09/11/11 第41回労働政策審議会障害者雇用分科会議事録 第41回 労働政策審議会 障害者雇用分科会議事録 1.日時    平成21年11月11日(水)10:00〜12:00 2.場所   厚生労働省 省議室(9階) 3.出席者  ○ 委員 (公益代表) 今野委員、岩村委員、菊池委員、佐藤委員、松矢委員   (労働者代表) 石上委員、高橋(睦)委員、野村委員、花井委員、矢鳴委員   (使用者代表) 飯ヶ谷委員、新澤委員、高橋(弘)委員   (障害者代表) 川崎委員、副島委員、松井委員  ○ 事務局  熊谷高齢・障害者雇用対策部長、吉永企画課長、奈尾障害者雇用対策課長、藤井地域 就労支援室長、渡辺障害者雇用対策課調査官、佐藤障害者雇用対策課主任障害者雇用専 門官、吉田障害者雇用対策課長補佐、松崎障害者雇用対策課長補佐 4.議題 (1)労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に関して検討すべき具体的論点 (「職場における合理的配慮」)について (2)その他 5.資料  1 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(「職場における合理 的配慮」について中間整理の抜粋)【第40回資料2】 2 「障害者雇用職場改善好事例」(最優秀賞・優秀賞の事例)にみられる主な取組 【第40回資料3】 3−1 海外における合理的配慮の例 3−2 米国における合理的配慮に関する事例 3−3 フランスにおける合理的配慮に関する事例    参考資料 障害者雇用職場改善好事例の最優秀賞・優秀賞【第40回参考資料1】 6. 議事録経過  ○今野会長   時間になりましたので、ただいまから第41回労働政策審議会障害者雇用分科会を開 催いたします。本日は、大島委員、斉藤委員、鈴木委員が欠席です。大島委員の代理 として、日本・東京商工会議所の佐藤さんにいらしていただいています。  ○佐藤氏(大島委員代理)  よろしくお願いいたします。  ○今野会長  それから、委員の交代があります。お手元に委員名簿がありますので、ご覧くださ い。それに従って、事務局から委員を紹介していただきたいと思います。  ○障害者雇用対策課長  委員の交代についてご報告いたします。労働者代表中島圭子委員が辞任されまして、 後任に全日本自治団体労働組合総合政治政策局長石上千博様が就任されましたので、 ご紹介いたします。  ○石上委員  石上です。よろしくお願いいたします。  ○今野会長  それでは、議事に入らせていただきます。本日の議題は、労働・雇用分野における 障害者権利条約への対応に関して検討すべき具体的な論点の中の、「職場における合 理的配慮」についてです。それからもう1つ、「その他」があります。それでは、まず 1番目の議題について、事務局から資料の説明をいただいて、議論したいと思います。  ○障害者雇用対策課長  本日の議題ですが、前回に続いて「職場における合理的配慮」ということで、議論 いただきたいと思っています。資料ですが、本日の議事次第の4番に書いてあります。 まず資料1は、「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について」です。 これは、前回もお出ししている中間整理の合理的配慮にかかる抜粋部分です。資料2 は、「障害者雇用職場改善好事例」です。これは、前回ご説明させていただきました 高齢・障害者雇用支援機構において、過去数年間で最優秀賞・優秀賞で表彰したもの の主な取組みの概略です。資料3−1は、「海外における合理的配慮の例」、資料3 −2は「米国における合理的配慮に関する事例」、資料3−3は「フランスにおける 合理的配慮に関する事例」です。この海外に関する制度あるいは事例について、本日 は概略をご説明させていただきたいと思っています。5番の参考資料として前回ご説 明しました高齢・障害者雇用支援機構における障害者雇用職場改善好事例の最優秀賞・ 優秀賞ということで、表にしたものを参考として付けています。これについては、本 日はご説明を省略させていただきます。  それでは、資料3−1「海外における合理的配慮の例」を参照いただきたいと思い ます。これは、英、米、独、仏4カ国の合理的配慮について、概略をまとめたもので す。アメリカ、ドイツ、フランスについては、「労働・雇用分野における障害者権利 条約への対応の在り方に関する研究会」の第2回、第3回における有識者ヒアリング の資料に基づいて、事務局で作成したものです。2頁目のイギリスについては、高齢・ 障害者雇用支援機構の障害者職業総合センター調査研究報告書で、障害者雇用に係る 合理的配慮に関するものがありまして、これに基づいて私のほうで作成したものです。  まずアメリカですが、アメリカにおいてはご案内のとおり「ADA(障害のあるアメリ カ人法)」がありまして、こちらの中で合理的配慮に含まれるものとして、例示がさ れています。そこに2つ書いてありますが、従業員が使用する既存の施設を障害者が 容易に利用でき、かつ使用できるようにすること、それから、職務の再編成、パート タイム化または勤務スケジュールの変更、空席の職位への配置転換、機器や装置の入 手・変更、試験・訓練素材・方針の適切な調整・変更、資格を持つ朗読者または通訳 の提供及びその他の類似の配慮ということで、これは例示です。参考で書いてありま すが、「ADAの平等雇用規定を実施するための施行規則」がありまして、これはEEOC の施行規則ですが、合理的配慮は次を意味するということで、3つほど類型がされて います。1つ目は、職務への応募プロセスにおける変更・調整、2つ目は、労働環境 や仕事のやり方・状況についての変更・調整、3つ目として障害をもつ従業員が障害 をもたない従業員と同等の利益及び特典を享受をすることを可能とする変更・調整と、 EEOCの施行規則において、こういった類型が掲げられているところです。  次のドイツですが、ドイツは「社会法典第9編」に、重度障害者に係る合理的枠組 が規定されています。第9編においては、第81条で「重度障害者は」ということで、 障害者よりも重度障害者という言葉を使っているわけですが、障害及び仕事に対する 影響を考慮した上で、雇用主に対して次の請求権を有するという規定です。(1)仕事に ついて、(2)職業訓練についての配慮、(3)職業教育の企業外措置にも参加できるような 便宜、(4)企業施設、機械、装置並びに職場、労働環境、職務編成及び労働時間の構成 を含む障害に応じた作業所の設置と整備、(6)必要な技術的作業補助の職場への装備と いうことで、5点ほどの請求権が書かれているわけです。  3つ目としてフランスですが、フランスは「労働法典」に規定があります。まず1 つ目として、雇用主は、障害労働者が資格に応じた雇用を得ること、雇用の維持、職 務の遂行・向上、又は適切な教育訓練を受けられるようにするため、適切な措置をと ることです。2つ目として、障害労働者は、雇用へのアクセス、職務の実施、職場定 着を容易にするための措置を要求できるという規定です。フランスの場合は、この合 理的配慮がなされなかったという場合には、権利救済機関、高等差別禁止平等対策機 関に提訴できるという枠組です。  さらに、イギリスにおいては「DDA(障害者差別禁止法)」が制定されています。 まず、第4A条において「雇用主による調整の義務」ということが書かれているわけで す。  (a)として、雇用主によって、又は雇用主のために適用される規定、基準若しくは 慣行、(b)として、雇用主が占有する施設の物理的な特徴、これが相当の不利益を及ぼ す場合に、雇用主はその影響を防ぐための合理的措置を講ずる義務を負うという枠組 です。第18B(2)条がありまして、こちらで「合理的調整義務の履行のために必要な措 置の例」が書かれています。(a)は施設の調整、(b)職務の一部の配分、(c)空席の職位 への配置転換、(d)就業時間・訓練時間変更、(e)他の職場への配転等、(f)就業・訓練 時間中のリハビリテーション、アセスメント又は治療のための休みの付与、(g)訓練・ 指導の実施又は手配、(h)機器・設備の取得、改変、(i)指示書、マニュアルの修正、 (j)試験、評価手続きの修正、(k)朗読者又は通訳者の配置、(l)監督その他の支援の実 施ということです。これについては、イギリスにおいては、調停、仲裁、あっせんサ ービスの支援や、雇用審判所への申立てが可能になっているという枠組です。  次に、資料3−2です。「米国における合理的配慮に関する事例」です。これにつ いては、昨年6月に行われました第3回の研究会の資料により抜粋させていただいた ものです。アメリカの合理的配慮の事例、裁判例を列挙しただけですが、いろいろな 「アクセシビリティの配慮」、「職務の再編成」等で分類させていただいたものです。  概略を説明させていただきます。「アクセシビリティの配慮」として、(1)使用者は、 例えば車椅子用のスロープを付けたり、点字標識を付けるなどして、アクセスを可能 にしなければならない。(2)車椅子の従業員のためにランチルームのシンクを低くする ということは、ほかに既に低いシンクがあることやコストを考えると、過度の負担に なるということで、(2)は使用者勝訴の例です。  (3)は「職務の再編成」です。職務の再編成が、職務内容の核となる部分を変更した り、他の従業員に大きな負担を負わせることにならないならば、使用者は障害者がで きない職務を他の従業員に割り当てなければならないと。この事件は、清掃管理者の 事案でして、腕の負傷により掃除機をかけられなくなったという事例です。そうする と、職務の本質的機能が割り当てられることができるかということが争われた事例で、 本件では職務の本質的機能についてまで、他の従業員に割り当てる義務はないという ことで、使用者が勝訴した事例です。  (4)以下が「労働スケジュールの変更」関係です。(4)は、障害者の治療や休息の必要 に応じて、労働スケジュールを柔軟化する、あるいは合理的な期間の無給休暇を認め ることは、ほとんどの場合過度な負担とならないということで、労働者が勝訴となっ たものです。(6)ですが、極めて長期(18カ月)の休暇を超えて、なお休暇を認めるこ とは過度の負担となると。これは、パイロットの例なのですが、復帰時期が不明確で あったことも1つの要因であったのかなと思われます。  (6)ですが、通常パートタイムを認めていない場合は、無期限的にパートタイム労働 を障害をもつ従業員に認めることは過度な負担になり得るということで、これはこの 事業所で全てのパートタイマーのポジションを廃止していたといった経緯もあったよ うです。それで、使用者勝訴の事例です。(7)の事例ですが、これは(7)と(2)が同じ判例 です。ほとんどの職務は監督下においてチームで行われるため、生産性を下げずに自 宅で勤務することが一般的に困難であると。指揮命令を受けない在宅勤務を認めるこ とは、一般に合理的配慮としては要求されないということで、これは労働者の方が8 週間ほど在宅フルタイムで働きたいといった希望を出して、そのためにデスクトップ パソコンも用意してくださいといった要求をしている例です。ここは、合理的配慮と して要求されないといった事例です。(8)は、テレワークを障害をもつ従業員に認める ことが過度な負担となるかどうかは、従業員の仕事の性質によって決まるということ です。この事例は、放射線科の読影医が口述した所見や診断を入力作成するのが労働 者の仕事だったわけですが、これについてテレワークを認めるかどうかが争われたわ けです。使用者勝訴の原審を破棄・差戻ししたものです。  (9)以下は、「配転・再配置」の事例が全て並んでいます。(9)においては、同等の職 位に空席があり、かつ他の配慮が不適切な場合、その空席を障害をもつ従業員に競わ せるだけでは足りないと。先任権が関与しない限り、障害をもつ従業員が空席に再配 置されるべきであるということです。この判例においては、例えば適切な欠員ポスト があるのかどうか、障害をもつ労働者と対話すべきであるといったことも述べられて いるようです。(10)は、再配置は「最終手段」であって、従業員が働き続けられる場合 にのみ講じる必要があるということです。(11)は、合理的配慮として「新しい」職位を 設ける必要はない。これは、使用者勝訴の原審が維持された例です。(12)は、現職者を 他に追いやって職位を空けることまでは、合理的配慮義務として要求されないと。こ れは、郵便の集配業務に携わっていた労働者について歩行ができなくなったというこ とで、歩行しない、歩かなくていい仕事を求めた例です。(13)は、空席の職位は、障害 者が以前就いていた職務と同様・同等のものでなければならないと。高い賃金が支払 われる職位に就かせる必要や、以前とはまったく異なる内容の職務に就かせる必要は ないということで、ポストの本質的機能を取り除くことは求められないといったこと で、使用者勝訴の原審が維持された例です。(14)は、従前の職務が障害を有し遂行でき なくなり、他の職位への配置転換を検討するにあたって、より適格性を有する他の従 業員を差し置いてまで、障害をもつ従業員をその職位に配置する必要はないと。これ は、具体的に保険の訪問販売員の労働者の例で、歩行ができなくなったということで、 訪問ではなくてセールスマネージャー職への昇進を要求したという例です。(15)は、他 の候補者が極めて高度の適格性を持つ場合には、最低限の適格性を有する障害者を再 配置することが過度の負担になるということです。他の高度の適格性を持つ労働者を 押し退けてまで再配置することを求められないといった例かと思います。(16)は、先任 権に反する場合は、たいていの場合過度な負担となり得るということです。これは、 貨物運搬員の方が背中に障害をもたれたということで、負担の軽い部署への配転を求 めた例です。そこに、先任権に基づくほかの労働者が申し込みをされていたという事 例かと思います。  最後の資料3−3ですが、「フランスにおける合理的配慮に関する事例」です。こ れは、フランスの権利救済機関であるHALDE(高等差別禁止平等機関)による勧告例に ついて、昨年の5月に第2回の研究会において資料を配付されて説明があったものを 抜粋したものです。これについても、事項別に並べているわけですが、1つの事例の 記載が大部ですので、概略をかいつまんで説明させていただきたいと思っています。 まず1つ目は、「募集採用時の適切な措置」です。(1)の事例は、もともとスポーツマ ンであった申立人の方がおられまして、身体・スポーツ教育の教員試験に登録したい という希望があったわけですが、中度の聴覚障害があって潜水ができないという事例 です。この身体・スポーツ教育の教員については、自分で水難の場合の生徒を救出で きることを確認しなければならないといった、水難救助証明書を取らなければいけな いと。これは水難救助に関する法令により、そういった仕組みがあったわけですが、 これがあるので担当省としては試験の登録はできないという通知がされたものです。  HALDEの勧告ですが、身体・スポーツ教育の教員については、一般的には水泳を教え ないと。仮に教える場合でも、同僚が代わって教えたり、また助手が付けば十分であ り、適切な措置が講じられればいいということで、勧告はされたわけです。これにつ いてはデクレの規定があったわけですので、修正も勧告されているという例です。  以下が、「配置・再配置の配慮」です。(2)は、指揮・監督者の助手の倉庫係として 雇用された申立人がおられまして、労働災害で足を怪我したということです。この方 が、電気機器のメンテナンスに関する長期訓練を受け負われまして、ほかのグループ 内の移動については受け入れる用意ができていたと。ところが、使用者側から提示さ れた唯一のポストが、情報処理の情報技術のポストでして、これは経験を必要とする と。しかも、この申立人の持つ資格以上のものであったということで、解雇手続に入 ったという事例です。  HALDEの判断ですが、使用者は労働者の能力に応じた雇用の提案を行っていないと。 この使用者が、再配置の請求をさまざまなグループ企業に行っただけで、空きポスト の正確な確認は要請していなかったことから、労働者を再配置することは明らかに不 可能であったことは証明できないということで、解雇手続の停止が要請された例です。     (3)は、図書館で働いていた申立人がおられまして、1990年に労災に遭い、部分的恒 久的労働不能が認定されており、重い物の取扱いや、左腕の動きの繰返しができない ということで、2003年2月まで如何なるポストも与えていなかったという例です。こ の使用者側が、3年に渡ってその障害とは明らかに両立し得ない2つのポストしか提 案しなかったことに対し、これは公務員の権利と義務に関する法律の規定に違反し、 その資格に対応した雇用について、維持できるような適切な措置が講じられていない ということで、この状況を終焉させるべきであるという勧告をされた例です。  (4)ですが、視覚障害を有する申立人の例で、料理人として私立中学で働いていたと。 ところが、その中学校の学食業が民間企業に譲渡されるということで、申立人の労働 契約が民間企業である今の企業に移転されたわけです。この使用者の変更以後で、こ の申立人の視覚障害者の方が1人で働くように指示を受けたことで、支援が受けられ なくなったわけで、職務の遂行ができないことを伝えたところ、使用者側からそのポ ストに対しては調整ができないと言われたわけです。申立人が労働医を受診して復職 の再検討をしてもらうことになったわけですが、復職できないということです。HALDE の判断としては、使用者に対しては、労働法典に定めているような適切な措置の実施 について再検討すべきであるという判断をされたわけです。  (6)は、4年間に渡りまして疾病休暇を取ったあとで、労働契約の停止が継続してい る例です。使用者に対して、障害係争裁判所長から、パートタイム労働での就労再開 を検討するように提案して、さらに労働医の受診についても提案したわけですが、使 用者が特に行動を取っていないということです。労働法典においては、使用者は障害 者がその雇用を維持できるような適切な措置を取らなければならないという定めがあ りますが、適切な措置は拒否されている、あるいは労働医への受診の要請もしていな いということで、不作為が障害を理由とする差別であるといったことで、HALDEの判断 としては労働医の受診を使用者に要請し、それから復職できる適切な措置を講ずる勧 告を行うということです。  (6)は、申立人は市に雇用されている方ですが、障害労働者認定を受けた後、強制的 に休職処分になったと。この申立人の方に対して、如何なる再配置の対象にもされな かったということで、出自を理由とする差別を受けたという主張です。予審ではこう いった差別の存在は証明できなかったわけですが、市長が申立人のポストを調整する ことも、適用したポストに再配置することもしなかったということです。これは、障 害を理由とする差別であるということで、HALDEの判断としては市長に対して、検討し たポストへの申立人の現実の再配置は不可能であれば、申立人がその能力と資格に応 じた雇用を与えられる位の適切な措置を実施し、報告するように要請するということ です。  (7)は、「賃金に係る規定」です。この規定はどういうものかと申しますと、12カ月 間で20日の疾病休暇を取った労働者、または6回以上疾病休暇を取った労働者を個別 の賃金上げから排除するルールが就業規則にあった事例です。この規定は、健康状態 を理由とする差別を禁止する労働法典に違反すると、使用者に対してはこの措置を終 了させるように要請した例です。  「その他の配慮」として、(8)は身体障害を有する申立人について、労務管理者試験 に不合格であった例です。これは、障害をもたない受験者よりも、休憩時間が短かっ た。ほかの受験者は2時間休憩時間があったわけですが、1時間30分の休憩時間でこ れが短かったせいであると提訴したわけです。これについては、障害をもつ受験者の ために身体的状況と両立し得る条件で答案を作成できるよう、連続する試験の間に十 分な休憩時間を与えればいいということで、1時間30分という数字は十分なものであ ったということで、申立人の請求を認めなかった例です。  (9)は、車椅子に乗った障害を持つ弁護士の申立を受けたということで、これは特に 使用者がどうこうという事例ではないわけです。内容としては、裁判所のアクセシビ リティの未整備を理由として、職務の遂行上困難があるという申立をした例です。こ れについては、EU指令がありまして、非被用者の就業活動にも適用されるということ で、国が申立人の直接の使用ではないわけですが、司法に携っている弁護士の申立て については、結果としてこの職務の遂行が車椅子の者の裁判所へのアクセシビリティ と関わりがあるということで、HALDEとしては、司法省は仮のものでも合理的な改修を 行うか、あるいは申立人の職業の場へのアクセスを可能にする適切な措置を取るべき であるといった勧告がされた例です。  