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厚生労働省発表
平成13年3月30日

職業生活の安定を図りつつ、建設労働者一人一人がその持てる能力を十分発揮して生き生きと働ける環境づくりを目指す

〜第6次建設雇用改善計画の策定〜


 「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」に基づく第5次建設雇用改善計画の計画期間が本年度で満了することに伴い、厚生労働省では、労働政策審議会に設置された建設労働専門委員会(座長 松本斉 読売新聞社解説部長)における検討を経て、新たに平成13年度から平成17年度までの5ヶ年を計画期間とする「第6次建設雇用改善計画」を本日(3月30日)、告示した。厚生労働省では、今後5年間、この計画に沿って必要な施策を推進していく考えである。

<課題と最重点事項>

 今般策定された、第6次建設雇用改善計画においては、当面は雇用の維持、円滑な労働移動等を通じた労働者の職業生活の安定を念頭に置いた施策の推進、中長期的には将来的な労働力の減少等へ対応するため、若者が生涯を託せる魅力ある産業としての建設業の発展に資する施策の推進が重要であるとの認識に立ち、課題を次のとおりとした。
 「建設労働者一人一人の職業生活の安定が図られる中で、その持てる能力を十分発揮して生き生きと働ける環境づくりに積極的に取り組み、建設業の魅力ある産業としての発展に資する」
 また、最重点事項は次のとおりである。
(1) 建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定を図りつつ、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」等に基づき、建設労働者の雇用の一層の近代化を進め、魅力ある労働環境づくりを図ること。
(2) 建設労働を取り巻く環境の変化も踏まえ、事業主等が行う職業能力開発を引き続き促進する中で、建設労働者一人一人に着目した能力開発を推進しながら、建設労働者自らがその能力の開発を行えるようにし、その職業能力を高めること。
(3) 今後の労働力需給構造の変化を見通しながら、若年者の建設業への入職促進及び定着を図るとともに、高年齢者や女性が活躍できるような労働環境の整備を図ること。

 なお、本計画の概要は別紙のとおりである。


職業安定局建設・港湾対策室
 室  長 楪葉 伸一
 室長補佐 深田 聡
 TEL 5253-1111(内線5803)
    3502-6777(夜間直通)

(別紙)
建設雇用改善計画(第六次)の概要


1 建設雇用の動向

(1) 建設経済の動向

 建設投資は平成9年度から平成11年度まで3年連続で減少。今後については、弱含みで推移する見通し。

(2) 雇用者の動向

(3) 建設技能労働者の需給動向

(4) 労働条件の動向

(5) 職業能力開発の動向

2 雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事項

 建設労働者の雇用改善を進めるに当たっては、建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定の確保を図ることを念頭に、施策を展開していくことが必要。

(1) 魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備

 他産業に比べ必ずしも良好な状況にない建設労働者の労働環境を改善する必要。

(2) 職業能力開発の推進

 自己の雇用する労働者に対して事業主が必要な教育訓練を行うことは、各々の事業主の責務。

 建設労働を取り巻く環境が変化する中で、一人一人の労働者が自己の技術・技能をより一層向上させるため、自発的な職業能力開発を行うことも重要。

 若年者の技能離れや熟練技能者の高齢化が進む中、これまで建設業を支えてきた熟練技能の維持・継承及び活用を図るための仕組みを整備することが重要。

(3) 若年労働者等の確保及び建設業に対する理解の促進

 今後若年労働者が大幅に減少する中で、質の高い労働者を確保し、建設業への入職を促進するためには、建設業に対するイメージアップを図るとともに、国民一般の建設労働に対する正しい理解を促進することが必要。

(4) 高年齢労働者及び女性労働者の活用

 (1) 高年齢労働者の活用

 (2) 女性労働者の活用

(5) 雇用改善推進体制の整備

(6) 外国人労働者問題への対応


建設雇用改善計画(第六次)


