10/06/23 平成22年度第1回薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会安全技術調査会議事録 薬事・食品衛生審議会 平成22年度 第1回 血液事業部会安全技術調査会 議事録 1.日時及び場所   平成22年6月23日(水)13:30〜14:06   航空会館 701・702会議室   東京都港区新橋1-18-1 2.出席委員(11名)五十音順   大戸斉、岡田義昭、佐川公矯、白阪琢磨、杉浦亙、新津望、水落利明、山口一成、   山口照英、◎吉澤浩司、脇田隆字   (注)◎委員長  欠席委員(2名)   内山巌雄、高本滋 3.オブザーバー   水澤左衛子参考人、日本赤十字社 4.行政機関出席者   血液対策課長   血液対策企画官   血液対策課長補佐 他 5.議題   1.NATガイドラインについて   2.その他 6.備考   本調査会は、公開で開催された。 ○難波江課長補佐 それでは、ちょうど定刻となりましたので、ただいまから「平成22年度第1 回血液事業部会安全技術調査会」を開催いたします。なお、本日は公開で行うこととなっており ますので、よろしくお願いします。また、本日は、2部構成となっておりまして、第1部安全技 術調査会単独で1時半から2時半、また30分間をおきまして、3時から安全技術調査会と第3回 医薬品等安全対策部会・安全対策調査回との合同開催となります。長丁場になりますけれども、 よろしくお願いします。それから、委員の出席状況ですが、本日は内山委員、高本委員から御欠 席との連絡をいただいております。 また、本日は参考人として、国立感染症研究所主任研究官  水澤左衛子先生、日本赤十字社血液事業本部副本部長 日野学さん、安全管理課長 百瀬俊也さ ん、製造管理課長 峰岸清さんにお越しいただいていますので、どうぞよろしくお願いします。 カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。本日の安全技術調査会においては、個別品目の 承認の可否や個別品目の安全対策措置の要否の審議はございませんが、血液事業の運営において、 日本赤十字社及び血漿分画製剤製造企業との利益相反を確認しておく観点から、平成20年3月24 日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会申し合わせ、審議参加に関する遵守事項に基づきまして、 利益相反の確認を行いましたところ、審議及び議決への参加については、退室委員及び議決に参 加しない委員は、ともになしとなっております。それでは、この後の進行につきましては、吉澤 委員長にお願いします。 ○吉澤委員長 本日はどうぞよろしくお願いします。それでは、最初に、事務局から資料の確認 をお願いいたします。 ○難波江課長補佐 資料の確認をさせていただきます。お手元、1枚目、議事次第となっており ます。それから、1枚おめくりいただきまして、座席表、委員名簿となっております。資料1で すが、血液製剤のウイルスに対する安全性確保を目的としたNATの実施に関するガイドライン でございます。資料2ですが、これは水澤先生の資料でございまして、諸外国におけるNAT検 出感度についてでございます。資料3は、日本赤十字社さんの資料で、日本赤十字社で使用して いるNATの感度についてでございます。過不足等がございましたらお知らせください。 ○吉澤委員長 資料はよろしいでしょうか。 ○吉澤委員長 では、議題に入らせていただきます。それでは、資料1から3につきまして、事 務局、水澤参考人、それから日本赤十字社から説明をお願いしたいと思います。では、お願いし ます。 ○難波江課長補佐 それでは、資料1につきまして、事務局より御説明させていただきます。資 料1は、平成16年8月3日に医薬食品局長通知として発出されました血液製剤のウイルスに対す る安全性確保を目的としたNATの実施に関するガイドライン、通称NATガイドラインでござ います。血液製剤の原材料として用いる血液につきましては、生物由来原料基準等におきまして、 HBV、HCV、HIVに対するNATの実施が義務づけられているところですが、本ガイドラ インはNATの精度管理を目的として、安全技術調査会での議論を踏まえ発出されたものでござ います。うち、10ページにございます3-3)必要とされる検出限界値についてでございますが、こ れは対象となるウイルスごとに別途示すとガイドラインではされておりまして、注記の8、13ペ ージでございますが、注意事項の8としまして、当時の安全技術調査会の審議によりまして、プ ール前の原血漿換算でHCVについて5,000 IU/mLという数値をお示しいただきました。