駆け足で恐縮ですが、海外の枠組とアメリカ、フランスの事例について、簡単な説 明は以上です。  ○今野会長  議論に入ります。ご質問でもご意見でも結構ですので、お願いします。  ○花井委員  今の各国の合理的な配慮事例への質問に入る前に、少し意見と質問があります。前 回の分科会で「研究会がまとめた中間整理では、強行規定では難しいので心配しなく てもよい」という発言があったかと思うのですが、私たちはそういうふうには認識し ていません。中間整理でまとめた内容は、「障害を理由とする差別の禁止や職場にお ける合理的配慮について、実効性を担保するための仕組みを含めて国内法制に位置付 けることが必要である」と記載されており、単なる訓示的な規定にとどまるというふ うには認識していないわけです。非常に基本的枠組にかかわる重要な話だと思ってお り、そのあたりを事務局としてどのように考えているのか、まずご意見を聞かせてい ただければと思います。  ○障害者雇用対策課長  これまでずっと中間整理に至るまで研究会で議論をしており、今年10月からこちら の分科会でもご議論を開始しているわけです。条約で求められている労働・雇用分野 における「障害を理由とする差別の禁止」、「職場における合理的配慮の提供」につ いては、中間整理のいちばん最初の「基本的枠組み」の「1 枠組みの全体像」があ り、今日は青いファイルにしか付けていないわけですが、例えば10月14日の分科会に おいては、資料3−1のいちばん最初の頁の上の所ですが、「障害を理由とする差別 の禁止や職場における合理的配慮の提供について、実効性を担保するための仕組みも 含めて国内法制において位置付けることが必要であるとの意見が大勢であった」とあ ります。私どもとしては、基本的に実効性をどう確保していくのかを含めて検討いた だいているという認識です。簡単に申しますと、単なる訓示規定で差別禁止や合理的 配慮についてそれを法制化していこうという考えは、今のところ持っていないわけで す。  ○新澤委員  合理的配慮についてですが、通勤時の移動支援、身体介助について、資料1の3頁 に「通勤時の移動支援、身体的介助として、また労働災害では通勤も対象となってお り、通勤も職務と連動するものであるので、今後は労働政策として企業に義務付けた り、助成措置を設けたりすべきではないか」との意見の記述があったわけです。通勤 時の事故などは労災法上は認定されているものでありますが、勤務時間外のこと、あ るいは企業側に勤務時の配慮までを義務付けることについては、いかがなものか議論 が必要ではないか。  労働政策として企業に対して、通勤時の移動支援や身体介助の助成措置を講ずるこ とは必要と考えますが、通勤時における企業の合理的配慮を義務付けることについて は、慎重に議論が必要ではないかと思います。過度の負担として、合理的配慮にはコ スト負担のかかるものと負担が少ないものとがあると思われます。特にコスト負担と いう側面では、中小企業にとって過度の負担とならないようにご配慮をお願いしたい と思います。また、合理的配慮は、社会全体の理解が深められ定着させていくことが 重要と認識しています。そのためその負担も社会全体で負担することが重要であり、 企業としてもそれなりの負担を負うことは当然ですが、継続的に助成金など公的支援、 あるいは職場における人員の理解や支援があってこそ、合理的配慮が定着するものと 考えるので、その支援策をお願いしたいと思います。  ○花井委員  今の諸外国の例での資料がもしあったら、今日でなくてもいいのですが是非お願い したいと思います。ドイツの例ですが、重度障害者というところで出発するのですが、 重度は日本でいうと大体どの程度か、重度でない場合の合理的配慮はどのようにされ ているのか、というのが1つです。2つ目は、これらの諸外国の様々な合理的配慮や EU指令に基づく様々な措置があるかと思うのですが、障害者雇用を進める上でどのよ うな措置がいちばん効果的か、もしお分かりになれば、たぶん障害種別ごとによって 異なると思うのですが、資料があれば教えていただければと思います。  ○障害者雇用対策課長  まずドイツの重度の例ですが、ご指摘のとおりドイツにおいては社会法典において 「重度障害者」という言葉を使っていて、この辺がアメリカ、フランス、イギリスあ たりと少し違いがある点です。ドイツはもともと重度障害者法という法律があった経 緯もあるかと思うのですが、現在、重度障害者という定義が、例えば障害等級が日本 でいうと何級ぐらいに相当するか、正確な資料を持ち合わせてないので、これは私ど もで資料があるかを含めて少し検討してみたいと思っています。  ○今野会長  2番目の質問は非常に包括的というか結論的という質問があったわけですが、どう ですか。  ○障害者雇用対策課長  それぞれにおいては基本的に差別禁止法制と合理的配慮の提供ということで、これ はEUにおいてはEU指令という経緯もあったわけです。一言で申し上げるのが非常に難 しいわけですが、特に障害については非常に障害の種別が多様であるということと、 特に職務との具体的関連において決められるということで、非常に組合わせが多いと いうことが言えるかと思います。  それに対して、決め手になるというよりは差別禁止と合理的配慮をいかにきめ細か く実施していくか、それで特に障害種別ごとに規定するのも1つはあり得ると思うの ですが、いかに差別禁止と合理的配慮をきめ細かくどの障害にもどの職務にも応じた ものにしていくかが1つあり得るかと思います。ということと、それが社会の中でど ういうコンセンサスを持って実施していくか、それを実施することについて社会のコ ンセンサスをどう取っていくかと、その後者の点も非常に重要かと思っています。  ○今野会長  結局、花井委員のご質問は、言ってみるとこういう状況だったらこうやったら一番 いいぞ、というのがあるかということです。。それはないよね、ないかなということ かな。どうぞ。  ○岩村委員  私もこの間、また聞きですが、どうも合理的配慮ということになってしまうと、先 ほど事務局からのご説明がありましたので、個別的なレベルの話になってしまうとい うこともあって、どういうタイプの障害に対してこういうことをやるという何かもの が、どうもあまりないというか単に見つけられない、あるのだけど見つけられないの か、そもそもないのか、というところが実はよくわからないのが正直なところかと思 います。  もう1点は、フランスの場合は非常にはっきりしているのですが、フランスは雇用 義務もかけていて、企業からお金も取っていて、それと合理的配慮がかなりリンクす る形の仕組みになっている、ということは分かっています。ですので、フランスにつ いて言えば、合理的配慮ということで障害者の雇用政策を全部一本でやるという発想 ではない。雇用義務、お金を集めての助成金、それと合理的配慮との組合せになって いるだろうと。実はほかの国のそこがよくわからないところがあって、アメリカも連 邦レベルはABAで合理的配慮ですが、州のレベルになるとどうも違うアプローチではな いかと。ただ、私もそこまでよくわからないので、確たる情報があるわけではないで すが、どうも聞くとそういうことかもしれないということになっているようです。  あともう1つ、これも情報がなかなか手に入らないということにもよるのかもしれ ませんが、今日ご紹介していただいたアメリカ、フランス、ドイツの例などを見てい ただくと、たぶんお分かりになると思うのですが、かなりの部分が身体障害者です。 若干、病気の例が出てきますが、身体障害者がどうも正面に出てきているという気は します。その他の知的障害や精神障害は問題になった例がないのかどうかは、これは 分からない。あるのかもしれないし、ないのかもしれない。そこのところの情報がど の程度本当にそうなっているかはよくわかりません、ということかという気がします。  あと、先ほどお答えすればよかったのですが、新澤委員がおっしゃった通勤の問題 ですが、どこまでカバーするかはこれからの話だと思いますが、おそらく通勤との関 係で合理的配慮が一点問題になるとすれば、企業が従業員のために通勤手段を具体的 に提供している場合、例えば工場まで駅からバスを運行している場合があるとすると、 その場合に障害者の人はそのバスを使えないというときに、合理的配慮は問題となり 得るかというようには思います。それは結局のところ、また合理的配慮との関係で何 かやることが過度の負担になるのかなど、そういう形の議論になるのだと思いますが、 少なくとも企業が従業員に対してそういう事業所へのアクセスについて何らかの便宜 を提供しているというときに、障害者をそれから配慮することになると、あるいは実 際上使えないということになると、そこでは合理的配慮が問題になり得るのではない かと思います。その他通勤一般となるとまた別の話なので、それの議論はオープンで はないかと思います。  ○新澤委員  今のお話ですが、この場合、一般的には送り迎えは障害者に対しては地方などだと、 当然、大体はやっているのです。この場合、全額ではなくても、企業として社会的使 命とすれば当然だろうけれども、できれば社会も多少そういうものに対して企業に助 成をするなどということで、我々中小企業としてはそういうこともご配慮いただけれ ばという気持ちです。  バスの送り迎えは当然ありますが、その場合、今の話ですと障害者を排除するとい う意味がちょっと私どもは理解できません。この内容については逆に1人でも送り迎 えすることを、現実に企業の責任でやっておりますから。そういう場合に対して、こ れは企業の責任で今やっている例全部がどうか私は把握していませんが、そういう場 合、多少なりとも便宜を図ってもらえればということです。我々の意見としては、そ ういうことで、だから、送迎バスで、障害者だから排除するということはちょっと理 解できなかったのです。  ○岩村委員  ですから、例えば普通のバスだと障害者の方は乗れないなどということがあり得る ので。  ○新澤委員  なるほど、おそらく現実としてはあるでしょうね。  ○岩村委員  だから、たとえ話になりますが、実際に企業でそういう障害者の方のための便宜を 図っておられるのであれば、そこは合理的配慮の関係では問題ないということになる かと思います。  ○新澤委員  繰り返して言うのは恐縮ですが、意見として、発言としては、そういう場合にあく までも何らかの助成があればと、お願いしたいということですから。  ○川崎委員  実は私は研究会にも出ていたのですが、「合理的配慮」というこの言葉から来るイ メージがなかなか難しかったのです。障害者に対する合理的配慮ということでいろい ろ議論を重ねてきていたのですが、先ほど先生がおっしゃったように個別的な支援や 配慮であるということはわかってきました。個別的にというと、例えば障害者だけに 限ることや支援を必要とする人という考え方も私はしてきています。精神障害者の場 合には短時間労働などで今配慮されているわけですが、短時間労働は子育ての人や介 護の人などにも適用されていかなくてはいけないことだし、私自身も子育てをしなが ら仕事を持っており、そのときには時間給などいろいろな配慮を事業側でしてくれて いたので、合理的配慮は支援を必要とする人のいろいろな個別的な配慮という考え方 が1つあることと、そこにいま障害者という問題が出てきた場合に、障害者だから差 別をするというその辺の関連付けというか、最初の「基本的な考え方」にあるのです が、その辺をどのような形で合理的な配慮ということでクリアできるのかが、私自身 もいまなかなか難しいかと感じているところがあります。感想です。  ○菊池委員  今日の資料の中の外国の例でいちばん特徴というか、イギリスの場合に、(f)として 「就業・訓練時間中のリハビリテーション、アセスメント又は治療のための休みの付 与というのがあり、これがほかの国にはないと思うのです。例えば、これは難病、精 神の方、医療を受けつつ働くという方がこれからも増えてくると思うのですが、この 辺については他の国ではどのようになっているか、もし何か情報があれば教えていた だきたいと思います。  ○今野会長  いかがですか。今回いただいた資料の範囲内だと、これはイギリスだけが(f)がある というふうにも断定できないですね。  ○菊池委員  それはとても重要なことで、これから医療を受けつつ働き続けることが増えてくる と思うので、そこをきちんと認めるのか、日本でどうかと、そこのところは合理的配 慮という中で検討していく意味があるのではないかと私は思います。  ○今野会長  まず海外の事情について分かっている範囲内で結構ですので。  ○障害者雇用対策課調査官  本日の資料については、基本的に、法律レベルで合理的配慮についてどのように規 定されているのかというところでお出ししていますが、他の国ではイギリスのように 例示の形で明確に書かれているわけではありませんが、こういった配慮が行われてい ないというものではないと考えております。法律上明示されていなくても、実際に行 われている例はあろうかと思います。  ○障害者雇用対策課長  一言だけ補足すると、高齢・障害者雇用支援機構が求めている諸外国の合理的配慮 の研究がありますが、例えばアメリカにおいては、EEOCで合理的配慮について障害別 にガイドラインを作られているようです。これを見ると、例えば、てんかんの場合で は、服薬のための時間、勤務時間調整といったものもガイドラインの中にやることは 望ましいといった例で挙げられているようです。精神障害者の方については、通常よ く行われる合理的配慮の例として、出勤としてカウンセリングを受けるための休暇、 ストレス管理や感情の安定ということで小休止を入れるなど、そういったことも行わ れているようですので、他にも行われている例がなくはないということはこの例から 言えるかと思います。  いずれにしても、今日、中間整理の抜粋を資料1に付けていますが、ここにおいて も2頁の「基本的な内容」に、障害の種類ごとに特に必要な配慮として、少し細かい のですが2頁の下半分で例を挙げているわけです。例えば、内部障害者、難病のある 方については、定期的な通院への配慮や休憩・休暇・疾病管理への配慮、フレックス タイム等への柔軟な勤務体制といった形はあり、こういったことも具体的にどうすれ ばいいかはご議論いただければと思っています。  ○副島委員  私も前回からずっと聞いていて、合理的配慮が個別に関わるもの、つまり個人的に 関わるものだということがすごく分かるけれども、どのような形で配慮していけばい いのか。特に私ども知的障害の場合には、前回もお話したとおり賃金の格差について すごく問題はあると思うのだけれども、労働能力等に基づく際に、それが差別にされ てしまうということです。結局、うちの子どもも17年間勤めていましたが、最初の給 料から最後の給料まで全く変わってなかったのです。我々はそこを疑問に思うよりも、 楽しく仕事が継続できたというところの評価が大きかったと思うのです。例えば、そ こを毎年昇給するとか、少し労働条件をいろいろ付けることによって、企業側は後退 していくことがあって、もしくは、例えば給料を上げるためにこれだけの仕事を付加 していくよと、それだけの配慮がされたとしても、それが十分にこなせる人とこなせ ない人がいます。こなせない人が、今度はそれが負担になってしまって、仕事が楽し くなくなってしまう。つまり、雇用というところから自分自身が引っ込んでしまう可 能性があるのです。そういう障害の内容と今みたいな合理的配慮のもとに、それがな いために差別になるということの考え方が、何でもかんでもそういう格好に持ってい かれたときには、まさに我々の子どもの就労場所はどんどんなくなっていってしまう のではないかと思うのです。そこにすごく懸念があるのです。  それから、「合理的配慮」のところの中間報告には、「障害者が他の者と平等にす べての人権、及び基本的自由を共有し、又は行使することを確保するため」というこ とで、その時に「特定の場合において必要とされるものであって、均衡を失したとか、 過度の負担を課さないものである」というような項目まで謳っていますね。そうする と、それに対して企業側がどこまで対応していかなくてはいけないのかということと、 企業側に全てを任せてこれが本当にできるのか。先ほどから言われている社会的な応 援、支援がそこにある必要があると思うのです。  障害者の場合にいちばん大きいのは、地域の方々の不理解です。地域の方々の不理 解によって、障害者、つまりそれだけの能力もないのに仕事に挑戦するということに 対しての不理解がまだすごくあって、能力がある程度ある人もいますから、そこは仕 事の内容を切り出して、こういう仕事であればできるということで仕事に就いている わけですね。その時にその状況を地域の方々が同情的な見方で見られたら、結局、そ の仕事というのが福祉的な分野で終わってしまうのです。だから、労働分野でいくの か福祉的な分野でいくのかというところも、やはり少し吟味をしなくてはならないと 思うし、何か私もこの合理的配慮というのは一体何なのかということがまだよく分か らない、というところが私の今までの感想です。  ○佐藤委員  前も一度お話したのですが、資料1の合理的配慮のところでも、「個別の労働者の 障害と職場の状況に応じて」と、これが合理的配慮を考える時に「個人の状況と職場 の状況」が、それだけでいいかどうかです。海外の事例を見ると、例えばアメリカで 配転や再配置の所を見ると、これは雇用システムのあり方で、「以前と全く異ならな いように職務を付ける必要はない」と書いてある。ですから、多分ジョブを限定して 雇用しているという雇用システムを前提としている議論だと思うのです。  ですので、日本で職場の状況は、職場の範囲が物理的だけではなくてどうキャリア 管理しているかで、たぶん職場の範囲が違ってくる可能性があるかもしれない。です から、もう1つ雇用システムや雇用契約のあり方というのを考える必要はないか。例 えば、同じ事業所がいくつも展開していて、事務処理の仕事があって、ある事業所の 事務の仕事で障害者の方が雇用されている。その仕事がなくなったとします。でもす ぐ通える範囲に別の事業所があったとき、異動させるかどうか。異動させることは合 理的配慮かどうかといったときに、たぶんどういう雇用契約を結んでいたか、つまり、 健常者の方も異動させない契約を結んでいるときに、つまり異動がないときに障害者 の方まで異動させなくてはいけないのか。ですから、もしそのとき健常者の人たちを 異動させる管理をやっているとすれば、障害者の方ももしかしたら異動させることが 合理的配慮になるかもしれない、わかりませんがね。ですから、多分、職場の状況と 個人的な障害の状況だけで決まるのかどうかというのがちょっとあります。  もう1つ、雇用システム、雇用管理、雇用契約みたいなものを加えないと、実は合 理的配慮が何かというのは決まらないのかと前から考えたのですが、それは議論され たのかどうかです。特に企業内部で雇用されてから障害になった方は、もともとジョ ブを限定されてないで雇用されていて障害者になった。それと、例えば障害をもって いる方にこの仕事へ雇用された方がいた場合でも、たぶん同じ扱いになるのかは結構 難しいと前から考えていました。  ○今野会長  少なくとも中間報告、中間整理をする段階で、そういう環境を明示的にもって議論 したことはないですね、重要な観点だと思いますので。具体的に配慮をしようとした ときに、その問題は必ず引っかかってきますね。もう1つは、合理的な配慮かどうか を判断するときに、その要因というのは、もう1つのフェーズとして重要なファクタ ーになるという感じもします。  ○岩村委員  今の佐藤先生の議論とも関係して、先ほどの副島委員のお話とも関係するのですが、 いま私も頭が混乱していてあまり整理ができてないのですが、佐藤先生がおっしゃる ように、おそらくアメリカやヨーロッパの場合は、雇用契約上どの仕事をする、どう いう職務資格を持っていて、この人にどの職場のどの仕事をさせるということで、大 体雇用契約は決まっていることが多いのです。したがって、いわば当然に使用者が配 転命令権みたいなものを持っているという考え方は、あまり採られていない。アメリ カは随意雇用なので、「お前、あっちへ行け」と言ったときに、「嫌だ」と言えばク ビだという話なので、アメリカは少し違うのですが、そういう前提の中で特に再配置 については、合理的配慮をどの範囲で考えるか。特に再配置で人を動かした時にどの 範囲で考えるかというのは、そこの元々の、いわばアメリカなりヨーロッパなりの人 たちが、頭の中で当然の前提としているものというのが書いてないけれどもあって、 その中で合理的配慮を考えているのはご指摘のとおりだと思います。  