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科発第0331022号
平成15年3月31日

国立医薬品食品衛生研究所長
国立保健医療科学院長
国立社会保障・人口問題研究所長
国立感染症研究所長



殿

委託研究に係る特許権等の研究成果の取扱いについて

 平成13年3月30日に閣議決定された第二期科学技術基本計画及び知的財産戦略大綱等に基づき、国の研究成果の活用をより一層促進するため、今後、標記については、下記のとおり取扱うこととしたので、貴機関が実施する委託研究に関し、下記の事項について所要の措置を講ずるよう対応方お願いする。なお、平成10年3月16日付厚科第182号は本日をもって廃止する。

 厚生労働省又は厚生労働省に所属する試験研究の実施機関(以下「委託者」という。)が、1.に掲げる研究に関し、当該研究を行う者(以下「受託者」という。)と締結する委託研究契約書に2.に掲げる規定を設けること。
1. 対象となる研究
 外部の機関又は研究者に委託して実施する研究。ただし、以下に掲げるものを除く。
(1) 受託者が、国立の機関又は当該機関に所属する研究者である研究
(2) 研究成果として知的財産権の形成が期待しがたい研究
2.  委託研究契約書の規定事項(別紙の契約書に規定する条文の例を参考のこと。)
(1) 委託に係る技術に関する研究の成果に係る特許権等については、産業活力再生特別措置法(平成十一年八月十三日法律第百三十一号。以下「法」という。)第三十条第一項各号(各号中「国」とあるのは、「委託者」と読み替えるものとする。)及び次の条件に該当する場合において、委託者は、その特許権等を受託者から譲り受けないことができる。
委託者が当該特許権等を受託者から譲り受けないことが、法第一条に規定する目的に合致するものであると判断した場合。
受託者が当該特許権等を自ら実施し、またはその指定する者に実施させる場合、委託者の承認を得ることを受託者が約すること。
(2) (1)の規定は、法第三十条第二項に基づき、委託者が資金を提供して他の法人に技術に関する研究を行わせ、かつ、当該法人がその研究の全部又は一部を委託する場合における当該法人と当該研究の受託者との関係に準用する。
(3) 法第三十条第三項に基づき、(2)の法人は、(2)において準用する法第一項第二号又は第三号の許諾を求めようとするときは、委託者の要請に応じて行うものとする。
(4) 委託者が特許を受ける権利を受託者から譲り受ける場合、受託者が委託者の承認を得て、当該権利の対象となる発明を自ら実施し又はその指定する者に実施させる場合には、当該発明に係る特許の出願に係る事務を国の名義により行うことができること。
(5) 受託者は、(4)の場合において特許権の取得及び維持に必要な費用の全額を負担すること。
(6) 委託者は、譲渡を受けた特許を受ける権利又はこれに基づき取得した特許権に係る発明を、受託者又は受託者の指定する者に限り、委託研究の終了の日から7年を超えない期間において、優先的に実施させることができること。
(7) 委託者は、特段の理由があると認めた場合は、(6)の優先実施の期間を延長することができること。
(8) (1)から(7)までの規定は、実用新案権、実用新案登録を受ける権利、意匠権、意匠登録を受ける権利、プログラムの著作物の著作権、データベースの著作物の著作権及び育成者権に準用すること。

(別紙) 委託研究契約書に規定する条文の例

<甲は委託者(厚生労働本省、国立試験研究機関等)、乙は受託者とする。>

(特許権等を国が譲り受けないことができる場合)
第○条 甲は、乙が次の各条件のいずれにも該当する場合には、その特許権等を乙から譲り受けないことができる。
研究成果が得られた場合には、遅滞なく、甲にその旨を報告することを乙が約すること。
甲が公共の利益のために特に必要があるとしてその理由を明らかにして求める場合には、無償で当該特許権等を利用する権利を甲に許諾することを乙が約すること。
当該特許権等を相当期間活用していないと認められ、かつ、当該特許権等を相当期間活用していないことについて正当な理由が認められない場合において、甲が当該特許権等の活用を促進するために特に必要があるとしてその理由を明らかにして求めるときは、当該特許権等を利用する権利を第三者に許諾することを乙が約すること。
甲が当該特許権等を乙から譲り受けないことが、産業活力再生特別措置法第一条に規定する目的に合致するものであると判断した場合。
乙が当該特許権等を自ら実施し、またはその指定する者に実施させる場合、甲の承認を得ることを乙が約すること。
前項の規定は、甲が資金を提供して他の法人に技術に関する研究を行わせ、かつ、当該法人がその研究の全部または一部を委託する場合における当該法人と当該研究の受託者との関係に準用する。
前項の法人は、同項において準用する第一項第二号又は第三号の許諾を求めようとするときは、甲の要請に応じて行うものとする。

(特許を受ける権利の国への譲渡)
第○条 甲が特許を受ける権利を乙から譲り受ける場合は、乙は、次に掲げる事項を記載した書面を甲に提出しなければならない。
当該発明の名称、範囲、内容等
当該発明に係る特許を受ける権利を甲に無償で譲渡する旨

(出願)
第○条 乙は、乙が委託研究をした結果得られる発明を実施し又は乙の指定する者に実施させようとするときは、甲の承諾を得て、当該発明に係る特許の出願から特許権の登録までに必要となる手続を甲の名義により行うことができる。
前項の場合において、当該手続及び特許権の維持のために必要な費用の全額を乙が負担するものとする。

(優先実施権)
第○条 甲は、譲渡を受けた特許を受ける権利又はこれに基づき取得した特許権に係る発明を乙又は乙の指定する者(以下「優先実施権者」という。)に限り、委託研究の終了の日から○年を超えない期間において、優先的に実施させることができる。
(注:上記の優先的に実施させる期間の上限は7年とする。)
甲は、前項の規定にかかわらず、特段の理由があると認めた場合に限り、前項の優先実施の期間を延長することができる。

(第三者に対する実施の許諾)
第○条 甲は、前条の規定により優先実施権者が優先実施の期間の第2年以降において正当な理由なく当該発明を実施しないときは、当該優先実施権者以外の者(以下「第三者」という。)に対し当該発明の実施を許諾することができる。
甲は、前条の規定により優先実施権を付与した場合において、当該優先実施権を付与したことが公共の利益を著しく損なうと認めるときは、優先実施の期間中であっても第三者に対し当該発明の実施を許諾することができる。

(準用)
第○条 第○条から第○条までの規定は、次の権利について準用する。
実用新案登録を受ける権利及び実用新案権
意匠登録を受ける権利及び意匠権
種苗法(平成10年法律第83号)に規定する品種登録を受ける権利及び育成者権
著作権法(昭和45年法律第48号)に規定するプログラムの著作物またはデータベースの著作物
第一号から前号までに掲げる権利の対象とならない技術・情報のうち秘匿することが可能で財産的価値があるものであって、甲及び乙が特に指定するものを使用する権利
(注:上記の条文中各号のうち、委託研究の内容からその発生が想定されない権利は削除することができる。)


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