I 計画の基本的考え方

1 計画の背景と課題

(1) 我が国経済の現状をみると、景気は緩やかな改善が続いているが、雇用情勢についてはなお改善の足取りは鈍い状況にある。また中長期的には、我が国が経験したことのない労働力人口の減少が生じ、経済成長率に対する労働力供給の寄与は見込めなくなる。したがって、バブル崩壊前のような高い経済成長率を期待することはできない状況にある。
 このような経済状況の下、建設経済の現状をみると、建設投資が横ばいで推移し、将来的にも大きな伸びが期待できないという厳しい環境にあり、建設業も競争の激化の中で、優勝劣敗、淘汰の時代を迎えようとしている。また、建設業における雇用の現状をみると、厳しい経済状況等を背景とした総量としての雇用需要の減少によって雇用過剰感がみられる一方、急速な高齢化や職業構造の変化に伴い今までの仕事を継続することが困難となった労働者が増加している。さらに、建設業の労働力構成は、若年者の入職率が低いこと等により他産業に比べて中高年齢層の占める割合が高いこと、今後ますます若年人口が減少すること等の理由から、将来的には労働力減少への対応を余儀なくされることが懸念される。
 このような建設業における現状の雇用過剰感や労働力需給のミスマッチ及び将来的な労働力減少といった環境変化に対応し、雇用の安定を図っていくためには、当面は円滑な労働移動等を通じた労働者の職業生活の安定を念頭に置いた施策を推進していく必要があるが、中長期的には若者が生涯を託せる魅力ある産業としての建設業の発展に資する施策を推進することが重要である。このためには、建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定を図るとともに、効果的な職業能力開発や高年齢者等の特性に対応した労働環境の整備等の雇用改善を進めるほか、若年者等に対して、ものづくり・まちづくりの喜びを伝えること、技術・技能の習得及び継承のための環境整備を図ること、職場体験等を通じて建設業に対する理解を促進すること等により、建設労働に対するイメージアップを図る必要がある。
 また、従来より我が国建設業においては、受注生産、個別生産、屋外生産、移動生産、総合生産といった建設生産の特性と、重層的下請構造及び中小零細企業の割合の高さという特徴を背景として、不明確な雇用関係、臨時・日雇労働者への依存、労働災害の多発、労働条件・労働福祉の立ち遅れ、適切な職業能力開発の機会の不足等の問題が存在しており、これらの問題への適切な対応については、今後も万全を期していく必要がある。

(2) 以上を踏まえ、「建設雇用改善計画(第六次)」においては、「建設労働者一人一人の職業生活の安定が図られる中で、その持てる能力を十分発揮して生き生きと働ける環境づくりに積極的に取り組み、建設業の魅力ある産業としての発展に資する」ことを課題とし、次の事項を最重点事項として、施策を推進していくこととする。

(1) 建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定を図りつつ、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」(昭和51年法律第33号。以下「建設雇用改善法」という。)等に基づき、建設労働者の雇用の一層の近代化を進め、魅力ある労働環境づくりを図ること。
(2) 建設労働を取り巻く環境の変化も踏まえ、事業主等が行う職業能力開発を引き続き促進する中で、建設労働者一人一人に着目した能力開発を推進しながら、建設労働者自らがその能力の開発を行えるようにし、その職業能力を高めること。
(3) 今後の労働力需給構造の変化を見通しながら、若年者の建設業への入職促進及び定着を図るとともに、高年齢者や女性が活躍できるような労働環境の整備を図ること。

2 計画の期間

 この計画の期間は、平成13年度から平成17年度までの5年間とする。


II 建設雇用等の動向

1 建設経済の動向

 平成11年度の建設投資は、名目で前年度比1.3%減の70兆8600億円、実質(平成2年価格)で同0.7%減の67兆1400億円程度となっている。
 最近の建設投資の動向をみると、バブル崩壊後の経済の低迷の中、名目で平成4年度の83兆9700億円をピークに減少に転じ、平成7年度及び平成8年度に増加したものの、平成9年度から平成11年度まで3年度連続で減少している。国内総生産に占める建設投資の割合も、平成2年度の18.6%をピークに低下しており、平成11年度は14.3%となっている。
 今後の建設投資の見通しについては、民間投資の大幅な伸びは見込めないこと、公共投資の伸びについては財政面からの制約も懸念されること等から、弱含みで推移すると予想されている。

