健康危機管理について

医薬品等健康危機管理実施要領

 

制定 平成9年3月31

第1次改訂 平成101019

第2次改訂 平成13年1月6日

第3次改訂 平成13年4月18

第4次改訂 平成16年6月29

第5次改訂 平成25年7月1日

 

第1 目的

  この実施要領は、「厚生労働省健康危機管理基本指針」に基づき、薬事法(昭和35年法律第145号。以下「法」という。)に規定する厚生労働大臣の権限及びこれに関連して必要な行政措置に関する事務を的確、かつ、迅速に行うことにより、医薬品等(医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器をいう。以下同じ。)による健康被害の発生を未然に防止し、及び発生した健康被害の拡大を防止することを目的として、医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)との連携及び医薬食品局内における業務の実施要領を定めるものである。

 

第2 医薬品等における危機管理の基本的心得

1.非加熱血液製剤によるHIV感染の発生、拡大の反省を踏まえ、日頃から医薬品等の安全性情報(生物学的製剤を含み、医薬品等の製造管理に係るものを含む。以下同じ。)の迅速な把握に努めるとともに、健康被害の発生、拡大を防止するため、常に総合的な安全対策の立案、実施に努めるものとする。

 

2.因果関係が不明である場合又は入手した安全性情報が不確実なため健康被害の発生のおそれの有無が直ちに判断できない場合には、常に最悪の事態を想定して、安全対策の立案、実施に努めるものとする。

 

第3 機構との役割分担

1.医薬品等の安全性情報の収集、整理、調査は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法第15条第5号に基づき機構において一元的に行うものとするが、医薬食品局は、機構における安全対策に関する業務が適切に行われるよう、連携を図るものとする。

 

2.医薬食品局は、機構と安全性情報を共有し、緊急な安全対策を講じる必要があると判断される場合には、安全対策課において迅速に適切な安全対策の立案、実施が行われるよう努めるものとし、その他の場合にあっては、機構が立案する安全対策について実施の決定を行い、適切に実施するよう、努めるものとする。

 

第4 医薬食品局各課の役割分担

1. 総務課

(1)安全対策事務の総合的企画及び調整

(2)薬事法その他関係法規の総括

 

2. 安全対策課

(1)機構が行う安全性情報の収集及び一次評価に関する調整

(2)機構が行う安全性情報の評価及び安全対策の立案に関する調整

(3)機構と共有した安全性情報に関し、緊急に安全対策を講じる必要性の判断

(4)決定された安全対策の公表

(5)各課が実施する安全対策の実施に関する事務の調整

(6)安全対策の実施及び実施状況の公表(医薬品等の使用上の注意の改訂の指示、緊急安全性情報の配布その他の医薬関係者への情報提供及び他課の主管に属さないこと)

(7)各課が実施する安全対策の実施状況の総括

 

3.監視指導・麻薬対策課

(1)安全対策の実施及び実施状況の公表(医薬品等の回収若しくは廃棄の指示又は製造若しくは出荷の停止の指示に係ること)

(2)安全対策の実施に当たっての都道府県知事との連絡調整

(3)検査に係る国立感染症研究所及び国立医薬品食品衛生研究所との連絡調整

 

4.審査管理課

(1)安全対策の実施及び実施状況の公表(医薬品等の承認の取消若しくは一部変更又は再評価の指定に係ること)

(2)医薬品等の承認に関する情報の提供その他の関係各課に対する技術的支援

 

5.血液対策課

(1)安全対策の実施及び実施状況の公表(「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」に関する血液製剤の安全性の向上、安定供給の確保及び適正な使用の推進のために必要な措置に係ること)

(2)日本赤十字社及び血液製剤の製造販売業者等との連絡調整

(3)血液製剤に関する情報の提供その他の関係各課に対する技術的支援

 

第5  医薬品等安全対策連絡会議

1.安全対策課長(安全対策課長に事故があるときは、安全使用推進室長。安全使用推進室長に事故があるときは、安全対策課の課長補佐。3.において同じ。)は、安全性情報の収集及び評価並びに安全対策の立案及び実施に当たり、各課の情報交換を促進するとともに、各課の事務の円滑な調整を行うため、必要に応じ、医薬品等安全対策連絡会議(以下「連絡会議」という。)を召集するものとする。

