厚生労働省雇用均等・児童家庭局では、毎年、働く女性に関する動きを取りまとめ、「働く女性の実情」として紹介している。
今年は、「I 働く女性の状況」で平成12年及び平成11年における働く女性の実態とその特徴を明らかにするとともに、今般の景気停滞が男女の雇用動向にどのような影響を与えたかに着目し紹介している。「II 産業別にみた女性労働者の均等取扱い・活用状況と今後の課題」では、昭和61年の男女雇用機会均等法施行から今日までの女性労働者の均等取扱いと活用状況の変化について、法施行前の状況と比較しながら、女性労働者の量的・質的変化や状況、さらに企業における均等取扱い状況を産業別に把握することにより今後の課題を探った。
平成12年の働く女性の実情のポイント
I 働く女性の状況 1 労働力人口、就業者、雇用者の状況 (1) 平成12年の女性の労働力率は49.3%で、2年連続の減少となった。M字型カーブの底である30〜34歳層の女性の労働力率は57.1%となり、10年前(平成2年)と比較すると5.4%ポイント上昇した。また、配偶関係別に10年前と比較すると30〜34歳層、35〜39歳層の未婚者層で各労働力率は上昇しているが、有配偶者では逆に低下している(第1―1表、第1―1図・2図)。 (2) 女性の完全失業者は123万人、完全失業率は4.5%となり、平成11年に引き続き過去最高となった(第1―3図)。 (3) 女性の雇用者は、2,140万人で前年より24万人増(1.1%増)と3年ぶりに増加し、雇用者総数に占める女性の割合は初めて40.0%となった(第1―4図)。 (4) 女性のパートタイム労働者への入職者数が初めて一般労働者への入職者数を上回った。 (5) 女性の新規学卒就職者総数に占める大卒者の割合は36.1%とこれまでで最大となった。 2 景気停滞期の雇用動向
バブル崩壊以降今日まで景気は停滞基調が続いているが、この間については、さらに2つの景気後退期(平成3年2月〜平成5年10月、平成9年3月〜平成11年4月)が内閣府の景気循環判断から示されている。 (1) 正規労働者、非正規労働者等の男女別の動向
雇用者数の増減をみると、第1期では、男女ともに増加しているが、第2期では男性は減少し、女性は増加幅は小幅ながらも引き続き増加した(第1―5図)。 (2) 男女別離入職状況(平成12年は集計中のため、第2期は平成9〜11年とする。)
各期間中の常用労働者に占める離職者の比率である期間平均離職率は、第1期に比べ第2期では女性は低下し、逆に男性で上昇し、離職率の男女間格差は縮小した。離職理由は男女ともに「経営上の都合」や「契約期間満了」によるものが増加し、「個人的な理由」は減少した(第1―10図)。 (3) 勤労者家計の状況 世帯主の勤め先収入に対する妻の勤め先収入の割合は、第1期に比べ第2期には上昇し家計への貢献度が高まった。しかしながら、世帯主と妻の勤め先収入の合計額(実質)は、第1期と比べ第2期では減少しており、厳しい家計状況を反映して平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合)は第2期には低下した(第1―4表)。
1 女性労働者の変化と状況 (1) 女性労働者の量的変化と状況
雇用者の増加数を均等法施行前の昭和60年と平成12年を比較すると、女性は男性を大きく上回って増加し、産業別にみると、卸売・小売業,飲食店の女性35時間未満雇用者、サービス業の男女の35時間以上雇用者と女性の35時間未満雇用者が大きく増加した。逆に、減少したのは製造業で、特に女性の35時間以上雇用者の減少が大きい(第2―1図)。 (2) 女性労働者の質的変化と状況
女性の平均勤続年数は伸長しており、長期勤続者も増加傾向にある。産業別にみるとほとんどの産業で10年以上さらには15年以上の者の割合が増加しており、なかでも製造業、金融・保険業で大きく増加している(第2―6図)。 2 企業の均等取扱い・女性の活用状況
(1) 募集・採用方針については、すべての産業で9割を超える企業が男女不問としているが、実際の採用状況は、大卒事務・営業系で男女とも採用内定を行った企業が6割、男性のみ採用内定が3割弱、大卒技術系では男性のみ採用内定が6割となっており、建設業、製造業、運輸・通信業については、大卒事務・営業系で3割を超える企業が男性のみの採用を行っている(第2―12図)。
(2) 配置については、金融・保険業、卸売・小売業,飲食店、サービス業については5割を超える企業が従来からどの職種も男女とも配置をするようにしており、製造業については、改正均等法施行に伴い約2割の企業が女性又は男性のみの配置の職種を見直し、男女とも配置するようにしている。従来から男女とも配置するようにしている企業の少ない建設業と運輸・通信業は改正均等法施行後の見直しとあわせて5割台と依然低くなっている(第2―13図)。