2 雇用者の動向

(1) 建設業の就業者数は、近年の建設投資の減少の中でも増加を続けていたが、平成9年の685万人(全産業に占める割合は10.4%)をピークに減少に転じ、平成11年には657万人(全産業に占める割合は10.2%)となっている。これを技能労働者のみについてみると、建設技能労働者の就業者数は、平成9年の455万人をピークに減少に転じ、平成11年には432万人となっており、建設業就業者全体と同様の傾向で推移している。
(2) 雇用者数も同様の傾向を示しており、平成9年の563万人(全産業に占める割合は10.4%)をピークに減少に転じ、平成11年には544万人(全産業に占める割合は10.2%)となっている。なお、企業の経営状況が厳しい中、技能労働者については、子会社への移籍、独立の動きがみられる。
(3) 建設業における雇用者のうち、日雇労働者の占める割合は、平成11年で5.5%となっており、他産業(全産業2.3%、製造業1.4%)に比べてなお高い割合となっている。
(4) 雇用者数を事業所規模別にみると、30人未満規模の小零細事業所に雇用されている雇用者の割合は平成11年で63.6%(全産業33.1%)となっており、小零細事業所に雇用されている雇用者の割合が高くなっている。
(5) 季節・出稼労働者の人数については、全産業において年々減少してきているところであり、建設業においてもその傾向は同様である。
(6) 若年者の入離職の状況については、新規学校卒業就職者に占める建設業就職者の割合は、平成元年の4.3%から平成8年の8.4%まで上昇したが、その後下降を続け、平成11年には6.2%に低下している。全産業における就業者の約10%を建設業における就業者が占めていることから、新規学校卒業就職者の建設業への入職はやや少ないといえる。
 建設業に就職した新規高等学校卒業就職者の入職3年後の離職率については、昭和63年3月卒業者の49.4%をピークに下降に転じ、平成4年3月卒業者の39.4%まで低下した。しかし、平成5年3月卒業者以降は再び上昇に転じ、平成8年3月卒業者の入職3年後の離職率は51.0%となっている。また、全産業と建設業とを比較すると、平成5年以降は建設業の方が全産業よりも高く、年々その差が大きくなる傾向にある(平成8年3月卒業者については、全産業では48.1%)。
(7) 建設業における就業者に占める若年層(15〜29歳)の割合は、平成元年の16.4%を底に上昇を続け、平成9年の22.0%をピークに再び下降に転じた。平成11年は21.0%となっており、全産業の22.9%に比べてやや低くなっている。
(8) 建設労働者の高齢化の状況については、建設業における就業者に占める高年齢層(55歳以上)の割合は、昭和53年以降上昇を続けており、平成11年には24.5%と、全産業の23.7%に比べてやや高くなっている。また、平成11年における建設労働者の平均年齢は41.5歳であるが、なかでも建設業男子生産労働者ではその平均年齢は43.3歳となっており、製造業男子生産労働者平均の40.0歳に比べて高くなっている。
(9) 女性労働者の就業状況については、建設業における就業者に占める女性労働者の割合は、近年、約16%で横ばいで推移しており、全産業の約40%に比べてかなり低くなっている。また、技能労働者のみについてみても、建設技能労働者に占める女性技能労働者の割合は平成11年には3.9%となっており、全産業の26.4%に比べてかなり低くなっている。

3 建設技能労働者の需給動向

 建設技能労働者の過不足状況については、平成10年以降不足感が急速に弱まり、雇用過剰感もみられるようになっている。
 今後、全就業者中の建設業の構成比及び技能労働者数は低下すると見込まれているが、若年層(15〜29歳)の労働力人口については今後大幅な減少が見込まれ、平成10年の1,631万人から平成17年には1,397万人になると推計されることから、年齢層や職種によっては不足が生ずるものと考えられる。

4 労働条件の動向

(1) 労働時間の状況をみると、平成9年4月1日からの週40時間労働制の全面適用を経て、建設業における規模5人以上の事業所の1人当たりの年間総実労働時間は、平成8年の2,076時間から、平成11年には2,021時間となり、55時間短縮された。しかし、全産業の1,840時間と比べると依然として約180時間上回っている。
(2) 週休制の状況をみると、建設業において何らかの形で週休2日制を導入している企業の割合は、平成11年の規模30人以上の企業に対する調査では94.8%と全産業の91.3%を上回っているが、完全週休2日制の導入状況では、全産業が33.4%であるのに対し建設業は28.7%となっている。また、年次有給休暇についても、付与日数、取得日数、取得率のいずれも全産業を下回っている。
(3) 賃金制度の状況を総合工事業の現場技能者のうち常用雇用されるものについてみると、月給制(欠勤差引なし)を採用している事業所の割合は、平成10、11年度の調査では49.5%となっており、平成5、6年度の調査での43.4%に比べて高くなっている。また、専門工事業の現場作業員のうち常用雇用されるものについて月給制(欠勤差引なし)を採用している事業所の割合をみると、平成7、8年度の調査では約30%となっており、依然として月給制(欠勤差引なし)導入割合は低いものとなっている。
(4) 労働災害の状況をみると、建設業における休業4日以上の死傷災害は昭和53年以降減少を続けている。死亡災害は昭和60年代から年間1,000人前後で横ばいで推移していたが、平成9年以降は年間800人前後となっている。全産業に占める割合は、平成11年では死傷者数で25.7%、死亡者数で39.9%である。

