうち、平成13年度の主要な新規施策、改善施策については、以下のとおりである。
1 固定的な性別役割分業や職場優先の企業風土の是正 |
○ 意欲や能力の高い女性が育児期を経て労働市場に再参入するために、自己の現在の職業能力、再就職に必要となる職業能力等を的確に把握し、実際に能力開発を行えるようにするとともに、そのような女性の雇用を企業に対して促進していくシステムを開発するためのポジティブ・アクションとしての再就職モデル事業を創設
○ 出産、育児期にある女性の農業経営参画が可能となるよう、経営管理等の研修、母性保護のためのセミナー等の開催、女性の育児と農業経営との両立のための相談マニュアルの策定等を実施
2 仕事と子育ての両立のための雇用環境の整備 |
○ 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部を改正する法律案」を国会に提出(平成13年2月)
本法案は、仕事と家庭の両立支援対策の充実を図るため、以下の内容の改正を行うこととし、平成13年10月及び14年4月から施行することとしている。
・ 育児休業等を理由とした不利益取扱の禁止 ・ 時間外労働の制限 ・ 子の看護のための休暇の努力義務 など |
○ 「仕事と家庭の両立のための総合的支援システム(仮称)」を構築し、再就職及び両立のための情報提供や講習、相談等を実施するとともに、保育・育児に関する情報提供体制を強化
3 安心して子どもを産み、ゆとりをもって健やかに育てるための家庭や地域の環境づくり |
○ 小学校入学前の子どもを持つ親が参加する就学時健診、母子保健活動等の機会を活用した子育て講座を全国的に開設するとともに、思春期の子どもの問題行動に悩む親向けの講座を全国でモデル的に開設
就学時健診等を活用した子育て講座 | 全国2万か所 |
思春期の子どもを持つ親のための緊急子育て講座 | 全国94か所 |
○ 「社会教育法の一部を改正する法律案」を国会に提出(平成13年3月)
本法案は、家庭の教育力の向上のための社会教育行政の体制の整備を図るため、以下の内容の改正を行うこととしている。 ・ 教育委員会の事務として、家庭教育に関する学習の機会を提供するための講座の開設等の事務を明記 ・ 社会教育委員及び公民館運営審議会の委員に家庭教育の向上に資する活動を行う者を委嘱することができるようにする |
○ 21世紀を担う夢を持った子どもの健全育成を進めるため、民間団体が実施する様々な体験活動等への支援を行う「子どもゆめ基金」を創設し、独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センターに設置
「子どもゆめ基金」の創設 | 100億円 |
「子どもゆめ基金」事業の実施 | 20億円 |
○ ファミリー・サポート・センターについて、対象者を育児を行うすべての者に拡大するとともに、支部を身近な地域単位にきめ細かく配置し、保育所との連絡システムを整備するほか、大都市圏での設置を重点的に促進
○ 21世紀の母子保健の主要な取組を提示するビジョンであり、関係者が一体となって推進する国民運動計画である「健やか親子21」について、関係機関・団体からなる推進協議会を設立し、効果的な計画を推進
○ 国立高度専門医療センターとしての国立成育医療センター(仮称・平成14年3月1日開設予定)を整備し、これを中核とする成育医療に関する政策医療ネットワークの構築により、高度な小児、周産期、不妊等の医療の提供、研究の推進
○ 少子高齢化の進展、女性の社会進出に対応し、介護サービス及び子育てサービス分野における効率的・効果的な情報提供、サービスの質の向上等を図るIT活用事業を実施
○ 急増する児童虐待への対応を強化するため、虐待・思春期問題情報研修センターを創設して、専門相談、職員研修、研究等を行うほか、児童相談所の児童福祉司の増員(地方財政措置)、一時保護所等への心理担当職員の配置等を措置
○ 児童手当について所得制限の緩和を行い、支給率を従来の72.5%から85%に引上げ(13年6月)
4 利用者の多様な需要に対応した保育サービスの整備 |
○ 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)について、過疎地等における小規模クラブ(10人以上20人未満)の補助対象化、障害児受け入れのための試行事業の創設等の実施
○ 都市部における待機児童の解消等を目的として、保育所の設置に係る規制緩和の一層の推進(13年4月)
・ 年度後半における保育所入所定員の弾力化に係る制限を撤廃 ・ 屋外遊戯場及び乳児室・ほふく室に係る最低基準について、過剰規制にならないようにとの観点から、その趣旨を明確化・周知 ・ 年度途中の保育需要の増加に対応した短時間勤務保育士の導入についての2割制限を撤廃 ・ 公立保育所の業務を委託する場合において、社会福祉法人以外の者にも委託が可能であることを周知 |
○ 小児救急医療支援事業について、小児救急の確保のための調整事業を創設
○ 幼稚園において、希望する者を対象に、通常の教育時間の前後や長期休業期間中に行われる「預かり保育」の実施について、私学助成を拡充
○ 幼稚園における未就園児の親子登園、子育てサークルの支援、子育てに関する相談や情報提供等を総合的に推進する調査研究を新たに実施
5 子どもが夢を持ってのびのびと生活できる教育の推進 |
