10/03/23 平成21年度第1回水道における微生物問題検討会議事録 第1回水道における微生物問題検討会議事録  日  時:平成22年3月23日(火)14:00〜16:00  場  所:合同庁舎7号館(金融庁) 1114会議室  出席委員:遠藤委員、秋葉委員、泉山委員、片山(和)委員、片山(浩)委員、       勝山委員、黒木委員、福井委員、船坂委員、西村委員 ○松田補佐  それでは、少し定刻よりも若干早いですが、委員の方が皆様来られましたので、ただ今 から平成21年度第1回水道における微生物問題検討会を開催いたします。  委員の皆様方には、ご多忙中にも関わらず、ご出席いただきまして大変ありがとうござ います。  本日の出席状況でありますけれども、現時点で10名の委員の方に出席をいただいており ます。  なお、国包先生は、本日ご欠席ということでございます。  ここで、本検討会の開催に当たりまして、主催者を代表して吉口水道水質管理官よりご 挨拶申し上げます。 ○吉口水道水質管理官  水道課で水道水質管理官をしております吉口でございます。本日は、委員の皆様方にお かれましては、年度末の大変お忙しい中、ご出席を賜りまして心より御礼申し上げます。  本水道における微生物問題検討会は、水道水の安全を確保する上で、クリプトスポリジ ウムなど、耐塩素性微生物をはじめ、病原生物の混入が最大の脅威となっていることを踏 まえまして、微生物分野の課題を専門的立場からご検討いただくために設置させていただ いているものでございます。併せまして、微生物に起因している可能性がある水質汚染事 故が生じた際には、本検討会の委員により科学的側面からご助言もいただいてきていると ころでございます。  本日の検討会は、クリプトスポリジウム等の新しい検査方法の導入に向けた検討をお進 めいただきたく開催をお願いしたものでございます。  耐塩素性病原生物対策は、水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針に基づき、原 水が汚染されるおそれのレベルに応じた対策を水道事業者において進めているところであ ります。汚染されるおそれのレベルが高い施設では、適切な頻度で、特に必要とされる施 設整備の期間中においては3カ月に1回以上の頻度で原水のクリプトスポリジウム等を検 査するものとしてございますが、迅速に検出可能で分析者の負担が少なく、かつ再現性の 高い検出方法が求められてございます。  また、クリプトスポリジウム等による集団感染が疑われました場合に、さかのぼって迅 速に原因調査ができますように、より多量の試料水を濃縮、保存できるような方法も望ま れているところでございます。  こうした中で、厚生労働科学研究におきまして、新たな検査方法が研究改良されまして、 実用化に向けた課題を克服いただいてきたところでございます。検討会では、それらがク リプトスポリジウム等の検出方法として妥当なのか、また、妥当性を検証するためにどの ような検討がさらに必要とされるのか等につきましてご審議をいただければと存じます。  水道の水がより安全で安心できることを望む国民の期待は大きいと考えてございます。 水道課といたしましては、委員の皆様からご意見、ご助言を賜りまして、水道における微 生物対策の取組を着実に進めてまいりたいと考えております。  本日は、ご審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○松田補佐  続きまして、本検討会は、前回開催された検討会から時間が経っておりまして、具体的 には、前回の検討会は平成18年12月14日ということで非常に時間が経っていると、こうい うことでございまして、委員の方々、また事務局もメンバーが代わっております。ここで、 代わったメンバーについてご紹介いたします。  まず最初に、委員の方からでございます。代わった委員をあいうえお順で紹介させてい ただきます。  まず、国立保健医療科学院の水道工学部長の秋葉先生です。 ○秋葉委員  秋葉と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○松田補佐  次に、国立感染症研究所寄生動物部主任研究官の泉山先生です。 ○泉山委員  泉山です。よろしくお願いいたします。 ○松田補佐  次に、国立感染症研究所ウィルス第二部第一室長の片山先生です。 ○片山(和)委員  片山です。よろしくお願いいたします。 ○松田補佐  次は、神奈川県内広域水道企業団技術部水質管理課微生物係長の勝山委員でございます。 ○勝山委員  勝山です。よろしくお願いいたします。 ○松田補佐  次に、一般社団法人全国給水衛生検査協会飲料水検査技術委員長の船坂委員でございま す。 ○船坂委員  船坂です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○松田補佐  次に、国立医薬品食品衛生研究所環境衛生化学部長の西村先生です。 ○西村委員  西村です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○松田補佐  次に事務局でございますが、水道水質管理官の吉口もかわりましたが、私、松田でござ います。  また、基準係長の竹谷でございます。 ○竹谷係長  竹谷です。よろしくお願いいたします。 ○松田補佐  あと、水質室の清宮でございます。 ○清宮技官  清宮です。よろしくお願いします。 ○松田補佐  次に、配布資料の確認ということで、お手元の議事次第に則り紹介をしたいと思います。  なお、議事次第なんですが、1点訂正がございまして、本日の検討会の会議の開催時間 ということですが、14時から16時でございます。1時間ほど短縮ということでございます が、これは修正ということでございます。  次に、配布資料一覧を読み上げます。  まず、資料1、水道におけるクリプトスポリジウム等耐塩素性病原生物の対策について。 資料の2−1、クリプトスポリジウム等遺伝子検出法検討の必要性について。2−2、遺 伝子検出法の概要及び手順。2−3、遺伝子検出法のバリデーションの進め方について。 次に3−1、粉体ろ過濃縮法検討の必要性について。次に資料3−2、粉体ろ過濃縮法の 概要及び手順。次に3−3として、粉体ろ過濃縮法のバリデーションの進め方について。 その次に資料4、検討の進め方。次に資料5、水道における微生物問題検討会公開の取扱 について(案)でございます。  また、参考資料に運営要領と委員名簿を2つ付けております。  併せまして、これまでの検討会開催状況と、検討事項も参考までに机上配布させていた だいております。  もし資料の不足等ございましたら事務局にお申し付けいただくようお願いいたします。  なお、資料2と資料3のシリーズにつきましては、これは泉山委員からの提出資料でご ざいます。  また、マスコミの方におかれましては、カメラ撮りは恐縮ですけれども、会議の冒頭の みとさせていただいておりますので、ご協力をお願いいたします。  続きまして、本検討会の座長ということでございますが、今年度の検討会は今回が第1 回ということでございまして、座長の選任ということをお願いしたいと思います。これま での過去の本検討会でも座長を務めていただいた遠藤委員にお願いをしたいと考えており ますが、よろしいでしょうか。  それでは、これ以降の議事進行は座長の遠藤先生にお願いしたいと思います。よろしく お願いいたします。 ○遠藤委員長  遠藤でございます。本日はよろしくお願いいたします。事務局のご協力を得て進行して いきたいと思います。  久しぶりの会議でございますので、メンバーが大分かわりましたが、心強い委員にお集 まりいただきました。この検討会が果たす役割は重要なものでありますので、皆さんのご 協力をいただきたいと思っております。よろしくどうぞお願いいたします。  さて、会議に入る前に資料5にある本会議の公開の取扱についてご説明致します。  資料5にありますように、厚生労働省水道課関連の会議等につきましては、基本的に全 て公開とされています。個人情報の保護等の特別な理由がない限りは公開をするというこ とで進めております。したがって、この会議も個人情報等に関わる事象を除き公開にする ということになります。また、会議の公開に加え、開催予定、委員の氏名、職業、会議資 料等については、今後とも公開されますので、承知おきいただきたいと思います。  それでは、本日の議題に入りたいと思います。本日の議題の1番目は、クリプトスポリ ジウム等に関する新しい検査法についてで、管理官のご挨拶にもございましたように、こ の間に集まりました科学的な情報、知見に基づいて、新しい検査法を逐次加えていくとい う作業に入りたいと考えております。本日はクリプトスポリジウム等に係る遺伝子検査法 の追加導入にについてご検討、ご審議いただきたいと思います。あわせて、新規検査法の 検証方法につきましても、ご検討いただきたいと思っております。  この会議は平成18年以降開かれていないという事情もございますので、まず水道におけ るクリプトスポリジウム対策の経緯等につきまして事務局からご説明をいただきたいと思 います。