10/04/01 第25回労働政策審議会議事録             第25回労働政策審議会 ●日時:平成22年4月1日(木) 15時30分〜 ●場所:厚生労働省省議室(9階) ●出席者 【公益 代表】今田委員、今野委員、岩村委員、大橋(勇)委員、勝委員、諏訪会長、        清家委員、林委員、宮本委員 【労働者代表】落合委員、加藤委員、河野委員、北田委員、斉藤委員、内藤委員、        南雲委員、西原委員、山浦委員、山口委員 【使用者代表】市川委員、伊藤委員、大橋(洋)委員、岡田委員、川本委員、吉川委員、        指田委員、三浦委員 【事 務 局】太田厚生労働審議官、岡崎総括審議官、村木総括審議官(国際担当)、        金子労働基準局長、森山職業安定局長、杉浦審議官(職業能力開発担当)、        伊岐雇用均等・児童家庭局長、中野政策統括官(労働担当)、        生田政策評価審議官、酒光労働政策担当参事官 ●議題 (1)雇用政策の戦略的な実施について (2)分科会及び部会における検討状況について (3)法案の国会審議状況について (4)その他 ●配付資料 資料1-1 雇用政策の戦略的な実施について(試案) 資料1-2 労働政策におけるPDCAサイクルの流れ(案) 資料2  分科会及び部会における審議状況について 資料2-1 (労働基準局関係) 資料2-2 (職業安定局関係) 資料2-3 (職業能力開発局関係) 資料3  第174会通常国会における法案審議状況 資料4  地域主権改革について 参考   労働政策審議会諮問・答申等一覧 ○諏訪会長 それでは定刻となりましたので、ただ今から第25回労働政策審議会を開催 いたします。本日は細川厚生労働副大臣にご出席いただいております。よろしくお願いい たします。それでは、議事を進めます。本日の議題は第(1)「雇用政策の戦略的な実施につ いて」、第(2)に「分科会及び部会における審議状況について」、第(3)に「法案の国会審議 状況について」、第(4)に「その他」となっております。本日は議事進行の都合から、議題 (3)(4)(1)(2)の順番で議事を進行したいと考えております。そこで最初に、議題の(3)「法 案の国会審議状況」につきまして事務局からご報告をお願いいたします。 ○酒光労働政策担当参事官 資料3に基づいてご説明いたします。第174回通常国会にお ける法案の審議状況について、I.雇用保険法の一部を改正する法律案、これは補正予算関 係ですけれども、2月3日に法律公布、施行しております。II.その他の雇用保険法の改正 の部分ですが、1月29日に通常国会に提出いたしまして、昨日成立を見たところです。III. 労働者派遣法の関係ですけれども3月29日に通常国会に提出したところです。 ○諏訪会長 続いてお願いいたします。  ○森山職業安定局長 それでは、私のほうから労働者派遣法案につきまして、閣議決定ま での経過等をご説明させていただきます。この法案は、3月19日に閣議決定をされました。 それまでの間、この内容につきましては労働政策審議会において、労使がぎりぎりの合意 をしたものであることを踏まえまして、厚生労働省におきましては、長妻大臣以下法案の 内容は、答申通りとするという方針で政府与党内での調整を続けてまいりましたが、調整 が完了せず予算非関連法案の提出期限である3月12日の閣議を遅延せざるを得なくなっ たわけです。まとまらないということでして、翌週3月17日に基本政策閣僚委員会が開催 されました。  これは与党党首クラスの話し合いの場ですが、その場においても長妻大臣のほうからは 内容は答申通りとすべきであるというご主張をいただきましたけれど、その場において無 期雇用派遣労働者について特定目的行為を可能とすること、ここの部分を削除することで 決着を図るようにとの裁定がございました。政府としては法案を提出することが急務であ る等の諸般の事情を考慮し政治判断により止むを得ず了承したということです。このこと により労働政策審議会における公労使三者の合意を変更したこと、また政策決定過程のあ り方に懸念を与えることになってしまった点については誠に申し訳なくお詫びを申し上げ る次第です。私どもとしては今後とも労働政策審議会の答申が公労使三者の合意であるこ とを十分に踏まえながら、これを尊重し今後は今回のようなことがないようにする所存で す。また、改正労働者派遣法案については速やかな国会成立を期しつつ、成立のあかつき には円滑な施行を図っていく所存です。今後ともよろしくお願いいたします。 ○諏訪会長 ありがとうございました。それではただいまの報告につきましてご意見、ご 質問等がございましたらご発言をお願いいたします。 ○伊藤委員 今ご説明をいただきましたが、我々審議会の答申は公労使の代表者が審議を 重ねた結果でございます。これを軽々しくご変更されることは、公労使三者構成の審議会 の存在意義の根幹にかかわる問題だと思います。審議会の答申を是非やはり、尊重してい ただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○川本委員 ただ今、今般の労働者派遣法の改正案及び党内の協議におきまして修正が加 わった経緯につきましてご説明をいただきました。私どもとしては今回の件は、残念なが ら大変遺憾であると申し上げざるを得ません。申すまでもなく、労働政策審議会は制度の 改正等に当たり当該改正がきちんと守られるよう、企業の現場を熟知した労使の代表委員 が真摯に話し合いを行い合意をしていくプロセスであり、非常に重要な役割を担っている ところです。労政審に参加する代表は、各団体内で議論を尽くして審議会に臨んでおりま すので、審議会の場でも労使間でぎりぎりの調整が行われております。それだけに、合意 されました中身の一言一句は労使にとって、非常に大きな意味をもっております。  実際に、今回の派遣法につきましても極めて短い期間の中で何とかまとめ上げたもので す。これが政治主導という形で簡単に修正されてしまうということは、労働政策の決定プ ロセスの安定性が大きく損なわれるものといえると思います。もちろんこの間、厚生労働 省として労使の合意を尊重すべく、精力的に与党に働きかけたことかと思いますけれども、 是非このようなことが二度とないよう重ねてお願いをいたしたいと思います。私からは以 上です。 ○南雲委員 私からも、労働者派遣法改正と三者構成主義の尊重についてご意見申し上げ たいと思います。「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就労条件の整備等 に関する法律等案の一部を改正する法律案」が閣議決定されたことについては、私たちが 求めて参りました労働者派遣法改正法案の成立への確実な前進として受け止め、早期の成 立を強く望んでおります。私たちはかねてより、労働現場の実態を踏まえながら、公労使 三者が厳しい議論を尽くした労働政策審議会の答申を尊重すべきであると主張して参りま した。そうした意味では、法案が答申の内容から修正されたことは私たちの本意ではなく、 政府の政策決定過程における労働政策審議会の位置づけについて課題を残すことになりま した。今後、再度このようなことが起こらないことを望んでおります。  政府には既に先進諸国で国際標準とされているILOの三者構成主義を踏まえ、労働政策 審議会の意見を尊重するよう強く求めたいと思います。以上です。 ○諏訪会長 他に、ご意見はございますでしょうか。 ○清家委員 御丁寧なご説明ありがとうごいました。私も、労働者派遣法の改正について 主に担当いたしました労働力需給制度部会の部会長として一言発言させていただきたいと 思います。まず今、局長からもご説明ございましたように、厚生労働省におかれましては、 私どもの審議会の答申を最後までしっかりと主張していただいたことについてはその労を 多とするものでございます。しかしながら、今回このような形で審議会の決定が、いわゆ る政治決定という形で一部覆ることになった点については今、使用者側労働者側双方の委 員からもお話がありましたように、私としてもこれは大変遺憾なことだと思っております。 特に、三者構成の審議会は、今、両側の話からもございましたように労使が双方で真摯な 議論を尽くし、そしてぎりぎりのところでこれならば労働者のためになる、あるいはこれ ならば使用者側としてもきちんと守れるという線でまとめられるものであり、だからこそ、 これまでも日本における雇用ルールというのはもちろん、日本人が本来もっている遵法精 神というのもございますけれども、そのような形で決められたゆえに、しっかりと遵守さ れてきたというところもあるわけです。また、これは言うまでもなく労使がしっかりと議 論をして雇用のルールを決める、あるいは雇用政策を決めるというのはご承知のとおり、 ILO88号条約の精神に基づいて構築された仕組みでもあるわけでございまして、私は政府 にはそれをしっかりと遵守する義務もあると思っております。したがって、今回のことに ついては、もちろん法律が速やかに成立するために止むを得なかったこととはいえ、二度 とこのようなことがないように、私も強くお願いをしたいと。あるいは、厚生労働省にお かれましても政府の中でそのような主張を改めて強く主張していただきたいと思っており ます。以上です。  ○諏訪会長 他にご意見、ご質問ございますでしょうか。それでは、ただいまの報告につ きましては、今回の審議会が開かれます前に公労使それぞれの委員から意見書を取りまと めるべきであるとの要請がございました。そこで今回、事務局にも協力していただきまし て、労使と調整をした上で文案を作成いたしております。そこで、ただいまから配布して いただきます。それでは、事務局から読み上げていただきたいと思います。 ○酒光労働政策担当参事官 読み上げさせていただきます。  労働政策審議会による答申等の尊重に関する意見。  本審議会は、標記について、厚生労働省設置法第9条第1項第3号の規定に基づき、下 記のとおり、意見を申し述べる。貴職におかれては、これを踏まえ、労働政策審議会の答 申等について、適切に対処されたい。  記。  昨年12月28日、本審議会が、厚生労働大臣に答申した「今後の労働者派遣制度の在り 方について」を踏まえた「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件 の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案」の要綱について、本審議会は、本年2 月17日に厚生労働大臣から諮問を受け、同24日に、全会一致で答申した。  しかしながら、今般、政府は、この法律案について、3月19日に本審議会の答申とは異 なる形で閣議決定を行い、3月29日に、国会に提出した。このような取扱いは、本審議会 の答申が、公労使三者により真摯な議論を積み重ね、ぎりぎりの調整を行った結果である ことにかんがみれば、遺憾である。  本審議会が雇用・労働政策の企画立案に不可欠であり、ILOの三者構成原則に基づく非 常に重要な意義を有するものであることを踏まえ、本審議会は、政府に対し、労働政策審 議会の意見を尊重するよう、強く求める。以上です。  ○諏訪会長 それでは、このような文面で意見を申し述べるということにさせていただく ことでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○諏訪会長 ありがとうございます。それでは、当審議会といたしましては厚生労働大臣 に対し意見を提出し適切な対応を求めたいと存じます。 ○細川厚生労働副大臣 私のほうから今、ご意見をいただいた中でそれにつきましてご挨 拶を申し上げたいと思います。労政審の委員の先生方には日頃から労働行政政策につきま して、いろいろな形で真摯にご検討をいただき、厚生労働省、政府の政策に大変なご尽力 をいただいていますことを心から御礼を申し上げます。この審議会の答申を尊重して、そ れを国会に提案をして法律にしていくという長い歴史の中でも、今回、労政審の中でご議 論をいただき、おまとめをいただきました内容を一部変更をすることになりましたことは 私どもとしても、大変申し訳なく思っています。連立政権という中で、3党の中で合意が いたらずに厚生労働省としましては、委員の皆様方の結論を最大限尊重する、修正はしな いということで最後まで頑張ったところですけれども、最終的に基本政策閣僚委員会の中 で事前面接についてのところが削除される結論になりました。  長妻大臣も本当に最後まで変更することにつきましては、認められないということで頑 張ってまいりましたけれども、連立政権ということ、また、法案を早期に成立させなけれ ばいけないという事情などもありまして、厚生労働省としてもそのことを受け入れたとこ ろです。