09/10/19 第4回社会保障審議会少子化対策特別部会保育第一専門委員会議事録 社会保障審議会少子化対策特別部会 保育第一専門委員会 (第4回) 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 社会保障審議会少子化対策特別部会 保育第一専門委員会 第4回議事録 日時:2009年10月19日(月) 16:00〜18:00 場所:厚生労働省 共用第7会議室 出席者:  委員   大日向委員長、岩村委員長代理、飯塚委員、市原委員、柏女委員、川崎委員   木原委員、榊原委員、佐久間委員、佐藤委員、高橋委員   椋野委員、吉田昌哉委員、吉田正幸委員   岩渕委員、内海委員(少子化対策特別部会)  事務局   伊岐雇用均等・児童家庭局長、香取審議官、田河総務課長   今里保育課長、朝川少子化対策室長 議題: 新たな次世代育成支援のための保育制度について     ・保育に関する費用保障(給付)の仕組み〜利用者負担のあり方 等 配付資料:   資料1-1  保育に関する費用保障(給付)の仕組み〜利用者負担のあり方   資料1-2  保育に関する費用保障(給付)の仕組み〜利用者負担のあり方 参考資料  参考資料1  木原委員提出資料  参考資料2  佐藤委員提出資料  参考資料   高橋委員提出資料 議事: ○大日向委員長  定刻になりましたので、ただ今から「第4回保育第一専門委員会」を開催いたします。委 員の皆さま方におかれましては、お忙しいところをお集まりくださいまして、ありがとうご ざいます。  議事に入ります前に、事務局より、委員の出席に関する報告と資料の確認をお願いいたし ます。 ○今里保育課長  まず、委員の出席状況でございますが、本日は駒村委員から都合により欠席とのご連絡を いただいております。また、吉田正幸委員は出席される予定でございますけれども、到着が 遅れるとご連絡をいただいているところでございます。ご出席いただいております委員の皆 さま方は定足数を超えておりますので、会議は成立しております。  また、本日は、少子化対策特別部会から岩渕委員、内海委員も出席していらっしゃいます。  続きまして、お手元に配布させていただいております資料の確認をさせていただきます。 最初に議事次第がございまして、資料1-1は保育に関する費用保障(給付)の仕組み〜利用者 の負担のあり方。資料1-2は同じ資料の参考資料でございます。それから、参考資料1とし て木原委員提出資料、参考資料2として佐藤委員提出資料。そして、封筒の中には「平成 22年度予算概算要求について」という厚生労働省の概算要求に関する資料を配布させてい ただいております。また、事務の都合で資料番号を振ることができませんでしたけれども、 封筒の外に「少子化対策特別部会保育専門委員会への意見」として、本委員会の高橋委員と 保育第二専門委員会の坂崎委員の連名での参考資料をご提出いただいております。もし、不 足等がございましたら、事務局の方にお声を掛けていただければと思います。  以上でございます。 ○大日向委員長  ありがとうこざいました。それでは、議事に入りたいと思います。本日は、まず事務局よ り資料1-1および資料1-2についてご説明をいただき、その後、皆さまにご議論をお願いい たします。それでは事務局、お願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  それでは、資料1-1と1-2をご用意いただきまして、資料1-1の1枚目をお開きいただけ ればと思います。本日は、1番の表題にありますとおり、まず「保育に関する費用保障(給 付)の仕組みにつきまして、ご議論いただければと思います。まず(1)のところでは、全体の 基本的な大きな枠組みをまずご紹介しながらということで、社会保障制度、一般のお話から 解き起こしているものでございます。  一つ目の丸でございます。社会保障制度における給付の仕組みとしましては、大きく分け ますと、「(1)措置」による費用保障の仕組みと、「(2)当事者同士の公法上の契約」を出発点と した費用保障の仕組みと、二種類に大別できるということでございます。  まず「措置」の仕組みでございますが、その性格などを6点にわたり整理しております。 まず1点目には「福祉に欠ける」状態にある者につきまして、行政が判断して行政処分とい う形で利用決定する仕組みです。サービスの提供は、行政が自ら実施するか、社会福祉法人 などに委託するかの、どちらかであるということです。法的には、行政に措置の実施が義務 付けられまして、裏返しとして、その必要な費用につきましては行政が支弁する義務を負う という形になっております。ただし、基盤整備の責任が必ずしも明確でなくて、運用上でき る範囲での措置の実施になる、あるいはなってきたということでございます。4点目は、サ ービスを受ける者には利用に関する権利が必ずしも明確でなく、それと相まってサービス選 択の保障もないという性格でございます。5点目は、それに関連しまして、多様なニーズに 柔軟に対応することが難しく、画一的なサービスになる傾向があるという側面があります。 6点目の費用負担につきましては、所得に応じた負担である反面、利用者負担の差が大きい という性格がございます。  一方、2ページ目でございますが、大きく分けたときの二つ目の類型として、当事者同士 の公法上の契約について、少し性格付けをしてみます。1点目として、利用者と事業者の間 で公法上の契約を締結して、それに基づいてサービスを利用するという形になります。医療 等はいきなり契約でサービス事業になりますが、介護等では前段階で行政による認定があり、 それによって権利の発生があるという形になります。2点目としましては、事業者は利用者 に対して、法令に基づいてサービス提供の義務を負いますし、利用者側はサービス費用の支 払いの義務を有する。一方、行政あるいは保険者は、そのサービス費用の一部について給付 を行う義務を負うという関係になります。3点目は、これらからということですが、利用者 のサービス利用についての権利性が明確となって、サービスの選択制が向上すると一般的に は言われております。4点目も、これらと密接に関連しますが、行政は円滑にサービス提供 されるようにする義務を負う。例えば、介護でいえば認定によって発生した権利行使が円滑 に行われるようにする義務を行政側が負う。その結果として、行政の基盤整備責任も明確と なって、ニーズに応じたサービス量の確保もされやすい仕組みになるということでございま す。  下の丸は、歴史的に見てということですが、医療保険制度で、従前より二つ目の仕組みで ある「当事者同士の公法上の契約」の仕組みが採られているということでございます。一方、 多くの福祉サービスは、制度創設当初は「措置」の形で始まり、これは保育も同様であった と思います。しかしながら、利用者主体の仕組み、あるいは権利性の強化等を進めていく中 で、基本的には(2)の「当事者同士の公法上の契約」に移行してきている。移行した際には、 契約に馴染まない類型については、一部措置という仕組みを併存させているという形になっ ております。  1枚おめくりいただいて、3ページ目は、現行の保育制度がどのようになっているかとい うことを、改めてこのような文脈の中で振り返っているものでございます。現行の保育制度 は、平成9年の制度改正がありまして、選択性の向上等の観点から、措置制度を見直して、 契約制度が既に導入されております。ただし、その契約関係はご案内のとおりですが、市町 村と利用者の間で結ばれることとなっておりまして、そのサービス提供は市町村から認可保 育所への委託という形が基本的に構造としては維持されているということでございます。ま た、対象者につきましても、「保育に欠ける」児童という形が残っている状況でございます。  矢印のところは、お金の支払いがどのようになっているかということですが、まず市町村 が自ら保育を実施する場合は、その「保育に欠ける」と認めた個々の児童について、自ら保 育を実施し、その要する費用を支弁する形になります。民間保育所に委託する場合は、委託 した個々の児童について市町村が費用支弁をする形になっております。いずれのパターンに おいても、個々の児童に着目した給付、個人についての給付が行われている形が現行制度で も既にそのようになっているということでございます。  一番下の丸は「ちなみに」ということで、認可保育所による通常保育以外の延長保育や一 時預かりなど、そのような多様なサービスの部分につきましては、既に利用者と保育所等の 当事者同士の契約によりサービス提供が行われているということでございます。  これらを踏まえて4ページ目に「基本的な考え方」がございます。これは、第1次報告で 確認されていることですが、保育には公的性格・特性がありますので、それを踏まえた新し い仕組みとして、公的責任を行政が果たす三者の枠組みの中で、利用者が保育所等と公的保 育契約を結ぶこととされているところでございます。  このうちの、まず「公的責任」について、少し分解して振り返ってみますと、まずは市町 村が認定という行為によって、例外なく保育保障をしましょうというのが公的責任の中身の 一つです。2点目は、この認定の行為と裏返しでございますが、市町村・都道府県には基盤 整備責任が明確化されていく形になります。3点目は、利用支援が必要な子ども、あるいは 公的保育契約締結に関する支援など、そのような利要支援の責務も市町村にしっかり掛けま しょうということでございます。4点目は、当事者同士で利用されたサービスにつきまして は、市町村が義務的に後から負担する仕組みにする。委託を前提とせず、サービス抑制が可 能な仕組みを見直していきましょうという意味で、市町村の費用負担については、公的責任 の強化が図られるということでございます。5点目は、そのような市町村に保育の実施責務 を掛けることに加えまして、客観的基準(最低基準)や行政による指導監督、情報公開制度等 によって、質の確保されたサービスを保障する仕組みを重層的に入れてみましょうというこ とでございます。これらが相まって公的責任ということでございます。  一方、「公的保育契約」につきましては、単に当事者同士の契約ということではなくて、 例外ない保育保障で公的保育を受けることができる地位を、行政において明確化した下で当 事者同士で契約をいただくという性格のものであるということが一つ。もう一つは、多様な ニーズに応じたサービス利用を実現するという命題を実現する上で、この当事者同士による 契約関係、あるいは行政による基盤整備、サービスメニューの多様化、そのような諸々の方 策を併せて実施することによって実現していこうという性格のものでございます。  1枚おめくりいただいて、このような基本的考え方を踏まえますと、制度の基本的な枠組 みとしましては、まず行政による委託を出発点とするのではなくて、当事者同士の公的保育 契約を出発点としてサービス利用が行われる仕組みとすることが必要である。ここまでは、 第1次報告で確認済みのことかと思います。その当事者同士の契約を出発点としてサービス 利用が行われる前提に立てば、公的保育契約によって例外なく保障された保育の提供が行わ れることになるわけですが、それに伴って必要な費用を公的に保障するためには、市町村か ら利用者に費用保障(給付)が行われることが基本ではないかとしております。  ただ、このように利用者に対する費用保障という形を採りますと、次の丸の1行目の後段 ですが、利用者個人が、市町村に費用の支払いを請求して支払いを受けるといった手続きの 煩雑さが生じますので、そのようなものをなくして、利用者・事業者・市町村すべてにメリ ットがある仕組みとして、法律に基づいて保育所等が利用者に代わって市町村に費用請求し て支払いを受ける「法定代理受領」を可能とすることが必要ではないかとしています。この ようにすることによって、市町村から保育所等へ直接費用保障(給付)が行われることと同等 の仕組みになりまして、現行と同様に現物給付化が図られることになります。  また、この仕組みを採れば、認定を受けた上で、現場で当事者同士のサービス利用が行わ れれば、義務的に公的な費用保障が行われるという形になります。  