よろしくお願いします。 ○松田補佐  それでは、資料1、分厚い資料でございますが、水道におけるクリプトスポリジウム等 の耐塩素性病原生物の対策について、かいつまんでご説明いたします。  まず、その対策の経緯と現状ということでございますが、クリプトスポリジウム等対策 の経緯ということで(1)に書いております。まず1つ目に、埼玉県の越生町の感染症の 発生と暫定対策の指針の策定という経緯がございました。これは、平成8年6月に起こっ た事件ということでございます。この越生町の集団感染事故を契機にして、水道における クリプトスポリジウム暫定対策指針というのを平成8年に策定しております。  暫定対策指針につきましては、平成10年、平成13年に改定を行っておりまして、汚染の おそれの根拠となる指標菌検査を実施するということと併せて指標菌の種類の変更を行っ てきているということでございます。また、平成19年に水道におけるクリプトスポリジウ ム等対策指針の策定によって、暫定対策指針というのは廃止されております。この対策指 針の方は別紙1ということで、6ページ以降に記述しております。  2番目、水道施設の技術的基準を定める省令の制定ということですが、水道法第5条に おいて水道の施設基準を定めているということでございますが、その基準におきまして、 原水に耐塩素性病原生物が混入するおそれがある場合は、ろ過等の設備を設置すべきこと を規定しております。  その後、平成19年に紫外線処理も新たな対策として技術基準省令を改正しております。  3番、紫外線処理対策の導入と対策指針の策定ということでございます。暫定指針を策 定した後にろ過処理を義務づけたということですが、対策の実施は芳しくなかったという ことを受けまして、15年の厚生科学審議会の答申を踏まえてもっと対策を進めなきゃいけ なかったと。また、進展として、紫外線照射がクリプトスポリジウムの不活化に有効であ るという知見も得られたと、こういうことで19年に紫外線処理を新たに義務づけて併せて 対策指針を策定したということになっております。  次のページに行きまして、それでクリプトスポリジウム等対策の現状です。対策指針の 中のスキームということでございますが、これは図の1に示して、クリプトスポリジウム 等による汚染のおそれの判断の流れが書いてございます。まず最初に、原水での指標菌が 検出されるのかどうか。指標菌の検出がある場合において、原水は地表水かどうか、それ によってレベル4、レベル3となっております。また、原水での指標菌の検出がない場合 について、原水は地表水等が混入していない、地下水のみだけか。それとも不圧地下水な のかによって、レベル2とレベル1となっております。4つのレベルに応じた施設整備、 原水等の検査、運転管理、施設整備中の管理などの措置を示しているということでござい ます。  図2に、汚染のおそれのレベルに応じた措置の概要というものが書かれておりまして、 レベル4につきましては、ろ過設備を設けて濁度を0.1度以下に維持すると。原水の検査と いうものについては、水道事業者が定める水質検査計画に基づき、適切な頻度で検査を行 うと。レベル3につきましては、レベル4対応の施設、またはUV設備を導入する等と。 原水検査についてはレベル4と同じということでございます。  レベル2の施設につきましては、原水検査、指標菌を3カ月以上、3カ月のうち1回以 上という頻度で検査を行うと。レベル1については、大腸菌やトリクロロエチレン等を1 年に1回検査を行い、また撮影も行う、こういった措置が定められているところでござい ます。  それで、3ページに行きまして、クリプトスポリジウム等対策の現状ということでござ います。平成21年度の3月末の現在、クリプトスポリジウム等の耐塩素性病原生物対策の 実施状況につきまして、この汚染されるレベル、判断がそもそも行われていないというの が全体の約3割あるところでございます。また、レベル3、レベル4のこの汚染されるお それがある施設について約4割が対策を検討中だという状況でございます。  その中の検討中の施設のうち、約7割近くは簡易水道ということになっております。詳 細については27ページの別紙2に示しております。この資料1の別紙2で、水道課の方で 毎年行っている調査結果をまとめたものをこちらの方にお示しをしております。27ページ で調査結果の、どんな内容なのか示しています。  また、表2に、都道府県別対応状況の施設数、次に、表3に都道府県別の対応状況の給 水人口がどうなっているか示しております。31ページに都道府県別の対応状況をお示しし ております。  また、参考までに32ページの表4に水道におけるクリプトスポリジウム等検出状況と対 応の事例ということで事例を紹介しております。毎年度一、二件ほどあるという印象でご ざいます。  本文に戻りまして3ページでございます。  2.の指標菌及びクリプトスポリジウム等の検査方法と、これについては、その標準的 な検査方法を対策指針と併せて通知をしております。これを別紙3ということで33ページ に内容が書いております。その概要については、3ページにお示ししております。指標菌 の検査方法としては、大腸菌の定量方法ということで、特定酵素基質培地法による定量方 法が示されております。また、嫌気性芽胞菌の検査方法については3つ方法が示されてお りまして、ハンドフォード改良寒天培地法などが示されているということでございます。  次に4ページに移りまして、クリプトスポリジウム等の検査方法と。詳細なものは45ペ ージの別添3ということでございます。ここで、暫定指針で水道に関するクリプトスポリ ジウムのオーシストの検出のための暫定的な試験方法ということで、応急対応のための検 査方法として定められていると。標準的に使用されている方法を基にして定めているとい うことでございます。  検査方法については、標準的方法を用いて行うことを基本とするが、標準的方法との比 較や添加系における回収実験等を行い、対象水に対する適切性、回収率の信頼性などを確 認することができた場合は、その他の方法を用いてもよいということとしておりまして、 いずれの場合においても、試験結果の信頼性を確保できるよう適切な条件、操作方法を選 定すべきだということとされております。  併せて、新たな知見の集積により、通知に示す検査方法と同等以上の方法と認められる ものについては積極的に採用するべく、逐次検査方法を見直すということは示されている ということでございます。  [1]でございますが、懸濁粒子の捕捉と濃縮と。これの方法は、標準的方法として3つの 方法、その他の方法は3つの方法が示されているということでございます。標準的方法と しては、メンブレンフィルターの吸引ろ過−アセトン溶解法、また、加圧ろ過のアセトン 溶解法、あとは親水性PTFEメンブレンフィルター法、この3つがあるということでご ざいます。  次に[2]番、オーシストの分離・精製と。これについては、水の試料の懸濁粒子の濃縮試 料に多量の夾雑物がある場合、濃縮試料からオーシストを選択的に分離・精製をすると。 標準的方法としては1つ、その他の方法としては1つがあるということでございます。  標準的方法としては、密度勾配遠沈法というものでございます。また、その他の方法と しては、免疫磁気ビーズ法は入っているということでございます。  次に5ページに行きまして、オーシストの検出ということでございます。  オーシストの検出・計数は、顕微鏡観察により行うと。顕微鏡観察を容易にするため、 オーシストを特異的に染色するということで、染色方法について、標準的な方法としては 1つ、その他を1つということで、直接蛍光抗体染色法を標準的方法、また、間接蛍光抗 体染色法をその他の方法としております。  それで、図3にクリプトスポリジウム等の検査の流れというのをお示ししています。こ の中で標準的方法とその他の方法についても上げております。今回、遺伝子検出法や粉体 ろ過濃縮法について、検査方法に追加をすべきかどうかということになっているというこ とでございます。  以上で、とりあえずこれまでのクリプトスポリジウムの対策の経緯と現状、あとは検査 方法等について紹介いたしました。 ○遠藤委員長  ありがとうございました。  それでは、いまご説明いただいたことを踏まえまして、新規の検査法について、厚生科 学研究で中心的に開発して来られました泉山委員から資料のご説明をいただきたいと思い ます。よろしくお願いいたします。まず、遺伝子検査法についてのご説明をお願いします。 ○泉山委員  ご紹介ありがとうございます。泉山です。  まず、資料の2−1から順番にご説明申し上げたいと思います。  今、事務局よりご説明いただいたとおり、クリプトの検査法があって、いろいろな方法 を選択的に使うというふうに列挙されているわけですけれども、そこに列挙する試験方法 の一つとして遺伝子検査法を提案したいということでこのような資料を作成してまいりま した。  それで、資料の2−1、顕微鏡検出法の課題について、からご説明したいと思います。  