本当に労使の皆さんのぎりぎりの話し合いでの内容、さらには公益の先生方にも 中に入っていただいて、本当にぎりぎりの内容ということで諮問いただいたことを変更し たことについて重ねて申し訳なく思っています。今後、このようなことは一切ないように 私どもとしては公労使の三者構成での審議会の皆様方の結論を最大限尊重して頑張ってい くところです。ILOの条約にもとるような今回の変更ですから、国際的にも日本という国 が公労使三者で話し合って労働行政をしっかりやっているのだという国際的な信頼も勝ち 取れるような運営をしてまいりたいと思います。  今日、いただきましたご意見につきましてはしっかりと受け止めまして、二度とこのよ うなことがないようにやってまいりたいと思っています。言葉が少し足りないところもあ りますけれども、今日の委員の皆様方の審議会のご意見も慎んでお受けしたいと思います。 以上です。 ○諏訪会長 ご発言どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。  次の議題に移ります。議題(4)「その他」として最近の地域主権改革の動きにつきまして 事務局からご報告をお願いします。 ○酒光労働政策担当参事官 資料4に基づきましてご説明を申し上げます。  地域主権改革についてです。1頁目ですけれども、地域主権戦略会議が設けられていま す。議長は鳩山総理です。現在のところ3回会議を開いています。2頁目をご覧いただき ますと第2回目の戦略会議でそれぞれ検討課題と担当主査が決まっています。義務付け・ 枠付け等、基礎自治体等、一括交付金化等、出先機関等です。まだ具体的な内容について はそれほど多くは議論されていませんけれども、労働関係ですと大きな議題になりそうな ものは出先機関の抜本的改革ではないかと思います。3頁目ですが、その後の地域主権戦 略会議のスケジュールです。第2回目が3月3日に行われています。昨日、第3回目の会 議が行われています。そのあと議論がされまして、第4回、第5回と開かれます。5月の 戦略会議で出先機関改革の議論がされるのではなかろうかと考えています。最終的には、6 月に戦略大綱がまとまるというものです。  続きまして4頁目ですが、これと並行しまして全国知事会のほうで国の出先機関原則廃 止プロジェクトチームを設けて議論が進められています。リーダーは埼玉県の上田知事で す。ここのプロジェクトチームにおきましては議論が進んでいまして3月23日に中間報告 が出ています。5頁以下です。6頁の下のアンダーラインの部分ですが、これは知事会とい うことで直接地域主権戦略会議とは組織上の関係があるわけではございませんが、ここで の議論につきましては、地域主権戦略会議の取りまとめに向けた議論に対して積極的に働 きかけていくというようになっています。  特に労働局関係ですけれども、8頁と9頁をご覧ください。基本的な考え方として、国 の出先機関の事務の仕分けを行います。仕分けといいますのは、具体的には地方に移管す るか、廃止にするか、国に残すかの3つに仕分けをするというものです。ここにあります ように、企画立案事務については、本省所管事務であっても、地方に移管される事務に関 わる企画立案部分は地方に移管するということが書かれています。労働行政の例で職業安 定行政、労働行政について全国的な統一基準の設定を国に残すが、その他の立案機能は地 方に移管すべきである。都道府県の労働局につきましては、事務権限の仕分けをしました 結果、地方に移管する事務が20事務、大部分の事務でして、一部分廃止・民営化をする事 務が2事務、国に残す事務が0ということで労働関係の事務はすべて地方に移すといった ような提言になっています。具体的な事務ごとの仕分けの状況は10頁です。ちなみに、当 審議会においては平成21年2月に地方分権改革に関する意見を取りまとめてございます ので11頁以下に添付しています。以上です。 ○諏訪会長 ありがとうございました。ただいまの報告につきましてご意見、ご質問ござ いましたらお願いします。 ○内藤委員 前回にも申し上げたかと思いますが、我々は地方分権すべてに反対するもの ではありません。しかし、現在、政府で検討が進められている労働行政の出先機関の改革 につきましては大変懸念をいたしております。今、ご説明がありました全国知事会からは 私たちの見解とは異なる意見が出ているようですが、政府におかれましては今ご紹介があ りました昨年2月5日に労働政策審議会の名の下に取りまとめた地方分権改革に関する意 見を十二分に踏まえ、国民の目線での検討をお願いしたいと思います。ここに記載してい ますけれども、ついては改めて以下の2点を申し上げておきたいと思います。  1つは、ハローワークは地方移管すべきではなく、引き続き国による全国ネットワーク の推進体制を堅持すべきであるということ。もう1つは労働基準行政、雇用均等行政、あ るいは個別労働紛争解決等についてですが、これらはいずれも全国統一的な基準と対応が できることが大前提であると思っています。いずれにしても、雇用者が就業者の8割を占 める雇用社会の日本にありましては、国民の安心・安定とはすなわち、雇用労働者の安心・ 安定を図ることにあります。労働政策は、人や雇用という、いわゆる国の根幹に係わるこ とでして、きちんとした慎重な議論が必要です。事業仕分け的な手法などで拙速な結論に 至らないようにしていただくようにお願いを申し上げたいと思います。以上です。 ○川本委員 この出先機関改革の問題ですけれども、ハローワークの地方移管につきまし ては、私どももこれまで主張してきましたとおり、ハローワークの機能は雇用のセーフテ ィネットであり、今後とも無料、かつ、全国的な職業紹介組織を維持していくべきだと考 えています。また、労働基準行政、雇用均等行政等につきまして申しますと、労働行政の 基準の設定及び履行確保のための指導監督等においては、全国的な統一性が求められるこ とがいちばん重要です。したがいまして、地方移管の是非はどのように統一性を担保する のかという視点から議論すべき問題であると考えています。以上です。 ○吉川委員 地方分権改革につきましては、日本商工会議所、東京商工会議所ともに推進 すべきという立場でありまして、原則として地方にできることは地方に移管すべきである と考えています。この度、各地の商工会議所からハローワークとか労働局、監督署などの 出先機関の地方移管について意見を聞きました。その意見を少し述べさせていただきたい と思いますが、都道府県で労働行政に差異が生じたり、あるいは利便性や機動性が損なわ れたりすることが懸念されるという意見。また、求人や就職情報の斡旋は全国的なネット ワークを駆使して対応にあたるべきという声が寄せられています。一方、全国一律に公平、 公正な労働行政が確保されるのであれば組織に囚われるべきではないという意見。また、 昨今、インターネットが発達しておりますので、窓口の集約となるべき効率的な運営を図 るべきだという意見。また、利便性や機密性、安全等が保持できるのであれば組織に囚わ れるべきではないという意見も挙がっています。したがって、労働局や監督署、ハローワ ークなどの出先機関の改革について事務が公平、迅速に処理されるかどうかという観点も 含めまして、労働政策審議会の場で検討をもう少し重ねていくべきであると考えています。 以上です。 ○諏訪会長 ほかにご意見、ご質問ございますか。 ○大橋(勇)委員 私は、地方移管についていろいろと疑問を持っています。1つは、前 回の審議会でもお話しましたけれども、公共職業安定所というのは、不況期や、あるいは 長期の失業者に対して大変重要なサービスを提供しているという意味でセーフティネット の役割を行っていると思います。それが地方分権にしたときに地方の財務、あるいは人力 に差があれば格差が発生してくるということで、セーフティネットに大きな格差があって いいのかというのが、ひとつ私の疑問です。いくつかあるのですけれども、今日はもう1 つだけ指摘させていただきます。国が行うべきか、あるいは地方が行うべきかというのは 手段の問題であって目的ではないはずです。目的は、日本全国の職業紹介のシステムをど ういうように構築するかということが非常に重要な問題で、あくまでも国か地方かという のは手段の問題です。ところが、こういう枠組みでもう既に地域主権戦略会議ということ になりますと、常に地方分権化が大きな目的になっているという前提のもとにいろいろな 議論がなされていきますので、本来あるべき職業紹介のシステムについて十分に議論をし ていただきたいと思うのですけれども、非常に短期間のうちに結論が出そうで、大変危惧 しています。しかも、地方分権と言われますけれども、地方政府も現在でも職業紹介はや ってもいいのです。そういう点では、人・物・金に対しては地方政府はおねだりというか、 ちょうだいという話の構図になってくると本来の議論のあるべき姿が少しゆがめられてき てしまっているということで大変私は危惧しています。以上です。 ○河野委員 私も先ほど内藤委員が申し上げたような考え方ですが、今、非正規の方が携 帯電話でワークルールをチェックできるシステムを連合がやっていますが、立ち上げてか ら2か月か3か月ぐらいで11万件のアクセスがあり、その8割が労働基準法違反です。も う1つ申し上げたいのは、個別労使紛争が急増している。昨今、開かれている労働審判の 傾向を見ましても、労働基準法違反、労働安全衛生法違反が全体の8割以上になっている。 国が定めている法律が十分運用されていない実態を考えますと、労働行政そのものは国が 責任を持って行うべきではないかと思っています。したがいまして、窓口業務とかを単に そういったことではなくて、現在の実情から考えていくと、まさしく労働行政は国がすべ ての責任を持って行うべきではないかと思っています。そのことを申し上げたいと思いま す。 ○岩村委員 労働基準行政、労災保険のそれぞれの分科会、部会を担当している者として、 この件について少し発言をさせていただきたいと思います。私も、先ほど大橋(勇)委員 がおっしゃっていたことと同感でありまして、この議論が国の出先機関の整理というとこ ろからそもそも始まってしまっていることに対して非常に大きな疑問を持っています。今 日の資料を拝見しますと、労働基準行政、労災保険行政などについては、国が基準を統一 的に定める。しかし、他方で地域の雇用や就労ニーズに応じたために労働保険、労働基準 も含めて地方に移管するという整理になっています。しかしながら、いちばん大きな疑問 はそもそも労働保険や労働基準が地域の雇用、就労ニーズに応じたようなものとして行う べきものかということが、まさに一番の大きな問題だというふうに思います。今日の資料 の8頁は、確かに「全国統一的な基準の設定は国に残す」と書かれていますが、現在の地 方自治法の法制を前提にしますと地方に権限を委譲してしまうと国は助言的な通達しかで きない。通達を出しても助言的な意味しかなくて、都道府県等の地方公共団体を拘束でき ない構造になっています。基準そのものが極めて詳細で、かつ、解釈の余地がないような ものであればいいのですけれども、現実にはそういったことがほとんど不可能でありまし て、皆さんご承知のように労働基準行政、労災保険についてもその多くが、現実には通達 によって解釈運用が行われていることになります。そうしますと、結局基準自体は国が設 定しても、その実際の運用解釈は各都道府県が自立的に行うという結果になり、このこと は結局首長さんの意向によって、それぞれの県でバラバラな運用・適用が行われるという ことに帰着するだろうと思います。現行の地方自治法を前提とする限り、地方分権化した 場合に労働基準行政、労働保険、労働安全衛生などの運用が全国一律に行われる保証は法 制上はまったくないだろうと私は思っています。そういったことを考えますと、今回の地 方主権の議論、特に国の出先機関の整備に関して労働基準行政、あるいは労働保険行政も それに該当して、地方に委ねればいいというのは私は非常に問題があり、慎重に検討すべ きだと思っています。  もう1点、つけ加えますと賃金その他の労働条件など統計の実施も廃止、あるいは民営 化ということになっていて、これはどちらなのかわからないのですが、政策の立案にとっ ては統計は不可欠で、それを廃止という項目の中に民営化するのかどうかよくわかりませ んが、そこに挙げること自体が私にはまったく理解ができません。以上です。 ○林委員 基準行政と同様、均等行政も全国一律の法律に基づいて実施されてきているわ けですけれども、地方移管になりますと、均等行政と結して、地方の実情に合わせとか地 方の実態に則してという要素はほとんどないわけで、やはり全国一律になされること。