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派遣労働者に対する
雇用契約の申込み義務について


 労働者派遣法が改正され、派遣労働者の希望を踏まえた直接雇用の促進を図るため、派遣先は、一定の場合に、派遣労働者に対する雇用契約の申込みが義務付けられました(平成16年3月1日施行)。

 雇用契約の申込み義務の詳細は、以下のとおりですので、改正内容の十分なご理解と遵守をお願いします。


1 雇用契約の申込みが義務付けられる場合

 派遣先に派遣労働者に対する雇用契約の申込みが義務付けられるのは、以下の2つの場合です。

(1)
 派遣受入期間の制限のある業務(※P6(1)・(7)・(8)の業務)について、派遣受入期間の制限への抵触日以降も、派遣労働者を使用しようとする場合(労働者派遣法第40条の4)

(2)
 派遣受入期間の制限のない業務(※P6(2)〜(6)の業務)について、同一の業務に同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れており、その同一の業務に新たに労働者を雇い入れようとする場合(労働者派遣法第40条の5)

 なお、派遣受入期間の制限のある業務については、1(1)のほか、1年以上同一の業務に同一の派遣労働者を受け入れており、派遣の受入れが終了した日以後、当該業務に新たに労働者を雇入れようとする場合は、(1)派遣先に雇用されて当該業務に従事する希望を申し出ており、(2)派遣の受入れが終了した日以後7日以内に派遣元事業主との雇用関係が終了する派遣労働者を雇用する努力義務があります。


2 雇用契約の申込み義務の内容等

Q1  雇用契約の申込み義務に違反した場合は?
A1  都道府県労働局長が指導、助言を行った上で、雇用契約の申込みをするよう勧告を行い、それでもなお違反する場合は、厚生労働大臣が企業名の公表を行うことがあります。

Q2  雇用契約の申込みの際の労働条件は?
A2  労働条件については、派遣先と派遣労働者との間で決定されるべきものであり、派遣就業中の労働条件や、雇入れに係る業務に従事している他の派遣先の労働者の労働条件等を勘案して決定することが求められます。

Q3  1(1)について、派遣受入期間中に派遣労働者が交代した場合であっても、雇用契約の申込み義務がかかりますか?
A3  派遣受入期間の制限に抵触することなる場合は、個々の派遣労働者の派遣受入期間を問わず、抵触日の直前に受け入れていた派遣労働者に対して雇用契約の申込みの義務がかかります。

Q4  1(2)について、雇用契約の申込み義務の対象となる「同一の業務」に労働者を雇い入れる場合とは、具体的にどのような場合ですか?
A4  派遣先の事業所等(※)において、派遣を受け入れているP6(2)〜(6)に相当する業務のうち同種のものに労働者を雇い入れる場合です。
 例えば、機械設計の業務(P6(2)の業務(いわゆる「26業務」))に、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れている場合には、当該派遣先の事業所等において、機械設計に主として従事する業務に新たに労働者を雇い入れる場合に、雇用契約の申込み義務が発生します。
※) 「事業所等」・・・課、部、事業所全体等、(1)場所的に他の部署と独立している、(2)経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有する、(3)一定期間継続し、施設としての持続性を有する等の観点から実態に即して判断されます。

Q5  1(2)について、在籍型出向を受け入れる場合も、派遣労働者に対して雇用契約の申込みを行う必要がありますか?
A5  一定期間経過後に出向元企業へ復職することが前提となっているいわゆる在籍型出向の受入れについては、雇用契約の申込み義務の対象となる労働者の雇入れには該当しません。

Q6  1(2)について、新規学卒者を本社において一括採用し、一定の研修期間中に個々の新入社員の適性等を見極めた上で相応しい業務に配属する場合、当該業務への配属をもって、新たに労働者を雇い入れたことになるのでしょうか?
A6  既に雇い入れられている労働者の異動は、当該業務への新たな労働者の雇入れには当たりませんが、雇用契約の申込み義務を免れるために脱法的に行われていると判断されるような場合(あらかじめ当該業務へ雇い入れるために採用した労働者を、形式的に他部署へ配属させた後に当該業務へ異動させる場合等)は、雇用契約の申込みをする必要があります。

