09/10/16 平成21年10月16日薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録 薬事・食品衛生審議会 医療機器・体外診断薬部会 議事録 1.日時及び場所    平成21年10月16日(金) 10:00〜    厚生労働省専用第21会議室 2.出席委員(11名)  五十音順   ○荒 井 保 明、 荒 川 義 弘、 飯 沼 雅 朗、 石 井 明 子、    小 田   豊、◎笠 貫   宏、 倉 根 一 郎、 正 田 良 介、    勝 呂   徹、 寺 崎 浩 子、 松 岡 厚 子  (注) ◎部会長 ○部会長代理    他参考人2名   欠席委員(6名)五十音順    天 笠 光 雄、 石 山 陽 事、 川 上 正 舒、 北 村 惣一郎、    塩 川 芳 昭、 武 谷 雄 二、 3.行政機関出席者    岸 田 修 一(大臣官房審議官)、    関 野 秀 人(医療機器審査管理室長)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、    重 藤 和 弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、他 4.備考    この会議は、個別案件は企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催され、   個別案件以外は公開で開催された。 ○医療機器審査管理室長 それでは、本日出席予定の先生方がお揃いですので、これより、 医療機器・体外診断薬部会を始めさせていただきます。先生方におかれましては、御多忙 な中、本日も御出席いただきましてありがとうございます。  まず、委員の出欠状況ですが、天笠委員、石山委員、川上委員、北村委員、塩川委員、 武谷委員、6名の委員が欠席という連絡をいただいています。全体で17名の委員構成で、 11名の先生方が御出席ですので、本日の部会は、薬事・食品衛生審議会令に基づき、定 足数に達していることを御報告させていただきます。  なお本日、御覧のとおり、審議会規則に沿えば原則公開ということで部会を行っており ます。お手元の議事次第を見ながら説明させていただきますが、公開案件ということで、 議題1「医療機器の認証基準案について」は、原則に従って公開ということで行います。 その後、希少疾病用医療機器の関係、医療機器の審議に関する部分に関しましては、非公 開で行います。  それでは、以後の進行を部会長にお願いしたいと思います。  冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきます。以後は傍聴ということで御了解く ださい。  部会長、お願いいたします。 ○笠貫部会長 まず最初に、資料の確認をお願いしたいと思います。 ○事務局 資料の確認をします。公開案件の資料としては三つあります。資料1-1、参考 資料1-1、参考資料1-2です。恐縮ですが、資料1-1については一部訂正がありまして、 本日、机の上に差替えを準備しています。資料1-1が「医療機器の認証基準案について」 でして、本日、そちらに対して差替えの方をお配りしています。お手元に資料がない先生 がいらっしゃいましたら、事務局までお知らせくださるようお願いします。 ○笠貫部会長 資料の方はお揃いでしょうか。それでは、議題に入りたいと思います。  議題1は「医療機器の認証基準案について」です。これも事務局に御報告をお願いしま す。 ○事務局 「医療機器の認証基準案について」簡単に御説明申し上げます。医療機器の認 証基準の基本的考え方につきましては、参考資料1-1として配付しているとおりです。  改正薬事法において、人体へのリスクが比較的低いと考えられる管理医療機器について、 平成17年から第三者認証制度を導入し、そちらの基準として認証基準が定められまして、 それに適合する医療機器については、登録認証機関の認証を受けなければならないとされ ています。本日はその基準についての御報告でございます。  本日、御報告申し上げる基準案は14基準でして、1件の新規と13件の改正案となって います。基準案の調査を行いました独立行政法人医薬品医療機器総合機構より、詳細につ いて御説明申し上げます。 ○機構 それでは、医薬品医療機器総合機構から、医療機器の認証基準案につきまして、 差替え後の資料1-1に基づいて御説明いたします。差替え済みの資料1-1の表紙及び画面 を御覧ください。今回、先生方に御報告する認証基準案は、1の新規に作成した認証基準 案が1件、2〜14の基準改正を行うものが13件となっています。また、資料の構成につ きましては、該当する医療機器の一般的名称と使用目的、効能・効果は、この効果を規定 した告示の他、別ページに「基本要件適合性チェックリスト」を掲載しています。具体的 には、1番の「核医学装置ワークステーション等」認証基準につきましては、資料1-1の 1ページに告示案、18〜24ページに「基本要件適合性チェックリスト」が掲載されてい ます。他の基準も同じような構成となっています。一番右側がページナンバー、そのよう な構成になっています。今回御報告する、新規に作成する認証基準案1件と、基準の改正 を行うもの13件は、平成21年6月12日に総合機構にて開催されました、医療機器認証 基準等審議委員会で審議された内容を反映し、承認されたものでございます。  それではまず、新規に作成された「1.核医学装置ワークステーション等」認証基準か ら御説明いたします。差替え後の資料1-1の1ページを御覧ください。核医学装置ワーク ステーション等とは、ガンマカメラ、CT、MRIなどの画像診断装置をネットワーク接 続し、画像診断装置より得られた画像や情報を処理し、診断のために提供する装置のこと です。具体的な外観としましては、3ページに示すような、パソコン等の情報処理装置を 医療機器として使用したものです。また、「等」という言葉がついていますが、「等」は 1ページ目の一般的名称の欄にもあるとおり、核医学装置ワークステーションの他、MR 装置ワークステーション、X線画像診断装置ワークステーションなども総称しています。 これらの認証基準案としまして、1ページ目の日本工業規格の欄にもあるとおり、情報機 器の安全性の要求事項を規定した、日本工業規格C6950-1、及び、組み合わせて使用する 際の医療電気システムの安全要求事項を規定した、日本工業規格T0601-1-1を技術基準 として引用することとしました。また、対象となる医療機器と一般的名称の定義について は1、2ページの記載のとおりとすることを考えています。さらに、今回の医学装置ワー クステーションについては、新たに認証基準案を作成するものですので、18〜24ページ にこれらの「基本要件適合性チェックリスト」を掲載しています。  次に、表紙及び裏面の2.〜14.の認証基準の改正を行うもの、13基準について御説明 いたします。これらにつきましてはそれぞれ、2.及び3.が「現行の認証基準に何らかの 追加を行うもの」、4.〜8.が「基準として引用する日本工業規格を変更するもの」、9. 〜14.が「基準として引用する日本工業規格の内容に変更があったもの」となっています ので、順番に説明します。  まず、2.及び3.の「現行の認証基準に何らかの追加を行うもの」から御説明いたしま す。4ページを御覧ください。この歯科用ユニット等とは、ハンドピースを駆動するため の圧縮空気や電気の制御器具など、歯科診療用機器を駆動する器具類を備えた、歯科治療 に用いるユニットのことです。今回の改正は、4ページの医療機器の名称、下線部にもあ るように、対象として、可搬式歯科用ユニットを追加するものです。5ページに、歯科用 ユニットと可搬式歯科用ユニットの外観を示しています。歯科用ユニットは歯科処置操作 に必要な器具類を備えたユニットであり、可搬式歯科用ユニットは、患者さんの所へ赴き、 歯科治療を行うため、歯科処理操作に必要な器具類を備えた可搬式のユニットです。これ らの認証基準案としては、現行の歯科用ユニット、一般的要求事項、及び試験方法である 日本工業規格T5701と変更はありませんが、25ページの基本要件適合性チェックリスト 第6条の特定文書に日本工業規格T0601-1の、機械的強度の項目、携帯型機器及び移動 型機器の項目を性能要求項目として追加するものです。具体的には、第6条の項目に21 ・C)、21.6が追加されています。また、可搬式歯科用ユニットを追加した結果、対象 となる医療機器と一般的名称の定義は4ページの記載のとおりとなります。  次に、6ページを御覧ください。下段の図のように、歯科用エアスケーラにつきまして は、先の尖ったエアスケーラを圧縮空気で振動させ、歯石や歯垢等の除去を行うものです。 本基準にて運用していたところ、歯科用エアスケーラ認証基準では、既に承認された医療 機器と一般的名称の定義に、根管拡大、歯の形成、切削・研削、歯周組織等の洗浄などの 記述がない、という差異があることが分かりました。既に承認された医療機器との整合性 をとるため、6ページの、基準中の使用目的、効能又は効果の欄について、下線部のよう な、現状に即した改正を行うものであります。これにともない、6ページ中段以降にある、 一般的名称の定義についても下線部のような変更を行うものです。技術基準については、 現行の日本工業規格T5910のまま変更はありません。一般的名称の定義変更にともない、 使用目的、効能及び効果、基本要件適合性チェックリストの性能に関する項目も整合した ものとなっています。また、対象となる医療機器と改正した一般的名称の定義は記載のと おりとなっています。  次に、4.〜8.につきまして、基準として引用する日本工業規格の制定にともない、認 証基準が改正されるものに関するもので、4.歯科用矯正用ワイヤから8.のホルタ解析装 置まで、まとめて御説明いたします。7ページを御覧ください。下段の写真のように、歯 科用矯正用ワイヤは歯列の矯正のために使用するワイヤです。今回の改正では、日本工業 規格の個別規格であるT6530が新たに制定されるのに伴い、下線部のとおり、現行の日 本工業規格の記載をT0993-1及びT6001からT6530へ変更するものです。技術的要求事 項の変更はありませんが、36〜42ページの基本要件適合性チェックリストの特定文書欄 の記載、規格について、T6530に整合させています。また、対象となる医療機器と一般 的名称の定義は記載のとおりで、変更はありません。同様に、8ページの、歯科鋳造用金 合金用プラスメタル、9ページの歯科アマルガム用合金、10ページの歯科用水銀につい ては、それぞれ歯の修復などに使われる合金の類ですが、これらも日本工業規格の個別規 格が新たに制定されることにともない、現行の基準として引用されるJISを下線部のと おり改正するものです。また、11ページのホルタ解析装置については、携行型長期記録 心電計で記録された心電図を患者環境外で解析する装置ですが、こちらの方も先ほどの合 金類と同様に、現行の基準として引用されるJISを下線部のとおり改正するものです。 以上、1.〜8.の認証基準案につきましては、今後パブリックコメントを実施し、記録、 意見をいただいた後に認証基準の改正を実施していく予定です。  最後に、9.の歯科鋳造用14カラット金合金から14.の歯冠用硬質レジンまでにつきま しては、いずれも歯の補修用に用いる合金の類ですが、日本工業規格の番号は変わらない ものの、ISO等の改正にともないJISの内容が改正されたものです。