09/11/30 第28回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録    第28回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会          日時 平成21年11月30日(月)          13:00〜          場所 経済産業省別館1111号会議室 ○長岡補佐 定刻になりましたので、ただいまより「第28回厚生科学審議会疾病対策部会 臓器移植委員会」を開催いたします。  本日は、佐野委員、山勢委員から欠席のご連絡をいただいております。また、町野委員 より、遅れて到着されるとのご連絡をいただいております。本委員会の委員17名中、定足 数を満たす15名のご出席を賜っておりますので、ここで報告をさせていただきます。また、 本日、遅れて到着をされますが、オブザーバーとして、「臓器提供に係る意思表示・小児か らの臓器提供等に関する作業班」に参加しておられる、東北大学大学院法学研究科教授、 水野紀子先生にご出席を賜り、制度的な課題についてのご意見をいただくこととしており ます。  次に、資料の確認をさせていただきます。本日の配付資料ですが、議事次第、座席表。 次に資料1-1、1枚もので「臓器の移植に関する法律施行規則の一部を改正する省令(案) について(概要)」。資料1-2、4枚もの「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガ イドライン)の一部改正(案)(概要)」について。資料2、2枚目のスケジュールを含めて 2枚もの「親族優先提供と移植希望者(レシピエント)選択基準について」。その後ろに別 紙が3つ付けてありまして、別紙1、3枚もの、「心臓移植希望者(レシピエント)選択基 準(案)」、別紙2、3枚もの、「肺移植希望者(レシピエント)選択基準(案)」、別紙3、4 枚もの、「心肺同時移植希望者(レシピエント)選択基準(案)」。続きまして資料3、2枚 もの「親族優先提供に関する諸課題について」で、2枚目は日本循環器学会からの要望書 となっています。資料4、3枚もの「今後の主な検討課題について」。その後ろが参考資料 で、参考資料1、2枚もの、「臓器の移植に関する法律施行規則」。参考資料2、3枚もの、 「臓器の移植に関する法律の運用に関する指針(ガイドライン)の一部改正(案)」。参考 資料3、「親族の範囲について」。参考資料4、「親族の優先提供の意思表示について」。参考 資料5、「心肺同時移植と親族優先について」です。  以上が資料ですが、不備等がございましたら事務局までお伝えください。  それでは、議事進行につきましては、この後、永井委員長にお願いいたします。よろし くお願い申し上げます。報道のカメラの方は、ここでご退室をお願いいたします。 ○永井委員長 それでは、早速、議事に入りたいと思います。前回の委員会では、改正臓 器移植法のうち、親族優先提供に関する検討課題につきましてご議論をいただき、現在、 パブリックコメントが実施されています。本日は、パブリックコメントの概要、臓器別の 作業班の検討状況につきまして、事務局より報告をしていただきたいと思います。さらに、 各委員からご指摘いただいております親族優先提供に関する諸課題について、ご意見をい ただきたいと思います。最後に、来年7月の施行部分、親族優先とは別の項目がたくさん ございますが、それらに関する検討課題について、ご議論をお願いしたいということでご ざいます。  それでは、早速、最初の議題に入りたいと思います。議事(1)、平成21年11月18日か ら実施されておりますパブリックコメントにつきまして、事務局より概要のご報告をお願 いしたいと思います。 ○峯村室長 臓器移植対策室長の峯村でございます。今月18日から実施されておりますパ ブリックコメントの状況につきまして、ご報告をさせていただきます。  まず、資料1-1をお開きください。前回、11月2日に開催されました臓器移植委員会に おけるご審議を踏まえまして、永井委員長と事務局の間でパブリックコメント、国民の意 見を聞く際の内容として、どのような内容の案文で行うかということについて、ご相談い たしました。また、委員の先生方にも個別に調整をいただいたうえで、11月18日から厚 生労働省のホームページにおいて、パブリックコメントという形で国民の意見をいま伺っ ているところでございます。その内容といたしましては、省令の改正案についてのパブリ ックコメントと運用の細則でありますガイドラインに関するパブリックコメントの2つを かけております。  まず、資料1-1ですが、これは省令に関するパブリックコメントの案文です。臓器移植 法はそもそも細かい細則を省令にあまり落としていないわけですが、その中で、今回親族 優先提供が平成22年1月17日から施行されることを踏まえまして、大きく2点について 省令の改正を行うというものです。  1点目は、医療機関における記録の整備の部分についての改正です。1の改正の概要の(1) ですが、脳死の判定、臓器の摘出を行った医師が作成する記録、また、それに添付する資 料につきまして、親族に対して臓器を優先的に提供する意思に関する記録、また、それを 確認した資料を整備しないといけないという規定を新たに厚生労働省の臓器移植に関する 施行規則の中に設けるものです。2点目は、あっせん機関、具体的には日本臓器移植ネッ トワークになるわけですが、ここのあっせん機関において、臓器の移植の手続の際に親族 への優先提供の意思を表示した書面の写し、その親族関係を明らかにした書類、これをあ っせん機関が記録として保管をするという旨の規定を新たに追加するものです。省令の改 正案については、以上です。  続きまして資料1-2、これが臓器移植に関するガイドラインの一部改正(案)の概要で す。臓器移植に関する、いわば施行細則、運用上の細則を規定した内容ですけれども、今 回施行がいちばん早く来ます親族優先の規定について、それを新たに施行するために必要 な細則の内容をガイドラインの中で改正をして、盛り込むこととしております。具体的に ガイドラインの改正案という形でお示しするのは、この審議会で初めてですが、「改正の概 要」のところ以下が具体的な改正を行う内容になっています。参考資料3に、いまのガイ ドラインが載っておりますし、また付属資料として、参考資料2に新旧対照表を載せてい ますので、適宜それも参考にしながらご覧いただければと思います。左側に改正後、右側 に現行のガイドラインが載っている資料が、参考資料2として付けておりますが、それを 見比べながらご覧いただければと思います。  まず、概要の(1)ですが、これは意思表示に関する規定の部分です。書面により意思表示 ができる年齢等に関する事項の部分で、現在臓器移植法において、臓器提供に関する意思 表示については、遺言可能年齢を参考として、15歳以上の意思表示を有効とするとしてい るわけですが、親族に対する臓器を優先的に提供する意思表示につきましては、書面によ って本人が意思表示をしないといけないと法律上規定がされております。その意思表示が 可能な年齢を何歳からにするのかですが、これは一般の臓器提供の意思表示と同様の扱い にするということで、15歳以上、中学3年生ぐらいの年齢になるわけですけれども、15歳 以上の方の意思表示を有効なものとして取扱うという規定を新たに設けるものです。この 点については、この審議会でも従前ご議論いただいた内容に沿って書かせていただいてお ります。  また、(2)は、今回親族への優先提供という規定を新たにガイドラインに設けることに伴 いまして、現行のガイドラインでは、相手先を指定することについて禁ずるという規定が 置かれておりますが、ここの部分を一旦削除いたしまして、新たに親族優先提供の規定を 設けるということにしておりますので、その過程での改正ということで、現行の規定の中 から、従前禁じていた指定の部分の規定を、一旦削除するという規定を置いているもので す。  次に(3)ですが、これは新たに今回加える規定を挙げているもので、親族への優先提供の 意思表示に関する事項ということで、新たにガイドラインに丸々規定として追加をしてい るものです。  改正の内容については、まず、ア「親族の範囲」ですが、立法者の意思を踏まえて限定 的に解釈するということで、パブリックコメントにお示ししている案文では、配偶者、子 及び父母としております。また、養子につきましては、特別養子縁組のみとしております。 婚姻関係につきましては、法律婚のみとする、事実婚は認めないという内容にしておりま す。  イ「意思表示の方法」です。親族に対して臓器を優先的に提供する意思の表示は、臓器 提供の意思に併せて書面により表示をすることができるという規定を置いております。そ の際、特定の親族を指定した意思表示がされていた場合につきましては、その指定された 親族を含む親族全般に対する優先的な意思表示として取扱うという内容で、ガイドライン に規定しております。これは、法律の作業班及び審議会で、この臓器移植委員会でのご議 論を踏まえて、意思表示の方法の規定を置かしていただいております。  ウ「親族関係等の確認」という規定です。親族の優先提供の場合には、提供する方と提 供される方の間で、親族関係を確認しないといけないということから、その確認につきま しては、公的証明書で確認をするということにしております。ただし、休日や夜間等、親 族関係を確認できる公的証明書の入手が困難な場合が生じることが予想されます。そのよ うな、入手が困難であることが明らかな場合には、入手可能なその他の公的証明書、例え ば保険証ですとか運転免許証等の情報、家族や、遺族(複数が望ましい)からの証言を総 合的に判断して、親族関係を確認して手続を進めていただくと。ただし、可能な限り、事 後的に親族関係を確認できる公的証明書の提出をしていただくということにするという規 定を置いております。  エ「留意事項」ですが、3点書かせていただいています。1点目、医学な理由等から、必 ずしも親族に対し移植術を行われるとは限らない。医学的な理由を超えて、適合がないの に、親族ということで、絶対にその親族への移植術を行うというわけではないということ です。  2点目、臓器提供をする意思と併せて親族に優先提供するという意思表示を通常は示す わけですが、示された親族優先提供の意思表示の部分が、実は親族以外の方であった場合、 あるいは第三者の方が指定されていた場合、この場合は、優先提供の部分だけが無効にな ります。従いまして、単に臓器を提供する意思表示として取扱うということで、ご家族の 了解をいただければ、これにつきましては、第三者への提供という道に繋がっていくとい うことす。  3点目、これは臓器の提供を限定する限定意思表示ということですが、これは家族以外 には提供しないでほしいという明確な意思表示がある場合を想定しております。