一番下のところは、「なお」ということで、他制度においても、利用者に対して給付して、 法定代理受領をするという仕組みが設けられているということでございます。  次の6〜7ページ目では、三つほど論点を挙げております。こちらは、第1次報告を取り まとめるに当たり、ここの代理受領構成について懸念が示されて、第1次報告では、そこは 今後の検討課題ということになっております。そこについて懸念点が何点か挙げられていた うちの代表的なものを少し取り上げております。  まず1点目は、これまでの「子どもの育ちの保障」について、公的責任が後退するのでは ないかという懸念点でございます。これにつきましては、市町村には法制度上、引き続き実 施責務を課す。その実施責務は、質の確保された公的保育が着実に保障されるための実施責 務。この中身は、先ほど見ていただいた公的責任のところにございます。このような市町村 の実施責務と、事業者の指定制度等による事業者規制によって、公的責任は以下のように強 化され、保障が強化されるということでございます。いずれも繰り返しに近いことが書いて ありますが、一つは、児童に例外なく市町村が認定を行う。客観的に必要性が判断された子 どもについては、公的保育を受けることができる地位を付与することになります。したがっ て、客観的に明らかにされたニーズが出てまいりますので、そのニーズに応じた基盤整備を しなければいけないことが明確になります。2点目は、給付メニューが多様化することによ って、多様なニーズに対応した必要なサービス選択が可能になるということ。3点目は市町 村に利要支援責務が課されるということ。4点目は、当事者同士でのサービス利用がされれ ば、その利用実績に応じた費用保障が行われるということでございます。5点目は、客観的 基準に基づく事前規制、あるいは行政による指導監督、情報公開制度等の事後規制と何層に もわたって全体として質の確保されたサービスの保障が制度的に行われるということでご ざいます。これらによって、公的責任が後退しないような仕組みをしっかり講ずるというこ とでございます。  次に、7ページの二つ目でございますが、このように利用者に対する費用保障の仕組みと しますと、これは現金給付なので、バウチャー制度につながって質の低下を招くのではない かという懸念点でございます。「バウチャー制」と一言で言っても、いろいろ人によって思 い描くものが違いますので、ここでは市場主義に基づく「バウチャー制」と取りあえずしま して、そのようなものが市場原理に基づいて、選択性の向上あるいは全体の費用の効率化を 図るというようなものが、ここで懸念の対象となる「バウチャー制」であろうということで ございます。第1次報告で提案しております新しい保育の仕組みは、まず公定価格とするこ とを明示しておりますので、価格競争の要素は取り入れないことになっております。保育制 度全体の財源確保を図りながら実現するということでございますので、質の低下をもたらす ものではないということ。さらに、市町村に質の確保された公的保育の提供体制確保責務を 課すということ。さらには、客観的基準を満たす事業者を費用の支払いの対象とする。これ らによって、保育の質を確保していこうというものでございます。  三つ目は、同じく利用者に対する費用保障の仕組みは、仮に法定代理受領があったとして も、利用者に着目するので、保育所側の保育体制に着目して設定されるような単価、こでは、 例えば定員別保育単価を挙げていますが、そのようなものが維持できないのではないかとい う懸念点でございます。この新しい保育の仕組みにおいて、仮に利用者に対する費用保障の 仕組みを採った場合でも、懸念点である定員別単価の設定など、その適切な単価の設定は可 能であろうと。むしろ、これは費用保障の仕組みの問題というよりも、単価設定をいかにす るかという問題ではないかということでございます。  8ページ、9ページ目は、他制度の例を付けておりますのでご参照いただきまして、以上 が一つ目の固まりでございます。  次に、10ページでございます。関連しまして「保育料の納付について」の論点でござい ます。まず10ページ目は現状ですけれども、一つ目の丸にございますとおり、平成18年 度の調査によりますと、人数で4.3%、額ベースで1.7%の滞納がある状況でございます。  一つ飛んで三つ目の丸で、現在は保育料の徴収を市町村がやっていますので、滞納が生じ た場合は、最終的には強制徴収ができるという仕組みになっております。  一方、二つ目の丸ですが、民間保育所に市町村が保育料の徴収を今でも委託しているとい う市町村が224市町村あるということ。別途、保育料の納付の勧奨を委託しているという 所も124市区町村あるという状況です。  一番下の丸ですが、通常保育以外の延長保育や一時預かりにつきましては、現行制度では 認可保育所が利用料を設定して徴収を行うという仕組みになっているのが現状でございま す。  これらを踏まえて11ページ目が「検討事項」です。一つ目の丸は、新しい制度体系にお いては、市町村が公的責任を果たす三者の枠組みの中で、利用者と保育所等の当事者同士が 公的保育契約を結ぶ形になりますので、費用は当事者である保育所等に納付される。逆に言 えば、保育所等が徴収するということが基本になるのではないかとしています。  一方で、二つ目の丸ですが、例外的ではあるものの、一定程度の滞納が発生しているとい う状況がございますので、その懸念の問題があるということでございます。  三つ目の丸では他制度の例として、例えば医療保険制度では、被保険者が一部負担金を払 わなかった場合は、保険医療機関が善良なる管理者と同一の注意をもって、支払いの受領に 努めたけれども、なお、その支払いがない場合には、保険医療機関に代わって、保険者、こ れは市町村などですが、被保険者から徴収する仕組みがございます。このような他制度の例 なども参考にしながら、市町村に実施責務を課しますので、その一環として、新たな仕組み でも保育料の滞納があった場合に、市町村が利用者からの保育料の納付に関与する仕組みを 検討する必要があるのではないかとしております。12ページ目は、その滞納に関する平成 18年度の状況の表でございます。  次に13ページでございます。大きい二つ目の論点で「利用者負担のあり方について」で ございます。むしろ、利用者負担をどのように設定するかという問題です。これは、具体的 に、誰に幾らという費用設定の仕方につきましては、財源構成や財政の規模などと密接に関 連しますので、そのようなものは現時点で議論するにはまだ時期尚早でございますので、そ れ以外のことについて論点を提示しております。  第1次報告では以下のような整理がございます。まず1点目は、保育の価格です。これは 公的に助成する方もそうですが、利用者負担の方も含めて公定価格ということでございます。 2点目の単価の設定については、利用量に応じた月額単価設定で、安定的運営に配慮する。 3点目の利用者負担のあり方については、いずれにしても、どのような利用者負担の体系を 採ったとしても、所得に対する十分な配慮を基本にしましょうということ。さらに、個々の 利用者負担の水準の決定については、国の基準の下、市町村が行う。そのようなことが第1 次報告での整理でございます。  その上で、二つ目の丸は、そもそもこの単価設定につきまして、年齢や保育所の規模、保 育所の所在する地域、サービスが提供される時間帯などによって単価が異なってくることが 考えられます。その単価が異なったときに、利用者負担のあり方を変化させるかどうかとい う論点があり、それを検討する必要があるということでございます。  一番下の丸は、「さらに」ということで、それら以外にも利用者負担については以下のよ うな類型を検討する必要があるということです。1点目は、前回ご議論いただいた標準的な 利用保障の範囲の中の話ですが、その中で短時間と長時間、あるいは週3日以上、3日未満、 そのような区分をつくった場合に、区分に応じて単価も異なってまいりますので、利用者負 担をどのように変えるのかという問題です。2点目は、標準的な利用保障の範囲を超えて利 用する場合の利用者負担のあり方。3点目は、保育第二専門委員会の方で多様なサービスメ ニューということをご議論いただいておりますが、そのようなものを導入していったときに、 利用者負担のあり方をどのようにするかということです。  14ページ目では、最後の三つについて少し詳しく書いております。まず一つ目の標準的 な利用保障の範囲の中の区分の問題については、一つ目の丸では、例えば「長時間」と「短 時間」とに区分するという議論を行っていただいているということを書いてあります。二つ 目の丸では、仮にこの二つに分けたときには、その区分に応じて単価設定も異なるように行 うことになるかと思いますけれども、その際も、その管理費や人件費の一部、「長時間」「短 時間」の区分を問わず共通して必要な費用が見込まれますので、単純に時間数に比例した単 価にはならないと思います。いずれにしても、単価の違いが生じると思いますので、その違 いに応じて利用者負担も異なるようにするのかどうかという論点があるということでござ います。その場合でも、仮に利用者負担額を変えたとしても、それぞれの利用者負担額の中 で低所得などに対する配慮が要るということでございます。  三つ目の丸は、標準的な範囲を超えて利用する場合の利用者負担について、標準的な範囲 内の利用者負担とは別に検討する必要があるということでございます。  最後は、多様なサービスメニューを考えたときに、それぞれのサービスメニューごとに基 準となる設備あるいは職員配置などが異なってくることが考えられます。そうしますと、自 とコストも違ってくるので、単価も違うということになると思います。その場合、下の丸で すが、単価が異なった場合に、利用者負担額も異なるようにするのがよいのかどうか。その ような論点がある。いずれにしても、所得に対する配慮は必要であるということでございま す。  資料の説明は、以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございました。それでは、ただ今の事務局からのご説明を受けまして、ここか らは委員の皆さまで意見交換をお願いいたします。  高橋委員、お願いいたします。 ○高橋委員  日本保育協会の高橋でございます。前回はフライングしましたので、最初に確認させてい ただければと思います。  今、二つの大きな表題と言いましょうか、保育に関する費用保障(給付)の仕組みについて ということと、利用者負担のあり方について、という二つのことが求められていると思いま す。ここは、どちらからということはないということでよろしいのでしょうか。 ○大日向委員長  そうですね。ご指摘のように、決めておいた方がよろしいですね。では、最初は、費用保 障について、しばらくご議論いただきたいと思います。 ○高橋委員  わかりました。それでは、保育に関する費用保障(給付)の仕組みについて、意見を述べさ せていただきます。  まず、原理原則ということではないかとは思いますけれども、保育というものは親の子ど もに対する養育義務の一部を公が保証する制度という意味合いもあると解釈しております。 利用者に対する費用保障(給付)のことにつきまして、資料の5ページですね。市町村から利 用者に費用保障(給付)が行われて、保育所等によるその部分を法定代理受領という形を採る ということでございますけれども、ここは、まさに個人給付の制度になると理解せざるを得 ないわけです。そこのところは、市場主義による「バウチャー制」とは違いますよ、という ことも書かれておりますが、前回、申し上げましたように、確かに、委託・受託の関係では なくなるとは思いますけれども、児童福祉法第24条における市町村実施責任の意味合い。 それから、個人給付となりますと、市町村と保育所の関係が非常に曖昧にならざるを得ない。 そこは、市町村の体制整備の責任であるとか、費用の支払い義務は課すということではあり ますけれども、法律的にどのようにきちんと位置付けられるのか、非常に不安でございます。  それから、ここのところは、すべての国民がある意味、拠出すると言いましょうか、負担 ですか。