クリプトスポリジウム等の検出方法として顕微鏡観察による検出法が示されているわけ です。これは、米国や英国でも実際に同様の検査法が行われているのですが、その技術習 得には多大な時間を要すとか、個人差が生じるおそれもあるとか、いろいろな難しさがあ ったものですから、別のより簡便な方法、迅速に検出が可能で分析者の負担が少ない、再 現性の高い検出法の開発が課題となっておりました。そういう課題を受けて、私どもは厚 生労働科学研究費補助金を基に研究を進めてまいりました。  まず、背景となる部分からご説明しますと、例えば平成20年度の全国のクリプトスポリ ジウム検査の結果、これはインターネット等で公開している結果を集計してみた結果なん ですけれども、実際には多くの結果、不検出となっていました。クリプトスポリジウムは 家畜等に感染するおそれがあるわけですから、人だけではなく広くクリプトスポリジウム やジアルジア等の耐塩素性病原微生物が排出されてくるおそれがあるわけです。しかしな がら、なかなか顕微鏡検査できちんとはかり切れていないのではないかと思われる結果が 集計されてまいりました。実際に検出数が少ないということです。  そういうことになりますと、もう少し違った検査法を行って信頼性を上げていく、ある いは取りこぼしがないようにしていくということが必要なのではないかということを考え てまいります。  その中で、PCR法等の核酸増幅法が選択肢としては良いのではないかと。調べてみれ ば分かることですが、そういう提案が数多くなされているわけです。我々としましても、 その一つとして検査法の検討に取り上げて実際にやってまいりました。その結果、分かっ てきたこととしましては、DNAの増幅が夾雑物によって阻害されてしまう難しさがあり ました。また、たった1個のクリプトスポリジウムを10L中で検出しなければならないと いうことですが、顕微鏡でも難しい。遺伝子検査法でもなかなかクリプト検査ができない のではないかということを初期のころに感じたものでした。  一方、2.の方の説明に入りますけれども、こういう河川の環境検査以外、例えば医療 分野ですとか食品分野では既に遺伝子検査が実用化されてきています。例えば、各種のウ ィルス性疾患の診断、遺伝子組み換え食品の検査、食料品等の産地特定など、盛んに用い られてきているというのが実際です。環境分野でもレジオネラ属菌検査の遺伝子検査法の 導入が徐々に進んでいるというところはあります。  これまでに環境検査、試験にはなかなか実用化されなかった理由としましては、先ほど 申し上げましたとおり、感度の問題、10L中にたった1個のものを検出しなければならな い、あるいは阻害物質があって反応が適切に進まない、というようなことが推察されます。 具体的な話、かなり細かな話になるのですが、5μLにたった1個のクリプトスポリジウ ム、ジアルジアの核酸を抽出して、それを反応させる、こういったことにはなかなか技術 的な問題があります。一方で、これを例えば50μL程度の濃縮に変えてあげれば比較的操 作しやすくなるのですが、核酸抽出液の一部しか試験に用いることができなくなると、D NA量の不足、感度不足を生じてしまって、肝心のクリプト、ジアルジアが検出されない というようなことになってしまいます。  2)の説明に続けていきます。  その結果、もう少し感度を向上させて核酸試験でも、より高感度な検査をしたいという ことを目指してまいりました。その方法としまして、ゲノムDNAではなくてrRNAを 鋳型として、逆転写してから増幅反応を行うということを考えました。rRNAは、一つ の細胞中に数千とか数万とか、そういうコピー数でもってたんぱく合成のための細胞内小 器官として細胞に含まれておりますから、それを逆転写することで高感度な試験ができる のではないかということを考えたわけです。その結果としては、0.006オーシストから反応 ができる、遺伝子検査法の反応チューブの中に0.006オーシストに相当する核酸が含まれて いれば反応することができるということが分かってまいりました。これによって、抽出試 料の一部からでも検出が可能となったわけです。例えば、50μL抽出した内の1割の5μ Lからでも反応ができるだろうということです。  また、オーシストの濃縮精製工程、ここに磁気ビーズ法を使うことによって徹底的に夾 雑物を除き、精製度を高め、阻害物質が除去できるということも確認することができまし た。実際にこれを河川試料に対して使ってみたところ、顕微鏡検査と同等、あるいはそれ 以上の検出が得られるというような成果が得られました。ジアルジアについても同様の成 果が得られました。  こういう検出法の改良によって遺伝子検査法が実用化できるのではないかと、課題が克 服されたのではないかという状況を満たしましたから、水道における微生物問題検討会に おいて、クリプトスポリジウムの検出法の一つとして遺伝子検出法を提案したいというこ とで今回資料を用意してまいりました。 ○遠藤委員長  続けて、遺伝子検出法の概要と手順についてもご説明いただけませんでしょうか。 ○泉山委員  そうしましたら…… ○遠藤委員長  資料の2−2。 ○泉山委員  そうですね、資料の2−2から説明…… ○遠藤委員長  その資料1関連で何か追加することありますか。 ○泉山委員  いえ、特にありません。 ○遠藤委員長  では、資料2の説明をお願いします。 ○泉山委員  資料の2−2に移ります。遺伝子検出法の概要及び手順となります。  前半の辺りは先ほど申し上げたとおりですので、この辺りは省略させていただきまして、 具体的な手順の話になってまいりますと、この資料の2−2のページ1の下の方の話にな ります。試料採取からクリプトスポリジウム等の検出までの手順ということで、ここに具 体的な操作の話が載っています。  1番、上水20Lあるいは原水10Lを試料として、これを濃縮します。これは顕微鏡検査 と同じ操作となります。クリプトスポリジウム等は低濃度でも問題となりますから、大容 量の水試料を濃縮する必要があります。  2番、免疫磁気ビーズ法により精製をします。繰り返しになりますけれども遺伝子増幅、 これは阻害物質による反応阻害が生じますので、洗浄を徹底し、オーシスト以外の夾雑物 を除くことで遺伝子検査法が実際に適応可能となる状態にします。  次のページに行きます。3番、核酸抽出です。  これは、基本的にクリプトスポリジウム等は環境に対して非常に抵抗性のある病原性微 生物です。細菌ウィルス等の抽出法に対しても抵抗性があるものですから、それをいかに して壊して、いかにして核酸を抽出するかということも大事になります。ここに実際に細 かい手順が載っております。要点としましては、凍結融解を繰り返してクリプトスポリジ ウムをまず破壊しておく必要があるということ、そこにProteinase K反応液を使って酵素 でもって溶解をします。それを超音波処理をしたり、再加熱をしたり抽出操作を徹底しま す。抽出が終わりましたら95℃で熱処理を行い、Proteinase Kの酵素を失活させます。抽 出が完了しましたら遠心をしまして、上清を核酸抽出液として遺伝子検査に使用します。  遺伝子増幅反応ですけれども、一般的に試薬20μLに対して核酸抽出物5μLを混合し、 それを装置で反応させます。装置を操作して判定を行いますけれども、実際に例えば遺伝 子増幅を濁度によって検出するとか、あるいは蛍光によって検出するというぐあいに何ら かの指標を装置で読み取ります。これによって標的遺伝子があった、なかったということ を判断します。   ○遠藤委員長  遺伝子検出法も手順が複雑だということなので、先ほどの資料2−1に戻って、今まで の検査法と比べたときの長所、短所について簡潔にご説明いただけませんか。 ○泉山委員  資料2−1の3ページ目を見ていただきますと、顕微鏡検出法と遺伝子検出法の特徴、 長所、短所ということで1枚の一覧表が出てまいります。こちらに顕微鏡検出の場合、遺 伝子検出の場合の長所、短所を比較のために並べてあります。  まず、これを見ていただくと、例えば今先ほど申し上げたとおり、抽出したうちの試料 を全部使わなければいけないか、一部だけでも足りるのかということが書いてあります。 遺伝子検出法では一部を高感度に検出することで間に合うということを目標にしています。 一方で顕微鏡検査では、これは全量検査しなければクリプトがいるかいないかということ が分かりませんので、例えば10Lを濃縮して、これを1回の顕微鏡検査で全量を見てしま わなければならないということになります。試料が残らなくなってしまうというところが あります。 でき上がった標本それが全てでありますので、追試もしにくいということになります。も し追試をしたければ、顕微鏡検査の場合は、最初の10Lをもう一度汲み直すことになりま す。遺伝子検出法の場合でしたら試料を一部しか使っていません、残っていますので、も う一度反応を実施することが可能です。  加えて、遺伝子検出の場合は、増幅産物がとれます。そうすると、例えば塩基配列決定 を行うとか、あるいはアガロースゲル電気泳動を行うとか、というぐあいに増幅産物の後 解析を行うことができます。