09/11/02 第53回厚生科学審議会科学技術部会議事録 ○ 日  時 平成21年11月2日(月)17:00〜19:00 ○ 場  所 厚生労働省 専用第21会議室(17階) ○ 出 席 者   【委  員】永井部会長         井部委員   今井委員   岩谷委員   川越委員         木下委員   桐野委員   佐藤委員   末松委員         西島委員   廣橋委員   福井委員   南(砂)委員         宮田委員   宮村委員   望月委員 ○ 議  題   1.平成22年度科学技術関係予算の概算要求について   2.平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業について   3.遺伝子治療臨床研究について   4.ヒト幹細胞臨床研究について   5.今後の戦略研究について   6.その他 ○ 配布資料   資料1. 平成22年度科学技術関係予算の概算要求について   資料2. 平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)   資料2別紙.厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管         理システム(e-Rad)への入力方法について(平成21年11月2         日版)   資料3−1.遺伝子治療臨床研究実施計画について(京都府立医科大学附         属病院)   資料3−2.遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究         に係る生物多様性影響評価に関する申請について(岡山大学         病院)   資料3−3.遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について   資料4. ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について   資料5. 今後の戦略研究について   資料6−1.国立がんセンター研究所 平成17年度〜19年度機関評価に関         する厚生科学審議会への報告書   資料6−2.平成22年度の科学技術に関する予算等の資源配分の方針     〜科学技術によって最適な生活環境を実現し、国際社会から         信頼される国づくりを目指して〜   参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2.遺伝子治療臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究         に係る生物多様性影響評価に関する参考資料   参考資料3.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資         料   参考資料4.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成20年4月1         日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定)   参考資料5.厚生労働省の平成22年度研究事業に関する評価(概算要求前         の評価) ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせします。傍聴に当たりましては、すでにお配りしてい ます注意事項をお守りくださるようお願いします。定刻になりましたので、少 し遅れてみえる先生がいらっしゃるようですが、ただ今から「第53回厚生科学 審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様には、ご多忙の折お集ま りいただき、御礼申し上げます。  本日は、石井委員、金澤委員、竹中委員、橋本委員、南裕子委員、森嶌委員 から欠席のご連絡をいただいています。委員23名のうち出席委員は過半数を超 えていますので、会議が成立することを報告いたします。なお、松本恒雄委員 におかれましては、委員辞任の申し出がありましたことから、現在、手続中で あることを申し添えます。  本日の会議資料の確認をお願いします。資料の欠落等ございましたら、事務 局までお願いします。議事次第に配付資料一覧がございます。資料1「平成22 年度科学技術関係予算の概算要求について」、資料2「平成22年度厚生労働科学 研究費補助金公募要項(案)」という厚めのものです。資料2には「別紙」とし て「厚生労働科学研究費補助金の応募に係る府省共通研究開発管理システム (e-Rad)への入力方法について」があります。資料3-1は「遺伝子治療臨床研究 実施計画について(京都府立医科大学附属病院)」です。資料3-2「遺伝子治療 臨床研究実施計画の申請及び遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影響評価に 関する申請について(岡山大学病院)」です。資料3-3は「遺伝子治療臨床研究 に関する実施施設からの報告について」です。資料4は「ヒト幹細胞臨床研究 実施計画の申請について」です。資料5は1枚紙で「今後の戦略研究について」 です。資料6-1は「国立がんセンター研究所 平成17年度〜19年度機関評価に 関する厚生科学審議会への報告書」です。資料6-2は1枚紙で「平成22年度の 科学技術に関する予算等の資源配分の方針」です。その他に参考資料として5 点お手元にお配りしています。資料についてはよろしいでしょうか。  永井部会長が少し遅れていらっしゃいますので、それまでの間、廣橋部会長 代理、よろしくお願いします。 ○廣橋部会長代理  そういうことで代理で司会を務めます。よろしくお願いします。議事に入り ます。最初は、「平成22年度科学技術関係予算の概算要求について」です。事 務局より説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  資料1をご覧ください。平成22年度科学技術関係予算の概算要求についてご 説明いたします。資料を1枚おめくりください。平成22年度予算については、 10月15日に概算要求を行い、年内の予算編成に向けて各種の作業を今行ってい るところです。今回の予算要求は、科学技術関係予算全体についての予算の組 み方が変わったことなどもあり、一番下にありますように23.1%の増加となっ ていますが、既存予算の徹底的な見直しを実施するという政府の方針があり、 それに基づいて厚生労働科学研究費補助金については対前年度同額の要求とな っており、その他の経費についても必要な見直しが行われています。  厚生労働科学研究費補助金については、さらに1枚めくっていただいた次の 頁に少し詳しめの資料が付いています。以前の資料では生活習慣病対策総合研 究となっていたものについては事業の整理を行い、真ん中辺りに、(仮称)が後 ろに付いていますが、循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究と修正し ています。戦略研究が終了する関係でこの事業は多少減額要求となっています。 また、(4)ウについて、以前、障害者自立支援総合研究としていたものは障害者 対策総合研究と名称を変更しています。  重点化を図っているところは、対前年度比を見ていただくと再生医療実用化 研究、成育疾患克服等次世代育成基盤研究、長寿・障害総合研究、新型インフ ルエンザ等新興・再興感染症研究、肝炎等克服緊急対策研究、食品医薬品等リ スク分析研究などがあります。  例年よりも遅いスケジュールで予算の編成作業が行われているところであり、 また、今後の作業等については新しいやり方が入ってきたことなどもあり、こ れまでの経験はあまり役に立たないところがあって予測し難いところがあるわ けですが、折々に厚生科学研究の必要性等について関係方面に説明していきた いと考えています。  また、報告事項になりますが、資料の一番最後、関連しているので併せて説 明させていただきますが、資料6-2をご覧ください。1枚紙で「平成22年度の 科学技術に関する予算等の資源配分の方針」というものが、10月8日付で総合 科学技術会議で決定されています。  「I.基本的考え方」の最後にありますように、以前、こちらにも報告してい ますが、6月19日に一度決定されている資源配分方針は廃止となっています。 基本的考え方には、「新内閣の基本方針」、「平成22年度予算編成の方針につい て」、「国連気候変動サミットにおける鳩山総理演説」を踏まえ、環境・エネル ギー分野などの技術革新で世界をリードするという視点に重点をおき、予算等 の資源を重点配分する、あるいは新内閣の基本方針で示された「人の命を大切 に」、「活力ある農山漁村の再生」、「医療・介護・環境など新たな分野における 産業と雇用の創出による内需主導型の経済成長の実現」、「世界の平和と繁栄を 実現」の課題解決に向けた科学技術施策についても重点的に推進するといった ことが記載されています。  「II.環境と経済が両立する社会を目指すグリーンイノベーションの推進」に ついて、最重要政策課題と位置づけられています。  「III.重点的に推進すべき課題」として、人の命を大切にする健康長寿社会の 実現、地域科学技術施策の推進、社会還元加速プロジェクトの推進、革新的技 術の推進、科学技術外交の推進が示されています。  「V.総合科学技術会議による効果的な優先度判定等」については、最初のと ころで、既存施策についてはゼロベースで厳しく優先順位を見直す、といった 記述もあり、最後の段落には、メリハリをつけて個別施策の優先度判定等を実 施することなどが記載されています。資料の説明は以上です。 ○永井部会長  遅れてまいりまして大変申し訳ございませんでした。ただ今のご説明に何か ご質問はありますか。よろしいですか。 ○宮田委員  こういう時期に頑張ったとは思っていますが、一つだけ教えてください。資 料1の1頁、最初の表の下の方ですが、「その他科学技術関係経費」というのが 前年比3.6倍、約480億円増大しています。一方、「国立高度専門医療センター 特会」がどうやら廃止されたようで、予算の枠組などは大きく変わっているの で、ここのところをもう少しご説明していただけますか。 ○坂本研究企画官  最初に説明しましたように予算の枠組が変わり、科学技術関係予算として色 づけられるところが変わり、今回、新たに独法になったところの全体が科学技 術関係予算として計上していることになります。 ○宮田委員  そうすると、特会がなくなった分の150はわかりますが、残りの300はいっ たいどういうことになるのですか。 ○坂本研究企画官  今まで科学技術関係予算となると研究所経費等限定していましたが、今回の 場合、そういう予算の内訳がなくなりますので。 ○宮田委員  そうすると、独法全体の経費がドカッと入ってきてしまったわけだ。 ○坂本研究企画官  全体的に入ったということ、予算計上上の仕訳ができないことからこういう 整理になっております。 ○宮田委員  なるほど。