09/12/02 第42回労働政策審議会障害者雇用分科会議事録 第42回 労働政策審議会 障害者雇用分科会議事録 1.日時    平成21年12月2日(水)10:00〜12:00 2.場所   厚生労働省 共用第8会議室(6階) 3.出席者  ○ 委員 (公益代表) 今野委員、岩村委員、菊池委員   (労働者代表) 石上委員、高橋(睦)委員、花井委員、矢鳴委員   (使用者代表) 飯ヶ谷委員、大島委員、斉藤委員、新澤委員、高橋(弘)委員   (障害者代表) 川崎委員、鈴木委員、副島委員  ○ 事務局  熊谷高齢・障害者雇用対策部長、吉永企画課長、奈尾障害者雇用対策課長、藤井地 域就労支援室長、渡辺障害者雇用対策課調査官、佐藤障害者雇用対策課主任障害者 雇用専門官、吉田障害者雇用対策課長補佐、松崎障害者雇用対策課長補佐 4.議題 (1)労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に関して検討すべき具体的論点 (「権利保護(紛争解決手続)の在り方」)について (2)その他 5.資料 1 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(「権利保護(紛争解決 手続)の在り方」について中間整理の抜粋) 2 海外における差別に係る裁判外紛争処理の例    参考資料 1 平成20年度障害者雇用実態調査結果の概要について 2 平成21年6月1日現在の障害者の雇用状況について 6. 議事録経過  ○今野会長  時間ですので、第42回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。今日、 欠席は佐藤委員、平木委員、松矢委員、野村委員、松井委員です。今日の議事ですが、 お手元の議事次第にありますように、第1番目が「労働・雇用分野における障害者権 利条約への対応に関して検討すべき具体的論点」でその中の、今日は「権利保護(紛 争解決手続)の在り方について」をご議論いただきます。もう1つ、「その他」がご ざいます。まず第1番目の議題について、事務局から資料の説明をいただいて、議論 したいと思います。よろしくお願いします。  ○障害者雇用対策課長  資料1と資料2につきまして、ご説明いたします。資料1「労働・雇用分野におけ る障害者権利条約の対応について」中間整理の抜粋でございます。これは2枚にわた っていますが、第4「権利保護(紛争解決手続)の在り方」ということです。まず1 番ですが、「企業内における紛争解決手続」ということで、1つ目、「合理的配慮」 は、個別の労働者の障害や職場の状況に応じて、使用者側と障害者側の話し合いによ り適切な対応を図られるものであるので、本来的には、企業の十分な理解の上で自主 的に解決されるべきものであるとの意見が大勢であった。これは「基本的枠組み」で も同じ話が出ているわけで、再掲ですが、大勢であったという意見がありました。  次も関連しますが、企業の提供する合理的配慮について、障害者が不十分と考える 場合に、それを直ちに外部の紛争解決に委ねるのではなく、企業内で、当事者による 問題解決を促進する枠組みが必要であるとの意見が大勢であったということで、これ が企業内における紛争解決手続の部分です。  2番ですが、「外部機関等による紛争解決手続」です。1つ目ですが、障害者に対 する差別や合理的配慮の否定があり、企業内で解決されない場合には、外部機関によ る紛争解決が必要となるが、訴訟によらなければ解決しないような仕組みは適切では なく、簡易迅速に救済や是正が図られる仕組みが必要であるとの意見が大勢であった ということです。次の○ですが、紛争解決手続としては、差別があったか否か、合理 的配慮が適切に提供されたか否かを、いわゆる準司法的手続(例えば行政委員会によ る命令)のような形で判定的に行われるというよりはむしろ、どのような配慮がなさ れることが適当か、何らかの差別が生じていた場合には、どのような措置を講ずるこ とが適当か等について、第3者が間に入って、あっせんや調停など、調整的に解決を 図ることが適当ではないか、との意見が大勢であった。これも再掲です。  3つ目の○ですが、紛争を処理する委員会を国・行政から独立した機関・第3者機 関として、新たに設ける必要があるとの意見がありました。一方、新たな機関ではな く、既にある労働審判や紛争調整委員会等を、権限の強化(出頭命令等)や体制の強 化(当事者の参画)をした上で活用したほうがいいのではないか、という意見があり ました。4つ目の○ですが、これは2つ前とも関連しますが、当事者間の自主的解決 が困難な場合に国の行政委員会等の形で、いわゆる準司法的手続を設けることについ ては、結局はそこでは解決せず、裁判まで行ってしまい、解決までに時間がかかって しまうのではないか、との意見がありました。また、このような準司法的手続を設け る場合には、手続や証拠の採否、立証等の厳格さをどこまで求めるべきかについても 考える必要があるのではないか、との意見がありました。  次の○ですが、外部機関による紛争解決手続を設ける場合には、労働法の専門家や 障害者も入って調整機能を果たすような形がいいのではないか、という意見がありま した。次ですが、行政手続で解決されない事案については、労働審判を活用すること が考えられる、という意見がありました。最後は、紛争解決機関とは別に、差別事例 やその救済状況等、条約の実施状況を監視し、又は周知等を行うモニタリング機関に ついても検討すべきではないか、との意見がありました。以上が中間整理の関係部分 です。  続きまして、資料2です。前回少しご指摘いただきました海外における裁判外の訴 訟の例をまとめてみたものです。英、米、独、仏についてまとめたものがありますが、 まず全体的なことを申し上げますと、アメリカ、イギリスについては元々、差別禁止 法制というのがあったわけです。これは障害に限らないわけです。EU諸国におきまし ては2000年のEU指令に対応するためにいろいろな措置が講じられてきたという経緯が あります。  そういう全体の枠組みの中で、ご説明しますと、まずアメリカです。(1)救済機関に つきましては、雇用機会均等委員会、いわゆるEEOCです。こちらは独立委員会として 存在いたしまして、例えば障害等を理由とする雇用差別については相談、調査、調整、 提訴等が行われます。その事案が生じたときから180日以内に原則として申入れをする こととなっています。仮にADA違反であると信じるに足る根拠がある場合には協議、調 整、説得等を通じて差別を排除する努力をしなければいけない。180日間はEEOCが排他 的管轄権を持ちます。ここで解決されない場合には、EEOC自体が原告になって訴訟が 提起できるという枠組みがあります。この180日を経過して提訴しない場合であるとか、 被害者への訴権付与によって司法上の救済手続が開始できるということです。 (2)ですが、企業内手続の例でして、インフォーマルな相互関与プロセスがあります。 これは法律上、使用者の義務として法定されているものはありませんが、EEOCにおき ましては合理的配慮を提供する際に、例えば障害の障壁を取り除くような配慮がある とか、そういった労使間の協議のプロセスが適当な合理的配慮を提供するための重要 なツールであるという位置づけです。  このプロセスにつきまして現実問題としては使用者のほうでも、裁判上不利になら ないようにという配慮なのか、誠実に対応されているということが多いようです。し たがって、アメリカ全体として企業内手続も重視した上で、どちらかというと、行政 救済重視のような仕組みではないかというふうに考えるわけです。  2番のイギリスですが、イギリスは多様な制度を持っているわけですが、元々1995 年にアメリカの影響等もあったようですが、DDAが制定されたという中で、救済機関も 障害に限らず性差別、人種差別、そういった各種差別の委員会があったわけですが、 これは2006年に平等人権委員会(EHRC)ということで統合されているわけです。したが って、元々各種差別禁止法があった上でのEHRCの設立ということですが、救済手続の 概略としましては障害を理由とする差別等につきまして、調査、不法行為通告、提訴 等が行われるということです。調査の結果、不法行為があったという場合には不法行 為通告をやった上で、不法行為の反復・継続を避けるための行動計画の策定等を求め られるということです。これもアメリカのEEOCと似ていますが、自ら訴訟が提起でき るという枠組みです。  次頁、(2)の助言あっせん仲裁局(ACAS)です。これは比較的歴史が古いわけでして、 1975年から出来ております。救済手続の概略だけ申し上げます。労働紛争全般を扱え るようですが、労使紛争のあっせん、調停、仲裁、助言等ができるということです。 個人が例えば雇用審判所に事件を申し立てた場合には、このACASに送付されて、当事 者双方が希望する場合にはあっせんによる解決を図るということです。それから、企 業内手続ですが、苦情処理手続の設置というのが雇用法上位置づけられているという ことで、苦情の提出や事業主による調査、苦情に対する決定等について、手続の設置 が義務づけられるということです。イギリスの場合は、例えば社内で文書によって公 式の苦情解決手続をまずやっていただくと。これをやっておりませんと、後に雇用審 判所の申立てを受理しないことができるというようなことです。  