5 職業能力開発の動向
(1) 建設業における現場技能労働者について、事業内職業能力開発計画を作成している事業所の割合は、平成11年度の調査では29.8%となっており、計画を作成していない事業所の割合が高くなっている。
 作成していない理由としては、「人員に余裕がなく、作業に支障を来す」が46.7%、「計画を立てても実施に当てる時間がない」が36.3%、「職業能力開発に関するノウハウや教材がない」が30.3%となっている(複数回答)。
(2) 建設業において、新規に入職した30歳未満の若年技能労働者に対して何らかの教育訓練を実施した事業所の割合は、平成11年度の調査では74.8%となっている。
 教育訓練の方法としては、「OJT(日常の業務に就きながら行われる職業能力開発)を中心に実施した」が51.2%、「OFF−JT(通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練)を中心に実施した」が21.0%、「OJTとOFF−JTを組み合わせて実施した」が20.3%、「労働者の自己啓発を中心に実施した」が10.8%となっている(複数回答)。
(3) 建設業において、若年技能労働者に対するOFF−JTのために活用している手段としては、平成11年度の調査では「業界団体が行う教育訓練」が70.1%、「自社内での教育訓練」が52.4%、「元請事業主が行う教育訓練」が47.2%、「認定職業訓練施設での教育訓練」が45.3%となっている(複数回答)。


III 雇用の改善等を図るために講じようとする施策に関する基本的事項

 建設労働者の雇用改善を進めるに当たっては、その職業生活の安定を図ることが前提となる。労働者の職業生活の安定を図るためには、従来より景気変動等による一時的な雇用調整に対する支援策等を講じてきたところであるが、雇用過剰感や労働力需給のミスマッチの拡大等の環境変化がみられる現状においては、なお一層、職業生活の全期間を通じた職業の安定を図ることを念頭に置いて施策を展開していく必要があり、企業内での雇用の維持・確保はもとより、企業間移動が必要とされる場合であっても、これが円滑に実現される施策が求められる。このため、効果的・効率的な支援を行う観点から既存の助成制度について所要の見直しを行うとともに、失業なき労働移動を図る観点から建設業内の求人・求職者情報を収集・提供することや他産業への円滑な労働移動をも可能とする官民連携した雇用情報提供機能の強化等労働力需給調整機能の強化を図ること等が重要である。
 このように、建設労働者の職業生活の安定にも十分に配慮した上で、前述のような建設雇用等の動向を踏まえ、建設労働者の雇用状態の改善、職業能力の開発及び向上、福祉の増進等雇用の改善を一層促進することにより、建設業の魅力ある産業としての発展に資するため、次の施策を積極的に推進する。