そうすると、今この数字だけを見ると、一見、科学関係予算が伸 びたように思いますが、そうでもないということですね、真水という意味では。 ○坂本研究企画官  予算の組み方が変わったという説明をいたしましたが、まさにその説明のと おりです。 ○宮田委員  わかりました。認識を改めました。 ○廣橋部会長代理  報道などによると、今回は概算要求もさらに厳しく評価されると聞いていま すが、これからどのように進んでいくのか。とりわけこの研究費の総額の中に は直接の研究事業と支援事業、人材育成なども入っています。今後、そういっ たものも含めてドラスティックな変化が起こるのか、それともこれまでのよう に研究費が担保されるのか、その辺はいかがですか。 ○坂本研究企画官  ご説明申し上げたとおり既にやり方が変わっており、正直、これまでの経験 からはなかなか説明が困難なところがあります。総合科学技術会議について説 明をいたしましたが、例年の予算よりも遅いタイミングでSABC評価もなされる わけですので、全体的なスケジュールが最後の方でどうなっていくかは、我々 もまだ掴みきれていませんので、先ほど申しましたように、我々の立場として は折々必要性を主張していくしかないと思っているのですが、御指摘のとおり 既に査定側からは相当厳しいことを言われており、やり取りといいますか、そ ういうことは既に始まっているのが現状です。 ○廣橋部会長代理  是非よろしくお願いします。 ○永井部会長  議事2にまいります。「平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業 について」、ご意見をいただきたいと思います。事務局よりご説明をお願いしま す。 ○坂本研究企画官  資料2「平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(案)」について、ご 説明いたします。厚い資料となっていますので、要点を絞って説明いたします。 資料2の1頁です。「厚生労働科学研究費補助金の目的及び性格」では、この研 究費の目的等を記載し、厚生労働科学研究費補助金は、いわゆる補助金適正化 法等の適用を受けるという説明も記載しています。  1頁の四角囲みの中に、平成22年度の公募研究事業について記載しています。 予算成立前であり、組み替えも含めて新規のものには「(仮称)」というものを 付しており、四角囲みの下の※のところで、予算成立後に削除する予定である ということを記載しています。また、※のところでは、早期に補助金を交付す るために予算成立前に公募を行っており、予算の成立状況によっては新規採択 予定課題数を下回る場合等があるということを注意喚起しています。  2頁からが「応募に関する諸条件等」になっています。3頁以降、対象経費関 係の記載があります。4頁に学会参加費などの記載がありますが、今回、ウの外 国旅費等について、海外の研究者との研究協力により、外国人研究者を招聘す る場合も同様という追記を行い、国内外の学会参加費の要件については、当該 研究の推進に資する情報収集、意見交換といったものの追記も行っています。  5頁、キの間接経費です。こちらについてはこれまで段階的に拡大していまし たが、今回からは新規採択される課題に係る間接経費については、研究費の額 を問わず、30%を限度に希望できるということを記載しています。間接経費の 下の※にありますように、人件費等の「対象経費」の取扱いについてはさらに 検討しているところでして、見直しを予定しており、今後、公表しますのでご 留意ください、という注意書きを記載しています。  8頁、ウとして利益相反(COI)の管理について記載しています。今回から厚生 労働科学研究費補助金の交付申請書提出前にCOI委員会が設置されず、あるい は外部のCOI委員会への委託がなされていない場合には、原則として、補助金 の交付を受けることができない旨の記載をしているわけです。  9頁からクとして府省共通研究開発管理システム、いわゆるe-Radについて記 載しています。昨年度は書面とe-Radの手続両方というやり方でしたが、今回 からは書面提出を不要とし、e-Radに一本化して公募を行うということにしてい ます。研究計画書、別添様式、論文等すべての提出書類を一つのファイルに統 合してe-Rad上でアップロードしていただくということになるわけです。e-Rad への入力の関係については、本日、「資料2別紙」を別にお配りしています。別 紙を見ていただくと、e-Radの画面とそれの注意書きを書いた図解ということで 必要な注意喚起をするもので、この内容を併せてホームページに掲載します。 別紙の中の黄色いところでは注意書きということで、e-Radの操作上間違えやす そうなところ、経験的なところですが、そういったところの注意を記載してい ます。  資料2に戻っていただきます。9頁、e-Radのところでは、システムの使用に あたっての留意事項、利用可能な時間帯、研究機関の登録が必要である旨の注 意喚起、研究者情報の登録、個人情報の取扱い、システム上で提出するにあた っての注意、そういったものを記載しています。応募書類等作成時の注意点と いうことで、技術的なところの注意喚起も10頁で行っています。  11頁、(6)提出書類では、一部事業の若手育成型については、今回からマスキ ング審査を導入するため、研究計画書の様式が異なるといったことも記載して、 注意喚起を行っています。  12頁からの(7)その他では、研究成果を行政効果報告WEB登録に必ず登録する ことなどを記載しています。  13頁では、e-Radを通して政府研究開発データベースに情報が提供されるこ と、14頁では、競争的研究資金の不合理な重複及び過度の集中の排除について も、e-Radを活用すること、個人情報の取扱いについて情報が内閣府に提供され、 分析結果が公表される場合があるといったこと等も記載しています。15頁から 「照会先一覧」となっています。  18頁からが「V 公募研究事業の概要等」となっています。18頁の冒頭にあ りますように、この公募要項は一般公募型と若手育成型の公募要項となってい ます。18頁の真ん中辺にある「各研究事業の概要及び新規課題採択方針等」、こ こ以降に各事業に関する事業概要の説明、新規課題採択方針、公募研究課題、 各課題の留意点を記載しています。各研究事業については、応募を行う研究内 容や行政のニーズが満たされるよう、できる限り詳細かつ具体的な課題設定を 記載するよう心がけています。また、個別の研究事業の各項目ごとに、予算成 立前に公募を行っており、成立した予算の額に応じて、研究の規模、採択件数 等の変更が生じる場合がある旨の記載も今回行っています。  18頁の下の方から「1.行政政策研究事業」となっています。こちらの政策科 学総合研究の「ア.政策科学推進研究事業」については、19頁以降にありますよ うに、(1)社会・経済構造の変化と社会保障に関する研究、20頁に(2)世帯・個人 の経済・生活状況と社会保障に関する研究、(3)社会保障分野における厚生労働 行政施策の効果的な推進等に関する調査研究、これら各分野で公募を行い、21 頁にある若手育成型の公募も行うこととしています。若手育成型については、 19頁の真ん中辺に応募対象についての記載がありますが、満39歳以下の方、こ れは他省の状況等も確認しましたが、ほぼ同じ状況で、産休や育児休業を応募 資格の制限日に加算できるといったことも規定しています。  21頁の「イ.統計情報総合研究事業」です。こちらでは、厚生労働統計調査の 調査手法及び精度の向上に関する研究等について、若手育成型も含めて公募を 行う予定です。  23頁から「2.先端的基盤開発研究事業」となっています。これの「(1)再生医 療実用化研究事業」では、一般公募型として、各分野(神経・運動器、肝臓・ 膵臓、皮膚・感覚器あるいは歯等)における再生医療技術の早期臨床応用を目 標としたエビデンス創出のための研究、再生医療を活用する新規治療技術の実 用化に関連した、細胞・組織等を用いる治療技術の安全性・品質の確保に関す る技術開発、それから若手育成型の公募を行うことになっています。  25頁から「(2)創薬基盤推進研究事業」の「ア.創薬総合推進研究(仮称)」で す。こちらでは25頁の新規課題採択方針の一般公募型のところにあるように、 がん、心筋梗塞、脳卒中、認知症等の領域で開発が望まれる新規の疾患モデル 動物の開発に関する研究、自然発生病態動物の開発法・システムに関する研究、 漢方薬の作用機序を解明するための研究、漢方薬に用いる薬用植物の総合情報 データベースを構築するための基盤整備、そういう各分野での公募を行うこと を予定しています。  27頁、「(3)医療機器開発推進研究事業」、「ア.低侵襲・非侵襲医療機器(ナノ テクノロジー)研究(仮称)」です。こちらでは超微細技術(ナノテクノロジー) を活用した疾患の超早期診断・治療システム等に係る医療機器等の開発に関す る研究を行います。また、同様の課題での若手育成型の公募も行うことを予定 しています。  29頁からは、「3.臨床応用基盤研究事業」です。こちらの「(1)医療技術実用 化総合研究事業」の「ア.臨床研究基盤整備推進研究」では、医療機関における 治験・臨床研究基盤整備研究について、一般公募型として公募を行います。31 頁の「イ.臨床研究推進研究(仮称)」では、32頁の新規課題採択方針の一般公 募型を見ていただければと思いますが、5点あり、(1)医薬品又は医療機器に係る 基礎研究の成果を適切に臨床応用するために実施する研究であって、薬理試験、 用量探索試験、性能試験、安全性試験、検査指標の探索及びその実用化等に関 する研究、(2)臨床研究のプロトコール作成研究、(3)既に作成済みのプロトコー ルに基づいて実施する臨床研究、(4)統合医療分野の評価技術の開発に関する研 究、(5)漢方薬の有効性・安全性のエビデンスを創出する研究、これら各分野で 公募を行うことを予定しています。それぞれの課題については、先ほど説明し ましたように、次の頁等において細かく行政側の考えている内容、こういう内 容ということの説明を記載しています。  34頁から「4.成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(仮称)」です。こちら は「子どもが健康に育つ社会、子どもを生み、育てることに喜びを感じること ができる社会」の実現のために、次世代を担う子どもの健全育成と、女性の健 康の支援に資する研究ということで、小児慢性特定疾患の登録・管理・解析・ 情報提供に関する研究、子どもの先天性・難治性疾患の新しい治療法開発に関 する研究、生殖補助医療により生まれた児の長期予後の検証と生殖補助医療技 術の標準化に関する研究、コホート研究による成育疾患の病態解明に関する研 究等々について、公募を行うことを予定しています。  36頁の下の方は、「5.第3次対がん総合戦略研究事業」となっています。こち らは中がいくつかに分かれており、37頁の「(1)第3次対がん総合戦略研究事業」 では、研究分野1の発がんの分子基盤に関する研究、39頁の研究分野2のがん の臨床的特性の分子基盤に関する研究、41頁の研究分野3の革新的ながん予防 法の開発に関する研究、42頁の研究分野4の革新的な診断技術の開発に関する 研究、43頁の研究分野5の革新的な治療法の開発に関する研究、45頁の研究分 野6のがん患者のQOLに関する研究、46頁の研究分野7のがんの実態把握とが ん情報の発信に関する研究、これらの各分野で一般公募型の公募を行うことと しています。  