そうすると、おそらく日本のように、特に正規従業員の場合は、ほとんど職務を特 定するとか勤務場所を特定するなどということは非常に少ないので、それに応じて多 分合理的配慮の幅は違ってくるだろう。すでに最高裁判例でも、病気になってある仕 事ができなくなったという事例について、これも正規社員で職務・職場の特定がない 事例については、仕事を探せということは言っているので、直ちに休職したり解雇し たりということは駄目だと。もともと仕事が特定されてないのだから、病気であって もできる仕事が企業内にあるのであれば、そこに配転などそういうことを考えろとい うことは言っているので、正規従業員の場合は、おっしゃるような範囲でのものの考 え方になるのだということは言えると思います。  問題は先ほど副島委員のおっしゃったことで、結局、それは嘱託の話になるのかと いう気がしたのです。というのは、障害者雇用の場合は、結構、皆さん嘱託という形 で雇われている形が多くて、そうすると、これは私もまだ全然頭の整理がつかないの ですが、障害者だから嘱託ということで雇うこと自体が差別だという可能性も、実は 論理的にはある。これはものすごく厄介な問題です。ただ、私も頭の整理を少しして みなくてはいけないのですが、おそらくパートとの対比がどうかとか、あるいは副島 委員がおっしゃったように、嘱託という形で雇っていること自体が合理的配慮なのだ というのもあるかもしれない。ただ、それを外国人に説明すると、おそらく絶対に分 かってもらえないのだと思うのですが、そういう整理もあるかもしれない。ただ、そ こは結局のところ、障害者雇用をいろいろなタイプの障害者の方々の雇用を進めてい く上で、我々がどう整理するかという話と、訴訟になることを考えると、それを裁判 所にちゃんと分かってもらうようにしなくてはいけないという立法技術的な問題と両 方あると思いますが、副島先生のお話は非常に悩ましいと思いながら聞いていました。  ○佐藤委員  障害者の方を採用した場合は、たぶん普通、有期嘱託という有期契約もあると思う のです。そうでなくてもたぶんは業務限定とか、この仕事でと雇用するわけです。そ の意味で業務限定での無期雇用の障害者の方、たぶんこのときの配置転換の問題をど うするかと思うのです。だから、普通の社員の方は業務限定をしないで無期雇用です が、障害者はこの仕事でというのが多分普通で、あるいはこの職場でというのが普通 だと思うので、その際の合理的配慮を、先ほどの社員の方が病気になった場合の最高 裁判例というのは多分そういうのを想定してないのだと思います。ですから、業務限 定で無期雇用、有期の場合ももちろんあるわけですが、無期雇用のときの合理的配慮 をどう考えるかは少し検討しておかないと、裁判になった時などにいろいろな判例が 出ても困るので、一応考え方を整理しておく必要があるかと思ったのです。  ○今野会長  先ほどの副島委員と佐藤委員の話を組み合わせると、いま佐藤委員が言われたよう な契約でもいいし、普通の正社員の契約でもいいですが、日本の企業のいわゆる長期 で雇っている社員に対する雇用システムの基本的な考え方というか、理念というか、 あるいは思いというか、幻想というか、いろいろ言い方はありますが、勤続していれ ば賃金が上がるものだということを前提にシステムを組んでしまっているものだから、 そういう必要がない人を上げると、そこで不適応を起こして駄目という話になる。そ れを極端に言うと、そういうシステムの下に置くこと自体が差別だという話になって きて、なかなか難しいですね。  ○副島委員  結局、我々としては障害のある方々、私の所は知的障害ですが、雇用してほしいわ けです。どういう形でもいいから雇用して、一般就労に導きたいのです。ところが、 今みたいにがんじがらめで、こんなことをしたら差別よということでやられてしまっ たら、まさに我々の職場はなくなってしまいます。そこがどのような形で整理されな ければいけないのかというのが重要だと思うし、例えば昇給となると、能力差という ものがあります。これだけの仕事をしていったら給料が上がるということが本人に理 解されることと、本人にそれだけの配慮がされて、何らかのキャリアアップの取組み がされて、本人もそれに打ち勝っていって伸びていけば給料もアップできるでしょう。 ところが、我々の子どものほとんどは、それを付加されたときにはそれ自体応えるこ とができないのです。そうすると、つぶれるしかないわけです。普通一般の社会の中 での仕組みがそのまま我々の子どもたちに当てはまるかといったら、それも難しいと ころがあります。それでも、やはり我々は就労に結びつけたい。  だから、今「嘱託」という言葉を使われましたが、我々はパートという形で、例え ば1日5時間のパートとかという形で契約するのですが、委託で結ぶよりも、最近は 企業側が採用します。採用する代わりに、常勤のフルタイムではないけれど、午前中 の3時間とか5時間で雇用します、その代わりちゃんと労働者という位置付けをしま すよ、という形でされるのです。そのときに、毎月給料が上がりますという条件はど こにも書いていないのです。それに応えていくための本人の努力と、サポート体制も いると思うし、もう1つは本人が継続して仕事ができる条件を揃えていかなければい けないのです。そこにあまりにも負荷をかけていったときには、結局本人自身がつぶ れていってしまう。それでは何のための就労に向けての取組みなのかさえも疑問にな っていくと思うから、そういうところもしっかりと現場を見て、現場の状況を見たと きに、合理的配慮とはどんなものかということを考えていくべきだと思います。  ○松井委員  私は身体のほうですが、今おっしゃったことは障害者全体について言えることだと 思っています。「合理的配慮」という難しい言葉が就労の支援につながればいいので すが、かえってそれを阻害するようなものになってはいけないと、まずは思うわけで す。障害の中身とか本人の能力とか考え方とか、そういうものによって全く違うと思 うのです。ですから、先ほど川崎委員もおっしゃったように、個々の事情と雇用側と の相互理解の中で可能な限りの配慮がなされて、それは一緒に働いている皆さんの理 解もある意味では得なければならないのだろうし、社会全体の理解も得なければいけ ないのだろうし、そういう中で柔軟性を持ってやってみればいいのではないかと。あ まり欲張ってがんじがらめにしすぎることによって、かえって難しくなってしまって はいけないと、今はそう思っております。  ○矢鳴委員  少しお聞きしたいのですが、欧米が使っている「合理的配慮」を日本語に訳したと きの「合理的配慮」は、ニュアンスが違うのかもしれないと思うのです。「合理的」 と、もう1つのものさしの「配慮」というのは、全く違う考え方かもわからないです ね。合理的と言ったときに、物事の進め方に無駄がなく、能率的であるというのが1 つある。配慮と言ったら、どうしても心遣いとか心配りとか、頭で配るのではなく心 を配るということですから、使い方のずれがあるのかもわからない。そうすると、「 合理的配慮」というネーミングというか、これを置き換えたときの合理的配慮という のは、お聞きしていると精一杯心遣いをやっていくというニュアンスかなと思うので す。それはどうなのでしょうか。  ○障害者雇用対策課長  合理的配慮ですが、合理的と言った場合に「Reasonable」という訳語かなと思って います。配慮については「合理的配慮」に合わせて「Reasonable Accommodation」と いう用語が多いようですが、条約はまさしく個別的な概念として理解しておりますの で、特定の場合に必要とされる「変更」または「調整」といった言葉、「Adjustment」 だったかと思いますが、そういった概念になっております。従って「合理的配慮」の 正式な訳は外務省において正訳を作られるのだと思いますが、私どもとして議論して いく際には「合理的配慮」という言葉のイメージよりも、むしろ個々の方に合ったよ うな調整・変更・配慮といったらどういうものがあるかという観点で考えていけばい いかなと思っております。  ○松矢委員  いろいろ議論が出ていて、なかなか整理しづらいのですが、先ほど出た正規雇用で あるかどうかというのはきちんと押さえておかなければいけないのではないかと思い ます。正規雇用であるが、昇給・昇格というのがきちんとあるわけで、それはそれと してその中で障害のある方の合理的配慮になると思うのです。嘱託雇用は、いま非常 に多いと思うのです。知的障害、精神障害の方々は嘱託雇用で、おそらく1年ごとの 契約更新だと思うのです。そういう場合には、昇給とか昇格は別な範疇に入りますね。 いま進行中なのは、今まで雇用の関係になかった知的障害者とか精神障害者の方々の 雇用が障害者雇用促進法の下で行われていて、これは働きやすい職場環境を作るとか、 個々の障害の特性に応じて十分な力が発揮できるようないろいろなツールを開発して いくといく意味で、非常に個別的な工夫も進んでいって、そういうものを作っていく プロセスなのです。そこには特例子会社のような日本的な雇用システムがあるのです。 厳密なことを言うと、特例子会社は差別ではないかという議論も障害者団体にはあり ますが、私はそれはちょっと違うだろうと思っています。むしろ合理的配慮で、働き やすい環境で、企業におけるノーマライゼーションとかインクルージョンの先端みた いなもので、特例子会社も別個の建物にあるのではなくて、同じ会社の中に職場とし てあるような感じなのです。だから、働く力が出ていく人たちは、特例子会社から一 般の特例子会社でない職場に出勤していくというか、派遣していくという形で、だん だんと会社の中のインクルージョン、ノーマライゼーションが進んでいくというのが 実態なので、今はそういうものを作っていく最中です。  副島委員がおっしゃったように合理的配慮をリジットに考えると、そういう進みつ つあるものを壊してしまうことになるので、そういうところの議論の整理は一応して おいたほうがいいだろうと思います。正規雇用であれば、その場合の合理的配慮はか なりやっていると思うのです。具体的なガイドラインを作る場合でも、正規雇用の場 合と嘱託雇用の場合と、いま進んでいる事例を整理すればガイドラインがきちんとで きると思うので、これはあくまで個別的な、具体的な配慮なのだと。だから、それ以 外の配慮もあり得るし、配慮するには困難な事例もあるだろうと。