 

2.連絡会議は、安全対策課長及び安全使用推進室長並びに総務課、審査管理課、安全対策課、監視指導・麻薬対策課及び血液対策課の予め定めた課長補佐をもって構成開催し、事案に応じて必要な関係課の当該課長補佐を招集して開催する。但し、当該課長補佐が出席できない場合は、他の課長補佐が代理できるものとする。

 

3.安全対策課長は、必要に応じて医政局経済課及び健康局結核感染症課予防接種室(以下「健康局結核感染症課」という。)に対し、連絡会議への出席を求めるものとする。

 

4.緊急時において速やかに連絡会議を開催するため、安全対策課において休日、夜間における連絡会議の構成員の連絡先を把握するものとする。なお、連絡会議の構成員に異動があった場合には、その都度回覧するものとする。

 

第6  安全性情報の収集、一次評価及び緊急に安全対策を実施する必要性の判断

1.安全性情報の収集及び共有

(1)安全対策課は、機構において次に掲げる情報が適切に収集、整理、調査されるよう、連携を図るとともにこれを共有する。

ア 法第68条の8及び法第77条の4の2第1項の規定に基づく報告その他の医薬品等の安全性情報に関する製造販売業者等(製造販売業者、外国特例承認取得者及び国内管理人をいう。)からの報告

イ 法第77条の4の2第2項の規定に基づく医薬品等安全性情報報告その他の医薬品等の安全性情報に関する医薬関係者からの報告

ウ 別紙1に掲げる文献に掲載された医薬品等の安全性情報

エ 米、英、独、仏、加、豪等各国政府並びに世界保健機関(WHO)及び欧州連合(EU)が講じた安全対策に係る情報であって、別紙2に掲げるもの

(2)安全対策課は、次に掲げる情報を収集し、機構と共有する。

ア 厚生労働省健康危機管理基本指針に基づき、健康局その他の省内内部部局並びに国立感染症研究所及び国立医薬品食品衛生研究所から報告された安全性情報

イ 都道府県知事から報告された安全性情報

(3)安全対策課は前項に掲げるもの以外の安全性情報についても、その収集に努めるものとする。

(4)各課は、その所掌事務に関する安全性情報の収集について、安全対策課に協力するとともに、自ら安全性情報を入手した場合には、直ちに、安全対策課に報告するものとする。安全対策課は、各課から入手した安全性情報については、機構と共有する。

(5)(1)のウ及びエに掲げる安全性情報の収集については、機構及び関係各課において収集を行うほか、(財)日本医薬情報センターその他の団体に委託できるものとする。

(6)安全対策課は、上記(1)から(5)により入手した安全性情報のうち、血液製剤に関することについては血液対策課と、ワクチンに関することについては健康局結核感染症課と、医薬品等の使用による感染症の発生に関することについては健康局疾病対策課若しくは健康局結核感染症課と、医薬品の供給に関することについては医政局経済課と、保健所、地方衛生研究所が関わること(その情報等に基づく対応等を含む。)については健康局総務課地域保健室と、その他医薬食品局各課の所掌に関することについては関係各課と共有する。

(7)安全対策課は、法第77条の4の2第1項の規定に基づく報告及び同条第2項の規定に基づく医薬品等安全性情報報告が機構において適切に収集され、データベースに入力され、管理されるよう連携を図るものとする。

 

2.収集した安全性情報の一次評価

(1)安全対策課は、機構において、収集、整理、調査された安全性情報(不良医薬品等又は無承認若しくは無許可医薬品に関するものを除く。)が次のいずれかに該当するか適切に判断されるよう、連携を図るものとする。また、安全対策課は、必要に応じて機構と共有した安全性情報についてそれが次のいずれかに該当するか判断するものとする。なおその際は、必要に応じ連絡会議を開催するとともに、関係各課の協力を得るものとする。