48頁、(2)がん臨床研究事業ですが、こちらは二つ分野があり、「主に政策分 野に関する研究」、「主に診断・治療分野に関する研究」の二つの分野において 公募を行い、主に政策分野に関する研究では若手育成型の公募も行うことを予 定しています。細かい説明などがその後ろにあります。  54頁から「6.生活習慣病・難治性疾患克服総合研究事業」となっています。 こちらの(1)が「循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業(仮称)」 で、循環器疾患、糖尿病等の生活習慣病の予防から診断、治療に至るまで生活 習慣病対策に関する研究を体系的に実施しており、健康づくり分野、健診・保 健指導分野、循環器疾患分野、糖尿病分野、その他の生活習慣病分野のそれぞ れで一般公募を行います。それぞれについて、55頁が健康づくり分野、健診・ 保健指導分野、56頁が循環器疾患分野と、各分野の説明が順に記載されており、 59頁にありますように、別途、若手育成型に関しての公募も行うことを予定し ています。  60頁の下の方から、「(2)腎疾患対策研究事業」となっています。こちらは慢 性腎臓病(CKD)に関して、61頁にある一般公募型の公募を行うことを予定してい ます。  62頁から「(3)免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業」となっています。 こちらは免疫アレルギー疾患分野と64頁の移植医療分野、これらの各分野で一 般公募型の公募を行って、若手育成型の公募も行うことを予定しています。  65頁から「(4)難治性疾患克服研究事業」です。一般公募型として、疾患の実 態解明等を行う臨床調査研究分野、対象疾患の患者の予後や生活の質の改善等 をめざす重点研究分野、それから67頁の横断的基盤研究分野、診断基準の作成 等の研究を行う研究奨励分野、これらの各分野で公募を行うことを予定してい ます。  71頁から「7.長寿・障害総合研究事業」となっています。「(1)長寿科学総合 研究事業」では、介護予防の効果検証等のための研究等について一般公募型と して公募を行うこととしており、73頁にあります若手育成型に関しても公募を 行うことを予定しています。  73頁から「(2)認知症対策総合研究事業」です。一般公募型として、地域高齢 者における認知機能スクリーニング方法及び認知機能に対する介入効果に関す る研究等について公募を行い、若手育成型に関する公募も行うことを予定して います。若手育成型については、75頁にあります。  75頁、「(3)障害者対策総合研究事業(仮称)」では、76頁の「(ア)身体・知 的等障害分野」、77頁の「(イ)感覚器障害分野」、79頁の「(ウ)精神障害/神 経・筋疾患分野」、こういった分野に分かれており、80頁から精神障害分野のさ らに詳しい記載がありますが、精神障害分野では診断・治療法の開発等に向け た実態解明に関する研究ということで2課題、治療法の確立のための臨床研究 等では、ここに記載のものを公募するということで、81頁では緊急案件への効 果的な対応のための研究といったものも示されています。その後に神経・筋疾 患分野について記載がありますが、こういった各分野で一般公募型の公募を行 うということで、こちらについても若手育成型について、今回、公募を行うこ とを予定しています。  82頁の下の方から、「8.感染症対策総合研究事業」となっています。「(1)新型 インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業」では、一般公募型として、83頁 からになりますが、(ア)新型インフルエンザの対応に関する研究分野での公募、 84頁(イ)感染症の新たな脅威への対応及び感染症対策の再構築に関する研究 分野、86頁の(ウ)国際的な感染症ネットワークを活用した対策に関する研究 分野、87頁(エ)感染症対策にかかる基盤整備に関する研究分野、これらの各 分野で公募を行って、若手育成型の公募も87頁の下にありますように行うこと を予定しています。  88頁から「(2)エイズ対策研究事業」です。こちらは一般公募型として、臨床 医学、基礎医学研究、社会医学研究、そういった各分野でのテーマを示して公 募し、若手育成型の公募も行うことを予定しています。  91頁から「(3)肝炎等克服緊急対策研究事業」です。一般公募型として、臨床 研究分野、92頁の下の方の(イ)基礎研究分野、93頁の上の方にある(ウ)行 政研究分野の各分野で研究テーマを示して公募を行うこととしており、若手育 成型の公募も予定しています。  94頁から「9.地域医療基盤開発推進研究事業」となっています。こちらは95 頁から、一般公募型の(1)生命・健康のセーフティネット確保に関する研究、(2) 地域密着型医療の促進に関する研究、(3)根拠に基づく医療に関する研究、96頁 に移り(4)医療現場の安全確保のための研究、98頁の(5)地域医療で活躍が期待 される人材の育成・確保に関する研究、これら各分野で公募を行い、これらに ついて若手育成型の公募も予定しています。  100頁から「10.労働安全衛生総合研究事業」となっています。今なお年間55 万人が労働災害に被災しており、職業性疾患も依然としてある状況ということ で、一般公募型として、101頁にある「(1)事業場におけるメンタルヘルス対策 を促進させるための研究」、「(2)事業場における職業性疾病予防対策を促進する ための研究」、102頁の一番下の「(3)石綿による健康障害の予防等に資する研究」、 103頁の真ん中辺の「(4)労働現場におけるリスクアセスメント等に関する研究」、 これら各分野において公募を行うことを予定しています。また、若手育成型の 公募も行うことを予定しています。  104頁からは、「11.食品医薬品等リスク分析研究事業」となっています。こち らの最初は、「(1)食品の安心安全確保推進研究事業」となっています。105頁か らその内容がありますが、バイオテクノロジー応用食品対策研究分野、健康食 品等の安全性評価研究分野、添加物、農薬及び動物用医薬品に関する研究分野、 食品中の微生物等対策分野、108頁の化学物質対策研究分野となっています。そ ういった各分野で公募を行って、109頁にあります若手育成型についても公募を 行うことを予定しています。  110頁から「(2)医薬品・医療機器等レギュラートリーサイエンス総合研究事 業」になっています。こちらは111頁から新規課題採択方針のところで分野が わかるようになっていますが、革新的医薬品・医療機器等の安全性・有効性・ 品質管理の評価手法等、承認審査の基盤整備に関する研究、ワクチン・血液製 剤等の安全性・品質向上に関する研究、医薬品・医療機器等の市販後安全総合 戦略に関する研究、違法ドラッグ等の乱用薬物対策等に関する研究、こういっ た分野で一般公募型の公募を行い、また、若手育成型の公募を行い、ここの若 手育成型では評価の一部をマスキング評価によって実施することとしており、 114頁にその旨の記載もあります。  115頁から「(3)化学物質リスク研究事業」となっています。こちらでは116 頁の新規課題採択方針で分野がわかるようになっておりますが、化学物質の有 害性評価の迅速化・高度化に関する研究、化学物質の子どもへの影響評価に関 する研究、ナノマテリアルのヒト健康影響の評価手法に関する研究、家庭用品 の安全対策に関する研究、これら各分野で公募を行って、こちらでも若手育成 型の公募を行うこととしています。  118頁から「12.健康安全・危機管理対策総合研究事業」です。こちらはいく つかの分野があります。118頁の下の方にある地域健康安全の基盤形成に関する 研究分野、水安全対策研究分野、生活環境安全対策研究分野、健康危機管理・ テロリズム対策研究分野、これらの各分野で公募を行い、地域健康安全の基盤 形成に関する研究分野では、若手育成型の公募も行うことを予定しています。  126頁に公募研究事業計画表があります。例年よりもホームページへの掲載等、 少し遅い状況ですが、4月から研究が開始できるよう、これまでも早期執行に努 めてきましたので、そういったことを踏まえてスケジュールを示しています。  127頁以降には、単価の基準額の一覧、研究計画書の様式・記入例、マスキン グ審査用の研究計画書の様式等があります。公募要項(案)の説明は以上です。 よろしくお願いします。 ○永井部会長  ありがとうございました。ただ今のご説明についてのご質問、ご意見等ござ いますか。 ○廣橋部会長代理  今回の具体的な公募をどうこうということではないのですが、しかも全体に 通じることで、特に難治性疾患克服研究事業を例に考えたことを申し上げたい と思います。今回予算が75%になっておりますけれども、昨年、非常に増えた ということで、これは増えている研究事業だと思うのです。そして増額された 研究を推進するために、調査を行う研究の疾患も今までの対象からまた別な疾 患概念のものを探索するというような大きな変化があり、大変多くの疾患を対 象とする研究事業になっていると思います。  それから先ほどもご説明がありましたように、臨床的な調査を行う研究班も ありますし、重点的にやるところもあり、横断的にやるところもあり、あと研 究奨励分野もあると。こういったものはよほど連携をして、効率よく推進しな いとうまくいかないというふうに思うのです。本当はこういう研究事業をどう いうふうに進めればいいかと、どういう研究をどういうふうにコーディネート して研究すべきかという研究をやることが必要ではないでしょうか。  そういうこともこれから是非考えていただいて、非常に大事なミッションを もつ研究費ですから、それが有効に使われるように、研究事業のあり方そのも のを研究というふうに考えてやっていくということがひとつ大事ではないかと。 ときにこういうふうに急に大きく推進するとなったところでは、そういうこと も必要だし、今回実際に拡大した研究のフォローアップも大事ではないかと感 じました。 ○永井部会長  事務局の方、いかがですか。 ○坂本研究企画官  担当課においても、昨年度、研究の計画を立てる際から、大きな規模で実施 するのであれば、きちんと回るようにというお話があった訳で、そういう検討 をした上で進めてきております。先生のご指摘に関しては、本日、資料をあと でご説明しますが、戦略研究等々でも同様なことがいろいろ議論になっており ますので、これからの課題として確かにおっしゃることはあるとは思っており ます。難病関係は大きな額になっているのですが、他の研究も含め、全体的に どういう時にどうすべきかというところは一つ大きい課題としてあり、検討課 題としてはご指摘のとおりと思いますので、今後考えていきたいと思います。 ○末松委員  間接経費のことについてお伺いします。本文の資料2の5頁のところと、公 募要項の研究計画書の様式の146頁辺りです。