このよう に、親族のみに限定する意思表示の場合は、臓器提供の公平性の原則等から考えまして、 そもそも臓器移植法の趣旨にそぐわないということで、脳死判定と臓器摘出は見合わせる という取扱いにするところです。  (4)は、コーディネーターの業務として、新たに追加する規定です。コーディネーターが 親族からの要請に応じて、提供する方の意思を確認する際に、優先的に提供する意思を表 示していたかどうかについて、書面によって確認するという業務を新たに規定しています。 また、その際、親族関係の内容、あるいはレシピエント登録の有無について把握をすると いう内容をコーディネーターの業務に規定をしております。  続きまして、次頁がパブリックコメントにお示ししているガイドラインの改正点に関す る基本的な考え方ということで、親族の範囲、意思表示の方法、留意事項について、その 内容をお示ししているものです。このうち、この審議会でも議論になりました、親族の範 囲と留意事項の中の限定提供につきまして、別途次の資料に少し整理をして、考え方をお 示ししておりますので、この委員会の場でご確認をいただければと思います。参考資料3、 4という部分がその資料です。  まず、参考資料3、親族の範囲についてということで、図が書いてある資料ですが、こ の全体の図が民法725条における親族の範囲のいちばん広い外縁を示しております。6親 等内の血族ということで、黒に白抜きのところが血族の範囲、本人を中心として、相手方 配偶者。白塗りに黒い字で書いてある部分が、3親等以内の姻族というものです。この審 議会におけるご議論といたしましては、親、子及び配偶者として、今回パブリックコメン トにかけている案の理由としては、国会審議において明確な答弁をされているということ、 また、実務上も親子関係、親族関係に基づくできるだけシンプルな形が望ましいとされて いること、また、親族間のトラブルを生じさせるおそれがあるので、限定的に取り扱うべ きである、こういったご議論を踏まえて、親、子及び配偶者というご意見で示された内容 について、パブリックコメントの案文が作られております。また、審議会の場で、兄弟姉 妹を含めるべきであるというご意見もいただいております。この内容につきましては、現 場において兄弟姉妹への優先提供の希望があるということを踏まえまして、意見としてこ の審議会の場で出されております。  パブリックコメントにつきましては、いま現在かけておりますが、この親族の範囲の部 分につきましても、様々なご意見をいただいております。この審議会の場でもパブリック コメントをかけている親、子及び配偶者という案についての、いわばそれを是とする意見 について、この内容でいいのかどうか。兄弟姉妹を含めるべきというご意見につきまして は、その理由としてこの形でよろしいかどうか、あるいは追加する意見があるかどうかに ついてもお伺いをしたいと考えている次第でございます。  次頁の限定提供について、考え方がわかりにくいと思われましたので、資料として作ら させていただきました。参考資料4、親族への優先提供の意思表示について、いわば、子 ども以外にはあげないでほしい、子どもだけにあげてほしいという意思表示の場合にそれ が認められないのかということについて、法律上の規定、考え方に沿って説明した資料で す。上段、左と右に法律の規定とこれを受けたガイドラインの規定を掲げています。そも そも、いま現在の考え方ですが、法律の規定におきましては、基本理念として、公平性の 原則というものが挙げられております。移植術を必要とする方に係る移植術を受ける機会 は、公平に与えられるよう配慮されなければならない、これが根本原則です。その上で、 本人の意思ということで、臓器を摘出をする際の要件として、臓器を移植術に使用される ために提供する意思を書面により表示している場合、いわゆる本人の意思表示がある場合 に臓器の摘出をすることができる、そういう規定が置かれている。  この規定を受けまして、ガイドラインの規定では、どのようになっているかということ ですが、右側で、ガイドラインにおきましては、臓器の提供先を指定することにつきまし ては、見合わせると書いてあります。したがいまして、自分の提供する先を予め指定する ことはできないという取扱いになっております。したがって、摘出された臓器につきまし ては、公平に、いわば臓器移植ネットワークにおいて、必要性の高い方に対して、配分さ れるということになっておりますが、この指定をいま見合わせるということの考え方の中 には、優先して特定の方に臓器を提供する意思、それから特定の方だけに限定して、臓器 を提供する意思の2つが両方合わさって禁じられていると考えられております。  今回、法律のほうが改正されまして、優先提供という部分につきましては認めるという 規定が新たに設けられたところです。親族への優先提供についての規定というものが入り まして、これは優先という文言からご理解できますとおり、臓器を提供しようとする意思 表示がそもそもありまして、その上で親族に対してその中で、優先的に提供してほしいと いう意思を表示することができるという構成になってございます。  ガイドラインの改正の考え方から申し上げますと、今回優先して親族に臓器を提供する 意思というものにつきましては認められている。ベースになる臓器の提供意思というもの があって、その上で優先してあげるという意思は、今回認められたと考えられているわけ ですが、そもそも臓器を特定の方に限定して、その方以外は誰にもあげないという提供意 思というのは、現在でも認められていないわけですが、今回の改正でもその部分について は広げられていないであろう、いわば、臓器提供という一般的な意思がそもそもない場合 については、そういう特定の方に対して限定して提供する意思ということにつきましては、 一応、機会の公平性という観点からも認められない、ということは引き続き脳死判定と臓 器摘出は、親族に限定する場合も含めて行わない、そういう取扱いにしております。説明 は、以上です。 ○永井委員長 ありがとうございました。現在、パブリックコメントを行っているところ ですが、特に本日、「親族の範囲」、それから「提供先を限定する提供意思」、この2点につ いてご質問、ご意見を伺いたいと思います。 ○大久保委員 前回もお話をして、今回もパブコメではこのように提示をされているよう ですが、要するに、複数のレシピエントがいて、優先する場合、自分の息子なり娘なりと かで兄弟が2人いて、2人とも心臓病だという形の場合でも、誰々さんにといって、花子 と太郎がいれば、花子さんに優先提供してほしいという希望を親が持った場合は、ここに 書いてあると、医学的な優先度によって決まり、花子さんには行かないこともあり得ると いうコメントになっているのですが、どうも私はそれが引っかかるのです。もしもお父さ んが亡くなられて、2人とも心臓の移植登録をしていて、自分の心臓を花子さんにやって くれと書いても、太郎君のほうが3カ月先に登録をしていて、ステータスは同じ位置だが、 たまたま早く登録していたので、優先度は太郎君に行くというのも、実際に私はとても受 け入れ難いのですね。それが公平だとは言われるのですが、元々優先提供というのは公平 ではないのですね。他の人とはまったく関係なしに、全部のり越えてそこの所に行くので すね。名前を書いていて、それは一応親族の1人ですが、もう1人いる他のほうに、医学 的に上だからそちらに行くと、そう書いてあるのが未だに全然理解できないし、そういう のが社会的に受け入れられるのか。また、もしも親が花子さんに提供すると書いたら、受 ける側として太郎君がもらうときにどういった気持になるのか。その辺も含めると、やは り親が優先提供を指定した方の意思で、兄弟なら兄弟の片方に登録していれば、そちらに 行くのが自然な法則ではないかと私は思います。 ○峯村室長 事務局からでございます。いま大久保委員がお話になった論点については、 確かにガイドラインの案文の議論とも関わるわけですが、資料3と併せて議事の(3)の所で、 この部分についてもう一度ご議論をしていただこうと思います。その際、資料の説明と併 せて、またご意見をいただければと思っています。 ○永井委員長 前回の議論で、ある程度名前が明記されていないと、現場では確認に手間 がかかって、かなり煩雑な調査をしないといけない可能性がある。例えば、思わぬ所に子 供がいたりすることもあり得るわけで、親族というだけで本当に対応できるのかというご 意見がありましたが、これについていかがでしょうか。事務局はその後、その辺について、 意見のとりまとめ、あるいは考え方を整理されましたか。 ○峯村室長 議事としては、3番目の議事の所でご議論いただこうと思っていたのですが、 いかがいたしましょうか。 ○永井委員長 では、そちらにいたしましょうか。 ○峯村室長 はい。そちらのほうで資料をまとめていますので、親族の範囲の考え方につ いて、もし、この議事のときにご議論いただければ幸いでございます。 ○松原委員 兄弟は駄目なのですか。 ○永井委員長 それはいままで議論があり、1親等以内ということになっています。兄弟 の場合は2親等になります。 ○松原委員 そうですか。 ○永井委員長 そこに限定しようという議論がされてまいりました。 ○松原委員 専門的なことはよくわからないのですが、もう少し範囲を広くすると、提供 をしようと思うドナーの方が増えるのではないかと考えるのですが、それはいかがでしょ うか。 ○永井委員長 そういうご意見もおありの委員もいたことは事実です。あるいは、町野委 員や法制度の作業班でもそういうことでよろしいでしょうか。 ○大久保委員 実は前回にこの話はしたのですが、もちろん兄弟という意見は出ました。 ただ、これは議員立法なものですから、この立法をされた議員の方、要するに、この法律 を最初に提出された議員が、厚生労働委員会において、1親等と配偶者に限ると答弁され ているのです。いちばん最初の立法の精神からすると、それはもうで答弁をされているの で、立法者の意見を超えてそれを広げることが正しいかどうかという問題に1つはなるわ けです。私はほとんどの会議に出ていたものですから、1年ぐらいにわたってその議論を 長い間聞いていて、最初にこの提案が出たときは、兄弟まで、2親等という話が出ていた のですが、その議論の中で、やはり移植医療の公平性を考えて、本当に例外的な処置とし てこれをやろうと。私も前の会議で、1年ぐらいこれをやりましたが、公平、公正という、 要するに、臓器は誰のものだという観点からすると、やはり社会的なものだろうと。だか ら、ここでもいろいろと、優先提供は本来あまり好ましくないのではないかという議論を やりました。反対された方もいます。国会議員の先生方もその議論をされて、これは例外 的なものとして取り扱おうということで、議論の結果、2親等ではなくて、最終的に1親 等と配偶者とするといった経緯があるのです。