そのような意味では、介護保険の場合は当然、介護保険というものを保険というこ とで国民が掛けていて、そこでそのサービスを得られるということで、ある一定の個人給付 的な概念も理解はできると思いますが、保育は、保険というものにはなっておりませんので、 その辺にやや無理が生じるのではないかという気がいたしております。  当然、個人給付的な色合いになりますと、利用料は保育所等の事業者に納めることになる と思いますが、そうでないということになりますと、やはり保育料は市町村が徴収すべきで はないかと思っております。費用保障の仕組みについての意見は、以上でございます。 ○大日向委員長  ありがとうございます。では、木原委員、お願いいたします。 ○木原委員  今の代理受領の話に関連しまして、去年の5月の20日に基本的な考え方、さらに12月 19日、そこで一応代理受領というものが入っていました。我々は、認可外も含めて、在宅 の子どもも含めて、保育園の子どもを含めて、良い仕組みになってほしいと思っていて、積 極的に発言をさせていただいたのですが、12月19日に出た第1次報告案では代理受領が入 っていました。これについては、非常に私たちはこだわっていまして、それは結構、仕組み の性格を変えてくるのではないかと思っています。第1次報告では、これは消えていました ので、私たちも積極的に議論もしてきたわけです。ただし、今回この案で見ますと、法定代 理受領という形で仕組みが考えられているわけです。これは検討中ということなのでしょう が。私たちがなぜ、それにこだわるかという理由として、大きく二つあるのです。一つは、 7ページの論点の中にも書いていただきました、今、朝川少子化対策室長からご説明いただ きました7ページの下の丸ですが、「保育体制に着目して設定されている定員別保育単価が 維持できないのではないか」という懸念が一つあるわけです。ただ、定員別保育単価は定員 別に計算されています。少数定員園は非常に高いコストになっており、多数定員園はコスト が安くなっていきます。このような仕組みです。つまり、それは、先ほどの保育料の定員別 保育単価、公定価格です。これについては強制的に設定できるわけですけれども、利用者に 補助をした場合に、実際には少数定員園は余計に補助がいっていて、多数定員園は少ししか いっていない。それではアンバランスができてしまいます。例えば0歳児では、普通、多数 定員園では15万円ぐらいになると思いますが、少数定員園では20万円近くなるわけです。 そのような論理的に矛盾したことが起きてくる危険性があると思います。ただ、先ほどおっ しゃったように保育単価の設計の問題であって、設計するに当たって、定員別単価をするの で問題はないとおっしゃっていますが、これは将来的にコストとのバランスを見て、関係を 見て、崩れる可能性があるのではないかと思っています。そうなってしまうと、保育所が持 っている小規模で小地域でという機能が失われていくのではないかと思います。例えば京都 の幼稚園でも、今はもう少ないですけれども、かつて1,000人、2,000人規模でバスを何十 台も走らせて集めていました。つまり、単価が一定になれば、スケールメリットが起きてく るわけです。コストに応じて同じ単価になればということですが、そういう危険性が非常に あるということが一つです。  もう一つ大きなことは、これは利用者補助ですので、つまり利用者の家計の中に入ってし まうわけです。そこから納付されるものについては、言い換えれば、物を買うのと同じです。 つまり、それは補助金の性格が全く変わってしまうわけです。保育園に来るものは、先ほど おっしゃったように現行と同じような形で来るとおっしゃいますけれども、資金の性格が全 く変わってしまうということです。ですから、社会福祉法人あるいは保育所には使途制限等 がありますけれども、もしこういう利用者補助になった場合には、多分使途制限がかけられ ないと思います。そうすると、多数定員園を抱えていて剰余金がたくさん出てきたら、それ はまた全然違った事業に、営利事業にやってもよいというような話になってくるわけです。 ですから、そこに対する歯止めが利かないので、結局何かと言いますと、企業にどんどん進 むでしょうし、つまり蓄積できるわけですから、さらに違う事業にも展開できるということ なりますと、社会保障としての保育園の存在というのは、非常に薄くなってきます。そのた めには最低基準に決められている補助単価が基本的には骨抜きになってしまう危険性がも のすごくあるのではないかと思います。私たちはトライアングルの図でしつこく書いていま したけれども、契約はよいだろうと思っています。しかし、保育料について、市町村に納付 するというのは、利用者補助をしない仕組みにしてほしいという思いで、私たちは主張させ てもらってきたわけであります。ですから、今の公的な保育の仕組みを縷々ご説明いただき ました。了解できるところはたくさんあるわけですけれども、基本的にその辺りは、それを 崩してしまうと、多分保育制度というのは、社会保障からはみ出してしまうと思います。前 例でよく出されるコムスンのような「儲かる」というような形が起きてこないかという心配 をします。以上のようなことで、反対したいと思います。 ○大日向委員長  佐藤委員ですか。その次に吉田昌哉委員ですね。お願いいたします。 ○佐藤委員  まず、参考資料にも出させていただきましたが、私たちの議論の前提となる児童福祉施設 の最低基準については、地方の委譲というのは断固反対したいと思います。子どもの育ちの ためには、ここだけは担保して議論を進めていただきたいと思っております。  では、今の保育費用の保障の仕組みについて、前回も私たちはお話ししたのですが、市町 村の公的関与を担保するためには保護者・利用者と保育所との公的保育契約だけではなくて、 市町村と利用者である保護者との契約、それから市町村と保育所との三者の公的契約制度が 不可欠と思っております。資料の3ページの中で、現行制度は「契約関係は市町村と利用者 の間で結ばれ、サービスの提供が市町村から保育所への委託により行われる」と、あります。 ここにプラス、利用者と保育所との契約が初めて成立すれば、より強固になるはずなのです。 でも基本的な考え方として、4ページ以降で出したのは、この最初の上のところを外してき てしまったわけです。そうすると、それが保育保障が確固たるものになっていくとは読み取 れないのです。利用者に認定証明書、保育保障をしますという市町村からの保育保障があっ て、それに対して利用者は「市町村に対しては、例えば保育費用なり何なりの私たちが払わ なければいけない部分は払いますよ」というような契約関係も市町村と利用者はしっかりと すべきであると思っております。そして、利用者と保育所、それから保育所と市町村という その三つの枠組みの中での契約というものがあるべきだと思います。それが繰り返し言いま すけれども、子どもたちの健やかな保育保障の確固たるものになると思っております。  その上で、例えば今、説明されたような二者間の契約では、もしかするとこの確固たる保 育保障は不備なのではないかという意見は出させていただきます。そして、保護者と市町村 との間に保育保障に対する契約があった上で保育を実施した部分に対して一定の義務を負 うというものも利用者がしっかりと出してあるのであれば、当然のごとく保育料の徴収は市 町村がすべきであり、それから保育料もきちんと保育保障を担保した市町村に利用者が払う べきではないかと思います。  それから繰り返し言っていますけれど、この問題についても繰り返しコーディネートをし っかりできるような機能を付加しない限りは、この辺も難しいのではないかと思っておりま す。今の費用保障の仕組みことについては、まずそこまでです。 ○吉田昌哉委員  今、3名の方から、利用保障の対象を個人にすることに対して懸念するという意見をお聞 きしたのですけれども、例えば木原委員は「利用者補助」という言葉を使っていました。今 回の新しい制度(案)を私なりに解釈すると、市町村は例外なく個人に対して利用保障をし、 別に個人に対して補助をするのでなくて、個人が施設で利用したサービスに関する費用を市 町村が負担するという点ではバウチャー制度のように使途を制限して個人に補助するので はなくて、利用したサービスに対して市町村が費用を負担するということで、個人に対する 直接的な補助とは考え方が違うと考えております。この点は、あとで事務局に確認したいの ですが、そういう認識に立てば、例えば今の児童福祉法では市町村に対して保育義務が課さ れています。同じ第24条で「やむを得ない理由」があれば他の措置をしなさいということ も規定されていますが、今回の制度改革、新しい制度においては、先ほど言ったように例外 なく利用保障して利用されたサービスに対しては、きちんと負担をしていくというように、 かなり市町村の責任が明確になっていると私自身は考えており、かなり画期的なものである と認識しています。  しかし、幾つか懸念があるのですが、例えば一つ目としましては、利用保障についても財 源が確保されて基盤整備が進んで需要と供給のバランスがきちんと取れている状態であれ ば問題はないと思いますけれども、やはり、現在のように需要が供給を上回るというような 状態は、少しの間または中期的・長期的にも続くと考えられます。そういう場合ですと、保 育所に利用者が逆選択されるのではないかという懸念があります。例えば、受給権がきちん と確立されている介護保険制度においても、特別養護老人ホームには多くの待機者がいると いうのが現状です。ですから、保育の必要性の認定と保育の提供を分離させるというのが今 回の案ですが、これはたとえ分離しても十分な財源がなければ基盤整備はできませんし、基 盤整備ができなければ利用されても結局サービスの提供を受けられないという状態が起こ るのではないかと考えています。  もう一つ懸念していることが財源の問題で、利用保障された個人が利用したサービスに対 して市町村は費用を例外なく負担していくということになりますと、市町村の支出が大幅に 増大すると考えられます。ですから、国としても例えば国庫で負担する、また地方消費税な どいろいろな案もあるとは思いますが、市町村が保育にかかわる財政的責任をきちんと果た していけるような制度も、財源を市町村に下ろしていくような制度も保育の制度改革、新し い保育制度とセットで検討していく必要があるのではないかと思います。  以上です。 ○大日向委員長  はい、ありがとうございます。ここで一度切らせていただきたいと思います。最初に保育 事業者の3人の委員からご意見が出されました。それに対して、吉田昌哉委員からご意見、 そして懸念も示されたわけですが、今回の新しい制度の改革というのは当事者同士の公的保 育契約を出発点としてサービス利用を行う仕組みとするということでは、第1次報告案で皆 さまは合意されているわけです。しかし、具体的なところになって、先ほど3人の事業者か ら出されたようなご心配があったわけですが、それに対していかがでしょうか。例えば今、 吉田昌哉委員から、個人の利用者補助というのは決してバウチャーにはならないというよう なこともありました。先ほど木原委員は、家計の中に入ってしまって使途制限がかけられな いのではないかという、この辺は少し意見がずれているように思いますが、その辺りは、い かがでしょうか。飯塚委員。 ○飯塚委員  市町村のお話が多かったので、市町村の立場でも多少言わせていただければ。私個人とし ても、町としても市町村が徴収することに別に反対ではないのですけれども、今実際に似た ような制度が、以前にもご紹介いたしましたが、「認定こども園」で、実際にそのような形 で行われております。「認定こども園」の幼保連携型の認可保育所の部分につきましては、 利用料は原則、園が徴収という形になっております。運営費は、園の保育料を差し引いたも のを市町村が運営費として支弁するという形です。大まかな仕組みとしては、そういう制度 が採用されて運用されていまして、私どもも来年4月から「認定こども園」を幼保連携型で 1箇所、今、設置に向けて進めているところでございまして、園側とも交渉しているところ ですけれども、基本的に園で徴収していただくことに了承はいただいているところでござい ます。確かにご心配の向きはあるのだろうと思いますけれども、これは単純な言い方で、こ のような言い方が適切かどうかわかりませんが、今私どもでは口座振替を主にやっています。 