Q7  1(2)について、新たに労働者を雇い入れようとする業務に、3年を超えて受け入れている派遣労働者の数が、雇い入れようとする人数を超えている場合、全員に雇用契約を申し込まなければならないのですか?
A7  3年を超えて受け入れている派遣労働者全員に対して応募の機会を設けた上であれば、試験等の公平な方法により、雇用契約の申込みを行う派遣労働者を選考することは差し支えありません。

Q8   1(2)について、派遣受入れを開始してから現在までに、派遣受入れを停止している期間がある場合でも、雇用契約の申込み義務がかかりますか?
A8  派遣受入れを停止している期間が3箇月以下の場合は、継続して派遣を受け入れているものと判断され、派遣受入期間が通算されますが、派遣受入れを停止している期間が3箇月を超えている場合は、その後の派遣の受入れは、停止前の派遣の受入れとは別の新たな派遣の受入れと判断されます。

Q9  改正労働者派遣法の施行日前から派遣を受け入れている場合でも、雇用契約の申込み義務の対象となりますか?
A9  派遣受入れの開始が施行日前であっても、施行日以降に、1(1)又は1(2)に該当する場合は、雇用契約の申込み義務の対象となります。

Q10  1(2)について、同一の業務への同一の派遣労働者の受入れが3年を超えることとなる日より前に募集・採用を行う場合であっても、雇用契約の申込み義務の対象となりますか?
A10  同一の業務への同一の派遣労働者の受入れが3年を超える日以降に雇用関係が開始される場合は、雇用契約の申込み義務の対象となります。
  例えば、平成17年1月1日に同一の派遣労働者の受入れが3年を超えることとなる業務に、平成17年4月1日から労働者を雇用する場合には、当該業務に係る労働者の募集・採用活動を平成16年度中に行う場合であっても、派遣労働者への雇用契約の申込みが必要です。

図

 派遣労働者受入れから3年経過時以降に雇用関係が開始される場合は、派遣労働者への雇用契約の申込みが必要。


〔参考〕 改正労働者派遣法 条文

   「労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」 (抄)
(労働者派遣の役務の提供を受ける期間)
第四 十条の二 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(次に掲げる業務を除く。第三項において同じ。)について、派遣元事業主から派遣可能期間を超える期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。
 一  次のイ又はロに該当する業務であつて、当該業務に係る労働者派遣が労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行を損なわないと認められるものとして政令で定める業務
 その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務
 その業務に従事する労働者について、就業形態、雇用形態等の特殊性により、特別の雇用管理を行う必要があると認められる業務
 二 前号に掲げるもののほか、次のイ又はロに該当する業務
 事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であつて一定の期間内に完了することが予定されているもの
 その業務が一箇月間に行われる日数が、当該派遣就業に係る派遣先に雇用される通常の労働者の一箇月間の所定労働日数に比し相当程度少なく、かつ、厚生労働大臣の定める日数以下である業務
 三  当該派遣先に雇用される労働者が労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項 及び第二項 の規定により休業し、並びに育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
(平成三年法律第七十六号)第二条第一号 に規定する育児休業をする場合における当該労働者の業務その他これに準ずる場合として厚生労働省令で定める場合における当該労働者の業務
 四  当該派遣先に雇用される労働者が育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第二条第二号 に規定する介護休業をし、及びこれに準ずる休業として厚生労働省令で定める休業をする場合における当該労働者の業務
 前項の派遣可能期間は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める期間とする。
 一  次項の規定により労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間が定められている場合 その定められている期間
 二  前号に掲げる場合以外の場合 一年
 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務について、派遣元事業主から一年を超え三年以内の期間継続して労働者派遣の役務の提供を受けようとするときは、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者派遣の役務の提供を受けようとする期間を定めなければならない。
 派遣先は、前項の期間を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、当該派遣先の事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合に対し、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者に対し、当該期間を通知し、その意見を聴くものとする。
 派遣先は、労働者派遣契約の締結後に当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る業務について第三項の期間を定め、又はこれを変更したときは、速やかに、当該労働者派遣をする派遣元事業主に対し、当該業務について第一項の規定に抵触することとなる最初の日を通知しなければならない。
 (略)