まずそのときの立法者の意思を尊重するの であれば、ここを飛び越えて2親等にするのは無理かと私は思ったのです。 ○木下(茂)委員 私は前回、兄弟姉妹を含めていかがかというような意見をさせていた だきました。様々な範囲で、実際にこのことを施行していくときに、我々が想像している のとまた違う、政治的な所があるわけです。私自身は将来的に、これはあくまでガイドラ インですので、うまく動くのであれば、そのうちにまた1親等から2親等ということもあ り得るかという形で、現在は考えています。それから、大久保先生もおっしゃっていまし たが、国際的に考えたとき、親族優先というのがやや特異な状況にあるのも事実ですし、 そういうことを含めて、多少翻しますが、まず1親等で始めて、将来的に2親等という考 え方も残す、というところでいかがかと思います。 ○宮坂委員 今回、子供のことも問題になっているのです。家族を構成する最小単位が親 子という、その法的な形はわかるのですが、やはり子供のうちは親子、兄弟という、ごく 自然な考えがあると思います。それでこの審議会が、国会で決められたことを法律的に超 えられないという問題があるのかどうか、その辺をもう少し整理して教えていただきたい のです。個人的には優先しないことが本来だと思いますが、少なくとも子供に関しては、 兄弟というのが入ったほうが自然だという気がします。 ○永井委員長 事務局、いかがでしょうか。国会答弁をどのくらい超えられるのか。 ○峯村室長 あくまでも、国会でやり取りしたものについては、政策判断の参考にさせて いただきますので、それを超えることが違法というわけではありません。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○相川(厚)委員 親、子及び配偶者だけでなく、兄弟まで広げた場合の臓器移植ネット ワークのコーディネーターの対応について、小中さんからお聞きしたいのです。場合によ ってはかなり煩雑性があるのではないかと予想されますが、いかがでしょうか。 ○小中委員 いまのお話のように、煩雑になるのは確かだと思います。親子、配偶者であ れば、かなり狭い範囲で把握をしているのも確実だと思いますが、兄弟までいくと、先ほ どの、小さい子供となれば把握はそう難しくはないかと思います。ただ、小さい子供だけ に限られることではありませんので、普段のつき合いがなく、しかも、倍増という言い方 はおかしいですが、人数がかなり広がっていくのではないかということで、確認において は非常に煩雑になっていくものだと思います。 ○奥山委員 確認ですが、15歳未満からの優先提供はないわけですね。きょうだいが対象 となるとしたら、15歳以上の人からの優先提供ですね。 ○小中委員 そうです。 ○相川(厚)委員 実際の現場では、兄弟優先で提供してほしいという症例が出ています。 もちろん現行法でやるとすればできないわけで、お断りをしていますが、実際のものとし ては確かに、兄弟で優先提供してほしいという要望もあったことは事実です。 ○大島委員 結局この議論は、理念の問題からいけば、ないほうがすっきりしているとい うか、理屈上はすっきりと通るわけですね。それを敢えて親族ということを持ち出したの は情の問題ですね。だから、情の問題をどこまで許容するかという話だと思います。それ が、外国人と日本人とどう違うのかと。日本人の場合には、ここまで広げればいいとかい う話に実際なるのかどうかよくわかりませんが、大久保委員が言ったように、スタートの 所はあくまで例外であると。それは議会のほうでも、例外であることを認めた上での議論 になっているわけですから、そこが例外であることを十分に踏まえた上で、あとは情の問 題とどう折合いをつけるかでいいのではないでしょうか。 ○永井委員長 町野先生、いかがでしょうか。状況は大体おわかりだと思いますが。 ○町野委員 例外を認めたのはあれなのですが、どういう情の問題かだと思います。これ がいちばん最初に問題になったときは、本人があげたいと言っていた人にあげるのが情だ ろうということであって、その考え方は自己決定という言葉に裏づけられて主張されて、 それがどんどん広がる可能性があって、実は親族ばかりではなくて、親しい友人でもでき るはずだという議論になるわけですね。次に、それは親族に限られるべきだという考え方 が出てきて、更に1親等と夫婦に限るという考え方が出てきたことの中には、おそらくあ げたい人にあげるのを認めることではないと。だから個別的に、例えば大島先生にあげた いとか、そのように、親戚の中で名指しすることではなくて、非常に近い、いわば生命の 共同体と言われている範囲の人に限るべきではないか、という考え方があったと思います。 そういう考え方からすると、親子、それから夫婦が出てくるのは自然なので、立法者とい うか、国会答弁をされた先生方のお考えもおそらくそういうものだと思います。それを兄 弟まで広げることになると、日本ではそれでいいのかという議論はもちろんあり得ると思 いますが、おそらくちょっと異質なものが入ってくるのではないかと。親子とのつながり、 それから、夫婦とのつながりより1クッションありますから、そういうものではないかと 思います。そういうことから、おそらく国会でもいまのとおりになったのではないかと思 います。いちばん最初は、とにかく親族という言葉、法律の中で文章が作られていますが、 親族だともっと滅茶苦茶に広いわけですね。それをどうしても狭めなければいけないのは、 いまのような考え方だったと思います。だから、親子と夫婦という所に限定するのは自然 だと、それが妥当ではないかと私は思います。  いまのような優先提供を認めると臓器の提供が増えるのではないかと、おそらくその意 識もかなりの人にあったと思います。実際、ある国では脳死臓器移植のときに限って、い まのような、広い親族優先提供を認めていますが、それによって増えたということはそれ ほどなさそうです。日本でもそういうことはないのではないかと私は思います。しかし、 これは見込みだからわかりません。 ○永井委員長 ありがとうございました。 ○峯村室長 事務局から若干補足です。私どもとしては当然、配偶者及び親、子というガ イドライン案を含めて、ガイドラインの案について最終的に決定する際、幹部まで含めて 省内で説明していくわけですが、この点については国会審議であまり詳しく議論されてい ない点が1つ気にかかります。もう1点は、医学的な適応が高いのではないかと言われた ときにどうお答えするかです。具体的には、一卵性双生児の場合は認められないわけです。 一方で、配偶者が入ることについての説明をきちんとしていかないと、当然納得のいく理 由を示していかないといけないわけです。この点についてのお考えを伺えたらと思いまし て、それも併せて伺えたらと思います。 ○町野委員 おそらくいま申したとおり、適合性の問題ではないことは明らかですね。や はり夫婦のときは当然だという考え方になっていますので、適合性ではなく、先ほど申し たとおり、それとはかなり違う思想がこの中に入っていることが前提だと思います。やは り生命共同体というのは非常に狭いことに限るという考え方だと思います。適合性でもな いし、あげたい人にあげられるという話でもない、と私は思います。 ○山本委員 ガイドラインで最初のスタートラインに立つときには、いろいろな所でマイ ナスが入らないような、クリアな所でやっていて、そして、後からそういうものが出てき たら、そこでまた考えるという流れのほうが本質だと思います。そのためにはやはり、家 族の最小単位でいこうという、いまの流れに私は賛成したいです。 ○永井委員長 確かに、原則論を最初に決めて、その上で動かすのはなかなか難しいこと もあるかもしれません。親族優先提供ということで大分踏み込んでいるわけですので、ま ず始めてみて、その上で改めて考えていくほうが現実的かと私も思います。まだパブリッ クコメントも続いていますので、それを受けて更にご議論いただければと思います。  よろしいでしょうか。いろいろと検討課題も多いものですから、今日ここで結論を出す わけではないので、引き続きお願いしたいと思います。  続きまして、臓器別の作業班の検討状況について、事務局よりご説明をお願いします。 ○峯村室長 それでは、臓器別の作業班においてご議論いただいた、移植を希望している 方の選択の際の基準と親族優先提供の関係についての報告です。  まず資料2に基づいて説明します。親族優先とレシピエント(移植希望者)の選択基準 については、いちばん最初にというか、10月1日に開催された法律の作業班と言っていま すが、「臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班」の中で、各臓器 別の作業班の座長の先生方にも参考人として入っていただいて、基本的な方向というか、 考え方の議論をしました。その際の議論として、下のほうに○で書いていますが、まず優 先提供を受ける前提として、患者として、臓器移植ネットワークに登録されていることを 前提とすべきではないか、これが1点目です。  それから、法律上は親族優先という規定が設けられていますので、移植を希望する患者 の中でその選択基準の優先順位の第一位とする、これが妥当という扱いにされました。ま た、法律に規定されていることから、重症度というか、医学的に非常に重い状態の方やか なり長期にわたって待機している方よりも、それをすべて飛び越えて親族の方が第一位に なるのではないかという意見が出されました。  また、重い状態の方ということで、心臓と肺を同時に移植する方、あるいは、肝臓と腎 臓を同時に移植する方といった、同時移植を希望している方よりも、単独で移植を希望し ている親族の方のほうが優先されるのではないか、というご意見が出されています。その 他としまして、親族優先における、親族の自殺の誘発についての懸念なども示されていま す。こういった、初回の議論を踏まえ、各個別の、臓器別の作業班で議論をいただきまし た。  次の頁に「スケジュール」と書いてあります。今日までの間に、下線が引いてある作業 班、10月29日に肝臓の作業班、それから、11月10日に肺の移植の作業班、13日に心臓の 移植の作業班、これについて議論が行われています。また、今日までの間で、18日に腎臓 に関する作業班が、また、24日に膵臓に関する作業班が開かれ、いままでに5つの臓器に 関する作業班がそれぞれ開かれています。残りは、小腸と角膜の作業班がそれぞれ開かれ る予定になっています。これまでの5つの作業班での議論を紹介しますと、レシピエント 選択基準において、親族を第一位とすることが概ね一致しています。また、個別の作業班 の中では、例えば、疾病間における優先順位づけとか、あるいは、子供から提供のあった 臓器については優先的に子供に移植するべきではないか、といったご意見も出されていま す。なお、小児の扱いについては、今後引き続き小児の関係の議論がされますので、その 際にご議論いただこうと考えています。  