3番のドイツですが、ドイツはどちらかというと裁判所重視の枠組みのようです。 まず(1)で救済機関ですが、連邦反差別局というのが2006年の一般均等待遇法によって 設置されているということです。この動機はEU指令の国内法化の必要性ということが 言われているようですが、扱っているものは障害には限定されていないようです。手 続の概要を申し上げますと、差別があったという場合には相談、法的手続に関する情 報提供、他の相談機関の紹介、意見の表明、和解案の提示等を行うということですが、 この和解案については、決定権はないわけです。それから、関係当事者に対して、中 立的な立場での意見の表明、和解案の提示を行うわけですが、これは個々のケースに ついての具体的な解決策というよりは、一般的な、中立的な意見の表明であるという ふうに書かれているわけです。  (2)ですが、企業内手続でありまして、就業者の不服申立権がまずあります。就業者 が不利益取扱いを受けたと感じた場合には、事業所等の担当部署に不服を申し立てる 権利があります。それから重度障害者代表委員、これはドイツではこれに限らず事業 所内代表という制度がかなりあるわけですが、5人以上の重度障害者が常用雇用され ている事業所等で選出されます。関係法令・協約や合理的配慮提供義務等の実施状況 の監視や重度障害者からの提案・苦情の受付、交渉等を行うということです。  最後にフランスですが、救済機関がご案内のとおりHALDEが設けられているわけです。 これも2004年にできていまして、EU指令に対応するために作られたという側面がかな りあるというわけです。概略としましては差別について調査、調停、和解案の提示、 勧告等を行うということでして、仮にこの勧告等に従わない場合には、官報に公示さ れるという枠組みがあるようです。差別被害者に限らず、HALDE独自で当事者の反対が なければ、差別事件を扱うことができるということです。それから調停のあっせんや 和解案提示を行った上で、勧告を作成します。和解金や賠償金の支払いによる和解も 提案もできるということです。  (2)の企業内手続です。従業員11人以上を雇用している事業所で選出される従業員 代表委員がおりまして、差別が確認された場合には使用者にその事実を訴えることが できると。それから、使用者又はその代表は直ちに調査を行った上で、必要な措置を 講じるということでやっているわけです。いずれにいたしましても、英、米、独、仏 におきましても、インフォーマルというか、企業内というか、そういった手続はかな り広く設けられていて、機能しているのではないかというのがまとめとして言えるか と思います。その上で、行政委員会重視なのか、裁判所重視なのかというのは、それ ぞれの全体の法体系の中で、やはり違ってくる部分があるかと思うわけです。以上で ございます。  ○今野会長  ありがとうございました。ご質問、ご意見をお願いいたします。今日のテーマは権 利保護とか、紛争解決手続についてなのですが。  ○川崎委員  私は精神障害者のことでお話をしたいのですが、先日会合がありまして、企業に就 職したという人がおりました。本当にホワイトカラーでネクタイをして、立派な背広 を着て、この5月に就労移行から企業に就職できたということで、「それはよかった じゃない。」と言ったのですが、彼の返事は「はあ」となかなか勢いがありませんで した。聞いてみますと、短時間労働で入っているのですが、「職場に行くと、デスク は用意されていますが、仕事は何もないのです。」と言うのですね。「職場に行って いて、机に座って仕事をしているふりをしているんです。」という言い方をしていま した。「えっ。」と私が言いましたら、彼はしっかりとわかっておりまして、おそら く、これは企業が雇用率を達成するためのことではないかと言いました。 「それでいいの。」と私が聞きましたら、「まあ、一応収入があるわけですから、自 分としては、いいというか、いたし方がないのかな。」というようなことでした。そ の人の話を聞きまして、仕事をするということは大変生きがいになるのですが、こん なことでいいのかなということをちょっと私は感じました。精神とか、知的の人は、 なかなか物が言えない。何か言いたくても何か自分で抑えてしまって、我慢というか、 そういう状況にいるのかなということです。やはり何か言えるような、大きな紛争ま では至らなくても、苦情処理みたいな形で、それも当事者が物を言えませんので、そ ういうことを言える支援者がいてくれれば。  彼は大変にパソコンに秀でている人です。就労移行のときにもそういうことでとい うことで、そういう関連の企業に入ったにもかかわらず、パソコンの仕事も何も与え られていないということに対しては、私は大変に遺憾に思いました。果たして、これ が仕事の定着につながるのか、こういうところから、なかなか精神の人の定着という のは難しいのではないかと痛感いたしまして、やはり紛争というか、大きなことには ならないと思うのです。日常的な、企業内での苦情処理の中に、代弁者というか、精 神とか知的の人の立場をしっかりと説明してくれるような方が入った上での企業内で の解決が大変に望まれるのではないかということを、先日痛切に感じてまいりました。 以上です。  ○今野会長  ありがとうございました。他にいかがですか。今おっしゃられたことは、この前の 中間整理の研究会でも大分議論になりましたね。  ○川崎委員  そうですね。  ○今野会長  他にいかがですか。  ○花井委員  紛争解決の手続に関して、意見を述べたいと思います。企業内での自主的な解決と いうのは大前提だというふうに思っておりますし、まず、その体制がきちんと整備さ れなければいけないだろうとも思います。相談窓口ですとか、苦情処理の体制の整備 が必要だろうと思います。企業内で自主的な解決が図られなかった場合、やはり実効 性ある紛争解決の仕組みが是非とも必要でしょう。通常、民事訴訟及び労働審判制度 など、司法救済であるとか、あるいは行政救済、これは都道府県の労働局が持ってお ります紛争調整委員会などを活用することによって、調停を行うということを予定し て、それに対する関連規定をきちんと整備していくべきではないかと思います。  その場合、私たちが重要だと思うのは、立証責任に関する規定が必要ではないかと いうことです。立証責任は大変労働者に負担がかかるわけですが、原告労働者に負担 がかからないように、差別の存在を推認させる事実を提示することとし、使用者はそ の措置が障害を理由とするものでなく、客観的理由によって正当化されるものである ことを立証するものとするような、原告の労働者と使用者の立証責任の配分をある程 度決めておく必要があるのではないかと思います。それから、行政救済につきまして は中間整理にもあるように、紛争調整委員会ですが、これがいま実効性があるかとい うと、大変疑問に思っています。もう少し権限を与える必要があるのではないかと思 っております。  私たちは、最初に行政から独立した第三者機関であるとか、あるいは人権委員会と いうようなものを想定しておりましたが、やはり早期の解決、実現性を考えたときに、 今ある紛争調整委員会の権限を強化して、それを活用していくような仕組みを作るほ うが早いのではないかと考えました。その紛争調整委員会ですが、出頭命令の権限を 付与するとか、それに応じなかった場合、科料を課すというようなものも必要ではな いかと思います。  調停会議のメンバーに、やはり専門的な知識や経験を持った専門家とか、あるいは 障害当事者、労使の代表、そういう人たちを加えた合議体制で調停ができるような体 制を整備する必要があるのではないかと。その調停会議にも勧告権限を付与するなど、 やはり全般的な権限の強化が必要ではないだろうかと考えております。  最後なのですが、行政制裁として、企業名公表などはきちんと入れておく、法的に 規定しておく必要があるのではないかと思っております。あくまでも企業内の自主的 解決が中心だと思いますが、差別の救済はなかなか企業内だけで解決できない場合が 多いのではないかと思います。外部にきちんとした対応もできる機関を、権限を持っ たものを作っておく必要があるのではないかと考えております。  ○今野会長  ありがとうございます。  ○新澤委員  今の話の続きではありませんけど、あまりそういうしっかりした枠組みを作ってし まうと、せっかく障害者を雇用しようと思う事業所も、これは私が最近、我々の中小 企業団体のメンバーにちょっと障害者雇用で聞いたら、もういろいろ面倒だったら、 金を払って、ペナルティを払って、やらない方がいいという声がありました。基本的 にはお金を払うことでなくて、いかに障害者を雇うかという問題なので、あまりがん じがらめの法律で締めるのはどうかなと私は考えます。最賃ぐらいはやはりオーバー しないといけないけれども、問題の目的は、あくまでも1人でも多く障害者を雇うと いうことですから、そういうことも大事ではないかと私は思います。  ○今野会長  中間報告でも、この辺は皆さん合意だと思いますが、企業内の労使間で自主的に解 決してほしいというのが大前提なのです。これは、もう皆さんの合意が出来ています。 これが出来なかった場合、どうするかということについての解決の仕組みはどうやっ て設定するのかという問題が別途あるということだと思いますので、いずれにしても、 企業内の労使間で自主的に解決してほしいというのが大前提なのです。  ○新澤委員  枠組みとして裁判の調停という方法もありますし、これは私の個人的な意見ですが、 あまりそういう恐いような、我々から見ると、そんな感じを受ける。今お話を聞いて いると、何か恐すぎる。だったら、お金を払って、問題がないほうがいいんじゃない かというような。私も現実に自分がそういう立場になったらば、給料を払うお金を、 いくらでも言われたお金を払って、避けたほうがというような感じになると思います。 まして、今みたいな、人が余っているような状況においては。  ○今野会長  意外にこの中では、いわゆるハードライナーではなくて、ソフトライナーの合意部 分が広くあって、1つは先ほど言いましたように企業内で労使間において自主的にと いうのは、一種のソフトライナーなのですね。それで解決できなかった場合でも、裁 判上の判定的な機能にいく前に、調整的にどうにか解決できないかと。相談して、こ うやって、アドバイスをして、こういうふうに解決したらどうでしょうかという調整 的な解決の方法を重視するというのに、何となく合意が出来ているかなというふうに は思っているのですが。最初から判定にいかないで、調整でやっていこうと。ソフト なのです、まだ。  ○新澤委員  川崎先生の話の最初の部分で、そういうことがあるかなと思いまして。  ○今野会長  川崎委員のご発言はいってみると、企業内での労使での自主的な解決の中の仕組み がきちっとあるといいですよねというご趣旨だと思うのですが。あまり、そんな心配 されなくていい。  ○岩村委員  新澤委員のご心配も分かるのですが、多分中小企業の比較的従業員数もそれほど多 くなく、したがって、経営者の方なり経営幹部の方と従業員との間、つまりそこで働 いておられる障害者の方との距離が、それほど遠くないような場合であれば、私はそ れはもうまさに企業内で話し合うということが、元々できやすいだろうと思っており ます。そういう所で企業内でもってそれぞれお互いに知恵なり、アイディアを出し合 ってもらって、何か困ったことがあれば、そこは自主的に解決していっていただくと。  元々の中間報告というのは、おそらくそういうことを考えていて、それが企業規模 が大きくなると、やはり中小企業さんのような形でのコミュニケーションなり、相談 というのは難しくなるので、ある程度企業内なり事業所内で、紛争解決なり苦情処理 の手続というのを制度化しないと、ちょっと動かないですよねという大体のニュアン スなのだと思うのです。  ○新澤委員  十分わかります。ただ、この法律は中小企業にも適用されるわけです。  ○岩村委員  ですから、そこはそれぞれの企業のサイズとか、状況に応じて、制度化する必要が あるような所もあれば、必ずしもそうではないけれども、一応、何か受け皿として問 題が上がってきたときには、やってくださいねというような形ということだと思いま すので、そこまでご懸念されることもないのかなというように思います。  ただ、おそらく、一番問題になるのはそうやってみたけれども、結局、当事者双方、 会社側と障害者の方なりとの間で、どうしても話がうまくつかないといった時にどう するか。それは最終的には外部で第三者的機関が何しろ入ってもらってやると。ただ し私のイメージでは、そこも今座長がおっしゃったように、直ちに何か調停とか、判 定とかという話ではなくて、やはり行政当局などが絡む形で、こういうやり方もあり ますというようなアドバイスをするということによって解決できる。例えば、合理的 配慮とかは、そういう形で解決できることがかなりあるのではないか、と私はイメー ジとしては持っているのです  それでもさらにというところになってくると、ステップが先に進んでいってしまう ので、そうなると最後は調停とか判定というステップになってしまうということだと 思います。そこのところはちょっとご理解いただいて、直ちに、何かすぐに裁判所と か、調整委員会での判定というような話がすぐに出てくるわけではないと思います。 場合によって、どうしてもうまくいかないハードケースが最後ぎりぎり詰めて、「 じゃ、どうしますか」ということなのだと思います。  ○新澤委員  現実は私もよく理解しているのですが、一方では先程話したようなこともちょっと 今は多いのですね。ということで、両方を加味しまして。  ○鈴木委員  多分、委員のご心配はあるかと思うのですが、基本的には先程花井委員がおっしゃ った路線でいいかなと思っていまして、ここまでのところで発展してきてしまうとい うのは、どちらかというと合理的配慮のレベルを超えていて、不当労働行為だったり、 そういったところに発展した場合のような気がしてしまうのですね。原点に立ち戻っ ていわゆる合理的配慮で、障害のある人たちがどうやって働けるか、ということを考 えていて、「これもうちょっと配慮してくれない」というレベルは、やっぱり企業内 なり、そこら辺で解決できるのではないか、という気はしているので、ご心配はさる ことながらここまで発展することは、まずないのではないかという気はするのですが、 そんなところでいかがですか。  ○今野会長  はい、どうぞ。  ○花井委員  岩村先生が解説してくださいましたように、私が言っているのは、直ちに紛争調整 委員会に持ち込むとか、調整会議を開けとかということではなくて、先程も言ったよ うに、基本的には、企業内で労使で、そういう意味では労働組合の役割も重要になっ てくると思うのです。都道府県の労働局が仲裁に入るとかしてもだめだったという場 合、権利として、訴える、救済される仕組みを今回のことを契機にきちんと作ってお くべきではないか。それが頻繁に起こるということを想定しているわけではなくて、 そういう意味だということを是非、ご理解いただきたい。  ○新澤委員  それは分かりますが、世の中というのは、やっぱりあるかないかわからないことに いろいろあると、避けるということがあるのですね。それでなくても、今私はこうい うふうに関わったので、是非という話をするのですが、現状では、健常者がいっぱい 余っているのに、そこまでしてもというんだったら、というのは、やっぱりざっくば らんに申し上げるとそこなのですよ。私も何回かこういう席に出て、その気になって 一生懸命お話をするんですが、今日もいわきでトップセミナーがあるのですが、必ず 冒頭に、そういう話をするんです。そういう気持でただお話しただけで、私自身もそ の件は理解はしています。  ○今野会長  はい、どうぞ。  ○副島委員  知的の場合も川崎委員の言われるのと同じような形が起こるのですよ。我々もケー スで、対応策となるのは、内部で調整が結構きくので、特に小企業ですが、幹部の社 長さんなどがよくわかっていても、内部の職員間の中で仕事の能力とか、仕事をする 上でのいろいろなトラブルとかいうところを指摘されるわけですね。その指摘の仕方 が、すごく本人にダメージを与えるような指摘をされるので、どうしても周りから見 たらやっぱり適当な仕方ではないのではないか。早く言えば、合理的配慮が欠けてい るというような形で言われるかもわからないが、その情報が伝わった時に、就労支援 のメンバーたちが動きますよね。そして、向こうの幹部と話す中で、今度は職員間の 中に話がさらに浸透していきます。結局、どういうふうに対応すればいいかがわから なかったとか、結局最初の関わるときの条件のところが、十分に徹底されてない点が 多いのです。  だから、大きなトラブルに行く前に、ある程度解決することはできると思うのです が、確かに言われるとおり、どんな方法をやっても解決しなかった場合の対応の仕方 というのは、1つは考えておかなければいけないだろうと思います。そういうところ から、そこの対応の仕方の所がメインではないということで、そういう理解をしてい けば、少しは先に議論が進むかなと思ったのですよね。  ○今野会長  先程花井委員からの紛争調整機関は、既存の機関を活用したらいいのではないかと いうお話があったのですが、この辺について、他にご意見ございますか。やっぱり独 立で立派なものを作ったほうがいいとか、という意見もあると思うのですが。結局、 今日の海外の例は、差別案件を全部1カ所でいろいろなことをやるというのだから、 言ってみれば、既存の機関を活用しているということですか。  ○障害者雇用対策課長  まあ、一言でいうとそういうことになります。  ○今野会長  はい、どうぞ。  ○岩村委員  こういうご時世なので、これからまた新しい組織を作るとかいうような敷居が高い というのは、もう皆様もご承知だと思います。そうすると、やはり既存の機関を使っ て、それを障害者の方々の問題に対処できるようなアレンジメントを加えていくとい うのが、おそらく一番現実的でしょうし、かつ、すでに動いている機関ですので、ワ ークしやすいというのはあると思います。  私自身のイメージとしては、例えば、紛争調整委員会を使うのであれば、今労使が 意見を述べるというような形で関与するというところに、例えば、知的障害者の方の 案件が上がってくれば、知的障害者の方の団体のほうから来ていただいて、意見を述 べていただくとか、場合によっては、当事者を説得するとか。そういう役割を果たし ていただくというのが、おそらく、一番現実的でかつ、機能もするのではないかなと いうイメージとして持ってます。  ○菊池委員  私も既存の委員会を使うのがいいと思いますが、そのときに、同時にそういうもの があるということを、当事者にもしっかり周知していくと。