例えば、12ペ ージの歯科鋳造用14カラット金合金につきましては、日本工業規格T6113の、性能に関 する項目、生体適合性、液相点及び固相点が追加で、あと、硬さが耐力に改正されるため、 68〜73ページの基本要件適合性チェックリストの特定文書欄の記載について、追加・改 正後のT6113に合わせて変更しました。したがって、12ページに記載される、認証基準、 一般的名称の定義につきましては、いずれも記載のとおりで、変更はありません。13ペ ージの歯科鋳造用金銀パラジウム合金から17ページの歯冠用硬質レジンについても同様 です。説明は以上でございます。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方から御意見、御質問は ありますか。  比較的人体の影響が少ない医療機器について、認証基準については、新規が1件、改正 が13件と御報告されましたが、御質問はございませんか。 ○事務局 医療機器審査管理室でございます。今回御欠席の天笠先生は歯科の専門家です が、この歯科の部分について、特段コメントはないと事前に御意見をいただいております ので御報告いたします。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。今回は歯科関連のものが大変多かったことで、 天笠委員から特段の御意見はなかったということです。ほかに、御意見はありませんか。 ないようでしたら、これで公開案件は以上となりますが、よろしいでしょうか。  それでは、これで公開案件の方は終わらせていただきます。 ○事務局 ありがとうございました。それでは、以後の議題は非公開とさせていただきま すので、傍聴の皆様、恐縮ですが、御退席をお願いいたします。非公開の案件の審議、報 告については、10時半より開始させていただければと思います。どうぞよろしくお願い します。 ○事務局 では予定の時刻となりましたのでよろしくお願いします。 ○笠貫部会長 それでは予定の時刻になりましたので、非公開案件の審議報告に入らせて いただきます。まず最初に事務局から資料の御確認をお願いいたします。 ○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日配付させていただいた資料と、事前に お送りした資料がありますので、まず事前にお送りした資料の方から確認をお願いいたし ます。  まず資料2-1、こちらはオーファンデバイスの指定ですが、「医療機器『気管支充填材』 の希少疾病用医療機器としての指定の可否について」です。参考資料の2-1として「希少 疾病用医薬品及び希少疾病用医療機器の指定制度」、資料3-1として、「医療機器『スト ライカー脊椎専用骨セメント』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造 販売承認の可否及び再審査期間の指定について」、資料4-1として「医療機器『KYPHON BKPシステム』の高度管理医療機器、管理医療機器又は一般医療機器の指定、特定保守管 理医療機器の指定の要否、医療機器『KYPHON BKPシステム』及び『KYPHON BKP 骨セメン トHV-R』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び 再審査期間の指定について」、資料5-1は「医療用具『植込み型補助人工心臓 Heart Mate XVE LVAS』の生物由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、輸入承認の可否及び再審 査期間の指定について」。一つ申し忘れまして恐縮ですが、資料6-1「医療機器・体外診 断薬部会報告品目」、参考資料7-1として「審議参加に関する遵守事項」を事前にお送り させていただいております。  本日、配付させていただいたものを順番に申し上げます。  資料2-2は「諮問書」です。資料3-2がストライカーの「諮問書」、参考資料3-1とし て骨セメントにおける「適正使用のための実施基準」について、資料4-2としてKYPHON の「諮問書」、資料5-2がHeartMateの「諮問書」です。資料5-3として、「植込み型補 助人工心臓 HeartMate XVE LVASの審査報告」のパワーポイントです。参考資料5-1とし て、「『植込型補助人工心臓』実施基準」の案、資料7-1として「競合品目・競合企業リ スト」です。  戻っていただいて恐縮ですが、資料3-3として、「ストライカー脊椎骨セメントの審査 報告」のパワーポイント、ストライカーの審査報告書の誤記訂正です。資料4-3として 「KYPHON BKPシステム及びKYPHON BKP 骨セメント HV-Rの審査報告」のパワーポイント です。その次は番号等はありませんが、審査報告の誤記訂正です。最後に添付文書案です。 こちらは、KYPHONの添付文書案に一部誤りがありましたので、資料4-1の添付文書の差 し替えです。資料が多く大変恐縮ですが、もしお手元にない資料がありましたら、事務局 までお願いいたします。以上です。 ○笠貫部会長 資料の方はお揃いでしょうか。  続きまして本日の審議事項に関与されました委員と、利益相反に関する申出状況につい て事務局から御報告をお願いいたします。 ○事務局 御報告申し上げます。本日の審議対象となっている品目について、申請資料及 び利用資料の作成に関与された委員は次のとおりです。議題3「ストライカー脊椎専用骨 セメント」につきまして、利用資料の作成に関与された先生が荒井委員です。議題4「植 込み型補助人工心臓 HeartMate」の申請資料に関与された委員は、本日は御欠席ですが北 村委員です。競合品目につきましては資料7-1です。こちらは薬事分科会の参加規定に基 づきまして、これら申請品目に関する競合品目、競合企業を選定させていただき、その選 定理由を以下のとおり示しております。これら競合品目の製造販売業者、又は競合企業に ついて委員の先生方、参考人の方から寄付金、契約金の受け取り状況を伺っています。そ の結果、本日の審議品目につきましては、議題3、4におきまして、議決に参加すること ができない委員は勝呂委員です。議題3の利用資料についてのみ発言することができない 委員は荒井委員で、その他につきましては御出席されているすべての委員が審議及び議決 にかかわることができることを御報告させていただきます。以上です。 ○笠貫部会長 只今の事務局からの御説明に特段の御意見等はございますでしょうか。な いようでしたら議題に入ります。  議題2医療機器「気管支充填材」を希少疾病用医療機器として指定することの可否につ いて審議を行います。本品目の審議に当たりましては、参考人として、独立行政法人国立 病院機構名古屋医療センター呼吸器科部長、坂英雄先生に御出席いただいております。よ ろしくお願いいたします。  まず、希少疾病用医療機器に関する制度の概要について事務局の方から御説明をお願い いたします。 ○事務局 参考資料2-1に基づきまして御説明いたします。希少疾病用医薬品及び希少疾 病用医療機器の指定制度です。制度の趣旨は、先生方もよく御存じのとおり、難病、エイ ズ等を対象とする医療機器が医療上の必要性が高いにもかかわらず、患者数が少ないこと により研究開発が進まないというものについて、開発の支援をするということです。概要 としては、中ほどより下の[指定基準]にありますが、[1]〜[3]の要件を満たすものについ て、希少疾病用医療機器として指定をしていくというもので、こちらに指定されますと、 優先審査、補助金、税制優遇などの優遇措置が講じられるというものです。  まず、[1]対象者数ですが、本邦において5万人未満、[2]医療上の必要性ですが、承認が 与えられたら、特に優れた使用価値を有することが予想される。まだ承認申請ということ ではありませんが、医療上の必要性が推定されるというものです。[3]開発の可能性という ことで、ある程度根拠があり、開発の可能性があるという、この3点を満たすものについ て、指定の御審議をいただきまして、指定されましたら、開発の支援措置を行うというも のです。以上です。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは審議品目の概要について事務局から御 説明をお願いします。 ○事務局 資料2-1の概要をおめくりいただきますと、希少疾病用医療機器概要というこ とで、「気管支充填材」が名称です。予想される効能効果は、外科手術が困難な続発性難 治性気胸、気管支瘻の治療に用いるものです。物自体は指定申請書の概要2ページを御覧 下さい。このように□□□□□□、□□□□□□□でできた栓のようなもので、気管支で すとか、気管支の気胸で漏れている部分にこのような物を詰めることによりまして、空気 が漏れることを防ぐものです。  概要の方にお戻りください。要件の一つである対象者数ですが、本品の対象は外科的手 術が困難、または外科的手術による有効な治療ができない気胸の患者ということで、患者 数としては気胸自体も少なく、3段落目の一番最初にありますが、気胸患者数としては大 体8000人ということですが、さらに難治性で、通常の治療法がうまくいかないというこ とになりますと、2段落目の中ほどにありますが、推定1054人、1000人強ということで、 対象者数の要件を満たすということです。  医療上の必要性ですが、気胸はそれ自体で亡くなるということは非常に希ですが、外科 手術が困難である患者さんにおいては、持続的な胸腔ドレナージが必要で、いつもチュー ブを付けているという状態で、患者さんのQOLが長期にわたって低下しているというこ と。[2]意図しない胸腔ドレナージ抜去による呼吸不全のリスク、長期的な使用により感染 症を起こしたりするということがありますので、もしこれが開発されますと、医療上の必 要性は高いだろうということです。開発の可能性につきましても、欧州で既にCEマーク を取得されているというものです。以上です。御審議よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 それでは参考人の坂先生から何か御意見がございましたら、追加をお願い いたします。 ○坂参考人 気胸には大きく分けて二つありまして、一時的な自然気胸がほとんどで8割 6分ぐらいです。これは余り治療に難渋することはないのですが、残りの15%程度のも のは、かなり治療に難渋しております。典型的な患者さんは、御高齢の方で肺が弱く、管 を入れてもなかなか広がりません。いろいろなお薬を使っても管が抜けるところまでいか ないものですから、ずっと管が入った状態でベッドで臥床して入院しているという状況が 続くわけです。この治療は呼吸器科医としてはとても難渋するところで、数は多くありま せんが、患者さんが、なかなか日常生活を取り戻せないということで、お気の毒な状況が 続いています。そういう中で、この「気管支充填剤」につきましては、私どもも、フラン スから個人輸入をして使った経験があります。日本で開発されたものだけれどもヨーロッ パで承認されているということで、逆輸入をして使っている状況が続いているということ は、大変不幸なことだと思っております。これによって患者さんの状態がよくなって、管 が抜け、元気に退院されている方も経験しておりますし、数は少ないけれどもとても患者 さんの役に立つ治療法だと思っております。以上です。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは御意見、御質問はありますでしょうか。 坂先生からのお話で、日本で開発されて、日本では余り使われず、むしろフランスで開発 されて逆輸入だというお話があったのですが、この経緯、理由はおわかりでしょうか。そ うするとこれを早く日本で開発を進めていただくことになると思うのですが。