次に、別紙1〜3です。とりあえず作業班でとりまとめたものを選択基準としてつけてい ますので、ご議論の上で了解いただければと思います。まず、別紙1は心臓移植に関する レシピエント選択基準でして、医学的な条件をクリアした上で優先順位づけをすると、す べての臓器が全部同じ、横並びになっています。ABO式の血液型とかサイズの問題といっ た医学的な条件をクリアした上で、優先順位としては親族が第一位にくるわけで、赤字で 書いたものが今回新たに加わるものです。次の頁ですが、従前は医学的緊急度がいちばん 優先順位が高かったわけですが、更にこの上に、優先提供の意思表示がされた親族が位置 づけられるわけです。  別紙2、肺の関係ですが、これも同様で、適合条件という医学的条件をクリアした中で、 優先順位づけのいちばん上です。2頁目、赤字で書いていますが、「優先すべき親族」の所 に、新たに「当該親族を優先する」という規定が設けられています。  別紙3ですが、心臓と肺の同時移植の方に関する選択基準です。これについては、1と して医学的内容が書かれていまして、この内容をクリアした上で、優先順位づけとしては、 従前は心臓と肺の同時移植が第一位となっていましたが、2として、まず「優先すべき親 族」としては、「当該親族を優先する」ことで位置づけられています。その後、心臓と肺の 関係につきましては、優先すべき親族がある場合については、その優先された親族を優先 するという規定を新たに設けています。  以上、選択基準として、とりあえず3つの案がまとまっていますが、優先すべき順位と して、いずれも親族を第一位に持ってくるという内容でとりまとめられています。説明は 以上です。 ○永井委員長 ありがとうございました。別紙1の「優先すべき親族」の下に「当該親族 を優先する」と書いていないのですが、それはよろしいのでしょうか。別紙2と3には書 いてあるのですが。 ○峯村室長 これは、従前のレシピエント選択基準の形式が臓器ごとにそれぞれ若干違っ ていまして、心臓の場合は、(1)優先すべき親族ということで、この規定のみでかまわない という扱いをされたわけです。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○町野委員 意見というわけではないですが、他の臓器については、何か既に議論は出て いるわけですか。 ○峯村室長 これまでに、腎臓、肝臓、膵臓の議論は終わっているわけですが、その中で、 文言の修正についていま若干の調整をしていますので、それがまとまれば、その内容につ いては次回の移植委員会において相談したいと考えています。ただ、いままで5つの臓器、 心臓と肺、それから、心肺同時の内容を示しましたが、腎臓、膵臓、肝臓においても、親 族を優先順位の第一位にもってくる点については異論は出ていません。ただ、その際に付 記すべき内容等についていま調整していますので、今日はまだ案として示せなかった次第 です。 ○永井委員長 心臓、肺、心肺同時の3件について、このように選択基準を改正するとい うことでご了承いただけるでしょうか。                   (了承) ○永井委員長 よろしいでしょうか。ご異議がなければ、この委員会としては了承したこ ととさせていただきたいと思います。また、他の作業班でもこの件を検討していますので、 逐次ご報告をいただきたいと思います。  次の課題ですが、親族優先提供に関する諸課題についてご議論いただきたいと思います。 事務局よりご説明をお願いします。 ○峯村室長 それでは、親族優先提供に関する諸課題について説明します。この部分につ きましては、前回11月2日の委員会で議論した内容について、まだ継続的に議論すべき内 容であろうということで、課題の論点として整理してお示しているところです。また、前 回の委員会で永井委員長のほうから提起のあった問題についても、併せて2枚目の資料と してお付けしています。  まず、「検討に当たっての留意点」です。親族優先提供については従前の臓器提供とは異 なり、表示された親族が特定されますので、ある種の期待を生じさせることから、これま での運用上とは違った問題が発生するという懸念があります。親族優先提供の意思表示に ついては、具体的な制度を十分に理解した上で行っていただく必要があります。内容につ いて理解した上で正確な意思表示が示されないと、トラブルが生じる可能性があるという ことです。最後に、親族に関する意思表示の考え方としては、臓器提供の意思を書面によ り表示しようとしている方が、その意思表示に併せて書面により表示することができると いう取扱いになっています。  論点の1としては、親族優先提供の意思表示というのをどのように考えていくかです。 既存の手段としては臓器提供の意思登録システムという、インターネットを使って臓器提 供の意思を登録することができるシステムが、いま運用されております。また、運転免許 証や健康保険証といったものにシールを貼る、あるいは欄を設けるという取組みがされて おります。3番目はドナーカードということで、いちばん一般に広く普及している意思表 示の手段です。親族優先提供の意思表示の手法として、何をどのような形で使っていくべ きか。「例えば」ということで書いてありますように、基本的には可能な限り、意思登録シ ステムを活用するという考え方で進めるのか、あるいはドナーカードなり運転免許証とい った手段も活用していくのか、そういった点についてのご議論をいただければと思います。  また、親族優先提供の意思の記載方法として、「親族」と「個人名」というのが考えられ るわけですが、どのように考えるのかということです。いまパブリックコメントにおいて お示ししている考え方を、参考1として書いております。原則は「親族」と書いていただ こうという案になっております。「個人名」で書かれた場合もそれを無効とするのではなく、 特に排徐はせず、それも有効としようということです。ただし、個人名を書いた場合はそ の個人の指定ということではなく、親族を優先するという取扱いにするということです。3 点目は先ほどご説明したとおり、親族も含めて提供先を限定する意思表示は行えないとい うことです。  2番目の黒ポツについて先ほど大久保委員から、太郎さんと花子さんの話が出ました。1 つの考え方として申し上げますと、複数名いた場合に問題になるわけです。該当する親族 の方が複数名おられて、仮にこれを太郎さんと花子さんとして、そのどちらも患者さんと して登録している場合です。そういうケースの場合に、ドナーカードの臓器の優先提供の 意思表示には、花子さんにあげますとしか書いてなかったら、どう考えるかということで す。パブリックコメントにおいてお示ししている考え方は、親族は皆、優先的に第一位と します。その際、ドナーカードには書かれていないけれども、レシピエント登録がされて いる親族は、すべて同列に扱います。したがってドナーカードに書かれていない太郎さん も、一緒に第一位として扱います。  その中での順位づけは、医学的な判断に基づいて行います。医学的な緊急度の高い方が 花子さんであれば、指定したとおり花子さんに行きます。仮に待機日数が長い等で、医学 的な順位づけで太郎さんのほうが高ければ、ドナーカードには「花子さん」と書いてある けれど、親族の中にもう1人、レシピエント登録をしている太郎さんのほうに臓器が行く という考え方です。それについては「花子さん」と書いてあるのだから、花子さんにあげ ればいいというのが1つの考え方として、前回出されたところです。  参考2として書いてあるのはそういうことで、やはり移植機会の公平性と運用上の懸念、 順位づけをおこなったりなどということになりますと、当然、親族間でトラブルや偽造と いった問題が生じるのではないかと。しかも法律上、親族としてしか書いていないという ことから考えると、やはり「親族」と書いていただければ仮に複数いた場合でも、あとは 医学的な問題で決着をつければいい。そういう考え方でパブリックコメントの案をお示し しているところです。一方で前回、具体的にレシピエントの存在を思い浮かべて、個人名 を書くということを踏まえると、指定された意思表示を貫徹すべきである、というご意見 も示されたと理解しております。これが2番目の論点です。  3番目は、前回の委員会の場で永井先生から問題提起された、「心臓移植における親族へ の優先提供に関する要望」です。循環器学会から、臓器移植委員会の永井委員長宛と厚生 労働省の臓器移植対策室長宛と、2通提出されている要望書です。その内容としては、親 族優先提供の扱いから、心臓だけを除外してほしいという要望となっております。前回、 委員長のほうから、特に死因における区別をすべきかどうか、いわば親族優先の場合に、 例えば自殺をされた方からの脳死判定や、臓器摘出を見合わせることとするかどうかとい った点について、作業班あるいはこの委員会も含めて、広く議論をしていただきたいとい う問題提起がありましたので、資料として付けております。この点についても、またご議 論をいただければと思っております。 ○永井委員長 それでは親族優先提供の意思表示を行う方法のところで、ご意見をいただ きたいと思います。いかがでしょうか。 ○大久保委員 前回もお話しましたが、これは本当に限定した形での適用だと思うのです。 登録システムに親族優先提供に関する欄があって、誰でも勝手に書けるような、そういう 方法で広くやるべきものではないと私は考えています。運転免許証等についても、保険証 等についても、新しくできるカードについても、きちんと優先提供記入欄のようなものを 作るということは、もともとの立法というか法律から考えると、かなり違ってくるのでは ないでしょうか。将来、自分が誰かにあげたいから書くのではなく、基本的にはレシピエ ント登録をした人しか対象にならないので、ある程度は対象を。いま自分の目の前にいる 子供なり、配偶者なりにあげるという形で書くのが普通なので、一般的なものに全部、優 先提供を記入しなさいという欄を作る必要は、私はないと思っております。 ○永井委員長 その場合はどういう形の表明がよろしいでしょうか。 ○大久保委員 前回もお話しましたが、要するにレシピエントプールされている方という のは、1万人ちょっとしかいないので、その方たちに合わせた形で個別の登録をするほう がいいのではないでしょうか。名前なら名前で、誰々さんの所には誰々さんと誰々さんが 提供したいと書いていることが事前に分かっていれば、もちろん提供のときにもすぐに分 かります。それに実際に対象になるのは、おそらく今レシピエントプールされている1万 2,000人ぐらいの方のご家族となりますから、せいぜい5万人ぐらいしか対象がいません。 それを一気に8,000万人に広げる必要はないと私は思っています。 ○相川(厚)委員 基本的な考え方は、いまの大久保委員の意見に賛成です。