ア 重篤な健康被害(死亡、障害又は入院治療を要するもの。以下同じ。)が発生し、又は発生するおそれのあるもの

イ 重篤でない健康被害が発生し、又は発生するおそれのあるもの

ウ 因果関係が不明である場合、入手した情報が不確実性を伴う場合その他の場合であって健康被害が発生するおそれの有無が判断できないもの

エ 健康被害が発生するおそれのないもの

(2)安全性情報が不良医薬品等又は無承認若しくは無許可の医薬品等であることが明らかである場合には、安全対策課が(1)に規定する判断を行うにあたり、監視指導・麻薬対策課に判断の案の作成を求めるものとする。この場合において、安全対策課は、必要に応じ連絡会議を開催するとともに、関連各課の協力を得るものとする。

 

3.補充調査の実施

(1)安全対策課は、2.(1)による一次評価の結果、因果関係が不明である場合、入手した安全性情報が不確実性を伴う場合その他の場合であって、健康被害が発生するおそれの有無が判断できないとされたときには、更に安全性情報の収集を行うため、次に掲げる方法により、機構において調査が実施されるよう調整するものとする。なお、エからカによることが必要な場合及び関係各課において調査を行うことが適切であると判断された場合にあっては、安全対策課は必要により機構と連携して調査が適切に行われるよう努めることとし、又は関係各課に調査を実施するよう指示するものとする。

ア 製造販売業者等に対する安全性情報の収集の指示

イ 医薬関係者に対する安全性情報の収集、提供の要請

ウ 文献の検索

エ 国立感染症研究所又は国立医薬品食品衛生研究所における検査の実施その他の関係国立試験研究機関等における調査の実施の要請

オ 外国政府、在外日本大使館及び国際機関に対する照会

カ 職員の現地派遣

(2)(1)の場合において、関係各課は安全対策課に協力するものとする。

(3)緊急時において速やかに(1)オの照会を行えるようにするため、安全対策課において、医薬食品局国際担当の協力を得て、外国政府、在外日本大使館及び国際機関の担当者の連絡先を把握するものとする。

 

4.緊急に安全対策を実施する必要性の判断

(1)2.(1)により一次評価が行われた安全性情報のうち、別紙3により緊急案件に係るおそれがある情報に該当するものとして機構から連絡された情報及び安全対策課が緊急案件に係るおそれがある情報に該当すると判断した情報について、必要に応じ連絡会議を開催するとともに、関係各課の協力を得て、次に掲げる事項を総合的に判断して、緊急に安全対策を実施する必要性の有無を判断する。なおその際は、必要に応じて薬事・食品衛生審議会の意見を聞くものとする。

ア 予測される健康被害の重篤度

イ 現に生じている健康被害の頻度その他の出現傾向

ウ 当該医薬品等について既に講じられている安全対策の実施状況

エ 当該医薬品の使用に代替し得る治療法の有無その他の当該医薬品等の医療上の位置づけ

オ 外国における健康被害の発生状況及び安全対策の実施状況

(2)安全性情報が不良医薬品等又は無承認若しくは無許可の医薬品等であることが明らかである場合には、安全対策課が(1)に規定する判断を行うに当たり、監視指導・麻薬対策課に判断の案の作成を求めるものとする。この場合において、安全対策課は、必要に応じ連絡会議を開催するとともに、関係各課の協力を得るものとする。

 

5.安全性情報の関係者への報告

(1)安全対策課は(「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」に関する血液製剤の安全性の向上、安定供給の確保及び適正な使用の推進のために必要な措置に関する場合、「安全対策課」とあるのは「血液対策課」と読み替える。以下同じ。また、安全性情報が不良医薬品等又は無承認若しくは無許可の医薬品等であることが明らかである場合、「安全対策課」とあるのは「監視指導・麻薬対策課」と読み替える。以下第7まで同じ。)、4.(1)において緊急に安全対策の実施を要するものであると判断する場合にあっては、医薬食品局長、審議官及び総務課長に報告し了解を得た後、厚生労働省健康危機管理調整会議主査に報告する。また、当該情報について緊急に安全対策の実施を要するものではないと判断する場合のうち重要なものについても、医薬食品局長、審議官及び総務課長に報告する。