何か情報が ありましたらお話しいただければと思います。 ○坂参考人 この道具を臨床の必要に迫られて開発された、渡辺洋一博士の講演を直接伺 ったことがあります。苦労して作ったものを、彼は普及させたいので、日本のメーカーに お願いして回ったそうなのですが、全然相手にしてもらえなかったと言っておられまし た。万策尽きて、ヨーロッパの個人的なルートでお願いしたら、フランスのシリコンの医 療用器具メーカーが作ってくれたということがあり、ヨーロッパの方が先行してしまった と聞いております。 ○笠貫部会長 アメリカの方ではどの程度。 ○坂参考人 アメリカでは、まだ認証されていないと聞いております。 ○笠貫部会長 ほかに御質問はありますでしょうか。現在はこういうことはないだろうと 期待をしたいのですが、日本でせっかく渡辺先生が作られたときに、日本の企業が対応し てくれなかったと、結果的には逆輸入になったということは、非常に残念だと思います。 こういうことがこれからないように積極的に日本の企業も考えていただけたらと思いま す。ほかに御意見はありませんでしょうか。希少疾病用についての御議論なので、そのこ とについては特に御意見がないということでよろしいでしょうか。  それでは議決に入らせていただきます。医療機器気管支充填材について、本部会として 希少疾病用医療機器として、指定して差し支えないものとしてよろしいでしょうか。  ありがとうございます。御異議ないようですので、指定を可とします。この審議結果に つきましては、次回の薬事分科会に御報告することにいたします。それでは本議題は終了 いたします。参考人の坂先生には大変短い時間で申し訳ございませんが、御退席をお願い いたします。貴重な御意見どうもありがとうございました。 ── 坂参考人退室 ── ○笠貫部会長 続きまして議題3「ストライカー脊椎専用骨セメント」の製造販売承認の 可否について審議に入ります。荒井委員におかれましては、当該利用資料について発言す ることができないということです。それでは審議品目の概要について事務局から御説明を お願いいたします。 ○事務局 まずその前に議決に関する点について御報告申し上げます。勝呂委員におかれ ましては、審議会規定に基づきまして、議決を部会長に御一任いただいていることをまず 御報告申し上げます。  それでは「ストライカー脊椎骨専用骨セメント」につきまして御説明申し上げます。資 料の審査報告書を御覧ください。小さくて恐縮ですが、審査報告書の4ページ目に、写真 が付いております。粉末ポリマーと液体モノマーの物で、粉末ポリマーと液体モノマーを 混ぜて、徐々に硬化をしていきまして、最終的には非常に硬い物になります。スラリー状 になったときに、こちらを脊椎の空洞ですとか、その辺の部分に注入して、転移性の骨髄 腫において脊椎に対して経皮的に注入することによって、疼痛の軽減を図り、椎体の安定 化を図ることを目的としています。こちらの品目につきましては、医療ニーズが高く、医 療機器の早期導入に関する検討会において、疾病の重篤性が高く、当該医療機器の医療上 の要請が高いことから、我が国で優先して早期導入すべき医療機器として選定されてお り、優先審査等させていただいていることについて、御報告申し上げます。また、本品目 につきましては、本品目が医療現場において適切に使用されるよう、関連する学会に実施 基準を策定していただいております。参考資料3-1です。こちらは骨セメントにおける実 施基準(案)の、適応、禁忌・適応外、実施施設基準、それぞれの項目の括弧書きになって いる部分の実施医師、手技、適応要件の見直しとなっております。適応につきましては、 2番原発性、転移性を含め、有痛性椎体骨折であって、他の治療法に比べて、本邦の有用 性が優ると判断される例ということで、例えば放射線による治療、モルヒネなどの医療用 麻薬によっても痛みが取れないといったケースに使うというものです。本品の審査の概要 の詳細につきましては、審査を行った独立行政法人医薬品医療機器総合機構より御説明申 し上げます。 ○機構 それでは医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げます。資料3-1の一番前に 審査報告書が付いておりますので、こちらを御覧ください。本品の審査に当たり、ご覧の 専門協議委員の先生方の御意見をいただきました。  品目概要について御説明いたします。審査報告書の4ページを御覧ください。本品は転 移性骨腫瘍や、骨髄腫などの悪性脊椎腫瘍に対する経皮的椎体形成術に用いて、疼痛の軽 減を目的とする骨セメントです。粉末ポリマーと液体モノマーをこれらの器具で混合して 注射器等を用いて椎体内に注入し使用されます。  起源又は発見の経緯について審査報告書の5ページを御覧ください。転移性骨腫瘍に対 して薬物療法などの保存療法もありますが、保存療法が奏効せず、手術も適応できない患 者さんに対して、低侵襲な治療法が求められてきました。経皮的椎体形成術、以下PVP と略しますが、PVPは骨セメントを椎体内に注入し、疼痛を軽減する治療方法で、低侵 襲であることから海外で脊髄腫瘍や骨粗鬆症の圧迫骨折に適応されてきましたが、使用さ れる骨セメントの適切な操作時間及びX線視認性の向上が課題でした。そこで、PVPに 適する骨セメントとして、既存品、サージカルシンプレックスを改良して、X線視認性が 向上し、硬化時間がより長い本品が開発されました。  海外における使用状況については、審査報告書の6ページに記載してありますが、海外 では骨粗鬆症を含めて、約14万セットの販売実績があり、有害事象として御覧の報告が あります。死亡例は骨セメントの漏出に起因する脳卒中発作により死亡した例で、卵円孔 開存症、肺動静脈奇形により、右から左のバイパスがあったことが確認されています。な お、審査報告書での術中麻痺とアレルギー反応の件数に誤記がありましたので、スライド の数字で訂正させていただきます。  提出資料一覧です。臨床部分の資料として、国内臨床試験を含めて海外で悪性脊椎腫瘍 で実施したPVPの有効性及び安全性について文献調査を行い、臨床評価報告書が提出さ れました。国内臨床試験について御説明いたします。審査報告書では10〜13ページです。 本臨床試験は、PVPの安全性及び有効性を評価するために、有痛性の脊椎腫瘍に実施し たものです。安全性評価では、治療に伴う重篤な有害反応の術後4週間の発生頻度とされ ましたけれども、結果、これらの有害事象は認められませんでした。治療との関連性が否 定できない有害事象として、残尿・尿閉、出血と、低アルブミン血症が1件ずつ認められ、 またセメントの漏出は17症例で発生しました。有効性評価として、痛みにおけるVisual Analogue Scaleの値の変化を、こちらのように3段階で評価した場合、治療前と治療後 1週間を比較して、有効以上の症例は33症例中23症例、約70%で、うちサージカルシ ンプレックス使用例の有効以上症例は10症例中に9症例で、有効率は90%でした。文献 調査の概要ですが、審査報告書の14ページに記載のとおり、海外でPVPに使用されて いる骨セメントは患者背景、有効性評価、安全性評価と共に同等であり、種類により有効 性及び安全性が明らかに異なるとする報告は認められませんでした。こちらも審査報告書 での有効率の記載に誤記がありましたので、本スライドのとおり、訂正とさせていただき ます。  以下、審査における論点を説明いたします。非臨床部分の論点については、審査報告書 の9ページになりますが、ワーキングタイムの妥当性について、申請者の見解を求めまし た。申請者より、本品のワーキングタイムは、臨床医の使用経験及び設計検証の結果を勘 案して設定され、臨床医より適切との評価を得たとの回答を得ました。総合機構は、ワー キングタイムは本品の椎体内注入の可否にかかわる重要な指標であるため、添付文書及び トレーニングマニュアルにワーキングタイムとその影響要因を記載するように申請者に 指示いたしました。  次に臨床部分に関する論点は、審査報告書の16〜17ページを御覧ください。臨床評価 報告書による本品の有効性及び安全性評価の妥当性について、申請者の見解を求めたとこ ろ、PVPに用いた場合、サージカルシンプレックス及び既存の骨セメントの有効性及び 安全性は同等であり、骨セメントの種類に影響されることはないため、当該臨床評価を本 品の評価に外挿することは可能と回答し、総合機構はこれを了承いたしました。  次に、本品の適応の妥当性については、がん種、溶骨性腫瘍、頸椎、複数椎体について 検討した結果、疾患で規定するのではなく、既存療法に奏効しない、転移性骨腫瘍や骨髄 腫などの悪性脊椎腫瘍による有痛性脊椎骨折とするとともに、手技が困難でリスクが高い 症例について、添付文書にて注意喚起、また、本品の特性、手技に精通した医師が使用す ることにより、リスクの低減を図ることとしました。  以上を踏まえて、総合評価として審査報告書の18〜19ページに記載してありますが、 PVPは使用した範囲内で骨セメントの種類によらず、同等の有効性及び安全性を示すこ と、また、本品はサージカルシンプレックスと同等の物理的・化学的性質及び性能を持つ ことより、臨床評価は報告書を本品の評価に外挿することは可能と判断しました。  しかしながら、本品の長期有効性・安全性に関する評価資料がないため、長期有効性、 安全性を確認する必要があると考え、承認条件3を付すこととしました。また、既存療法 に奏効しない転移性骨腫瘍患者のQOL向上において、本品の臨床的意義は大きいのです が、骨セメントについて、血管塞栓、神経障害、ショック等の重篤な有害事象が知られて おり、これらのリスクをいかに回避、低減できるかが課題となることから、添付文書で注 意喚起するとともに、本品の特性を十分に理解した医師が適切に使用すること、また有害 事象発生時に、適切な処置が可能な施設で本治療を行うことが必要と考え、承認条件1と 2を課すこととしました。  以上を踏まえて、本品を転移性骨腫瘍や骨髄腫などの悪性脊椎腫瘍による有痛性脊椎骨 折に対する経皮的椎体形成術に用いて、疼痛の軽減を図るという使用目的とすることが妥 当と考えます。なお、本品は新性能医療機器であり、再審査期間は3年とし、生物由来製 品及び特定生物由来製品に該当しません。以上、御覧の承認条件を課すことで、本品を承 認して差し支えないと考えます。  説明は以上ですが、事前に2名の先生方からコメントをいただきましたので御説明いた します。まず、勝呂委員よりコメントをいただいております。「癌性疼痛のコントロール は確かに困難なことが多く認められます。疼痛には、腫瘍性疼痛と骨の破壊による疼痛及 び硬膜外の癌の浸潤による神経痛の疼痛があります。腫瘍による破壊と骨折による疼痛 は、何らかの支持を与えることで、疼痛の軽減を可能な場合もあることから、本品におけ る適応を明確にすることが必要です。臨床症例において、ほとんどの症例が4か月以内に 死亡していることも考え、適応として少なくとも3か月以上の生命予後が期待され、かつ、 ほかの治療が効果のない症例である必要があると考えます。また、癌の脊椎転移は、生命 予後スコアがあり、予後スコアを用いて適応を決定するべき。」との御意見をいただいて おります。  これにつきましては、添付文書における【使用目的、効能又は効果】において、適応に 関する注意として、生命予後について3か月が適当かどうかなどを検討した上で、適応が 明確になるように注意事項を記載したいと考えております。  また、同じく勝呂先先より、「製品名として、ストライカー脊椎専用骨セメントでは、 癌の脊椎転移のみ適応があることが明確ではないことから、製品名を例えば脊椎転移癌専 用骨セメントのように変更していただきたい。」との御意見をいただいております。