厚生労働科学研究費の30%がこ の間接経費になるということで、かなり前のこの部会でも議論をして、IRBとか COIの仕組みを各大学の努力で整備をして、研究機関としての研究環境の改善と かにも含まれると思うのですが、そこをしっかりやっていこうということで、 今回30%で本格的に動くと大変これはいいことだと思うのです。伺いたいとこ ろは146頁の7.の(8)、「間接経費の要否を記載すること」と書いてあります。 ここの基本的考え方を伺いたいのです。というのは、おそらくこの間接経費は 採択された課題の研究費の内側30%がつくと思いますので、多くの研究者個人 は間接経費をつけないようにやっていくのではないかと。本来の目的はヒトの 疾患を対象としたいろいろな研究で、IRBなどのデュープロセスの仕組みを整備 するようなことは当然求められると思うのですが、そこの経費は、間接経費も きちんと充当されて、各研究機関で基盤整備ができているかどうかというとこ ろがちゃんとチェックされて然るべき経費だと思うのです。その辺の考え方に ついてコメントをいただきたいのですが、いかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  考え方については、5頁の文章そのままで、30%を限度に希望することができ るということですから、まずは要る・要らないを研究者側から申し出ていただ いて、そのときに直接研究費の30%を超える希望は無理ですということになっ ています。ですから、おっしゃるように、こちらは30%までは出しますという ことなのですが、受入側の方として仮に20%でいいという申し出があれば、そ れがご希望だということで採択のときにそれを勘案して、実際に研究費も審査 の過程でご希望どおりいかないということもあるわけですし、そもそも採択・ 不採択の話もあるわけなのですが、そういったところもありますから、まず希 望をはっきり出していただくという様式になっているということです。おっし ゃるようにできるだけ取ってやっていただくことができるような体制は作るわ けですけれども、研究者側から申し出していただくという、そういうシステム になっているということです。 ○末松委員  もう1点お伺いしたいのは同じ間接経費ですけれども、その間接経費が計上 された場合、これは研究機関の必要となる管理等にかかわる経費ということで、 当然使うわけですが、文部科学省の科学研究費の場合は、大学の研究管理、研 究支援センターですとか、いろいろな仕組みの経費としてこういったものが比 較的ブロードに使えるのが特徴だと思います。厚生労働科学研究費は第1頁の 最初のところにありますが、「国民の保健医療、福祉云々の推進を確保し、技術 水準の向上を図ること」という大目的があるわけですけれど、研究機関に入っ てきた間接経費が例えば、各論で恐縮ですが、総合大学の場合、このお金がブ ロードに使われる可能性があります。つまり大学全体の仕組みの基盤整備に使 われてしまうと本来の厚生労働科学研究費の目的から少しずれるような扱われ 方をする可能性も当然あると思うのです。  この間接経費が目的及び性格に合致する範囲で必要となる管理経費であるべ きであって、その旨がこの公募要項、あるいは作成上の留意事項というところ に記載されていることが必要ではないかと思います。単科の医科大学等ではそ ういう問題は生じないと思うのですが、医学部の場合その部局の努力で取って きた研究費の間接経費が多目的に使われない、この研究基盤に合致する形でち ゃんと使われているということが少なくとも厚生労働科学研究費では担保され るべきではないかというのが意見ですが、いかがでしょうか。 ○桐野委員  大学全体として間接経費からオーバーヘッドを取る立場にいたこともありま すので、そういう立場から言いますと、間接経費というのは機関の長に対して 配分される資金ですので、研究者が自由に間接経費の割合を伸び縮みさせられ るというのは誠にもってへんてこな制度であるということが言えます。大学側 としては、大学に配当されるいろいろな資金が制限されて競争的に獲得するこ とが段々と割合が大きくなってきている以上、それに関わる環境整備について は、このような資金に期待せざるを得ないし、それから委託・受託の関係にあ る研究費や、様々な研究費に対してオーバーヘッドをかけるわけですね。  こういうのがいいかどうかは別にして、欧米の大学では各大学によってオー バーヘッドの割合が違い、研究経費の200%を要求する大学もあります。そうい う関係にあるために、私としては間接経費の使途をあまり細かく限定すると、 結局何がおこるかというと、本部において間接経費を適正に、かつ効率的に使 用するため、会計テクニックを発達させるしかないのです。要するに厚生労働 科学研究費はこのように使われなければならないとなると、いろいろな会計テ クニックを駆使してそのルールに合うようにする。そうすると何が必要になる かというと、その会計担当者を少し増やさないといけないというようなことに なります。  したがって、間接経費の使途を制限するということは、本部事務から言えば 間接経費の会計テクニックを発達させるということになりますので、趣旨はよ くわかりますけれども、そういうことは間接経費の本来の趣旨に合っているか どうかはちょっと疑問があります。  間接経費というのは130分の30が自動的に配分されるというのが本来の姿で あり、研究者がそれぞれの中から適切に判断して配分するというのは何か変な 感じがします。厚生労働科学研究というのは費目の制限というか、いろいろな レギュレーションが非常にきついので、その外に間接経費を出して、そこで何 か、手当をするというインセンティブが働きます。ところが一方でこれはあま り増やしますと本部がもっていきますので、これをなるべく少なくするという インセンティブが働く。その間のつり合ったところで額を適当に決めるのだと 思うのですが、あまりいい感じがしないですね。  私は、方向としてはいろいろな制限を取っ払う方向に研究費については行く 方がよいと思います。研究費の本来の趣旨は国民に負託された研究の成果を上 げることが目標で、どのような配分をすれば最も成果が上がるかを研究するべ きであって、例えばかなりワイルドな研究費の配り方をした場合に、とんでも ない研究が出るかもしれないし、1円でも許さないというゴリゴリの配分をした 場合にどういう成果になるかはまたそれは検討を要するところだと思うのです。 そこはどちらかというと、自由度の拡大の方が研究の成果を上げるのではない かと、個人的には思っていることと、本部の方から見れば使途の制限はテクニ カルな問題に帰してしまうので、そういうことをするのはどうかなという感じ がしました。 ○佐藤委員  私はどちらかというと末松先生のご意見に賛成です。同じ間接経費といって も文科省系、あるいは学振系の間接経費と、こういう厚労科研のような間接経 費は分けて考えてもいいのではないかと思うのです。文科系の間接経費は確か に大学の基盤整備のために使うべきで、たいてい一律30%ぐらいになっている かと思うのですが、そういう使い方で私はいいだろうと思いますが、厚労科研 費のような場合には、もうちょっと狭い目的で末松先生のおっしゃったような 話で使うべき筋のもので、それは研究者と大学の管理運営する側との話し合い というか、力関係というか、この辺難しいですけれども、そういう中で30%以 内、あるいは13分の3でもいいのですが、どの程度が適当かということを決め るべきだろうと。研究の種類によっては管理運営に面倒を見てもらっていると ころが大部違うような気がするのです。その辺の仕分けをしてもいいのではな かろうかと思っております。以上です。 ○末松委員  私は桐野委員が最初におっしゃった、研究者がパーセンテージを決めて、任 意でやる仕組みはよくないと考えます。これはしっかりと間接経費のパーセン テージを固めて、それが基盤整備で使われるような仕組みに自動的になるべき だと思います。  それから大学本部と実際にその研究機関の実態になる学部の関係に関しては、 佐藤委員がおっしゃったように、厚生労働科学研究費の性格に合った基盤整備 にきちんと使われているかどうかというところは、やはり常識ではないかと思 うので、そこは今後の間接経費のあり方について、こういう研究者に任せてと いうのはちょっといかがなものかなと思うので、そこのコメントをいただきた いと思います。 ○坂本研究企画官  今いただいた点で、まず1点目の研究者に任せてということですが、昨年度 からe-Radを導入しておりますので、我々の認識といたしますと、機関承認を 受けてから出てきますので、研究者の方が間接経費いくらと書いたのは機関側 も了解して出されているという理解でしたし、今回e-Rad一本化ですので、そ こは研究者と機関の側で何%で出しますというお話し合いをしていただくべき なのかな、というのが今の議論を聞いていたコメントになるのですが。  もう1点は、我々はこれまで、先ほども費目の制限がきついというご指摘が ございましたが、厚生労働科学研究費補助金について、他の研究費と規定を合 わせられるところはできるだけ合わせようということで、しばらく前にご報告 いたしましたが、報告書の提出時期なども文科省の方と合わすとか、そういう ことでルールはできるだけ共通化できるところは共通化しようとしてきている ということがあります。  間接経費については、合算使用を認めるということでやってきておりますの で、今いろいろご議論があったところについて、すぐに厚労科研費だけまた別 の道を行くということの問題点とかを、よく検討しないまま何かをお答えする のは難しいのではないかと思います。特に一番は合算使用を認めていますので、 そこである研究費だけ合算使用は駄目となりますと、かえってかなり現実的に は中途半端なお金になってしまうとか、いろいろな問題がおこるのではないか という懸念がありますので、そういう意味でも難しい点があるのではないかと いう、いわゆる規定の共通化の問題とかも踏まえて検討する必要があるのでは ないかと考えます。 ○宮田委員  今お話を伺っていて、どちらかというと私は桐野先生の意見なのですが、基 本的にはメカニカルに分けてクリアにしてほしいというのが私が思っているこ とです。できれば文科省とかいろいろな筋の研究費とルールは同じにしていた だかないと、この小さな細かい、しかしかなりクリティカルな違いで研究費を 一つの研究者がいろいろ使い分けなければいけないという不便さというのは、 ちょっと考えなければいけないだろうと考えます。  それからもう一つ間接研究費というと、私はかなりラジカルなのでそれぞれ の研究機関及び病院でもそうですが、国家が全て認めてもらうような資金で研 究をやるだけが本位ではないでしょう。むしろ自主財源、もしくは間接経費に よる自由な財源というところが、喫緊の課題とか、あるいは今までの国の研究 費の仕組みではなかなか1年ごとの先の話でなければいけないのに、緊急のテ ーマが起こったときの対応とか、あるいはどうしてもやりたい臨床研究に対す る費用とか、そういったものの費用になるのではないかと思っており、国のル ールとしては極めてメカニカルに、例えば一律30%、間接経費として諸機関に 分配すると。それの使用用途に関してはそれぞれの機関が自主的に厚生労働科 研費の本来の意図に応じて使ってほしいという程度でいいのではないかという のが私の考えです。  