(2)医薬食品局は、機構と共有した安全性情報が緊急に安全対策の実施を要するものであり、かつ、健康被害の範囲が大規模に及ぶことが予想されるときは、必要に応じて、別紙4により厚生労働大臣まで報告する。

 

第7 安全対策の立案及び決定

1.安全対策の立案

安全対策課は、第6の4.(1)により緊急に安全対策の実施を要するものであると判断する場合、必要に応じ局議を開催するとともに、関係各課の協力を得て、第8の1.に規定する安全対策の立案を行うものとする。また、安全対策課は、この場合を除き、健康被害の発生、又は発生のおそれがある安全性情報を入手した場合(当該安全性情報が医薬品等の既知の副作用若しくは不具合に係るもの又は医薬品等の使用による感染症の発生に係るものである場合であって、当該健康被害が当該医薬品等の承認の際、又は過去において安全対策を決定した際に予想されていた範囲内のものであるときを除く。)に、機構において、第8の1.に規定する安全対策の立案が適切に行われるよう、連携を図るものとする。

 

2.薬事・食品衛生審議会への付議

(1)安全対策課は、1.により安全対策の立案を行う場合には、薬事・食品衛生審議会の意見を聞くものとする。

(2)重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれがあり、緊急に安全対策を講じる必要があり、かつ、薬事・食品衛生審議会の意見を聞く時間的余裕がないと医薬食品局長が判断した場合には、薬事・食品衛生審議会の意見を聞くことなく、情報提供、出荷停止の指示、回収又は廃棄の指示を行うことを決定することができる。

(3)(2)の場合において、安全対策課は、安全対策の決定前に、薬事・食品衛生審議会委員又は臨時委員に個別にその意見を聞くよう努めるとともに、安全対策の決定後速やかに薬事・食品衛生審議会に対して、事後報告を行うものとする。

 

3.安全対策の決定及び関係者への報告

(1)安全対策の決定は、事案の概要、薬事・食品衛生審議会の意見等とともに安全対策案について安全対策課において起案し、安全対策課長、関係各課の長、総務課長、審議官及び医薬食品局長の決裁を得て行うものとする。

(2)医薬食品局は、緊急に実施することが決定された安全対策について、別紙4により、厚生労働大臣まで報告する。

(3)医薬食品局は、緊急に実施することが決定された安全対策(健康被害の範囲が大規模に及ぶことが予想される事案に対する安全対策に限る)について、必要に応じて、別紙4により厚生労働大臣まで報告する。なおその際、厚生労働省健康危機管理調整会議主査には、併せて内閣情報集約センターへの報告を依頼する。

 

第8 安全対策の実施

1.安全対策の方法

厚生労働省が実施する安全対策は次に掲げる方法の一又は二以上の方法による。

ア 承認の取消し

イ 承認の一部変更

ウ 承認条件の付与・変更

エ 使用上の注意の改訂の指示

オ 回収又は廃棄の指示

カ 製造又は出荷の停止の指示

キ 再評価の指定

ク 情報提供

ケ 継続調査

 

2.安全対策の実施

(1)承認の取消

医薬品等の承認に際して提出された資料に重大な虚偽又は誤りがあることが発見された場合であって、当該虚偽又は誤りのため、承認時には予測されなかった重篤な健康被害が生じたときには、承認を取り消すこととする。

(2)承認の一部変更

ア 医薬品等に起因する健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合であって、当該医薬品等の承認の対象となった効能、効果、用法、用量、製造方法、規格及び試験方法を改訂しなければ、当該健康被害の発生又は拡大を防止できないときは、承認の一部変更を行うこととし、製造販売業者等に対して、期限を定めて法第14条第6項の承認の一部変更申請を提出すべき旨を文書をもって指示するものとする。