特異な場合 かどうかは分かりませんが、1親等の親族・配偶者が、まだレシピエント登録をしていな くても、子供の心臓が悪くて、将来レシピエント登録をしそうだとか、全く健康なのに自 分がいざ脳死になって、たまたまそのときにレシピエント登録をしていればあげたいとい う時点での親族優先記入も、法律の上ではあり得るのではないかと思います。いかがでし ょうか。 ○峯村室長 事務局からお答えをさせていただきます。相川委員のお話のとおりで、レシ ピエント登録、いわば患者さんがきちんと登録をしていないと意思表示ができないという ことではありません。この優先提供の意思表示は、レシピエント登録の有無に関係なくで きるというように理解しております。 ○永井委員長 ほかの委員の方々、ご意見はいかがでしょうか。 ○木下(勝)委員 大久保委員のお気持は分かることは分かるのですが、そもそも親族優 先提供というのをあえて決める以上は、日本人の気持、心持、心情からいたしますと、も しもドナーとして臓器提供の意思表示をするとすれば、レシピエントであろうとなかろう と、まずはマルをしてしまうのではないかと思うのです。そうでなければ結構です。少な くともそういった意味では、仮に親族優先提供という所にマルを付けたところで、そのた めに大きな影響があるとはとても思えないのです。まずはそういったことを法的に優先提 供する以上は、いろいろな姑息的な方法で抑えたところで、そういうことはあるのですか ら、それだったらそちらにマルを付けますという感覚を持つだろうと思います。そういう やり方に関しては、あまり大きな影響はないのではないかと思うのです。  したがって、こういったことをやるのであれば、もっとフェアに意思登録システムのと ころで、親族優先提供をしたいというのならマルを付ければいいと思いますし、そうしな いでもいいというのだったら、そちらのほうにマルを付けると。そういうように非常に単 純化してやったところで、臓器提供に関する問題としては、まず大きな問題はないのでは ないかという気がいたします。 ○大島委員 実際に親族提供の所にマルが付いていますと、登録がなければ親子・夫婦に 関する情報を、すべて収集するという手間が必ず生じます。それは場合によってはそう簡 単な話ではない場合があるということは、考慮しておいたほうがいいのではないかと思い ます。 ○木下(勝)委員 もう1つの視点は、親族提供をするという意思表示をされたときに、 コーディネーターがどのような仕組みでそれを探さなければいけないかという、その辺の 煩雑さというところも、当然考慮すべきだと思います。そういうことを考えた上でも、そ れは具体的な問題としてご考慮願いたいと思いますが、基本的な考え方としては、私が先 ほど申し上げたようなことでいいのではないかという気がいたします。 ○小中委員 実際の場面ですが、まずレシピエント登録をなさっている方について、先ほ ど大久保委員はそこの所に記載をしておくとおっしゃいましたか。それは別ですか。 ○大久保委員 別に今こちらにあるような登録システムではなく、レシピエント登録なら レシピエント登録ですぐにわかるようにしておくのが、いちばんいいのではないかと思う のです。私が思うのは、登録したいという形で優先登録に登録してもらう、もしくはカー ドも全然別のカードがほしいという方には、いまのカードに加えて、優先提供のためだけ のカードを配ってもいいのではないかと思うのです。いまでも書く所がたくさんあって、 そこにまた優先提供ということで名前を書いていると大変なことになるので、私は優先提 供をしたいという人だけに、カードを配付してあげるということでいいと思います。  実際にいま言ったように、全員でやりましょうという話になったら、おそらく全員書き ますよ。それがいいのかどうか。もしも今の登録システムに優先提供欄というのがあった ら、必ずみんなクリックして書きます。全部そういうシステムにしてしまうのか。要する に、カードならカードに優先提供欄があって、「優先提供する人はここに記入しなさい」と 書いてあったら、私はほとんどが書くと思います。ですから、そういうようにしてしまう のか、それとも反対に例外的だということで、ごくごく限定した形でやるかという、どち らかの選択だと私は思うのです。 ○小中委員 例えば、途中で関係性が変化するということがありますよね。それを事前に レシピエントの方に確認して書いておくというのは、非常に難しいわけです。いま、レシ ピエント登録を実際に受け付けているほうとしては、責任を持って確実にそれを行えます とは言えないと思います。もう1つは、先に入れておくということは、もちろん親族への かなり大きな負担につながっていくのではないかという思いも感じております。私たちが 実際にドナー情報をいただいたときに、関係性を確認するというのは、かなり厳しい部分 もありますが、親族への負担などを考えると、それはもう致し方のないことです。現状の 中で最も確認できる方法を今後探していくほうが、コーディネーターとしてはいいのでは ないかと認識しております。 ○永井委員長 いかがでしょうか。単純化しておくといろいろ複雑な問題が起こり得ると いうことも、認識しておかないといけないだろうと思います。 ○大島委員 親族優先というのは、確実に病気があるかどうかもわからないまま親族優先 をやれば、将来なるかもしれないという可能性も含めて、親族優先にマルを打つ方も出て きますよね。レシピエント登録をするということは、確実に病気だということが限定され ますから、それが将来変わるかどうかというのは、もちろん1つの可能性としてあるにし ても、その可能性があるということは、親族優先の所にマルを打つ方が増える可能性のほ うが高くなるわけですよね。  大久保さんは「みんなマルを打つ」と言いましたが、仮に1万人のうちの3,000人で、 実際にこういうものは例外で、10人もいるかいないか。まあ、1万人のうち3,000人とい うのは多すぎるので、1,000人でもいいかもしれないけれども、そういうことがあったと きに、年間に何人かが出てくる可能性があります。そのときにレシピエント登録に関係な く、対象となるすべての親族に関して、全部調べる必要が当然出てきます。いまの発言は、 コーディネーターとしてはそのほうがやりやすいし、そのほうがいいという発言だったの かどうかということを確認します。 ○小中委員 そのほうが良いか悪いかと言うよりは、例えば別物に先に登録をしておくと いうことの不確実なほうが多いので、どちらにしても確認をしないといけないというとこ ろからのものです。明確に言いますと、親族という形で書いていただいた方がおられたら、 レシピエント選定を毎回するほうが、現実的にはいいのではないかと思っております。も ちろん手間は増えるかと思います。いまのお話ですと、配偶者と親子関係の非常に狭い範 囲の話になっておりますので、ご承諾をいただくときにその家族から確認をした上で選定 をすることになるのだろうと思っております。それは可能ではないかと思っております。 ○町野委員 私は、実は小中委員と木下委員の考えのほうがいいのではないかと思ってお ります。もし大久保委員のようなイメージですと、例えば私が腎臓などの病気になってレ シピエント登録をするときに、うちの親が親族優先提供の意思表示をして登録しておくと いう話になるわけですよね。そのときの親御さんの負担などを考えたら、それが適切かど うかということが、私としてもいちばん心配するところです。それよりは小中委員が言わ れたとおり、現場のほうで同一性の確認とか、本当に意思表示がきちんとしてあるかとい うことをやったほうが、むしろ弊害は少ないのではないでしょうか。  さらに今、どの範囲の親族にするかということをめぐって、かなり議論があります。も し親子や夫婦の範囲に限るとすると、そんなにめちゃくちゃ難しい問題は起こらないでし ょう。私のイメージとしては、提供するほうの人もいちいち本人に伝えることなく親族に マルをしておいて、出てきたらありました、レシピエントの中にこういう人がいるのでし ょうかということで調べたほうが、おそらく心理的な葛藤やいろいろな弊害を除くという ことでいいのではないだろうかと。現場の苦労はどちらがあるかといったら、確かにわか らないところはあるかと思いますが、そのほうが現場としても負担に感じることは少ない のではないだろうかという具合に私は受けとめて、小中委員と木下委員のご意見に賛成し たいと思います。 ○大島委員 議論が非常に例外的な話ですから、私も例外的なことばかりが頭の中に浮か んでくるのです。例えば住所不定の人がいた場合は、一体どういうことになるのですか。 そういった問題が必ずしも起こるかどうかはわかりませんが、出てくる可能性があるので す。そういったときに非常に大きな問題になるのではないでしょうか。いかがでしょうか。 ○相川(直)委員 提供施設にいたイメージから言いますと、やはり最大限の努力はしま す。例えば住所不定とか、ドナーカードがありますから名前はわかっていて、親族の所に マルが付いていて、脳死になりそうなときに家族も誰も来ない場合には、やはり最大限の 努力をした上で、「親族提供」とは書いてあっても、親族がいるかどうかも、レシピエント がいるかどうかもわからないから、一般提供の医学的第一順位の人にあげるということで 許容されると私は思います。 ○貫井委員 私もいま、同じ発言をしようと思っていたのです。大島先生が言われるよう に、全く例外的な例だと思います。脳死になる方は1人ですから、ドナーカードを持って いれば、レシピエントに登録されているかどうかはすぐにわかるわけです。この前、大島 先生自身も「最終的にわからない場合はしょうがないじゃないか。最大の努力をして一般 提供に回すしかないじゃないか」というお話をされたとおりだと思います。ですから特定 の人、レシピエントの関係者だけがマルを付けるという感じではなく、ドナーカードに付 けても、これで変な障害が出てくるとは思えないのです。最終的に今のような話をしっか り固めておけば、変なことにはならないだろうと私自身は思っています。 ○山本委員 小中委員にご質問をさせていただきます。臓器の希望者リストというのが、 心臓からずっとあって、私の記憶ではいちばん多いところで2,000人で、いちばん少ない ところで900人ぐらいあって、腎臓だけが1桁違うということですが、それは合っており ますか。そのぐらいですよね。 ○小中委員 臓器によっては100何人の臓器があって、腎臓だけは1万を超えております。 ○山本委員 2万人近くなっているのではないですか。それを全部足しても大久保委員が お話のように、では親族の方のほうにいっぱい書きますかという質問なのです。私は逆に、 それほど書かないと思うのです。それは今のお話のとおり、腎臓を入れても希望のところ は2万人ちょっとしかないわけですよね。 ○相川(厚)委員 いまは登録していなくても、将来的に自分の家族が臓器不全になった ときにあげたいという意思も許すと言っています。