 (派遣労働者の雇用)
第四 十条の三 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(前条第一項各号に掲げる業務を除く。)について派遣元事業主から継続して一年以上前条第一項の派遣可能期間以内の期間労働者派遣の役務の提供を受けた場合において、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該労働者派遣の役務の提供を受けた期間(以下この条において「派遣実施期間」という。)が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の業務に派遣実施期間継続して従事した派遣労働者であつて次の各号に適合するものを、遅滞なく、雇い入れるように努めなければならない。
 一  派遣実施期間が経過した日までに、当該派遣先に雇用されて当該同一の業務に従事することを希望する旨を当該派遣先に申し出たこと。
 二  派遣実施期間が経過した日から起算して七日以内に当該派遣元事業主との雇用関係が終了したこと。

第四 十条の四 派遣先は、第三十五条の二第二項の規定による通知を受けた場合において、当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第四十条の二第一項の規定に抵触することとなる最初の日以降継続して第三十五条の二第二項の規定による通知を受けた派遣労働者を使用しようとするときは、当該抵触することとなる最初の日の前日までに、当該派遣労働者であつて当該派遣先に雇用されることを希望するものに対し、雇用契約の申込みをしなければならない。

第四 十条の五 派遣先は、当該派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの同一の業務(第四十条の二第一項各号に掲げる業務に限る。)について、派遣元事業主から三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受けている場合において、当該同一の業務に労働者を従事させるため、当該三年が経過した日以後労働者を雇い入れようとするときは、当該同一の派遣労働者に対し、雇用契約の申込みをしなければならない。


〔参考〕 派遣受入期間の制限の概要

   労働者派遣法の改正により、従来、派遣受入期間が1年に制限されてきた業務について、労働者の過半数代表の意見聴取をした上で最長3年まで派遣を受けることが可能になる等、派遣受入期間が延長されます。

  ※)業務別の派遣受入期間の制限
 
業務の種類 現行 改正後
(1) (2)〜(8)以外の業務 1年 最長3年まで(※1
(2) ソフトウエア開発等の政令で定める業務(いわゆる「26業務」) 同一の派遣労働者について3年 制限なし
(3) いわゆる3年以内の「有期プロジェクト」業務 プロジェクト期限内は制限なし 同左
(4) 日数限定業務(※2 1年 制限なし
(5) 産前産後休業、育児休業等を取得する労働者の業務 2年 制限なし
(6) 介護休業等を取得する労働者の業務 1年 制限なし
(7) 製造業務(※3 平成19年2月末までは1年(※4
(8) 中高年齢者(45歳以上)の派遣労働者のみを従事させる業務 3年(平成17年3月末までの特例) 同左
※1  1年を超える派遣を受けようとする場合は、派遣先の労働者の過半数で組織する労働組合等に対し、派遣を受けようとする業務、期間及び開始予定時期を通知し、十分な考慮期間を設けた上で意見聴取を行うことが必要です。
※2  その業務が1箇月間に行われる日数が、派遣先の通常の労働者の所定労働日数の半分以下かつ10日以下の業務が該当します。
※3  製造業務で、かつ、(2)〜(6)の業務に該当する場合は、(2)〜(6)が適用されます。
※4  平成19年3月以降は、(1)と同様に最長3年まで可能になります。


 ご不明の点等がありましたら、最寄りの都道府県労働局・公共職業安定所にお問い合わせ下さい。

 なお、平成16年4月1日から、労働者派遣事業の許可・届出等の手続窓口は、公共職業安定所から都道府県労働局に変わります。(派遣労働者からの相談等は公共職業安定所でも可能です。)

厚生労働省・都道府県労働局
(公共職業安定所)


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