これ につきましては、一般論として、承認において適応は規定していることから、これまでの 前例も踏まえて、本品が販売名に適応を記載しないと、医療現場で大きな混乱が予想され る場合は考えなくてはいけませんが、大きな混乱が予想されない場合に、販売名に適応を 入れる必要はないと考えております。この点につきまして、御協議いただければと考えて おります。  また、事前に松岡委員からもコメントをいただいております。まず1点目ですけれども、 「臨床で使用する際に、揮発性モノマーをどの程度飛ばして患者に使用するのか、また完 全に硬化しないうちに患者に注入すると、その影響は問題ないか。」という御質問をいた だきました。これは確かに先生がおっしゃいましたとおりで、混合が不完全ですと、モノ マーの影響が懸念されます。これにつきまして厳しく混合する方法をコントロールするこ とは困難であり、十分に混合するようにと添付文書で注意喚起を行っております。また、 同じく松岡委員から2点目の御質問ですが、「手術で骨セメントを注入するに当たって、 医療者が揮発性モノマーにばく露されたときの影響は問題ないか。」という御質問をいた だいております。これについて、まず本品は、通常骨セメントと同様の操作で、しかも通 常の骨セメントより使用量が少ないことから、リスクは通常のセメントより低いと考えら れます。また、本品の操作に当たって、閉鎖しているスペースではなくて、手術室の中で 行うことから、揮発性物質が滞留する環境ではないと考えております。それとしても揮発 性モノマーが人体に影響することはありますので、それについてはトレーニングプログラ ムにおいて初期のトレーニングを行うとともに、添付文書にて注意喚起を行うことにおい てリスクの低減を図っております。またトレーニングをされ、骨セメントの操作を含めた 技術に習熟した医師がするとともに、日本整形外科医会等が作成してくださった学会ガイ ドラインにより、適切な医師により使用されることとなっております。以上、先生方のコ メントを御紹介させていただきました。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○笠貫部会長 それでは、ただ今の御説明についての御意見、御質問はございますか。 ○勝呂委員 コメントのところに書いたのと時間差があります。癌性疼痛を取るには、一 つの良い手段だと基本的には考えております。ただ、今回の症例の中のは非常に短命で終 わっている方も含まれるので、疼痛管理という意味では4日か5日でお亡くなりになるの は適応外かと思います。これが開発された経緯というのは骨髄腫、あとは脊椎発生の血管 腫などには、非常に良い適応ではないかと思っています。癌性疼痛の場合には腫瘍による 椎体後壁にバルーニングを起こして起きてくる脊髄麻痺とか、その傾向のある症例もある ので、私も詳細を十分知り切ってはいないのですが、世界では転移癌の予後スコアという のが非常に用いられていて、この予後を見たときには、非常に良くない例えば、非常に短 命で終わるというスコアがあるので、そういったものを参考にしていくと、生命予後が1 週間ぐらいの方にするのはどうかと個人的には思うので、疼痛を取る対策は別の方法も考 えられるのではないかと思い、そのようなものを参考にして適応を決めれば、癌性疼痛の 方々の除痛という意味では非常に良い方法だと考えております。  それから答えになるかどうか、追加で、モノマーの影響です。先ほど回ってきたものは、 そのものを静注しますと、ほとんど循環器系の抑制が働いて心停止になりますから、現在 どのように我々はしているかというと、ミキシングをするときにバキュームをかけていま す。十分ガスを外へ排出させています。この操作を確実に行う。特にこの品物はワーキン グタイムを少し長くしてあるために、至適硬化時間というのが指定されているので、その 間しっかりバキュームで引きながらミキシングすることによってモノマーの循環器系に 与える影響を減少させることが十分できると思います。  現在、股関節などで使っているセメントも、すべてそうすることによって、一つには患 者さん、もう一つはミキシングのときに我々がモノマーに被爆することが圧倒的に下がっ ているので、このことを特に指導していけば、モノマーによる医療者・患者の副作用を減 少できるのではないかと思っております。 ○笠貫部会長 事務局からは、先生の御意見に特にございませんか。勝呂委員から御指摘 のあった、あるいは先に御意見をいただいた二つの点について議論されたらと思います。  使用の予後として、非常に短期なものは除いた方がいいということで、転移癌の予後ス コアを使って、それを適応の中にも入れたらどうかという御意見でよろしいですか。ある いはそれを考慮するということでしたら、すぐに進めると思うのですが、適応に入れると なるといろいろ議論があるかと思います。 ○勝呂委員 そう思いますが、治療者の経験等がたくさん入るので、然るべき適応という ところで、予後をどのぐらいというのは明確にするのはなかなか難しい問題があると思い ます。ですから、ある程度は生命予後が期待できる患者さんとするのも一つかとは思いま す。例えば3か月というのを明快にしたら、かなりの問題が起きてしまうので、その辺は 機構側も御意見があるのではないかとは思います。 ○笠貫部会長 癌末期の痛みによるQOLの低下ということになると、主治医にとってい ろいろな捉え方があるかと思います。こういうことも考慮に入れると、どこかに加える工 夫をしていただくことで、検討はできますか。あるいはそこがどこかに含まれていること でしたら、それで結構ですが。 ○機構 はい、先生のおっしゃるとおりだと思います。添付文書の使用目的、効能効果に は、今はそのようなことは書かれていないのですが、そこに関する使用上の注意を新たに 設置して、そちらに必要な条件をしっかり書くということでいかがでしょうか。 ○笠貫部会長 条件というよりも、それを考慮することでよろしいのではないかと思いま す。 ○機構 はい、そこを明記するということにさせていただきます。 ○笠貫部会長 多様な考え方があるので、そこも念頭に置くことでよろしいですか。 ○勝呂委員 はい。 ○荒井部会長代理 関連の資料については発言を控えさせていただきます。今の予後につ いて、全く御指摘のとおりで、1週間の予後の方にこの治療を行うのは決して適切ではな いと思いますが、それでは1か月では駄目かというと、この辺は御指摘のとおり、本当に 臨床の現場の判断が非常に重要だと思います。これは無侵襲の治療ではありませんから、 侵襲の大きさと、患者の受けられるメリットとの比較がきちんと検証されて、徐々に収束 して一定の所に落ち着くということがありますので、もしそういうことを添付文書に追加 する場合にも、できれば具体的な数値などは避けて、基本的な姿勢を示していただくとい うところにとどめていただいた方がいいのではないかと思います。  ○笠貫部会長 次に勝呂委員に御指摘いただいたのは、骨転移をきちんと加えたらという ことですが、さらに適応を狭めて書くということになります。先生が御懸念なされている のは十分理解されると思いますが、実際に現場でどんな混乱が起こるか、あるいはこれで 可能かどうかについて、先生の御意見をいただけたらと思います。 ○勝呂委員 なぜそういう発言をしたかというと、現在、骨セメントは一つには関節の置 換術の際、主に使われております。ただ、その適応外で実際の問題で転移癌で神経麻痺が 起きて除圧をしたときにインストゥルメントを固定するのに使われたりしているわけで す。そうしますと、脊椎専用というと、そこに果たして適応という形にとってしまうかも しれないのです。ですから、そういう意味で、いずれこれを臨床の実績を重ねていったと きに、再度の審査が入るのではないかと思いますが、今のところは脊椎腫瘍など、という ように脊椎専用ですが、実はアメリカのデータなどは骨粗鬆症にも使われていますし、そ のまま臨床の現場で、まだ本邦における明確なエビデンスが形成されていない段階は適応 を明確にすることが可能ならば、そのとき、そうしたらいかがでしょうかという私の意見 です。  というのは、こういうニーズのあるところは承認前に現場で判断し、目をつぶって、か なり利用していることも事実です。ですから、もしこれをオフィシャルにするのであれば、 当分の間は適応を骨髄腫を含めた癌というだけではなく、脊椎腫瘍という形で何かを入れ ておいた方が使用者もいいのではないかと思います。というのはワーキングタイムが少し 長いのです。ですから、これをほかで人工関節に使えといえば、ワーキングタイムを長く して、それなりに使っても可能だということもあるのです。ですから、そのようにしてお いた方が最初のうちはいいのでは、という私の意見です。 ○笠貫部会長 適応は、かなり今は厳しくなっていますから、今回は名称まで変えなくて もよろしいということですか。 ○勝呂委員 例えば、セメントは一緒ですが、一緒に並べたときに、基本的にはほぼ一緒 なので、個人的には本当は名称を括弧で付けておいた方がいいとは思うのですが、製品に もっと明確に分かるように脊椎専用とか、どこかに入れた方が混乱しなくていいのでは、 と思います。現場を考えるとそういうのも一つだと思います。 ○笠貫部会長 どうでしょうか。効能書に書くだけではなくて、「これは骨髄腫云々癌の 専用です」とどこかに分かるような書き方ができないかということです。これは例えば、 実際の箱などにということですよね。 ○勝呂委員 それは工夫の仕方はいろいろあると思うので、現場で混乱が起きないように するのが一つの手段かと思っています。 ○荒井部会長代理 これは確かに一部で良性腫瘍に使っている人がいるので、勝呂先生の 御心配は痛いほど私は分かっています。いわゆる基本的な製品の名称と適応の考え方だと 思いますが、将来適応が広がって、仮に例えば、良性のものに使えるようになったときに、 同じ製品がまた名前が変わるというのは、基本的に奇妙な現象です。  考え方で適応というのは、適応を遵守する集団が相手だということも人間性善説ではあ りませんが、それが基本にあると思います。ここを疑ってかかるとすれば、すべて製品の 名前に適応に、かつそれを商品の名前にも入れるということで、結局その分だけ、これだ け各学会が努力をしてガイドラインを出したり、いろいろなことをやっているのが、どん どん下のランクのものが軽視されていくという傾向があると思います。  この内容は誰がどう見ても、悪性というか、腫瘍性の病変の脊椎に使うということは読 んで分かるように書いてありますので、これをきちんと守る。勝呂先生が一番心配してお られるこれを守らない人は、適応を守っていない、要するに基本的に我々が容認できない 集団だという判断です。きちんと捉えれば名称はそのままで、適応もより明確にこれが悪 性のものだということが分かれば、それで十分ではないかと思います。そこを崩してしま うと、適応と名称という本来の骨格自体が崩れてしまう懸念を感じております。 ○笠貫部会長 どうでしょうか。今の名称は勝呂先生も変えなくていい、適応もこれだけ 厳しくしていただければいいというお話です。その中間として、「これは腫瘍専用です」 という添付文書はずっと見てやるわけではありませんから、臨床の現場で、「これは腫瘍 専用です」という書き方を工夫していただくことがあり得るかどうかを検討して、後で勝 呂先生の御意見もお聞きいただくことでよろしいですか。 ○医療機器審査管理室長 今、部会長からお話があったような形で検討させていただきた いと思います。ただ、一つ申し上げておきますと、一応使用目的、効能効果というのはき っちりとした承認事項になっていますので、しかも悪性の脊椎腫瘍にという形で明確にな っていますので、まずはこれを現場の先生方が遵守していただく。