ですから、そういう意味では一つは各機関がくだらない事務が増えそうだ、 研究者がくだらない交渉が増えそうだというのがありますし、そういうような 些細なことでやるよりも大掴みでポンと渡して、それぞれの研究機関の自由な 財源にすべきだろうと思っています。 ○永井部会長  他にいかがですか。 ○今井委員  前回の案を全くゼロにして、こうやってまた新しく作られて、時間がなかっ たのにもかかわらず、かなり微に入り細に入り、前回の内容も入れてお作りに なられたことに敬意をまず表します。そして大変見やすいと思うのです。  ただ、質問が二つあります。その一つは、79〜80頁の(ウ)の精神障害/神 経・筋疾患分野の部分ですが、これはもともと心の病としてまとまっていた分 野だったのではないかと思いますけれど、精神疾患のニューロサイエンスを含 む生物学的病態解明などが入っておりますので、脳のメカニズム、または脳に 関わる疾患などもそこには入れていると思います。個別にですと、児童・成年 精神科領域の診断云々、もしくは認知行動・認知障害に対するもの、抗精神薬 剤などと分かれているのですが、範囲がよく分かりません。前の中に入ってい たものですと、発達障害者、あとは国民の30%近くが必要としているというい わゆるうつ病的な疾患のメンタルヘルスケアもの、特に中堅の働く人材として 役に立つ人たちの中に多いものなどがありますが、そういう人たちに関する研 究について、ここではちょっと読みきれないかなと思いますので、範囲がどの 辺までになっているのかというのが一つです。  もう1点は115頁の「化学物質リスク研究事業」に関してです。これはこの 前のものを作る前にも申し上げたと思うのですが、実際に化学物質のリスク研 究はずっとやってきていて、かなり進んでいるような気はするのです。主に難 解性の化学物質に関してという形で、いろいろなところでそれに関する研究が 始まってはいるのです。  国際的に日本は、OECDの加盟国として化学物質の審査規制基準を作っていま すが、OECDの中で日本が言っているのは、難解性の性状も有し、かつ、人の健 康を損なうおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するというところだ けで、実際にメタミドホスだの、メラミンだのと中国から入ってしまうものを 押し返す力を持っていない部分、ヨーロッパがEUでやっているようなことをそ ろそろ始める。EUは67年からやっていて、新たに去年、新EUのREACHを作っ ています。要は、防疫的に自分の国がOKしなければ入れませんというもののリ ストアップもきちんとしてあるのです。そのような点をそろそろ、研究だけで も始めた方がいいのではないかと思うのですが。 ○障害保健福祉部精神・障害保健課  1点目のお尋ねは「精神障害」の範囲についてです。ここでの精神障害は、精 神保健福祉法に書いております「精神障害」の定義と同一と私どもは考えてお りまして、おっしゃるように、発達障害も含めて捉えております。また、うつ 病についても、当然精神障害の中に含めております。したがいまして、精神障 害については、昨年度までございました「こころの健康科学」という研究事業 の捉えていた範囲と変更はございません。神経・筋疾患の分野につきましては、 難病との切り分けがございまして「難治性疾患克服研究事業の対象疾患を除く」 と、ここで明記をさせていただいております。 ○医薬食品局化学物質安全対策室  化学物質リスク研究事業についてご指摘いただいた件ですが、こちらで公募 している研究については、「事業概要」にも書いておりますとおり、基本的にOECD、 それから国際化学物質管理会議のアプローチ(SAICM)等に基づいて、化学物質の 有害性評価をどんどん迅速あるいは高度に実施していこうという研究を行って おります。  先ほどご指摘のメタミドホスでありますとか、メラミンでありますとか、そ ういうものへの対応ができないのではないかというご指摘だったかと思います が、こちらの方は、EUで今走っておりますREACHなどの規制に類するような、 例えば既存化学物質に対するきちんとした有害性の評価、それからリスク評価 という取組みを、化審法という法律で模索をしております。そして、先般化審 法の改正によって、既存の化学物質についてのリスク評価を進めようという体 制をこれからとろうとしているところです。そういう中で必要となるような評 価手法について、こちらのリスク研究の中で引き続き開発をしていくという姿 勢で臨んでおります。 ○今井委員  ありがとうございました。今回政権が変わって、かなりアクティブで、国際 的にも頑張ろうとしているらしいから、日本人が安全に暮らせるように、スト ップするようなところの法律が出来るぐらいの資料を出してあげられるように なってほしいと思います。 ○永井部会長  時間が押してきましたので、もしよろしければ、今回の「平成22年度厚生労 働科学研究費補助金公募研究事業」につきましては、資料の形で進めさせてい ただいてよろしいでしょうか。もし問題点、あるいはお気付きの点がおありで したらそれを申し出ていただいて、事務局で修正を行って、その後は私の方で 確認させていただいて先へ進めるということでご了承いただけますか。 (了承) ○永井部会長  では議事の3「遺伝子治療臨床研究について」です。まず、京都府立医科大学 附属病院の遺伝子治療臨床研究実施計画につきまして、事務局より説明をお願 いいたします。 ○坂本研究企画官  資料3-1の1頁以降が京都府立医科大学附属病院から申請のありました遺伝 子治療臨床研究実施計画に関して、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会でご審 議いただいた結果の報告書です。2頁の1.は、遺伝子治療臨床研究実施計画の 概要です。研究課題名は「ヒトβ型インターフェロン発現プラスミド包埋正電 荷リポソーム製剤を用いる進行期腎細胞癌の遺伝子治療臨床研究」となってお ります。この研究は、原発腫瘍病巣の摘除術後、転移巣に対して行った免疫療 法及び分子標的治療が無効等の予後不良進行期腎細胞癌の患者さんを対象にし ております。ヒトβ型インターフェロン発現プラスミドを入れました正電荷リ ポソーム製剤を転移腫瘍病巣内に投与する治療法の安全性の評価を主要エンド ポイントとしておりまして、この治療法の有効性の評価が副次的なエンドポイ ントとなっております。  この研究で用いるリポソーム製剤につきましては、名古屋大学や信州大学に おいて、別の悪性腫瘍を対象とした臨床研究で既に使用された経験があるもの であります。それらの臨床研究では、今回の臨床研究よりも少ない投与量では ありますが、特に問題となる副作用は認められていないということです。また、 米国におきましては、非ウイルスベクターを用いる点が類似する他の臨床研究 の報告もあるといった状況です。  3頁の2.は、がん遺伝子治療臨床研究作業委員会による審議概要です。第1 回目は昨年10月に開催されまして、研究期間とか、同意説明文書、有害事象発 現時の対応等について意見が出されまして、申請者に検討を求めております。  4頁、第2回目の作業委員会が開催され、この実施計画は概ね了承されました が、同意説明文書の記載等について委員から指摘があり、そういった点につき ましては申請者と事務局との間で整備の上、委員長の確認を得て、この科学技 術部会に報告することとされたものです。その後、所要の整備がなされ、委員 会の確認を得て今回この部会にお諮りしております。  5頁に、作業委員会における審議を踏まえた主な変更の内容がございます。実 施計画につきましては、症例の登録期間が3年だったものが2年に、経過観察 期間が1年に変更ということです。また、分子標的治療薬による腎細胞癌治療 等について最近の情報に基づく記載に修正されまして、本遺伝子治療の対象は、 分子標的治療薬無効等の場合である旨明確化されております。Grade3以上の有 害事象が発現した場合の規定が修正され、また、中枢神経系への転移が確認さ れた場合には、速やかに脳神経外科及び放射線科などと協議して、放射線治療 もしくは手術等の中枢神経系転移に対する治療を検討する旨の規定の追加等が なされております。同意説明文書につきましても、複数回の穿刺が安全にでき る部位であれば深部臓器への転移病巣も治療対象とするといったこと、それか ら、プラスミド投与による遺伝子治療で、肺転移への投与で気胸が、肝臓への 投与で一過性の低血圧が報告されている旨記載されております。また安全性の 観点で、気胸の可能性があるということで週2回、合計6回投与の計画が、週1 回、合計6回投与という修正もなされております。  6頁の上の方にありますように、2年間の追跡調査を行うということが同意説 明文書にも記載されて、丁寧な説明を行うということになっております。  9頁以降に、作業委員会での審議を踏まえて改訂された実施計画書の概要等が ございます。後ろの方には実施計画書、及びその添付資料として128頁以降に は同意説明文書もございます。本件の説明は以上です。 ○永井部会長  ただ今のご説明にご質問、ご意見はございますか。  これは既に悪性グリオブラストーマとか、黒色腫に使われていますが、全く 同じものなのでしょうか。 ○坂本研究企画官  そういった研究を行ったところとの共同研究もあるということで、製剤とし ては同じものを使うということです。 ○永井部会長  既に使われているものであれば、それほど問題はないように思います。もし よろしければ、この件につきましては、作業委員会からの報告について科学技 術部会として了承し、厚生科学審議会へ報告するということにしたいと思いま す。 (了承) ○永井部会長  ありがとうございます。続いて、岡山大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計 画の申請について、こちらは前立腺癌ですが、この研究及び遺伝子治療臨床研 究に係る生物多様性影響評価に関する申請について、ご意見をいただきたいと 思います。10月23日に厚生労働大臣から諮問をされ、同日付で当部会に付議さ れております。では事務局から説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料3-2、岡山大学病院からの申請につきまして、その内容をご説明いたしま す。  遺伝子治療臨床研究を行いたいという施設から意見を求められた場合には、 遺伝子治療臨床研究に関する指針に基づきまして、複数の有識者の意見を踏ま えて新規性を判断した上で厚生科学審議会への諮問をさせていただいておりま す。本件はREICと呼ばれる新しい遺伝子を用いた遺伝子治療臨床研究です。1 頁が諮問書、2頁に付議書がございまして、3頁以降が申請書です。  遺伝子治療臨床研究の課題名は、「前立腺癌に対するReduced Expression in Immortalized Cells/Dickkopf-3(REIC/Dkk-3)遺伝子発現アデノウイルスベクタ ーを用いた遺伝子治療臨床研究」となっております。対象疾患は、前立腺癌で す。  大きい8頁の上の方、二つ目の段落からこの遺伝子についての記載がありま すが、このREICという遺伝子は岡山大学で発見された癌抑制遺伝子で、細胞の アポトーシスを司ると考えられています。