09/07/31 第23回労働政策審議会議事録 第23回労働政策審議会 ○日時:平成21年7月31日(金)13:00〜 ○場所:厚生労働省省議室(9階) ○出席者 【公益代表】 今田委員、今野委員、岩村委員、大橋(勇)委員、勝委員、諏訪委員、        清家委員 【労働者代表】加藤委員、河野委員、古賀委員、滝澤委員、土屋委員、内藤委員、        南雲委員、西原委員、宮下委員、山口委員 【使用者代表】市川委員、伊藤委員、大橋(洋)委員、岡田委員、川本委員、指田委員、        土谷委員 【事務局】  太田厚生労働審議官、岡崎総括審議官、村木総括審議官(国際担当)、        金子労働基準局長、森山職業安定局長、小野職業能力開発局長、        伊岐雇用均等・児童家庭局長、中野政策統括官、生田政策評価審議官、        酒光労働政策担当参事官 ○議題 (1)平成22年度労働政策の重点事項(案)について (2)安心社会実現会議報告について (3)平成21年版労働経済の分析について (4)法案の国会審議結果について (5)その他 ○配布資料  資料1−1 現下の雇用失業情勢及び雇用対策の実施状況について  資料1−2 平成22年度労働政策の重点事項(案)  資料1−3 経済財政改革の基本方針2009(抄)  資料2   安心社会実現会議報告(安心と活力の日本へ)  資料3   平成21年版労働経済の分析(概要)  資料4   第171回通常国会における法案審議結果 ○諏訪会長 皆さま、こんにちは。お暑い中をご参集いただきまして大変ありがとうござい ます。予定される皆様がお席にお着きになられているようでございますから、ただいまから 第23回労働政策審議会を開催させていただきます。  議事に入ります前に、7月24日付けで厚生労働省における人事異動がございましたので ご紹介させていただきます。最初に太田厚生労働審議官でございます。 ○太田厚生労働審議官 太田でございます。よろしくお願いします。 ○諏訪会長 続きまして岡崎総括審議官でございます。 ○岡崎総括審議官 岡崎です。よろしくお願いします。 ○諏訪会長 森山職業安定局長です。 ○森山職業安定局長 森山でございます。よろしくお願いします。 ○諏訪会長 小野職業能力開発局長です。 ○小野職業能力開発局長 政策統括官時代は皆様に大変お世話になりました。今度は職業能 力開発局です。どうぞよろしくお願いします。 ○諏訪会長 続きまして伊岐雇用均等・児童家庭局長です。 ○伊岐雇用均等・児童家庭局長 伊岐でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○諏訪会長 次に中野政策統括官です。 ○中野政策統括官 中野でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○諏訪会長 生田政策評価審議官でございます。 ○生田政策評価審議官 生田でございます。労働政策担当参事官以降、引き続きお世話にな ります。 ○諏訪会長 酒光労働政策担当参事官でございます。 ○酒光労働政策担当参事官 酒光です。生田の後任になりました。引き続きよろしくお願い します。 ○諏訪会長 では、以上の事務局を代表いたしまして太田厚生労働審議官からご挨拶をいた だきたいと思います。 ○太田厚生労働審議官 この度、7月24日付けの人事で厚生労働審議官を仰せつかりまし た太田でございます。こちら側のメンバーも大分変わりましたけれども、一同よろしくお願 い申し上げます。  労働政策審議会の委員の皆様方には、日頃から労働行政の推進に当たりまして格段のご理 解、ご協力、そしてご指導を賜っておりまして厚く御礼申し上げます。ご案内のとおり、雇 用情勢は厳しさを増しているわけでございまして、今朝、6月の統計が発表になったわけで ございますけれども、また完全失業率が0.2ポイント上がって5.4%でございます。5年半振 りに5%台になって、また上昇を続けているという状況でございます。また有効求人倍率も 過去最低の0.43倍ということで記録を更新しており、全体は更に厳しさを増しているという 状況でございます。  今後の見通しにつきましても景気の底入れ、あるいは持ち直しというように言われており ますけれども、まだまだ鉱工業生産指数が低水準ということがございますし、また一般には やはり雇用の改善は景気の回復よりも半年から1年遅れるということもございますので、引 き続き厳しい状況が続くものと考えているところでございます。  こうした状況を受けまして、審議会でも議論いただきまして、昨年は2回の補正予算で雇 用対策を講じ、また今年度の予算、さらには第一次補正予算では過去最大の2兆5,000億円の 予算を計上して緊急雇用対策を実施している状況でございます。その実施状況につきまして は後ほどご説明申し上げますけれども、例えば雇用調整助成金につきましては、6月の休業 届の対象労働者数が238万人となっているわけでございまして、企業の雇用維持に大きな効 果を上げているのではないかと考えております。また、対策の柱となる、いわゆる7,000億 円の基金事業、特に雇用保険を受給していない方の訓練や手当の支給につきましては、7月 15日以降、全国のハローワークで相談受付を開始しておりまして、約2週間で既に訓練の 相談件数が8,000件を超え、給付金の相談件数も1万2,000件を超える状況でございます。