しかも、そういうことを 使うことが、決して恐ろしいことではない、ということも含めてきちんと周知すると いうそれが大事かと思います。  ○岩村委員  すみません、一言加えておきます。障害者の問題について、今でも紛争調整委員会 を使おうと思えば使えるのです。ですから、おそらく知られてないということもある のだと思いますので、おっしゃるとおりではあろうと思います。  ○今野会長  はい、どうぞ。  ○花井委員  私たち最初は、人権擁護法案ができ人権委員会ができると思ってましたが廃案にな ってしまいました。現実的なものとして、紛争調整委員会がいいのではないかと思っ てますが、是非とも権限の強化を検討してほしいと思います。直ちに出頭命令をかけ るということはないと思いますが、今のままですと、あまりにも権限が付与されてい ないので、そのことは強調しておきたいと思います。  ○今野会長  ありがとうございました。ほかにございますか。はい、どうぞ。  ○高橋(弘)委員  基本的な建て付けとして、何よりもまず企業内での解決を図るということ。それで、 どうしてもという場合は、そうした外部機関による手続を整備するという基本的な方 向性について理解はいたしますが、やはり、こと合理的配慮になりますと、相当個別 性が強いということもあります。外部機関のそういった委員の方が、個別の会社の事 情まで十分に知り得るのかというと、それにはかなり限界があるだろうというような 気もいたします。  そういう意味においては、まず何よりも企業内の解決を最優先していくということ だろうと思いますが、さはさりながら、私がいちばん懸念するのは、制度が始まった ときに、やはり企業側の窓口の関係者の人たちにとっても、十分な情報等もないとな かなか円満な解決が図られにくいのではないかなという気がいたします。やはり、企 業内の紛争解決手続のアシスト体制をしっかりと固めていただいて、情報提供その他 ということを、是非考えていただくことが非常に重要だと思います。またあるいは、 行政とか労働局等の方々についても、合理的配慮に関するいろいろな研鑽を積んでい ただいて、やはり先ほどから出ましたが、より良いアドバイスをしていただくという 前向きのことがとても重要です。紛争で、争いでというような形になるべくしないよ うな、ちょっと言葉では言いにくいのですが、そういうようなバックアップ体制とい うのでしょうか、それがないとなかなか厳しいのかなという感じがいたします。  ○鈴木委員  思うのですが、その紛争とか調停とかの以前に、企業側が合理的配慮をしようとす るときに、まず、起因というか発端というか、それが障害当事者にとって配慮されて ないのではないかというところから、そういうことが起こってくると思うのですね。 その場合、企業がいくら努力してもできないよ、こんなに金がかかってはできないよ とか、いろいろな理由があるかと思うのです。例えばその理由の1つに、こういうこ とを整備しないとだめだよとか、こういう環境を整えないとできないよという時にも、 そういう合理的配慮に限ってというか、補助金なり給付金という言い方がどうか、そ ういう金銭的な面での企業に対するバックアップとかというのは考えられているので すか。それが、何かうまいこといくと、あとは心情的ないわゆる気持の問題だったり するところだと思うので、ハード面というか、建物だけではなくて、いわゆる、機械 だとかそういった物理的な面でいろいろ解消できるためには、やはり金がかかったり するわけで、その辺のところはどうなっているのですか。  ○今野会長   ずっとご議論を伺ってますと、今の鈴木委員のも含めて、企業内で自主的にまず解 決しましょう。これが大前提です。それで、だめな場合はやむを得ないので、外部の 第三者機関にその解決法をお願いしなければいけないが、その時でも、できるかぎり 調整的な方法でやるということを重視しましょう。しかも、それを担う外部機関は、 既存の機関を上手に使っていった方がいいのではないですか。これが何か仕掛けの基 本構造で、これを機能させたり、プロモーションさせるときに、あるいは機能強化す るときに、例えば企業が自主的に解決できるように、行政としてどういうアシストを したらいいのか。それから今鈴木委員が言われたように、何か行政がお金などでサポ ートするのかとか、あるいは、花井委員はそういう紛争解決機関に権限を与えたらい いのではないかという議論になっているのですね。ですから、私としては一番最初の 3つの骨格は決まったから、これでもう大成功と。あとはその辺をプロモーションし たり、機能強化するためには今度はどういう政策とか、周辺状況に打ってくるか、整 備してくるかということになるかなと思います。  ただ、問題はそこはここのテーマかどうかというのが、少し気になっています。非 常に重要だと思いますが、私としては、最低限先程3つの部品が合意いただければ大 成功で、あとは今日解散でもいいくらいかなと思っています。でも、それを機能させ るためのこんな要件が必要だということは、どうぞ意見を出していただければ、今後 の参考にはなると思っています、というふうに勝手に整理したのでが。  ○新澤委員  それでちょっと引っ掛かったのは、その出頭命令ということは、そういうことでな いように、この出頭命令なんていう言葉を聞いただけで、中小企業経営者は震え上が ってしまいます。  ○今野会長   先程の3つの部品については、よろしいですね。後は徐々にだんだん詰めていくこ とになると思いますが、よろしくお願いします。  ○岩村委員  今鈴木委員が最後にご指摘になった所は、紛争解決を最終的にどう持っていくかと いう話でもあるのです。問題の焦点は結局のところ、合理的配慮と過度の負担という レベルで、過度の負担の所を、どういうふうに考えるなり、あるいは、過度の負担に ならないように支援するか、という合理的配慮そのものの中身の問題、ということか なと思います。ですので、それがあればより紛争解決自体なり何なり、あるいは、そ の話し合いとかアドバイスというものがうまくいくということは確かだと思います。 ちょっと今日の話題からややずれていて、それはむしろ合理的配慮と過度の負担その ものと、あるいは、公的助成なり何なりというものの可能性というので、むしろ、そ ちらで中心的にご議論いただいたほうがよろしいかなというように思います。  ○今野会長   他にご意見ございますか。よろしいでしょうか。今日のトピックは比較的皆さんの コンセンサスがとれて、やりやすいです。それでは、第1番目の議題は、この辺にさ せていただきます。  続きまして、「その他」がございまして、いくつか事務局のほうから情報提供をし ていただきたいと思います。1つは、平成20年度の障害者雇用実態調査結果の概要と、 もう1つは、平成21年6月1日現在の障害者の雇用状況について、お手元の資料でい くと、参考資料1と3になりますが、これについて、説明をしていただけますか。  ○地域就労支援室長  お手元の参考資料1の「平成20年度障害者雇用実態調査結果の概要について」のご 説明をさせていただきます。最初に恐縮ですが、この調査の目的、内容ですが、表紙 を1枚めくって、表紙の裏側の2行目以降ですが、「調査の概要」ということで、民間 事業所における障害者の雇用実態を把握するために、5年ごとに実施しているもので あり、以下の2つの調査を実施したということで、前回平成15年度に実施しています。 1つ目の「事業所調査」ですが、全国の従業員5人以上の民営事業所約7,500事業所を 対象に調査をしております。内容としては、障害の種類・程度、賃金、労働時間等に ついて調査をしました。回収数5,511事業所、回収率73.2%ということで、前回より 1割増の事業所から回答いただきました。大きい2番目の「個人調査」ですが、個人 調査につきましては、当該事業所に雇用されている身体障害者、知的障害者及び精神 障害者を対象に職業生活に対する意識等について、調査しています。回収数について は、身体の方が1万2,393人、知的の方が1,678人、精神障害者311人ということで、 前回よりも対象数は大幅に増加しています。  恐縮ですが、また表紙に戻って、まず調査結果のポイントからご紹介させていただ きます。「1 事業所調査の結果」の1つ目の○ですが、前回と比較すると、週所定 労働時間が20時間から30時間未満の短時間労働者が増加したというのが1つの特徴で す。そこに種別ごとに書いてありますが、身体障害者については、前回より6.7%増の 14.7%、知的については、10.4%増の13.2%、精神につきましては、20%強の増加で 24.8%という結果になっています。身体については、高齢化に伴うもの、知的障害者 につきましては、一般的には短時間労働者が多いと言われている飲食業及び卸小売業 なんかの雇用の場が増加してきたと思っております。精神障害者については、ご案内 のように、平成18年度から20時間以上の方も、雇用率の対象になったことと、精神障 害者の特性から短時間労働者を希望する方が多いということで考えております。  2番目の○です。正社員の割合ですが、身体障害者は64.4%、知的障害者は37.3%、 精神障害者は46.7%ということで、前回調査と比較すると、身体と精神につきまして は、ほぼ一般の雇用者と同様に少し低下していますが、知的障害者については、前回 50.6%が今回は正社員の割合は37.3%となっているところです。  