また、 HBV、HIVについては、別途定めるとございます。なお、当時のパブリックコメントへの回 答にもございましたが、この値はスクリーニング試験としてのミニプール血漿での検出限界値を 示しておりまして、血漿分画製剤製造用の原料血漿プールの検出限界値につきましては、このガ イドラインではなくて、別途、平成15年に出されました4課長通知で3ウイルスとも100 IU/mL という値が示されているところでございます。その後、厚生労働科学研究におきまして、NAT コントロールサーベーを実施し、3ウイルスについて各メーカーの精度管理を確認し、またその 結果を血液事業部会運営委員会にも報告をしてきたところですが、今般、平成20年、21年度に実 施いただきました厚生労働科学研究におきまして、諸外国におけるNAT検出感度についてもお 調べいただきましたので、本日は研究代表者である水澤先生にお越しいただきまして、その結果 を御発表いただくとともに、日本赤十字社より現在用いているNATの感度につきまして御発表 いただきまして、NATガイドラインにおけるこの3ウイルスについての検出限界値について御 審議いただければと考えております。よろしくお願いします。それでは、水澤先生、よろしくお 願いします。 ○水澤参考人 それでは、検出感度について御報告いたします。資料2の1ページの概要の前半 の段落のところは、今、事務局から御説明いただきましたので、二つ目の段落の「ところで」と いうところから御説明しますが、4課長通知では、原料プールで実施する三つのウイルスのNA Tの検出感度は100 IU/mLですけれども、先ほどの御説明のように、輸血用のスクリーニング検 査のHCV−NATの感度については、NATのガイドラインによって5,000IU/mLの個別の陽性 血漿を検出できる試験で行うこととされていまして、HBVとHIVについては、別途定めると いうことで、実質上、HCV−NATの感度を準用してきたわけです。EUと日本について、ま とめた結果が、2ページ目の下の表になりますが、この表についてですけれども、まず輸血用の 血液について、HIV、HCV、HBVについて血清学的な検査はされておりまして、それに上 乗せして、さらにウイルスのNAT試験を各国で義務づけているかどうかということをまとめた 表です。そして、義務づけている場合には、求められるNATの感度が幾らかということをあら わしています。この表の左側半分のところは、血漿分画製剤の原料血漿プールについてまとめた もので、日本におきましては、先ほど御説明がありましたように、4課長通知で三つのウイルス について100IU/mLということになっています。アメリカにおいては、義務づけられているという ことでは、HCVとHIVだけです。また、EUにおきましては、HCVだけが義務づけられて います。ただし、現実の問題としては、血液製剤の製造メーカーでは、この三つのウイルスすべ てについてNATを実施しております。それから、右半分のほうに、今回の資料として提出した 輸血用血液についてのNATについてなのですけれども、HCVについては、個別の検体に換算 したときに、これは日本でも、それからアメリカでも、それからEU、ドイツ、イギリスでも、 すべて5,000IU/mLということで、基準もありますし、また義務づけられています。HIVについ ては、日本が実施するということですが、検出感度については、別途定めるということになって います。アメリカとドイツについて、今回、研究班で調べましたところ、アメリカにつきまして は、実はガイドラインとか、ガイダンスというところに、具体的な数字の表示はないのですけれ ども、これは当事者のほうにも直接、担当者にも確認しまして、資料の14ページのところに、ス ライドがありますが、これはWHOのNATのワーキンググループの会合で、2004年にFDAの 担当者が示したもので、この黄色いところですが、一番下のところに標準品のNATのプールに ついては、10,000 IU/mLだということが書いてありますので、こういう基準でやっているという ふうに考えることができます。それから、ドイツにつきましては、HIVについては10,000 IU/mL とありますが、これは資料の3ページ、やはり黄色く塗ってありますけれども、ここにドイツは 2003年にHIV−NATの輸血についても基準をつくりまして、これは個別について10,000 IU/mL以上を確実に判定するものでなければいけないというふうに義務づけています。