平成13年5月18日
1.概要
平成13年3月19日付でウェルファイド株式会社(以下「ウ社」という。)に対し発出した、薬事法第69条第1項の規定に基づく報告命令に対し、5月18日、同社より別添のとおり報告があった。報告内容は、当該命令を踏まえて同社が納入先医療機関および個々の医師に対して実施した調査(以下「今回の調査」という。)結果と、旧株式会社ミドリ十字(以下「旧ミ社」という。)が昭和62年〜平成4年に行った肝炎発生状況調査(以下「昭和62年調査」という。)の再解析結果である。
(1)「今回の調査」の対象
ウ社および旧ミ社が昭和39年から今日まで販売している3種類のフィブリノゲン製剤の納入先医療機関のうち、昭和55年以降に納入した医療機関(昭和55年以降に納入した製剤は約54万本。)について調査した。 なお、昭和54年以前については、納入量、納入データとも把握されていない。
把握されている納入先医療機関等は7004であり、納入データが不正確で特定不能のもの、試験研究機関で医療目的以外で納入されたもの、廃院、調査協力が得られない医療機関等を除いた5548医療機関を対象に調査を行い、3852医療機関の医師から当該製剤使用の有無を聴取、1821医療機関2743名の医師等から使用症例に関するアンケートへの回答を得た。(詳細は報告書巻末(別添1)参照)
(2)「今回の調査」における主な使用診療科と使用症状について(報告書3〜5ページ)
(3)「今回の調査」による肝炎発生率、発生概数の推定(報告書6〜10ページ)
○ 今回の調査におけるフィブリノゲン製剤(全体)の使用症例数注1)、肝炎発生例数注1)及び推定肝炎発生率注2)は以下の通り。(報告書7ページ表4)なお、肝炎例数は、医師へのアンケートの「フィブリノゲン使用によると思われる肝炎経験症例」欄に記載された症例数を「肝炎」として集計した。
フィブリノゲン製剤 | 使用症例数 | 肝炎例数 | 推定肝炎発生率 | |
全体 | 静注 | 3663.5 | 142.5 | 3.9% |
糊 | 2228.5 | 13.5 | 0.6% | |
計 | 5892.0 | 156.0 | 2.6% |
○ フィブリノゲン製剤投与後の肝炎発生数は、納入数量、1症例あたりの平均使用量や上記の推定発生率から、昭和55年以降に当該製剤を使用した人数は約29万人、そのうち肝炎発生率は3.0%とウ社は推計している。(報告書9ページ表6)
フィブリノゲン 製剤 |
推定使用 数量注1) |
平均 使用量 |
推定使用 者数注2) |
推定肝炎 発生率 |
推定肝炎発生 概数注3) |
|
全体 | 静注 | 445,900本 | 2.16本 | 206,435例 | 3.9% | 8,051例 |
糊 | 92,400本 | 1.17本 | 78,974例 | 0.6% | 474例 | |
計 | 538,300本 | − | 285,409例 | 3.0% | 8,525例 |
注1) | 推定使用数量は、データの残っている昭和55年度以降の納入数量から、静注での使用量とフィブリン糊としての使用量を仮定したもの |
注2) | 推定使用者数=推定使用数量÷平均使用量 |
注3) | 推定肝炎発生概数=推定使用者数×推定肝炎発生率 |
(4)「昭和62年調査」による肝炎発生率の推定(報告書10〜12ページ)
昭和62年から平成4年までの間にフィブリノゲン製剤を投与した症例を旧ミ社が特定し、3859名について原則として6か月間毎月旧ミ社MRが担当医師に肝炎発生の有無を確認したところ、159名の肝炎発生が認められた。
フィブリノゲンとの因果関係は特定されていないが、これを、使用方法別(静注または糊)と観察期間に着目して推計すると、静注後6か月までに12.7%、糊としての使用後2か月までに1.04%に肝炎が発生すると推定された。(報告書12ページ)
(5)「今回の調査」からの推定と「昭和62年調査」からの推定について(報告書13ページ)
静注例での「今回の調査」と「昭和62年調査」の推定発生率の差について、「今回の調査」の肝炎発生例において輸血との併用例が33.8%であるのに対し、「昭和62年調査」の肝炎発生例において輸血との併用例が多い(把握された範囲において77.3%)ためではないかとウ社では考察している。(報告書13ページ)
2.今後の対応
報告内容を精査した上で、今後の対応について検討する予定。
(照会先) 厚生労働省医薬局 血液対策課 西田 中井(内線2905)