そうなると、やはり家族を優先してマ ルを付ける方が非常に多いと、私も思います。ほとんどの方がマルをしてしまうのではな いかと思います。私の意見としては、いままで調べて臓器移植ネットワークで、優先提供 を希望している方が年間2〜4件ぐらい実際にいらっしゃるのです。しかし、これだけ移植 があって、2〜4件くらいなのです。そういう意味から言えば非常に少ない機会のために、 将来、自分の子供や自分のカミさんなどが心配になって、ドナーカードにマルを付ける方 が結構いても、確率としては非常に効率が悪いのではないかという気が私はするのです。 ○峯村室長 先ほどの小中委員のご発言の趣旨を踏まえて、事務局として忖度するのです が、小中委員のお話は、あらかじめレシピエント登録をする際に、ドナー情報も入れてお くということは、いろいろな面でそぐわないのではないかというお話だったと思うのです。 「ご負担」という言い方をされていましたが、要は提供する人ともらう人が1対1でつな がりますので、それで精神的なプレッシャーをかけるのはよくないだろうというお話だっ たと思います。そういうことで事前にレシピエント登録とドナー情報を一緒に入れておく のは、よろしくないというお考えだというように承ったのです。  その後のご発言の趣旨を事務局として理解したのは、仮に広くドナーカードに書いてあ っても、あるいは特別なカードなり登録システムなり、限られた所にしか優先提供の意思 表示ができないようにしてあろうと、ほかにレシピエント登録をしている親族がいないか どうかも含めて、現場ではもう1回探し直すわけですよね。そういう理解でよろしいので しょうか。 ○小中委員 そうです。 ○峯村室長 ですから、あまり多く書かれても、限定して狭い範囲で記載されても、一応 ひと通り洗うという形にする、というお考えをお話されたのかどうかだけがわからなかっ たのです。 ○小中委員 このお話をさせていただいた元には、例えばレシピエント登録者はネットワ ークのほうに確実に登録しているというのが前提になっています。なおかつ、そこにプラ スして、優先する親族を確実に登録しておくことができないというのが、もともとの前提 にあります。そうなってくると不確実な登録をしているのであれば、すべての情報につい て一から確認するということと、全く同じことになるというところからの話です。実際に は稀にしかない状況ですが、レシピエント登録と同じように、その方々の親族優先できる 範囲をすべて確実に、私たちが先に登録しておけるのであれば非常に簡単になるし、煩雑 ではないと思っています。ところが実際にレシピエントの方々の親族をすべて確実に登録 するということは、責任を持って請け負えない状況にあります。 ○永井委員長 ちょっと話がややこしくなっています。 ○小中委員 違うのですか。 ○相川(直)委員 いわゆるドナーが発生したときに、レシピエントをどのようにして選 ぼうかということですから、レシピエントを登録したときにその親族のドナーとなり得る 人が、レシピエントの登録の情報に入るということではないのです。情報の流れをそちら から考えないと、かなり複雑になってくるのではないですか。 ○永井委員長 ドナーが発生したときに、どう考えるかということですね。 ○相川(直)委員 そうです。ドナーが発生したときに、そのドナーに親族の名前が書い てあった場合に、レシピエントを適切に優先的に選ぶかどうかという情報の流れであって、 レシピエント登録からドナーを探していくというほうではないと思うのです。 ○貫井委員 大久保先生は最初の提案で、そうおっしゃっていたわけですね。人数が少な いのだから、レシピエントの関係者に関して、ドナー登録を限定したほうがいいのではな いかという提案をされたから、今こういう議論になっているのです。ですから普通の流れ でドナーからいけば、そんなに難しくはないと思うのです。 ○大久保委員 要するに、広く誰でも全部書けるようにするという考え方になったときに、 ほとんどの方が書くと私は思っているのです。そうしたときにドナーが発生した時点で、 その周りにレシピエントがいないか、全部調べなければいけないですよね。当然、名前が 変わっている場合もありますし、いろいろありますから、それらを含めて。反対に言うと、 来た家族でもそれが全部わかっているかどうか。それを含めてマルをされていると、かな り大変なことが起こるのではないかと私は思ったのです。それを広くやることがいいかど うかという話で、私は議論をしているわけです。小中さんが「いや、そんなものは書いて あれば調べるのは簡単ですよ」と言うのであれば、広く全部に書いてもらえればいいわけ ですから、その辺の問題なのです。 ○山本委員 それならば、これからどうなってくるか分からないということで、親族のこ とまで斟酌しながらマルを付けるというよりも、もっと限定させて、主にいま問題が起こ っている家族なりレシピエントなりのことを考えるほうが、やはり趣旨は合っていると思 います。 ○永井委員長 大久保委員はそうおっしゃっているわけです。 ○大久保委員 反対に言うと、「親族提供ができる」と書いてあるだけなので、法律的にも 難しいのです。ただ、こういうように言うかどうかというのはありますが、もしもレシピ エント登録をしている人しか有効でないということをみんなに付けて、「あなたの家族にレ シピエント登録をしている人がいなかったら、書いても何の役にも立ちませんよ」と言っ たとします。そうしたら、おそらく自分の周りに、私には誰々がいるからということで書 くと思うのです。先のことも含めて、誰でも書いていいのですよ。「いま子供が生まれてい なくても、将来、子供にやる人もいるかもしれないから、優先提供にマルをしても構いま せんよ。皆さん広く考えて書いてください」と言ったら、私はほとんどの人が優先提供に マルをすると思うのです。  そういう人からカードが出たときに、必ず優先提供にマルがしてあると、小中さんのよ うなコーディネーターの方たちが、これを探して誰かということを特定するのが煩雑でな いとおっしゃるのだったら、それでもいいのではないかということです。全部が全部優先 提供にマルをしてしまったら、私はそれを全部確認するのは大変ではないかと思ったので 限定したほうがいいと言ったのです。 ○山本委員 そうなると、先生と私は同じ意見なのです。 ○永井委員長 つまり、ドナーの親族というのはどこなのか、誰までなのかというのが、 意外と大変ではないかということですね。 ○山本委員 全くそうだと思います。 ○町野委員 大変かどうかというのは、私はそれほどではないだろうと思います。親子と 夫婦ですから、それほどのことはないのです。もちろん親族ということでこの表にあるよ うに、これだけ広いものになると大変な話ですよね。  もう1つ思想の問題としてあるのは、先ほど申したとおり、誰にあげるということでは ないということです。やはり近い関係の人がもし病気であるならば、その人に私のものを あげてもらいたいという意識なのです。意思表示の内容も個人の名前でいいかどうかとい う議論が当然出てくるというのは、結局それが背景にあるわけです。ですから大久保委員 がいま言われたとおり、将来子供が生まれて、それがレシピエント登録をするかもしれな いというときのことを考えてやっても、私は十分だろうと思います。まだ名前も知らない、 顔も見たことのない人についても、おそらくその範囲内だったら私はOKだと思います。こ れがこの制度だろうと思うのです。  これは契約ではありませんから、あなたにこれをあげるよという話ではないので、自分 でそういうものを書いておいて、周りの人には誰も言っていないということがあります。 その場合に親族提供の意思表示があったときに、そこから探し出してという話になるので、 もしかしたら同一性のあれで、確認などが若干後から出てくるだろうと思いますが、それ よりも最初からレシピエント登録をしたと同時に、例えば私の親からもらえるというよう なことをやっておかないと活きないという考えのほうが、むしろ私はかなり問題が生じる のではないかと思います。 ○永井委員長 これをすぐに取りまとめるのは難しいと思います。普及啓発ワーキンググ ループがありますので、そちらで一度もんでいただいて、さらにここでご議論いただきた いと思います。今日のところは継続審議ということにさせていただきたいと思います。  もう1点は記載方法についてです。これが「親族」「個人名」ということですが、どのよ うにするかです。個人名の挙げ方、あるいは個人名が書いてあれば親族と見なすというこ とでいくかどうかです。この辺はいかがでしょうか。 ○大久保委員 この前はどちらも認めるということで、私はそれはそれでいいと思います。 ただ先ほどもお話したように、指定したときに2人いたらどうするかということです。医 学的優先度で別の人に行くこともあり得るとすることが正しいのかどうか。かなり限定し たものであるとおっしゃったけれど、とりあえず兄弟が2人いれば、そういうことが起こ り得ます。心臓だと2人とも、拡張型心筋症という心臓病もあり得るのです。腎臓なら2 つあげてもいいということになりますが、心臓は1人にしかあげられませんから、誰々と 名前を書いたときに、「その人は緊急度が低いからこちらの方ですよ。この人が先に登録し ていますから」と言って別の人に替えることがいいのかどうか。  私は、やはり一般的な国民から見たときに、「えっ」と思うのではないかと思います。先 生がおっしゃるように、もともとの理念として誰々にやるというものではないから、別の 人に行っても仕方がないとおっしゃるかもしれませんが、やはり同じ兄弟などと限定して あげたときに、片方で医学的緊急度で変わってしまうというのは、私はどうかなと疑問に 思っています。 ○永井委員長 むしろ個人名を明記して、それを優先してほしいということですね。 ○大久保委員 書いてあった場合です。もちろん「親族」と書いてあれば、医学的優先度 で決まるわけですが、個人名を書いておいて2人いた場合に、別の人に行くことを容認で きるかというと、私は容認できないのではないかと思います。そのご家族にとってもそう だろうと思ったのです。花子さんという人がいて、お父さんが「花子さん」と書いていた けれど、太郎さんのほうも悪くて、太郎さんのほうがちょっと早かったので太郎さんから もらうとなったときに、花子さんもですが、太郎さん自体も非常に苦しむのではないかと 思います。 ○相川(直)委員 前の委員会で、個人名を書いてもいいという議論が出た1つの理由は、 個人名が書いてあったほうが早くレシピエントを特定できる可能性があるからです。コー ディネーターが全部の親族を回らなくても、まずその人に可能性があります。個人名が書 いてあれば、漏らす可能性は非常に少ないのです。さらに先ほども説明があったように、 ここには個人名イコール親族という考え方があります。