こうすることによってそれが本当にクリプトスポリジウムで あったか、あるいはジアルジアであったかというような解析を行うことができます。遺伝 子検出法の特異性というのは、プライマーやプローブの特異性に従うものですから、それ が本当のクリプトかジアルジアかということはきちんと確認していかなければならないの で、こういった後解析が大事だろうと考えております。  あとは、夾雑物の影響は、遺伝子検出法では特に顕著に受けるのですが、これは顕微鏡 でも同様でして、夾雑物にクリプト、ジアルジアが埋まってしまいますと、観察そのもの ができなくなりますので、どちらの試験をするにしてきれいなサンプルを作るということ にかわりはありません。  大まかなところは以上です。 ○遠藤委員長  ありがとうございました。  資料2−3についても併せてご説明いただけませんでしょうか。 ○泉山委員  資料の2−3、遺伝子検出法のバリデーションの進め方についてという資料についてご 説明申し上げます。  クリプトスポリジウム検出法として、今回遺伝子検査法を提案しているわけですけれど も、これが果たして妥当かどうかということを検証しないとなかなか文章にはできないと 思います。そこで、この方法を複数の分析機関に実施をお願いして、その結果を本委員会 で評価していくことが適当ではないかと考えております。その評価の過程で実際に手を動 かしてみて、検査が難しい、あるいはまだ至らない点があるというような、そういう考慮 すべき事項がもしかしたら明らかになるかもしれません。そういうことがあれば、逐次修 正を加えて、よりよい検査法に変えていくというような努力が必要と思います。バリデー ションをこのように実施するにあたって、顕微鏡検出法が現行の検査法の標準ですので、 遺伝子検出法を並べて並行して実施して比較していくことが妥当ではないかと思います。  ところが、濃縮とか精製に係る操作も難しく、遺伝子検出をする以前に、試験がばらつ いてしまう、あるいは評価が変わってしまうということが懸念されます。遺伝子検出法を 評価にできれば集中して行いたいということを考えております。  例えば、河川水中のクリプトスポリジウムが本物かどうかということを顕微鏡と遺伝子 で検査しようとする場合、個数が少なくて正確に試料が分割できないおそれも考えられま す。そうなってきますと、本物の河川水試料では評価が成立しないおそれが考えられます。  そこで、今考えているのは以下の方法ですが、例えば精製水等にクリプトスポリジウム を添加したものを用意して、これを顕微鏡検出、あるいは遺伝子検出で検出作業を実施す る。これはもう精製水ですから当然きちんとどちらの検査法でも検出できると思います。 次に、河川水を濃縮した磁気ビーズ操作後の試料へクリプトを添加して試験する。こうい うのを複数回個別の分析機関によって行ってみると、阻害物質の影響、あるいはクリプト の精製に係る回収率等のばらつきを考えることなく、遺伝子検出法の性能というものをは っきりと見ていただくことができるのではないかと考えております。  具体的にはこの1番、20L程度の河川水を濃縮。2番、それを2分割し、磁気ビーズ法 を実施しておく。3番、UVを照射したオーシスト、シストをこれに添加します。例えば 10個ないし100個というぐあいに添加数がコントロールできる数を添加します。それを4番、 顕微鏡検査、あるいは遺伝子検査を実施して反応があるかないかということを確認します。 5番、結果を照合しまして、適切に検出が行われたかということを評価していくというこ とが考えられるのではないかということです。  以上、結果が得られましたら本委員会に提出して、それを評価していただければという ことを考えております。  次のページには、細かな留意点等を書いてありますけれども、これはどちらかと言うと 技術的な話になりますので割愛したいと思います。 ○遠藤委員長  ちょっといいですか。今の1ページ目の2)ですけれども、2の濃縮試料を2分割し磁 気ビーズ法を実施する、この目的は何でしょうか。 ○泉山委員  クリプトスポリジウムの遺伝子検出法では、磁気ビーズ法を行い、阻害物質を徹底的に 除くことを提案しています。  磁気ビーズ法を使ったら河川の阻害物質がきちんと除かれるかどうかということを評価 していく必要があると思います。実用性を見る上で評価が必要と思います。それで、クリ プトが入っているかどうか分かりませんけれども、河川水の濃縮物に対して磁気ビーズ法 を実施して、阻害物質が残るかどうかということを評価していくことが必要ということで、 この2番の項目を立てています。 ○遠藤委員長  泉山委員からの説明はとりあえず以上でしょうか。ありがとうございました。  それでは、今のことも含めまして、ご提案の遺伝子検出法を検査法として取り上げてい く必要性について、また、必要性があるとするならば、遺伝子検出法の概要及び手順の正 当性、また、その評価の進め方について委員の皆さんからご意見をいただきたいと思いま す。よろしくお願いいたします。  はい、どうぞ。 ○福井委員  北海道大学の福井と申します。よろしくお願いします。  例えば、現場の検査を携わる検査室でのちょっと話を具体的に想像しながらお尋ねした いんですけれども、現場で原水を10L採水を検査室に持ってまいりますよね。それから、 10L濃縮して磁気ビーズ精製をして核酸抽出するところまでで大体どのくらいの時間がか かると想定されていますか。 ○泉山委員  半日程度は必要になるだろうと思います。 ○福井委員  半日程度終わった後で、RTランプ、旧RTPCRによる検出をオーバーナイトか何か で。 ○泉山委員  遺伝子増幅反応は一、二時間で完了します。核酸抽出自体に1時間を使って、あわせて 二、三時間あれば終わると思いますので、全工程は1日のことだろうと思います。 ○福井委員  普通の、通常の1日の時間の中で検査は可能だということですね。  それから、もう一点は、今回ご提案された方法は、RNAをターゲットとした方法で、 それは検出感度を上げるという意味では非常にうまみがあると思います。それは、そうい う意味ではすぐれている方法だと思いますが、その一方でRNAを対象とすると、RNA というのは、基本的にはDNAに比べて分解しやすい性質があるので、採水をして濃縮、 核酸抽出、それからPCRまでは一連の操作が速やかに行われればそれで全く問題はない かと思うんですけれども、何かの事情で核酸抽出が翌日に、いろんなケースがあるとは思 うんですけれども、そのときのことも考慮されておくことも大事かなと。  例えば、濃縮した後で、例えばRNAの分解を阻害する薬品があるので、それにフィル タターごとにつけておければ、その後の磁気ビーズ精製とか核酸抽出はその後やっていく ので、そういうセーフティネットみたいな保険をかけておくようなこともお考えになった 方が、現場のサイドの方にとっては現実的な方法になるかと思います。  以上です。 ○泉山委員  ありがとうございました。おっしゃるとおりで、1日で試験ができない、あるいは水の 搬入が午後になってしまったという場合には、1日で完了しないおそれがありますので、 途中で試験を止める場所が必要と思います。それで、今回のこの遺伝子検出法の場合、磁 気ビーズ法を完了してしまえば、そこで試料を凍結保存することが可能になります。です ので、その時点で次の日に回す、あるいは翌週に回すと、試験の続きを後にするというこ とが可能になる予定です。   ○遠藤委員長  ほかにございませんでしょうか。 ○西村委員  今の福井先生のご指摘のところも含めてですけれども、凍結をして保存をした後ですが、 融解をした後にRNaseの混在による影響というのはどの程度今までの知見であるのか、凍 結融解をしますとRNAには不利になります。そこで恐らく分解は起こると思うので、そ の辺のところは過去の実例でどの程度分かっているか、もし知見があれば教えいただけれ ば。ここが一番、多分、先生のおっしゃったところのネックになると。すみません、資料 2−2の2ページの1から2のところですね。ここが一番、これはクリプトのことかなと 思うんですけれども、その辺はどうでしょうか。 ○泉山委員  ありがとうございます。ご懸念されるのは、要するにRNAの分解が進んでしまうと遺 伝子検出ができなくなってしまって、肝心の結果が出ないということと思います。まだR NAがどの程度分解されるかということは実はきちんと評価できていないのですが、経験 的には作業中のRNA分解というのはほとんど無視できる結果が得られておりまして、実 際には今後検討は必要かもしれませんけれども、余り心配なく先に進めることを予定して おります。実際に凍結融解した後にすぐにProteinase Kを含め入れますので、それでRN A分解酵素も分解されていて、RNAの分解を止めるということをしております。反応液 の組成はここには書いていないのですが、RNAの分解を止められるような試薬等も一緒 に含めることによってRNAを長持ちさせ、試験に影響出ないようにする予定です。 ○西村委員  よく凍結融解をするときにRNAにインヒビターを入れておくとか、その他あると思い ます。  それから、もう一点確認ですけれども、先ほど顕微鏡での検出法で過小評価のおそれが 高いということを資料2−1でおっしゃっていたと思うんですが、今この資料の2−2の ところで、磁気ビーズまでは顕微鏡と同じ操作をしているということですけれども、この 段階で、例えば顕微鏡で過小評価をされたおそれがあるというところですが、ここでの回 収率が悪かったということはないということでの理解でよろしいんですね。ここでもしも 回収率が濃縮の段階で悪くて、以下のところではいいんですけれども、ここで大きく回収 率が悪ければ、顕微鏡であろうとこの方法であろうと、ある程度ネガティブな範囲でかけ るのかなと思うので、その辺のところをちょっともし知見があれば教えてください。 ○泉山委員  残念ながら、ご指摘されたとおり、磁気ビーズ法とか濃縮の段階でクリプト、ジアルジ アの回収が悪くなるおそれは正直あります。それで、そういうことについてもきちんと精 度管理をして今後検討する必要があると思います。一方で、遺伝子検査法の検討に際して、 そういうところについて手をつけたいのはやまやまなんですけれども、それについては問 題をきちんと切り分けて、別個に対処していきたいと考えております。 ○西村委員  分かりました。どうもありがとうございました。 ○遠藤委員長  ほかにございませんでしょうか。  船坂委員からは何かコメントございませんか。 ○船坂委員  顕微鏡法では、従来のまず顕微鏡法の資料1の5ページのところですが、最終的に顕微 鏡観察するまでの間につきましては、処理プロセスは標準的方法があり、選択の方法もあ っていずれか選べるようになっているのですね。したがって、その機関によってはどれを 使うか、また組み合わせて使うなど処理方法によっては、今言われるようないわゆる検出 率が低くなるという状況になり得ると思われます。  したがって、今お話を聞いていますと、磁気ビーズが非常に精製がよくでき、夾雑物を 除く可能性があるというようなことならば、この従来の顕微鏡観察の方法にも磁気ビーズ 法を取り入れて、いわゆる標準的方法という組み合わせにして精度を上げるということも 必要かなということを思いました。また、最終的に顕微鏡法は遺伝子法に切り替えるとい う考え方なのでしょうか。その辺りも含めてお聞かせ下さい。 ○遠藤委員長  それは、やはりこの委員会で討議して、厚生労働省に答申をするというのが本来だろう と考えます。本検討会のご議論によりますが、今回ご提案いただいた遺伝子検査法が検査 法として妥当性が認められた場合には現行の顕微鏡を用いた検査法と併記したらよいので はと考えております。これにより、選択肢を増やすことが当面の措置かとの認識です。  それから、これはまた厚生労働省のお考えも重要かと思いますが、上水でクリプトが検 出されれば即水道を止めることになります。そのような重要な判断を迫られる状況で、遺 伝子検査法の結果だけをもって厚生労働省に水を止める判断を下せるかについては少し時 間をかけて検討すべきではないかと考えております。当面はゴールドスタンダードとして 顕微鏡検査法を残しておくべきだろうと私は思っております。事務局にもしご意見があれ ばお伺いしたいと存じます。いかがでしょうか。 ○松田補佐  ご意見というよりは、この検討会においてまさに議論していただくべき事項ではないか と思いますが。まずは遺伝子検出法がこの5ページに書かれている図3の検査の中の標準 的方法、またはその他の方法として位置づけることができるのかどうかという点を討議し ていただければと思います。併せて、磁気ビーズ法はその他の方法という位置づけですけ れども、これが標準的方法とすべきものかどうかも併せて議論していただければと思って おります。 ○遠藤委員長  それでは、この問題も本委員会でもって討議をしていきたいと存じます。いずれにせよ、 検査法に選択肢が増えることは歓迎できることだと考えます。  それから、ちょうど今まさに事務局からもご指摘がありましたが、船坂委員からのご提 案で磁気ビーズ法がよいならば、標準的な方法に加えたら如何かとの発言がございました。 この問題につきましても今日ということではございませんが検討して参りたいと思います。  その他、ほかにございませんでしょうか。 ○秋葉委員  例えば、ちなみに今あれですかね、その他の方法の磁気ビーズ法というのはどのぐらい のところで使っているんですか。 ○遠藤委員長  黒木先生、何か情報をお持ちですか。 ○黒木委員  私の感じでは、かなりの頻度でビーズが使われていると思います。 ○遠藤委員長  勝山さん、何かありますか。 ○勝山委員  神奈川は、今大きな水道事業体は全て磁気ビーズを使っています。 ○遠藤委員長  現在のところ、磁気ビーズ法は非常にコストが高いことが難点だと思います。現在のと ころ磁気ビーズ法の試薬は一社のみの生産となっており、競争相手が出るなりして試薬の 値段が下がらないとコストパフォーマンスの面で問題が残るのではないでしょうか。たし かに磁気ビーズ法は、免疫学的な原理でオーシストなどを単離しますので、夾雑物が極め て少なく、顕微鏡で観察する際、あるいは遺伝子の回収に極めて有利だと申せます。  その他にご意見ございませんでしょうか。それでは、遺伝子検査法のバリデーションに ついてもこの委員会で実施していきたいと思いますが、進めてよろしいでしょうか。  では、そういう方向で行きたいと思います。ありがとうございました。  続きまして、粉体ろ過濃縮につきまして、同じく厚生科学研究で中心的に検討されてき ました泉山委員の方から説明をお願いしたいと思います。ご承知のようにクリプトスポリ ジウム対策として汚染の危険レベル3ないし4の浄水施設では水を2週間保存しておくこ とが勧奨されております。厚生労働省から20Lの水あるいはその濃縮物を毎日採取・保存す ることが求められています。2週間水を保存する作業をしていただいていますが、20Lの ボトルを14本並べて保存するのは場所塞ぎで、簡単な濃縮方法があれば濃縮したものをと っておく方が効率的ではないかという考えから研究がスタートしたと理解しております。  泉山委員から濃縮法の検討について資料に沿って順にご説明いただけますか。 ○泉山委員  それでは、資料の3−1、粉体ろ過濃縮法検討の必要性についてからを使って順番にご 説明したいと思います。  1.のところ、ここに今、座長の遠藤先生からご説明していただいたことが書いてあり まして、繰り返しになりますけれども、レベル3ないしレベル4のクリプトスポリジウム 等の汚染のおそれのある水道原水を使っている場合には、上水を毎日一回20Lを採取し、 水または採取した水から得られるサンプルを14日間保存するということが現在推奨されて おります。  なぜこのようなことをするかと申しますと、クリプトスポリジウム症の潜伏期間が約4 日から8日、中央値が6日ということで、約1週間経たないと発症してこないことがあり ます。例えば何か集団感染が疑われた場合、これをさかのぼって原因調査ができるような 状態になっていなかったので、食品の検食制度に倣って上水あるいは上水濃縮試料を2週 間保存しておいて、過去にさかのぼって検査できるようにしておこうと勧奨されているわ けです。  これにそって20L、あるいは20L以上を連続的に多量に水を濃縮して、それを2週間程 度保存しておこうと考えているのですが、水量を増やすほどその負担は大きくなりますし、 保存場所も限られますので、なるべくコンパクトに濃縮したものと考案したのがこの粉体 ろ過濃縮法になります。  2番、粉体ろ過濃縮法検討の必要性についてですけれども、とにかく粉体ろ過法を開発 してまいりました。この方法なんですけれども、酸溶解性の粉体を用いたケーキろ過を行 います。そうすることによって、濃縮物からそのケーキ層を酸で溶解させて除くというこ とをすると濃縮物だけが手元に残るというわけです。こういう仕掛けをしておいて、濃縮 物を集めておこうというようなことを行いました。  これが例えばメンブレンフィルターなんかを使いますと、平面でもってろ過濃縮します のでなかなかろ過水量を稼げないとか、そういうところがあるんですけれども、ケーキろ 過層を作りますと厚さがありますので、その分だけろ過水量を増やすことができるという 利点があります。あとは、そのときに溶解できればなお簡単に濃縮物を取り出せるという ようなことを考えています。  その結果がこれなんですけれども、ハイドロキシアパタイトをケーキ層に用いました。 その結果、これを塩酸で溶解することができます。溶解が終わりましたらこれを遠心濃縮 します。これによって簡便に濃縮を得ることが可能となりました。この方法は、有機溶媒 を使いませんので、あとはメンブレンフィルターではありませんから、剥離操作を必要と しません。比較的安価に、極端な話、メンブレンフィルターに比べてもなお安価に濃縮ユ ニットを作ることが可能となってまいります。使い捨ての使用を可能とする必要がありま すので、コスト的なことも考慮する必要があります。  