当然医療保険の方も連 動した格好で薬事との関係でつながってまいりますので、まずはある程度の制約がかかっ ているのではないかとは考えています。  一方で、現場でいろいろなニーズがあったときにどう対処するかですが、薬事法の中で は、製造販売をする企業に対しては、現場に対してきっちり情報提供、これは適正に使用 するための情報提供を付加的に添付文書以外にも行うことになっていますので、この辺り の行いで、仮に悪性腫瘍以外にも、あたかも使えるような格好で情報提供がなされるよう であれば、また考えさせていただくということで、まずは制度上の担保ができているとい うことで様子を見て、そのときに応じて適宜対応していくということで御相談をさせてい ただければと思います。 ○笠貫部会長 モノマーについてのミキシングの話が先ほど出たのですが、循環器系に対 する影響も含めて、非常に大事なことであり、今の御指摘については添付文書で十分足り ている、あるいは何かを加えることは検討されますか。具体的にミキシングのバキューム の話も出ていましたが、何か御検討いただいておりますか。 ○機構 資料3-1の添付文書案ですが、まず添付文書の1ページの警告の「骨セメントを 十分に混合し、ある程度重合するまで充填しないこと」と記載しています。  2ページの使用方法に関連する使用上の注意の5)に「液体モノマーを粉末ポリマーに 加えてから、2分以上経過し、本品が手術用ゴム手袋に付着しなくなってから骨セメント を注入すること」と書いており、混合して必ず2分経過してからセメントを注入すると記 載しています。  3ページの5.その他の注意でも「液体モノマーの成分は、揮発性かつ可燃性である。 手術室の換気を行い、液体成分とその蒸気に火気を近づけないこと」とか、下には「コン タクトレンズを装着している場合は、骨セメントの混合を行わないこと」とか、モノマー についての注意事項をいろいろ記載しております。 ○笠貫部会長 それで書き方ですが。 ○機構 今の説明の中では、バキュームについての記載がないので、こちらは勝呂先生に 教えていただきたいのですが、やはりそこは通常行われているということでバキュームに ついてもしっかり記載した方がよろしいということですか。 ○勝呂委員 この添付文書でもいいと思いますが、バキュームをやるとお金がかかるので す。でも、我々は安全のために一応バキュームをやっています。  もう一つの良い点は、バキュームをすることによって混ぜたときに、いわゆる単純気泡 が入らない。非常にセメントが密にミキシングができるという点でバキュームをしてお り、力学的な強度を増すという目的でも使っています。ですから、使う量が少ないですか ら、そこまで心配しなくても基本線として血管内に入る可能性が高いセメントであるから こそ、逆にモノマーのコントロールを、添付文書のように十分やっていただくということ を、しっかり指導していく。バキュームをやると1個2万円〜3万円かかりますので、各 施設の状況によってやっていると思います。 ○笠貫部会長 そうした方法もあることは書く必要があるか、あるいはこの添付書類でよ ろしいですか。 ○勝呂委員 書かなくてもある意味では整形外科領域では常識的にしているので、それで もいいのではと思います。 ○機構 PMDAからの補足で御説明します。添付文書の3分の2ページの左上を見ます と、ディスペンサを用いる場合の操作方法として4)で、バキュームポンプを用いて余分 な液体モノマーの除去を行うということがあります。ただ、ディスペンサを用いない場合 にはそのような記載はしておりませんので、場合分けでそのような場合に注意事項を追加 するということで、こちらで検討させていただければと思います。 ○笠貫部会長 御検討いただきたいと思います。今までのお話の中で、整形外科医という のは非常に大事だと思います。案の中で添付文書と少し違うのですが、実施施設基準で「整 形外科又は脳外科」という表現になっています。そうすると整形外科はなくてもいいこと になってしまうので、整形外科医は絶対に不可欠です。多分これは案の方の文章の違いだ と思います。訂正していただいて、添付文書の施設条件には書いてありますから、これで よろしいかと思います。それ以外に御意見はありますか。 ○荒井部会長代理 細かな言葉の違いと言われればそれきりですが、実は使用目的に「既 存療法に奏効しない云々」という記載があります。既存療法に奏効しないというのは、臨 床的に正直にこれに答えようとすれば、既存療法をやってみた結果として効果が得られな かったので使うという、ある程度指示として受けざるを得ない内容だと思います。先ほど 申しましたように、放射線が通常効いてくる、早いものもありますが6週間とか、そうい う期間が、とても予後から比べると見込めない。要するにできるけれども、この場合には 骨セメントをやらざるを得ない、やる方が患者のためになるであろうという症例に関し て、多分この文言で縛るのは、現場としては混乱を来すのではないかと思います。実はそ ういう文章があるのかと思って見たのですが、今、勝呂先生が言われたガイドラインなど でも「本法の有用性が優ると判断される」ということで、現場としては既存療法が奏効し ないか、あるいは奏効しないと判断されるという幅を持たせていただくか、効かないもの にだけ使ってよろしいというのは、全然捉え方が違うものですから、もしここに明確な根 拠がないのであれば、このガイドラインに従うのなら、こういった既存療法が効かない、 あるいは効かないと考えられる、適応がないと考えられるといった幅を持たせた表現に修 正をしていただいた方がいいのではないかと思います。 ○機構 事務局よりお答えします。先生のおっしゃるとおりだとは思いますが、既存療法 の中で、専門協議でもどういう記載にするかということが議論され、この「既存療法に奏 効しない」という文言を入れたのは、例えば非常に軽い痛みであって、ある程度侵襲的な 治療を行わなくてもよいような、例えば鎮痛剤とか、そういった患者さんにまでこの中に 含めることはあり得ないでしょうと。また放射線治療に関しても出たのですが、先生が言 われるとおりに、放射線治療が効く方と、この方は多分効くでしょうということと、それ は少し見込めない方といるので、放射線治療という文言ではなく、鎮痛剤も含めて既存治 療という形で、ある程度侵襲的な治療をするよりも、痛みを取った方がいいでしょうとい う患者さんに適応していただきたいという考えで、この文言を入れました。 ○荒井部会長代理 既存の治療が若干いくつかあって、新しい治療が入ったときに、いよ いよ将来的にどれを1番目に持ってくるか、どれとどれとを合わせ技で使うかというの は、いわゆる臨床的な課題であって、臨床的疑問です。これは本来は臨床試験としてきち んと評価して、どちらが先の方がいいということがいずれは分かってくる。それで正しい 結果のものを患者に適応するというもので、これを承認された順番で、とりあえずの前の ものが終わってから次のものを「これを使いなさい」ということを、行政側から規定して しまうのは、私は正しいスタイルではないと思います。  これは御指摘があったように、誤った使い方をする人がいないように、全く軽い症状に セメントを入れることのないように、学会等のガイドラインで厳重に縛る必要があると思 いますが、こういったきちんとした公文書として行政が認めている文章の中には、どちら が先ということを余りストリクトに規定するような表現はすべきではないのではないで しょうか。 ○医療機器審査管理室長 今から申し上げることはストライカーに関しての評価や、コメ ントというよりは一般的な行政として、個々の医療機器を承認していくに当たって、効能 効果をどのように考えるか、あるいは承認していくかという考え方になると思います。と 言いますのは、様々な既存の療法と新しく出てくる医療機器は、当然いろいろな現場での 使い方を含めて比較をするケースがあります。その際、審査の対象になっている医療機器 について、一定の有効性と安全性の両方を見るわけです。いろいろな面で安全性に対して 懸念があるものでも、医療上、何らかの既存療法ではカバーできない患者さんがいるので あれば、それを現場に出すことは注意して使うに当たっては、十分医療上意味のあるもの だという考えのもとに承認するケースもあります。しかし、絶対的な有効性の評価だけで はなく、安全性との兼ね合いである程度それが現場に出たときに、どういう順番で使われ るかも一応念頭に置いて認めるケースもあります。  今回このような書き方をしているということは、いろいろな意味で今回のセメントに関 しては扱い方を含めて慎重な部分が必要だろうと。したがって、既存の療法がある程度優 先された中で、どうしてもこれに頼らざるを得ない方がいれば、これを使っていただけれ ばという効能効果の書きぶりからすると、そういうメッセージだと思います。  これが今後よりポピュラーになって、ある程度医療の現場で当たり前のように最優先さ れる時期がまた来るかもしれませんが、まず今の段階では順番で言いますと、既存の方を ある程度念頭に御検討いただいて、それでも駄目な場合という見方をしていただければと いう意味でのこういう書きぶりになっているかと思います。 ○笠貫部会長 ストリクトに考えるかどうかをここで議論するには、時間的に限界がある と思います。既存というのは、非常に広い意味でPMDAが捉えるとしたら、ファースト チョイスでは良くないというメッセージとして新しい器具を認可する場合の使い方だと 理解していただけたらと思います。これはストリクトに主張し過ぎると、いろいろ議論が 広がりすぎるかと思いますので、よろしければ次に進みたいと思います。 ○倉根委員 適用の添付文書の禁忌と禁止ですが、もしほかのものはこういう書き方だと いうことであれば結構ですが【禁忌・禁止】(次の患者には使用しないこと)と書いてあっ て、この文書は恐らく使用方法の所にもかかってくる言葉だと思うのですが、使用方法の 所は、次の患者ではないので、ここの位置が、むしろ適用患者の所に「次の患者には使用 しないこと」がかかってくるのではないかと思います。  それから、これも読めば当たり前のことですが、「適用患者」と書いてあって、その下 の人には使用しないことということですよね。だから、そこを曲解する人はいないと思い ますが、少しおかしいと感じました。もう一つは、使用方法の2番目に「再滅菌禁止」と あります。これも屁理屈になるのですが、滅菌して汚染の可能性があるというのも変な話 で、ケミカルか何かを考えたときに汚染の可能性があるということなのかもしれません が、滅菌すれば使う、使わないは別として、少なくとも微生物の汚染はないわけです。最 後の所は屁理屈気味ですが、位置が読んだときに、臨床ではない立場から見て、変ではな いかと感じました。 ○機構 これについては、この書きぶりが慣例ということではありませんので、適切に修 正させていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○笠貫部会長 それでは、議決に入りたいと思います。「ストライカー脊椎専用骨セメン ト」については、本部会として審査報告書にある条件を付した承認を与えて差し支えない ものとして、再審査期間は3年間とし、また生物由来製品及び特定生物由来製品への指定 を不要ということでよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につい ては、次回の薬事分科会において報告することといたします。  それでは、続きまして議題4「KYPHON BKPシステム」及び「KYPHON BKP骨セメント HV-R」の製造販売承認の可否等について審議を行います。