地 方自治体の力によって、政策の浸透等の差が設けられるということは絶対避けるべきであ りまして、そういう意味で非常に地方に移管されることについてはなじまないものである と思っています。岩村先生もおっしゃいましたように地方に移管するというのは、出先機 関の廃止ということが先に立っていますけれども、一つひとつの行政内容の検討を十分さ れて決定されていくべきものだと強く思います。その意味で慎重な検討をしていただきた いと思っています。 ○諏訪会長 この件につきまして、ほかにご意見、ご質問よろしいですか。今、公労使の 各委員の皆さまから非常に強いご意見がありましたので、昨年2月にも意見書を一度取り まとめたところですが、今回の審議会の前に労働者代表側から再度意見書を取りまとめる べきではないかという要請もありましたので、事務局にも協力していただきまして、労使 各側と調整をした上で文案を作成しています。それを今から配付します。先ほどと同様に 事務局から意見書を読み上げていただきます。 ○酒光労働政策担当参事官 読み上げます。  出先機関改革に関する意見。  本審議会は、標記について、厚生労働省設置法第9条第1項第3号の規定に基づき、下 記のとおり、意見を申し述べる。貴職におかれては、下記を踏まえ、出先機関改革の推進 に当たり、適切に対処されたい。  記。  現在、政府は地域主権改革の一環として出先機関の抜本的改革に取り組んでいる。  これに関し、去る3月23日には、全国知事会に設置された国の出先機関原則廃止プロジ ェクトチームは、労働局並びに労働基準監督署及びハローワークを地方移管すべき旨を示 したとりまとめを行った。今後、内閣府に設置された地域主権戦略会議において、出先機 関の抜本的改革について検討するとされているが、これらの点についての、当審議会の意 見は以下のとおりである。  1.ハローワークの地方移管について。  ハローワークの地方移管に関する当審議会の意見は、平成21年2月5日付け「地方分権 改革に関する意見」に記したとおりであり、改めて以下のことを確認する。  ハローワークは、憲法第27条に基づく勤労権を保障するため、ナショナルミニマムとし ての職業紹介、雇用保険、雇用対策を全国ネットワークにより一体的に実施しており、障 害者、母子家庭の母、年長フリーター、中高年齢者などの就職困難な人に対する雇用の最 後のセーフティネットである。ハローワークの業務は、以下のような理由から、都道府県 に移管することは適当でなく、国が責任を持って直接実施する必要があり、これは先進諸 国における国際標準である。  [1] 都道府県域を超えた労働者の就職への対応や、都道府県域に限定されない企業の人 材確保ニーズへの対応を効果的・効率的に実施する必要があること。  [2] 雇用状況の悪化や大型倒産に対し、迅速・機動的な対応を行い、離職者の再就職を 進め、失業率の急激な悪化を防ぐ必要があること。  [3] 雇用保険については、雇用失業情勢が時期や地域等により大きく異なるため、保険 集団を可能な限り大きくしてリスク分散を図らないと、保険制度として成り立たないこと。  [4] 地方移管は我が国の批准するILO第88号条約に明白に違反すること。  したがって、国の様々な雇用対策の基盤であるハローワークは地方移管すべきでなく、 引き続き、国による全国ネットワークのサービス推進体制を堅持すべきである。  一方、地方自治体が独自に地域の実情に応じた雇用対策をこれまで以上に積極的に進め ることは望ましいことであり、国と地方自治体が一体となって、その地域における雇用対 策を一層強化する必要がある。また、我が国のハローワークは主要先進国と比べても少な い組織・人員により効率的に運営しているところであるが、さらに、ハローワーク自身も 雇用状況の変化に応じて、業務内容を適切に見直し、機能の強化や効率的な運営を心がけ るべきである。  2.労働基準行政、雇用均等行政、個別労働紛争対策等について。  労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法、男女雇用機会均等法、労働者派 遣法等の基準の設定及び履行確保のための監督や指導、労災保険における認定業務は、現 在国及び労働局及び労働基準監督署において直接実施している。このような業務について は、地域の状況等によらず全国統一的に労働者を保護する必要があること、全国的な問題 事案に一斉に対応する必要があること、公正競争の確保の観点からも労働関係の規制の適 用には厳密な全国統一性が求められること等から、国の責任によりそれらを担保する形で 実施される必要がある。  また、個別労働紛争対策については、国は労働基準監督署をはじめ労働法令の施行機関 を有し、都道府県は三者構成の労働委員会を有しており、国と都道府県のそれぞれに特長 があるので、現在の複線型の仕組みを活かし、両者がそれぞれの特長を最大限に発揮しつ つ連携協力することが重要である。  なお、政府において、事業仕分け的な手法も用いて出先機関の仕分けを行うことを検討 しているとも聞くが、労働局並びに労働基準監督署及びハローワークに係る出先機関改革 は、労働政策の実施体制の在り方そのものにもかかわるものであり、労働政策に関する重 要事項として当審議会において審議されるべきものである。今後、政府においては、この ことを踏まえた適切な対処を要望する。以上です。 ○諏訪会長 ありがとうございました。この意見書をもちまして当審議会の意見とすると いうことでよろしいですか。                  (異議なし) ○諏訪会長 ありがとうございました。当審議会として厚生労働大臣に対し意見を提出し、 地域主権改革の推進にあたり適切な対応を求めたいと存じます。 ○細川厚生労働副大臣 ただいま出先機関改革に関するご意見をいただきました。政府で は、地域主権改革ということで、今進めているところでありますけれども、しかし、地方 に移管すべきもの、あるいは地方でやるのはそれが妥当だというものと、しかし、地方で はなくて国がしっかりやらなければいけないということが当然あるわけでして、今委員の 皆様方からそれぞれご意見をいただきました。また、意見書によるご意見がされました。 私どもとしては、労働政策審議会の総意として、このご意見を賜りまして、その方向でし っかり対処してまいりたいと思います。今後ともご協力、ご支援よろしくお願い申し上げ ます。 ○諏訪会長 どうもありがとうございました。ここで細川副大臣は所用のためにご退席な さいます。 ○細川厚生労働副大臣 本日は、どうもありがとうございました。 ○諏訪会長 次の議題に入ります。議題(1)「雇用政策の戦略的な実施について」事務局か らご説明お願いします。 ○酒光労働政策担当参事官 資料1-1及び1-2に基づきましてご説明申し上げます。その 前に経緯についてご報告申し上げます。昨年12月、総理が主導されまして、労働界、産業 界をはじめ各界の有識者のご参加をいただきまして、雇用戦略会議を行っていますが、第 2回雇用戦略会議が昨年末行われています。ここにおきまして、雇用戦略について数値目 標を設定して具体策を明記するとともにPDCAサイクルに則って運用実態を検証、改善する 必要があるのではないかというご意見がございました。昨年の暮れに閣議決定されました 新成長戦略の基本方針におきましても雇用戦略対応を踏まえて、雇用人材戦略について 2020年までの具体的な目標を定めるということとされたところです。このような経緯を踏 まえまして、昨年24日の雇用政策研究会において、樋口座長より資料1-1にありますよう な雇用政策の戦略的な実施についての試案をご報告いただいたところです。この試案につ いて簡単にご説明申し上げます。  資料1-1「雇用政策の戦略的な実施」です。いちばん最初にイントロがありますが、趣 旨が書いてあります。少子高齢化が進む中で雇用の「量」の拡大と「質」の向上を図って、 誰もが意欲と能力を発揮できる働きやすい高質な労働市場を作っていくことが重要である ということ。今、簡単に概略を申し上げたような形で政府が中期目標と政策パッケージを 労使の意見を踏まえながら設定いたしまして、その運用実積を毎年検証、改善していくと いうPDCAサイクルに取り組む必要があるということです。  特に雇用政策の戦略的な実施ということで、3つの柱を挙げていますが、1)は、ワーク・ ライフ・バランスの推進によって働きやすい環境を作っていく。2)は、プラットフォーム としての科学・技術の発展によって新しい産業・雇用を作っていく。あるいは、生活に密 着したニーズを満たす地域再生のための雇用を作っていくこと。3)は、労働力の需要と供 給の橋渡しを行うための就職支援を強化していって、外部労働市場の整備を図っていくこ と。この3つの柱だろうということをおっしゃっておられます。  このあと、目標がいろいろとありますけれども、これらの目標につきましては、新成長 戦略の基本方針に2020年度までの平均で、成長率について名目3%、実質2%、GDPが650 兆円程度、失業率も3%台への低下という目標を掲げられておりまして、こういったもの を踏まえたものであるということでありますので、雇用政策の実施の前提としまして政府 としてもこの実現に向けて適切な経済対策を実施していく必要があるとしています。  個々の各論ですが、1.ワーク・ライフ・バランスの推進等による労働市場への参加促進 です。ここにありますようにワーク・ライフ・バランスやディーセント・ワークといった ものの推進によりまして、「出番」と「居場所」のある社会を実現するということです。こ れによりまして、2020年の20〜64歳の就業率、人口に対する就業者の割合ですが、これ を80%。現在よりも5ポイントぐらい引き上げる。15歳以上の就業率については57%で これは現在と同じですけれども、年齢別の就業率は高齢化がこの10年で進みますので、何 もしない状態ですと53.4%になると見込んでいますので、3%以上引き上げるというよう な内容です。このため、特に若者、女性、高齢者、障害者の就業環境を整備して就業率の 向上を図るということです。併せて税・社会保障制度について、給付付き税額控除の導入 の検討を踏まえて、働くことが損にならないようにしていくことが大事であると述べられ ています。  さらに、若者、女性、高齢者、障害者について(1)から(4)まで掲げています。若者につ いては、フリーターの正規雇用化等を推進するということで2020年のフリーター数をピー ク時の約半分程度の124万人にするということです。併せてキャリア教育もきちんとやっ ていく必要があると述べられています。ニートにつきましては、現在、地域若者サポート ステーション事業等でその減少に取り組んでいますが、サポートステーション事業による 就職等進路決定者数をこの10年で10万人にするという目標です。その他に合宿型若者自 立プログラム、引きこもり対策等をきちんとやっていく必要がある。併せてジョブ・カー ドの取得促進や日本版NVQ制度への発展を図ることが述べられています。これは、あとで もう少し詳しく述べられます。これらによりまして、20〜34歳の若者の就業率は77%。現 在よりも3.3ポイント以上引き上げるという目標です。  女性につきましては、継続就業を促進するということは保育サービスですとか育児・介 護休業法の施行等に取り組んでいくということです。これによりまして、第1子出産前後 の女性の継続就業率を55%。現在は38%ですが、今、こういった環境が整っていないで辞 める人が全部就業しますと大体55%ぐらいになるということで55%の就業率を目指して いくということです。男女の固定的な役割分担を前提とする税・社会保障制度を見直すと か、あるいは男性の育児休業の取得を促進するとか、そういったことを進めることにより まして、男性の育児休業の取得率を2020年に13%。大体年1%ずつ引き上げていくという 形です。併せて雇用機会均等対策の推進、マザーズハローワーク事業の拡充等によりまし て、25歳〜44歳の女性の就業率を2020年に73%。7ポイント引き上げるという目標を立 てていまして、これによりM字カーブの解消を図るとしています。  3番目は、高齢者の就業促進です。高齢者の雇用確保措置の着実な実施等により、65歳 までの雇用の確保、意欲と能力があれば年齢に関わりなく働ける環境の整備等を進めてい くということです。これらによりまして、60歳〜64歳の就業率は、2020年に63%。現在、 57%ですので6ポイント引き上げるという目標を立てています。  障害者につきましては法定雇用率の達成、障害者権利条約に合わせた障害者雇用促進法 の見直し検討を進めるということで障害者の雇用率、現在の法定雇用率と同様1.8%とし ていくというものです。  