捕捉率としましては、99%理論的にはこれは得られものというふうに考えております。 37ミリ程度の小さなユニットで実際に作ってみるんですけれども、例えば一晩中、24時間 ろ過濃縮してまいりますと、上水にして200ないし400L程度がろ過可能であるということ を確認することができています。ここに酸を加えて溶解して濃縮物を迅速に回収すること が可能となりました。37ミリ程度ですから非常にコンパクトで、これを冷蔵保存すること が容易です。緊急時には、もう既に濃縮済みの試料として手元にあるわけですから、それ を使うことによって非常時には検査が短時間に可能になるであろうというような利点がご ざいます。  このようにして上水の濃縮試料の保存の課題に必要な方法を整備するというような研究 開発を行ってまいりました。この方法を妥当な方法として提案したいと、妥当かどうかと いうことをぜひご検討いただいて、方法論の一つとして組み込めるのかどうかということ をぜひともご検討をお願いしたく思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  説明を続けましょうか。  従来の濃縮法と、粉体ろ過濃縮法の特徴を比較したものを次のページに用意してありま す。ページの3になるんですけれども、ろ過濃縮法の比較表ということで、この一面を使 って表にして比較をしております。順番に、上にアセトン溶解法、PTFE法、中空糸 (ナノフィルター例)、粉体ろ過法というぐあいに、そのほかのろ過濃縮法を比較項目と して並べてあります。  ろ過水量の目安なんですけれども、アセトン溶解法が現在標準になりますので、これを 基準としましてほかの方法を比較しております。例えばPTFE、メンブレンフィルター を使いますと、これはろ過水量が減ってしまいますと。中空糸フィルターを使いますと、 これはろ過水量としては多くできるんですけれども、なかなか後で剥離をするという操作 が必要になってきます。粉体ろ過法の場合は、アセトン溶解法よりは多くて中空糸よりは 少ないけれども、ケーキ層を、先ほどから繰り返し説明しているとおり、酸で溶解して除 くことができますので、これが比較的遠心濃縮で簡単に得ることができると。剥離操作が 必要ではないということになってまいります。  アセトン溶解法も同様に、溶解操作によってメンブレンフィルターを取り除いてろ過濃 縮物を得ることができるんですけれども、問題は有機溶媒のアセトンを使うことにありま して、火気厳禁のアセトンを遠心分離器等で、そういうことを本来はしてはいけないと思 うんですけれども、ほかに方法がないので仕方がなくやっているという面があるんですが、 この方法を使っていると有機溶媒の危険性を承知した上で使っているという悪さがあって、 なるべくほかの方法に切り替えていきたいということなんだろうと思います。  あとは、保存性になってくるんですけれども、アセトン溶解法やPTFEフィルター法 や中空糸フィルター法、これはいずれも面でもってトラップしておりますので、長期間置 いておきますと剥離が困難になっていくおそれがあるかと思います。アセトン溶解法は溶 解することで取り出しますので構わないかもしれないんですが、試料保存についてはちょ っとまだよく分かりません。  一方で粉体ろ過法は、これはハイドロキシアパタイトということで、比較的生体試料等 の親和性は高い物質ですので、保存性があって使えるんだろうというふうに考えておりま す。  ろ過のろ材に係る価格、経費なんですけれども、大体500円とか1,000円とか、数十万円 とかというぐあいにいろいろな価格帯があって、粉体ろ過法はその中でも一番低い方の価 格帯で済みますので、使い捨てにしてもそれほどコスト的に何とかクリアできるんではな いかということを期待しております。ということで、価格帯が安く使い捨てにも使えるだ ろうということを考えております。  ほかにもいろいろ書いてあるんですけれども、こういったところが主な特徴かなと思い ますので、比較的については以上になります。 ○遠藤委員長  続けてください。 ○泉山委員  検討の必要性については以上ということでお願いします。 ○遠藤委員長  それでは、次に概要について説明を続けていただけませんか。 ○泉山委員  概要について進めます。資料の3−2、粉体ろ過法の概要及び手順ということで、具体 的な手順等についてご説明したいと思います。  上水の保存に粉体ろ過を使うことによって、大量の水試料を濃縮することが可能となり ます。先ほどもご説明したとおり、24時間の連続的な濃縮をすると数百Lできる場合があ ります。ケーキ層の面積を増やすことで原水数十Lの濃縮も可能にしたいと開発を進めて いるところでございます。捕捉効率は99%あると考えております。メンブレンフィルター による濃縮と遜色ないと捉えております。粉体にはハイドロキシアパタイトを用います。 これは塩酸によって溶解除去することができます。濃縮物を洗浄して、塩酸とハイドロキ シアパタイトを洗い流してクリプト精製と検出を行います。2週間保存期間があり、もし 問題がなければ濃縮試料は廃棄処分します。毎日試料を濃縮して保存して廃棄するという ことで、安価な方法で組み上げる必要があるかと思います。本方法であれば、ハイドロキ シアパタイトと、既成のプラスチック容器を組み合わせて、一回のろ過を数百円単位で実 施することを可能といたしました。これは現行のメンブレンフィルター1枚よりも安価に なります。  濃縮された試料ですから、クリプト試験は迅速に行えます。例えば、一部試料を観察用 フィルターに直接ろ過して蛍光抗体染色をして顕微鏡観察を行うと。この方法であれば実 に最短の検査ができるかと思います。回収率等もあまり気にせずに済みます。あるいは一 部、あるいは全量を溶解した後に磁気ビーズ法やショ糖浮遊法を使って精製をして、蛍光 抗体染色と顕微鏡観察をすれば、もっと多量の水試料、要するに数百L分の検査もできる と考えております。あるいは遺伝子検査との組み合わせも今後検討したいと考えておりま す。  従来の濃縮法と比べて注意すべき点が幾つかございます。例えば、塩酸を使っておりま すので、これを中和する必要がありますが、例えばカルシウムが析出してしまいますので 遠心洗浄を徹底することが必要になります。こういうことを注意して使えば、十分に使え る、とても有効なろ過法として提案できるのではないかと考えております。  具体的な手順をご説明します。濃縮操作1、ろ過ユニットを上水に接続し、ろ過圧を調 節する。これは粉体ろ過、ケーキろ過を行いますので、ろ過のときに一定の圧力でもって ろ過し続けることが必要になります。  2番、粉体をろ過ユニットに追加することでろ過層を安定させる。これは、ろ過をして いる最中に粉体を追加してあげますとろ過層がさらにしっかりとすると。後から粉体を追 加することでケーキ層がより厚く安定させることができます。そうすることによって捕捉 効率を向上させることができます。  3番、24時間ろ過し、積算流量計により流量を求める。これは実際の濃縮操作になりま すけれども、一定の圧力で24時間ろ過をし続けます。そのときに積算流量計を使えば流量 も求めることができます。  4番、ろ過ユニットより水を抜き、密栓をして冷蔵保存します。必要がなければ廃棄し ます。2週間の保存操作となります。  クリプトの試験操作としましては、先ほども申し上げたとおり、一部分を取り出してき て塩酸を溶解して観察する、あるいは全量を溶解して一部だけを観察することを行います。 20L分の試料を何枚かの観察用フィルターにろ過する、この方法でしたら夾雑物にも影響 されずに短時間の検査が可能かと思います。純水でフィルター上の試料をよく洗い、PB S等緩衝液で中和操作をします。そうすると蛍光抗体染色ができるようなりますので、蛍 光抗体で染色をした後に顕微鏡観察をすると。この方法はこれまでの、従来どおりの顕微 鏡の観察方法ですので、特に問題はないかと思います。  あるいは、クリプトの試験操作をもっと多量の水試料から行いたい、数百Lせっかく濃 縮しているのだからそこから試験をしたいという場合が10番以降に書いてあります。  酸の溶解試料を遠心濃縮します。EDTAを添加したり、これはカルシウムを除去する ためですが、遠心洗浄を行い、カルシウムを除去して塩酸を洗い流して中性に戻します。 ここから、例えば磁気ビーズ法、あるいはショ糖浮遊法を行い、クリプトを精製します。 精製を行いましたら、それを顕微鏡観察、あるいは遺伝子検査を実施いたします。  以上のようになります。  それで、ページ3になりますと、この写真、白黒の写真ですが、簡単なサンプリングユ ニットの写真が左上に載っていまして、これが大体大きさ37ミリメートルのプラスチック 容器、これが使い捨て用に販売されていますので、中に粉体を詰めて使ってみることを行 いました。右側は、通水装置の例として出してあるのですが、粉体を攪拌するための中央 のプラスチック容器とか、粉体を混合するためのスターラーとか、あるいは右上に圧力計 のゲージが見えたりとか、右下には積算流量計が接続されているといった様に、こういう 通水装置を用意して、この左側のろ過濃縮のユニットと接続をして濃縮を行います。