平成１３年３月１４日

　薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会において、平成１２年食中毒事件発生状況等について検討した結果、以下の提言がなされた。

１ 昨年６月に発生した雪印乳業による食中毒事件については、脱脂粉乳の製造工程において黄色ぶどう球菌が増殖したことが推定されていることから、類似の食中毒事例の再発防止のため、乳・乳製品におけるエンテロトキシン検査方法を早急に確立するとともに衛生基準について検討するべきである。

２ 小型球形ウイルス(SRSV)による食中毒について、集団給食施設や飲食店での調理において食品取扱い者の手洗いや器具の洗浄など衛生管理が不適切であることや、加熱調理していないかきで発生していることを啓発するべきである。

３ また、小型球形ウイルス(SRSV)による食中毒防止対策を検討するため、食品中での高感度検出方法の確立など調査研究を推進するべきである。

４ 食中毒の原因として報告される小型球形ウイルス(SRSV)については、同ウイルスに関する科学的知見の増加やそれに伴う国際的な命名方法の変更を踏まえ、“ノーウォーク様(よう)ウイルス”(NLV)と改めるべきである。

５ 食中毒統計においては、飲食に起因する健康被害を全数を把握するには限界があるので、散発事例等の増加を踏まえ、被害の推計手法の調査研究を推進するべきである。

（参考）平成１２年食中毒事件の発生状況（速報）

（参考）

(1) 概要

　平成１２年は件数２，１５１件、患者数４２，１９１人、死者数４人の報告があった。これを平成１０年及び平成１１年の数値と比較すると、平成１０年は３，０１０件、４６，１７９人、死者数９人、平成１１年は２，６９７件、３５，２１４人、死者数７人 であり、事件数で比較すると減少している。

　規模別発生状況を患者数１名の散発事例で全体の事件数に占める比率を年次別にみると、平成１０年では５３．６％、平成１１年では５２．５％、平成１２年では４４．２％と低下している。
　なお、平成１２年における患者数１人の散発型事例の報告は、平成９年、１０年と同様に広島市及び山梨県が多く、それぞれ５８２件、６４件となっている。

　平成１２年の死者の出た食中毒事例は、事件数４件、死者数４名であり、病因物質（原因食品）は黄色ぶどう球菌（仕出し料理）、腸管出血性大腸菌Ｏ１５７（カブの浅漬け）、植物性自然毒（きのこ類）、サルモネラ・エンテリティディス（不明）であった。

　平成１２年の５００人以上の食中毒事例は３件であり、病因物質（原因食品）は毒素原性大腸菌Ｏ６（仕出し弁当）患者数７３５人、黄色ぶどう球菌（加工乳等）患者数１３，４２０人、毒素原性大腸菌Ｏ１４８（仕出し弁当）患者数７５４人であった。

(5) 月別発生状況

　月別発生状況では、７月から９月の３ヶ月間における発生件数の全体の発生件数に対する比率は、平成１０年は４９．６％、平成１１年は５０．７％、平成１２年は４５．７％と低下している。

(6) 病因物質別発生状況

ア）平成１２年の病因物質別発生状況で事件数が多いものは、サルモネラ属菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、小型球形ウイルスによるものであった。患者数でみると、ぶどう球菌、小型球形ウイルス、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、病原大腸菌によるものであった。また、患者数２人以上の事例では、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、小型球形ウイルス、カンピロバクターの件数が多く、患者数１人の事例では、カンピロバクター、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、病原大腸菌の件数が多かった。

イ）小型球形ウイルスによる食中毒は、平成１０年１２３件、５，２１３人（死者０人）、平成１１年１１６件、５，２１７人（死者０人）、平成１２年２３４件、７，７１８人（死者０人）であり、食中毒患者数全体にしめる割合は、平成１０年１１．３％、平成１１年１４．８％、平成１２年１８．３％となっている。
　月別の事件数でみると、１月が６９件ともっとも発生件数が多く、続いて２月４５件、３月４４件であった。また、患者数では、１月が１，８４４人でもっとも多く、続いて３月１，５２３人、１２月１，３２６人であった。

ウ）Ｏ１５７等腸管出血性大腸菌による食中毒事例については、平成１０年１６件、１８３人（死者３人）、平成１１年８件、４６人（死者０人）、平成１２年１６件、１１３人（死者１人）であった。

照会先：厚生労働省医薬局食品保健部
　　　　高谷 監視安全課長
　担当：課長補佐 宮川（ex.2473）
　　　　食品安全係長 中嶋（ex.2478）