1 魅力ある労働環境づくりに向けた基盤整備

(1) 建設雇用改善の基礎的事項の達成

(1) 建設労働者の雇入れの主体及び雇用契約の内容等を明確にするため、雇入通知書の交付等による労働条件の明示について、公共職業安定機関と労働基準監督機関との連携を密にし、指導及び監督を一層強化する。また、日雇労働者等の建設労働者に対する雇入通知書の交付等の徹底を図るため、元請事業主による下請事業主に対する指導及び援助を促進する。
(2) 建設業務の実施に当たり労働者募集及び請負が適正に行われるよう、「建設雇用改善法」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」(昭和60年法律第88号)等の遵守に向けた指導及び監督を一層強化する。
(3) 臨時・日雇労働者といった不安定な雇用形態の労働者の雇用の安定を図るため、常時使用している技能労働者の常用化・月給化、季節労働者の通年雇用化、公共職業安定所を通じた就労やグループによる就労等による出稼労働者の安定就労の確保等を更に推進する。
(4) 一層の労働時間の短縮を図るため、業界の自主的な活動との密接な連携を図りつつ、年間総実労働時間1,800時間の達成・定着に向けて、@)完全週休2日制の導入等による週40時間労働制の遵守の徹底、A)長期休暇の普及等による年次有給休暇の取得促進、B)所定外労働の削減を柱として取組を進める。
 特に、事業主が完全週休2日制を実施するに当たっては、土日連続全休制による現場閉所が望ましいが、当面は、国民の祝日も含めて週に2回の休日を設定する等、各企業の各部門や現場の状況に合わせて取り組む必要がある。
(5) 労働災害防止に向けた事業主の取組を一層促進するため、労働災害防止計画等を踏まえ、「労働安全衛生マネジメントシステム」の一層の普及・定着を図るとともに、「安全衛生情報センター」の活用等により安全衛生教育を一層推進する。
 また、中小総合工事業者を対象とした研修会の実施等により中小総合工事業者の安全衛生管理活動及び安全水準の向上を支援するほか、雇入時の健康診断の実施を促進するために中小建設事業主が期間雇用者に行う雇入時の健康診断に対する助成を行う。
(6) 労働保険及び社会保険への加入促進を図るため、関係事業主団体等との連携の下に、一層の啓発・指導を進める。特に、中小零細建設事業主の労働保険への加入促進については、労働保険事務組合の活用を図るとともに、特別加入制度の周知に努める。
(7) 建設業における退職金制度の整備を図るため、建設業退職金共済制度等中小企業退職金共済制度の適正な運営に向けて、事業主の理解を進めるとともに、制度が広く普及するよう、啓発・指導を強化する。また、毎年10月の「中小企業退職金共済制度加入促進強化月間」等を通じて退職金共済制度への加入を一層促進する。
(2) 労働環境の整備
(1) 屋外生産、移動生産といった建設業の特性等により、他産業に比べて必ずしも良好な状況にない建設労働者の労働環境を改善するため、作業員宿舎や食堂、休憩室、浴室・シャワーその他の現場福利施設、全天候型仮設屋根等の整備に対して引き続き助成を行うとともに、建設工事現場において清潔、安全かつ快適な職場環境を形成するための措置を継続的かつ計画的に講ずるよう、建設事業主に対して引き続き指導を行う。
(2) 建設業を一層魅力ある雇用の場とするため、助成制度の在り方について検討し、その更なる活用を図る。

2 職業能力開発の推進

(1) 事業主等の行う職業能力開発の促進

(1) 自己の雇用する労働者に対して事業主が必要な教育訓練を行うことは、各々の事業主の責務であるとともに、建設労働者の職業生活の全期間を通じた職業の安定及び地位の向上を図るために重要である。
 このため、建設労働者の育成・確保に重要な役割を果たしている認定職業訓練等の実施を促進するため、関係行政機関との連携を更に強化しつつ、特に中小建設事業主等が行う認定職業訓練及び短期的な教育訓練である技能実習に対して引き続き助成を行う。また、主として野丁場職種について広域的に教育訓練を行う富士教育訓練センター等における訓練に対して引き続き助成を行うほか、公共職業能力開発施設等において、建設労働者に係る職業訓練を積極的に実施する。さらに、事業内教育訓練の実施体制が脆弱な中小建設事業主等の自主的な教育訓練を促すため、公共職業能力開発施設等を地域の職業能力開発のための総合的センターとして活用することとし、職業訓練指導員の派遣、受託訓練、施設使用の便宜の提供等を行うとともに、多くの事業主が共同して職業訓練を運営する共同訓練の実施を促進する。
(2) 建設業における競争が激化している状況において、より効率的な事業運営を行うためには建設労働者の効果的な配置転換を行うことも必要であり、その際には、一人一人の労働者の希望・適性・能力を踏まえることが重要である。
 このため、助成制度等を有効に活用し、職業能力開発推進者の選任及び事業内職業能力開発計画に基づく段階的・体系的な教育訓練の実施を促進する。また、一人一人の労働者の希望・適性・能力を踏まえた職業能力開発の実施を支援するため、建設技能労働者の特性に応じた段階的な教育訓練についての職種ごとのモデルプランを作成、提示する等により建設事業主等に対して相談援助を行う。
 さらに、労働者の職業能力が企業内のみならず、広く社会一般において適正に評価されるよう努めるとともに、技能検定制度の見直し等及び民間の職業能力評価の仕組みの活用を推進する。また、これら職業能力評価の結果が企業内における建設技能労働者の処遇の改善に結びつくよう、その方策の在り方について検討を行う。
(2) 労働者の自発的な職業能力開発の促進