イ 次に掲げる場合には、承認の一部変更は、法第74条の2第2項の命令により行うものとする。

i)現に重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合など、健 康被害の拡大を防止するために、直ちに承認の一部変更を行う必要がある場合

ii)アの指示の際に示した期限までに一部変更申請が提出されないか、又は提出されないことが予想される場合

ウ 承認の一部変更を行う必要がある場合であって、これに伴い、日本薬局方、生物学的製剤基準その他の法第42条に規定する基準を改定する必要があるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、当該基準の改定を行うものとする。

(3)承認条件の付与・変更

医薬品等に起因する健康被害が現に発生し、又は発生するおそれのある場合その他の場合であって、保健衛生上の危害の発生を防止するために法第79条に基づく承認条件の付与又は変更を行う必要があると認められるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、承認条件の付与又は変更を行うものとする。

(4)使用上の注意の改訂の指示

ア 医薬品等に起因する健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合で あって、当該健康被害の発生が現に記載されている使用上の注意の内容からは予測し得ないとき、又は現に記載されている使用上の注意の内容が適切でなくなったときは、製造販売業者等に対して使用上の注意の改訂を指示するものとする。

イ アの指示は、改定すべき内容及び改訂の期限を文書をもって通知することにより行うものとする。

ウ 製造販売業者等がイの通知により指定した期限までに、当該通知により指定した内容の改定を行わないか、又は行わないことが予想される場合には、イにかかわらず、使用上の注意の改訂は、法第69条の3の命令をすることにより行うものとする。

(5)回収又は廃棄の指示

ア 次のいずれかの場合には、製造販売業者等に対して、次に掲げる範囲の医薬品等の回収を指示するものとする。

i)当該医薬品等に起因する健康被害が現に発生し、又は発生するおそれのある場合であって、使用上の注意の改訂の指示、情報提供その他の安全対策によっては、健康被害の発生又は拡大を防止することが困難であるとき 健康被害の原因となる可能性のある全製品

ii)当該医薬品等に起因する健康被害が発生するおそれがないが、当該医薬品等が不良医薬品である等薬事法違反に該当する場合 当該医薬品等のうち販売業者が保有する全製品並びに医療機関及び患者が保有する製品のうち医療機関が回収することが適当と判断するもの

イ アにより回収の指示をした場合であって、健康被害の原因が当該医薬品等の使用によるものであることが明らかであるときその他当該医薬品等を製造販売業者等が保有し続けることが二次的な健康被害の発生等につながることが懸念される場合には、製造販売業者等に対し、当該医薬品等を速やかに廃棄すべきことを指示するものとする。

ウ アの回収の指示又はイの廃棄の指示は、製造販売業者等に対して回収又は廃棄を行うべき旨を文書で通知することにより行うこととする。

エ ウの通知には回収期限(重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合には2週間を超えない期間とする)、回収すべき医薬品等の範囲及び回収の対象となる販売業者等の範囲(販売業者、医療機関又は患者の別)を明示するものとする。

オ 次に掲げる場合には、ア及びイにかかわらず、回収の指示又は廃棄の指示は、法第69条の3又は第70条の規定に基づき命令することにより行うものとする。

i)重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合など、直ちに回収又は廃棄の措置をとらせなければ、健康被害の発生又は拡大を防止することが困難であるとき

ii)製造販売業者等がウの通知により指定した期限までに、当該通知により指定した内容の回収又は廃棄の指示に従わないか、又は従わないことが予想される場合

カ 医薬品等の回収を命令し、又は文書による指示を行った場合には、製造販売業者等に回収状況を報告させるとともに、必要に応じ、都道府県知事の協力を得て、製造販売業者等の事業所、販売業者等に法第69条の規定に基づく立入検査を実施するなど、回収の実施状況を確認するものとする。

(6)製造又は出荷の停止の指示

ア 次に掲げる場合には、製造販売業者等に対して、当該医薬品等の製造又は出荷の停止の指示を文書で通知するものとする。

i)当該医薬品等の全製品について回収を命令し、又は文書による指示を行った場合

ii)因果関係が不明である場合、収集した情報が不確実性を伴う場合その他の場合であって、健康被害が発生するおそれの有無が判断できないため、回収が必要であるかどうかの判断に時間を要し、一時的に製造又は出荷を停止する必要がある場合