審議品目の概要については事務 局から御説明をお願いします。 ○事務局 「KYPHON BKPシステム」及び「KYPHON BKP骨セメントHV-R」について、御説 明します。申請者はメドトロニックソファモアダネック株式会社です。本品は、先ほど御 審議いただきましたものと同様、骨セメントです。ただ、適応が違っており、こちらは骨 粗鬆症等に伴う椎体の圧迫骨折が対象となっております。  このシステムについては、現在ではふさわしい一般的名称が定められておりません。し たがって、新しい一般的名称を設けてクラス分類を定める必要があります。こちらについ ては資料4-1に記載しております。  資料4-1です。青いタブで「クラスの一般的名称・クラス分類等」というのがありまし て、次のページに「要否について」があります。こちらにまず1番、2番、3番という形 でそれぞれ1番がクラス分類、2番が特定保守、それから生物由来・特定由来製品の指定 について、という形になっており、そちらをまとめているのが下の表です。  こちらの一般的名称は単回使用椎体用矯正器具ということで、クラス分類としては、ii、 管理医療機器です。単回使用ですので、特定保守には該当せず、生物由来のものも含まれ ておりませんので、生物も非該当という案になっています。本日の審査品目の概要につい ては、審査を行った総合機構より御説明します。 ○機構 それでは、医薬品医療機器総合機構より御説明します。資料4-3です。本品の審 査に当たり、御覧の専門委員の先生方の御意見をいただきました。本品は、骨粗鬆性脊椎 圧迫骨折に対し、骨折椎体のキャビティ形成及び椎体高復元及び疼痛緩和を目的とした 「経皮的後弯矯正術(以下、BKP)」に使用される治療システム(以下BKPシステム) 及び骨セメント(以下、BKP骨セメント)です。  BKPの手技ですが、まずレントゲン透視下に経皮的に骨経路を作成し、シリンジを通 して、圧を加えながら椎体の左右よりバルーンを拡張させて、椎体のキャビティを形成し ます。そのうちに粉末と液体を練和させた骨セメントをボーン・フィラー・デバイスを介 して充填させるという手法になっています。  起原又は発見の経緯については審査報告書の5ページです。脊椎圧迫骨折では、機能障 害や慢性疼痛によりQOLや日常生活動作の低下につながりやすく、治療を要します。た だ、保存療法に奏功しない症例にはインストゥルメントを用いた脊椎固定術が実施されて いますが、出血・感染等の合併症が見られ、アライメントの矯正を考慮した、より低侵襲 の治療が求められていました。  米国で骨折椎体にバルーンを挿入・拡張し、キャビティに骨セメントを充填させて骨折 部を安定化する低侵襲治療システムである本品が開発されました。海外における不具合状 況について、審査報告書の6ページを御参照ください。  海外において、本品との因果関係が否定できない不具合を示します。原因については、 BKPシステムではバルーン破損や組織への穿孔、またBKP骨セメントでは、セメント 漏出や、それに伴うと考えられる心停止、血圧低下が多く見られております。  本品に関して表記の資料が提出され、後述の論点を除き、特段な問題は認められなかっ たことから、総合機構は専門協議での議論を踏まえて了承いたしました。  臨床試験について説明します。審査報告書の12ページです。国内臨床試験は本邦の8 施設においてスライドに示す患者を対象として実施されております。結果については、椎 体高の復元率は本治療により、術後1か月で31.3%、術後3か月で33.9%と有意差を認 めております。また、NRS疼痛スコアは、術後早期より有意に低下、それが維持されて おりました。  安全性については、死亡例は認めませんでしたが、重篤例を3例認めております。また、 新規椎体骨折が12例発生しており、そのうち隣接椎体骨折発生例が7件、また術後1か 月までに9件発生しております。バルーン破損が5件あり、申請者にこれを確認したとこ ろ、椎体内の硬化骨がバルーンに接触したために破損しているものが多いということで、 必要な場合には専用の器具を用いて硬化骨を切削する手技を行うこと。またバルーン破損 に関する情報を適切に提供することでリスク低減は可能であると回答し、総合機構はそれ を了承しました。セメント漏出については、10件発生しておりますが、すべて臨床症状 としては発現しておりません。  以後、審査における論点について説明します。まず非臨床について、審査報告書の8〜 10ページを御参照ください。BKP骨セメントのワーキングタイムの妥当性について、 申請者は実使用において、骨セメントは軟塊よりも粘度の低い状態で椎体に注入されると いうことで、軟塊形成時間がより短縮することが想定されていますが、現状では医師から のクレーム報告がないということで、ワーキングタイムの設定値は妥当と回答しておりま す。  2番目、BKP骨セメントの重合熱に対する生体への影響についてですが、非臨床試験 の結果で得られた最大充填量に比べて、臨床試験での使用量は少量であったこと。また、 既存の人工関節用骨セメントで発生する重合熱の生体への影響が、臨床的に問題とならな いということから、BKP骨セメントの重合熱に対する生体への影響は少ないと回答して おります。  総合機構は、硬化物作成の手法、時間設定、周囲環境による骨セメントの影響等の内容 を適切に情報提供することでリスク低減は可能であるとし、これを了承しました。  次に、臨床における論点について説明いたします。審査報告書の15〜17ページを御参 照ください。本臨床試験をもって、本品の有効性が担保できるとする妥当性についてです が、申請者は保存治療を実施した患者の疼痛緩和は、FREE試験の保存治療群と同様、 緩慢傾向であった一方で、BKPを施行した術後に短期間で疼痛緩和が見られておりま す。また、保存治療にて椎体高復元がなされることは考えにくいということで「本臨床試 験をもって本品の有効性は担保可能である」と回答し、総合機構はこれを了承しました。  次に、本治療に伴うリスクが許容範囲内である根拠と、本治療の適切な対象について、 申請者側はBKP治療後の新規椎体骨折発生率は、文献等も勘案してBKP未治療の骨粗 鬆症と比べて、顕著に増加したとは言えない。また、椎体外へのセメント漏出があります ので、臨床試験、市販後調査でも発生していることから、これらの情報を適切に情報提供 することが必要と考えております。これらの事項を踏めば、本治療に伴うリスクは許容範 囲内であると考えております。ただ、保存治療にて除痛可能な脊椎圧迫骨折の患者に対し、 第一選択として、BKP治療を実施することは適切ではなく、適応を臨床試験で確認され ている範囲とすべきと回答しております。  総合機構は、治療対象以外への適応をした場合の有効性・安全性について、現時点で十 分な情報がないことから、申請者側の回答を妥当と判断いたしました。  最後に、本品の臨床における長期成績についてですが、申請者側は国内臨床試験の24 か月及び米国の臨床試験の成績で、骨折椎体高の復元が30%程度が維持されており、ま た背部痛の低下も維持している。  一方で安全性について、本品との因果関係が否定できない重篤な有害事象が発生しなか ったと述べています。また、海外文献においては、術後36か月の報告が最長であり、大 きな問題を認めておりませんが、海外の不具合報告において、新規骨折発生、また骨セメ ントの漏出による臨床症状が発生しており、今後、BKP術後の長期成績の追跡が必要で あると回答しております。  総合機構は、本治療の長期成績は、現時点で十分な情報がないことから、市販後の使用 成績調査で、長期成績を含めた本品の有効性及び安全性を確認することが必要と判断し、 承認条件を付加しました。  総合評価ですが、本品の有効性及び安全性評価の妥当性について、本品の安全性担保が 必要であると考え、本品の特性を十分に理解した医師が、緊急措置を行うことができる施 設で、本品の使用方法の適応を遵守して使用することが必要と判断し、承認条件に付しま した。本品の適応疾患の妥当性及び本品を用いた治療の長期成績については、前述のスラ イドのとおりです。  最後に、総合機構は、以上の論点を踏まえ総合評価し、スライドに示す使用目的、適応 において、本品を承認して差し支えないと判断しました。また、新効能医療機器であり、 再審査期間は3年、生物由来製品は非該当と考えております。また、承認条件としてスラ イドに示すものを付加することとしました。  最後に部会委員からの事前のコメントですが、勝呂委員からのコメントでは、「本品の 問題点として、骨粗鬆症の治療法における臨床的位置付けについて、現時点結論の出てい ない領域の製品であるということです。臨床試験では、骨粗鬆症に伴う圧迫骨折に対する 保存治療の内容が明確でないため、本品の適応が明確となっていないということです。ま た本手法では、骨折部の骨融合が得られないだけでなく、経過とともに、椎体骨セメント 間の緩みや、残存椎体の損傷の可能性があること。また、椎体外へのセメント漏出に伴う 血圧低下、脊髄損傷等の重篤な合併症が報告されています。」  この御意見に基づき、結論として一般に脊椎骨折は、専門医が適切に行うことで、この 療法の適応はほとんどないものと考えられるということです。また、「日本整形外科学会 と脊椎脊髄病学会において、使用に係るガイドラインを作成することが必要だと考えてお ります。」というコメントをしており、機構も大変貴重な意見であると考えております。  これらに対して機構側の見解として、本品の使用適応は適切な保存治療を実施し、どう しても効かない患者に限定することが必要であり、使用者も適応を遵守することが重要だ と考えております。  2番目に、本品の使用について、使用者に添付文書やトレーニングマニュアル等の適正 使用の遵守がなされるべきと考えています。  3番目に、日本整形外科学会と脊椎脊髄病学会のガイドラインは、脊椎骨セメントの使 用方法、適応等を規定する意味で重要と考えており、平成20年1月時点のガイドライン では、Vertebroplastyを規定しており、kyphoplastyについても、ガイドライン作成をお 願いしたいと考えております。  続きまして、寺崎委員から、「ストライカー脊椎専用骨セメントでは、卵円孔開存、ま た肺動静脈奇形と具体的な脳梗塞の原因が書かれておりますが、こちらのセメントについ ては梗塞は書かれていますが、具体的ではないということです。ただ、卵円孔の記載がな くても、マイクロ粒子が詰まることはあり得るでしょうから、広い意味で書いてある、こ れでもいいのかもしれませんが、骨粗鬆症という良性疾患が対象ということで、より慎重 になる。」というコメントをいただいております。  総合機構も、現状のBKP骨セメントは、先ほどのストライカー脊椎専用骨セメントと ほぼ同じような組成であると考えておりまして、このような卵円孔開存、肺動静脈奇形な どのリスクを持つ患者に関しては、脳梗塞の原因となり得ると考えておりますので、添付 文書等での記載をさせていただこうと考えております。以上です。御審議をよろしくお願 いします。 ○笠貫部会長 委員の先生方から御質問、御意見はございますか。先ほど骨セメントでは、 議題3のストライカーの方でも十分議論されたと思いますが、それに今度は器具が付いた ということと、適応が広がったことの問題点をどう捉えるかということで、先ほどガイド ラインという話が出たと思います。 ○勝呂委員 整形外科の方では、まだガイドラインという形ではなくて、今後作らなけれ ばいけないとは思いますが、日本整形外科学会で脊椎脊髄病学会と、かつて平成19年〜 20年にかけて、この問題の依頼があって検討した結果で、脊椎の圧迫骨折、骨折の治癒 過程を客観的に考えた場合、少なくとも保存療法、受傷直後からしっかり治療をして、骨 融合までに3か月ぐらいの期間が必要です。