この遺伝子は種々の癌細胞で発現が 低下しており、これらの癌細胞にこの遺伝子を過剰発現させると、癌細胞選択 的にアポトーシスが誘導されたということで、それを治療に応用できないかと いう研究です。  6頁に「研究の目的」がございます。安全性の検討(最大耐量の推定)がこの 研究の主要エンドポイントです。治療効果の観察を行って治療効果判定を総合 的に解析すること、さらに、この遺伝子治療における有効性を来す可能性のあ る免疫学的な反応を解析し、同治療効果の病理学的な評価を行うことが副次エ ンドポイントになっております。  投与方法は、この遺伝子発現ベクターを腫瘍内に直接投与するということで、 内分泌治療抵抗性の前立腺癌、それから術後再発の可能性が高いと考えられる ハイリスクの初発限局性前立腺癌患者を対象として、先ほど言いましたアポト ーシスを司る遺伝子と考えられている遺伝子を腫瘍細胞に導入して抗腫瘍効果 を期待するという研究になっております。  「対象患者及びその選定理由」のところですが、A)の内分泌療法抵抗性再燃 前立腺癌は(1)、(2)-1、(2)-2と分かれておりまして、内分泌療法抵抗性局所再燃 前立腺癌の非転移症例と有転移症例の前立腺癌の全摘出手術未施行例と施行例、 B)として、ハイリスクの初発の限局性前立腺癌(未治療例)、これらのものを対 象とするという幅広めの臨床研究になっております。いずれの病態も、現時点 で標準的な治療法は存在しないということです。  10頁に「これまでの研究成果」が書かれておりますが、前立腺癌にアデノウ イルスベクターを投与するという遺伝子治療臨床研究はこれまでも異なる遺伝 子で実施されているものであり、そういったものの比較表等が記載されており ます。  18頁の9.実施期間及び目標症例数については、最終症例の治療終了後5年間 が実施期間。予定症例としてはA.B.各群それぞれで12例。副作用等が出た場合 は、最大でそれぞれ18例という計画です。  がん遺伝子治療臨床研究作業委員会の名簿はこの資料の114頁にございます が、今後こちらの作業委員会で本件の内容についてご審議いただいて論点を整 理していただき、再度その結果を本部会に上げて議論をお願いするという段取 りになります。また、本日ご審議いただいた意見については、もうしばらくし たらこちらの作業委員会を開催する予定ですので、そちらの方にお伝えいたし ますので、よろしくお願いいたします。  続いてこの資料の115頁から、この遺伝子治療臨床研究に係る生物多様性影 響評価の関係資料となっており、それについてご説明をさせていただきます。 ウイルスベクター等の遺伝子組換え生物を使用する臨床研究につきましては、 いわゆるカルタヘナ法と呼ばれている法律がございまして、第一種使用規程の 承認を受ける必要がございます。カルタヘナ法では、開放系で遺伝子組換え生 物を使用する場合を第一種使用等としております。そういった場合には生物多 様性影響を評価し、第一種使用規程として、保管、運搬、廃棄、実際の使用方 法等について事前に主務大臣、この場合は、厚生労働大臣と環境大臣の承認を 得ることになっております。  また第一種使用規程の承認に当たっては、主務大臣は学識経験者の意見を聞 かなければならないとされておりまして、その場としてこの部会及びこの部会 の下に生物多様性影響評価に関する作業委員会が設置されております。その委 員会の名簿はこの資料の最後、133頁にございます。この前のところに第一種使 用規程等々の記載がございますので、この内容につきましてこの委員会でご審 議いただき、論点を整理した上で、再度こちらの部会に上げて議論をお願いす ることになります。この資料の説明は以上です。 ○永井部会長  2点あったかと思います。臨床研究の作業委員会に付議する件と、生物多様性 影響評価に関する作業委員会への付議ですが、どちらも委員長は別々なのです ね。がん遺伝子治療は島田先生、カルタヘナ法の評価は小澤先生が委員長です か。 ○坂本研究企画官  はい。 ○永井部会長  何かご意見がございますか。もしご意見がなければ、がん遺伝子治療の実施 計画につきましてはこちらでの審議を踏まえたということで、既に設置されて いるがん遺伝子治療臨床研究作業委員会で科学的な事項の論点整理を行ってい ただく。また、構成については資料3-2の114頁に示されている委員会(島田 隆委員長)でご検討をいただくことになります。遺伝子治療臨床研究に係る生 物多様性影響評価につきましては、資料3-2の133頁に作業委員会がございま すが、こちらで生物多様性影響の視点からの評価を行っていただくということ でよろしいでしょうか。もし問題がございませんでしたら、そちらで検討して いただいて改めてこちらに報告をいただき、さらにその上で総合的な評価、審 議ということになろうかと思います。ご異議がなければ、そういうことで進め させていただきます。 (了承) ○永井部会長  では議事の3、遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について、説 明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料3-3について説明いたします。内容は2点ございます。1点目は1〜8頁、 三重大学医学部附属病院で遺伝子治療臨床研究を現在行っているのですが、そ の計画変更の報告です。これは治療抵抗性の食道癌を対象とした遺伝子治療臨 床研究です。4頁に変更理由の欄がございますが、その内容としては、遺伝子導 入リンパ球投与直後の血中動態を評価するために採血ポイントを追加、外部監 査担当者が診療記録を閲覧することがある旨を同意説明文書に追記する等の変 更報告です。5頁以降に新旧対照表がございます。  3頁の真ん中辺にある「審査委員会の開催状況及び実施計画の変更を適当と認 める理由」で、「今回の変更は軽微な変更であり科学的・倫理的に問題はないと 判断し」といった記載もあり、内容的には軽微な修正と考えられますが、遺伝 子治療臨床研究作業委員会の先生方にも変更内容については既にご確認いただ いております。  もう1点が9頁からの、自治医科大学附属病院で行われていた、パーキンソ ン病を対象とした遺伝子治療臨床研究が終了したという報告です。12頁の「研 究の目的」にありますように、進行したパーキンソン病患者の線条体に芳香族L アミノ酸脱炭酸酵素遺伝子を組み込んだアデノ随伴ウイルスベクターを定位脳 手術的に注入して、その安全性を検証するとともに、経口投与するL-DOPAでド パミン産生を促して、パーキンソン病の症状を改善することを目的とした臨床 研究でした。  「研究結果の概要及び考察」では、6名の方に遺伝子治療を実施し、安全性の 評価については、2例目の方の手術後に、注入経路に沿って右前頭葉の皮質下白 質に静脈性出血が認められ、意欲低下等の症状もあったということです。こち らは別途報告もいただいておりますが、これらの症状は術後6カ月までに消失 しております。この静脈性出血は、カニューレの挿入に伴う外科的操作による 有害事象と考えられたため、外科手技の改良と術後早期の画像診断を追加して 安全性の向上を図っており、3例目以降に出血は生じていないということです。  軽度の有害事象としては、全例で頭痛があったが、いずれも数日で軽快消失 していたということです。  有効性について、術後6カ月でパーキンソン病の運動症状の指標で改善のあ ったものがあり、また、導入した遺伝子の発現が持続していると考えられるデ ータも得られたということです。  13頁の真ん中辺からが「考察」です。認められた軽度の頭痛も手術操作に起 因すると考えられるということですし、PCR検査で、術後3日目には患者の体液 中へのベクターの拡散も認められず、術後にベクターに対する中和抗体が上昇 したが、治療効果が失われることはなかったという考察もございます。  この研究は少数例のオープン試験でありましたが、ベクターによる有害事象 は認められず、これまでのモデル動物を使用した前臨床試験から期待される効 果が得られたということで、今後、次の段階の臨床試験を行い、さらに検討す ることが望まれるといった申請者の考えも考察として記載されています。 ○永井部会長  以上が報告事項ですが、よろしいでしょうか。問題がなければ先に進ませて いただきます。次は審議事項で、議事の4「ヒト幹細胞臨床研究について」、ご 審議をお願いいたします。これは名古屋大学医学部附属病院をはじめとして8 機関から申請があったもので、平成21年9月10日に厚生労働大臣から諮問さ れ、9月15日付けで当部会に付議されております。  なお、この中に国立循環器病センターからの申請がございます。橋本先生は 今日ご欠席ですが、審議においては発言を控えていただくことになっておりま す。では事務局から、今回の申請につきまして概要の説明をお願いいたします。 ○医政局研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究について、資料4を用いて説明いたします。ヒト幹細胞 を用いる臨床研究に関する指針に基づいて、新たに諮問・付議が行われた申請8 件について報告いたします。  新たに新規性が認められて諮問・付議されましたのは、名古屋大学医学部附 属病院、東京医科歯科大学医学部、社団法人有隣厚生会東部病院、医療法人天 神会新古賀病院、徳島赤十字病院、島根大学医学部附属病院、奈良県立医科大 学、国立循環器病センターからの実施計画です。  1頁と2頁が本申請に関する諮問書、3頁が付議書です。平成21年9月10日 付で諮問され、9月15日付で付議されております。  まずは名古屋大学医学部附属病院について説明させていただきます。4頁の申 請書に続いて、5頁に本実施計画の概要がございます。研究課題名は、非培養自 己ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた腹圧性尿失禁治療の有用性に 関する研究。対象疾患は、腹圧性尿失禁です。皮下脂肪組織由来の間葉系前駆 細胞を、腹部又は臀部の皮下脂肪から脂肪吸引法により採取し、分離装置によ り回収いたします。障害された尿道の括約筋及び尿道粘膜下に経尿道的内視鏡 下で注入して括約筋機能を回復させ、最終的には尿失禁に対する治療効果を検 討するという臨床研究です。  次は東京医科歯科大学医学部と社団法人有隣厚生会東部病院、医療法人天神 会新古賀病院、徳島赤十字病院からの申請ですが、この4件はすべて同じプロ トコールによる多施設共同研究としての参加機関です。その実施計画の概要に つきましては、東京医科歯科大学医学部の申請書類を用いてご報告申し上げま す。  16頁をご覧ください。研究課題名は、末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員 自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験です。  17頁が研究実施計画の概要です。この研究の対象は、既存の治療に抵抗性の 末梢動脈疾患(慢性閉塞性動脈硬化症・バージャー病)となっています。G-CSF を皮下注射し、4日目に自己末梢血を採取し、アフェレシスにより単核球を採取 する。