 建設労働者に対する職業能力開発は、各々の事業主が責任をもって行う必要があるが、建設労働を取り巻く環境が変化する中で、一人一人の労働者が自己の技術・技能をより一層向上させるためには、労働者が自発的に職業能力開発を行うことも重要である。
 このため、企業内で職業能力開発に関する相談・情報提供を受けることが困難な建設労働者に対し職業能力開発プランの提示を行う等、その支援体制の整備を図る。また、教育訓練給付制度や公共職業能力開発施設における職業訓練等の積極的な活用を促進する。

(3) 熟練技能の維持・継承及び活用

 若年者の技能離れや熟練技能者の高齢化が進む中で、これまで建設業を支えてきた熟練技能の維持・継承及び活用が困難になりつつある状況にかんがみ、熟練技能の維持・継承及び活用を図るための仕組みを整備することが重要である。
 このため、高度熟練技能者の選定、高度熟練技能等に関する情報の提供等を行う高度熟練技能活用促進事業を推進する。また、技能者を講師等として活用したものづくり教育・学習を円滑に推進するための環境整備を行う。さらに、技能士の技能及びその地位の一層の向上並びに技能の振興を図るとともに、熟練技能の重要性が社会に認識されるよう、熟練技能競技大会(技能グランプリ)の開催を推進する。

3 若年労働者等の確保及び建設業に対する理解の促進

(1) 今後、若年労働者が大幅に減少する中で、質の高い労働者の確保を図り、建設業への入職を促進するためには、建設労働についての正しい理解を進め、建設業に対するイメージアップを図る必要がある。
 このため、教育機関や関係行政機関等と連携して学校教育の各段階における進路指導や職業指導等において職業意識を高めていく中で、建設業の実情や魅力について情報提供を行うとともに、インターンシップの有効活用を図る。また、建設業において働く若年労働者がライフステージに応じた生活設計ができるよう、現在の「建設労働者職業生涯モデル」を改訂し、入職以降の昇進、処遇、教育訓練、資格等の標準的な体系を職種別に総合的に示す。さらに、採用企業等に対する若年労働者等の定着促進のための啓発・指導の実施その他の取組を進め、円滑な就職及び職場定着を促進する。
(2) 国民一般の建設労働に対する正しい理解を促進するため、職場見学会等の機会の提供、建設労働の実情を紹介するためのビデオ制作及び頒布、体系的な職業情報の提供等の取組を推進する事業主団体等に対して助成その他の支援を行う。また、様々な職業に関する体験機会や職業情報を提供する職業総合情報拠点となる「私のしごと館」の有効活用を図る。

4 高年齢労働者及び女性労働者の活用

(1) 高年齢労働者の活用

(1) 建設業において高年齢労働者の特性や健康、体力等に対応した労働環境の整備を進めるため、高年齢労働者の特性に配慮した作業方法の見直し、適正な配置、柔軟な勤務形態、安全衛生対策、職業能力開発等、高年齢労働者の活用について検討する事業主団体等に対して助成その他の支援を行う。また、高年齢労働者の健康、体力や多様な就業ニーズを的確に把握しつつ、適切な雇用管理が行われるよう、建設事業主に対する啓発・指導を行う。
(2) 定年の引上げ、継続雇用制度導入等高年齢労働者の活用に取り組む事業主等や定年退職者及び離職を余儀なくされる高年齢労働者について再就職援助措置を行う事業主に対して助成その他の支援を行う。
(3) 高年齢労働者が、若年建設労働者や学生等に対して建設業の伝統技能の価値や建設業の魅力等について伝える機会を設ける等高年齢労働者が培ってきた知識や技能を現場以外において活用する方策について検討を行う。
(2) 女性労働者の活用
(1) 建設業においても、女性労働者が性別により差別されることなくその能力を十分発揮できる雇用環境の整備を進めるため、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号)について一層の周知・指導を行うことにより男女均等な雇用機会を確保するとともに、職場におけるセクシュアルハラスメント防止のための雇用管理上の配慮義務を徹底させる等、建設職場への受入体制の整備を促進する。
(2) 内装関係作業や重機オペレーター作業等女性労働者が活躍している業務や作業方法等の改善により女性の職域が拡大した業務についての好事例集の作成及びその普及を通じて、建設業における女性の入職を促進する。
(3) 作業方法や安全対策の配慮等女性労働者の活用について検討する事業主団体等に対して助成その他の支援を行う。また、男女別のトイレや更衣室等の整備に対して引き続き助成を行うことにより職場環境の改善に努める。