9割以上の方に銀行引き落としの形でお願いしているのですが、鷲宮町長の口座に引き落と してくださいということで依頼して、書面でやり取りをしてという形で運用していますが、 それが、全額保育園の口座に落ちるのです。口座引き落としされる形になるもので、それ以 外の仕組みは基本的には変わらないのだろうと、ご説明を受けても思いました。市町村の仕 組み自体は、市町村の立場としても変わるものではないですし、ただ措置と契約あるいは措 置というものから、サービスの提供というのですか、そういうものにより考え方をシフトし ていくという部分は、お話を聞いてあるだろうと思ったのですけれども、お金の流れとすれ ば、一回市町村で受けたもの、それは併せて保育所にお渡しするものが、その一部がダイレ クトに保育所にいって、その残りの分が市町村から支弁されるという、多分大まかにはこの ような仕組みになるのだろうと思っていまして、埼玉県内でも他に4か所で幼保連携型で 「認定こども園」を行っているようですけれども、どの市町村に聞いても、そのことについ て保護者等からの混乱もなさそうですし、特に苦情等もなく、保育の責任は引き続き、責務 を全うしていることも確認をとっておりますので、特にご心配されるようなことはないとい う気はしているところでございます。 ○大日向委員長  先ほどからお手を挙げていらっしゃる高橋委員、それから木原委員の順にお願いいたしま す。 ○高橋委員  資料の5ページです。先ほどから5ページと言っておりますけれども、ここは、斜めに読 んでも、逆さまに読んでも、どう読んでも、個人給付としか読み取ることができないです。 そして、これは木原委員がおっしゃった個人補助ではなくて完全に個人給付ということを、 ここでは多分言われていると思います。私も確認したいのです。ですから、完全にお金の色 合いが今までとは全く違うということになると思います。繰り返しになりますが、私が一番 懸念していることは、市町村の公的責任ということの広義の意味でのことも踏まえて、市町 村と保育所との関係性が、どうも本当に今までのようなことにはならなくて、非常にあやふ やなことになりはしないかと。繰り返しますが、そのことによって、自治体と言いましょう か市町村の公的責任の後退になるのではないかということが、関係者の一番の不安材料であ ると思うということでございます。 ○大日向委員長  木原委員、どうぞ。 ○木原委員  今、飯塚委員がおっしゃったように、決して徴収することが嫌だという話ではなく、そう いう主観的な問題ではなく、私たちは徴収代行してもよいと思っております。事務的には確 かに煩雑ですが、そういう意味ではなく、「認定こども園」とは違うわけです。「認定こども 園」は代理受領ではないのです。一定機関補助をして差し引いているだけの話ですから、今 回とは全く違う性格ですので、先ほど吉田昌哉委員がおっしゃいましたように、これは代理 受領なのです。つまり、代理受領ということは本来受取るのは利用者ということです。それ を代理して保育所が受取るということです。ですから、本来は利用者に払うべきところを煩 雑だから代理受領にするということですから、それは直接利用者に対して補助されていると いう性格の資金になるわけです。そうしますと、繰り返しですが、家計に入ったものから保 育料としてもらった場合に、補助金の性格がまったく変わってしまうということです。それ でよいのでしょうかということなのです。つまり、使途制限がなくなってよいのですかとい うことです。  以上です。 ○大日向委員長  岩村委員長代理、お願いいたします。 ○岩村委員長代理  今、幾つか質疑されていて、法律家の立場から、コメントさせていただきたいと思います。 まず、今日事務局のペーパーで出てきた新しい費用保障の仕組みということになると、従来 とは違って、保育の給付が個人給付ということになるのではないかというご指摘がありまし た。しかし、法的に言ったときには、現在でも個人給付です。ですから、個人給付というこ とは、今日の事務局のペーパーの案になると、今までと変わるということでは全くありませ ん。現在でも法制上は個人給付です。ただ、一つはどのように保育園との関係を構築するか という考え方が違うということと、それから、費用保障のあり方が今までのあり方と結果的 に同じということになるのか、あるいは少し変わるのかという、そこの問題だと思います。 ですから、市町村と保育園との関係が、今日のペーパーで出てきた案だと曖昧になるとは私 は全然思っていません。個人給付であるという関係からすれば、そこは従来と特に変わるも のではないだろうと思っています。  それから、今日の事務局のペーパーのような形であると、例えば保険というものであれば わかるけれどもというお話がありましたが、既に例としては今の政府は廃止すると言ってお りますけれども、既に例としては障害者自立支援がそういう仕組みでやっていて、保険だと いうことと、こういう仕組みにするということとが結びつくということでもありません。  それから、代理受領というお話がありましたけれども、これ自体が既に例えば介護保険で あるとか医療保険でも古くからやっていることであって、実態としては現物給付であるとい うことだと思います。ただ、それぞれの給付の性格など、いろいろなことがあるために一種、 法的なテクニックとして代理受領という形を採っているということであって、利用者の目か ら見たときに、では代理受領ということになったからといって何か、例えば、医療保険の被 保険者自身に対する現物給付というものと何か違うかというと、利用者の目からすると何も 変わりません。同じであります。  それから、資金の性格が変わるかどうかということですけれども、措置費ということであ れば、いろいろ今であれば制約等をかけるということはあるでしょうし、今回のような事務 局の案ですと、そこが変わってくることはあるかもしれませんが、そこは結局のところ、要 は今で言えば介護保険や公的医療保険などのように、事業の運営に対してどういう公的介入 をするかというところで担保するという話です。ですから、当然のことながら、例えばコム スンのような問題が起きた場合には、これは結局、事業運営基準違反ということで、ご承知 のようにコムスン自体は営業ができなくなって市場から撤退せざるを得なくなってしまう ということであって、要するに性格が変わるからどうこうということではなく、どのように 適正な事業運営に対しての規制をかけて、そして適正な保育というものがきちんと提供され るように法的に枠付けをするかという、そちらの問題であるとお考えいただいた方がよいだ ろうと思います。  それから、市町村と利用者との契約関係というお話もありましたが、これも確かに、これ をあまり言うと事務局には悪いのかもしれませんが、現行制度では市町村と利用者との関係 というのは契約だと説明しているのですが、実は法律家の目からすると、はっきり言って、 これは契約でも何でもないのです。措置と同じだというのが法律家の共通の理解だと言って よいと思います。ですから、問題は今は要するに利用者の申込みを受けて、市町村がどの保 育所に入るかということを決定し、そして「あなたはどの保育所に入るのですよ」という、 いわば保育のサービスの受給資格を認定して、それを書面でお渡ししているということなの です。事務局のこの案でどこが変わるかといえば、要する「あなたは保育のこういうニーズ があるので、従ってこれだけの保育を受けることができます」ということを認定して、それ を書面でお渡しするという話であって、どこの保育所に入るかということは、今まで行政が 割り振っていたのですけれども、そこは基本的に利用者の側で選んでくださいねという話だ と思います。  ですから、一見すると、非常に劇的に何か今までと180度世界が変わるというようなイ メージを持ちますけれども、細かく見ていくと、根本的にものすごく今と変わるということ では、必ずしもないと私は理解しております。ただ、一番大きな問題としてあるのは、一つ は給付の中身です。それをどのように設定するのか。それは今日事務局が説明されたように、 公定価格というのが、介護でも医療でもあるわけですが、それと同じように保育所の場合も 決めるので、公定価格の設定の仕方をどうするかということが結局、一番のポイントになる と私は思っております。もちろん、そこは現場が混乱しても困るとか、今までの例えば地域 で存在していた保育所が新しい制度に切り替わった途端にやっていけなくなり、なくなって しまうというようなことになると、それは大混乱になるので、そういうことが起きないよう に、やはり何らかの形で配慮しながら、ソフトランディングさせていくということを制度切 替期には当然考えなければいけないということになるのだろうと思っています。  それから、徴収の問題ですけれども、これもご懸念はよくわかるのですが、幅広い見地か ら見ると、社会保障の中でも医療保険それから介護さらに障害者自立支援、その他社会保障 以外に目を転じても、今お話のあった認定保育園であるとか、幼稚園であるとかその他諸々 というのは、措置の部分は除くと、基本的にはやはり実際に医療なり介護を提供した事業者 と利用者とが相対して、そこで提供した介護や医療に対する対価という形で、一部負担金と いう形ですけれども、お金のやり取りをしましょうと、それはどういう意味があるかという と、一つはサービス供給のコントロールという意味があるのですが、もう一つは、やはりあ る意味で、サービスを医療なり介護を提供する側も、お金をもらう以上はきちんとそれに見 合ったサービスをしましょうという、いわば動機付けという意味があり、他方で利用者側か らすれば、逆に言えば、お金を払うということに対して、どういう医療なり介護のサービス が受けられるかという、ある意味での権利意識的な、それを強めるという意味という両方が あって、ですから、私自身がよくわからないのは、なぜ保育だけが特別だとおっしゃるのか。 市町村がやれとおっしゃるのかというのが、現実の問題としていろいろあるということはわ かるのですが、なぜ保育だけが別なのかということが今までのお話を伺っていても、医療や 介護となぜ違って、保育だけが市町村がやれという話なのか。そこが私にはお話を伺ってい て、よく理解できなかったところであります。医療にしても介護にしても、制度としては、 あくまでも高齢者自身、あるいは患者自身のための制度であり、しかし、そこからは当然に は市町村なり、保険者なりが、全部を利用者負担分も徴収しろという論理は出てこないので す。そうだとすると、保育であっても、それは子どもの保育というようなものというのは、 それは子どものため、あるいは親のためのものであるということはわかるのですが、しかし、 そこからそれが市町村の責任であって徴収も市町村がやれという議論は、非常に論理が飛躍 しているのではないかと思います。 ○大日向委員長  木原委員、佐藤委員、高橋委員、それぞれ、お三方のご意見に対して、ただ今、岩村委員 長代理からお答えいただいたわけですので、いかがでしょうか。佐藤委員、どうぞ。 ○佐藤委員  私は法律の専門家ではないので、若干わからなかったのですが、まず現行制度の中でも、 保育に関する費用は個人給付に近いという話をされましたが、それでいながら、例えば平成 9年から児童福祉法の中では市町村と利用者の委託契約、利用契約制度がスタートしました が、現行では法律の目から見ると、これは措置制度と同じだとおっしゃったのですけれど、 もし現行の子どもたちの健やかな育ちをしていた保育の制度というものが、措置制度とほと んど変わらないで、保育費用が払われているとしたら、それが個人給付であるというのが私 にはまずわからなかったことが一つ。  それから、これを現行の法的には措置的なものとほとんど変わらないものを、もっと利用 者と保育所との個人契約制度に移行することが、例外ない保育保障につながるということが、 私には逆につながってこないのです。それが保育保障につながっていくのか、例えば、かつ ては行政処分としての措置に近いような制度であったものを、今度は当事者同士、岩村委員 長代理もおっしゃいましたけれど、例えば今度は市町村が認定証明書を出して、利用者と保 育所が直接契約をする。