(3) 昇進については、全体的に女性の割合は低いものの、サービス業は各役職で女性の登用が最も進んでおり、運輸・通信業では部長、課長の役職、卸売・小売業,飲食店は係長の役職への女性の登用が進んでいる。金融・保険業では、係長への女性の登用は進んでいるものの、部長、課長への登用は低くなっている(第2―1表)。
(4) コース別雇用管理制度の導入状況をみると、建設業及び金融・保険業が4割台と最も多く、運輸・通信業及びサービス業が15%程度と低くなっている。総合職に占める女性割合をみると、コース別雇用管理制度導入割合の高い建設業と金融・保険業で女性総合職の割合が低く、同制度導入割合の低いサービス業が最も高くなっている(第2―14図)。 3 新規大卒者の就職活動等実態調査にみる均等取扱い状況
(1) 新規大卒者の就職活動等実態調査によると、就職活動中出会った差別として、「面接の時、『結婚や出産をしても働き続けますか』ということを女性にだけ質問していた」、「男女で募集人数が異なっていた」、「女性には会社案内を送付しない企業があった」、「女性にのみ自宅から通勤することを条件としていた」、「男女とも募集の対象となっていたのに、応募の受付では男性のみあるいは女性のみを採用すると説明した」等の回答が多く寄せられた(第2―5表)。
(2) 平成12年3月4年制大学卒業者の内定時期をみると、就職活動の開始時期は女性の方が早いにもかかわらず、男性の方が内定時期が早くなっており、金融・保険業、製造業、運輸・通信業で男女差が大きい(第2―15図)。
(3) 昇進について、入社半年後の新規大卒就職者が、現在の会社において「昇進・昇格の基準が女性と男性では異なっている」と回答した者が多いのは建設業と金融・保険業で、サービス業では最も少ない。「女性の管理職、役職者がほとんどいない」と回答した者が多いのは建設業、製造業、運輸・通信業でそれぞれ5割を超えている。これについてもサービス業が最も少なくなっている(第2―16図)。
(4) 現在の会社において「女性は結婚・出産を機に退職する慣行がある」と回答した新規大卒就職者は2割弱となっており、産業別では、建設業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業で多く、サービス業で低くなっている(第2―17図)。 4 女性の活用のためのポジティブ・アクション等今後の課題
均等法に基づき雇用管理上の制度面の整備は進みつつあるものの、未だ男女間に実態として生じている差別や格差があることから、これらの解消を目指し、女性の能力発揮の促進のための積極的取組を行うポジティブ・アクションが必要である。
(1) 建設業
女性比が少なく男性中心の職場であり「男性の仕事、女性の仕事」といった性別役割分担意識が強く、女性が活躍できる職場風土にはなっていない状況である。男女の役割分担意識に基づいた職場慣行をなくすよう意識啓発のための研修を行うとともに入口である募集・採用差別の改善に取り組むことが第一段階の目標となるだろう。
(2) 製造業
女性労働者は少なくないが、採用過程や職種などに性別役割分担意識があることなどから、職場の意識啓発や女性が少ない職種などへ配置を行うための職場環境の整備などが必要であろう。
(3) 運輸・通信業
男性中心の職場であるが、女性比率は増加しつつある。まだ、採用や配置など男性中心の考え方もみられるが、職場環境の整備の取組も進んでいる。より一層の女性の採用や職域拡大に取り組むとともに、女性の能力発揮のための次のステップとして、女性の管理職への計画的育成のための具体的取組を行うことも必要になろう。〔ポジティブ・アクション取組事例3〕
(4) 卸売・小売業,飲食店
女性労働者の中でもパート労働者の活用が最も進んでおり、主要な労働力として重要な役割を果たしていることから、パートタイマーと正社員との職務に応じて均衡を考慮した労働条件を確保すること、さらには雇用管理の改善を図ることが必要である。
(5) 金融・保険業
制度上の整備は進んでいるが実態との乖離が大きく、実態を十分把握し実質的な男女均等にむけた取組が必要である。そのためには、性別役割分担意識に基づく職場慣行を見直すよう職場の意識改革が最も必要である。
(6) サービス業
専門的・技術的職業が主要な労働力となっており、それぞれの専門性を活かした活用が最も進展している。 5 まとめ
男女雇用機会均等法施行直前と改正均等法後の女性の労働者の状況と均等取扱い・女性の活用状況を産業別という角度から把握し、取り組むべき課題をみてきた。 |
担当 雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課 課長 村 木 厚 子 課長補佐 稲 葉 和 子 同 矢 田 玲 湖 電話 03(5253)1111(内)7837 夜間 03(3595)3271