大きな2.「雇用創出」ということです。経済のグローバル化が進展していく中で、雇用 を作っていくことが大事だということで、科学・技術の発展、学校教育・職業教育との連 携による人材の育成を図っていくということ。併せてNPOとか社会的企業など「新しい公 共」による地域における雇用創造を推進していくということです。それと併せまして、現 在行っているいろいろな雇用創出事業を進めていくということが書かれています。  大きな3.「職業能力開発の推進等による就職の支援」ということです。(1)は、ジョブ・ カード制度の発展に向けた取組ということで、雇用の創出を図るとともに、労働市場にお ける需要と供給の円滑な橋渡しを行うため、職業紹介機能を強化するとともに、職業能力 開発の推進やセーフティネットの見直しを図る。そのうちの職業能力開発のほうについて はジョブ・カード制度の発展ということがあります。ジョブ・カード制度を普及させて就 職に当たり外部における能力が評価されるようにしていくということです。このため、実 践的な職業訓練の機会の提供ですとか公共職業訓練の受講者等や学生等にも取得を勧めて いくということで、2020年度の累計で300万人の方がジョブ・カードを取得できるように していこう。併せて能力評価基準の策定等によりまして、日本型NVQへの発展に向け取り 組んでいくべきであるということです。  (2)ですが、公共職業訓練ということで、成長分野ですとものづくり分野を中心に地域の ニーズに合った訓練を推進していくということで就職率、施設内訓練で80%、委託訓練で 65%の就職率を目指していくべきである。  (3)は、職業生涯における自発的な能力開発ということで、自発的な能力開発に対するい ろいろな支援を推進していくことにより、自己啓発を行っている労働者の割合は2020年は 正社員は70%、非正社員は50%にしていくべきであるとしています。  (4)は、求職者支援制度の創設ということで、現在行っています緊急人材育成支援事業の 訓練コースをきちんと設定していくということと併せて2011年度に「求職者支援制度」を 創設するということです。これにより、生活の安定を図りながら職業能力開発と適切な職 業紹介を進めていくというものです。  (5)は、雇用保険の適用範囲の拡大、あるいは国庫負担の原則復帰ということで成立した 法案の内容です。  (6)は、その他の第二セーフティネットということで住宅手当制度の拡充、恒久化を図っ ていくとともに生活保護の受給者の就労支援を進めていくということです。  4.ですが、先ほどの就業措置のところでもワーク・ライフ・バランスやディーセント・ ワークということが書かれていましたけれども、それをさらに詳細に記したところです。  (1)は均等・均衡待遇の推進等ということでパートとか有期契約労働者の均等・均衡待遇 の確保、正社員転換の推進を図っていく。有期労働契約に関しましては、研究会で今検討 を進めていますので、それを踏まえた必要な対応を図っていくということです。派遣法に つきましても改正法の成立後に着実な実施を図っていく。  (2)、最低賃金ですが、生活保護と地域別最低賃金の乖離の解消を進める。あるいは、現 在、課題等の調査・検討を進めている、これをきちんとやっていく。景気回復が大きな鍵 となりますので、中小企業の生産性向上支援等について関係省庁でいろいろな措置をして いくことが大事であるということが書かれています。  (3)が、労働時間短縮の促進等ということで年次有給休暇の取得率について、現在47.4% ですが、これを70%にしていくということです。これと併せて働く人の希望によっては、 柔軟な働き方を進めるなどによりましてワーク・ライフ・バランスの実現に向けた働き方 の見直しを促進する。  もう1つは、健康にかかわるものとして長時間労働がありますので、この抑制を図りま して、60時間以上働いている方は5割削減する。半減するということです。  (4)は育児休業の取得促進ということで、改正育児・介護休業法の着実な施行ですとか、 育児休業・短時間勤務等、利用しやすい職場環境の整備等を図っていくというものです。  (5)は短時間正社員制度ですとか、適切な労働条件のテレワークの普及を図っていく。  (6)は労働安全衛生対策ということで、労災ですとか、メンタルヘルス対策等が書かれて います。こうしたものをやりまして、労災のない社会を目指しながら、2020年度までに労 災の発生件数を30%引き下げる。それから2020年度まで必要な労働者がすべてメンタル ヘルスが受けられるような職場にしていく。あるいは受動喫煙のない職場にしていくとい うものです。  最後ですが、労働関係法令の履行確保、個別労働紛争の予防と解決に向けて取り組むと いうことが書かれております。  その次に書かれていますのは、数字の部分をとりまとめたものです。7頁にありますの は、その目標を算出するためのデータの根拠といいますか、出所が書かれています。以上、 資料1-1は、樋口座長が雇用政策研究会で、今後の雇用戦略を作る上での試案として出さ れたものですが、これを踏まえまして厚生労働省としては、PDCAサイクルに基づく政策実 施をしていってはどうかと考えております。資料の1-2をご覧いただければと思います。  資料1-2にPlan、Do、Check、ActionのPCDAの絵がございます。Planが2カ所ありまし て、大きいほうの楕円形ですが、今いただきました樋口先生の試案を参考にしながら、政 府として戦略案、特に厚生労働省としての戦略案を作ってまいりたいと思っています。具 体的に中長期の目標、10年先の目標と年度目標を作りまして、これらを労政審の各分科会 にご相談をさせていただきたいと思っております。これは今月中ぐらいにやれればと思っ ています。  この中長期の目標が策定されて単年度の目標が出来ますと、施策が実施されます。この 施策の実施結果、翌年の5月ぐらいを目処に、労働政策審議会の本審の下に新たに点検評 価部会を作っていただいて、そこで政府による施策の実施状況の報告をいたしますので、 その点検評価部会で評価をしていただければと考えております。  この評価の結果を踏まえまして、 施策目標の見直し、あるいは施策自身の見直し、多分 いろいろとあると思いますので、厚生労働省で検討をし、重要事項については、各分科会 でご議論をいただくということでございます。また、こういったActionの状況を踏まえて、 全部の目標を策定していくということで、1年間を回していくというPDCAの流れになって ございます。  3頁、労働政策審議に係る点検評価部会の設置ですが、今の考え方に基づきまして、労 働政策審議会の本審の下に点検評価部会を置いていただければということです。趣旨、取 組は今ご説明をした内容のことが書かれております。3番目の点検評価部会の構成員につ きましては、労使公益の三者5名ずつぐらいで構成されるのがよろしいのではないかと思 っております。  スケジュールについては4頁(別紙)で書かれているとおりです。先ほど申し上げたの を若干細かく書いたスケジュールが書いてあります。22年度は初年度ということで、23 年度以降については23年度と書いてあるものが1年間のスケジュールとして考えている ものでございます。  4頁の下に注)に書かれていますが、点検評価部会の意見評価についての取扱いにつき ましては、改善策を新年度の施策に取り入れて大臣に報告をいたすとともに、点検評価部 会の審議状況は労政審の本審にも報告をしたいと考えております。なお、5頁目は部会を 設置する場合におきましての規定がありますが、会長が必要と認めるときに調査審議をす るための部会を置くことができるということなどが書いてございます。以上でございます。 ○諏訪会長 ありがとうございました。それでは今ご説明のありました点につきまして、 ご意見あるいはご質問等がございましたら、ご発言をお願いしたいと思います。 ○落合委員 ありがとうございます。この試案についてですが、これは政府が年末に新成 長戦略を押し出し、特に「雇用・人材」を「成長のプラットフォーム」に位置づけたこと は、非常に歓迎をしたいと思います。また、こうした場において、雇用の量のみならず、 雇用の質について論議することは大変意義あることだと思っております。今回提示された この試案については、全体としてこれまで連合が求めてきた政策課題が盛り込まれており、 おおむね評価できるのではないかと思っています。今、連合も雇用・労働に関する基本的 な考え方のとりまとめ作業を進めておりますので、その都度また試案を踏まえながら、こ の意見を紹介してみたいと思っています。  ついては、1つ要望があるわけですが、現実の今の雇用の状況といったものが、はっき り申し上げて、働き過ぎの人と働けない人という二重構造、正規と非正規の二重構造、大 手、中堅と中小企業の二重構造、そして男性と女性の二重構造があるわけですが、この構 造の大半の要因を占めるのは、労働時間だろうと思っております。もう労働時間は相当論 議したわけですが、労働時間の要因が相当あるだろう。しかも、ここにも謳われています が、週労働時間60時間以上の雇用者を減らそうとかあるいは有給休暇を取ろうという部分、 部分で労働時間が縮まるものではないというのは、もう実証済みだと私どもは思っていま す。そういった意味では、これをパッケージにして、そして、実労働時間をどうするのだ ということに是非メスを入れていただきたいと思っているわけであります。  そして、ここに書いてある内容、戦略的に実施するに当たっては、特に中小企業の労働 者が対象になり得るかどうかということも検証しながら進めていただきたいなと思います。 それでよろしくお願いいたします。 ○川本委員 ただいまご説明のありました資料の1-1、1-2について、質問と意見を申し上 げたいと思います。我が国の進むべき理想の姿を描いて、目標を定めて、着実に施策を実 行していくことが重要なことだと思っているところでございます。今回、雇用戦略対応や 新成長戦略を受けまして、労働政策審議会の中に目標設定と、それから、評価の仕組みを 導入するということで、大枠では理解はいたしたところではございますが、いくつか確認 したい事項がございます。  まず、掲げられている目標については、あくまでも行政が施策を展開するための目標で あって、個別の労使の取組を束縛するもの、あるいは強制するものではないということを 確認いたしておきたいと思います。また、目標の中には行政が主体的に取り組むことで実 現が可能となるもの。そういう目標から労使の意識改革が求められるもの。あるいは景気 変動に結果が非常に左右されやすいものなど、さまざまなものがあると思います。そのた め、目標実現を妨げる阻害要因はさまざまであって、目標設定、評価検証に当たっては、 その阻害要因を個別の施策ごとに見ていく必要があろうかと思っております。検証に当た りましては、目標設定の見直しも含めて柔軟に対応すべきだと思っているところでござい ます。  もう1つですが、先日、雇用戦略対話のワーキンググループが開催されました。私もそ の中のメンバーになっているのですが、この労政審での取組と、雇用戦略対話での取組の 関係につきまして、お教えいただければなと思っているところでございます。以上です。 ○三浦委員 私からは資料1-1の雇用政策の戦略的な実施についての労働基準に関する項 目について、若干の意見を申し上げたいと思います。4頁の4の(1)、均等・均衡待遇の推 進等の中で、有期労働契約に関する施策の検討というのがあるわけですが、我が国の雇用 の実態や、企業を取り巻く経営環境というものを十分に認識した上で、労働法制全体で検 討をしていく必要があるのではないかと思っています。  (3)で年次有給休暇の取得促進と長時間労働の抑制が数値目標として掲げられているわ けですが、その目標実現に向けては個別の企業における自主的な取組というのは、非常に 大事だと思いまして、これを促進させることは肝要だと考えております。  もちろん行政の施策展開に当たって、先ほどからお話があるように、目標を持っておく のは非常に大事なことだと思っておりますけれども、いずれの課題も業務改善であります とか効率化、こういったものとセットで推進していくことによって、実現されると考えて おりますので、この数値だけにとらわれることのないように、是非ご留意いただきたいと 思っています。  次に(5)で掲げられているテレワーク、これはワーク・ライフ・バランスの実現という意 味からも、非常に大きな手段だと思っておりまして、労働行政としてその普及促進策を積 極的に進めてもらいたいと思っております。