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特別対談特別対談

特別対談

働き方改革を進めなければ
日本に未来はない

長時間労働やサービス残業などの日本型労働慣行を改善し、働き手主体の職場環境、労働条件を確立することに向けて、
2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されている。
働き方改革を推し進めるために、わが国の企業は何をなすべきか、かねてから日本の長時間労働の問題点を鋭く指摘してきたのが、
ライフネット生命の創業者で、現在、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明氏だ。
出口氏と、企業総務の専門誌『月刊総務』編集長として多くの企業現場を取材している豊田健一氏が対談した。

立命館アジア太平洋大学(APU)学長  出口 治明 氏

立命館アジア
太平洋大学(APU)学長
出口 治明

1948年生まれ、三重県出身。72年京都大学法学部卒業、同年日本生命に入社、2008年、ライフネット生命を創業、12年上場。社長、会長を務める。早稲田大学大学院講師、慶応義塾大学講師などを経て、18年より立命館アジア太平洋大学(APU)学長。著書に『哲学と宗教全史』(ダイヤモンド社)、『全世界史(上下)』(新潮文庫)、『人類5000年史(Ⅰ~Ⅲ)』(ちくま新書)など。

「月刊総務」編集長豊田 健一 氏

「月刊総務」編集長
豊田 健一

1989年、早稲田大学政治経済学部卒業、リクルート、魚力などを経て、現在、株式会社月刊総務代表取締役、『月刊総務』編集長。一般社団法人ファシリティ・オフィスサービス・コンソーシアム(FOSC)副代表理事や、All About「総務人事、社内コミュニケーション・ガイド」も務める。著書に『マンガでやさしくわかる総務の仕事』、『経営を強くする戦略総務』など。

長時間労働とダイバーシティの遅れが
日本経済停滞の要

少子高齢化が進む我が国において、停滞する日本経済を活性化するという点からも働き方改革の重要性が高まっています。出口先生は、かねがね日本の長時間労働は製造業の工場モデルの残滓だと言われておられますね。

平成の30年間をデータで振り返ってみると、わが国の購買力平均で見たGDPの世界シェアは約9%から4%と半減以下に落ち込んでいます。IMD(国際経営開発研究所)が発表した国際競争力は1989年の1位から2020年には34位にまで落ち込みました。平成元年の世界のトップ企業のうち14社は日本企業でしたが、現在はゼロです。
さらに、日本は名目GDPが大きいといわれていますが、これは人口が多いからで、1人当たりのGDPを購買力平価で見ると、2019年度はアメリカが6万5000㌦を超えていて、ドイツは5万6000㌦なのに対し、日本は4万3000㌦でしかなく、G7では最下位です。世界では33位となっており、アジアでもトップ5に入っていません。シンガポールや香港はもとより、台湾にも大きく引き離され、韓国とほぼ同水準です。このようにデータで見ると日本は経済がまったくうまく回っていないことが明らかになっています。

たしかにデータで見ると明らかですね。そうなってしまう理由について、出口先生はどう考えられますか。

日本は大学進学率や高等教育比率が世界的に見て低く、大学に進学しても勉強しない。これは100%企業の責任です。採用基準に成績を求めないからです。さらに、大学院修了者を大事にしない。しかし、一番の問題点は「労働時間」です。平成の30年間、正社員で見ると労働時間は2000時間を超えていて、まったく減っていません。これだけ働いていても成長率は平均1%に届かない。
長時間働いても成長しないのはマネジメントが機能していないからです。製造業の工場モデルは長時間労働が向いています。機械は疲れないから、稼働すればするほど製品が生産されます。しかし、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)やユニコーンと呼ばれるベンチャー企業はアイデアが勝負で、高い成長性を持ち、投資対象として有望です。世界の先端企業は頭脳労働へとシフトし、生産性を高めているのに、我が国はいまだに工場モデルに縛られています。
頭脳労働を考える上で大切なことは、人間の脳は一回の集中力は2時間くらいで、2時間×4コマぐらいが限界だということです。それは、脳科学の分野でほぼ証明されています。日本はいわゆる正社員などで2000時間労働、これに対してドイツやフランスは1500時間ですから、日本は構造的に勉強できない環境になっています。「メシ」「フロ」「ネル」の長時間労働から解放されて、面白い人に会い、ためになる本を読み、さまざまな場所に出かけて自分の目で確かめるという、“人・本・旅”の生活に切り替えるべきです。

なるほど。日本の労働時間における問題は、構造そのものに問題があるということですか。そういう意味では、ダイバーシティという観点でもまだまだ課題があると感じています。

その通りです。GAFAやユニコーンは、ほとんどが多国籍チームです。ところが、日本の大企業は日本人の女性すら少ない。一方で、サービス産業のユーザーは7割が女性です。全世界の産業構造は女性が需要を引っ張っているので、供給サイドに女性がいなければ女性が本当に欲しいものは分かりません。この需給のミスマッチを解消しようと世界の100カ国以上が会社幹部に一定の割合で女性を登用する「クォーター制」を導入しています。ところが、日本は女性の地位が極めて低く、「世界経済フォーラム」(WEF)が2019年12月に発表した男女格差の度合いを示した世界ジェンダーギャップ指数で過去最低の121位です。ダイバーシティがまったく進んでいない。これに、構造的に勉強できないことが加わっているわけですから、ユニコーンが生まれるはずがありません。

(資料出所) 厚生労働省「毎月勤労統計調査」 (注)調査産業計、事業所規模5人以上
総実労働時間の年換算値については、各月間平均値を12倍し、小数点以下第1位を四捨五入したものである。平成24年以降の数値は、東京都の「500人以上規模の事業所」について再集計した値(再集計値)に変更しており、従来の公表値とは接続しないことに注意。