○ 学校におけるカウンセリング機能の充実を図るため、スクールカウンセラーを配置し、その活用に関する調査研究事業を実施
○ 幼稚園から小学校への教育がなめらかに移行できるよう、幼児と児童との交流、幼稚園・小学校教員の円滑・適切な連携等を図る体制を構築するための調査研究事業の実施を推進
○ 幼稚園の幼児の保護者の所得等に応じて経済的負担の軽減等を図ることを目的として、保育料などを減免する「就園奨励補助」を実施する地方公共団体に対する補助について、第2子以降の園児に係る減免単価の引き上げ
6 子育てを支援する住宅の普及など生活環境の整備 |
○ 既設の公社等の住宅を改善・更新して多子世帯や三世代同居家族に供給する多子世帯向け賃貸住宅制度を創設
○ 観光地におけるバリアフリーに対応したトイレ・休憩施設等の整備に対する補助を創設
7 少子化への対応の推進体制の整備、気運の醸成 |
○ 新エンゼルプランを着実に推進する。なお、新エンゼルプランにおいて数値目標が設定されている事項についての平成13年度の予算計上状況は別紙のとおり
○ 男女共同参画会議の仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会においては、仕事と子育ての両立支援策について検討中であり、6月に最終報告をまとめる予定
○ 「少子化への対応を推進する国民会議」が行う、少子化への対応についてのシンポジウムその他のキャンペーンに対して支援(子育て支援基金を活用)
平成12年度 | 平成13年度 | 目標値 | ||
低年齢児受入れの拡大 |
( 59.3万人※1) | |||
59.8万人 | 61.8万人 | 16年度 | 68万人 | |
延長保育の推進 |
( 8,052ヶ所) | |||
8,000ヶ所 | 9,000ヶ所 | 16年度 | 10,000ヶ所 | |
休日保育の推進 |
( 152ヶ所) | |||
100ヶ所 | 200ヶ所 | 16年度 | 300ヶ所 | |
乳幼児健康支援一時預かりの推進 |
( 132市町村) | |||
200市町村 | 275市町村 | 16年度 | 500市町村 | |
多機能保育所等の整備 |
( 333ヶ所) | |||
305ヶ所 | 298ヶ所 | 16年度までに | 2,000ヶ所 | |
[11’補正88ヶ所] | [12’補正88ヶ所] | |||
計 393ヶ所 | 累計 779ヶ所 | |||
地域子育て支援センターの整備 |
( 1,376ヶ所) | |||
1,800ヶ所 | 2,100ヶ所 | 16年度 | 3,000ヶ所 | |
一時保育の推進 |
( 1,700ヶ所) | |||
1,800ヶ所 | 2,500ヶ所 | 16年度 | 3,000ヶ所 | |
ファミリー・サポート・センターの整備 |
||||
82ヶ所 | 182ヶ所※2 | 16年度 | 180ヶ所 | |
放課後児童クラブの推進 |
( 9,401ヶ所) | |||
9,500ヶ所 | 10,000ヶ所 | 16年度 | 11,500ヶ所 | |
フレーフレー・テレフォン事業の整備 |
( 39都道府県) | |||
39都道府県 | 43都道府県 | 16年度 | 47都道府県 | |
再就職希望登録者支援事業の整備 |
( 24都道府県) | |||
24都道府県 | 33都道府県 | 16年度 | 47都道府県 | |
周産期医療ネットワークの整備 |
( 14都道府県) | |||
13都道府県 | 20都道府県 | 16年度 | 47都道府県 | |
小児救急医療支援事業の推進 |
( 51地区) | 240地区 | ||
240地区 | [小児救急確保の調整 | 13年度 | 360地区 | |
360地区] | (2次医療圏) | |||
不妊専門相談センターの整備 |
( 18ヶ所) | |||
24ヶ所 | 30ヶ所 | 16年度 | 47ヶ所 | |
子どもセンターの全国展開 |
( 725ヶ所) | |||
730ヶ所 | 1,095ヶ所 | 1,000ヶ所程度 | ||
子ども放送局の推進※3 |
( 1,606ヶ所) | |||
5,000ヶ所程度 | ||||
子ども24時間電話相談の推進 |
( 21都道府県) | |||
31都道府県 | 31都道府県 | 47都道府県 | ||
家庭教育24時間電話相談の推進 |
( 35都道府県) | |||
32都道府県 | 31都道府県 | 47都道府県 | ||
総合学科の設置促進 |
( 144校) | |||
144校 | 163校 | 当面 | 500校程度 | |
中高一貫教育校の設置促進 |
( 17校) | |||
17校 | 49校 | 当面 | 500校程度 | |
「心の教室」カウンセリング・ルームの整備※3 |
( 8,467校) | 12年度までに | 5,234校を目途 | |
(注)1. | 平成12年度の上段( )が実績、下段が予算。 |
2. | ※1低年齢児受入れの拡大については、12年12月分までの実績による推計値。 |
3. | ※2平成13年度のファミリー・サポート・センターについては、日本新生特別枠要望の過程で早期に整備を図ることとした。 |
4. | ※3子ども放送局の推進及び「心の教室」カウンセリング・ルームの整備については、12年度実績のみ記載。 |