3番目の○が平均賃金ですが、身体障害者は25万4,000円、知的障害者は11万8,000 円、精神障害者は12万9,000円ということで、身体障害者と知的障害者については、 賃金は微減ですが、精神障害者については、短時間労働者が増えたということの背景 に少し低下をしています。  4番目の○ですが、事業所側が障害者に配慮している事項として、身体障害者と精 神障害者については、「配置転換等人事管理面についての配慮」というのが一番多く、 知的障害者につきましては、「工程の単純化等職務内容の配慮」が最も多いというこ とで、これも前回と同様の傾向を示しています。  ポイントの2番目、「個人調査の結果」です。1つ目の○のところですが、障害者 本人から職場における改善が必要な事項や要望として最も多い項目は、身体障害者に ついては、「労働条件・時間面での配慮」40.4%、知的障害者については、要望とい うことで、「いまの仕事をずっと続けたい」56.7%、これは知的障害者が圧倒的に多 い項目です。精神障害者については、その障害特性から「調子の悪い時に休みをとり やすくする」というのが30.8%となっています。  2つ目の○ですが、将来に対する不安としてお聞きしましたところ、最も多い項目 は、身体障害者については、「老後の生活が維持できるか」64.8%。知的障害者につ きましては、これも若年層が多いという特徴もございますが、「親がいなくなったら 生活を助けてくれる人がいなくなる」38.2%、精神障害者については、「このまま仕 事を続けられるかどうか」というのが83.0%となっています。  1枚めくって、中段より少し上の所、「調査結果の概要」の所ですが、少しブレー クダウンする形でご紹介させていただきます。「1 事業所調査」です。(1)アの障害 の種類・程度別の雇用状況ですが、身体障害者の障害の種類別に見た場合、肢体不自 由は36.6%、内部障害は34.6%、聴覚言語が16.8%、ここに記載はしてありませんが、 視覚障害については一応4.5%という数字を示しています。ここで言えることは、肢体 不自由については、前回よりも10%強低下をし、内部障害については、約15%位増加 しているということで、特徴としては、内部障害者が増加しているということです。 知的障害者については、重度の割合が36.3%ということで、これも少し増加をしてい ます。また、精神障害者については、把握の仕方ですが、手帳により確認をしている ものが45.6%、それから医師の診断等で確認しているのが53.6%となっています。な お、精神の手帳の等級を見ると、2級の方が21.3%で最も多く、それから医師の診断に よる確認のうち、最も多い疾病については「そううつ病」35.6%となっています。  それから、イの雇用形態につきましては、先ほど申し上げましたのでちょっと省略 いたします。ウの労働時間ですが、先ほどは短時間労働者について、ご紹介申し上げ ましたが、30時間以上の労働者としてみた場合に、身体の方が82.8%、知的の方が79. 1%、精神障害の方が73.1%です。  それからエの職業別に見ると、身体障害者は事務的職業がいちばん多い。知的障害 者については、製造業における生産工程・労務の職業が半数強ということで最も多く、 精神の方については、専門的・技術的職業が40.2%となっています。オの賃金につい ては、先ほど申し上げましたので省略いたします。  次の頁に移って、いちばん上のカの勤続年数ですが、この勤続年数につきましては、 (注)が示していますが、これは障害となった時点からの勤続年数ということで、ご 理解いただきたいと思います。平均勤続年数を見ると、身体・知的の方については、 9年2月、精神障害者の方は若干短いので6年4月ということになっています。  「(2) 障害者雇用にあたっての課題・配慮事項」というのは、後ほど本文のほうで ご紹介させていただきますので、省略します。  「(3) 関係機関に期待する取組み」ということで、事業所サイドから関係機関に期 待する取組みということで、身体障害者については、「障害者雇用支援設備・施設・ 機器の設置のための助成・援助」というのが最も多くて、それから知的及び精神の方 に対する事業所側の要望としては、「具体的な雇用ノウハウについて相談できる窓口 の設置」というのが最も多くなっています。  それから、調査項目の大きい2番目の「個人調査」について、ご紹介申し上げます。 「(1) 身体障害者」の「ア 職場における改善等が必要な事項」ということで、先 程もちょっとご紹介しましたが、身体障害者については、「労働条件・時間面での配 慮」、以下「能力に応じた評価、昇進・昇格」、それから「コミュニケーション手段 や体制の整備」となっています。それから、イの仕事に関する相談相手としては、「 家族・親戚」が最も多く、それから「職場の同僚・友人」、それから「職場の上司や 人事担当者」となっています。将来に対する不安について、先ほど申し上げましたが、 「ある」と回答した方が7割いらっしゃるということで、「老後の生活が維持できる か」の次に「仕事を続けられるかどうか」という不安の項目として挙がっています。 「(2) 知的障害者」ですが、「ア 就職にあたっての相談相手」ということで、「 家族」、「学校の先生」が27.8%で最も多く、以下「ハローワーク」となっています。 それから「イ 職場での要望事項」、先ほどもご紹介しましたが、「今の仕事をずっ と続けたい」というのが知的の方は圧倒的に多く、以下、「ほかの仕事もしてみたい」 「職場で困ったときに相談できる人がほしい」というのが10.7%となっています。そ れから、「ウ 職場で困ったときの相談相手」としては、「職場の上司」と「職場で 一緒に働いている人」という順になっています。  次に1枚めくってエの知的障害者の「将来への不安」と聞いたところ、身体障害者 より少し少ないのですが、「ある」と回答した方が53.3%、その理由としては、先程 申し上げた「親がいなくなったら生活を助けてくれる人がいなくなる」ということと、 「いまの仕事をつづけていけるかどうかわからない」というのがその次になっていま す。  最後の「(3) 精神障害者」ですが、「ア 就職に際しての相談先」ということで、 ハローワークが43.4%、次にこれは精神障害者の特徴でもあるのですが、「自分で探 した」というのが23.5%、約4人に1人となっています。それから、「イ 職場にお ける改善等が必要な事項」ということで、「調子が悪いときに休みを取りやすくする」 という次に、「業務遂行の援助や本人、周囲に助言する者等の配置」というのが29.5 %と、これも比較的高い割合になっています。それから、「ウ 仕事に関する相談相 手」ということで、「家族・親戚」が40.8%、精神障害者の場合は、「医療機関」が 37.3%、「職場の上司や人事・健康管理担当者」が33.8%となっています。  最後の「エ 将来への不安」という所で、「ある」と回答した割合が身体障害者な らびに知的障害者に比べて随分高く83.3%の方が、将来について不安があると回答し ています。不安内容としては、「仕事を続けられるかどうか」「老後の生活に維持で きるかどうか」というのが多くなっています。  以上のポイントと概要をお示しいたしましたが、調査結果の内容で、先程ちょっと 省略した所で、お手元の資料18頁をご覧になっていただきたいと思います。18頁の4 です。当分科会のテーマとは必ずしも添うものではないかもしれませんが、一応その 事業所側が障害者雇用上の課題及び配慮についてどう考えているかということをご紹 介申し上げます。「(1) 雇用するにあたっての課題」ということで、本文の3行目の 身体障害者雇用上の課題が「ある」とした事業所の割合が73.2%、4行目下ぐらい知 的障害者については75.7%。また、その4行目の下の精神障害者については76.3%が 課題が「ある」ということで、4社のうち3社が課題を感じているということになっ てます。  図の4-1の所をご覧になっていただければと思うのですが、課題の内容につきまして は、いちばん多いのが上から3番目、「会社内に適当な仕事があるか」というのが一 番多くなっておりまして、それから真ん中からちょっと下のほうですが、「職場の安 全面の配慮が適切にできるか」、それから上の1番目、2番目の所で、「従業員が障 害特性について理解することができるか」、また「採用時に適正、能力を十分把握で きるか」というのが課題として挙げておられます。  最後に19頁ですが、雇用している障害者への配慮事項ということで、身体障害者に ついては、72.6%が「配慮している」。知的障害者については61.9%、精神障害者に ついて52.4%の事業所が「配慮している」という回答がありました。図の4-2をご覧く ださい。配慮事項としては、身体障害者と精神障害者については、上から3番目、4 番目の「配置転換等人事管理面についての配慮」と、「通院・服薬管理等医療上の配 慮」というのが多くなっています。知的障害者については、先程もご紹介申し上げま したが、真ん中の「工程の単純化等職務内容の配慮」「業務遂行を援助する者の配置」 が43.8%ということで、配慮事項として挙がっています。簡単ですが実態調査の結果 の内容については以上です。  ○主任障害者雇用専門官  引き続きまして、参考資料2により11月20日に公表されました「平成21年6月1日 現在の障害者の雇用状況」についてご説明を申し上げます。調査が続きますので、雇 用状況調査と先ほどの調査との関係を確認しておきます。まず対象者は雇用義務のあ る56人以上の企業についての調査です。調査時期は毎年6月1日に実施しており、内 容としては雇用率の達成状況について把握することに絞って調査をしています。参考 資料の4頁、5頁に総括表がありますので、これを基本にご説明させていただきます。  まず4頁のいちばん上の「1 民間企業における雇用状況(法定雇用率1.8%)」 です。(2)に障害者の数とありますが、33万2,811.5人、約33万3,000人です。前年と比 べますと、7,200人ほど増加をしています。(3)実雇用率ですが、1.63%で、前年の1.59 %から0.04ポイント増加しております。(5)達成割合ですが、45.5%となっており、前 年の44.9%より0.6ポイント上昇をしております。  民間企業の状況を経年的に見ていただきたいので、6頁のグラフをご覧ください。 まず、雇用障害者数の棒グラフですが、平成21年6月は33万3,000人です。平成15年 から7年間連続して増加をしておりまして、この21年でもさらに伸びたということで す。雇用率につきましては折れ線グラフです。これも1.63%に上昇しておりまして、 こちらも平成17年以降5年連続で増加をしています。 7頁の左側のグラフに企業規模別の実雇用率の動きを書いています。年度の一番右 が21年度ですが、一番右の端のところを見ていただきますと、1.83と書いてあるのが 1,000人以上の企業で、これも伸びております。その後順次1.64の500人から999人規 模、1.59の300人から499人規模、1.35の100人から299人規模、いずれも引き続き上昇 をしております。ただ、下から2番目の1.40と書いてある56人から99人規模につきま しては、引き続き減少となっておりますが、全体的には伸びております。  8頁の左側に産業別実雇用率が書いてあります。平成21年度につきましては、注の 2にありますように、21年度から産業分類が変更になっておりまして、連続しており ませんが、各産業を見てみますと、一番上に医療・福祉、その下に電気・ガス・熱供 給・水道業とありますが、これはいずれも上がっている。その下の運輸や建設につい ても同様に上がっている。真ん中にサービス業とありますが、これも上がっている。 その他、卸、小売、情報通信等々を見ていただきますと、ここに書いてある産業の主 要なところは全て上がっております。この表にはありませんが、農林、鉱業で若干の 減少がありますが、それを除けば、ほとんどの産業で増加をしている状況です。この ように現下の厳しい経済情勢ではありますが、雇用率は昨年並みで0.04ポイントの伸 びを示したわけです。  その背景ですが、もう一度4頁の1の表を見ていただきますと、(2)の障害者の数が 7,200人、2.2%増加をしており、分子が増えているというのが1つの要因です。この 分子の増加は、前年度は7%ほど伸びておりますが、そういう意味では、半分弱に障 害者の数の伸びは留まっております。  それに対して、(1)法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数、いわゆる分母の 労働者につきましては、ほぼ横並びといいますか、厳密に言いますと0.2%減少してお ります。前年度は5%ほど伸びておりました。したがいまして、障害者の伸びは引き続 きあり、その伸びは若干少くなったのだけれども、分母の伸びが横ばいであったため に、全体として昨年並みの0.04ポイントの伸びになったということです。  続きまして「2 国、地方公共団体における在職状況」をご説明いたします。まず、 (1)国の機関です。実雇用率2.17%ということで、ほぼほとんどの機関で達成をしてい ます。ただし、行政機関の中に1つ未達成になった機関がありまして、これにつきま しては、後ほど申し上げます。  次に(2)都道府県の機関ですが、知事部局は全て達成をしております。その他の機関 におきましても、達成機関の数が増えておりまして、雇用率、達成割合とも上昇をし ています。  (3)市町村の機関です。ここも雇用率、達成機関ともアップをしています。  (4)教育委員会です。特に都道府県教育委員会が低いところが問題でしたが、これに つきましては、1.70%ということで、前年の1.58%からかなり上昇をしております。 民間が1.63%ですので、それをも上回る形で、まだ十分ではありませんが少しずつ上 昇をしています。  また、3の独立行政法人につきましては、雇用率2.11%ということで、前年度より アップをしております。法人の数自体減ってきておりますので、達成機関も減少はし ておりますが、割合はそう変わったところではありません。  公的機関については、27頁以下に具体的な公共機関につきましても記載をしており ます。27頁の行政機関の真ん中に、社会保険庁で実雇用率が1.79%ということで未達 成になっております。もう1つが35頁のいちばん下ですが、健康保険協会は新しくで きたのですが、実雇用率が未達成となっております。両機関におかれましては、組織 のあり方等が大きく変化するという中で、障害者の退職者数が増加したということで、 こういうことになっております。しかしながら、雇用率を公表した11月20日に、両機 関はこの反省の上に立って、速やかな改善に取り組んでいく旨公表をされているとこ ろです。健康保険協会につきましては、既に多くの障害者が採用されるとか、そうい う取組みもされているということでございます。私どもも指導に引き続き努めていく こととしています。以上です。  ○今野会長  ありがとうございました。それではご質問、ご意見がございましたらお願いします。  ○副島委員  我々知的障害のデータを見たら、今回の6.1調査の中で伸びているということですご くいいのだけれども、この原因はどのように捉えているのですか。例えば企業側の理 解がどんどん進んで雇用に結びつく方向にいっているのか、事務局が考えられた制度 設計がよかったからここまで伸びていったのか、それともまだ他に要素があるのか、 そういうところから考えたら、どのように判断されていますか。  ○障害者雇用対策課長  なかなか数量的に確たる根拠が言えなくて恐縮なのですが、身体、知的、精神とも にいずれも昨年度から今年度にかけて増加をしているところです。要因ですが、この 増加というのは過去5年間ほど同じような傾向です。0.03ポイントから0.04ポイント のもちろん違いがありますが、そこが伸びていることからしますと、大きなものとし ては、やはり企業のご理解が進んでいるということが非常に大きいということと、各 種、福祉から雇用への連携が、一定程度出ているという面があること、あと数量的に 見ると、就職者数が当然ながら、ここ2、3年非常に多いわけでございまして、平成 19年度が一番高くて、20年度、21年度、21年度は途中ですけれども、残念ながら少し ずつ減っているのですが、絶対水準としては就職者数が非常に増えているということ があるかと思います。例えば知的、精神の方については、就業・生活支援センターの 機能も一定あるかなと思いますし、それ以外にも、やはりまずは企業の理解が進んで きたということが一番大きいかと思います。  ○副島委員  ということは、これからも期待が持てるということですね。  ○障害者雇用対策課長  例えば21年度現在で、4月から10月までの数字なのですが、就職件数を取りますと、 4月から10月までの合計が2万5,345人。これは3障害全て合わせた数字です。約2万 5,000件という数字はどういうものかと申しますと、例えば平成12、13、14年度辺り を見ますと、年間で合計して就職件数が3障害合わせて2万8,000件前後という数字で すので、今年度は7カ月で2万5,000件ですので、やはり就職者数の絶対的な水準が最 近多いのではないかと思っております。  ○今野会長  他にいかがですか。  ○花井委員  最初に説明いただいた障害者雇用実態調査について2点ほど質問があります。1つ 目は1頁目の「調査結果の概要」の事業所調査で、(1)のアの下のところです。「精神 障害者保健福祉手帳の等級をみると」とありますが、最も多い疾病は「そううつ病」、 これが35.6%となっています。前回の調査のパーセンテージが分かれば教えていただ きたいと思います。  もう1つは、同じ調査の21頁から始まるものですが、関係機関の連携状況とありま すが、これが非常に実態を表しているのかなと思ったのです。21頁は募集・採用する 際の事業所と関係機関ですが、職安をずっと見ていきますと、結構高い数字ですが、 次の22頁にいきますと、雇用継続、職場定着になると、身体障害で57.3%、23頁の職 場復帰におけるというところですと、33.7%というように落ちてくるのです。障害者 の個人の調査を見ますと、今の仕事をずっと続けたいという知的障害者の希望、将来 不安でもっとも多いのは、精神障害のところで仕事を続けられるかどうかという不安 がある。仕事を続けることと将来も働けるだろうかという不安が結構多く出ていると 思うのですが、これで見ると、職安の機能というのは、募集・採用はいいのですが、 どうも雇用継続や職場復帰のところで、多分体制が不充分だからと思うのですが、そ の辺はどのように分析されたのか教えていただきたいと思います。  ○地域就労支援室長  花井委員に2つご質問いただきました。1つ目の精神障害者の前回の状況が分かれ ばということで、今回手帳による確認では、2級が21.3%、そううつ病が35.6%とご 紹介申し上げましたが、平成15年度調査でみますと、2級が17.4%で、そううつ病に ついては48.5%です。  2番目のご質問の、入職のときにハローワークを使い、職場定着はハローワークが 低下をしているのではないかということで、まず就職のときは、どうしても求人申込 み、求職申込み、職業紹介等もありますので、ウエイトはハローワークが高くなるの かなと思います。ただ、職場定着や職場復帰になりますと、まさにハローワークのみ ではなく、チームで支援しています。例えば障害者職業センターであるとか、いろい ろな就労支援機関とチームで支援していますから、職場復帰の相談相手としては、医 療機関であり、地域職業センターであり、いろいろなご自分の属していた就労支援機 関というところにウエイトが少し移るのかなというように分析しています。  ○今野会長  花井委員、よろしいですか。では鈴木委員お願いします。  ○鈴木委員  先ほどの説明で、いろいろ全体的な雇用率は上がったのはいいなと思っているので すが、その中で最初の方の説明の時に、各障害別、特に身体障害の中でも内部疾患だ とかいろいろあったときに、4%と視覚障害の人が一番少ないのですが、何でこのよう に少ないのだろうか。多分大変だから少ないのだろうなという気がするのですが、6.1 調査全体として障害別でちゃんと取れているかどうかというところが1つ質問です。  2つ目ですが、雇用率として増えているのですが、非常勤の、要するに20から30時 間というところが増えたのかという確認が2点目です。  3点目の質問としては、雇用率は人の数と程度における人数というのがあります。 例えば重度の障害があれば、種類もダブルカウントだったりしますが、その辺のとこ ろからいくと、どの障害がダブルカウントされているのか分析できていればいいなと。 例えば内部疾患で心臓とかの障害ですと、1級になります。だから重度になります。 しかしながら、仕事は何も配慮しなくてもというか、病院に行くとかいう配慮はある かと思うのですが、一般の仕事が可能であろうと思います。ところが、視覚障害の人 は同じ1級でもいろいろ配慮をしなくてはいけないので、その辺のところの分析はど うなっているのか。確かに率を上げるためには、同じ1級の人を1人入れれば、人数 的には1人ですが倍になったりしますので、その辺の比率がどうなっているのかとい うことと、先ほどおっしゃったように、視覚障害のある人たちの場合、中途で視覚障 害になってきて、その就労継続はどの程度図られているか、またその支援があるのか ということがわかるといいなと思っています。  ○障害者雇用対策課長  6.1調査に絡んで申し上げますと、先程主任のほうからご説明いたしましたが、全 体で33万3,000人ほどという数字があったと思います。6.1調査の対象ですが、例えば 重度、短時間の身体、知的の方、精神の方については、20時間以上30時間未満という 方が入っているわけです。けれども、仮に30時間以上の雇用障害者の数を取るとどう かといいますと、今年の6.1調査で、これはダブルカウントせず入れるのですが、実数 ベースで23万9,360人という数字があります。これは前年を4,637人上回っております ので、30時間以上の方に限っても、約2%ですが、やはり上回っている傾向はあろう かと思います。  それから、雇用率の中の程度がどうかという話ですが、6.1調査につきましては、基 本的に雇用義務がある事業主全部に対して調査を行って、雇用状況を見るという趣旨 です。調査項目といたしましては、ダブルカウント、重度かあるいは短時間とか、そ ういった区別はしているのですが、それ以上の区別はせずに調査をしていますので、 その中の程度がどうかは把握できません。関連する話かと思いますが、同じ1級でも 視覚障害の方の1級と内部疾患の方の1級では違いがあって、配慮事項が違うという ことについてはそのとおりかと思います。ダブルカウントになるかというのは、一般 的にダブルカウントの対象になるような重度の方については、適職の範囲が狭いとか、 十分な訓練、施設改修が必要とか、そういう趣旨かと思っております。当然ながら同 じ1級でも、障害種別とかあるいは個々人によっては配慮項目がおそらく違ってくる だろうと思っておりますので、その辺はまさにこの調査と離れますけれども、合理的 配慮の中で検討していく話ではないかと思っています。  中途の方につきましては、6.1調査の中ではそういった区分がないのですが、当然な がら、それぞれの方にあった支援は間違いなく必要であろうと思っております。  ○川崎委員  先程花井委員がおっしゃった、定着のところなのですが、やはり入口的にはハロー ワークでの数が多いのですが、定着支援というのはなかなかハローワークでは機能し ていないように思っております。本来ならば就業・生活支援センターでもっともっと この辺りを重点的にやっていただくべきではないかと思うのですが、かなり少ないと いうところで、やはり就業・生活支援センターの機能化を指導していただけないかな と思っております。  ○今野会長  ご要望として聞いておけばいいですか。何かありますか。  ○地域就労支援室長  私どものほうから就業・生活支援センターについてご紹介申し上げます。現在の就 業・生活支援センターは、全国に247箇所ございます。最終的には全国の全障害保健福 祉圏域、350〜360になりますが、そこに設置したいと考えております。確かに川崎委 員がおっしゃるように、職場定着というのは、特に精神障害者に関しては、今後も重 要な課題の1つだろうと思っています。就業・生活支援センターの業務の状況ですけ れども、20年度については全国206センターの就職件数は6,234件であり、定着につい ては、平成19年10月から20年9月までに就職した者のうち、6カ月経過時点の定着 状況を見ますと、74.1%という数字になっています。また、1年経過時点での定着状 況は、68.4%となっており、障害種別でみると、一番高いのが知的障害者であり、精 神障害者に関しては6割弱となっております。就業・生活支援センターの状況につい ては以上です。  ○今野会長  それではどうぞ。  ○高橋(睦)委員  確か前回も同じような意見を言ったのですが、また述べさせていただきます。非常 に雇用情勢の厳しい中、民間の企業の方はかなり頑張っていただいているというとこ ろは受け止めているのですが、残念なのは、公的機関が未達成のところ、特に都道府 県教育委員会は、47機関中6機関しか達成できていないという、このことについて非 常に進んでいないと感じるのです。そのことに対して、厚労省の方もすごく頑張って、 指導も徹底していただいているようですが、指導の内容をできたら教えていただきた いというのと、31頁を見ますと、各都道府県教育委員会の状況があるのですが、達成 しているところで具体的な県名が上がっています。教育委員会というところでいけば、 地域性の違いはあると思うのですが、職務内容的に、そう大きな違いはないと思うの です。できましたら、好事例といいますか、達成できているところはどういう努力を されているのか、どういった支援をされているのかも含めて、その辺がわかったら教 えていただきたいのですが。  ○障害者雇用対策課長  まず私の方から全体の指導状況についてお話します。ご指摘のとおり、現在、都道 府県教育委員会の実雇用率が1.70%でありまして、昨年度は都道府県教育委員会は 1.58%ですので、0.12ポイントの上昇はしていると。全体で0.04ポイントですが、そ の3倍は上昇しているわけです。いかんせん全体の実雇用率が1.70という状況です。 これにつきましては、今年の1月をはじめとして3年間の計画を立てておりまして、 対象として42教育委員会に対する指導を行っております。あわせて今年の3月には、 そのうち37委員会に対しまして、適正実施の勧告を行っています。一般的に教員と職 員の方がおられるということで、例えば職員の方にもっと積極的に雇っていただくと か、いろいろな手段があろうかと思いますので、私どもとしては好事例の提供等を行 いながら、できるだけ早期に雇用率達成を行っていただくようにお願いをしています。  ○主任障害者雇用専門官  引き続き指導内容と好事例等のお話をさせていただきます。いま委員がご指摘のよ うに、労働局から大変強く働きかけているのですが、その中で、1つはどういうとこ ろで雇ってほしいかということについては、もちろん教員もあります。教員は教育委 員会でかなり比率が高いので、そこでの障害者の採用・募集枠などの問題について指 導をしております。しかし、いまの不足を速やかに解消していくためには、そこだけ ではいけませんので、事務職、特に出先の博物館や図書館とかそういったところでの 仕事も含めて職域を開発していただき、教員でも教員以外の事務職、非常勤等でも是 非採用してくださいという指導をさせていただいております。  好事例として、1つは教育委員会の中にどのように取り組むのか検討体制を作って いただいています。それは教育委員会内部で作っている場合もありますし、労働局も 一緒に入る場合もあります。