これは単に疼痛という形になっていますが、 疼痛の原因は、一つには偽関節というのがあると思います。例えば3か月、4か月過ぎて 痛みが消えてくる症例もあることも事実です。ですから、偽関節ということは、日本整形 外科学会では、有痛性偽関節という形を、この時点では規定しております。  ですから、2か月というところが果たして適切かどうか。整形外科学会としては、受傷 後3か月間しっかりした保存療法をした上で、2か月だとまだ正しい判断ができないので はないかということが多くの場合あります。  これは別の形ですが、整形外科は手術だけをしているわけではなくて、今、明確に保存 療法のエビデンスの構築に努力をしています。そして、近々出せるとは思いますが、脊椎 の骨粗鬆症に伴う圧迫骨折の保存療法は、確かに患者さんの負担はあるのでしょうが、適 応を考えてしっかり体幹の固定をしてあげた症例は、その後、椎体の圧潰はほとんど起き ません。初期の正しい保存療法をしているか、していないかが、非常に影響を与えると思 うので、その辺のところを2か月で判断していいのかということが一つ問題になります。  それから、この中に簡単にしか書いてなくて、圧迫骨折と単純に言いますが、亀背状に 前方潰れになるだけでなく、いわゆる中にはバーストと言って、上から叩くと大きくと広 がったような形の骨折が必ず入るのです。ですから、脊髄損傷が起きる可能性が高いとい うこともありますし、その辺の判断を適切にしなければいけないので、使用条件、適応の ところをもう少し明確に書く。そして、先行する欧米の数は、確かにこのデータの中にあ り、非常に増えたのでしょうが、その後はほぼストップか、同じか減るかというのもあり ますし、その辺の適応は海外ではより明確になってきているのではないかと思います。本 邦でもこの治療法は、一つの選択肢として非常に良い方法だとは思います。ただ、適応に 明確にしない限り、逆に患者さんにとってマイナスのものとなり得る可能性があります。  現実問題、骨セメントを注入して、直後から脊髄損傷になっている。その場合、整形外 科がレスキューの手術をしているので、そういう症例を我々はいくつか経験していますか ら、最初は適応をより明確にしてスタートしていただきたい。使用者である医師の手術で すから、明確なガイドラインを作成することが必要ではないかと考えています。答えにな ったかどうか分かりませんが、私の個人的な意見です。 ○笠貫部会長 先生の御指摘のあった上で、この適応ということでよろしいですか。この 適応で進められる場合に、先ほどのストライカーの方は施設基準が具体的に添付文書に書 いてありましたが、KYPHON BKPの場合には、施設基準は書いてありますか。これから整 形外科学会でのガイドラインをお作りになるという話でしたが、施設基準の器具の方は添 付文書に書いてありましたか。 ○機構 事務局からお答えします。添付文書の1枚目の左上の警告欄の(3)に、施設基準 というか、「脊椎外科の専門知識を有し、トレーニングを受けた医師のみが行う」という ことで書かせていただいています。ただ、ストライカーの警告欄に書いております実施施 設基準に比べますと、若干こちらのKYPHONの方の書き振りが漠然とした書き振りにはな ってございますので、場合によってはそことの整合をとるような形で検討させていただき たいと思います。 ○笠貫部会長 広く使われてしまうという意味では、先ほど勝呂先生が言われた危惧があ るので、ストライカーとKYPHONの施設基準を少し検討して整合性を図って厳しくすると いうことで、よろしいですか。それではほかにはございませんでしょうか。 ○勝呂委員 一つ質問して良いですか。これは多分機構の方にかと思うのですが、やはり 同じように骨粗鬆症に対してHA、あるいはそういったものが既に承認されて使っていま すね。ハイドロキシトアパタイトをトランスペデキュラールに入れていくものです。その 後の結果がどうなったかわかりますか。臨床的な効果が十分あるということが、ある程度 もし分かれば教えていただきたいのですが。バイオペックスが承認されていると思うのだ けれども、いずれデータが出たら教えていただければと思います。というのは、臨床的に は実は残念ながら人工物というのは何かのスタビリティを与えない限り、成績が悪くて現 実はほとんど使われなくなっているのではないかとは思うのです。ですから、使ってみて、 使われなくなるというのも一つですけれども、余分なことはできれば避けたいというの が、私の気持です。 ○笠貫部会長 これから類似というか、それにかかわるものについては以前に認可したも ののフォローもここで触れていただくと、今の認可についても役に立つということを、今 後検討していただくことでよろしいですか。 ○機構 事務局よりお答えいたします。再審査品目でありまして、結論が出たらまた御報 告をと思いますが、原則あれは骨補填材という位置付けでしたので、こういった用途に使 うことは使用目的には書いてございませんでした。ですから現状でもそちらはまだオフラ ベルになっているかと思います。 ○笠貫部会長 今の御指摘も大事なことだと思いますので、御報告いただけたらと思いま す。 ○機構 先ほどの勝呂先生の御意見で骨セメントの実施基準等においては、受傷後3か月 と書かれていて、今現在の適用は十分な保存療法によっても疼痛が改善されない症例とな っておりまして、そこに期間が明記されていないということだと思います。こちらについ ては3か月ということが大変重要だという御意見だと思いますので、使用方法、効能効果 に関する注意事項として書いていくということを検討したいと思います。 ○笠貫部会長 御検討いただいて、学会レベルでも異論のあるところだとすると、ガイド ラインをまた作っていただくことが必要になると思います。 ○勝呂委員 同じ圧迫骨折でもいろいろなタイプがあるのです。ですからタイプの規定も ないので、実はその辺のところを、これぞ良い適応というのを逆に作って、これをもって いければ、整形外科としては良いとは思うのです。今のところ何でも単なる圧迫骨折とい う形のこの規定しかないので、私は前方の一部椎体の真ん中、前方が潰れているのは、す ごく良い適応だと思うのです。ところが全体が潰れたようなものは、逆にサージカルにし た方がいいし、保存療法をまず考えるべきだと思うので、適応を今一歩絞るという形が患 者さんのためになると思います。 ○笠貫部会長 今の御意見もそうですが、ガイドラインをきちんと検討していただいて、 学問的ないろいろな議論を踏まえて、具体的な適応でもかなり絞った議論を詰めていただ きたいということでお願いしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。  それでは議決に入りたいと思います。「KYPHON BKPシステム」及び「KYPHON BKP骨セ メントHV-R」については、本部会として審査報告書にある条件を付した上で承認を与え て差し支えないものとし、再審査期間は3年間とし、生物由来製品及び特定生物由来製品 への指定は不要とし、KYPHON BKPシステムについては高度管理医療機器として指定し、 特定保守管理医療機器への指定は不要ということでよろしいでしょうか。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは御異議がないようですので、そのよう に議決させていただきます。この審議結果については、次回の薬事分科会において報告す ることにいたします。  それでは続きまして「植込み型補助人工心臓HeartMate XVE LVASについて」輸入承認 の可否について審議を行います。本品目の審議にあたりましては、参考人としまして高松 赤十字病院心臓血管外科部長、西村和修先生に御出席いただいております。よろしくお願 いいたします。 ── 西村参考人入室 ── ○笠貫部会長 それでは審議品目の概要について事務局の方から御説明をお願いいたし ます。 ○事務局 植込み型補助人工心臓HeartMateについて簡単に御説明申し上げます。申請者 はニプロ株式会社でして、こちら植込み型ということで腹部に埋め込みまして、心臓の補 助をする、拍動の補助をするというものです。本品目については先ほども申し上げたニー ズの高い医療機器として選定されており、優先審査品目となっております。また、本品目 については、品目は医療現場において適切に使用されるよう、関連する学会にて実施基準 を作成していただいております。そちらは参考資料5-1でございます。合わせて御覧いた だければと思います。本品目の審査の概要については、審査を行った総合機構より御説明 申し上げます。 ○機構 それでは医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。資料5-1を御覧くださ い。医薬品医療機器総合機構での審査に当たり、御覧の専門委員の御意見をいただきまし た。本品は電力で駆動するダイアフラム型の植込み型左心室補助人工心臓システムであ り、血液ポンプ、システムコントローラ、電源、緊急用のバックアップ機器、その他いく つかの付属品から構成されています。  審査報告書、6、7ページの起原又は発見の経緯についてです。末期重症心不全患者に 対する心臓移植以外の治療法として、近年様々な機械的補助循環法の開発が進められてい ますが、これらは心臓移植までのブリッジ使用や長期の機械的循環補助を必要とする患者 に使用することを目的としたものではありません。一方、本品と同様な植込み型補助人工 心臓としては、ノバコア左心室補助人工心臓システムが承認を取得しましたが、すでに供 給が停止しており、本邦には心臓移植までのブリッジとして、新規に使用可能な植込み型 補助人工心臓は存在しません。本品は空気駆動型IP LVASと電気駆動型VE LVASの臨床使 用経験から、装置の不具合や操作上の問題点などの多くの情報を基に開発されました。  審査報告書7、8ページにおいて、本品の海外における承認、使用状況と不具合につい てお示ししております。米国などで承認を受け、全世界で約□□の販売実績があり、ここ で示すように先に御説明した改良により、不具合の発生率が減少しております。  本品に関して、これらの資料が提出されました。審査報告書6〜10ページに審査結果 を記載しております。  続いて臨床試験に関して御説明いたします。本申請には3種類の臨床試験成績が提出さ れ、すべての臨床試験は本品への改良前のVE LVASを用いて実施されました。まず、審査 報告書15ページから21ページに記載しました米国臨床試験について御説明いたします。  米国では二つの臨床試験が行われ、米国ブリッジ試験では、VE LVASがIP LVASと機能 的に同等であることが確認され、院外使用においても有効性判定基準をすべて満足する試 験成績であり、有害事象に関しても、IP LVASより有意に少ないものでした。  また、心臓移植適応でない患者を対象に、VE LVASの効果を内科的治療群とした米国 REMATCH試験では、LVAS群の生存率が有意に向上することが確認されました。  続いて審査報告書21ページから24ページに記載した国内臨床試験について御説明いた します。第I相、第ii相試験、継続試験から構成され、4施設6例のオープン試験です。 第I相試験はVELVASの院内使用、第ii相試験では院外使用も含めた評価を目的とし、観 察期間中の平均ポンプ係数NYHA分類の身体状態が評価項目とされました。総合的に判 断した結果、これらについて大きな問題は見られませんでした。