ここをきちんと担保するための縛りというのは、例えば市町村と保 育所との間にある一定の契約のようなものであったり、利用者と市町村との中に認定証明書 を例外ない保育保障をした、そこを縛っていくものがどこにあるのかが、私には逆に法律の 専門家ではないのでわからないので、そこをお聞きしたいのです。 ○大日向委員長  まとめて、ご意見をいただきましょうか。高橋委員も今、お手を挙げられていますので、 それから木原委員ですか。 ○高橋委員  私も同じく専門家ではないので、先ほどの佐藤委員と同じで、今は個人給付だと言われる と非常によくわからない。大多数の保育関係者はよくわからないと思いますが、私の解釈が 間違っていたとしたら、正していただければと思うのですが、先ほども申しましたように、 児童福祉法第24条で市町村は保育の実施責任があって、基本的には今の法律上は、公立が 保育を行うという解釈になっていると思いますが、そのことによって市町村が保育費を支弁 しているということ。単純に利用者への補助ではなくて、支弁している。費用を出している ということで、個人給付という四文字の概念が違うのかもしれませんが、もう少しわかりや すく教えていただけたら、ありがたいと思います。  以上です。 ○木原委員  私も質問です。大枠で大体岩村委員長代理がおっしゃったことはわかるような感じはする のです。ただ、資金の性格が全く変わってくるということはお認めになっていましたね。つ まり、今おっしゃったのは機関補助と言われている分で、施設に対する補助。それが個人を 一応単位にしながら給付されているという解釈で個人給付とおっしゃったのだと思います。 それで機関補助ですね。今回の原案は、つまり直接に利用者への補助。ですから資金の性格 は違ってくるのです。はっきり規制改革会議でずっと言い続けてきたのは機関補助はいけな い、利用者補助にせよとずっと言い続けてこられました。その中で私たちが問題だと思った のは先ほど申しましたように、最低基準が崩れてしまう危険性がものすごくあるということ です。つまり、使途制限がなくなってしまう。ものすごく極端に思われるかもしれませんが、 使途制限がなくなった場合に例えば今の最低基準通りにやります。しかし全員非正規でも最 低基準を守っているわけです。そこで剰余金が出てきた場合に、それに対して制限がかけら れなくなるのではないですか。それを営利事業にしても、そういうことがきちんとできるの であれば、これは一定の理解ができるわけですが、できなくなるのではないですか。それを どうするのですか。それは子どもの保育の現場に影響してくる話であると思いますので、そ このところを、お答えください。 ○大日向委員長  関連したことですか。飯塚委員。 ○飯塚委員  いや、個人給付の話を少ししたいのです。 ○香取審議官  今の点ですが、使途制限をするかどうかという問題と資金の性格の問題は、法律的にも別 の問題です。措置制度の場合には、これはいわば市町村が自ら行う行為を、法人に委託して やらせるということになるので、行為内容・費用負担を含めてすべて行政がコントロールす る。逆に言うと、お金が余ったら返せということ。つまり措置内容を実施するのに必要にし て十分なお金を支弁をするということになるので、そもそも使途制限という議論ではなくて、 そもそも剰余金が出ること自体がおかしいという論理になります。ですから使途制限という 議論があるのですが、仮に例えば介護保険のように報酬で支払う、医療保険を報酬で支払う、 運営費として支払うという形になると、それは機関補助であっても代理受領であっても基本 的には同じで、それに対してどういう運用上の規制をかけるかは、むしろ事業体なり法人に 対する規制の問題ということになります。ですから、剰余金が出た場合に、それは自由に使 ってよいという法律構成をもちろん取ることもできますし、あるいは区分経理をして当該事 業以外の部分にはしてはいけないということもできます。例えば医療保険は配当規制をして います。つまり、営利で医療を行ってはいけないという規制をしていますので、医療法人は 診療報酬で行われたものを、いわば法人の外に配当する、つまり別の事業に使うことはでき ないという構成をとっています。これはここではなくて保育第二専門委員会の議論になるの かもしれませんが、例えば営利法人が参入した場合に、営利法人の場合には、言ってみれば 自由に配当してもよい。あるいは自由にお金を使ってもよいということになるのですが、少 なくとも例えばこういった公的資金を入れて保育事業を行う場合に、普通の事業は営利法人 は自由にお金が使えるので当然使えるということになるかというと、別にそんなことはない わけで、いつぞやは4月1日に行ったら保育園がなくなっていたという事業があったように、 あれもよくよく見てみると、保育料として払ったものを、別の事業に使っていたわけですか ら、別途の公益。つまり園として事業が安定的に継続する。あるいは供給をきちんと行わな ければいけない。あるいはサービスを提供する義務があるという義務を、それこそ公法上の 契約に基づいて一定の地位を与えてサービスをやらせるわけですから、その限りにおいて、 それが維持できるための例えば使途制限なりあるいは区分経理なりの規制をかけるという ことはいくらでもできるので、それは払われたお金の性格、あるいは機関補助か代理受領か ということと、払われたお金についてその事業体について、どういう規制をかけるかという ことは、実は直接関係はない。社会福祉法人の場合には、そもそも利益が出ることはない。 担税力がないという前提になっているので、税金も一切払わなくてよいということになって いるわけで、逆に言えば社会福祉法人で剰余金が出るというのは本当から言えば論理矛盾な ので、むしろそこはそういう法人に対する規制の問題とお金に対する規制の問題と考えてい ただければよいので、社会福祉法人は法人自体にそういう規制がかかっているので問題にな りませんが、営利法人であれば、逆にそういう事業としてお金が来るのであれば、この制度 の中でプレイをする以上は、この制度のルールに従ってもらうということで、使途制限をか けるということはいくらでもできます。 ○木原委員  しつこく言いますが、社会福祉法人の場合は一定の社会福祉法人の設立理念等があります が、その他多様な主体の参入も保育はできています。その中で、例えば剰余金が出た場合に、 本部からも運営資金を借りてきた。ではこの保育園で挙がってきたものと、どこにどのよう にお金に色があるかわからないわけで、使途制限をかけられるというのはありがたい話で、 それは必要だ。つまり事業に対する使途制限は当然そうすべきだと思いますが、結構これは 大変な話だと思います。理論的に非常に難しいのではないかという気持ちがあって、例えば お金の違いは見えないわけですから、そこのところをクリアできればまた考え方があると思 うのですが。 ○大日向委員長  どうぞ。 ○岩村委員長代理  先ほどの佐藤委員のお話ですけれども、多分保育の実際にサービスを提供している例えば 保育所なり社会福祉法人の側から見ると、お金の来方が先ほど木原委員もおっしゃったよう に、機関補助という形のように来るので、従って個人給付というとらえ方が難しいと思いま す。ただ、法律の構成としてはあくまでも現行法でも「保育に欠ける」児童について保育を 行うということですから、従って保育の対象になっているのは児童個人あるいは親権者・保 護者であるわけで、従って性格としては個人給付なのです。ですから、例えば「保育に欠け る」という判断に対して不服がある。あるいは今でも例えば「あなたの場合はそもそもいろ いろな要件を満たさないので保育所に入れません」ということがあったときには、その保護 者なりは当然のことながら不服申立てができるのです。これは個人の給付だからできるとい うことですので、そういう意味では現行でも個人の給付であって、ただお金のつき方が保育 所などの目からご覧になると、多分個人とは見えないということであって、法律上の構成と してはあくまでも個人。ですから、費用負担も今でも個人に付いてくるわけです。個人にと いうのは保護者の費用負担の部分がありますから、従ってそれは当然個人に付いてくるとい うことになるわけで、そういう意味で完全に個人給付であると。法律構成としては個人給付 です。ただ、それが誰が行っているかで市町村が今行っているという話と個人給付がどうと いうこととは、また別の話です。  それからもう一つ、木原委員がおっしゃっていた点は非常に本質的なところで、つまり市 町村が認定書を与えて、「どうぞ選んでください」と言っても選べる所がなければ仕方がない のではないかというお話で、それは先ほど吉田昌哉委員がご指摘になった問題で、現にこの 問題というのは介護保険を当初出発させるときにまさに問題になったところであり、従って 仮に新しい枠組みを保育について議論することになれば、当然のことながらその前提として 保育所なりのサービスを提供する側の基盤整備と併せてやらないと、現実には大混乱になる 可能性が高い。ですから、そこは歯車の両輪として、一体のものとして議論しなければいけ ないということだと思っています。ですから、新しい枠組みを議論することと、当然のこと ながらどうやって基盤整備を進めていくのか。それは両者相まって結局最終的には財源をど うするのかという話でもあります。直近の例では、現在の障害者自立支援法が導入される前 の支援費の制度になったときに同じ問題が発生しているのです。つまり利用者・障害者の側 で決められた量の範囲内でどうぞ使ってくださいという仕組みにして、かつ費用負担も従来 通り応能負担という形を取ったところ、何が起きたかというと、要するにニーズが爆発した のです。ということが起きたわけで、保育の場合もこの仕組みに切り替える場合には、繰り 返しになるのでもう終わりにしますが、基盤整備と両輪でやらなくてはいけないということ です。佐藤委員の質問に直接的にお答えできているかどうかはわかりませんが、私自身はそ のように考えています。 ○大日向委員長  椋野委員、どうぞ。 ○椋野委員  法律的な議論は岩村委員長代理がご専門ですが、実態として今までどうなっていたかとい えば、入れる保育所がないと契約であろうとなかろうと業者は保育をやってくれないのです。 今回の仕組みはどこが違うかというと、入れる保育所があるかないかとは別に、必要かどう かを認定してくれる。利用する側からいうと、ここが一番違うのです。どうしても、入れる 保育所がないと、市町村はニーズ抑制的にはたらきます。ですから、先ほど岩村委員長代理 がおっしゃった支援費で爆発したというのは、そこを切り離したから潜在化していたサービ スが顕在化し、施設はそうはつくれないけれども、在宅のヘルパーサービスのようなものは サービスの供給量が増やせるので、それで爆発して財源が足りない状況になったのです。そ こを切り替えるということは、今抑えられている本当は必要なニーズをきちんと目に見える ようにする、ここがこの仕組みの一番違うところです。ですから、法律上は公的責任で皆に 保障すると書いてあるけれども、現に保障されていない待機児がたくさんいて、それはまだ まだ潜在化しているのです。ですから、こうやって、認定と、利用者と保育所との間でのサ ービスを、混乱しないようにその間で調整をするとかいろいろな問題はあるけれども 切り 離すことの意味はそこにあると思います。もちろん事業者としてご心配なこと、使途制限が 外れて、もしかしたら最低基準が守られない所が増えるのではないかとか、徴収せよと言わ れて取れないときに困るのではないかとか。誤解があればごめんなさい。心配しているかも しれないと思っただけです。もし、そういう心配があるのなら、それは何も現行の仕組みで なくても別途の事業者に対する規制などでできるので、実際に新しい仕組みになったときの 心配というのは何があって、それはどういうやり方でやるか。心配は、もう一つあるのです ね、定員別の単価が決められるのかどうか。定員別の単価で倍くらい違ってアンバランスと いうのならば、今でもアンバランスですし、それの必要性があるのであれば仕組みが変わろ うと必要性があるときちんと説明してそうすればよいので。仕組上はできるので必要性があ るのかどうかをきちんと説明できるかという議論です。ですから、ご心配なところはそうや って解決すればよいのであって。