
国立ハンセン病療養所 医師募集
打算のない「医療の原点」がここにはある
外科医として急性期医療施設に勤務していましたが、長島愛生園に来ないかというお誘いを受けました。外科医としてメスを置くべき年齢まであと少しという時期だったので、大いに悩みました。
しかしこの選択肢は、繰り返し訪れる選択肢ではない、という考えからこの施設に来ることを決めました。
この施設は、急性期医療のような多忙さはないといえます。ただ、私自身はこの施設には「医療の原点」があるのではないか、と感じています。
ここには、困っている人がいて、その人たちのためだけにつくられた施設です。病院のためではなく、何の打算も挟まず、純粋に入所者のための医療ができる。そういうスタンスで医療に携わることのできる機会は、稀有なのではないか、そう思っています。
自分の勉強や研究の時間が持てる勤務環境
ここの医師は、すべての病状に対して初診を行い、必要であれば専門機関を紹介する、総合家庭医という側面もあります。
入所者さんたちは、自分の意思で受診方法を選ぶことが困難です。ですから私たち医師は、常に勉強をおろそかにはできないのです。
比較的時間をつくることことが容易なため、自分の勉強や研究に充てる時間を持つことができます。週に1回の研修日設定も可能で、その日を岡山医療センターや大学病院での勤務にあてることもできます。
急性期医療の現場から遠のかずにいられる、といえるでしょう。
医師が人間の心を磨くための場所と時間
私は、愛生園の管理者として、その責任を全うしようと思っていますし、一緒に働く医師やスタッフが成長するためなら、どんな協力も惜しみません。
ただ、それは私の都合です。「国立ハンセン病療養所で働く」という選択肢は、その人の都合で選ぶべきだと思います。長い医師生活の中の一時期だけを愛生園で過ごす、ということでもいいでしょう。
こういう施設の存在は、外から得られる「知識」よりも、中に入って働くことで得られる「知見」に価値があります。勤務することで、その人の人間性は広がるはずです。
その経験は、種のように残るでしょう。ここは、医師としての高度な技術を磨く場所ではないかもしれませんが、人間を磨く、心を磨く、そういう施設なのだと思います。
この施設に来て後悔をする医師はいないと確信しています。
令和4年3月31日
8:30 | 始業。 幹部ミーティング。副園長、看護部長、事務部長と。 木曜日は回診、病棟やセンターで診療。 火曜日は外来診療。 |
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12:00 | 昼食。 弁当持参、園長室で摂る。 |
13:00 | 毎日のように委員会(感染対策委員会、薬剤委員会など)、園の行事に出席。入所者とレクリエーション、入所者のための慰問団体への立会(慰問園芸の鑑賞)。看護学校、見学者等への説明や講義。園内巡視(散策)。 |
19:00 | 帰宅。 自宅まで車で45分。交通渋滞を避け午後7時以降に退園。将来的には園長官舎に住むことも考えている。 |