さらにこのテレワークというのを、単に労働 行政という観点だけではなくて、政府全体の成長戦略の中できちんと位置づけて、他省庁 とも連携をしながら推進していくべきだろうと考えております。  最後に(6)の労働安全衛生対策ですが、労働災害のない社会を実現するためには、事業者 だけが取り組むということではなくて、労働者の協力も不可欠であります。したがって、 これについては、労使が一体となって取り組んでまいりたいと考えておりますので、引き 続きご支援をお願いしたいと存じます。以上です。 ○伊藤委員 拝見いたしまして、私も商工会議所としてワーキンググループに参加させて いただきながら、いろいろ発表させていただいております。この前文の中にすごくいいこ とが書かれているのですが、重要なことが2020年度までの平均で名目3%、実質2%を上 回る景気の成長。それからGDPが650兆円程度ということは、ここの重要な部分が、その チェックすることがあるのかないのかということが私は大事だと思うのです。なんで我々 こんなに景気の悪い世の中で働かなければならないのか。誰も望んでいるわけではないの ですよね。景気が良くなれば雇用だって増えるし、そこの重要な部分をそのチェックの中 に入れていただきたいなと。  何を申し上げたいかというと、6頁の中で、いろいろなものが決められているのですが、 やはりこの景気の部分がないのではないですか。まず、ここを入れていただきたい。それ から私どもが提案した事項の中に、特に創業、我々中小企業を中心に活動をしているので すが、開業率が1%上がると、17万2,000人の雇用が見込まれるという試算がございます。 こういうことを提案いたしました。  いろいろ数値化されているのがすべて雇用、もちろん労働者の方が幸せになるための数 値で、私たちも望んでいるわけなのですが、その中で4番の(2)で、最低賃金の引上げとい う話が出ていますよね。その文章の中で、中小企業の生産性向上の支援等について云々、 いろいろな金融上の措置が不可欠であると。金融上の措置というと、これは貸出しの問題 とか、そういうことになってしまうのかもしれないのですが、最低賃金がこういうふうに ならなければいけないとかいうことの中で、その創業というものがやはり厳しくなったり しないかと、こういうことも懸念をいたします。  新しい雇用を創造するというのは、例えば大企業の方というのは、実際のこと、こうい う世の中になったら外に出ていってしまっているのですよ。現場の工場の労働者の方はも ちろん働いていらっしゃいますが、かなりの数が外に出ていらっしゃるのですね。こんな 中で大企業の方は利益を上げて税金を納めている。だけど雇用なき企業成長になってどう するのだと。そうではなくて、我々が企業をおこしやすくするための環境というものも必 要なのではないかなと思います。そのためにはある程度ドラスティックな部分も取り入れ ていただきながら、企業の創造ができて、かつ雇用が増えていくことが経営者側からする と望むところでございます。是非そのようなことも、数値目標として取り入れていただけ れば、より雇用が活性化するのではないかなと思います。以上です。 ○諏訪会長 今たくさんの質問、意見等が出ていますが、事務局のほう、まとめて最後で 大丈夫ですか。 ○酒光労働政策担当参事官 できれば途中で。 ○諏訪会長 では、申し訳ございません。ここでまず一旦ご意見、ご質問に対する返答を お願いしたいと思います。 ○酒光労働政策担当参事官 いくつか私のほうからお答えして、必要があればまた関係者 からお答え申し上げます。まず川本委員から目標について個別の労使を直接縛るものでは ないですよねというご質問がありました。この試案そのものは、もともと樋口先生が試案 として出したものですが、今後作っていく目標については、当然ながら、政府の政策的な 目標ということになりますので、それ自体によりまして、個別の労使を直接縛るものでは ないということです。  2番目に、今後いろいろな変化が考えられるので、そういうときは柔軟に変更とかとい うのはあるのですかということだと思いますが、これ自体も前文にも成長率が前提という ことが書いてございますが、私どももそのように考えておりまして、今後、いろいろな経 済社会の変化がありましたときに、また公労使の皆さんとご相談をさせていただきながら、 変更することはあり得るものだと考えてございます。  それから、ワーキンググループとの関係はということでございます。ワーキンググルー プも樋口先生が出られていますので、議論されたときに同じような内容の多分ご提言をさ れたのだというふうに思っております。雇用戦略対話で、新成長戦略の雇用人材部分につ いては議論をするということになっておりまして、その議論をするためのワーキンググル ープが先日開かれたものです。  併せて、厚生労働省では労働政策を所管している立場から、先ほど申し上げた雇用人材 戦略について議論をしたいということで、議論をしていただきたいということで今回もお 願い申し上げているところです。このような経過がありますので、雇用戦略対話とか、労 働政策審議会の議論というものは、ある意味、並行的に進んでいくものだと考えておりま すけれども、最終的には政府の戦略でございますので、整合性のあるものになるというふ うにしていきたいと考えております。  伊藤委員から成長実現のための目標なり、そういったものについてもう少しきちんと書 くべきではないか、というようなことがございました。これも何度も申し上げますが、樋 口先生の試案ということで、雇用政策研究会という場でもありますし、厚生労働省に対す る意見ということでありますので、それに対する試案ということだと思いますので、そこ の部分は省略して書かれているということだと思います。政府全体の新成長戦略は、その 2%なり3%の成長で実現するかということが中心的な課題になると考えておりまして、厚 生労働省にも、私どもとしてもそういった意見を申し述べていきたいと思っております。  それから、当然ながら雇用の創出というのは、非常に大事なものですので、そういう立 場から関係省庁にも意見を申し述べていきたいと考えております。私のほうからは以上で す。 ○伊藤委員 すみません、どなたかもやはりセットでということを言われたと思うのです が、やはりそこが。これは労使の話し合いなのでね、どちらかというと雇用の数値の話が 大切だと思うのです。だけど経済成長の数字とやはり一緒にしておかないと、どちらかが 独り歩き、経済成長が独り歩きしたらいいことしかないのですが、やはり企業側からする と厳しいもの。決して我々厳しいことは嫌だと言っているわけではないのですが、やはり そこが抜けて独り歩きした場合に、後で何だったのだろうという話に、多分なると思うの です。やはり成長と雇用というものを。今の日本に欠けているのはそこなのではないです か。悪いのですが、今の国のトップの方は数値だけおっしゃっているけれども、何も実現 しようとなさらないではないですか。そこに私は何かを言いたいわけです。それはもう絶 対できるのだということが分かっていれば、これは諸手で賛成です。以上です。 ○金子労働基準局長 何点もご指摘がございましたので、順番が入れ替わるかもしれませ んが、ご容赦いただきたいと思います。  まず、三浦委員から私どもの所管に属することで何点かご質問がございました。まず有 期労働契約の関係ですが、これは前に当審議会でもご説明させていただいておりますけれ ども、今当局におきまして研究会を開催しております。この3月17日にやっと中間取りま とめをさせていただきました。今、労使の関係者からいろいろご意見もいただいていると ころです。働き方のルールということについて言えば、基本的かつ広汎な内容を含んでい るものですので、じっくり議論を深めていきたいと思っております。  年休・労働時間の関係です。これにつきましては、企業の自主的な取組が重要だという ことだろうと思います。これは当然のことだと思っております。我々といたしましても企 業の自主的な取組が促進されるような観点から必要な対応をしていくということは、心得 てやっていきたいと思っております。  それからテレワーク、これは前回も三浦委員からのご指摘をいただきましたように、今 後とも他省と連携しながらやっていかざるを得ない課題ですし、我々ワーク・ライフ・バ ランスの実現という観点からも重要な課題だと思っています。そういった視点で取り組ん でまいりたいと思っております。  労災防止のことです。労働安全衛生法は事業者の方に必要な義務づけをするという法体 系でございます。それをまず第一にきちんとやらせていただくのは当然でございますが、 具体的に職場の中で危険・リスクを除いていくということになりますと、やはり労使一体 となった取組が不可欠の分野ですし、実効を上げるためには必要なものだと思っておりま す。労使一体となったお取組をいただくよう、お願いしたいと考えております。  冒頭に落合委員から大変広汎な内容を含んだご指摘でございましたので、私から答える のが適当かどうかはわかりませんが、実労働時間にメスを入れていくことが必要ではない かということで、1つの論点としては、先ほど申し上げましたように、ワーク・ライフ・ バランスをどう実現していくかということなのだろうと思います。この切口で、今、いろ いろな対策を考えていこうということです。また雇用戦略対話の中でも議論が出てくると 思いますが、大変広汎な内容を含んだものでございますので、そうした議論も踏まえなが ら、我々としても必要な検討をしていきたいと思っております。  伊藤委員から最低賃金の引上げのお話もございました。これは、今、大変大きな議論に なっているところでございます。私どもはこの成立しました予算の中に実態の調査と、そ れから最低賃金引上げのための支援策を検討するための調査費用を計上しまして、早速に 調査にとりかかっているところでございます。今日ご出席の関係機関のご協力の一部を得 て、進めることにしております。  いずれにいたしましても、やはり経済、景気ということと不可分な話でもありますし、 それから支援策が必要だということも間違いないことだろうと思います。そうしたことで、 経済産業省、特に中小企業庁とワーキンググチームを作りまして、今、検討をさせていた だいております。できるだけ早く調査結果をまとめまして、今後の必要な対策を考えてい きたいというように思っているところです。以上です。 ○諏訪会長 ご質問に亙った部分、それで皆様よろしいでしょうか。お待たせしました。 第2ラウンドに移りたいと思います。先ほどからちょっと使側の皆様のご発言が続いてお りましたので、早々とお手を挙げていた大橋委員にまず発言をいただいたあと、しばらく 労側に発言いただいて、そしてこちらにというふうにしたいと思いますので、よろしくお 願いします。 ○大橋(洋)委員 私からは若年者、それから高齢者、そして障害者の就業促進にかかる 論点について、何点か指摘させていただきたいと思います。今後、少子高齢化社会が一層 推進してまいりますから、若年者・高齢者・障害者などの就業を促進していく重要性はま すます高まっておりますが、申し上げるまでもなく、雇用促進を図る上では、経済成長に 裏打ちされた企業の発展が大前提だと思っております。その上で多様な層の就業を促進し ていく上では、柔軟な雇用形態を準備することによって、それぞれの状況に応じた就業を 可能としていくことが求められるわけでございます。  そのためには労働者の柔軟な働き方に対するニーズも踏まえて、環境整備などに取り組 んでいくことが必要であろうと存じております。その際に海外の諸制度なども参考として いくことは重要なのですが、やはり我が国固有の雇用慣行も十分踏まえていくことが重要 だと考えております。2頁の若者の就業促進のところ、そして3頁にもNVQのことが書か れていますが、このNVQの例をとりますと、その基本的な考え方は有用だと存じます。し かしながら、この3頁にも書かれていますように、職業能力評価基準の策定・活用の推進 等によって日本型NVQへの発展に向けてこれを取り組んでいくのだということのとおり、 やはり我が国では同種の職務といえども、産業横断的な評価が確立していないことも踏ま えまして、このことについては慎重な検討が必要ではないかと存じます。  また、一言に雇用促進と申しましても、民間企業の努力だけでは限界がございます。例 えば高齢者雇用につきましては、企業としてもこれまでの間、現行法に則って着実にその 促進に努めてきたところでございますが、現行法を超えたさらなる対応を求めるというこ とであれば、その点は別途に十分な議論を深めていく必要があろうと思っております。  もう1つ、障害者雇用につきましても同様でありまして、取り分け公的な支援体制を整 備しつつも、社会全体でさまざまな取組を行っていくという観点が重要で、十分考慮に入 れていく必要があろうかと存じます。