「花子さん」と書いてあったけれど、 太郎さんも次郎さんもいて、実際に花子さんに行かなかった場合には親族に行くし、親族 でなければ第三者に行くという考え方からすれば、「個人名」ということを「親族」と読み 替えて、親族の中では「医学的優先度」と言うほうが。臓器提供というのは、基本的に誰 に特定してあげたいという考え方ではないのです。そういう観点からすれば、いまの問題 は起こらないのではないかと思います。 ○大久保委員 目の前にある感情的な問題というのはとてもではないけれど、もらうほう も難しいと思います。 ○白倉委員 いまの議論ですと、二者拓一だと思うのです。書いてあったらその人が最優 先という考え方と、それは単に親族の意思表示として認めて、もちろんそれがある程度役 に立つかもしれないということでの選択だと思うのです。これをここで選択すべきなのか、 どちらかに決めておいて、いかにそれを啓発するか、ドナーカードを持つ人に知らしめて おく。ですから「花子さん」と書いてあっても、結果的に太郎さんのほうが医学的に優先 順位が高いときは、親族の範囲だからそちらに行きますということをいかに分からせてお くか、こちらのほうが重要だと思います。  では方法はどちらかといったら、斡旋のしやすさで選んでもいいと思いますし、医学的 にそちらのほうがいいということで選んでもいい。どちらでも私は構わないと思います。 それよりも提供する人たちが、いかにシステムを知っているかという啓発の重要性です。 それから先ほどのお話にもありましたが、あらかじめ親族提供という人は、詳細に登録し ておきなさいという方法論も、選択肢として決めればいいことで、それをドナーとなる人 にいかに、こういうシステムですということを知らしめるかです。また、どちらを選んだ ほうがよく分かってもらえるか、ということで選んだらいいのではないかと思います。 ○永井委員長 これも普及啓発ワーキングで、もう少し検討いただいて、ご意見を挙げて いただくということでいかがでしょうか。今日すぐに結論というのは、なかなか難しいと 思うのです。 ○白倉委員 追加です。啓発の議論をされるところで、こういう意思でということをしっ かり伝えていただいたら、いいものが出来てくるのではないかと思います。 ○永井委員長 事務局、それでよろしいですか。 ○峯村室長 普及啓発というか、周知の仕組みも重要だというのは十分認識しております ので、そういった点も含めて普及啓発班のほうで、引き続き議論をしていきたいと思って おります。 ○町野委員 私はいまの方針に若干反対です。考え方としてどのようなフィロソフィーに 立つかということがなく、そちらで議論をしても、また同じことが続くだろうと私は思い ます。  それから白倉委員の言われたことですが、二者拓一と言いますか、実はどちらかに決め てわかってもらえば済む問題ではないだろうと思います。やはりどちらのほうが正しいか、 妥当かということがなければできないわけです。そして運用の仕方でやれというのも、お そらく現場に過当な負担を強いるものでしょう。やはり方針が決まっていなければいけな いのです。  もちろん普及啓発のほうで議論していただくのも結構だと思いますが、ここで言われて いるのは先ほど大久保委員も言われたとおり、これはある範囲で飛び越える議論ですよね。 優先順位の中で、とにかくトップに立つわけです。このときに例えば太郎さんの名前があ ったけれど、花子さんのほうが優先順位が上にくるような人間であったときに、名前だけ で優先させて構わないかということが問題なのです。これはやはり決めておくべき考え方 だろうと思います。普及啓発の何を啓発するかが決まらないで、その議論ができるわけが ないだろうと私は思います。 ○峯村室長 いまの内容について、パブリックコメントにかけている案文は、法律の作業 班でこの考え方で、一応その方針でということを受けて、パブリックコメントにかけてお りますので、当然その議論も見た上で考えていかないといけないだろうと思っております。 この場合は実際に制度を十分周知させるということが、非常に重要になりますので、その 点については普及啓発班のほうで、議論をしていかないといけないのではないかと思いま す。その際にいまパブリックコメントにかけている案文について、実務上も普及啓発上も なかなか難しいかどうかという点も、その場で少し議論を深めていただければと、事務局 としては考えているところです。 ○永井委員長 もうちょっと時間をかけて、今日すぐに結論を出さないほうがよろしいと 思うのですが、よろしいですか。 ○松原委員 もしもお子さんが2人いて、名前が書いてあった人のほうが軽く、書いてい なかった人のほうが重く、1週間以内に亡くなってしまうかもしれないというときは、親 としてはやはりどちらも助けたいと思うのでしょう。しかし書いていなかったけれど、重 い人のほうを重視するのではないかと思います。 ○永井委員長 まさにその点がいま議論になっているわけです。 ○松原委員 そういうことで考えたほうが。もし名前を書いてあったほうの人は、2カ月 先に誰か提供してくださる人がいるかもしれない、しかし書いていなかったもう1人の人 は、1週間以内で亡くなってしまうかもしれないとなったら、親としては名前は書いたけ れど、やはりこちらのほうというようにと思うのです。脳死でわからないかもしれません が。 ○永井委員長 ご意見を踏まえて、またさらに検討したいと思います。  次の案件ですが、日本循環器学会から提出された、心臓移植における親族への優先提供 についてです。心臓移植は優先提供から除外したほうがよろしいのではないか、その理由 として自殺あるいは同意殺人等の問題があるのではないかということです。これについて ご意見をどうぞ。 ○奥山委員 私自身は、心臓だけではないのではないかと思います。自殺体からの移植そ のものは否定するものではないと思いますが、親族優先ということになると、自殺そのも のの目的もしくは言い訳になるというのが、1つあると思います。ですから、そこには大 きな違いがあるのではないかということです。  もう1つは、これから子供への移植を考えていったときに、子供にとって親が自殺する というのは、親の側からしたら美談かもしれないのですが、子供にとってはいちばん大き なトラウマです。国際的に見ても親の自殺もしくは自殺未遂というのが、いちばん大きな トラウマティック喪失です。ですから、やはりそこのところを重視して考えるべきだろう と思います。  それから、自殺ということを考えると、両親がいて何らかの先天的な問題をお子さんが 持っているというときに、どうしても母親のほうが罪悪感を持っていて、父親からのプレ ッシャーの中でだんだんうつになっていって、自殺にということも考えられないわけでは ないのです。やはり自殺からの優先だけは、私はやめたほうがいいのではないかと思いま す。 ○山本委員 いまでも自殺体からの臓器移植というのは、形としては除外されているので はないですか。 ○大久保委員 除外されていません。かなりあります。 ○相川(厚)委員 腎臓移植の場合は。 ○山本委員 ごめんなさい。いまのは腎臓移植は除きます。 ○貫井委員 そうでなくてもあります。法的な脳死判定をして臓器移植に至っています。 ご家族の許可を得ないと発表できませんから、数などは全く言えませんが、自殺体からの 臓器提供はあります。腎臓だけではなくて。 ○山本委員 我々の所からも3例ほど出ておりますが、そのときにいつも出てくるのは、 警察等々から「自殺というのは全く大丈夫ですね」と、いつも言われます。ただ全国的に そういうことがあるのですか。 ○峯村室長 はい。死因に関して区別していないというのは、ご指摘のとおりです。自殺 からの提供があるか否かも含めて、行政としてはお答えできないということです。仮に情 報公開請求があっても、これについてはお答えできないということで、審査会でも裁決が 出ております。したがって死因の内容についてはお答えできないというのが、私どもの公 式の見解になるということです。 ○永井委員長 それは行政として、こうあるべきだという議論でいきたいと思います。 ○町野委員 奥山委員のお考えは、次のようなものですよね。おそらく、すべての臓器に ついてやらなければいけないので、この点で心臓だけを特別扱いしろという議論はできな いだろうというのが1つです。もう1つは、自殺者からの臓器提供というのは、普通は認 めても当然のことだけれども、親族提供のときだけは別ではないだろうかというご議論だ ろうと思います。それでよろしいですか。 ○大久保委員 おそらく循環器学会が出されたのは、他殺や事件性のあるものに関しては、 もともと臓器提供はできませんので、これは今の現状でも同じです。しかし現状でも少な くとも脳死からの提供の何件かは、自殺からの例があります。なぜここで心臓が出てきた かといったら、生体での提供ができないというのが1つの大きな原因だと思うのですが、 私たちは心臓だけではなく、肝臓も含めてすべての臓器提供に関して、やはり優先提供の 中で自殺は除外すべきですし、皆さんにもはっきりそれを知らせるべきだと思います。 ○相川(厚)委員 実際に親族優先提供で自殺をしても、心臓と肝臓の場合は脳死になる ように自殺しなくてはいけないので、実際的にはかなり無理です。ですから、そういうこ とをきちんと広報して国民に知らしめれば、私はある程度の防御策はできるのではないか と思います。ただ感情的に自殺をされてしまう方がいるので、場合によってはガイドライ ンで縛らなくてはいけないかもしれません。ただ私は、ある程度は啓蒙の問題だと考えて おります。 ○木下(茂)委員 前回もこの議論があったと思うのです。私も基本的にはいまの議論に 賛成です。自殺では優先提供は認めないというのは、たぶん皆さんも同じような意見であ ると思います。 ○町野委員 私もいまのような意見です。ただ心臓だけを特別扱いするというのは、いか にもおかしいし、法律違反だろうと思います。 ○永井委員長 実は、心臓に関する循環器学会だけから要望書が出たということであって、 ほかの学会がどう考えておられるかは、まだ分かりません。では、この件については自殺 からの優先提供は認めないということで、一応この委員会としては集約したいと思います。  あとはこれからの課題ですが、事務局からご説明をお願いいたします。 ○峯村室長 資料4「今後の主な検討課題について」ということで、来年以降7月の施行 に向けた議論として、意思表示関係の作業班で主に議論していただく内容として考えてい るものをお示ししたものです。まず1頁は、承諾する家族の範囲の考え方です。来年の7 月から、本人の意思が不明な場合と小児の場合、それぞれ脳死判定と臓器摘出が可能にな ります。その場合に書面により承諾する家族の範囲をどのように考えるかです。現行制度 の取扱いで申し上げますと、ガイドラインにおいては基本的に2親等と申しますか、配偶 者、子、父母、孫、祖父母という縦の列です。おじいさん、おばあさんから孫までの血族 の範囲と配偶者から、同居の親族の範囲の中で合意をしていただき、それを喪主が取りま とめることにしております。