その後末梢動脈疾患患肢に筋肉内注射して、末梢血管の再生効果を見る という研究です。  本研究は、用いる幹細胞や対象疾患としての新規性はございませんが、最終 的に計21施設が参加する多施設臨床研究として実施され、推奨療法群とG-CSF 動員自家末梢血単核球細胞移植併用治療群のいずれかを無作為に割りつけると いう臨床研究です。札幌北楡病院外科の堀江先生を主任研究者として行う多施 設の共同研究で、プロトコールは共通のものを用いております。今回の申請に ついては、研究実施施設の基準と所属機関の審査委員会についての審査を主に 行っていく予定です。  29頁に東部病院、42頁に新古賀病院、55頁に徳島赤十字病院の申請書がそれ ぞれございます。概要と計画書は同じ内容の申請となっております。  続いて島根大学医学部附属病院です。68頁の申請書に続いて、69頁に本実施 計画の概要がございます。研究課題名は、重症低ホスファターゼ症に対する可 及的早期に行う同種間葉系幹細胞移植。対象疾患は、重症の低ホスファターゼ 症です。アルカリホスファターゼ欠損により骨を作ることが障害される低ホス ファターゼ症のうち、致死的な経過をとる乳幼児患者に対しまして、同種の骨 髄間葉系幹細胞を移植するというものです。ドナーは患者の家族(2親等以内の 方)の中でこの病気ではない人から選定し、同種の間葉系幹細胞を移植する治 療を行います。  続いて、奈良県立医科大学からの申請です。77頁に申請書があり、78頁に本 実施計画の概要がございます。研究課題名は、顎骨良性腫瘍、顎骨腫瘍類似疾 患を対象とした自己骨髄培養細胞由来再生培養骨の有用性を検証する研究。対 象疾患は、顎骨良性腫瘍と腫瘍類似疾患です。自家骨移植が必要な比較的規模 の大きな顎骨疾患の手術の際に、患者自身の骨髄細胞から分離培養して得られ た骨芽細胞とセラミックを複合化して移植するという研究です。培養骨髄移植 法が自家骨移植法の代替法となり得るかということを検討するという研究にな っています。  最後が国立循環器病センターからの申請です。89頁に申請書があり、90頁に 概要がございます。研究課題名は、重症慢性虚血性心不全に対するヒト心臓幹 細胞と幹細胞増殖因子bFGFのハイブリッド自家移植療法の検討です。すでに指 針の適合性が了承されている京都府立医科大学医学部附属病院との共同研究で す。カテーテルにより、心臓内壁より心筋組織を採取し、心臓幹細胞を分離培 養いたします。5〜6週間後に、冠動脈バイパス手術の際に、障害された心筋組 織に心臓幹細胞を直接注入するとともに、線維芽細胞増殖因子を含むブタ皮膚 由来ゼラチンシートで注入箇所を被覆するという研究です。安全性と有効性を 評価することが目的となっております。  これらの申請は、部会長より了承をいただきまして、他の課題と合わせて10 月7日に既に開催された第9回の審査委員会にて先行審議がされております。 指摘事項につきましては申請者に既にお返ししており、回答の状況を見ながら、 今後開かれる審査委員会で継続審議を行っていく予定です。以上、ヒト幹細胞 臨床研究実施計画につきまして、今回新たに諮問・付議が行われた申請8件に ついてご報告いたしました。 ○永井部会長  これは私が委員会をやっておりますので、状況は大体把握しております。こ れらの課題は、まずプロトコールとか研究のロジックが適正かということを見 ていく必要があります。この中で問題になりますのは、島根大学、あるいは奈 良県立医科大学の場合には産総研のCPCを使うわけです。そうすると、研究者 が行って細胞の培養をするというのが今の原則でありますので、それが適正に 行われるかどうかということが問題になるわけです。それから、国立循環器病 センターは京都府立医科大学と同じプロトコールで行うわけですので、京都府 立大学側の今までの進め方と齟齬がないかどうか、そういうところがチェック 事項になります。  あとの東京医科歯科大学から徳島赤十字病院までは既に何度もご審議いただ いている札幌北楡病院を中心とする大きな研究の一環ですので、これについて、 全体的にはあまり問題はないだろうと考えております。また細かいところが審 議されましたら、ご報告したいと思いますので、今回はこれでご了承いただき たいと思います。また、この件は、再度総合的な判断ということでこちらの部 会で審議させていただきます。  では議事の5「今後の戦略研究について」、事務局より説明をお願いいたしま す。 ○三浦厚生科学課長  資料5に基づいて説明いたします。「今後の戦略研究について」というタイト ルが付いているものですが、戦略研究は今後3年間ですべての研究が終了する 予定ですので、新しい研究課題の選定をめぐってこれから準備をしてまいりた いと考えております。そのためのスケジュールについて説明を申し上げます。  「平成21年度」というところにございますように、どういう課題があるのか、 どういうテーマが提案できるのかということについて省内各課から出していた だきました。それぞれのテーマについては、「班会議」すなわち、戦略研究調査 専門委員会において実施可能性を検討しています。次回のこの部会において、 領域・課題・テーマについて案をお示しし、決定をいただければ、それに基づ いてフィージビリティスタディに入っていくことになります。フィージビリテ ィスタディを行う方々についての公募の説明会を平成22年1月以降に設定し、 フィージビリティスタディを実際に行っていただく。その結果得られた研究計 画書に基づいて研究者を選定し、最終的には平成23年度以降の段階で研究を始 めたいというものです。このように、1回フィージビリティスタディを含めるこ とによりまして成果を上げていきたいということです。 ○永井部会長  いかがでしょうか。何かご質問はございますか。 ○宮田委員  フィージビリティスタディという考えは非常に有効だと思いますので、是非 これをきちんとやってください。なぜかというと、あまりフィージブルではな いプログラムも走った経験がございますので、是非フィージビリティスタディ をしっかりやってほしいのです。  それで、どれぐらいのことを考えていますか。例えば、フィージビリティス タディで本研究の2倍程度やらせるのか、それとも一対一のフィージビリティ スタディを考えているのかを伺いたいと思います。 ○三浦厚生科学課長  今後の領域や課題によって違ってくる可能性もあるのではないかと思います ので、その課題などに応じて、専門家の意見もいただいて決めていきたいと思 います。 ○宮田委員  できれば、少し多めにフィージビリティを選んでいただいて、そのフィージ ビリティスタディの中から本研究の方が選ばれる。助走期間も設定して他のフ ィージビリティスタディの知恵も活かされる意味から良いのではないかと考え ておりますので、一対一のようなことだけは避けていただきたいと思います。 ○廣橋部会長代理  関連した質問ですけれども、フィージビリティスタディをしっかりと行うた めには、予算でそれへの研究費がついて、しかも十分な期間があって、その上 で本当の申請書が書かれるということが必要だと思うのですが、そのように考 えておられますか。 ○三浦厚生科学課長  それも今後の課題だろうと思っております。ご意見を踏まえて対応していき たいと思います。 ○永井部会長  よろしくお願いいたします。続いて議事の6「その他」の報告事項ですが、国 立がんセンター研究所の研究開発機関の評価結果等について、事務局より説明 をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  まず参考資料4「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」をご覧くださ い。研究開発機関の評価については、15頁にございます。研究開発機関は、各 研究開発機関の評価を定期的に実施するということになっております。その評 価報告書につきましては当部会に報告されてきております。今回は、国立がん センター研究所の評価結果及び対処方針についてのご報告をいただきます。本 日は、若林所長と中釜副所長にご出席いただいておりますので、評価結果等に つきましては両先生からご報告をいただきます。よろしくお願いいたします。 ○若林所長  資料6-1は、平成17年度〜19年度の機関評価に関する厚生科学審議会への報 告書です。1頁に書かれている組織図のように、国立がんセンターは六つの組織 で構成されております。その中の研究所は我が国における、がん研究を推進す る中核的ながん研究施設として活動しております。研究所は11部、4省令研究 室、八つのプロジェクトチームで構成されております。103名の正規スタッフと 45名程度のリサーチレジデントがおり、研修生、研究支援者等を含めますと300 名ぐらいの者が研究に従事しております。  研究所は、病院、がん予防・検診研究センター及びがん対策情報センターと 密接な連携をとりながら、基礎研究及び応用研究の分野で幅広い研究活動をし ています。なお、プロジェクトは、重要な研究の推進又は若手を独立させて主 体的に研究に従事させる目的で所内で発令した組織です。  2頁は機関の評価体制です。研究成果につきましては、研究所の部、省令研究 室及びプロジェクトを研究内容から三つに分けて、毎年1グループずつが3年 間にわたる研究成果のまとめ及び今後の研究方針について口頭発表及び書類提 出を行い、外部委員7名(常任委員5名、専門委員2名)より構成される評価 委員会で評価を受けております。さらに、個別の研究テーマに関する評価に加 えて、組織、施設の整備や研究資金等の機関全体の評価も3年ごとに受けてい ます。  2.2に評価委員会の委員名簿を記載してあります。常任委員としまして、この 3年間、愛知がんセンター研究所の立松先生に委員長を務めていただきました。 常任委員としましては、札幌医科大学の今井先生、三菱生命研の関谷先生、東 京大学名誉教授の渋谷先生、京都大学から慶應義塾大学に移られた下遠野先生 の5名、専門委員としましては、癌研の鶴尾先生、千葉県がんセンターの中川 原先生、名古屋大学の浜島先生に務めていただきました。以下評価結果、及び 対処方針のいくつかの重要項目について、ピックアップしながら説明いたしま す。  3頁が評価結果です。最も下の段落のところに説明してありますが、評価会議 におきましては、総じていずれの部、省令研究室及びプロジェクトにおいても、 国立がんセンター研究所の果たすべき役割から見て適切な研究が実施されてお り、がん研究の中心を担う研究機関としての役割をよく果たしているとされま した。  まず平成17年度は、グループIが評価を受けました。5点評価での平均点は 4.2となっております。平成18年度はグループIIが評価を受けまして、平均点 が4.1です。グループIIIは、そこに書いてあるような部、室及び研究プロジェ クトが評価を受けております。  5頁の下の方、3.4の組織・施設整備・情報基盤・研究及び知的財産権取得の 支援体制についてですが、組織については「対処方針」のところでもう一度出 てきますので、そちらの方で説明させていただきます。  7頁です。施設・設備につきましても後で説明いたします。3.4.3は、情報基 盤についてです。