そもそも個人給付だというのが岩村委員長代理のご意見で すが、どこが違うかというと、保育所に委託するのかどうか。委託しなくなる、そこが法律 的には一番の違いでしょうし、委託しなくなったからといって、保育所と市町村の関係がな くなるわけではなくて、市町村には基盤整備責任もあるし、事業者として法人としての監督 ももちろんあるだろうし、施設としての監督ももちろんありますし、そこは別の形で当然関 係は続いていくし。繰り返しになりますが、要するにきちんとニーズを見えるようにして、 それを対応しなくてはいけないと市町村も思うようにする。今は認可ですから、認可基準を 満たしている所も認可していない所もたくさんあるのです。指定にしたらそういうことがで きなくなる。ここに待機児がいて、認可基準を満たしている保育所があって、でも認可外の ままで認可しないというのが今、法律的に認められているわけだから、それもきちんと基準 を満たしたら指定するようにしましょう。必要があったら入れる保育所があるかどうかとは 別に、きちんと必要だということを認定するようにしましょうと。それに尽きると思います。 ご心配であれば、それはいろいろな方策があるので、それはどうやればよいのかを考えてい けばよいのだと思います。 ○大日向委員長  吉田正幸委員、先ほどからお手を挙げていらして、ごめんなさい。 ○吉田正幸委員  最初に遅参しまして申し訳ございません。最初の流れを把握していないので、ずれたら申 し訳ないのですが。椋野委員と少し重なりますが、この法定代理受領がどうとか、公費の色 合いが違ってどうとかという以前に、そもそもなぜこの新しい保育のシステムを目指そうと しているのかが、現行制度では明らかに潜在ニーズに対して抑制的である。あるいはもっと 質も充実させないといけないのに、その肝心の質もなかなか上げられないということで、し っかりとした質を充実させながら量も拡大させようということで、一番の問題は今の市町村 の仕組みの中で「保育に欠ける」要件を判断すると同時に、入所先の決定も一体的に行うと いうことで抑制的になっている。そこは切り離そうということで。ただ、切り離してプライ ベートな世界にもっていくのではなくて、むしろ、より公的な保育システムにすべきだとい うことで、公的保育契約という概念でもってきたわけで、当然公的保育概念で利用者とサー ビス提供者が向き合う関係で公的保育契約を結べば、当然公費の流れというのは施設に出る 形にはならないわけです。当たり前のことですが。  公費の色合いが違うというのは、当然それは当たり前のようになるわけです。それは仕組 みとしてニーズを顕在化させて、質・量ともに充実させようというところにあるわけですか ら、いわゆるパッチワークのようにここはどう、ここはどうで恐らく答えは出ないのではな いのか。そもそも、この大きな保育の新しい保育のシステム全体を何のためにやっているの かのコンセンサスが私は必要だろうと思っています。  それから、この専門委員会に期待されているのは、いろいろご懸念があることは重々わか る。私もいろいろ心配をしていることはあります。それを、ではどうやったらその心配がな くなるのかをこの大きな新しい仕組みの方向性の中で知恵を出す。そのための具体的な制度 設計の議論をしようというのがそもそもの原点だと思っていますので、そこはもう一度確認 していただきたい。そして、さまざまなご懸念を、ではどうやったらクリアできるのか。あ るいはどういうセーフティネットを整備すればよいのかが一番の基本だと思っています。  これは全く個人的な思いつきの私見ですが、あまりに市町村の公的責任を強く打ち出すと、 今日のペーパーにもありましたが、地方分権の中で最低基準を大きく見直すことになると、 全部自治体でとなると、国のナショナルミニマムではなくて、自治体で最低基準をとなる。 これは私は困ると思っています。これは再三、国のナショナルミニマムとして公的責任を担 保するためにも最低基準は国も関与しなければいけないと思っていますので、そういう国全 体のパブリックな制度設計という前提の中で、それぞれの良い意味の公的責任をどう総合的 に担保するかの発想をすることが基本だと思います。  以上です。 ○大日向委員長  今、椋野委員と吉田正幸委員が、同じことをまとめてくださいました。お二人が言及され ましたが、本委員会での議論の前提はよろしいですね。この保育専門委員会が託されている ことの前提はご了解いただけるということでよろしいですね。その上で、さらにご意見をい ただければと思いますが、いかがでしょうか。高橋委員、木原委員の順ですか。 ○木原委員  前提は、理解しています。   ○高橋委員  前提は当然、理解できますし、申込と入所の決定が一体化されているから市町村が抑制し ているというのが皮膚感として私自身はよくわからないのですが、私どものところの自治体 がそうではないからよくわからないのかもしれませんが、それは置いておいたとしても、そ のニーズを顕在化させるために保育保障認定証を出して入所決定とは別にするのは、日本保 育協会もそういう意見を出していますし、そこは理解できます。問題はそこから先の1,800 弱の自治体が本当にそれで体制整備なりきちんと責任をもって、行政の方がいらっしゃるの で大変申し訳ないのですが、できるのかどうなのか。この財政が非常に危機的な自治体があ る中で、そこは本当に大丈夫なのかということと、どことは申しませんが自治体によっては 「今度は直接保育所に申し込むのだね。保育料も保育所で集めるようになると自治体の中の 部署は、保育料を徴収する担当者が何人か要らなくなるし、保育の業務がすごく楽になりま すね」というニュアンスを持たれている自治体の関係者も非常に多いのです。 ○大日向委員長  それは誤解ですから、きちんと正せばよいことで、ここで議論することとは違うと思いま す。 ○高橋委員  この制度改革の真意といいましょうか、そこの理解がなかなか。我々はこうやって出て話 をさせていただけるのは、わからないではないのですが、なかなか理解し切れていないとこ ろがあるのが、そこも非常に一方では不安。そのことを今言っても仕方がないのですが、そ ういうことです。 ○大日向委員長  第1次報告をまとめるときも、いろいろ誤解とか十分に議論の真意が伝わらなかったこと がありました。事務局には本当にご苦労いただきました。今の議論も誤解を招かないように、 今後もさらに努力は私たちもしていかなくてはと思います。各委員の方々におかれましては、 それぞれのところにお帰りになったら、どうか丹念にご説明をしていただければと思います。  お待たせいたしました。木原委員。その後に榊原委員、どうぞ。 ○木原委員  たびたびすみません。大日向委員長がおっしゃったようなことで総論について私たちは第 1次報告案については一定の評価をしていますし、私たちは全国の組織に対して説明に行っ たりしています。それを何も否定するわけではなくて、吉田正幸委員や椋野委員がおっしゃ ったことは基本的にはそのような方向で仕組みを変えていかなければいけないという気持 ちを持っています。ただ、その仕組みの中のいくつかの骨格の中で、これが一番大切だと言 われれば、これで全部仕組みが変わってしまうように言われれば困りますが、資金の性格が 変わってしまうような仕組みにしてしまってよいのかという、ものすごい不安があります。 それは先ほどから繰り返し言っていたことですので繰り返しませんが、ぜひこれを継続検討 にして今日、結論が出たということではなくて、ぜひもう一度していただきたいと思います。 ○大日向委員長  榊原委員、どうぞ。 ○榊原委員  私はここに保育園を利用する親の立場を代表して入っているわけでは全くないのですが、 子どもが5年間都内の公立保育園にお世話になり、保育園の父母会の会長・副会長もやり、 保育園の運営にかなりコミットし、それなりに保育に思い入れもあるので、今の議論をずっ と伺っていて、親の立場として利用者の立場としてこういう見方があるのではないかという ことを申し上げたいと思いました。私は子育てに大変不安がある中で保育園でプロの保育士 さんに出会い、いろいろな形でサポートしていただき、本当に日本の保育の専門家の方たち に対して、感謝と尊敬の気持ちを持っています。一方で、実は11年前に子どもが保育園に 入ったのですが、そのときも相当の倍率で私は恐らく正社員の中でも最も長時間労働をして いる部類だったはずなのに、それでも直前まで入れるかどうかわからなくて、自分が4月に 職場復帰できるかも直前までわからなくて、これまでなかったような精神的に不安定な状況 に陥るということも経験し、入園が決まった後も保育園の先生から「今、保育園に入るのは、 東大に入るより難しいのよね」と笑い話のように言われたことが、大分傷になって心に残り ました。半年前、1年前からまた待機児童が増えているという状況を取材していると、今保 育園を使いたいと思って当然のごとく利用を申請している人たちが、十何年前の私と同じよ うな思い、もしくはもっと大変な思いをしている状況を知り、大変深く傷ついています。保 育の前線におられるプロの方たちは、こうした状況が日本で十何年前からある意味放置され てきていることを肌身でご存じのはずで、こうした状況を一緒に改善していこうという動き に早く踏み出してほしいとずっと思っていたので、特別部会以来、今回のような改革の議論 が進んでいることを大変嬉しく思っています。  私も保育に大変お世話になった者として、日本の保育の事業者の人たちが不安になるよう な改革は絶対にやってはいけない、分権の方で議論が出ているような最低基準を市町村に任 せてしまえばよいのではないかという議論は違うであろうと思っています。ただ、今日行わ れている議論を耳にすると、一つ置き去りにされているのが、これまで利用者の権利、保育 を使いたいと思っている人たちの権利が、大変ないがしろにされてきたという点をどう救済 していくのかという視点が、事業者の方たちにも、もう少しあってほしいという気がしまし た。東大に入るより難しいような保育園の入所というものがあってよいのかというのが問題 だと思いますが、「保育難民」といえるような人たちを普通に一般用語として社会に流通さ せているような状況をどう改善していくのか。そのために知恵を出し合っているのがこの場 であると、先ほどから何人かの方からご指摘いただいているように、私もそう思っています。  そうした中で事業者として、これでは保育の質を守っていけないというような議論を私た ちは真剣に丁寧に行わなければいけないと思いますが、実は個人給付をめぐる話であるとか、 市町村がどのようにかかわるべきかという議論を伺っていて、親の立場に立って今の話を伺 ってみると、事業者としてご心配されているのは、ひょっとして利用者と直接に向き合うの はちょっと困るということなのかと聞こえること。または市町村が間に入ってくれないと困 るということなのかという気がして、問題の私たちが大きな保育制度の恐らくビッグバンと いえるような大きな改革に進もうと思っているときに、本当に議論すべきこと、とどまって 慎重に検討すべきことはそこではないのではないかという気がしています。日本の保育はこ れだけの質をずっと保ってきた。そのプライドと自信をもって。けれども、これを必要とす る人全員に届けられるような大きな制度改革にどうやって進んでいけばよいのかというと ころでこそ、智恵を出してもらいたいという気がします。確かに、かつてなかったような大 きな制度改革に不安を持たれるのは、事業運営に責任をもってこられた方たちには当然だと 思いますが、考えてみたら戦後直後にできた制度がこれだけ経済環境・社会環境が変わった のに、ほとんど変わってなかったことの方が実は異様なのではないのか。遅れた改革をどう やってより良い形で取り戻していくのかという姿勢の議論ができたら嬉しいと思います。そ の際に必要なのは、先ほど椋野委員もおっしゃいましたが、客観的に明らかにされたニーズ に対して基盤整備をしなければいけないと市町村が義務を負ったときに、そういった責任が きちんと果たせるような財政的な裏付けであるとか、さまざまな保障をどう社会から取り付 けていくのか。そういったことをきちんと求めていくところにこそ、力を相当割いていかな ければ改革が進んでいかないと今、今日議論をしているようなところは、かなり乗り越えて いける部分なのではないかと思って聞きました。 ○大日向委員長  ありがとうございました。佐久間委員、どうぞ。 ○佐久間委員  民間事業者として私たちも保育園の運営をしていますが、コムスンの問題などが先ほどか ら取り上げられていて、企業は営利目的という点がご指摘をうけがちでありますが、利益を あげることにより事業を継続できるということは企業としては必然です。保育事業を行なっ ていく上で、子どもの最善の利益というところは守るべきであると思いますし、そこに対し ての指導監査であったり評価であったりということは、きちんとされるべきだと思います。 先ほどから出ているように今、たくさんの待機児童がいて、少しでも多くの保育園をつくっ ていきたいというときに、今の制度では、民間企業としてやりたくても難しいというところ もたくさんあります。今回の制度を改定することによって、本当に思いをもって、もっと事 業としてやっていきたいと思っていらっしゃる事業者もいるのではないかと思いますし、そ ういう人たちの力を合わせて、もっとたくさんの質の高い保育所ができていくような制度改 革になっていけばよいと思っています。第1次報告案で、公的保育契約ということで、利用 者と保育所が契約を結ぶことが考え方としては出されておりますので、私としては代理受領 などというのは、煩雑な部分を除いて、非常に考えられた仕組みではないかと思っておりま すし、先ほどから出ているように、どの事業者がやってもその質をどうやって保って行ける のかというところに対しては、なんらかの方法を考えていく必要があると思いますけれど、 量を拡大・質の維持ということを考えていくと、今の仕組みを変えていかざるを得ないので はないかと思っています。 ○大日向委員長  市原委員、お願いいたします。 ○市原委員  自治体の立場で申し上げますと、今日の皆さまの議論につきましては基礎自治体・市町村 の活動もしくは動きに対して非常にご不安な点、ご懸念されている点をいろいろいただくこ とができまして、私自身は非常に参考にさせていただけました。ありがとうございます。そ して4ページですが、市町村が公的責任の部分に記載されておりますけれど、三鷹市で保育 行政・子育て支援行政にかかわっている立場としましては、やはり公的責任の部分の最後の 丸に書いてありますが、最低基準については皆さまのご意見、統一基準があるということで の市町村の動きというものは、非常に我々、市としまても、安心して保育の質を確保するた めの、物理的な条件になっているという認識は強く持っているところでございます。そして その後の、「行政による指導監督・情報公開等により質の確保されたサービスの保障」と書 かれている部分につきましては、あえて申し上げますと、この部分につきましては、市町村 の責務として、運営形態が公立にしろ民間にしろ、また公設民営等にしましても、保育の質 を確保するための、より具体的なルールや質を確保するための具体的な検証方法など、そう いったものを文言として明確に謳い込んでいただいた方が基礎自治体としては非常に責務 として感じる強い動機付けになると思います。  それから、公的保育契約の部分について、就労形態の多様化ですとか、潜在的な保育ニー ズをいかに保育サービスに結びつけるかということについて、自治体としては苦慮、努力し ているところではございますけれども、やはり現在の都市部を中心にした需要と供給のバラ ンスをいかに改善していくかという部分につきましては、今日何人かの委員にお言葉をいた だきましたけれども、やはりその改善に向けた包括的な制度設計、また財政的基盤の安定に 向けた仕組みなどを、今回の新たな保育サービスの制度を考える上での、一つの議論のテー マにし続けていただければ、ということを思いました。  そして前段で、利用者の保育料の納付の部分の議論があったのですけれども、保育所の徴 収という形態を想定している中で、議論の中には具体的に出なかったのですが、滞納への対 応という部分につきまして、現状でこの滞納の処理、また滞納者への対応というものについ ては市町村は非常に苦労している部分がありまして、滞納額もしくは滞納者へのアプローチ の方法というのは、非常に複雑かつデリケートな部分がございますので、これにつきまして は、十分市町村のかかわり方というものを整理して、また具体的に保育所と連携して保育料 の徴収、確保のフレームというものを考えていただければと思います。  以上です。 ○大日向委員長  そろそろ時間も残り少なくなってまいりましたので、利用者負担の方にもご意見をいただ きながら進めていきたいと思います。  それでは、柏女委員、お願いいたします。 ○柏女委員  ありがとうございます。この問題を議論するときに、保育所保育指針の改定に携わってき た立場の者としては、やはり保育所というのは教育を行うところなのだと。つまり、養護と 教育が一体的に行われるところなのだというところを、忘れてはならないと思っています。 それが市町村から個人に対して給付される仕組みになったときに、教育の部分がどの程度保 障されるのか。例えば、引っ込み思案な子どもについては何度も丁寧にはたらきかけていか なければいけないし、乱暴な子どもに対しては、それなりの対応が必要になります。それか ら個別への配慮としては、例えばアトピーの問題とかネグレクトの問題、あるいは保護者の 育児不安がある場合に、連絡帳をしっかり書いていったり、そういう時間がどうやって保障 されるのだろうか。前回の議論で言えば、保育時間の補償自体を時間だけで保障するという ことになっているので、保育単価のつくり方によるのでしょうが、保育単価をつくっていく ときに、本当にそうしたことが配慮されるのだろうかという思いが、不安としてはあるので す。従って、もしも個人に対して給付するという仕組みだけでいくとするならば、そうした 点を保育単価設定のときにかなり配慮していくことがとても大事ではないかと思います。こ れが1点です。  もう1点は、私は素人なのでしっかりと意見を論理的に申し上げることはできないのです が、幼稚園で考えますと幼稚園は就園奨励費という個人に対して給付されるものと、私学助 成とこれは事業主に対して直接給付されるものですが、その二本立てになっているわけで、 その二本立て部分の保育でも例えば今言ったようなことに対する、いわばソーシャルワーク 費用といいますか、教育費用といいますか、そのような部分を個人に対する補助以外に事業 主に対する一定量の補助として出すことはできないのだろうかということを少し感じてい ます。  それから、3点目は保育単価設定にかかわるのですが、もしも保育時間等を中心にやって いくとすると、保育者の経験やスキル、そうしたものをどう評価していくのかということが あるのではないかと思います。そういう意味では、保育単価設定のときに今回の目的の中に 保育士の処遇改善あるいは保育の質の向上といったことが挙がっていることを考えれば、保 育単価設定のときに平均的な保育士の勤務年数を基準にするのではなく、それに例えば3 年・5年を上げた上でやるというような合理的な根拠を考えなければならないと思いますが、 そうしたことも併せて考えていかなければならないし、それが難しいならば、そういう部分 を例えば研修費用などを保育単価に反映させるのではなく、事業主に対して補助していく財 政の中に、それを含めていくといったようなことは考えられないのだろうかということは少 し思っています。これは意見として。 ○大日向委員長  朝川少子化対策企画室長、お手を挙げられましたか。 ○朝川少子化対策企画室長  今の柏女委員が例示として言われましたが、私学助成と就園奨励費を例に挙げて私学助成 のような機関補助と言われたことに関連して、まさに今日ご議論されていた、今の制度も個 人給付であるというところと関係するのですが、個人給付だからこそ保障がしっかりしてい る。子どもに対しても、結果として保育所に対してもということなのです。私学助成のよう な機関補助を入れてしまうと、それは個人保障ではなくなるので、そこは弱まるという要素 があるということは十分前提においてご議論いただいた方が良いと思います。 ○大日向委員長  ただ今の点、よろしいでしょうか。それでは佐藤委員、お願いします。 ○佐藤委員  私も保育者でしたので、先ほど榊原委員がおっしゃっていました、例えば保護者の思い、 それから例えば子どもたちが急に熱が出たときに、保護者に迎えに来てもらった後の保育保 障というものが、なかなかできない現行の保育体制というのは、とても心が痛むものがあっ て、ましてや待機児童がいる都市部であれば、そこのところにきちんと保育を受けることが できない子どもたちに提供していけるような体制がとれればよいというのは、当然のごとく 思います。そして何よりも保護者の方たちと24時間協働しながら、子どもの健やかな育ち を保障していくのが保育という営みだと思っているのです。そういう意味では、今回の利用 者負担の中にある、第1次報告でもあるのですが、公定価格というのでしょうか、何をした らこの分のお金が付くのだというようなネーミングが、どうも胸にストンと落ちないのです。 単純にこのサービスを出したら、いくら。例えば100円とか200円が付くようなものが保 育なのだろうかというと、私は保育を実際にしている立場からいくと、サービス提供は確か にしているのです。でも、それは価格というような保育サービスに対する費用だとは思って いますが、価格というようなものではないのではないかと思っております。  それから、もう一つは費用負担のあり方の中の13ページ、これは第1次報告の中では多 様なサービスメニューに応じてとか、「付加的サービス」と書いていたと思いますが、その 付加的なサービスとは何なのかということを、どこかで定義した段階があるのかどうか。例 えば多様なサービスメニューに応じた利用者負担のあり方というのは、保育の基礎的な部分 がどこで、その多様な保育サービスのどこでというようなことが十分に議論されているのか どうかが少しわからないところがありまして、この辺に何が付加的サービスなのかの整理を していただければと思っています。  それから、先ほどの論議の中でもそうですけれど、当事者同士の公的な契約というのが一 方、利用者・当事者は子どもでもあるわけです。子どもの代理人である保護者であるかもし れませんが、子どもの利益にならないようなことを保護者が選択することがないような仕組 みというのでしょうか。これは前回の委員会でも言ったのですが、横浜は4月の段階で 1,290人の待機児童がいながら、実はその段階で1,503人の定員割れが起きていた。そうす ると、例えば、もしそのような所でその定員枠を利用しながら子どもたちが保育の利用を受 けられたとしたら、もしかすると、子どもたちの健やかな生活の保障はされていたかもしれ ない。そうすると、先ほどから出ていた指定制をどう有効にしていくのかという仕組みもも う少し、一歩も二歩も進んで話をしていただかないといけないのではないかと思っています。 ○大日向委員長  朝川少子化対策企画室長、お願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  佐藤委員の2点目について、13、14ページ目で多様なサービスメニューという言葉が出 てくることについて、私の説明不足で誤解を呼んでいますので申し上げますと、第1次報告 で「付加的サービス」と申し上げているものと、これは別物で、あちらで付加的サービスと 言っているのは、例えば保育所で通常保育を行いながら、何かプラスをしてやっているもの があって、それに対して利用料を取るか取らないかという意味の議論を今後する必要があり ます。取るべきか、取らないべきかも含めて、ということを書いてあって、ここで言ってい るのは、そうではなくて、例えば早朝・夜間あるいは短時間利用や事業所内保育所という、 まさにメニューが多様化されている、そこの部分のことを言っています。付加的サービスと は少し別の議論をしています。 ○大日向委員長  高橋委員、お願いいたします。 ○高橋委員  利用者負担のあり方で、一言だけ意見があります。14ページの(2)の二つ目の丸のところ でございますが、基本的に私どもは、短時間という区分はなるべく設けずに、現行の一時保 育であるとか特定の枠を拡充させていくことでよろしいのではないかという意見でござい ます。