私からは以上でございます。 ○斉藤委員 私からは1点目のワーク・ライフ・バランスの推進等による労働市場への参 加促進について申し上げたいと思います。ワーク・ライフ・バランスについては、女性の 就労促進に向けた法整備はある程度進んだと思いますけれども、残念ながら実態としては まだ期待どおり進んでいないという実態があると感じております。  進まない理由はいろいろあると思うのですが、先ほど落合委員からもありましたが労働 時間対策、働き方というようなところにその要因があるというふうにも感じております。 この試案の中ではワーク・ライフ・バランスが、冒頭の就労促進に関するところと、4点 目の労働時間短縮の促進の2カ所に記載されておりますけれども、広汎な内容の中から雇 用政策において必要と考えられるワーク・ライフ・バランス施策というものを、冒頭部分 に打ち出していただきまして、一層の促進を図るという意思をもっと強く示していただく ようなまとめ方をお願いしたいと思います。 ○加藤委員 私のほうからは労働政策の立案と推進のためのインフラ整備という観点で若 干申し上げたいと思います。さまざまな労働政策があるわけでございますが、実際には個々 の職場実態、いわゆる労働現場の実態がどうなっているのかということが、いちばん大事 でございます。要するに政策の実効性というところです。  先ほども議論がありましたように、さまざまな労働に関する問題が発生しているわけで ございまして、そういう意味では、自助努力で解決できるよう、やはり集団的労使関係の システム構築が極めて重要になっていると思っています。先ほどの労働安全または時短、 そういったことも含めて、それ以外の働き方はすべてでして、とりわけ争議等を含めて、 そういうことがきちんと現場の、職場の実態の中で解決していくその仕組みを作っていか ないと、健全な労使関係も重要ですが、もっと重要なのは健全な事業の発展にも危惧され るわけです。事業の発展についてもそういったことがきちんとなされているか、なされて いないかというのは、大きな問題になってくると思っていますので、そういう中で労使協 議をそういう現場の中で作り得るシステム構築、集団的労使関係について、是非ともお願 いしたいと思っております。 ○北田委員 私からは点検評価部会について質問がございます。労働政策に係る点検評価 部会の設置についてということで、PDCAサイクルをしっかり回していくということでござ いますが、一方でワーク・ライフ・バランスに関わる施策については、内閣府に「仕事と 生活の調和連携推進・評価部会」がございます。この両者の関係はどうなるのかというと ころをお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○諏訪会長 ここで一旦ラウンドを閉めさせていただいて、第3ラウンドを用意いたしま す。さもないと事務局のお答えが難しいかもしれません。それでは西原委員お願いします。 ○西原委員 私から3頁、雇用創出に関して意見・要望ということで申し上げたいと思っ ています。試案に記載されておりますとおり、学校教育、そして職業教育が連携しての人 材育成、あるいはその地域を起点とする雇用創出事業の活用等は大変重要な視点だと考え ておりますが、加えて特に新産業の創出を強く推進していくことが、いわゆるイントロの ところでも触れている「雇用の量と質」という観点からも、極めて重要ではないかと認識 をしております。その際、特に雇用創出と新産業政策はリンクして考えて、かつ推進して いく必要がある。したがって、そういったことからいけば、特に産業構造の変化等々を踏 まえながら、新産業における雇用創出につきましては、厚生労働省そして経済産業省等々 の関係する省庁が、省庁の枠をある意味取っ払うといいますか、省庁横断的に総合的かつ 整合性ある形で政策を推進していかなければならない。このことについて特に強く要請を 申し上げたいと思っています。以上です。 ○諏訪会長 申し訳ございませんが、また次のご意見をいただきますので、ここまでのと ころを事務局からお願いいたします。 ○杉浦審議官 職業能力開発局でございます。大橋委員からNVQの話がございました。私 どももジョブ・カード制度を一昨年度から進めておりまして、お蔭さまで実績も伸びてき ているわけですが、より進めるためには、職業能力評価と一体となって訓練を行って、就 職に結びつけていくということは、大変重要だと思っております。  そういった意味で職業能力評価基準を並行して策定しておりますので、そういったもの を活用しながら取り組んでいくということで、ここに「日本型NVQ」という表現がござい ますが、イギリスのNVQをそのまま導入するというのは、やはり委員がおっしゃいました ように、国の事情が異なる部分が大変多かろうと思いますので、そういった雇用関係、産 業関係の事情をよく配慮しながら検討を進めていきたいと思っております。以上です。 ○中野政策統括官 加藤委員から集団的労使関係の重要性につきまして、ご発言がござい ました。その点ですが、私どもも健全な安定した労使関係が引き続き我が国の事業発展、 産業競争力の源泉になると思っております。特に現在のように時代の変化が激しい時代、 それに対応するためにも、重要性は増していると考えております。労使間で日ごろから十 分な話し合いが行われまして、相互の信頼が確立されるよう、集団的労使関係、法制の周 知徹底、その他必要な助言に努めてまいりたいと思っております。 ○酒光労働政策担当参事官 斉藤委員からワーク・ライフ・バランスの推進する観点から、 もっと前に書いたほうがいい、いちばん前に書いたらいいのではないかというご指摘がご ざいました。今後雇用戦略の案を考えていくことになると思いますので、どのような書き 方ができるか、各分科会ともご相談させていただきながら考え、議論をしていただければ と思っております。  北田委員から内閣府でやっているワーク・ライフ・バランスの連携推進評価部会との関 係はということですけれども、私もこの会議、省庁の連絡会議とセットでやっていますの で出ておりますが、この政策につきましては内閣府とこの部会とも、今でもよく連携をと っておりますけれども、十分連携をとってやってまいりたいと、齟齬がないようにしてま いりたいと考えております。 ○森山職業安定局長 安定局でございます。雇用創出の問題は、ご指摘のとおり非常に重 要だというふうに考えておりまして、厚生労働省としても緊急雇用創出支援事業というこ とで、自治体のほうに基金を積みまして、そのお金を使って雇用をしていただくというよ うなスキームとしています。やはり地域における雇用をいかに作り出すかということが非 常に重要だと考えています。そういった意味でこの基金が1つの起爆力になって、それぞ れの地域における雇用創出を支援しているというふうに考えています。今後とも経産省と も連携をとりながら、しっかりと進めていきたいと考えています。 ○諏訪会長 一渡りこれでよろしいですか。それでは今度は労働側が少し続きましたので、 まず使側から。最初に市川委員。 ○市川委員 中小企業の立場から、最低賃金について再度要請を申し上げたいと思います。 中小企業にとってこの最低賃金の引上げ、相当大きな影響がございます。なかんずく地方 の中小企業にとっては、これは大変な問題でございます。だからこそ5頁の冒頭にござい ますように、県ごとに最低賃金を決めるということで、最低629円、最高は東京の791円、 こういうことになっているわけでございます。  ところが政治の世界では一律800円でいいではないか、あるいは1,000円を目指して急 激にこれを引き上げるべきだと、こういう意見が散見されるところでございますが、まあ、 先ほどの労働者派遣法の問題で意見書が出されましたように、公労使の協議、話し合い、 それに基づいて、使側としても受け入れ可能な数字というものにまとめていく必要がある と思っております。政治主導というよりも、こういう問題につきましては、公労使の三者 構成の審議を是非、そういう形で審議を進めていっていただきたい、そしてまた、その結 論が出た場合には、これを尊重していただきたいと思うわけでございます。そのための調 査につきましては、私どもとしても応分の協力をさせていただいているところでございま す。もう1点、中小企業の生産性向上支援、これは是非必要でございます。ただし、これ が実現するためには施策を打って時間がかかるのです。支援策を打てば直ちに最低賃金を 引き上げても構いませんと、こういうことではございません。時間がかかります。それか ら生産性向上支援等の「等」のところですね。予算措置等いろいろな形で中小企業に対す る支援が必要になってくると思いますので、その点も是非ご配慮をお願いしたいと思いま す。以上でございます。 ○岡田委員 私からは女性の働き方について意見を申し上げたいと思います。女性の継続 就業、それからM字カーブの解消というのは、非常にこれからの日本にとっても重要なこ とだと思っておりますし、それを踏まえて企業側でも育児・介護休業法関連法令の遵守と いうのは、皆さんやっていこうということで進んでいるかと思っております。  先ほど斉藤委員から実態としては労働時間の問題があって、女性の就業が非常にまだ厳 しいところもあるのではないかというご指摘もありましたが、その労働時間ということと ともに、やはり保育サービスの充実が非常に求められているだろうなと思っています。待 機児童の解消が進んでいるとはまだまだ言い難いかなと思っていますし、こういった景気 変動の中で働きたいという女性は、ますます増えていくだろうと思っていますので、その 量的な拡大ということとともに、それから質的にも保育園児の事故の例というのは、後を 絶たないということもありますし、認定子ども園の創設といったようなことに関しても、 現場にはまだまだ多くの課題があるのかなと思っておりますので、そういった保育サービ スの量的な拡大と質的な向上といったようなことに関しても、さらに充実させていただき たいなと思っております。  それから、目標をもってそれに向けたPDCAのサイクルを回すということに関しては、も ちろんアグリーなのですが、子育てということに関しては、従業員の価値観というか、幸 せ観というのは個別のものでもありまして、必ずしも一律ではないという中で、仕事と家 庭と考える人もいますし、仕事も家庭もと考える人もいますし、そういった意識面という ことも含めた形で、一律に目標を立てていく、どうやって検証していくのかなといったと ころが、まだ少し不透明であるように聞こえましたので、こちらは政策実施の試案である ということですし、その目標設定ということなので、企業側がどうしてもこの数字に固執 しなければいけないということではないかとは思いますが、やはりこういった数字が出さ れますと、1つの目安になるということを考えると、検証の方法等はこれからさらに審議 していく必要があるのかなと思っています。以上です。 ○指田委員 私からは3頁の3.に載っております職業能力開発の推進等による就職支援と いうことに関連して意見を申し述べさせていただきます。  この雇用の量を増やすとか、雇用の安定を図るということに対しては、現在、雇用され ている人もあるいは雇用を求めている人も、ご自身の技術とか技能とか知識とか、あるい は知恵とかそういったものの向上が不可欠でありまして、特に労働力人口がずっと減って いく中で、それは日本経済全体のことでも必要だと思うのです。したがって職業能力開発 施策の充実は、極めて重要な問題だと考えています。取り分け雇用の多様化が進展をして、 外部労働市場が発展している中にあっては、公共職業訓練の役割りは、従来以上に増して いると考えております。  資料1-1では、公共職業訓練について、1つは介護・福祉等の成長分野、もう1つはも のづくり分野を中心にと書いてございます。今後雇用の創出が期待できるような分野など に対応した訓練メニューを充実させていくことや、現在大きな課題になっています若年層 に特化したプログラムの充実など、産業動向や雇用動向などを踏まえた視点も重要だと思 います。  また、訓練を受けた労働者を実際の雇用に確実に結びつけることができるように、需給 調整機能の強化と一体的に考えていくような視点も重要かと存じます。特に就業経験の浅 い若年者については、潜在的な能力を見いだしていくキャリアカウンセリングの充実など、 職業紹介機能の強化が今よりも必要かと思います。  これらの施策を充実していく上では、公共職業訓練や公共職業紹介の体制の強化が必要 不可欠です。今後、たしか雇用・能力開発機構、1950年代ぐらいの炭坑労働者の需要から 始まって、もう何回も名前を変えて、中身も変わってきていますけども、また今度変わる ということを聞いたのです。