イ 重篤な健康被害が発生し、若しくは発生するおそれがある場合など、直ちに製造若しくは出荷の停止を行わせなければ健康被害の発生若しくは拡大を防止し得ない場合又は製造販売業者等が(1)の通知後速やかに製造若しくは出荷の停止を行わないか、若しくは行わないことが明らかな場合には、法第69条の3の規定に基づき、製造又は出荷の停止を命令するものとする。

ウ 医薬品等の製造又は出荷の停止を命令し、又は文書で指示したときは、必要に応じて、都道府県知事の協力を得て、製造販売業者等の事業所に法第69条の規定に基づく立入検査を実施するなど、製造又は出荷の停止が行われていることを確認するものとする。

(7)回収等に伴う安定供給への配慮

ア 回収又は製造若しくは出荷の停止が行われる場合には、必要な医薬品等の安定供給を確保するため、その対象となった医薬品等に代替する医薬品の供給状況の把握に努めるとともに、必要に応じ、代替品の製造販売業者等に対する増産の要請等必要な措置を講じるものとする。

イ 回収又は製造若しくは出荷の停止の対象となった医薬品等について、国内に代替し得る医薬品等がなく、かつ、他の治療法が限定されている場合には、当該医薬品等の安全性及び治療上の必要性等に関する総合的な評価について、薬事・食品衛生審議会における審議を経た上で、次に掲げる措置その他必要な措置を講じることができる。

i)法第13条の2の規定に基づく代替医薬品等の承認前の特例許可

ii)患者に対する当該医薬品の使用による危険性と医療上の必要性の説明を行い、その同意を得る等必要な措置が確保されていることを条件とした当該医薬品の使用の承認

(8)再評価の指定

当該医薬品等に起因する健康被害が現に発生し、又は発生するおそれのある場合その他の場合であって、法第14条の5の再評価を行う必要があると認められるときは、薬事・食品衛生審議会の意見を聞いて、再評価の指定を行うものとする。

(9)情報提供

ア 医薬関係者等への緊急安全性情報等の伝達の指示

i)安全性を理由とした重要な承認の一部変更又は警告欄の新設等の使用上の注意の改訂を行った場合その他必要があると認めるときは、製造販売業者等に対して、期限を定めて、医薬関係者等に緊急安全性情報等を伝達すべき旨を文書により指示するものとする。

ii)製造販売業者等がアの指示において定めた期限内に緊急安全性情報等を伝達しないか、又は伝達しないことが予想される場合には、法第69条の3の規定に基づき、緊急安全性情報等を伝達すべきことを命令することとする。

イ 厚生労働省緊急安全性情報(PMDAメディナビ)による情報提供

重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれがある場合であって、緊急かつ広範囲に医薬関係者に情報提供を行う必要がある場合には、厚生労働省緊急安全性情報(PMDAメディナビ)により情報提供を行うものとする。

ウ 重篤な健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合であって、不確実性を伴う安全性情報に基づき、安全対策の決定を行った場合には、その決定の前提となった安全性情報、対策決定に当たって考慮した要因、制約条件等を併せて情報提供するものとする。

(10)継続調査

安全対策に万全を期すため必要と認められる場合には、当該医薬品等について、継続的な安全性情報の収集、第7の例による調査の実施その他の調査を実施する。

 

3.安全対策の実施状況調査

安全対策を実施した課室は、製造販売業者等にその遵守状況を報告させ又はその状況について機構に調査を依頼するとともに、必要に応じて、都道府県知事の協力を得て、製造販売業者等の事業所、販売業者等に法第69条の規定に基づく立入検査を実施するなど、遵守状況を確認するものとする。

 

4.省内の関係各課との連携

安全対策課は、安全対策の立案及び実施に当たり、医政局経済課に対し、医薬品等の供給に関する協力を求める等、必要に応じ、省内の関係課との連携を図るものとする。

 