5 雇用改善推進体制の整備

(1) 建設事業主における雇用管理体制等の整備

 建設労働者の募集、雇入れ、技能の向上、職業生活上の環境整備等に関する下請事業主に対する指導等、従前と同様、元請事業主の役割の強化を図るとともに、雇用管理研修の内容改善等により雇用管理体制を充実させる。また、「雇用管理評価基準」を活用して雇用管理上の問題点を明らかにする等により建設労働者の雇用管理体制等の整備を図る。

(2) 事業主団体等における効果的な雇用改善の推進

 専門工事業者団体等中小建設事業主団体が行う自主的な雇用改善の取組の推進について啓発・指導を行う。また、専門工事業者団体等の取組に対する助成制度の活用促進及びその適切な見直しを行うことにより、効果的な雇用改善を推進する。

(3) 地域の実情を踏まえたきめ細かな雇用改善の推進

 地域における雇用改善の推進のための目標の設定やその実現に向けての具体的な取組を建設事業主やその団体等が共同して実施することについて、必要な指導及び援助を行うことにより、地域の実情を踏まえたきめ細かな雇用改善を推進する。

(4) 雇用改善の気運の醸成

事業主等に対する雇用改善対策の周知徹底、雇用改善に対する気運の高揚等を図るため、毎年11月の「建設雇用改善推進月間」を引き続き設定し、中央・地方を通じて実効ある事業を実施する。また、雇用改善について相当の成果がみられる事業所を優良事業所として表彰する制度等を活用し、事業主の雇用改善に取り組む気運の醸成に努める。

(5) 建設雇用改善助成金制度の活用

 建設雇用改善助成金制度について、ほかの助成制度の動向等を踏まえた教育訓練助成金の重点化やより効果的な雇用改善取組への事業主団体助成の重点化等、建設業におけるニーズを踏まえた助成制度の見直しを行う。また、中小零細建設事業主による助成金の積極的な活用に資するため、引き続き、助成制度の周知徹底、申請手続の簡素化等に努める。

(6) 関係行政機関相互の連携の確保等

  建設労働者の雇用改善について、都道府県と都道府県労働局の連絡協議の場等において情報や意見の交換等を積極的に行う。また、「建設雇用改善推進月間」の行事を中心に都道府県の協力の確保等に努める。さらに、公共職業安定機関、建設関係行政機関、雇用・能力開発機構等で構成する「建設雇用改善推進会議」の活用等を図る。

(7) 雇用改善指標を活用したきめ細かな雇用改善の推進

 雇用改善の進捗状況を詳細かつ具体的に把握し、より実効性の高い施策を実施していくために、様々な指標を総合的に判断することによって建設労働者の雇用改善の状況を評価する方法について検討を行う。

(8) 雇用改善を図るための諸条件の整備

 労務関係諸経費の確保、適正な工期の設定等について、引き続き、建設業行政等を始めとする関係行政機関による指導等により、関係事業主等において適切な対応を行うことにより、雇用改善を推進する。  さらに、公共工事の発注については、年間を通じた工事量の平準化をできる限り進めることについて、各発注者の理解と協力を得る必要がある。

6 外国人労働者問題への対応

 外国人建設技術者や外国に特有の建築又は土木に係る技能を持つ労働者等の専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れについては、我が国の経済社会の活性化や一層の国際化を図る観点から、より積極的に推進することとするが、いわゆる単純労働者の受入れについては、国内の労働市場にかかわる問題を始めとして我が国の経済社会と国民生活に多大な影響を及ぼすこと等から、国民のコンセンサスを踏まえつつ、十分慎重に対応することが不可欠である。
 以上の基本方針の下、外国人労働者の就労環境の整備を図るため、公共職業安定機関の外国人求職者等に関する職業紹介、職業相談機能・体制の一層の整備・充実に努め、雇用管理の改善を図るための事業主への指導、援助等の一層の充実を図るとともに、労働基準関係法令等に基づき外国人労働者の労働条件及び安全衛生の確保を図る。
 また、そのほとんどが不法就労をしているとみられる不法残留者の数が依然として高水準で推移しており、その中には建設業への不法就労も多くみられることから、関係行政機関との連携・協力の下、人権擁護に留意しつつ、悪質な仲介業者や事業主の取締りの強化、事業主への啓発・指導等、的確な措置を講ずる。


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