若干、世間ではえらい箱物を作ってどうだとかこうだとか、 批判がございます。  今日も少し会社から出てくるのが遅くなりまして、テレビを見ていましたら、みのもん たさんが、箱物に対して雇用・能力開発機構がどうのこうのという話をさかんにしており ました。機構は廃止になり、業務は新法人が継承すると思いますが、新法人が従来の職業 能力開発業務の維持にとどまることでは、やはりまずい。一層のレベルアップを目指して いかないと社会の評価は得られないと、このように考えています。  また、セーフティネットの強化に関連して、求職者支援制度についても、非常に重要な 施策であると認識しています。財源のあり方なども含め、労使の意見を踏まえながら、制 度構築に向けた検討を進めるべく、議論を深めるべきだと存じます。支援制度の対象者が 早期に労働市場に復帰し、我が国全体の生産性を高め、経済の活性化につながるような効 果的な制度を構築していければと考えています。以上です。 ○諏訪会長 時間の関係がありますので、第3ラウンド全部まとめて残ったご意見をいた だきます。 ○河野委員 私からは4頁にあります、安心して働くことのできる環境整備について意見 を述べさせていただきます。記載されております均等・均衡待遇の推進というのは、非常 に重要な観点ですが、実は「雇用の安定化」という言葉が出てきておりませんので、「雇用 の安定化」を是非入れていただきたいと思っています。  「雇用の安定化」につきましては、平成19年12月21日の労働政策審議会で文章確認を されている内容となっておりますけれども、例えばその中にありますように、雇用の安定 は労働者の生活の不安定化を防止し、少子化の進行を防ぐため、また、労働者が技能蓄積 や意識の高い働き方を実現し、個々の企業のみならず、社会全体の生産性や競争力を確保 するために、今後とも重要であると明記されているわけです。そういった意味合いからも、 「雇用の安定化」という言葉を明記していただきたいと思っております。  もう1点は、この間の労働者派遣の関係もありまして、非正規が3割ぐらいになってい る状況ですが、その結果、特に私の所属しているものづくりの現場からは、やはり現場力 の低下ということが非常に今でも問題になっていますし、今後も問題になっていくと思い ます。それは、やはり良質な雇用といいますか、そこになかなか結びついていっていない。 技能の伝承あるいは品質の維持、安全管理、また人材育成という観点からいきますと、少 なくとも今の比率を下げていく努力が必要ではないか。  即ち下げていくための目標を作っていくことが必要ではないかと思っております。とい いますのは、現実的に今、春の交渉の中でも非正規の正規化という論議もしておりますけ れども、この間、今5,000人規模の従業員数の所で、定年退職者が年に大体150人〜200 人出ます。しかし、その企業の採用は50人とか80人とか、そんな感じです。もちろん景 気の問題があるかもしれない。しかし、そういったときに、やはり直接雇用にこれからな っていくと思われる非正規の人たちを、新しい人の採用枠と同じように採用していくよう な努力をされている企業もありますし、労使でそのような話し合いをしているところもあ ります。  したがって、雇用の安定していないところをきちんと安定させることによって、そして、 社会全体の安定化あるいはものづくり全体の良質な雇用、良質な働き方につなげていくこ とが今できる環境になってきているのではないかと思っております。そういうところだか らこそ、非正規を減らし正規化への道、そして雇用の安定化を図っていくことが必要では ないかと思っております。そういう意味合いで目標設定したらどうかと思っております。  2つ目は先ほどお話が出ました最低賃金の引き上げの問題です。最低賃金を引き上げて いくということは望ましいことに変わりありません。しかし、先ほどお話がありましたし、 この中に書いてありますように、中小企業の生産性の向上等というのが、非常に私も重要 だと思います。どのように生産性を向上していくのかというための支援策、これは先ほど お話がありましたように、経済産業省、中小企業庁との連携あるいはチームということに なってくると思いますが、その中で是非留意していただきたいと思う点は、中小企業で生 産性を向上しても、その分が単価の切下げによって中小企業に利益として残らない構造に なっているというところです。生産性をいくら上げてもその分は単価の切下げとして持っ ていかれてしまう。その意味では、取引のガイドラインが今出来ていますが、やはりルー ル化をしっかりやっていくことが重要ではないかと私は思います。つまり、そのほかの施 策に関係しても、やはり中小企業の労使で本当に稼ぎ出した生産性の向上分が残る取引の ルールということも、一方で押さえていかないといけないのではないかと申し上げておき たいと思います。以上です。 ○川本委員 私から最低賃金について2点だけ申し上げたいと思います。最低賃金の引上 げを考える場合には、やはり影響を最も受けやすいのが中小零細企業ということになりま す。この企業におきます恒常的な付加価値生産性の向上、業績の向上が大前提だというこ とを1つ申し上げたい。  もう1つは現在、公労使の三者で構成されております中央最低賃金審議会で決定すると いう仕組みになってございます。これは地域経済の実態とか、地域間の違いを適正に反映 して、労使で長年積み上げてきた知恵の集積と言えるのではないかと思っております。こ の合理的な決定プロセスは、今後とも堅持をしていただきたいということを申し上げてお きたいと思います。以上でございます。 ○諏訪会長 公益委員にも何か発言をお願いいたします。 ○今野委員 資料1、2の点検評価部会についてお願いをしたいと思います。また評価がと いう気もしないではないのですが、是非ともお願いしたいのは、みんなが疲れない評価の 仕組みにしてほしい。ここでそれが目標になるかは別にして、今ここで皆さんが議論をし た数値目標が出ているわけですが、それだけでいくと一生懸命、みんな疲れ果てて成果を 達成したということはあり得るわけですね。  考えてみればいちばん大切なのは、数値目標もありますが、安定的にいい成果が長期的 に出るというのが重要なのです。そうすると普通に考えればそれが出るための何か仕掛け みたいなのをきちんと作って、その仕掛けを動かせる人がきちんと養成されるとか、ある いは一種のインフラですかね。最近だったら情報システムがきちんとしているとか。つま り、この辺がきちんとしていないと長期に安定的な成果は出ないで、今いった下をやらな いとみんな疲弊して成果を上げることになりますので、ですから理屈で言うと、実は成果 の評価って、今言ったすべてについて評価をしないと皆さん疲弊するということですので、 行政でそれがどういう形でできるかは分かりませんが、少しそちらのほうの視点も入れた 何かの評価の仕組みにしておかないと、みんなが疲弊して成果を達成して次の期はみんな 疲れ果てたと、あるいは組織資源を全部使い果たしてしまったというようなことにもなり かねませんので、その辺、具体的なシステムの設計についてはお任せしますが、何かその ような視点も入れて、この資料1にある点検評価部会というものを、少し考えていただき たい。  ここでもPlan Do、PDCAがありますが、実はPDのDのところの仕掛けもきちんと評価を しなければいけないというのが私の意見なのですけれど、そのような観点も入れて少しみ んなが、あまり疲れ果てない評価システムというか、評価の仕組みをつくっていただきた い。私の要望です。 ○諏訪会長 続いて勝委員からも要望がありました。 ○勝委員 私の場合、今野委員が今おっしゃられたことと関連する件ですが、雇用の量の 拡大だけでなく、質の向上を図ると。そのために今数値目標を入れたのは非常に評価でき るのですが、先ほど労働者側の河野委員が、4頁の「均等・均衡待遇の推進等」、ここは非 常に重要だということを言われました。  私もこの間の規制緩和の中で労働市場が非常にフレキシブルになったと、これはある意 味で評価できる。これは企業にとって非常に競争力を高めるという意味では、非常に大き く作用したと思うわけです。ただ、一方で、労働者側委員が指摘したように、これは非正 規を非常に高めてしまった。非正規労働が割合として高まったことが問題ではなくて、む しろ非正規から正規への移動が非常にできない。つまり、固定化してしまっているのが、 今の日本の一番の問題であると考えています。それは、モラルの低下とか、同一労働・同 一賃金と、そういった公正性が保たれていないと、そういった意味でのネガティブなイン パクトは非常に大きいと思うわけです。  そうすると、そういったところについては数値目標は具体的には出せないわけです。こ れらの数値目標を採用した根拠というか、これらが達成されれば本当に質の向上につなが っていくのか、そういったことも考えられると思いますので、是非、PDCAで評価する際に は、単純な数値目標だけではなくて、そういったいろいろな体裁的な部分も評価していた だきたいし、点検評価の点検評価部会、これは年度別の目標と、今回、評価は非常に難し いと思うのですが、その辺にも是非ご配慮いただければと思います。 ○諏訪会長 皆さんから大変活発にご意見をいただいたのですが、時間がだんだん押して きたので、少しまとめて事務局側から質問に対するご回答などをいただきたいと思います。 ○金子労働基準局長 3人の方から最低賃金についてのお話がありましたので、もう1回 簡単に説明します。現在の政府の立場としては、最低賃金の引上げに当たっては、中小企 業の支援策をきちんとやっていくこと、雇用・経済への影響に配慮しながら労使関係者と の調整を行いつつ進めるのが基本的な考え方です。これに関連して具体的なご指摘がいく つかありましたが、三者構成の決定プロセスにより決めていくと、これは当然のことと考 えています。下請取引の適正化、これも重要なテーマだと思っています。経産省との検討 チームにおいて検討していきたいと思っています。 ○杉浦審議官 指田委員から職業訓練についてのご意見があり、雇用情勢は大変厳しい中 で職業訓練の重要性は委員のおっしゃるとおりだと思います。公共職業訓練についても、 一昨年度から昨年度にかけて7万人ほど定員を増やしており、年間22万人規模で実施をす ることにしています。今年度もほぼ同様の規模で実施をしたいと思っており、内容につい ても、経済状況、産業状況を見据え、雇用吸収力のある分野における訓練コースを設定す るなど、随時見直しをしながら進めてまいりたいと思っています。お話にありましたよう に雇用・能力開発機構は廃止をすることになりますが、新法人において職業訓練の業務に ついては、なお一層、国の責任を果たす役割のもとで努めてまいりたいと考えています。 ○伊岐雇用均等・児童家庭局長 岡田委員から保育サービスの関係、意識の関係について ご指摘がありました。保育サービスに関しては、資料1に「保育サービス等の拡充」とだ け書いてありますが、おっしゃるとおり2020年に73%と、M字型カーブの解消に向けての 努力をする際には、保育サービスの拡充は非常に重要な要素を占めていると思っています。 これについては、ご案内のとおり去る1月29日に政府全体で子ども子育てビジョンを策定 し、特に保育サービス部門については、かなり具体的な数値目標をこの5年間について達 成目標を提示したところです。  ただ、現状のシステムのままでサービス量を飛躍的に伸ばしていけるかについては、財 源問題も含めて非常にご懸念のあるところで、財源問題も含めて政府全体でこのことを、 新システムの構築も含めて議論する場として、子ども子育て新システム検討会議が設置さ れています。これが1月29日、同ビジョンの策定と同時に設置が決定されており、具体的 には事務方の検討会議を、本日もやっております。まさに今、ちょうど始まったところか と思いますが、事務ベースではすでに4回ほどの会議をやっているところです。このよう なことを含めて全体の政策の成果としてM字型カーブの解消につなげていきたいと思って います。  意識の関係ですが、特に女性の就労に係る意識は確かにご家族の意識も関係するかと思 いますが、最も意識面で決定的要素があると思われるのは、配偶者である男性を雇ってい らっしゃる企業の管理者なりトップの意識であるかと思いますので、この部分は経営者団 体あるいは企業の方々にも是非ご配慮いただきたいと思いますし、社会全体であらゆる場 面での男女共同参画といったこれは内閣府も含めて社会全体の意識改革といったことも、 引き続き投げかけていきたいと思っておりますので、そういう形で進めていきたいと思い ます。