これは、ち ょっと訳文がなかったので、研究班のほうで訳しました。細かいところの訳については、また訂 正もあると思いますが、今回関係のあるところについて、確認するという目的で訳したものです が、原文につきましては、10ページのところに、オリジナルを担当者から送ってもらって、示し てありますが、10ページの赤で囲ったところが今回黄色で訳出した部分に相当します。赤で囲っ てあるところの真ん中ほどのところに10,000 IU/mLと書いてある、これがそれに相当します。で すから、もう1回、表の1のところに戻りまして、まとめますと、現状として、日本ではHCV −RNAの個別の基準感度が5,000 IU/mL、これはアメリカでも、ドイツでも同じです。EUでも 同じです。HIVについては、日本は実施するということは決まっています。アメリカとドイツ については、やっぱり実施するということが義務づけられていて、いずれも感度については、 10,000 IU/mLです。B型肝炎について実施するということを義務づけているのは日本だけです。 しかし、これも、ですから諸外国では義務づけていないのですが、現実問題として、NMと書い てある部分でも、実際にはほとんどのところが実施しているのが実情です。ただし、法律的なも のではないので、基準というものは明確に示されていません。以上です。 ○吉澤委員長 ありがとうございました。では、日赤のほうからお願いいたします。 ○日野参考人 日赤の日野でございます。よろしくお願いします。資料No.3です。日本赤十字社 では、1999年からNATを実施しておりますけれども、さらなる精度の向上ということを求めて、 2008年8月から資料3にありますように、機器の名前がcobas s 401、試薬名がコバスTaqScreen MPXという試薬を用いて、血清学的な検査に追加してHBVとHCVとHIVの感度を実施し ているところです。それで、1番にありますように、ロシュ社の添付文書の感度を引用しますと、 1番の表のようになります。HBVに関しましては、国際標準品のgenotypeAを、HCVに関し ましては、1aを、HIVに関しましては、subtypeBを使っています。それで、95%の平均検出 感度に関しましては、こちらのほうは2ロットの試薬を用いまして、45重測定をやって、その データをもとにして、ブロビット法で計算した数字がHBVに関しましては、3.2 IU/mL、HCV に関しましては12.4 IU/mL、HIV−1に関しましては、41.8 IU/mLということで情報が開示さ れているところです。2番目になりますけれども、こちらのほうは、冒頭にもお話ししましたよ うに、日赤では、今4箇所のNATセンターで、NATスクリーニングを実施しているところで すけれども、全部で15台のスクリーニング機器がございます。その15台を使いまして、3ロッ トの試薬を用いまして、検討しました。HBVに関しましては、国内標準品のgenotypeCを、H CVに関しましては、同じく国内標準品のgenotype1b、HIVに関しましては、subtypeBを使 っております。それで、それぞれ検討したところ、95%のLODと書いてあるところを見ていた だきたいのですけれども、HBVに関しては、計算では0.79 IU/mL、HCVに関しましては5.87 IU/mL、HIVに関しましては69.67 IU/mL という数字が出てきておるというような状況でござい ます。簡単ではございますけれども、以上です。 ○吉澤委員長 ありがとうございました。討議の材料、これでそろいましたので、これから討議 に入りたいと思います。今までの御報告について御質問、コメントがございましたら、まずお願 いしたいと思います。 ○山口(照)委員 一応、確認だけさせていただきたいのですけれども、日赤のほうで、95%の 信頼限界が97と、HIVの検出限界が97 IU/mLということなので、そうすると、例えば3倍の、 NATガイドライン上は必ずポジティブにならないといけないランだと、それの3倍ぐらいにな るということになるわけですか。それともう一つ、定量限界というのはどのぐらいになるかにつ いて教えていただけますでしょうか。もしわかっていればでよろしいのですが。 ○日野参考人 今、二つ御質問がありましたけれども、定量限界に関しましては、手元に資料が ございません。それで、3倍の、いわゆるランコントロールに関しましては、今までS401でかな りなランをこなしておるわけですけれども、機械のトラブル以外で、3倍量のランコントロール が出なかったということに関しては、今のところ報告は受けておりません。 ○吉澤委員長 そうすると、もうこのレベルでいけると考えてよろしいわけですか。 ○日野参考人 問題になるのはHIVだけだと思うのですけれども、HIVに関しましては、現 段階では、今、私が説明したように、かなりの確率で問題はないだろうと思います。ただ、検出 確率が95%であるということに関しては、100%は出ないと。ここの数字にもありますように、H IVに関しては、100のところで360回やって、359回、1回実は落としておりますので、そうい う意味では、100%はなかなか難しいのかなと思っております。 ○吉澤委員長 95%信頼限界の3倍でフィックスしても、安心なものなのですか。それとも、100% のところで3倍したほうが安心なのか。 ○山口(照)委員 ランコントロールは、そこで試験が成立しているかどうかを判断するわけで すので、検出感度についての目安は95%信頼限界がいくらであるかであろうというふうに思いま すが。 ○吉澤委員長 掛ける3ですね。前のNATのガイドラインでは、プールサイズからで5,000IU/ mLに線を引いていましたが、今日、なぜここで討議になったかというと、試薬の精度が上がって きたこと、プールサイズが変更されたことから、さらに安全性を高めるところで線引きをしても いいのではないかということです。そうしますと、今の検出限界、95%信頼区間をもとにして設 定すると、どの辺に設定したらいいか、御意見があったらお願いいたします。 ○山口(照)委員 多分、BとCに関しましては、まず、このNATガイドラインをつくった時 点では、個別検体にさかのぼって5,000 IU/mLとしました。海外も5,000 IU/mLのままですけれ ども、実質上、ミニプールのサイズも50から20に、しかも、サンプリングサイズもかなり大き くしていただいて、非常に感度が上がってきているという現実を踏まえれば、もう少し感度を上 げても全然問題ないのではないかというふうに僕は思っております。幾らにするかというのは、 かなり難しい判断だろうと思うのです。ここでやれば大丈夫という話ではないと思うのですけれ ども、ただ、検出感度、サイズを変えたというのは、これは機械的な測定法上の問題ですので、 一番明確になっているのはプールサイズを変えたということは、これは非常に明確になっており ます。明確というのは、計算しやすい判断材料かと思いますので、もし、プールサイズの判断基 準でいけば、例えば、50ミニプールから20ミニプールに変えたわけですから、それを勘案すれば、 5,000 IU/mLを2,000 IU/mLに変えるというのは、一つの目安になるのかなという気がしておりま す。ただ、Iに関しましては、これは検出感度、95%の検出限界で97.5ですので、これかなりぎ りぎりのところになると思うのです。もう一つは、この検出感度を目標値、あるいはミニマムリ クアイアメントと考えるのか、それとも実際にこれを守らないといけないとするのかという、ど ちらのスタンスで考えるかだと思うのです。ある意味、これはミニマムリクアイアメントとして 考えたほうがいいのではないか。要するに、基準として示すのは、ミニマムリクアイアメントで あって、その上で、NATガイドラインに従った試験法、バリデーションをしていただいて、日々 はそれをきちんと担保していただくというほうがいいのではないかというふうに思います。そう すると、HIVについては、もう少し検出感度を、ミニマムリクアイアメントの関係からすれば、 もう少し緩めてもいいのではないかなと。そうすると、例えば海外はBとかCに比べて倍、要す るに感度を少し緩めているということを考えると、2,000 IU/mLの倍とすれば、4,000 IU/mLとい うのは一つの目安ではないかなというふうに思います。 ○吉澤委員長 いずれにしても、外国が定めている基準と比較して、より安全性が高くなってい るということになりますね。 ○山口(照)委員 いい感度になるのではないかと。 ○吉澤委員長 水澤先生、御意見いかがですか。 ○水澤参考人 私も今、山口先生がおっしゃったように、BとCについては2,000で、Iについ ては、今おっしゃったような海外のものを参考にして、2,000の2倍でもいいのではないかと思い ます。 ○吉澤委員長 という御意見ですが、今度は実施する側として、日赤では、このレベルで大丈夫 というふうに、今までの経験からして考えられましょうか。 ○日野参考人 先ほども説明しましたように、今までの経験からということであれば、多分、落 とすことはないのだろうと思うのですけれども、山口先生がおっしゃったように、それが100%守 らなくてはいけないのか、ミニマムなのかというところに関していえば、日赤とすれば、最低限、 ミニマムリクアイアメントという形で考えていただいて、日々は、NATのガイドラインを遵守 しながらやっていくと、きちっと精度管理していくということでできればいいかなと思っていま す。 ○吉澤委員長 サイエンスの世界に100%はあり得ませんから、今の考え方でいいのだろうと、常 識的にはそう思いますが。ほかの先生方の御意見はいかがでしょうか。 ○大戸委員 ちょっと前に戻ってしまう可能性があるのですけれども、国内でつくった標準品の ウイルスコピー数はわかっているのですか。 ○水澤参考人 わかっています。HIVですか。 ○大戸委員 三つともです。 ○水澤参考人 Bは4.4掛ける10の5乗/mLです。Cは10の5乗/mLです。HIVは1.8掛ける 10の5乗/mLです。 ○吉澤委員長 よろしいですか。山口先生、それでよかったんですね。 ○山口(照)委員 今、ちょっと手元に……。 ○大戸委員 そうすると、1IU/mLは幾つのコピー数に相当するか。 ○吉澤委員長 どこかに書いてありましたね。 ○水澤参考人 コピー数ということで、換算は国内標準品やWHOの標準品については、むしろ しないで、国際単位ということで定めてあるので、そういうふうにしたいと考えています。しか し、日本赤十字のほうで出された資料3の1番目に参考として出ていますので、参考としては、 こういうふうに考えることができると思います。 ○大戸委員 これは国際標準品ですよね。日本標準品のデータを知りたいのです。 ○山口(照)委員 国際標準品に対して日本標準は較正しておりますので、IUに関しては、国 際標準の単位を日本標準品のところに、国際標準のスケールにしてはかっております。ですから、 このIUに関しては国際標準品の単位を表示しております。国内標準品に関しては。 ○岡田委員 コピーに関しては標準品というものはないので、コピーに関しては各ラボとか、各 企業が勝手に決めた(と言っては申しわけないですけれども、)値なので、場所とか施設が変わ ると、コピー数は合わないものですね。そのためにWHOはIUという国際単位を使って、それ で各施設はそれをもとにして、自分のところのワンコピーが何IUに相当するかというふうに換 算することで、世界じゅうのNATの精度をコントロールするようになっています。そういうこ とで、日本の標準品に関しては、コピー表示はしていません。だから、あえてやるとしますと、 感染研が持っているコピーで計算した値なので、違う施設がやるとまた違うコピーになります。 それは混乱のもとですので、あくまでも国内標準品、国際標準品に関してはIUで話を進めない と、なかなかややこしい話になると思います。 ○吉澤委員長 山口先生、この血清のもとは、先生が事務局をやられた研究班のパネル血清です よね。 ○山口(照)委員 日赤から供与いただきましたそれぞれウィンドウ期のものを原材料にして、 適切なところにまず希釈をした上で、国産標準品に対して当てて、較正して値を出したIU単位 です。 ○吉澤委員長 そのときのスタンダードはNIBSCから取り寄せたもので、ダイリューション かけて、キャリブレーションして、決めたものをもとにしてありますから、これはずれがないは ずですね。 ○山口(照)委員 はい。 ○吉澤委員長 ということです。ほかにいかがでしょうか。そうしますと、線引きにつきまして は大体御説明いただいた通り、世界の標準と比較すると、より安全性の高いレベルに達している ということと、ミニマムリクアイアメントとしてならば守っていけそうであるという現場からの 声と、それから研究班が検討した結果からも、この辺で線を引くのが妥当であろうということに なろうかと思いますが、先生方、いかがでしょうか。 ○吉澤委員長 では、これまでの御意見をもとにまとめさせていただきますと、NATのガイド ラインにおける新たな検出限界値は、原血漿換算で、HBVについては2,000 IU/mL、HCVにつ いても2,000 IU/mL、それからHIVにつきましては、4,000 IU/mLということで、この会として 提案したいと思いますが、いかがでしょうか。 ○吉澤委員長 では、そのようにさせていただき、今後の手続について事務局のほうから、説明 をお願いいたします。 ○難波江課長補佐 ただいま御提案いただきました数値につきまして、パブリックコメントにか けまして、そこでいただきました御意見とともに、血液事業部会に報告させていただきます。そ こで最終的な了解をいただいた上で、通知として発出させていただく予定になっております。 ○吉澤委員長 どうもありがとうございました。このほか、何かございますでしょうか。 ○山口(照)委員 せっかくの機会ですので、このNATガイドラインにつきまして、吉澤先生 などに御協力いただきましてつくった立場からすると、正直申しまして、少し古くなっている部 分もあるかなと感じております。今日議論していただきました検出感度の設定に関しましては、 長年、懸念だった事項について、ようやく解決しました。一方で、NATによる測定法そのもの について多様な手法が開発されてきております。そういう意味では、将来的にはガイドラインを 見直していったほうがいいのかなと思っております。もちろん、近々ではないかもしれませんけ れども。それから、NATガイドラインはBとIとCを中心に考えて設定しましたけれども、ほ かに、例えば、今北海道でHEVのことを、NATをやっておられますし、パルボウイルスB1 9についても、海外ではもうガイドライン等の案が示されております。したがいまして、その辺 の検討も進めていっていただけるといいのかという気がしております。 ○吉澤委員長 それは、そのようにしていただいたほうがいいと思います。ほかに御意見はござ いますか。 ○岡田委員 補足になりますけれども、E型肝炎は、現在国際標準品が作成されている最中です から、来年ぐらいには恐らく世界じゅうに配ることができると思います。一方、パルボに関して は、EUと米国においては、原料血漿に規制が既に設けられています。それで、昨年ですが、F DAからB19の、原料血漿の、10の4乗IU/mLという基準がガイダンスで発表されました。EU においては、抗Dグロブリンですね、この製剤は、Rhマイナスのお母さんが、Rhプラスのお 子さんを出産されたときに、感作されないようにということで、分娩後、抗Dの抗体の投与を受 けるのですけれども、それが従来は分娩後に、母体が感作されていないことを確認されてから投 与されていました。これが、EU等では、妊娠中に感作される例がありますので、妊娠28週ぐら いに投与するようになっています。そうしますと、ちょうど28週というのは、胎児にとってパル ボウイルスに高感受性になっていて、抗Dグロブリンの中にパルボウイルスが入っていますと胎 児水腫になったりして大変なことになります。胎内死亡を起こしたりする可能性があるというこ とで、EUでは、抗Dの原料血漿にB19の制限を設けています。日本の産婦人科学会でも、実 は未承認薬・適応外薬検討会議での要望事項として、適用外の薬剤の適応症ということで、やっ ぱり妊娠中に「抗Dグロブリン」を使うということを要望してきています。それを考えると、日 本でもB19の制限を設けないと、感染事故が起こる可能性があると思います。そういう面で、パ ルボ19の制限等のために標準品の作成ということは必要になってくると思います。 ○吉澤委員長 そうですね、将来のことになるでしょうが、標準品をつくっておくことはまず大 事なことになりますね。順番からすると、E型については、日野さん、日赤でスクリーニングか けていますが、そういう標準品をつくろうとしたときに、外国から標準品を手に入れて、ちょう ど今のHBVとHCVと同じように、国内標準品をつくらなければいけないと思いますが、その ときの材料といいますか、原料は、日赤から提供いただくことはできますか。そうなったときの 話ですが。 ○日野参考人 そうですね、実際には、そんなにウイルス度の高いものは、今なかなか検出でき ないのですけれども、5乗程度のものであれば、何とか手に入るかなとは思っております。その ときは、またご協力させていただければなと思います。 ○吉澤委員長 ボリュームがいっぱいあればうまくいくわけですから。 ○日野参考人 そうですね。以前は、ALTで61以上のものもスクリーニングというか、調査し ていたのですけれども、今は、完全にHBVとCとIのNATスクリーニングと同じラインで、 HEVもやっておりますので、そういう意味では、ウイルス濃度の高いものはちょっと望めない ような状況です。 ○吉澤委員長 パルボについても、将来は考えておかなければいけなくて、全ての血液について チェックするということではなく、ある特定の目的の血液については、安全を最大限見込むとい うことの必要は生じると思われますので、今の岡田先生のご意見を記録に残して、将来のことを 考え始める必要があるというふうに思います。ほかにいかがでしょうか。 ○吉澤委員長 それでは、この他に特になければ、本日の議題はこれでおしまいにさせていただ きます。本日はどうもありがとうございました。 (照会先)厚生労働省医薬食品局血液対策課