
名前(大学名、学部、学年、出身地)
阿部幸生(筑波大学大学院、システム情報工学研究科、既卒、兵庫県)
公務員を目指した理由
私は大学院で経営管理学修士(MBA)を取得しました。「ビジネスの資格取ったのに公務員?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。実は、大学院1年生の初夏までは「ビジネスでバリバリ稼ぐぞ!」と考えていました。でも本気で職業を選ぶ時期に差し掛かって「人生80年、死ぬ間際に自分は何を想うのかな?」と想像しました。「いやぁ、よく稼いだなぁ。80億 円くらい稼いだかなぁ。」というよりも「いやぁ、よく働いたなぁ。将来に希望が持てなかった人に対して、少しは希望の光が当たったかなぁ。国民に気付かれ ていなくったって、影で働いて、救われる人がちょっとはいたかなぁ。」の方がカッコイイと思ったのが公務員を目指した根本的な理由です。そ んな意識で大学院の講義を受けていると、世界に名だたる企業ですら、労働者にとって不当と思える経営を行っている事が分かってきました。ワーキングプアは その典型といえます。国家公務員だけが動いて社会構造の歪みを是正できるほど単純な問題は存在しないですが、企業とそれを取巻く利害関係者と対話しなが ら、その時代ごとに求められている方向へ修正する役割を担っていきたいと考えています。
他省庁、地方公務員という選択肢もある中でなぜ厚労省に決めた?
どの省庁を選択すべきか、実は随分と悩みました。私は当初、情報系の仕事ができる省庁を志望していました。官庁訪問では基本的に3つの省庁を訪問できますが、そこで初めて厚労省の現場に立ち入りました。すると、初回の面接からただならぬ衝撃を受けてしまいました。面接期間では「自分はなぜ働くのか、何の為に働くのか」という仕事観を見つめさせられます。私はビジネスの勉強ばかり大学院でやっていて、自分は自らの能力を市場原理でもって伸ばすのだと、そんな人間のように考えていました。でも、よくよく考えると意外と人の面倒を見るのが好きだなぁ・・・と厚労省の職員と話している時に気が付きました。そんな自分の本質を見抜いたとき、面接の控え室から見える国会議事堂を30分近く眺めながら「厚労省が私の働く場なのかもしれない」と真剣に考えたのを今でも生々しく思い出します。悩んだ末に決め手となったのは、父親の一言でした。どの省庁にするか決めかねている私に対して父親はこう言いました。
「国家の繁栄を考えたときに、テクノロジーと人間愛と両極のベースがあるが、世界的な流れを見ると、人の愛、家族の絆という分野は必要とされていくんじゃないかな。だから、幸生が厚労省に入るってことはベストな選択だとお父さんは思うよ。」
私が厚労省に志望するにあたって、根底に流れている想いはこの父親の言葉に集約されます。
理系学部から事務系職種を目指した理由。その際に大変だったこと。そしてそれをどのように克服したか?
私は経済職で受験しました。経済職の根幹は経済理論ですが、大学院受験の際に多少なり勉強していたので抵抗は無かったです。むしろ、公務員試験の経済理論は2次元のグラフで総てを説明して仕舞えるような科目なので、理系学生にとって経済職は有利だと考えていました。大変なのは、科目の多さから来る暗記量の膨大さでした。詰め込むべき知識が多過ぎるので「仏像の名前が分からないだけで将来が左右されるなんて」「制度的に特定大学を採用し易くしているのでは」などなど憤ることは正直ありました。しかし、そんな文句を言っていても試験を突破しなければ自分のしたい仕事に就けない現実は変わってくれませんでした。「社会に出たら理不尽なことの方が多いし、働いていて意味の見出せないことだらけだろう。この試験勉強もその精神的な図太さを測っているかもしれない。」と割り切って地道に取り組みました。
就職活動を通して得られたもの
大学院1年生の頃から国家公務員を目指し始めて、興味のある省庁を中心に何回も説明会に参加しました。すると、民間企業と同様、省庁にもそれぞれにカラーがあって、おぼろげながらに自分のカラーに合っているとか、そうではなさそうとか分かってきます。私は就職活動そのものを面接で生かせるようにと考えていたので、「面接で聞かれるであろう事は全て業務説明会で直接聞く。」という戦略を立てていました。常に問題意識を複数持ちながら、勉強中も就職活動中も公務員という職業に自分がどの切り口で関わっていくのかを考え続けていました。
それでも不思議なもので、実際に仕事をしている面接官と対面すると、今まで準備していたものが根底から覆るような展開になってしまいます。自分の気がついていなかった内面がえぐられるという感覚でしょうか、困惑しつつもそれが楽しかったりします。
「仕事に何を求めるのか」皆様はどうお答えになりますでしょうか?私は、その仕事が誰の為になるのか明確かどうかに求めました。長い間付き合っていく仕事として、助かっている人たちが明確であった方がやり甲斐があるだろうという単純な理由からです。厚労省の仕事はそういう仕事だと思っています。明確であるからこそ批判も多く、国民の皆様の要求水準も高いと面接官に教わったとき、私は一生付き合っていける仕事に出会えた気がしました
内定した今思うこと
未だ社会に出たことの無い私は、この文章をご覧になっている受験生の皆様と恐らく大して変わらないのだと思います。毎日、ニュースで見ないことは無いほどホットな省庁ではありますが、ニュースを見ながら、果たしてこれから先の自分はどういった回路で繋がっていくのだろうかと悩んだりもします。これは、仕事を始めてからもずっと抱き続けるのかもしれません。内定して、同期の人や職員の方々を見る限りでは、公僕意識を持った謙虚な人が多いのがこの省庁に対する印象です。
どんな仕事をしようとも、どんな立場になろうとも、初心を忘れず、高い志を持った謙虚な人でありたいと内定した今思います。
HPをごらんになっているみなさんへ
試験勉強は辛いですよね?しかも試験に合格しても容赦無い官庁訪問の試練が待っております。私が就職活動を振り返ったとき、一番大きかったのはどの省庁を訪問するのかという選択そのものでした。皆様は説明会に参加されて個々に抱いている省庁のイメージがあると思います。私は官庁訪問前まで厚労省に抱いたイメージは地味なものでしかありませんでした。(説明会1回参加しただけのイメージです。) それが実際に訪問してみると、面接の扱いは一番フェアだし、職場の雰囲気は活気があるし優しいし、イメージが激変しました。
見事試験に合格されたなら、官庁訪問では是非いらっしゃってみて下さい。きっと私の言うことが分かると思います。その日までやり抜いて下さい。ご健闘をお祈り申し上げます。