そういう中で、先程言いましたように、教員だけと言っ ていないで、ほかの職域でもどのように雇っていくのか検討をしたり、アクションプ ランを作っていただいたり、アクションプランまでいかないにしてもどの分野でいつ までにどれぐらい採用するかの検討をしていただきまして、そういう教育委員会では かなり進んでいるというのが1つあります。  もう1つ、先程言いました出先機関等の非常勤職員での活用を図っていただくこと につきましては、教育委員会の中で教育実習の受入れをやっていただくとか、いろい ろなチャレンジ雇用のような形で雇っていただくとか、そういったことを取り組むこ とによって進んでいる教育委員会もございます。いろいろなやり方を含めながら指導 をしていきたいと考えております。  ○高橋(睦)委員  1つだけ要望ですが、非常に努力をしていただいているということを聞きましたが、 課題として、教員の場合は採用の基準というか、選考の基準のようなものがあります よね。条例的なものとか、法律的なものも含めて、その辺のものに触らないと、なか なか雇用が進んでいかない現状もあると思いますので、そういうところも是非よろし くお願いいたします。  ○鈴木委員   2つありまして、先ほどの6.1調査のところで平均給与が出ていまして、身障の人 が24万と出ていました。羨ましいなと思うぐらいいいのですが、これは平均年齢など がある程度いっていてということなのか、技術的に高いのかという分析や他の障害の 方たちと比べてどうなのだろうということが1点。就職をする際の条件といいましょ うか、その辺のところが、今後のことを踏まえてみると、まずいのではないかと思っ ているのです。というのは、最近、ある政令都市が障害者枠ということで職員を採用 したいと募集をかけたのですが、受験のための条件が、いわゆる点字の受験もオーケ ーで、普通の受験もオーケーなのですが、ただ、最近は普通の文字も使えず、点字も 使えないという視覚障害の人がいるのです。そうすると、例えばパソコンを使ったり とか、受験のところでのハードルがあるというのですが、その辺のところの都道府県、 市町村への採用試験のときの枠というのはどのように指導されているのでしょうか。  ○今野会長  いま2つ質問ありました。  ○地域就労支援室長  鈴木委員からのご質問で、賃金についての実態調査について、私の方からお答えさ せていただきます。身体障害者については、確かに今年度は平均が25万4,000円で、 30時間以上の方については26万8,000円なのですが、20時間から30時間未満になると、 19万7,000円、それ以下になると5万2,000円ということです。前回も同様の傾 向を示していまして、身体障害者雇用に関する取組みが長く続けられてきたというこ とで、そんなに遜色がないのかなという気がしています。  知的障害者については、非正規の割合が高かったり、短時間の方の割合が多かった りするということで、身体障害者に比べると賃金については少しで、平均すると11万 8,000円という状況です。精神については、先ほど申し上げましたように、短時間の方 の割合も多いものですから、それに相応して賃金も12万9,000円になるのではないかと 思います。  ○主任障害者雇用専門官  2点目にお話になりました、公的機関の対応についての指導ですけれども、先程高 橋委員からもありました、教員の採用についても、教員の採用枠の拡大と同時に、い ま鈴木委員がおっしゃられましたような点字受験等の受験についても、もちろんお話 をさせていただいております。それは、教育委員会だけではありませんで、県庁の採 用についても、モデルとしてそういったところが取り組んでいただく必要があります ので、募集の方法、またチャレンジ雇用の利用について等々、いろいろな取組みをし ていただけるように働き掛けをしていますが、引き続き努力してまいりたいと思いま す。  ○鈴木委員  最初の方で年齢が出されていないのでわかればということが1点と、2つ目のご回 答の中で、私がいまお話させていただいたのは、昨日付けで公表された採用状況の部 分でお話をさせていただいたのですが、そこの大きい市はわからなかったということ ですかね。  ○今野会長  これはこの会議が終わられてから、個別でお話になったほうがいいと思います。  ○鈴木委員  わかりました。  ○今野会長  では年齢のほうを。  ○地域就労支援室長  失礼しました。お答え漏れしていました。年齢については、身体障害者は、いわゆ る高齢化傾向を示しています。若年者より高齢の方が多いものですから、それで賃金 が高い方が多いのかなと思っています。ちなみに身体障害者について、実態調査結果 の50歳以上の割合を見ますと、56.2%の方が50歳以上の方ということで、5年前の調 査は47.1%ですから、9%近く50歳以上の方の割合が高まっている状況です。平均年 齢については、はじいておりませんのでお答えできません。  ○矢鳴委員  平均賃金は一時金を入れたものですか、それとも月例賃金なのですか。  ○地域就労支援室長  一時金は除いた例えば就業規則、就業規定等で定まった毎月もって支払われる給料 に時間外手当を足したものです。  ○花井委員  大変雇用情勢が厳しい中で雇用率は落ちると思っていたのですが、雇用率が上がっ たのは、民間が大変努力されているからと思います。しかし、教育委員会はいつまで 経っても達成しないし、公的機関でも達成していないというのは、やはり問題ではな いかと思います。税金を使っている機関というのは、先行して達成していく責務があ るのではないかと思いますので、例えば年限を切って、もう少し何らかの方策を考え ていい時期ではないかと思います。納付金を公的機関は払っていないのですよね。罰 則ということまでは言うつもりはありませんが、年限を切って、達成計画を出しても らうとか、何らかの方法を考える時期にきているのではないでしょうか。  ○障害者雇用対策課長  先程少し申し上げましたが、教育委員会は1.70%でございまして、昨年度よりは0. 12ポイント上がっているのですけれども、他の公的機関と比べますと、教育委員会に ついては非常に低いというのは事実であろうと思っています。先程少し申し上げまし たが、3年間の期間を区切って、計画を作らせており、その中途でも私どもが指導を 行って、3年間の計画の終期には、場合によっては直接指導するということがありま すので、引き続きこの辺りにつきましては、教員、職員を含めて引き続き行政指導し ていきたいと思います。  納付金、調整金につきましては、経済的な負担、調整という観点ですので、原資が 同じ税であることからなかなか難しいかなと思いますが、いずれにしても3年間の期 限を区切って、強力に指導をしていきたいと思います。  ○今野会長  他によろしいでしょうか。それではこの辺にさせていただきます。  ○鈴木委員  「その他」でいいですか。  ○今野会長  今の報告していただいた資料関係のものは終わりたいと思いますが、他に何かあれ ばどうぞ。  ○鈴木委員  ちょっと心配なことが1つあります。先般、事業仕分けがやられまして、その時に、 私の仲間からいろいろな心配なことがあって、1つは、職場介助者制度やそういった ところに出されているお金は切られないんでしょうね、というのを確認してきてほし いということ。また、ここの課ではないのですが、自立支援プロジェクトという13億 円ぐらいのものがあったのですが、それは廃止のような話だったのです。私たちの障 害者の当事者などがいろいろな就労調査をやったりするのに、そういうものを活用さ せていただいたのですが、もしそれがなくなったとしたら、そういう調査ができなく なってしまうのです。その場合、こちらの障対課とかでそういう調査の補助金とかは 出るのですか。その2点です。  ○障害者雇用対策課長  先ず、1点目でありますが、障害者介助等助成金をはじめ、私どもが納付金会計で やっているものにつきましては、事業仕分けの対象になっておりません。それから、 2点目でありますけれども、障害者自立支援調査研究プロジェクト、障害者保健福祉 推進事業というのがございまして、こちらは事業仕分けの対象になっておりまして、 第2ワーキンググループの評価結果としては廃止ということで、結果が出ているとい うことでございます。ただし、これにつきましては、最終的にどうするかは現在関係 部局で検討中というふうに聞いてございます。  ○今野会長  他によろしいですか。それでは次回の分科会について、事務局からお願いします。  ○障害者雇用対策課長  次回の分科会の具体的な日時につきましては、また追って事務局のほうからご連絡 させていただきたいと思います。議題としましては、前回ご指摘がありました「過度 の負担について」他を予定しています。以上です。  ○今野会長  最後に議事録の署名です。労働者代表委員は矢鳴委員、使用者側代表委員は斉藤委 員、障害者代表委員は川崎委員でお願いをいたします。それでは今日は終わります。 ありがとうございました。 〈照会先〉 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 調整係 〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2 TEL 03(5253)1111 (内線5783) FAX 03(3502)5394