中央 の図2はそのような流れが模式図として書いてございます。  概要とか手順については以上になります。  続けてバリデーションの話、よろしいでしょうか。  資料の3−3、粉体ろ過法のバリデーションの進め方についてご説明申し上げます。  この粉体濃縮方法を上水濃縮試料保存法として妥当であることを検証するために、分析 機関にお願いをして試料保存と検査を実施して、その結果を本委員会で評価していただけ れば幸いと考えております。この評価の過程で、検査を実施する立場から実施手順におい て考慮すべき事項が明らかになってくれば、それをさらにフィードバックして改善させた いと考えております。  現在恐らくポリタンク等で保存を行っている施設も多いかと思いますので、それとの比 較をするのが妥当ではないかと考えております。粉体ろ過法ではクリプトスポリジウム等 をろ過した後に上水数百Lをろ過して、それを比較すると考えております。具体的には、 顕微鏡検査法を行って検出作業を実施して、ポリタンクの場合と粉体ろ過法の場合を比較 するということになります。要するに、所定のろ過性能が発揮されていることを確認しま して、あとは将来的にろ過面積を増加させて原水濃縮への対応を検討しておりますので、 もし間に合えばそれについてもご提案できればということを考えております。  個別の分析機関における上水検査方法は以下のとおりとし、複数回実施する。1番、ホ ルマリン固定オーシスト、シストを最初にろ過濃縮する。例えば1,000個程度のクリプトス ポリジウムを添加しておく。2番、次いで上水をろ過する(200L程度)。3番、濃縮物よ り上水20L分のろ過濃縮物を取り出し、溶解処理を行い、顕微鏡検査を実施します。そう しますと、20L当たり100個程度のクリプトが出てくる計算になります。4番、濃縮物全量 より溶解処理、濃縮精製操作を行い、40L分を顕微鏡観察してみる。こうしますと、200個 /40L程度、濃縮精製によって若干のロスを予想するのですが、それでも200個程度であれ ば十分に数えることができると考えます。  以上のことから回収率を算出しまして、粉体ろ過の場合、ポリタンクの場合と結果を出 すことを考えております。これを個別の分析機関で行いまして、結果を収集して、精度と か再現性等を評価できたらと考えておりますので、よろしくお願いいたします。 ○遠藤委員長  ありがとうございました。  それでは、委員の方からの質問、意見等をお聞きしたいと思います。ご発言いただきた いと思います。いかがでしょうか。 ○黒木委員  今説明をしていただいたこの粉体ろ過による濃縮ですが、主として保存法としての評価 をまずするということですが、さらにその先に進んで、オーシストの濃縮法としての評価 も含めてやるということでよろしいでしょうか。 ○遠藤委員長  基本的にはそれがないと保存方法としても成立しないので、併せてそれも…… ○黒木委員  そういう意味ではなくて、オーシストの検出法ということで、こちらの資料1の5ペー ジにある検査の流れというものについて、捕捉濃縮法の中に…… ○遠藤委員長  ケーキろ過を入れるかということですね。 ○黒木委員  そうですね。 ○遠藤委員長  基本的に、この濃縮方法が評価されれば、捕捉濃縮方法の中に入れたいと考えておりま す。  西村先生、先生は検査法の委員会の委員長をなさっていらっしゃいますが、こういうよ うな形でのバリデーションを進めてよろしいでしょうか。 ○西村委員  その方がよろしいかと思いますけれども。 ○遠藤委員長  片山先生、何かございませんでしょうか。 ○片山(浩)委員  大した質問ではないのですけれども、これは最初にろ過して上水をろ過するという方法 で、一番回収しにくいところの回収率を評価するという考え方でよろしいんでしょうか。 ○泉山委員  あえて一番回収率が得にくいだろうという、最初に添加することで評価できれば一番問 題ないだろうと考えております。ろ過途中に入れる方法もあるとは思うのですが、途中で 流路切り替え操作を行いますと圧力が変動したり、そういうよくないことも起こりますの で、最初にそれを済ませてしまって、ろ過層を安定させた方がむしろ粉体ろ過にとっては より結果が安定するのかなということを考えております。 ○遠藤委員長  僕からいいですか。捕捉効率は理論的に99%以上だと委員は発言されていますが、この 件に関してもう少し具体的になぜ保証されるのか説明していただけませんか。 ○泉山委員  過去に粉体ろ過によく似た方法として、珪藻土ろ過によるクリプトスポリジウムの除去 を検討したことがございまして、珪藻土のろ過ケーキ層を作ってろ過するのはこの粉体ろ 過と同じ物理的なろ過操作になります。珪藻土ろ過が果たしてクリプトをどれだけろ過、 除去することができるかと。濃縮することを目的ではなくて、逆に上水の処理を目的とし て除去率を評価したことがございました。そのときに、評価した結果としまして4-logと か6-logとか、要するに99.99%とか、99.9999%というような除去率を達成できたもので すから、こういうケーキろ過というのは、ケーキ層をきちんと維持さえできればとても効 率よくろ過を行うことができるということを経験的に知っておりまして、これがこの粉体 ろ過でも同様であると推測できましたので、そのように申し上げておりました。 ○遠藤委員長  資料3−3のバリデーションのところで、まず初めにクリプトやジアルジアのシストを ろ過しておいて、その後に上水を200L程度をろ過しているのは捕捉物の漏出のことを考え ての実験だろうと思いますが、漏れないのはなぜですか。 ○泉山委員  具体的な、かなり細かな話になるのですが、粉体を維持しておく、ケーキ層を維持して おくためにはサポートフィルターが必要になってまいりまして…… ○遠藤委員長  ろ過装置の底の部分。 ○泉山委員  サポートフィルターとして例えばろ紙等を必要とするのですが、それがないと粉体をケ ーキ層として維持できなくなります。そのフィルターにクリプト程度の3マイクロメート ル程度の粒子を捕捉できるようなろ紙を敷いてあって、それを敷いて置くことによって万 が一粉体ろ過がクリプトを捕捉できなくても、ろ紙の方でクリプトは捕捉できてしまうと。 ○遠藤委員長  ろ紙ではなくてメンブレンフィルターでは。 ○泉山委員  はい、そうです。そういうものを入れてあって、それによって理屈の上では絶対に漏ら さないというような工夫を実際細かな話なのですが、してありまして。 ○遠藤委員長  それで99%以上とっているわけですね。 ○泉山委員  ということが言えます。 ○遠藤委員長  分かりました。  ほかにございませんでしょうか。  片山委員はウィルスがご専門なのですが、何かコメントございませんでしょうか。 ○片山(和)委員  今のご説明、ちょっと1つだけ分からなかったところがあるんですけれども、下にメン ブレンを引いて、そのメンブレンは酸で溶解されるんですか。 ○泉山委員  いえ、溶解できないものを使います。単なる支持体として、粉体を保持するためのろ紙 として使います。 ○片山(和)委員  そうすると、粉体の方にトラップされた場合は回収できると思うんですけれども、最終 的なメンブレンにトラップされたものはどうなるんでしょうか。 ○泉山委員  それは、従来どおりこすり落とし、あるいは激しく攪拌をして落とす操作が必要になり ます。 ○遠藤委員長  ほかにご意見、あるいはご批判等ございませんでしょうか。  片山さん。 ○片山(浩)委員  将来的なことになるかと思いますけれども、このハイドロキシアパタイトの性能という か、性能指定というか、そういうものは将来はまた議論する必要があるんでしょうか。 ○遠藤委員長  僕の記憶が正しければ、理論的にはハイドロキシアパタイトが均一なビーズであったと すると、ビーズの直径の約16%がトラップされる最小の粒子の径になります。ですから、 ビーズの性能としては径が問題になると思います。また、粒子の大きさはある程度そろっ てないといけないと思います。ビーズの径にばらつきがあるとよろしくないが、幸いなこ とに、計算値上はばらつきがあっても小さい径に依存しますので、小さいビーズが十分量 あれば、少々大きな粒子が混ざっていてもろ過精度は保証されます。  勝山さん、いかがですか。 ○勝山委員  ちょっと気になったんですけれども、濃縮物に20L分を取り出してというふうに書いて ございますけれども、ここら辺は濃縮をするときにろ層面に均一にオーシストやシストが 分散されて濃縮されるということを前提にしてお考えになっているのかどうか。 ○泉山委員  均一に分散することを予想しての計算になっておりまして、確かにおっしゃるとおり、 例えばたった1個とか2個とか、そういう数が入ってきたときにはかなりの偏りが生じる おそれがありますので、そういうものを検査したい場合には、一部を切り取るのではなく て全量検査する必要があると思います。  