よろしくお願いします。 ○酒光労働政策担当参事官 河野委員から、「雇用の安定化」という文言とか、あるいは非 正規の割合を引き下げるという目標を設定したらどうか、というご意見をいただきました。 これについては、また今後各分科会でご議論いただけるよう検討してまいりたいと考えて います。  岡田委員から、目標については政府の目標とはいいながら企業の目安になるのではない かというご指摘もいただき、点検評価なども工夫していただきたいということがありまし た。点検評価は、おそらくマクロ的な統計数値に基づいてやることになるとは思うので、 点検評価のあり方については、今後、十分検討してまいりたいと思います。  併せて、最後に、今野委員、勝委員から、点検評価部会についていろいろご助言をいた だき、特に多面的な評価というか、そういったことについていろいろな方面から検討すべ きではないかということをいただきましたので、その辺は十分検討してまいりたいと考え ています。 ○諏訪会長 先を急ぐようで大変恐縮ですが、少し定刻を回ってしまいましたので、次に 残された議題に移りたいと思います。その前に、ご議論も尽きないわけでしたが、事務局 から提案のありました資料1-1「雇用政策の戦略的な実施について(試案)」を踏まえて、 各分科会において厚生労働省としての長期目標、年度目標をご審議いただくということ、2 番目に、資料1-2「労働政策におけるPDCAサイクルの流れの(案)」に沿い労働政策の運 用実績を検証・改善する仕組みを設けること、3番目にPDCAサイクルの実施に当たり、本 審議会の下に「点検評価部会(仮称)」、こういうものを設置すること、これら3点の方向 についてこのような方向でおおむねよろしいですか。                  (異議なし) ○諏訪会長 ありがとうございました。それでは、今後、そのように進めたいと思います。  大変時間が過ぎて恐縮ですが、議題(2)「分科会及び部会における審議状況」の報告を、 かいつまんで事務局にお願いしたいと思います。 ○金子労働基準局長 資料2-1「労働基準局」関係です。時間がありませんので1枚目の 紙だけで説明します。労働条件分科会ですが、2月16日以降、労働時間等見直しガイドラ インの改正を行いました。年休取得の促進が目的です。4月1日から施行しています。労 災保険部会においては、第1点、今回の派遣法の改正に併せて労災保険法の一部改正案を ご審議いただきました。派遣先に対して第三者行為災害の求償を行う場合のために、派遣 先への立ち入り検査権等を規定するものです。2つ目は、介護補償給付の給付額の改定で す。これは定例のものです。労働基準法施行規則別表1の2の改正ですが、これはその下 で30日に答申をいただいているものと同じですが、職業病のリストに脳・心臓疾患等の疾 患を加えるという内容のものです。  勤労者生活分科会ですが、中小企業退職金共済の付加退職金、配当的な退職金ですが、 ゼロにするということです。 ○森山職業安定局長 職業安定局です。資料2-2です。1頁は、先ほどもお話があったと 思いますが派遣の関係です。この紙自体、昨年12月末の審議会の報告を基にして、法律案 要綱を2月17日に諮問して、2月24日に「おおむね妥当」という答申をいただいたという ことです。その後の経過については先ほど報告したとおりでして、そういった経過を経た 後、3月29日に国会提出ということです。  雇用保険法の関係ですが、資料がありませんで、皆さま方の資料3も先ほどすでに報告 があったと思いますが、「雇用保険法の一部を改正する法律案について」ということで、昨 日、成立をしたということですが、昨日、これにかかわる施行規則等について職業安定分 科会に諮問、答申を得たということで、4月1日から施行という運びになっています。 ○杉浦審議官 職業能力開発局です。資料2-3です。職業能力開発分科会においては、昨 年暮れから国が行う職業訓練のあり方と能力開発機構のあり方についてご審議をいただい てきたところでして、第45回、第46回と開催をいたしました。その結果、説明は省略し ますが、資料の3頁以降にあるように、雇用・能力開発機構の今後のあり方について分科 会の報告をまとめたところです。これを踏まえて3月23日の第47回分科会において、「独 立行政法人雇用・能力開発機構法を廃止する法律案」について、諮問、並びに答申をいた だいたところでして、それが1頁の資料1-1です。  内容としては、一昨年12月の閣議決定の線に沿い、さらに定員および予算等をカットす るということで、効率的、効果的な訓練の実施体制を図るということの観点から、雇用・ 能力開発機構を廃止し、職業訓練の関係の業務に特化し、その業務を独立行政法人の高齢・ 障害・求職者雇用支援機構に移管することを中心として書いています。  その他、職業能力開発促進センター、いわゆるポリテクセンター等を希望する都道府県 に移管するに当たりましての譲渡の特例の要件とか、勤労者財産形成法(財形)の融資関 係の業務を独立行政法人勤労者退職金共済機構に移管するといったこと、2頁の一番最後 の職員の採用の関係ですが、高齢・障害・求職者雇用支援機構及び勤労者退職金共済機構 の職員については意思のある者および能力のある者について基準を満たす者を採用する、 能開機構及び厚生労働大臣が職員の再就職の支援について必要な措置を講ずるよう努力す るといった内容です。  この案件については、分科会で「おおむね妥当」という答申をいただきましたが、その 際、労働者側委員から、職員の採用に当たり非自発的退職者の発生を防止するなどの雇用 に関する問題が一切起こらないように最大限努力するとともに、雇用のモチベーションの 維持強化に尽力すべきであるというご意見、こういった採用の承継のあり方とか採用労働 条件等の取扱いについて、今回の内容を前例とするべきでないというご意見が付されてい ます。  省令が2本、同日の分科会で諮問、答申をいただきました。1点は職業能力開発促進法 施行規則の改正でして、これについては資料の9頁です。これは、公共職業訓練の基準や 訓練の科目について、毎年見直しを行っているところですが、9頁の下のほうにあります が、3つの点について、訓練科の見直しとか、新しい訓練科の新設等についての見直しを 行うという省令の改正でして、これはおおむね妥当という答申をいただきました。  もう1つ、資料の11頁ですが、職業能力開発関係の助成金の見直しに関する雇用保険法 施行規則の省令の改正です。これはキャリア形成促進助成金、認定訓練の助成事業費の補 助金について、暫定的に雇用情勢が悪い中で高率の補助をする措置が取られていましたが、 時限的な措置でしたので、今年度で廃止をして原則に戻すというための改正でして、これ についてもおおむね妥当という答申をいただいているところです。 ○諏訪会長 伊岐局長、どうぞ。 ○伊岐雇用均等・児童家庭局長 資料はありませんが、雇用均等分科会の開催状況につい て紹介します。3月29日に開催され、同23日に諮問されている雇用保険法施行規則の改 正についてご議論を賜りました。主たる内容は、育児・介護雇用安定等助成金、短時間労 働者均衡待遇推進等助成金の制度の改編です。前者については、育児・介護休業法の施行 により、義務化された部分について義務化となった対象事業主についての助成制度の改正 を図るものです。また後者については、短時間正社員制度を導入した事業主に対する助成 の拡充を図るものです。簡単ではありますが以上です。 ○諏訪会長 ただいまの説明の点について、ご質問、ご意見等はありますか。 ○南雲委員 今、事務局の説明の中にもありました雇用・能力開発機構にかかわる内容に ついて、意見を申し上げたいと思います。説明の中にもありました3月23日の職業能力開 発分科会で諮問され、同日答申が行われた「独立行政法人雇用・能力開発機構法を廃止す る法律案要綱」について、意見を申し上げたいと思います。  雇用・能力開発機構の職員の雇用問題に関しては、職業能力開発分科会の議論において、 労働者代表委員は「平成19年に閣議決定された特殊法人整理合理化計画において、独立行 政法人に移行する際には雇用・労働条件とも承継するとしており、過去の経緯を踏まえた 対応をお願いしたい」との意見を述べたところです。また、使用者代表委員からも、「社会 保険庁の解体と今回の雇用・能力開発機構の廃止の例は違う。採用試験を行うことは、モ ラルの維持も含めて結果としてはよい方向に向かわないのではないか」という発言があり ました。さらには、厚生労働省からも「平成20年の閣議決定にあるが、雇用については、 十分配慮しなければならないことが何よりも大事である」との答弁がありました。  こうした経過を踏まえて2点申し上げます。雇用・能力開発機構の廃止に当たっては、 厚生労働省、雇用・能力開発機構、高齢・障害者雇用支援機構および勤労者退職金共済機 構は、現下の厳しい雇用失業情勢を踏まえ、非自発的な退職者の発生を防止するなど、雇 用に関する問題が一切起こらないよう最大限努力するとともに、職員のモチベーションの 維持・強化に尽力すべきである点です。  もう1点は、今後、独立行政法人の統廃合などがあった場合には、今回の雇用・能力開 発機構の職員の労働契約に係る権利および義務などの承継のあり方や採用・労働条件など の取扱いについて、今回の内容を前例とするべきではない。  以上、職業能力開発分科会の答申にも労働者代表委員の意見として付記させていただい ておりますが、本来、雇用を守ることを担務する厚生労働省の独法改革について、今後、 このような雇用スキームとならないよう改めて大臣にもその意を伝えていただくよう、お 願いしたいと思います。 ○諏訪会長 ほかにありますか。よろしいですか。事務局から今のご意見に対して。 ○杉浦審議官 ただいまのご意見については、分科会の際にもご意見を頂戴したところで すが、雇用問題については、厚生労働省としても十分配慮した対応をしてまいりたいと思 っています。また、ただいまいただいたご意見についても、大臣にその旨を伝えるように したいと思っています。 ○諏訪会長 ほかにご意見はありますか。以上が予定された議題ですが、それ以外で何か ご意見はありますか。 ○山浦委員 時間が押していますが、1点だけ要請を申し上げたいと思います。独立行政 法人の労働政策研究・研修機構、略称JILPTというのがありますが、その機構はお話があ ったとおり、労働に関する極めて貴重な現場の丹念な実態把握なり調査を分析して政策研 究する機関であり、従来から労使が運営に参画をしているわけです。ご案内のとおり、労 働をめぐる問題はまさに社会問題でして、重要度も極めて増していくという意味では我が 国の労働政策を専門とした調査研究機関でもあります。政策研究部門を持たない省庁はほ かにもありませんし、これ以上JILPTを縮小することはあってはならないと認識をしてい ます。縮小すると現場の実態把握や調査分析活動ができなくなり、的確な労働政策をつく れなくなってしまう恐れもあります。調査による実態の分析なくして政策立案はあり得な いと考えています。したがいまして、独立行政法人の見直しに当たっては、是非、こうし た点についても留意をして対応いただくよう、要請を申し上げておきたいと思います。 ○中野政策統括官 ただいまのJILPT(労働政策研究・研修機構)ですが、現在の状況を 申し上げますと、行政刷新会議からのヒアリングを受けているところでして、今後は議員、 民間人を含む事務局ヒアリングが予定されており、さらには公開事業仕分けの対象になる ことも考えられる状況です。我々も、山浦委員がおっしゃいましたように、労働政策審議 会にもこの機構の調査研究が資料として多く出されておりますし、このような調査研究は 労使双方から信頼される公平性、中立性が求められるものと考えており、JILPTの研究の 必要性、重要性も高まっていると考えています。したがいまして、当方からも今事務局ヒ アリング等の場で全力を挙げて説明しているところですが、今後とも労使はじめ委員の皆 さまにおかれましても、様々な場面でその必要性、重要性についてご支援いただくようお 願いしたいと思っています。 ○諏訪会長 ほかにありますか。大変時間が超過して恐縮でしたが、以上をもちまして本 日は閉会とします。最後に、本日の会議に関する議事録ですが、本審議会運営規定第6条 によりまして、会長のほか2名の委員に署名をいただくことになっています。つきまして は、労働者代表斉藤委員、使用者代表岡田委員、それぞれ署名人になっていただきたいと 思います。どうぞよろしくお願いします。本日の会議は、以上をもって終了します。どう もありがとうございました。 (照会先)政策統括官付労働政策担当参事官室 総務係(内線:7717)