そういうことで一 定のガイドラインを用意して、そこで合理的配慮が作られていくというか、障害者理 解とともに進んでいくものだという捉え方で、そういう位置付けでガイドラインを作 っていくのがいいのかなと。具体的な事例に即してこういうものだということで、あ まりリジットに考えてそういうことはできないというのではなくて、結構いろいろな 工夫ができているのです。  知的障害の方々ですと、今までこの方々は単純な作業を長時間できるということで ずっとやられてきましたが、今はそうではなくて、特例子会社ですと親会社、あるい は関連企業、グループ企業、その他からもいろいろな仕事を切り出してもらって、そ れを集めて帯状で仕事をしているのです。午前中はこれとか、郵便が来ると郵便の仕 分けができる人たちという具合です。2つ、3つ、4つの仕事を帯状でやれるように なってきて、そこに作業手順書などを用意して、時間ごとにそれを使って進めていけ るという、前から比べると全然違う配慮が進んで、力が発揮できるのです。そのよう に捉えていくと、ここまでが合理的配慮としたら、かえって雇用を阻害しているので はないかと思うので、我々の理解としてはある程度受入れ側の努力とか障害者団体、 本人の努力によって内容が豊かになっていくのだという考え方で、正規雇用と嘱託雇 用の場合のガイドラインみたいなものを考えていったほうが落ち着きやすいのではな いかと考えます。  ○今野会長  今おっしゃられた点ですが、ここでずっと議論している合理的配慮の問題を考える ときに、キーワードとしては「個別的」とか、個々によって違うのだというのが1つ のキーワードなわけです。もう1つ、松矢さんは、個別的な対応をして、その措置は 実は普遍的なものがあるのではなくて、非常に状況によって変わってくるのだという ことをおっしゃられたわけです。それは何かキーワードにならないですかね。つまり、 我々が共有しているのは個別的とか多様性とか、それは共有したわけですが、いまお っしゃられたのは会社の状況によって、あるいは社会の状況によって、本人が少し変 わったことによって、合理的配慮の中心はいつも変わってくるのだということを強調 されたので、それをキーワードで言うと何になるだろうと。もしあれば、共有できる といいなと思ったのですが。思いついたら、後で教えてください。非常に重要なこと だなと思いましたので。  ○花井委員  松矢先生のおっしゃるとおりだと思います。私も特例子会社を見学に行ったときに、 知的障害者がフォークリフトの国家資格を取るまでに成長していくという、その人と も会ってきましたが、外国から見学に来る人に説明するために、いま英会話を勉強し ていますというお話だったのです。会社の方も、その人をさらに伸ばしていくために いろいろな配慮を講じて、本人の能力とか意欲を引き出している姿を見て、可能性は とても大きいと感じました。「個別性」というのもキーワードだと思います。ですか ら、あまり最初から固定化しないで、ただ権利条約の要請がありますので、枠組みは 法律で概念的に決めて、あとはガイドライン的なもので事例を集積していくような作 業を重ねていくことが、とても重要ではないかと思うのが1つです。  また、障害者雇用を進めるといった場合、差別を禁止する、合理的配慮を講じるだ けでは不十分であり、やはり地域の支援、社会的な理解の促進とか、そういうことを 総体的に進めていくことが必要だと思います。  ○岩村委員  議論を少しだけ整理すると、従来障害者雇用促進法の枠の中で行っている様々な支 援措置、例えば知的障害者の場合のジョブコーチとかグループ就労も、言葉の定義の 問題なのですが、ある意味では合理的配慮とか、もちろん公的な補助がついたような 形での合理的配慮と捉えることもできますし、いま松矢先生がおっしゃったような、 企業がやっている知的障害者の方々の能力を伸ばすようにいかにオーガナイズしてい くかということも、ある意味では合理的配慮だと言うことができるだろうと思うので す。花井先生がおっしゃったように、現実に障害者雇用を伸ばしていくということで あれば、差別禁止だけではなくて、従来の障害者雇用促進法の枠の中でやってきたい ろいろな事業なり何なりも必要で、両者をどう組み合わせるかという話がまず第一で す。  それと先ほど来、差別禁止と合理的配慮との関係が非常に出ていますが、こう言う と極端なので、やや誇張が入っているとご理解いただきたいのですが、この差別禁止 との関係で出てくる合理的配慮というのは、いま私が申し上げた広い意味での合理的 配慮と見えるようなもの、あるいは雇用促進法の中でやっているようないろいろな事 業とは、出てくる場面で違うとお考えいただいたほうがいいと思うのです。つまり、 ある特定の障害者との関係で、一番分かりやすい例は、今まで健常者だった方が何ら かのけがや病気のために障害を負うことになってしまったと。そうすると、従来の仕 事がそれではできませんねというので、あなたは解雇ですと。それをやってはいけな いというのが、ここでの合理的配慮なのです。つまり、要するに解雇をする前に何か 合理的配慮がその人についてできるかということをやりなさいと。ただし、それは過 度の負担を要求するものではないという枠組みです。  知的障害者との関係であれば、これも分かりやすい例だと、今までやっていた仕事 が会社の経営方針で消えてなくなったと。もうあなたたちは要らないので解雇ですと。 そうではないですよと。先ほどの佐藤先生の話と結びつけると、この仕事をやるため に職務を特定して、嘱託でも何でもいいですが雇っていたと。しかし、そもそもその 仕事がなくなってしまったので、仕事がないのだったら契約は打切りですと。それは 駄目よというのがここの合理的配慮の話で、職務が特定されている場合でも、さらに 他に仕事の切出しで別の職場が用意できるかどうかということを検討しなさいという のが、外国の例などで出てきているものだとご理解いただくと、差別禁止と合理的配 慮と個別具体のというのが、ある程度お分かりいただけるのではないかと思います。  あとは、そういう世界の話と障害者雇用促進法の話で出てくるものとの接合なり何 なりが、どのように全体として調和的に制度設計できるのかということと、先ほど新 澤委員がおっしゃったように費用負担の問題があるので、その費用負担のところを過 度の負担になってしまうということで切ってしまうのか、それともそこに何らかの助 成を入れて、過度の負担にならない形ができるようにするのか、そういう問題の構造 だと考えていただくと、ある程度はイメージとしてお分かりいただけるかと思います。  ○新澤委員  中小企業の立場から考えると、今の先生方のお話が、むしろ先ほどの副島先生のお 話が分かるような気がするのです。現実、日本の企業の97.5%は中小企業です。そこ で働くいわゆる労働者は、多分65%が中小企業、35%が大企業ということになるわけ です。町工場などですと隣近所から頼まれたり、あるいはこの仕事だったらできるの ではないかと。これは知的障害者の例が多いわけですが、その場合大体温情とか、先 ほどのお話のように給料を増やさなくてもいいから、その仕事を本人がその範囲内で 一生懸命やるという気持ちは、私も今までやってきて分かる気はするのです。大企業 の場合、こういう人数の場合とか法律を分けていかないと。中小企業などは温情や情 けで、あるいは障害者を見ながらこの子にはこういう仕事が合っているなとやってい るなとやっている。そういう中でいろいろなことをやると、面倒臭くなって、やっぱ り雇い主からすると、うっかり雇えないなというような場面が出てくる。そういう場 面が、いま先生方のお話を聞いて、こういう場合はどのように立場、現状を見ながら 区別していく必要があるのかなと。いま言ったように、日本中にいっぱい町工場が、 10人とか50人とか、あるいはそのぐらいではない、現にいま私自身の近くの工場の状 況を考えながらお話しているのですが、中小企業の場合はそういう例が非常に多いの です。だから、あまりがんじがらめに、この前も話したようにやってしまうと、それ でいまは1.8%をまだ埋められていないし、そういう中で結果的にはかなりの人数の障 害者を受け入れていると思います。それはその方々にもいい仕事であるし、我々から もそれなりのメリットというか、お役に立っていただいている例があるので、その点 も若干配慮をいただければということでお話をしました。  ○今野会長  たぶん今ここでいろいろ議論されていることは、こういう状況の場合はこういう手 を打ちなさいというのは無理だという話をしているのです。それは非常に個別性が強 いので、極端にいうと法律でこんなときはこの手を打ちなさいというのは無理なので、 もう少し柔軟なやり方でうまくいかないだろうかというので、1つのキーワードとし ては「多様性」とか「個別性」という言葉が出てくる。あるいは、松矢委員が先ほど 言われたことについて私が少し言いましたが、考えてみると、過度の負担と言ったと きに我々はいつもコストを考えますが、実は職場の経験とかノウハウの蓄積も過度の 負担の大きな影響で、そこも柔軟に考えたほうがいいのではないかというのが松矢委 員のお話だったわけです。いずれにしても、その辺を少し整理して、柔軟に、上手に いくにはどうしたらいいかを一生懸命考えようということなので、今おっしゃられた ようにこれだったらこれと、ガチガチのことはあまり考えていないのではないかと私 は認識しているのですが。  ○岩村委員  まず最初に、いま座長が言われたことは多分検討会以来我々が考えていたことで、 あまり合理的配慮の問題をガチガチの法律家的な権利義務関係と考えてしまうと動か なくなってしまうので、そこはフワッとしたものにして、先ほど花井さんもおっしゃ ったと思いますが、ガイドラインなどを作ってお手本なり例を見せて、あとは当事者 間の話合いとか第三者が入ってのアドバイスの中で、必要なものをケースバイケース で考えていってはどうですかというのが、中間報告のときの大まかなコンセンサスだ ったと思います。  今の新澤委員のお話については、先ほどの副島委員のお話と表裏一体のお話だと思 います。新澤委員がおっしゃっていることは、当然ここでの差別とか合理的配慮の問 題とは関わってこないお話だろうと思います。