各試験の補助機関、有害 事象に関する結果をお示ししましたが、最終的に2例の患者がVE LVASの長期使用を経て、 心臓移植まで移行しました。  それでは審査報告書25ページから35ページの総合評価に移ります。まず論点の一つ目、 VE LVASによる評価で、本品の臨床上の有効性及び安全性を担保できるとすることについ てですが、非臨床試験において、改良部分の有効性、安全性は評価され、ポンプ性能など の基本的な性能に影響を及ぼさないことが評価されているため、VE LVASによる評価を、 本品の臨床的評価に外挿することは可能と判断しました。また、海外臨床試験を、移植待 機期間が長い国内の医療環境へ外挿することの妥当性についてですが、ノバコアとの比較 や米国REMATCH試験から、長期使用に耐え得ることが示唆されていますが、本邦では本品 を用いた臨床試験が行われていないため、本邦における使用成績の蓄積により、長期成績 を含めたさらなる有効性及び安全性の確保が期待できるため、承認条件1を課すことが妥 当と判断しました。  三つ目は臨床試験において認められた本品の有害事象と誤作動に対する対策について です。市販後に生じる不具合、有害事象に対して適切な対応をすることで、重篤化させな いことが重要であることから、本品を十分に理解した医師及び医療機関で使用される旨を 承認条件2に課すこと。また、本品は医療機関外での使用も十分に想定されますことから、 医療従事者、患者及びその介護人に対するトレーニングを徹底することが必要である旨を 承認条件3に課すことが妥当と判断しました。また、本品による長期成績は十分に得られ ていないため、承認条件1を課すことにより、長期予後を慎重に観察していくことが必要 であると判断しました。  総合機構は本品をこちらにお示しします使用目的で、承認することで差し支えないと判 断しました。なお、本品は新性能医療機器であり、希少疾病用医療機器に指定されている ことから、再審査期間は7年とし、生物由来製品に該当すると考えています。  以上の審査の結果を踏まえ、御覧の承認条件を課すことが妥当と判断いたしました。な お、石井委員から「ウイルス不活性化において作用機序の異なる処理を組み合わせた工程 を用いることなく、生体弁の製造工程でグルタルアルデヒド用液処理を2度繰り返す工程 が選択された理由」に関してコメントをいただいています。  コメントに対する回答としては、ICHガイドライン、ICHの95Aでは、異なる二 つ以上の製造工程についてのウイルスの不活化除去を評価することが望ましいとされて いますが、1回目のグルタルアルデヒド処理工程に対して実施されたウイルス不活化試験 において、十分なクリアランス指数が得られており、十分なウイルス不活化除去が達成さ れていると判断して差し支えないと考えていること、また、本品の製造に使用される生体 弁は、すでに米国及び国内において承認済みで、十分な臨床実績があり、特段のウイルス 安全性に関する問題は発生していないことから、特段の問題はないものと判断しておりま す。以上です。御審議のほどお願いいたします。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは西村先生から、何かございませんでし ょうか。 ○西村参考人 これは植込み型の拍動型の人工心臓という位置付けになります。日本では 今、東洋紡の体外式の補助人工心臓というのが認可されて、比較的よく使われていますが、 あれは体外式で、大きなコントローラーがあって、ポンプは外にあってということで常に そのコントローラーと一緒に動かなければいけないということです。これは体内植込み式 でドライブライン1本でコントローラーとつながっていますが、コントローラーは一応体 に付けるタイプですので、動けるということです。ですから、これは人工心臓を付けたま ま在宅で管理できるというのが非常に大きな特徴です。以前承認されたノバコアがもう供 給できなくなってしまったので、現在植込み型として、日本で使用できるものがないとい う中では、非常に重要な位置付けになるのではないかと思います。抗血栓性に優れていて、 抗凝固剤がそれほど要らないというのが一つ大きな特徴かと思います。かなり大きいので 埋め込み時に適切な体格が必要といった欠点がありますが、植込み型としては十分使用に 耐え得ると思っております。 ○笠貫部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方から御質問はございませ んでしょうか。 ○荒川委員 現物を見せていただいて、かなり重く大きいということで、かなり臓器との 接触があるのではないかという危惧があるのですが、そのような心配は要らないのです か。 ○西村参考人 埋め込む場所は大きく2か所ありまして、一つは腹壁の腹膜の上です。そ の場合には臓器とは接触しませんが、かなり大きいので間接的に胃や腸を圧迫するという 可能性はあります。もう一つは腹腔内に埋め込むという形で、腹腔内に埋め込んだ場合に はスペースはありますが、その代わり腸管に癒着するというデメリットがあります。現在 主流は一応腹壁に埋め込むという形で、腹腔内でない形が多いです。ただ、その場合はや はりかなり大きいので、体格の制限があります。確か体表面積で1.5平方メートル以上でしたか、機 構でそのような承認条件があります。 ○機構 本機器には穴が開いており、動かないようにうまく体に固定するような方法があ ります。  あとは臨床試験中なのですが、審査報告書の30ページの辺りにその部分が書かれてい るところがあるのですが、左室壁の非薄化という、実はこれは擦れていることが原因では ないかと思われるような有害事象が発生しております。ただ、この件は一つそういう報告 があったのですが、海外でかなりの数が使われているのですが、同様な報告がないという ことで、もしかしたらこれは日本人における体格が小さいということが問題になる可能性 もありますので、そこについては重要な懸念事項です。ですので、今のところは体表面積 1.5平方メートル以上という設定で使うのですが、そこの数字だけにこだわらずに先生に患者さんの 状態をよく吟味していただく、という形の注意喚起をしていくように対応していきたいと 思っています。 ○笠貫部会長 ほかにはございませんでしょうか。ノバコアがもっと大きく、血栓の問題 もあったのですが、今回もノバコアのときの適応の書き方と同じになっていますか。 ○機構 同様ですね。 ○笠貫部会長 これは人工心臓の共通の適応としての表現の仕方で、ブリッジ使用と Destination therapyの使い方が含まれているという読み方なのですが、REMATCH試験は 内科適応でない患者さんとなると、広めることになってしまいます。そうではなくて、65 歳以上とか、糖尿病の患者さんで心臓移植の適応はあるけれども、心臓移植ができない患 者さんを対象にしたという判断でよろしいですか。 ○西村参考人 REMATCHの適応は移植を希望しないとか、あるいは何らかの理由で移植が 適応から外れた患者さんを集めて、2群に分けてやったということです。 ○笠貫部会長 重症度に関しては心臓移植の適応だということでほかに御質問はござい ませんでしょうか。日本には代替品がないという植込み型人工心臓ということでしたが、 よろしいでしょうか。何か御意見はございますか。 ○寺崎委員 植え込んだ後の体位制限はありますでしょうか。俯せや仰向けでは、機械の 重みによる問題点は生じませんか。 ○西村参考人 体位ですか。 ○寺崎委員 はい。 ○西村参考人 それは制限はないと思いますけれども、基本的に余り動くものではないで す。ただ、大きいから少し患者さんが、体位によっては圧迫感を感じるかもしれませんが、 それ以外に機械的には問題はなかったです。 ○笠貫部会長 どうぞ。 ○機構 審査報告書の31ページを御覧いただければと思います。本品なのですが、植込 み可能かどうか十分に検討するよう医師に注意喚起をするということと、確かに類似医療 機器に関して、長期留置に伴う臓器穿孔が報告されていることもあって、本品の留置にお いては体動や体位による周辺臓器を損傷・穿孔させることのないようにして、十分な空間 の確保や固定方法が工夫されることが重要ですので、患者選択にあたって、十分に注意す る旨を注意喚起することが必要と考えております。 ○笠貫部会長 体内に入れた後の医療従事者と介護者と御本人、家族の人を含めて教育プ ログラムがしっかりできていると思います。その後の教育プログラムが認可するときに大 事な要素にはなると思いますので、しっかりしたものができていたと認識はしています。 ○機構 おっしゃるとおりでして、植込みの医師に対するトレーニングプログラムはきっ ちりありますし、その後に介護される方たちとか、植え込まれた本人様も注意すべきこと がたくさんあります。バッテリー駆動ですので、例えば散歩中にとか、いろいろなリスク を抱えるわけですので、介護者を含めて、そういったトレーニングは段階に応じて用意さ れており、最初の植え込まれたときもそうですし、退院時のプログラムとか、そこもすべ てきっちり整えられている状況にはなっています。まず、それを整えた上で臨床試験が行 われて、いまのこの成績が出ているとお考えいただいて結構だと思います。 ○笠貫部会長 それでよろしいでしょうか。ほかには御意見はございませんでしょうか。 それでは御異議がなければ議決に入らせていただきたいと思います。「植込み型補助人工 心臓HeartMate XVE LVAS」については、本部会として審査報告書にある条件を付した上 で、承認を与えて差し支えないものとし、再審査期間は7年間とし、また、生物由来製品 に指定し、特定生物由来製品への指定は不要としてよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、そのように議決させていただきます。この審議結果につい ては次回の薬事分科会において報告することにいたします。これで本議題については終了 いたしましたので、参考人の西村先生には御退席をお願いしたいと思います。どうも貴重 な御意見をありがとうございました。 ── 西村参考人退室 ── ○笠貫部会長 それでは次に報告事項に入りたいと思います。議題6、部会報告品目につ いて、事務局より御説明をお願いいたします。 ○事務局 本年8月1日〜8月31日までの1か月間に承認された品目のうち、本部会の 報告対象となっているものについて御報告させていただきます。こちらは資料6-1で、医 療機器3品目、それから体外診断用医薬品については1品目です。事前送付で時間の都合 もございまして、恐縮ですが、この場での詳細の説明は割愛させていただきたいと思いま す。以上でございます。 ○笠貫部会長 それでは了解させていただきました。報告品目については何か御質問はご ざいますでしょうか。それではこの報告事項に関しての議題は終了とさせていただきま す。今日は私の不手際で時間を超過してしまいまして申し訳ございませんでしたが、最後 に事務局からの連絡事項をお願いいたします。 ○医療機器審査管理室長 本日は、長時間にわたりましてありがとうございます。  事前にしております次回の御案内ですが、12月24日(木)午後2時からの開催を予定し ております。現在のところ議題の数がかなり多くなりそうでして、もしかしたら、時間が 当初予定しておりました、通常の2時間を上回るような格好で、御案内させていただくこ とになるかもしれません。また、その際はよろしくお願いしたいと思います。   以上 をもちまして、部会の方は終了にさせていただきます。どうもありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 医療機器審査管理室 室長補佐 江原(内線 2912)      - 1 -