ここのところの丸の二つ目は、3歳未満児の短時間区分に分けることで、管理費や人 件費の一部など「長時間」「短時間」の区分を問わず共通して必要な費用が見込まれること から、云々とありますが、これも参考までにということで、実は管理費や人権費の一部と申 しましても、私どもが今日お渡ししているペーパーの最後の2枚は私どもの保育園の数字で ございますが、ご覧のように、ほとんどが人件費でございまして、なかなか短時間だから半 分とか、3分の2というようなわけにはいかないのではないかということだけを申し上げさ せていただければと思います。  以上です ○大日向委員長  川崎委員、お願いいたします。 ○川崎委員  利用者の負担のあり方というところで、一つ検討をお願いしたいのですが、利用者負担と いうか保育のサービスの価格の設定と反対側から見れば読み替えられると思いますが、基本 的な部分として、標準的な利用保障つまり量で見ることに関しては公定価格で決めていきま しょうと。それ以外の多様なサービスメニューに関しては、必要な費用見合いを踏まえて、 というようなことが議論として出されていたかと思いますが、先ほど朝川少子化対策企画室 長からも第1次報告のときに付加サービスというものがあるでしょうと。通常保育プラスア ルファという発言がありましたが、今後ある程度保育の量が確保されていった次には、やは り通常保育の質をどのように上げていくのかといったようなところが近い将来、検討されて いくのであろうと予想されます。つまり、通常保育のところに関しても、一般の公定価格と いうことにとどまらず、充実した分については応分の価格の設定というか、ニーズに見合っ た費用負担、料金の設定という可能性があるような利用負担のあり方、保育料の設定の考え 方ということを、ぜひ残しておいてほしいと思います。 ○大日向委員長  木原委員、お願いいたします。 ○木原委員  今と同じ14ページですが、この二つ目の丸です。ちょうど私たちが考えているようなこ とを生かしていただいていると思っていて、例えば共通の部分をベースにして単価設定する、 時間数に比例ではなく設定するということ。つまり利用者の時間でやるのではなく、受け皿 の方を配慮しながら、していただいているように思います。ぜひ、こういう形で引き続き設 定を検討してほしいと思います。 ○大日向委員長 椋野委員、お願いいたします。 ○椋野委員  今の議論ですが、これは別に事業者に対する報酬の付け方ではなくて、保育を利用する方 からどのようにいただくかということなので、利用していない時間までいただくかどうか、 私はやはりそこは利用した時間にすべきであると思います。別途、保育所の運営がうまくい くかというのは、保育所に対する支払いのあり方、付け方、単価の設定の仕方で議論すべき だろうと思っています。  それで、13ページのところに「実利用料ではなく必要量に応じた月額単価設定」とある のですが、十分な量が確保されれば必要量イコール実利用量になるのでしょうが、確保され ない間であれば必要量ではなく実利用量で当然、利用する人は払うべきだと思いますし、仮 にこれが必要量というものが、前回議論した上限量というような話であれば、週3日なので すが一応6日保障しますよということであれば、3日しか利用しないのであれば3日分でよ いでしょうと、そのように私は思います。そのときに、3日のときに少し割高にするかとか、 設定の仕方はあるかもしれませんが、6日分利用していないのに払うことはないのではない か。  それから、これは前回言ったことですが、標準的な利用保障の範囲を超えて保育サービス を利用する場合、つまり残業のところをどうするかというところは、まだ働き方の見直しが 途上である現在では、必要なところは利用者負担を標準的なところよりも上げるというので はなく、きちんと残業のときも保育サービスが利用できるような利用者負担の設定の仕方に していただきたい。 ○大日向委員長  飯塚委員、お願いいたします。 ○飯塚委員  利用者負担のあり方について、13ページの丸の大きな上の丸ポツの3番目です。「利用者 負担のあり方については、取得に対する十分な配慮基本にしつつ、今後、具体的なあり方を 検討する」というところで、少し若干申し上げたいと思っていますのは、先ほど市原委員か らもお話がございましたとおり、滞納との関係がいろいろと出てくると思います。現状です と国の方で、保育所徴収金基準額表というものがございまして、これを基準に各市町村が保 育料を独自で設定をしている形になっていると思います。  私どももご多聞にもれず、これで7階層という形で決定させていただいております。若干、 国の基準より安く設定をしているところですが、細かく分析しきれてはないのですが、いろ いろと過去のデータ等を見ますと第2・第3階層と第4階層というところがございまして、 第3階層というのが市町村民税非課税世帯というところで、国の基準というと19,500円3 歳未満児です。3歳以上児ですと16,500円、第4階層は所得税額が4万円未満。これです と、3歳未満児で3万円、3歳以上児ですと2万7,000円という設定になっているのですが、 ここの滞納者が非常に多いような印象を受けています。悪質な滞納者も当然、中にはいるの ですが、この辺の、いわゆる低所得者といいますか、ワーキングプアとまで申してよいのか、 よくわかりませんが、この辺の配慮が多少必要なのかなと。この辺の設定がうまくいけば、 かなり滞納も改善の方向にいくような気がしています。ここはこの2階層が私の町だけの話 で、他の町はまた他の事情があるかもしれませんが、ここが非常に多いというのが気になっ ておりまして、ここをうまく改善していければよいと思っているところです。 ○大日向委員長  佐久間委員、お願いいたします。 ○佐久間委員  私も滞納者については非常に気になっているところで、各保育所が徴収をしていくという ことはもちろんよいのですが、滞納が続いていたときに、そこに対してどう対応していける のかというところが非常に気になります。  今も多分、自治体の皆さまは非常にご苦労されているはずで、先ほど強制徴収ができると いう話が朝川少子化対策企画室長からありましたが、強制徴収というのはどのような内容な のか、教えていただけますか。 ○朝川少子化対策企画室長  要するに市町村は市町村民税などを徴収しています。これはどういった場合に滞納処分す るかというのは、最終的には個々のケースに応じた判断なので、市町村によって取扱いが違 うのではないかと思いますが、最後は税と同じように強制徴収ができるという根拠があると いうことで、実際にどこまで活用しているかというのは、ばらばらだと思います。 ○佐久間委員  事業者が徴収していくときに、どのようにできていくのかというところが、先ほど市原委 員が言われたように、事業者と自治体の連携のようなところも非常に必要になってくると思 います。今、世間では「子ども手当」のことが注目をあびています。「子ども手当」は直接 保護者に渡されていく手当ですが、保育料などに対して使っていけるようになるとよいと思 います。これは個人的な意見ですし、法的にも問題はあるのかもしれませんが、本当に必要 なところにお金がいくようになればよいと個人的には思っているところです。 ○大日向委員長  吉田正幸委員が手をあげておられますね。その辺りで、今日はそろそろ時間が尽きますで しょうか。  それでは、吉田正幸委員からお願いいたします。 ○吉田正幸委員  実利用量、必要量というのが、これは事務局がどこまで細かく明示されているのか、よく わからないのですが、今、椋野委員がおっしゃったことだけではなくて、例えば風邪で休み ましたとか、あるいは新型インフルエンザで4日間閉園しましたといっても、職員体制は取 っておかなければいけないわけですから、その間、実利用がないから、その分コストが掛か っていないから差し引くという話には、そもそもならないだろうと思います。そこはもう少 し丁寧に保育単価設定で十分配慮する必要があるだろうということと、今現在の運営費にお いても細かいことは知りませんが、少しずつ登園してきてピークの時間に全員がそろって、 また公園で少しずつ減っていくのですが、それを計算上は例えば0.2人とか、0.4人になっ て組まれているのですが、今の3対1、6対1、20対1、30対1の職員配置を前提にして、 その計算をやると実際の保育現場ではとてもそれでは回らないということがございまして、 やはり保育の質を落とさないためには、まず、その辺の算出の仕方も、将来的に考えていか なければいけないと思いますが、この実利用量・必要量の問題を、もう少し丁寧に実際に現 場できちんと質を落とさない保育ができる職員体制を、単に保育士の職員配置だけではなく、 この単価設定の部分でも十分配慮をしないと、量と質のという部分が言っていることと、や っていることが違うことになりかねないので、その点だけはぜひ要望しておきたいと思いま す。 ○大日向委員長  それでは、予定の時刻も残り少なくなってまいりました。最後に、委員長として率直な感 想と、皆さまにぜひ、お願いしておきたいことがございます。  私は本日の議論を伺いながら、どうしても焦燥感を禁じ得なかったのです。このような議 論をいつまでしていけばよいのだろうかということです。それともう一つ、少子化対策特別 部会もそうですし、保育専門委員会もそうですが、決して保育事業者の方々とVS構造で議 論をする場ではないと私は昨年度からずっと考えております。むしろ、日本の保育を守る、 子どもを守るという点、で心を一つにしなくてはならないのではないだろうかと思います。  少子化対策特別部会も発足当時からそうでしたが、一方で規制緩和の流れ、さらには地方 分権の流れを見ながら議論を進めてきました。それが、ここのところ地方分権から設置基準 を外せという、第三次勧告が出されています。その点に関しては、委員の皆さまは等しく大 変な危機感をお持ちだと思います。  ただ、どうして地方分権がそのようなことを言ってくるかというと、やはりニーズに供給 の実態が合っていないということなのです。今、私たちが議論しているのは、椋野委員も吉 田正幸委員も榊原委員も言ってくださいましたが、現在の子どもを預けている親のニーズに 応えることだけではありません。水面下にたくさん、何倍もいらっしゃる潜在化されてしま っている、利用したくても利用できない親のニーズをどれだけ顕在化して、しかしそこに、 質をきちんと担保した保育の量を増やそうということだと思います。そのためには、財源を どう確保していくかという議論に全員が心を一にして議論をしていかないと、私は間に合わ ない思います。実際に運営するうえでいろいろご懸念はあろうかと思いますが、椋野委員も 先ほど言われたように、具体的にどうすればという建設的な意見を、どうぞ出していただき たいと思います。先ほど木原委員が「今日のこの議論はここで終わりにしないで継続審議に してほしい」と言われました。恐らくそれぞれお帰りになって、関係者の方々と検討してく ださるのだと思います。どうぞ、今申し上げたように前向きに。何とかして今これを積極的 に一つの形にしなくてはいけない。そういう思いで、次回までに、ご意見をまとめてきてい ただきたいと思います。  私はあえて申しますが、この委員会も特別部会も保育を守るためにやっています。保育 事業者を守るためではありません。しかし、保育を守るということで、心を一つにして議論 をしていけば、それが結果的に保育事業者の方々が安心して保育ができる。子どもたちのた めに今までのように、いえそれ以上に、お力を発揮していただける、そのような制度改革を 進めていきたいと願っております。  それでは、ちょうど時間が尽きましたので、次回以降の日程等について、事務局からお願 いいたします。 ○今里保育課長  本日は、誠にありがとうございました。次回の日程につきましては、11月6日金曜日16 時から、場所は、厚生労働省の専用第21会議室を予定しております。お忙しいところ、恐 縮でございますが、ご出席くださいますよう、よろしくお願いいたします。 ○大日向委員長  それでは、本日の委員会はこれまでといたします。長時間どうもありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課企画法令係