研究所では、インターネットなど情報基盤の整備を実施して、 情報の収集・発信に積極的に取り組んできております。現在、研究所の各部門 の紹介や研究活動状況、毎月の刊行英語論文、年間ごとのAnnual Reportsを、 このような形でも発行しておりますが、ホームページ上にもこれが載っており ます。倫理審査委員会の審議内容等がホームページに記載されております。さ らに、ゲノム及びプロテオーム解析で得られたデータベースについても情報公 開をして、適宜更新をしております。  研究所のホームページへのアクセス数ですが、日本語ページに対しては1カ 月で大体6万件、英語のページに関しましては1カ月に4万件、合わせて1カ 月に10万件ぐらいのアクセス数があります。  9頁は国際協力の実施状況についてです。平成17〜19年の間に国立がんセン ター研究所に招聘された外国人の研究者は総勢で72名、日本人研究者の海外へ の派遣者数は88名になっております。欧米の研究者による講演やセミナーも頻 繁に実施されておりまして、国際シンポジウムや二国間のワークショップ、最 近では東アジア、中国や韓国とのいろいろな情報交換を特に積極的に進めてい ます。  3.6は、倫理規定及び倫理審査会等の整備状況です。国立がんセンターでは、 人を対象とした医学の研究における倫理的配慮等については、四つの倫理委員 会で厳密な審査を行っております。そこに四つの倫理委員会の名前がリストア ップされています。  人の研究に加えて、研究所では多くの動物を使いますので、動物実験に関わ る倫理的配慮や生物拡散防止に関わるカルタヘナ法の遵守等については、動物 実験倫理審査委員会で厳しく審査されます。  11頁は、機関評価にかかる対処方針です。「はじめに」に書いてありますが、 平成17〜19年度での評価会議で発表されたものに関しては、外部評価委員によ る評価を受けてまいりましたが、これらの評価に対してどのような対処を示し たのかということについて、以下説明いたします。  2番目の研究資金等については、厚労科研費や厚労省のがん研究助成金、文科 省の研究費、又は独立行政法人医薬基盤研の研究費、経産省のNEDO等の研究費 に積極的に応募し、研究資金を精力的に獲得してきた次第です。  3番目の組織等についてですが、組織のところでこの3年間に変わりましたと ころは、平成18年10月に、研究所1部とがん予防・検診研究センター1部を組 織替えするとともに新規定員を補充して、がん対策情報センターが設置されま した。さらに、重要な研究の推進と、若手の有望な研究者に研究により主体的 に取り組んでもらうためのプロジェクトをこの3年間に五つ発足させています。  12頁に移ります。正規のスタッフ等正職員の硬直化の防止や改善等につきま しては、任期付きの研究員を積極的に採用するような形で対応をしております。 任期付きの研究員は今、全研究所職員の2〜3割になっております。さらに、大 学及び他の研究機関との人事交流を積極的に進めており、研究所の室長から多 くの大学の教授等に着任している例があります。  3)で、最近は医学部の卒後研修制度の導入、薬学部の6年制の開始等により まして研究者のキャリアパスの流れがかなり変わってきております。それに対 応して、他の学部の大学院生やポスドク等の人員を流動的に確保して、より精 力的に良い人材の確保に努めています。  4の施設・設備等につきましては、平成15年度から2年間かけて築地キャン パスの研究棟は改修工事が行われまして、かなりいろいろな施設が改善されて、 設備等の改修が進みました。  5のTR研究に関しては、胃癌転移の診断マーカーの開発、急性骨髄性白血病 の分子標的治療薬の開発、DNAメチル化状態の評価による胃、腎臓、膵臓癌など のハイリスクグループのリスク掌握、難治性膵臓癌の早期診断法の開発等を含 めて、基礎研究で得られた成果について、病院との連携により臨床研究に積極 的に取り組んでいます。  6は民間企業との共同研究です。研究所における共同研究の実施件数としまし ては、毎年新規案件が10数件、継続課題と合わせますと30件前後が共同研究 として進んでいます。  9の疫学・生物統計学の専門家が関与する組織の支援体制ですが、特に国立が んセンター研究所では、ゲノム・トランスクリプトーム・プロテオーム等、大 量かつ高次元のデータの解析技法を用いる研究プロジェクトを中心に、これら の人材及び大型計算機等の整備に努めてまいりました。具体的には、腫瘍ゲノ ム解析・情報研究部におきましては、東京理科大学や名古屋工業大学から、生 物統計学で学位を得たポストドクトラルフェローを受け入れる、または正規の 職員として生物統計学の専門家を採用する、あるいは理化学研究所のゲノム科 学総合研究センターでヒトゲノム解析に携わった研究者をこちらの方に迎え入 れるというようなことで対応しています。  最後の頁は、知的財産権取得の支援体制です。国立がんセンターはTLOとし てヒューマンサイエンス財団と契約しておりまして、職務発明は年間に10〜20 件、特許の取得件数は年間に3〜4件となっております。以上で説明を終わりま す。 ○永井部会長  ただ今のご説明に何かご意見はございますか。 ○福井委員  細かいことですが、評価委員会の委員に外国の人を入れるような計画はない でしょうか。 ○若林所長  プロジェクト等の研究課題に関しましてはそういう必要性があるかもしれま せん。今のところは、日本人の先生方で評価をしていただいておりまして、具 体的には、まだ外国人に評価依頼をしたことはありません。 ○宮田委員  今のことも是非ご検討いただきたいと思います。  もう一つ。評価委員の方もご指摘なさっていますが、がん研究は、もうそろ そろ、本当に役に立ってきているだろうと思っておりますので、トランスレー ショナルな研究、それから企業の受託研究をきちんと進めていただくようなこ とをお願いしたいと考えています。それに関して言えば、ここでずっと前から 議論しています利害相反とか、利益相反とかという問題が必ず生じてまいりま すので、そこに対するマネジメント体制も、国立がんセンターの病院の方とよ く相談していただいて、とっていただきたいというのがお願いです。 ○若林所長  TR研究の推進等については非常に重要な課題だと思っております。また、先 生がご指摘の利益相反の委員会につきましては、既に国立がんセンター内に委 員会を設置して対応しているところです。 ○宮田委員  それでしたら、是非この報告書の中にも、倫理のところで「4委員会」と書い てあるので、そのような記述も是非入れておいてください。つまり、TRを推進 するということは公明正大にやらなければいけないということが是非とも必要 なので、そのような配慮をいただきたいのです。 ○若林所長  平成19年度以降にそれが設立されましたのでこの中に書いてありませんが、 次回に必ず記述いたします。 ○廣橋部会長代理  関係者なので、さらに付け加えさせていただきます。今回は研究所に関する 報告でしたが、国立がんセンターは、今度独法で「国立がん研究センター」と なり、基礎から臨床まで全部含め、新しい医療をどうやって創造するかという ことに取り組もうかと思っております。早期の開発から最後の標準的な医療の 開発まで、あるいは治験からTRの体制も全体で整えるようなことをしておりま して、その中の、特に新しいシーズを作るところの話を今させていただいたと いうことだと思います。よろしくお願いします。 ○永井部会長  若手人材育成で、大学院生を連携大学院で育てていらっしゃるようですが、 いくつぐらいの大学と連携を結んでいるのか、また何人ぐらい引き受けていら っしゃるか数を教えていただけますか。 ○若林所長  東京大学、東京医科歯科大学、早稲田大学等の東京都内の大学が多いのです が、五つか六つぐらいの大学と連携をしております。研究所には、10数人の大 学院生が来て研究を一生懸命しているところです。 ○井部委員  研究内容に関しては生物学的な研究が主に見られるのですが、ケアのあり方 といったようなことに関する研究は含まれないのでしょうか。 ○若林所長  がんの疼痛ですとか悪液質に関しましては非常に重要な研究課題だと思って おりまして、昨年度、がんの疼痛及び悪液質を研究する「がん患者病態生理研 究部」を立ち上げ、研究を開始したところです。 ○廣橋部会長代理  ただ今のは研究所でそういう取組みをしているという話ですが、国立がんセ ンター全体としましては、臨床開発センターの中に精神腫瘍学部というのがあ って、患者さんに対する精神的なケアの研究もしております。さらに研究費の 配分を通じ、そういう課題への支援も強化しているところです。 ○宮田委員  どうもバイオとかモレキュラーな研究がどんどん進んできて、最終的にコホ ートでバリデーションするというようなところに進んできたと思うのです。が んセンターと研究所、がんセンターと病院、両方でどういう取組みをやってい らっしゃるか確認させていただいてよろしいでしょうか。 ○若林所長  先生がおっしゃるのは、主に臨床試験のことでしょうか。 ○宮田委員  そうとは限らない。 ○若林所長  まず、コホートの疫学研究に関しては、がん予防・検診研究センターで、津 金部長たちのグループが中心になりまして、がんですとか他の疾患を含めて、 10数万人のフォローアップスタディをずっとやっております。 ○宮田委員  ですから、それをそろそろモレキュラーな研究と結びつけて、本当の意味で 役に立つバイオマーカーとか、標的を評価するような研究に発展するだろうと 思っているのですが。 ○若林所長  生体試料は保管してありますので、そういうものを使って、現在あるいろい ろな技術で分析し、本当に疾患と関係がある因子を検索することは非常に興味 があるスタディだと思っております。 ○宮田委員  その際にインフォームドコンセントとか、そういうややこしい問題はないの ですか。 ○若林所長  そういうものに関してもクリアしていこうと思っています。 ○宮田委員  どうぞよろしくお願いいたします。 ○永井部会長  がんセンター研究所におかれましては、今後の発展、また運営の改善を是非 お願いいたします。若林所長、中釜副所長には、本日はどうもありがとうござ いました。その他、何か事務局からございますか。 ○坂本研究企画官  8月26日の科学技術部会においてご審議いただきました、厚生労働省の平成 22年度研究事業に関する評価、概算要求前の評価に関しましては、いただいた 意見を基に一部修正を行いまして、部会長のご承認を得たものを参考資料5と して本日お配りしておりますことをご報告いたします。 ○永井部会長  連絡事項はございますか。 ○坂本研究企画官  次回の日程ですが、12月25日(金)14時から開催を予定しております。正 式なご案内につきましては、詳細が決まり次第連絡させていただきますので、 どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。 ○永井部会長  本日の部会はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございまし た。                                −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171