ただ、10Lに1個を目標にしているわけですが、それが上水の場合は20Lに1個ですが、 例えばそれが200Lとか400Lとか大量の水を濃縮する中に10個、20個というぐあいに入っ てくる、その場合にはある程度偏らずに分散してくれるだろうと、確率論的に分散してく れるだろうということを想定して一部を切り取るというようなことを書いているつもりで す。 ○遠藤委員長  分散がどの程度かということについては検証できますね。 ○泉山委員  そうですね。 ○遠藤委員長  あと、これバリデーションする際には必ずしもオーシストとかシストを使わなくても、 例えば大きさの分かっている蛍光ビーズなどを代用することも可能ですか。 ○泉山委員  クリプトそのものを使うには入手困難であるとか、あるいは取り扱い上注意が要るので 困難な場合には、例えば3μmぐらいの、クリプト、ジアルジアよりも細かい粒子を代替 粒子として、評価できると考えます。 ○遠藤委員長  その他、ご意見ございませんでしょうか。  今ご説明いただいた方向でバリデーション作業を進めてよろしいでしょうか。  では、そのような形で進めさせていただきます。ありがとうございました。  続きまして、最後にこの評価方法につきまして事務局の方から……、ごめんなさい、粉 体ろ過及び遺伝子検査法についての評価に関する検討の進め方について事務局の方からご 説明をお願いします。 ○松田補佐  それでは、資料4の1枚紙の検討の進め方についてご説明いたします。  粉体ろ過法と遺伝子検出法についての科学的知見やバリデーションの内容を踏まえまし て、粉体ろ過法及び遺伝子検出法に関する以下の事項についての評価を行って検査方法の マニュアル案を今後検討していただければというふうに考えております。  主な評価事項というのは、粉体ろ過法について、サンプリング装置、粉体ろ過カートリ ッジの入手可能性、また、オーシスト等の粒子の補足効率、粉体ろ過のサンプルの保存性、 適切なケーキ厚とろ過圧、ろ過水量。  遺伝子検出法については、検査法の感度と精度、また、検鏡法と比較した十分な感度の 有無、また、クリプトスポリジウムが少数の場合の検出可能性、あとは、同一試料の繰り 返し試験による再現性、あとは市販キット等の水準に関する提供すべき情報、検査者に対 する注意事項、また、クロスチェック方法、反応産物の解析、こういった事項について評 価をいただければと考えております。この点については事前に遠藤委員長とも相談をして こちらの方にお示しをしています。  また、これらの方法について、方法の導入、また、クリプトスポリジウム対策の進捗等 を踏まえて、クリプトスポリジウム対策のレベル3、4の未対策施設、また、対策導入済 み施設に関する検査方法についても検討をいただければというふうに考えております。  あと、補足ですが、先ほど泉山委員から説明をいただいた資料2−3において、遺伝子 検出法のバリデーションの進め方ですが、2ページ目にバリデーションの進め方について 記述しております。なお書き以下ですね。今後ですが、協力が得らたれ公共検査機関、ま た20条登録検査機関において、以下の流れでバリデーションを進めていくということで、 [1]遺伝子検出法の評価。遺伝子検出法の経験を有した検査機関によるバリデーション実施 と評価を行う。必要に応じて、方法の改良、検証を実施する。妥当な方法が固まった後、 分析マニュアルを作成する。  [2]未経験検査機関におけるバリデーションの実施する。[1]で作成した分析マニュアル案 に基づき、遺伝子検出法未経験の検査機関において、バリデーション実施とその評価を行 う。必要に応じて方法の改良及び検証を実施する。また、分析マニュアルの改定案を策定 する。その分析プロトコルの改定案について本検討会で審議いただくと。このプロトコル はマニュアルどおりということでございます。  遺伝子検出法については、遠藤委員、泉山委員とも相談をして、経験のある機関、あと は未経験の機関、両方でのバリデーションというのを段階的に行ってはいかがかというこ とでこちらの方にお示ししていただいております。  以上でございます。 ○遠藤委員長  ありがとうございました。進め方についてご説明をいただきましたけれども、これに関 しまして、追加あるいはコメントやご助言をいただけたらと思うんですが、いかがでしょ うか。このような方向で進めてよろしいでしょうか。 ○黒木委員  今、バリデーションについてのご説明をいただいたのですが、バリデーションについて は特に問題はないと思います。先ほど遠藤先生から少しご意見がありましたこの遺伝子検 出法の目的と言いますか、例えば上水から検出をされた場合にその扱いをどうするかとい ったこと含めた検査の目的をはっきりさせていくというか、あるいは顕微鏡の検査との整 合性と言いますか、そういった将来的に出てくるであろう結果をある程度想定をしておい て、その上でその場合の対応を決めておくということも将来検討すると…… ○遠藤委員長  それは非常に重要なご指摘ですね。それにつきましては、バリデーションを進めながら 別の機会に委員会を開催して、結果の読みや、どのような使い方をしていくべきかなどを 討議していく必要があるだろうと思います。 ○福井委員  それで、黒木委員のご発言に追加なんですけれども、遺伝子検出法の使い方のやっぱり どういうふうに使っていくかということをいろいろ考えていかなくちゃいけないんですけ れども、使い方として、ある一定量のろ過をした検査、あるいは上水の中で検出されたか、 されなかったかという検出法ですよね。定量というところまでは行かない。 ○泉山委員  定量については将来的な課題と考えておりまして、最初は定性的にいるかいないかとい うことを行いまして、次の段階としましては定量を行って、何個相当の核酸があったかと いうことを評価したいと考えております。 ○福井委員  そのときに、だからRNAをターゲットとした場合には定量がなかなか難しくなってく る。感度は上がったとしても原水、あるいは上水の、例えば10L当たりに1個いるのか、 そうでないのかはなかなか難しくなってしまうんではないかと。だから、顕微鏡法と補完 をするやり方で定量的な補完をしていく必要があるのかなというふうに率直に思った次第 ですけれども。 ○泉山委員  ご指摘のとおり、遺伝子の検査法と顕微鏡の検査法というのは原理が異なるものですか ら、完全に1対1対応はしなくて、そのDNA、RNAが壊れてしまったという場合には 個数が低く評価されるかもしれませんし、死んでいるオーシスト、シストが入ってくれば 本当に検出できなくなるかもしれないという懸念はございます。一方で生きているオーシ スト、シストの活性を加味した評価につながる、使えるというような考え方もあって、生 のオーシスト、シストを使って検量線を作り、それで定量したいとは考えております。 ○遠藤委員長  検量線を書くと定量性は出てくるという、基礎的なデータとしてお持ちですか。 ○泉山委員  まだ残念ながらそこまでは出ていないのですが、今後の検討課題とさせていただければ と考えております。 ○遠藤委員長  今の点は特に注意をして、将来的な検討をしていきたいと思います。  いかがでしょうか。今のことを踏まえて、検討会を進めてよろしゅうございますでしょ うか。  では、そのような方向で検討を進めていくことにさせていただきます。事務局としては 大体いつごろまでに結論が欲しいとお考えでしょうか。 ○松田補佐  バリデーションにつきましては、遺伝子検出法についてひとまず段階的に2段階で行う ということですので、このバリデーションについてできたら来年度中にある程度2段階の バリデーションを行っていただいて、マニュアル案についても原案を作っていただければ と思っています。その上で再来年度以降にこのマニュアル案と、併せて今後のモニタリン グの在り方も含めて検討していただきたいと思います。ですから、最終的なまとめという のは再来年度の審議を受けて、それがいつになるかということもあるんですが、事務局と しても速やかにまとまるように努力はしていきたいと思っております。 ○遠藤委員長  ありがとうございました。  それでは、一応今日討議すべきことは終わっておりますので、その他としまして、事務 局の方から何かありましたらご説明をいただきたいと思います。 ○吉口水道水質管理官  本日は、貴重なご意見、ご助言をいただきましてどうもありがとうございました。本日 の議事要旨、あるいは議事録につきましては、各先生方に確認をいただきました上で公開 をさせていただくというふうに考えております。  それから、本日のご意見を踏まえまして、新しい検査方法のバリデーションにつきまし て、委員の方々のご協力を得ながら進めてまいりたいと考えてございますので、よろしく お願いします。  次回の検討会でございますけれども、全体のスケジュール感は松田の方から申し上げた とおりでございますが、バリデーションの結果が出るころ、来年度の半ば前後かなという ふうに思ってございますが、そのころに改めてご案内をさせていただければと考えてござ います。来年度も引き続きどうかよろしくお願いを申し上げます。本日はありがとうござ いました。 ○遠藤委員長  では、本日の審議はこれで終わりたいと思います。本日はどうもありがとうございまし た。 (了)