心停止後に行われる角膜や腎臓の移植についても、脳死の場 合と同じ扱いになっているだろうと考えております。  小児の扱いについては現在、脳死の場合は行われていないわけですが、心停止後の角膜 および腎臓の移植の関係については、提供が行われているわけです。この場合、その承諾 の範囲は基本的に遺族ということで、いまの脳死の現行制度の範囲内で行われています。 いずれにしても現行制度を踏まえて、どのように考えるべきかという点をご議論いただく ことにしてはどうかと考えております。   2頁は、小児の臓器提供の意思表示の扱いです。拒否の意思表示、いわば臓器提供は しないという意思表示を、どのように取り扱うかです。立法者意思や国会の議論を踏まえ ますと、提供しない意思というのは、15歳未満でも有効なものとして取り扱うこととして よろしいかという点について、議論をしてはどうかと考えております。  それから虐待の関係についてです。虐待を受けた児童に関して、臓器が提供されること のないようにする児童の範囲ということで、脳死になった直接原因が虐待であるか、もし くはその疑いがある場合という取扱いにするのか、直接原因ではないけれども、過去の虐 待事実が認められた場合に、それも排除するのかということです。例えばレントゲンを撮 ったときに過去の骨折痕など、虐待が疑われるような事実があった場合です。しかし脳死 の直接の原因としては虐待が原因ではなかったという場合、その部分も含めて扱うのか。 そういった点について議論をいただきたいと考えております。仮に直接原因が虐待である、 もしくはその疑いがある場合、その承諾の範囲をどう考えるかです。例えば両親等を除外 するかどうかも含めて、考えていく必要があるのではないかと考えております。それから、 臓器を提供しない意思表示の手段として、どのような手法を考えるかです。いまはカード やシール等がありますが、日記などでもいいかどうかといった点を議論していただきます。  いちばん最後です。意思表示がされていない、不明であるという場合に、家族が承諾す れば臓器提供、脳死判定をすることが可能になるわけですが、本人の意思が不明という結 論を出すのにどこまで確認するのか、最低限確認すべき事項としてどういう点を考えるの かです。翻って言えば、拒否していた意思の有無の確認をどうするのかということを議論 していただければと考えております。ほかにも検討すべき課題としてはあるかもしれませ んが、とりあえず事務局のほうで挙げた内容は以上です。 ○永井委員長 いかがでしょうか。奥山先生、よろしいですか。 ○奥山委員 検討課題の1つとして是非、グリーフケアというか、アフターケアをどうす るかということも入れておいていただきたいと思います。 ○町野委員 2頁の検討課題の上から2つ目、虐待の所に※が付いていて、児童虐待防止 法で言うのと同じだというのですが、必ずしもそうはならない可能性もあるだろうと思い ます。児童虐待防止法の定義というのは、保護者による虐待に限られております。ですか ら、それ以外の者は入らないということについては、おそらくまだ決定されていません。 虐待の内容も、ネグレクトから心的虐待まで、すべてのものはかなり広いですから、そう いうことはやはりこの法律の目的に従って考えていかなければいけないので、児童虐待防 止法が直ちに連結するわけではないだろうと思います。ですから、この点はまだ決まって いる問題ではないということです。 ○峯村室長 いま奥山委員からはグリーフケアと言いますか、提供した家族の悲しみや悲 嘆について、きちんとケアをするという点も課題として挙げるべきだというご意見と、町 野先生からは、虐待防止法との関係で臓器移植法とどのように整理していくかという点に ついてありましたが、作業班での議論の際に十分そこを踏まえて、資料としてまたいろい ろお示ししたいと考えております。 ○大久保委員 これが7月17日から施行されるためには、ガイドラインは全部ここでやる わけですよね。そうすると当然、提供施設側のいろいろな問題が出てきますよね。そのた めの作業班というのはつくられるのでしょうか。 ○貫井委員 いちばん最後に書いてあります。小児脳死判定基準、提供施設に関する事項、 虐待の問題というのは今、作業班で盛んにやっております。特に提供施設側の問題にはど のような問題があるのか、とにかくアンケート調査をしております。今度は小児が入って きたものですから、どのような問題が起こるかというのをやっております。判定基準も虐 待の問題がいちばん大きな問題で、奥山先生にもお知恵を借りながら、何とか現場で脳死 臓器提供の中に入らないような仕組みをつくっていこうとしております。虐待全般に関し ては、また別の問題になりますが、臓器提供をする小児に関して、どうやって虐待を除外 したらいいかというのを、いま盛んにやっております。できれば3月いっぱいでまとめて ここに提出して、ここで議論をしていただいて、その後はたぶん提供施設に説明会をしな ければいけません。そういう手順で考えております。ですから遅くても4月、できれば3 月のこの会にそういう結果を出していきたいと思っております。 ○大久保委員 ということは、厚生労働省の研究班はほかの作業班と同じような形で運営 をされるということですね。 ○貫井委員 そうです。あとは血流に関してもやっています。これに関しては3つの研究 班が動いています。 ○奥山委員 もう1つは障害児・障害者の取扱いに関しても、少しわかりやすくしてほし いということです。それから子どもの拒否というのをどう取り扱うかについても、是非お 教えいただきたいと思います。 ○永井委員長 これはまた今後の課題ということで。今日は参考人として水野先生におい でいただいたのですが、ご発言の機会がありませんでした。何か今後の課題等でご指摘さ れたい点はありますか。また、各委員の先生方あるいは参考人の水野先生にも、課題につ いては事務局にメール等でご連絡いただくということでよろしいでしょうか。 ○峯村室長 そういう扱いで差し支えありません。法律の作業班の際には虐待等の分野も 含めて、広い論議をすることを考えておりますので、参考人なりといった形で体制もいろ いろ考えながら、議論をしていきたいと考えております。 ○永井委員長 今日はもう終了の時間になりましたので、これで終わらせていただきます。 最後に事務局からご連絡をお願いします。 ○峯村室長 事務局から1点だけ確認させていただければと思います。優先提供の意思表 示の扱いについて、どのように新しいカード、シールで扱うかという点については、普及 啓発の作業班でまた議論をしていただくことになっています。とりあえず現行のドナーカ ード、シールについては、印刷されたものが出回っていますので、余白に書き込むしか方 法がないと思います。とりあえず、そういう扱いでよろしいかということだけを。 ○永井委員長 現行のものについては、シールを貼る準備を始めるということですね。 ○峯村室長 余白に記載だけしてもらうということでよろしいかどうか。 ○永井委員長 プラス、そのほかに何か手続がされるべきではないかという意見もあると 思うのですが。 ○奥山委員 先ほども出ていたように、例えばきょうだいに渡したいという期待を持った けれども、それが駄目だったということになるわけですから、ここで言う親族の範囲とい うのは、細かくでもいいから、きちんとそのシールの中に書き込んでおくべきではないか と思います。 ○永井委員長 その辺もよく確認をして、委員の了解を得た上で進めていただくほうがい いと思います。 ○大久保委員 どういう形でやるかというのは、まだ確定しているわけではないので、そ の辺はあまり早く動いても。シールもまだ個人名の話で、どうするかというのははっきり 決まっているわけではないので。 ○町野委員 確認したいのですが。おっしゃる点は、これから施行に向かって日にちが迫 っているというところで、現在ある意思表示カードをいま見ましたが、余白もほとんどな いわけです。ここに何か書いたものも意思表示として扱っても構わないかというご趣旨で すよね。 ○峯村室長 はい、そうです。 ○町野委員 それだったら私はそれで結構だろうと思います。 ○大久保委員 シールを作るとなると、またちょっと変わってくると思います。 ○町野委員 そうですね。 ○永井委員長 方向性としてはよいけれども、中身についてはもっと議論が必要であると いうことですね。 ○大久保委員 中身が決まっていないので、横に書くことについては有効だけれども、そ のシールをどういう形式にするかというところまで、まだここでは議論が済んでいないの で、それを決めてしまうのはどうなのかと私は思ったのです。 ○永井委員長 それがどういう仕掛けになっているかですね。パッと剥がしてほかのカー ドに貼れるような簡便なものでも困ると思います。 ○大久保委員 その問題は同じことなのです。別々に切り離してやる話。 ○永井委員長 シールだけを先行させるということは、まだ議論が煮詰まっていないよう に思います。 ○水野参考人 町野先生と一緒に議論をしていた法律班では、このことについて非常に危 惧の声が高うございました。と申しますのは、これまでの仕組みが全く変わってしまった ということになるからです。いままでの臓器移植のシステムというのは、公的なことで誰 もが匿名で、仲介者も全部事業独占させて動いていったのが、親族提供によって行く相手 がつながってしまったことについてのリスクを、非常に危惧しております。偽造もあり得 ますし、変造もあり得ますし、強制が生じてしまう契機もあります。例えば兄弟の間でも 1,000万円の遺産がありますと、他人同士よりも争ってしまうというのが現状です。  そういう関係がありますので、親族提供について私は、意思確認を非常に確実にしてい ただかなくてはならないということをずっと言ってまいりました。臓器移植のカードにサ インをするだけでは最期の臨終の席で、偽造されたカードがベッドサイドテーブルに滑り 込まされてしまうというリスクを、非常に危惧しておりました。特に親族提供の部分につ いてだけは全部登録をして、その本人の意思であるという確実な意思確認システムをつく っていただきたいということを、ずっと申し上げてきたのですが、町野先生は法律の文言 上が書面になっているので、それは難しいだろうというように危惧をされて、そういう形 で議論か終わっております。そのような議論があったということをご紹介だけさせていた だきます。ですから大変危ないことが動き出そうとしていることについては、ご理解いた だければと思います。 ○永井委員長 シールについては継続審議ということでよろしいでしょうか。そういうこ とで今日は時間になりましたので、この会議は終了させていただきます。どうもありがと うございました。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365