第9 公表

1.第6の4.により緊急に安全対策の実施を要するものであり、かつ、健康被害の範囲が大規模に及ぶことが予想されると判断された安全性情報、並びに第7の3.により決定された安全対策及び安全対策を要するものではないと判断したもののうち重要なものは、安全対策課(安全性情報が不良医薬品等又は無承認若しくは無許可の医薬品等であることがあきらかである場合には、監視指導・麻薬対策課。以下2.において同じ。)において適宜公表する。

 

2.公表を行う場合には、安全対策課が窓口となって、報道機関に対してその内容について情報提供を行うとともに、厚生労働省ホームページに掲載する等インターネット等の広報媒体を利用して広く情報提供を行うものとする。

 

第10 製造販売業者等による自主的措置がとられた場合

1.健康被害が発生し、又は発生するおそれのある場合であって、その原因となった医薬品等の製造販売業者等が当該健康被害の発生又は拡大を防止するための自主的措置をとることを文書により申し出たときには、安全対策課は、必要に応じ連絡会議を開催するとともに、関係各課の協力を得て、当該自主的措置により必要な安全対策が確保されるかどうかを確認し、自主的措置に加えて当該製造販売業者等において実施すべき安全対策がある場合には、必要な指示を行うものとする。

 

2.製造販売業者等が1.の自主的措置を実施する場合には、当該製造販売業者等に対して、当該自主的措置の内容を公表するよう指示するものとする

 

第11 記録の管理

安全対策課は、各課の協力を得て、第6の1.(7)に規定するもののほか、第7の3.(1)の決裁文書、製造販売業者等に対する指示に係る通知その他の安全性情報の評価並びに安全対策の立案及び実施に関連して作成し、又は入手した重要文書を保存し、管理するものとする。

 

第12 その他

1.この実施要領の運用に当たっては、医薬品等に起因する健康被害発生の態様の多様性に鑑み、個別事案の特性に配慮するとともに、健康被害の発生又は拡大の防止を図る観点から、柔軟な運用に努めるものとする。

 

2.この実施要領の運用を通じて、健康被害の発生又は拡大の防止をより効果的に行うため必要がある場合には、機動的にこの実施要領の見直しを行うものとする。


 

別紙1 学術雑誌等

(海外)

The New England Journal of Medicine

The Lancet

The Journal of the American Medical Association (JAMA

British Medical Journal(BMJ)

The Annals of Pharmacotherapy

British Journal of Clinical Pharmacology

European Journal of Clinical Pharmacology

Clinical Pharmacology and Therapeutics

The Journal of Clinical Pharmacology

Australian Prescriber : Medicines Sagety Update

Adverse rug Reaction Bulletin(英)

Canadian Adverse rug Reaction Newsletter(カナダ)

Reaction WeeklyNews Section : Pharmacovigilance & Regulatory News, Current Issues & Opinions, Adverse Reaction Research

Archives of Internal Medicine

MMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report)

 

 

 

 

 


 

別紙2 規制情報

(米) 以下のFDAウェブサイト

FDA

MedWatch/What’s New

MedWatch/Safety Alerts for Human Medical Products

MedWatch/Drug Safety Labeling Changes

News & Events/Press Annoucements

Drugs/Warning Letters

Drugs/Drug Safety and Availability/Drug Safety Communications

Recalls, Market Withdrawals, & Safety Alerts

Import Alerts

Inspections, Compliance, Enforcement, and Criminal Investigations/ Warning Letters

Enforcement Reports

Vaccines, Blood & Biologics/What’s New for Biologics

Vaccines, Blood & Biologics/Recalls(Biologics)

Vaccines, Blood & Biologics/Enforcements Actions(CBER)

Medical Devices/News(Medical Devices)

Medical Devices/Medical Device Safety/Safety Communications

CDC

MMWR

Media Relations/CDC Releases and Announcements

 

(欧州)以下のEMAウェブサイト

What’s New

Latest news

Human medicines/Patient safety

 

(英)以下のMHRAウェブサイト

What’s New

Drug Alerts

Safety warnings and messages for medicines

Medical Device Alerts

Drug Safety Update

 

(ドイツ)以下のBfArMウェブサイト

Pressemitteilungen

 

(フランス)以下のANSMウェブサイト

Actualite, Informations de securite, Alertes

 