賃金に関していえば最賃をどうするか という話がありますが、少なくとも賃金というのはやってくれている仕事に対する対 価ですから、それに見合うものが賃金として払われているのであれば、それはそれで いいという世界の話だと思いますので、直接的にここで言っている差別だ、合理的配 慮だということと、新澤委員がおっしゃった中小企業における知的障害者の方の雇用 の話とはそう関わらないというか、影響が出てくるものではないだろうと思います。  ○高橋(睦)委員  先ほどからの合理的配慮に関する座長の整理の方向については私も全く同感で、ど ういった措置が必要かについては、個別的でしょうし、多様性もあって当然ですし、 随時変更していくことだろうと思います。この中にそういうことを可能にしていくシ ステムとして基本的なところが書いてあるのですが、主体的、個別的に本人がそれを 求めていくことが基本でしょうけれど、先ほどから言われている第三者機関をどうす るのか、あるいは企業内にそういった相談窓口を作るのか、それともまた別の機関に するのか、推進会議のようなものを企業内に作るとか、そういった切り口で先ほどか らの合理的配慮をスムーズに、きちんと措置できるような支援措置みたいなものも必 要だと思うのです。そのことについて、これまではさまざまな公的助成策が練られて いますが、この合理的配慮を可能にするための公的助成、あるいは企業内でのそうい った機関をどうするのかといったことも今後話をしていかなければいけないと思うの です。ここで質問なのですが、諸外国の例で合理的配慮の措置の中身については書い てありますが、先ほど言った第三者機関とか相談窓口、公的支援も含めたものがどう なっているのか知りたいと思います。  ○障害者雇用対策課長  今日資料でお付けしている資料1においても、いま委員がおっしゃられたような配 慮推進会議のようなものを設けるとか、企業における苦情を訴える窓口が必要ではな いかといった話が載っていて、次回予定している苦情処理・救済手続等の中でもご議 論いただければと思っておりますが、さしあたり今ご質問のあった諸外国、英・米・ 独・仏の中での処理手続等について現在把握している限りで申し上げますと、アメリ カは先ほど少し申し上げたEEOC(雇用機会均等委員会)で調停ができると。このEEOC の特色としましては、雇用差別について申立てを受けた場合に調査して、協議・調整 を行う。あるいはEEOC自体が原告になって訴訟もできるといった特色があると聞いて おります。  分かっているものだけ言いますと、フランスの例です。先ほどの例でも、資料3− 3の上のほうに書いておりますが、権利救済機関HALDE(高等差別禁止平等対策機関) といったものがあり、こちらに被差別者の方が提訴を行うことができるということで す。HALDE、EEOCはそれぞれ障害者に限ったものではないようですが、そういった調査 権限を持つ機関で、例えばあっせん和解案の提示・勧告ができるといった機関です。  イギリスにおいては、ACAS(助言あっせん仲裁局)によるあっせんができると。こ れは前からですが、EHRC(平等人権委員会)による障害者あっせんサービスが2006年 からできると。2006年にEHRCができるまではDRCという機関がありまして、これは200 6年に開始されたものです。これは差別を受けたと考える方が相談・あっせんを行うと いったものです。現在把握している限りで、雑駁ですが、以上です。  ○今野会長  次回そういう点について議論する予定なのですが、高橋委員のご質問でもう1つ重 要なのは、今おっしゃられたのは紛争が起きたり苦情が発生した時にどう対応するか という仕掛けです。もう少し対応政策、プロモーションするための政策とか、先ほど のでいくと多様性とか変化対応性という形で措置が取れるような、ソフトシステムみ たいなものがあったら、次回でもいいので調べておいていただきたいと思います。  ○障害者雇用対策課長  基本的には次回ご議論いただこうと思っていたのですが、1つご紹介しますと、ア メリカにおいてはインフォーマルな相互関与システムがあるようで、合理的配慮の内 容を決定する場合に、使用者と障害者の方が話し合って情報を共有するプロセスもあ るようです。こういったことも含めて、次回私どもとしては何を把握しているかを考 えた上でご議論いただきたいと思っております。  ○今野会長  それでは、次回のお楽しみということで。  ○高橋(弘)委員  過度の負担についても、もう少し各皆様方で議論を深めて、イメージを持っていく 必要があるのではないかと考えております。もちろん、合理的配慮は個別性が非常に 強い概念ですし、もともとガチガチに絞るようなものでもないことから考えれば、過 度の負担についてもガチガチに縛るものではないということは理解しますが、さはさ りながら合理性が問われるわけですから、何をもって過度の負担なのかというイメー ジは持った上でガイドラインの策定に臨んでいく必要があるのではないかと思ってい ます。  その上で参考になるのが、今日の資料1の中間整理の3頁のいちばん下にある「2 過度の負担」ということです。質問も兼ねて意見も言って混在するのですが、過度の 負担の基準としてはということで、「企業規模」というのも出てきます。最初、企業 規模と出てきたので、私は従業員規模のことなのかなと思ったら、3番目に「従業員数 」というのがあります。「また」以下で「事業規模」という概念も別途出されていて、 企業規模、事業規模、従業員数が出ています。また、「環境の特性」というよくわか らない言葉、私は全くわからないのですが、そういう言葉があります。あるいはかな り前の分科会で私が質問しましたが、「地域の文化・慣習」というわからない単語が 並んでいて、これは一体何なのだろうとちょっと思っておりまして、この辺り、今野 先生でも結構ですし、事務局でも結構なので、どのようなイメージだったのかを後ほ ど教えていただきたいと思います。いずれにしても、ここに書かれているもの以外で も、例えば、当然ですが企業の財務状況なども勘案事項だと思いますし、今まさに先 生もご指摘されましたが、負担すべき費用も勘案すべき要素ではないかと思いますし、 そういう事象があるかどうかは別にしても、事業の正常な運営を妨げるかどうかとい った要素も勘案していく必要があるのではないかという気がしています。  過度の負担に関して、もう1点追加的な質問をしたいと思うのですが、資料の2頁 目の真ん中の「基本的な内容」という所に最初の○があります。合理的配慮の内容と してはと言って、3つ書かれています。おおまかに言えば、(1)通訳や介助者等の人的 支援、(2)定期的通院や休暇・休憩等の医療面での配慮、(3)施設や設備面での配慮。お そらく、これが合理的配慮の内容として、今後検討するにあたって重要な3つの点だ と思うのですが、過度の負担との関係から考えると、(3)の施設や設備面での配慮は明 確にコストがわかるものだと思うのです。バリアフリーに改装するにはどのぐらいか かるのか。他方で、(1)の通訳の方とか介助者等の人的支援と考えたときに、あまりお 金の話をするのは恐縮なのですが、もちろん支援を受けた場合のネットのものをカウ ントするのだと思うのですが、障害をもたれた方が職に就いてから定年退職まで、あ るいは65歳の確保措置までを視野に置いて、人的支援に関わるネットコストを積算し て、それを現在価値に割り戻して、今いくらなのだということを考えるのかどうか。 そういう負担のイメージは、ある程度皆さんで共有したいというのが私の願いという ことです。  ○今野会長   今いろいろなことをお話されましたが、過度の負担について一度我々でここで集中 的に議論をしたほうがいいというご趣旨だと思いますが、予定ではそういうテーマは 入っていませんでしたっけ。  ○障害者雇用対策課長  私どもの考えとしては、10月に差別禁止を1回やって、合理的配慮を今日を含めて 2回、次は苦情処理・救済手続ということで、過度の負担については合理的配慮と表 裏のものですので、今回を基本的に考えております。  ○今野会長  それでは、事務局と相談させていただきますが、一応そういうスケジュールで考え ていたので、スケジュールを変えてどうするかも考えさせていただきます。  ○高橋(弘)委員  私の質問に対して、何かお答えをいただければと思いますが。3頁の中間手続に掲 げられている5要素についての説明等があれば。  ○障害者雇用対策課長  先ほどの委員のご質問で、諸外国の例ですが、過度の負担については率直に言って 非常に詳細な基準を作っている国は把握しておりません。おそらく私どもが考えます に、企業規模、あるいは費用を実際に積算してそれはどうかというアプローチよりも、 むしろケースバイケースでの判断を重視しているのかなと思われます。  その上で、先ほどご質問があった過度の負担の内容の中間整理の部分で、例えば企 業規模、業種、従業員数、環境特性、地域の文化・慣習等を参考にして判断すべきで はないかとの意見があったといった記述についてですが、これは研究会の場において 委員の方よりご意見いただいたものをそのまま反映したものですので、事務局として 一つひとつの内容の解釈については把握しておりません。いずれにしても、合理的配 慮については非常に個別性が強いので、過度の負担の判断基準についてもどこまで規 定すべきかということで、今年の7月にもこの分科会の場でご質問いただいたようで すが、地域によっては諸々仕事の仕方が違うので、過度の負担の判断においても変わ るのではないかということも推測されるわけですが、具体的にそれぞれの要素につい て詰めた議論はされておりません。  ○佐藤委員  あまり議論を混乱させるといけないので確認なのですが、この合理的配慮というの は、基本的には事業主の方に就業者の方が雇用されて、継続就労するような配慮をし てくださいということですね。そのときに、これは個別性ということですから、障害 者の方がこういうことをやってくれれば自分はもっといろいろやれると言って、それ ができませんというときに断る理由の合理性ですね。それが過度の負担だったり、こ れ以上できませんといった時の、多分合理的に配慮しなくていい、多分そういうこと だと思うのです。だから、配慮をやってくださいというのは原則ですね。基本的には、 障害者の方が気持ちよく働けるように配慮しなさいというのは大原則です。そして、 いろんな方がいる。これは個別性ですから、こういうことをやってくれれば自分はも っと働けるのだと言ったときに、でもやれない場合がある。  その時に、何でもやれませんというのではなくて、合理的にそれはやらなくても、 他の人から見てもそれはできないですねと言われる、やらなくていいという合理性な のかなと。「合理的配慮」というのがよく分からないですが、やらないでいいと、そ れはコストの問題であったり、業務上できません、経営が持ちませんとか、そういう こともあるかもしれない。ですから、極端な言い方をすれば、一般的に例示できるの かどうかが難しくて、逆に言えば先ほどのコストや経営の状況や財務状況は、ほかの 会社が当たり前にやれることがやれない状況があると思いますから、原則配慮します。 ただし、きちんとやってくださいと。やらないと言ったときに、問題になった時に、 合理性があるかどうかを判断するところをきちんと詰めるのかなと思っていたのです。  ○今野課長  先ほどの高橋委員の発言に対する私の考え方は、例えば合理的配慮の問題、措置の 方だって結局は個別性が非常に強いということが前提なのですが、個別性とか多様性 とか、いくつかのコンセプトについては共有ができたわけです。だから、もしかした ら過度の負担も非常に個別性が強いけれど、これを考えるときに何か我々が共有でき る基本的な原則とかコンセプトみたいなものがあれば、少しは前に出るので、そうい うことが何かあるかないかを議論してみたらどうですかということを、高橋委員は「 イメージ」という言葉を使ったと思うのです。それの議論を一度するかどうかは、先 ほど言いましたようにスケジュールの問題があるので事務局と相談させていただいて、 もしそういうものがあったら少し前進かなと思いますので、そういうことでよろしい ですか。  ○岩村委員  今の佐藤委員の議論との関係では、難しいのですが、ガチガチに考えたケースは佐 藤委員がおっしゃったように、ある障害者の方がいて、自分は今の障害の状態だとこ れしかできない、あるいはこのままだとクビになってしまう。だけど、あの仕事が企 業にあるのだから、私にそれをやらせろと。それが合理的配慮だと主張するといった 時には、論理的には2つあって、そもそもそれは合理的配慮の範囲には入らないとい う議論があり得るのです。あなたはその仕事をできると言っているけれど、あなたの 今の障害の状態から言えば、そもそもできませんと。従って、そこの仕事を割り当て ること自体が合理的配慮の範囲内には入りませんという話が1つあり得るのです。あ まり良い例ではないかもしれませんが。  もう1つは、その仕事をするのには、あなたの障害の状態を考えるとこういう訓練 をしないと駄目ですという話があって、その訓練にはこれだけのコストと時間がかか ると。それは、場合によっては過度の負担ということになって、合理的な配慮として は考え得るけれども、かかるコストを考えると、それを企業にまでやれとは言えませ んという議論の整理なのかもしれません。そこには先ほど来、新澤委員がおっしゃっ ているように、企業の規模の問題なども入ってきて考えるということなのだと思いま す。新しい仕事を切り出せと、できるではないかと言っても、中小企業の場合はそも そも余剰人員がかえって発生して大変になってしまうこともあり得るでしょうから、 そうするとそれは合理的配慮としては考えられるけれど、企業にとっては非常に過度 の負担になってしまうということはあるだろうと。アメリカの判例にもその趣旨のこ とは出てきますので、そういうことなのかなと思います。  いずれにしろ、過度の負担というのは結局合理的配慮として考えられるという話な のか、過度の負担があるから合理的配慮から外れるというのはちょっと微妙なのです が、ケースバイケースで考えざるを得ないし、その負担のあり様は事業所単位である のか企業の単位であるのかという考慮単位の問題もありますし、それにどれだけ目に 見える費用がかかるのを問題にするのか、それとも目に見えない費用まで考えてとい う話になるのか、そこは個々ケースごとに考えていかざるを得ないのかなと思います。 ある程度例を示して、ガイドライン的なものを考えることはできると思いますから、 あまりそこは硬直的にはならないほうがいいのかなと思っています。  ○今野会長  今日のお話を聞いていると、実は過度の負担の議論をだいぶしていて、今出た意見 としては、例えば今この仕事がなくなったのだから駄目よと、あなたは要りませんと 言うのではなくて、仕事を作れというのは過度の負担かどうかということなのです。 だから、我々はいろいろ考えているけれど、過度の負担の中身についてはいろいろな ことを考えてしまっていて、最初はコストだけと思っていたけれど、その前に仕事が あるかないかとか、あるいは先ほど松矢さんがおっしゃったように、やるけれど、会 社側が慣れてきてもう少しいける範囲が増えてきたので、昔負担だったけれど、いま 負担ではないとか、そういう意味でいろいろな変数が入ってきていて、今のところ我々 はあまり整理できていないのです。配慮のほうは比較的議論が進んだのですが、そん なこともあるので、高橋委員が言われたように、お金で計算するだけという問題では ないような面もいっぱいありそうなのです。だから、そこをもう一度整理することが 必要かどうか、また先ほどの結論ですが、今後の運営の方法の中で考えさせてくださ い。他にございますか。  ○佐藤氏(大島委員代理)  今の過度の負担の関係ですが、先ほど資料1の3頁のいちばん下の○のところは結 局どういうことを意味するのかは、必ずしも明確ではないようなお話が事務局からあ ったかと思うのですが、いずれにしてもここにある企業規模とか業種とか、先ほどお 話が出た財務状況とか、いろいろ企業の状況も多様だということは、議論はまたする かどうかはわからないということでしたが、是非勘案していただければと思います。  それから、コストだけではないというお話もあったのですが、私どもが全国の会員 企業の人たちに今こういう議論をしているのだという話をするときに、今まで障害者 の方の雇用の経験がない所にしてみると、今回の資料2で好事例というのが配られて いますが、好事例の中でも分かりやすいところで言えば、2頁の1の(3)に「施設や設 備面での配慮」とありますが、こういうものに一体どのぐらいのコストがかかるのか は、経験がない所には全く見当もつかない話で、ものすごくかかるのか、あまりかか らないのかもしれない。こういうことをやるときに、基本的にみんな助成措置でカバー されているのか、それはケースバイケースなのか、自社で負担されているケースも結 構あるのか、そういうところも全然情報がないところで戸惑う企業の方も多いのでは ないかと思います。これをどういう形で情報提供していただくのがいいのか、私も具 体的なイメージは持っていないのですが、過度な負担を考えるときの、本当にごく一 部かもしれませんが、1つの素材として、こういったものについてもどのぐらいお金 がかかりそうなのかという情報もわかった上で議論ができればと思います。  ○今野会長  この設備を入れたらこれだけお金がかかるとか、あるいはこの設備を入れたらこん な効果もあるとかのリストを作ることになるのかよくわかりませんが、とりあえずは 先ほど言いましたように基本的な考え方を整理して、最終的にはガイドラインみたい なものに落とすと思いますが、そこから先のオペレーションになってくると、いま佐 藤さんが言われたような問題はいっぱい出てくると思うのです。それを国がどうやっ て支援するかという問題も出てきます。ですから、将来的には必ずそういうことがテ ーマになるだろうとは思いますが、いま個別にこれだったらいくら、これだったらい くらという議論は少し勘弁していただきたいと思います。  ○花井委員  合理的配慮が多様性というキーワードであるとすれば、過度の負担もそうかなと、 いま議論を聞いていて思いました。1つだけ法制化するときに入れていただきたいと 思っているのは、障害者が合理的配慮を求めたことによる不利益取り扱いを禁止する としなければ、なかなか配慮措置を求められないケースが出てくると思いますので、 是非、不利益取り扱いの禁止を盛り込んでいただきたいと思います。  ○高橋(弘)委員  今日の議論の中で、今野座長が基本的なキーワードを作り出してイメージを共有し ていくとおっしゃいましたが、それは私も大賛成なのです。その観点で、最初の通勤 に関しての議論がありましたが、合理的な配慮を考えていく際に、もちろんいろいろ な先生がおっしゃったように企業が実際に便宜を提供している場合は別にして、一般 論で言えば通勤は労働時間外のことですので、そういった労働時間外のことまで合理 的配慮の内容に含めると考えるのは、厳しいところがあるのではないかと思っており ます。合理的配慮というのは、労働時間内に行われることについて考えるものですと いうイメージとか、そういったものも考えていただけたらよろしいのではないかと思 います。  ○今野会長  一般論ですが、そういうグレーゾーンはいっぱいありそうですね。例えば、私が障 害をもって、今の仕事をするために勉強に行きたいと。勉強すれば少し仕事ができる ようになるといったときに、会社は必ず私に教育訓練費を持たなければいけないので すかね。持つべきなのか、そこもグレーゾーンなのです。今のは思いつきですが、い ろいろそういうものはありそうですので、ありそうだなということだけ今思っただけ なのですが、意見としてお聞きしておきます。よろしいでしょうか。  それでは、今日も活発な議論をありがとうございました。今日はこの辺にさせてい ただきます。その他は何かありますか。それでは、次回の分科会について事務局から 説明をお願いします。  ○障害者雇用対策課長   以前スケジュールの形でお示した際には、次回は11月25日(水)の予定でしたが、 参加が難しくなった委員数の関係で見送ることとさせていただきます。具体的な日時 については、再度事務局より連絡させていただきたいと思います。議題は「権利保護・ 紛争解決のあり方について」でしたが、また分科会長ともご相談したいと思っており ます。いずれにしても、追ってご通知させていただきます。  ○今野会長  最後に議事録の署名ですが、労働者代表は野村委員、使用者代表は新澤委員、障害 者代表は松井委員にお願いします。  それでは、今日は終わります。ありがとうございました。 〈照会先〉 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 調整係 〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2 TEL 03(5253)1111 (内線5783) FAX 03(3502)5394