(カナダ)以下のHealth Canadaウェブサイト

News Release

MedEffect/Canadian Adverse Drug Reaction Newsletter

Recent health products recalls and alerts

 

(豪州)以下のTGAウェブサイト

Safety information/Alerts

Safety information/Product recalls/All recall actions/System for Australian Recall Actions

Health professionals/Medicines Safety Update

 

(国際機関)以下のWHOウェブサイト

Drug Alerts

WHO Pharmaceutical Newsletter
別紙3 「緊急案件に係るおそれがある情報」について

 

以下のいずれかに該当する場合、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)は、審査等業務及び安全対策業務関係業務方法書第73条第3項に規定する「緊急案件に係るおそれがある情報」として、直ちにその旨厚生労働省安全対策課に連絡するものとする。

なお、機構と厚生労働省安全対策課との協議の結果、当該案件は「緊急案件」に該当しないとの結論に至った場合、当該案件は引き続き機構において必要な措置を講ずる。

 

1.医薬品、医薬部外品又は化粧品(以下「医薬品等」という。)の場合

(1)情報等の整理、調査及び安全対策措置案の検討を通じ、以下の安全対策措置が必要と考えられる場合

(1) 医薬品等の添付文書への警告欄又は禁忌欄の新設又は重要な改訂

(2) 医薬品等による副作用であると疑われる死亡、障害若しくはこれらにつながるおそれある症例又は治癒の困難な症例(以下「重篤症例」という。)の発生に対応した緊急かつ重要な「使用上の注意」の改訂

(3) 「効能又は効果」の重要な変更

(4) 「用法及び用量」の重要な変更

(5) 習慣性があるものとしての薬事法に基づく指定その他薬事に関する法律に基づく指定等

(6) 販売中止、販売停止又は回収

(7) 承認の取消、一部変更

(8) 承認条件の付与又は変更

(9) その他緊急かつ重要な情報伝達を必要とする措置

(2)情報等の整理・調査に際し、重篤症例の発生傾向について、当該医薬品等についての既存の「使用上の注意」の記載との比較において、その記載がない、新たに発生の傾向が判明した、従来の記載と著しく異なるなど、既存の「使用上の注意」からでは予測できない状況が生じていると考えられる場合

(3)重篤症例の発生に対応した「使用上の注意」の改訂その他の安全対策措置を実施したにも関わらず、その後の当該医薬品等の情報等の整理・調査において、上記(2)の発生傾向に改善が見られず、新たな安全対策措置が必要と考えられる場合

(4)企業からの相談に際し、当該企業より上記(1)の対応に関する自主的な提案があり、それが妥当と考えられる場合

(5)その他安全対策上緊急な対応が必要と考えられる場合

 

2.医療機器の場合

(1)情報等の整理・調査を踏まえた安全対策措置案の検討を通じ、安全対策措置として、医療機器の回収(改修を含む。)が必要と考えられる場合であって、当該回収される製品の使用等が重篤な健康被害又は死亡の原因となりうる状況又はそのおそれがある場合

(2)その他安全対策上緊急な対応が必要と考えられる場合

 


別紙4 安全性情報の伝達先(大臣、副大臣及び政務官に係る括弧内は情報経由者)

厚生労働省内

・ 大臣(大臣両秘書官(事務))

・ 副大臣(両副大臣秘書官)

・ 政務官(両政務官秘書官)

・ 事務次官

・ 厚生労働審議官

・ 官房長

・ 総括審議官

・ 技術総括審議官

・ 大臣官房厚生科学課長(健康危機管理調整会議主査)

・ 大臣官房総務課広報室長

・ 大臣官房総務課総括調整官

・ 大臣官房厚生科学課健康危機管理官

厚生労働省外

・ 厚生労働省から出向している総理大臣秘書官

・ 厚生労働省から出向している総理大臣秘書官付

・ 厚生労働省から出向している官房長官秘書官

・ 内閣官房副長官補室厚生労働省担当参事官

・ 内閣官房副長官補室厚生労働省担当参事官付主査

・ 医薬品医療機器総合機構安全第二部長


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