こ うした対策を着実に実施いたしまして、雇用の改善のため全力で取り組んでまいりたいと考 えております。  また、中長期的に、あるいは中期的には人口減少社会の中で、やはり人材への投資、働き 方の改革、若者・女性・高齢者・障害者の全員参加、あるいは非正規労働者への総合対策、 雇用創出、こういう大きな5つの柱を中心に取り組んでまいりたいと考えているところでご ざいます。  皆様方、労働政策の分野におきましては、従来から現場をいちばんよく知っている当事者 であります労使が労働現場のルールを決めるという基本原則がございまして、この基本原則 に則りまして、学識の方も入っていただきまして、この三者構成の審議会で十分に議論した 上でコンセンサスを作っていくことが極めて重要でございます。審議会の委員の皆様方にお かれましては、今後の労働政策の方向性などにつきまして、総合的な見地から調査、審議を 行うという大変重要な役割を担っていただくことになりますので、どうぞよろしくお願い申 し上げます。  今日の審議会でございますけれども、平成22年度の労働政策の重点事項などを議題とし ているところでございます。厚生労働省といたしましては、今後の概算要求の作業を進める に当たりまして、委員の皆様の幅広いご見識と豊かなご経験に基づく貴重なご意見を賜りま して、それを踏まえて取り組んでまいりたいと考えているところでございますので、どうぞ よろしくお願い申し上げます。私からは以上でございます。 ○諏訪会長 どうもありがとうございました。それでは早速、議事に入ります。本日の議題 は、第1に「平成22年度労働政策の重点事項(案)について」でございます。第2に「安 心社会実現会議報告について」でございます。第3に「平成21年版労働経済の分析につい て」、第4に「法案の国会審議結果について」でございます。第5に「その他」となってお ります。それでは、最初に議題1及び議題2につきまして、事務局からご説明をお願いした いと思います。 ○酒光労働政策担当参事官 それでは私、酒光からご説明をいたします。主に資料1−1、 資料1−2を中心にご説明したいと思います。  資料1−1は、最近の雇用情勢、雇用対策の実施状況についてです。太田から今お話した ところでございますが、今朝、失業率の数字が出てまいりまして、6月の失業率は5.4%、 先月は5.2%ですから、0.2%上がっております。下のグラフの方がわかりやすいかと思いま すけれども、過去最高の5.5%にだんだん近づいてきている状況でございます。また、有効 求人倍率も低下を続けておりまして、6月の有効求人倍率は0.43、先月がもう既に過去最低 だったのですけれども、それを更新したという状況でございます。  次の頁をご覧いただきたいと思います。雇止め等の状況ですが、私どもが雇用調整を実施 済み及び実施予定ということで把握していますのが約23万人ということでございます。そ のうち派遣が約14万人で、製造業が中心になっております。この辺の状況については、引 き続き厳しい状況が続いていることがお分かりいただけるかと思います。  続きまして、これまで審議会の先生方に色々とご指導いただきながら作ってまいりました 雇用対策の実施状況について、簡単にご報告したいと思います。3頁と4頁とありますが、 3頁が平成20年度以降実施している対策の実施状況でありまして、4頁目が経済危機対策、 補正予算で盛り込んだものの実施状況でございます。  雇用調整助成金は、対象者数が6月で238万人ということでございまして、かなりの雇用 安定の効果があったのではないかと考えております。それから、この頁でみますと、再就職 の支援、能力開発ということで、「緊急人材育成・就職支援基金」でございますが、7,000 億円の基金を使っておりまして、15日から相談を受け付けております。既に8,000件以上 の相談者がありまして、訓練は7月29日から実施をしております。給付金も8月早々に支 払いたいということで予定しており、既に1万2,600件の相談を受けております。その他の 中小企業における実習型の訓練ですとか職場体験についても順次実施しております。  それからハローワークの機能ですけれども、このような助成金ですとか、あるいは求人開 拓の必要性から強化をいたしておりまして、6月以降、相談員は7,000人、職員も300人増加 するということで配置しております。住宅・生活支援は、1,700億円の自治体あるいは社協 で行う貸付け事業等でございますけれども、これについては今のところ10月からの実施と いうことで準備を進めております。  前に戻っていただきまして、3頁の真ん中の四角のところにありますが、雇用創出事業の 関係で「ふるさと雇用再生特別交付金」が2,500億円、それから「緊急雇用創出事業」が当 初1,500億円、その後3,000億円積み増して4,500億円ということで、これも都道府県あるい はその関係者の方々と協力して推進していきたいと考えております。  それから、セーフティネット対策と書いてあるところで、雇用促進住宅への入居あっせん ですけれども、これも既に7,000件以上を超える入居等を行ってきております。時間の関係 であとの説明は省略いたしますが、主な事業の実施状況は以上のとおりでございまして、で きる限り迅速に実施に結び付けていきたいと考えております。 ○酒光労働政策担当参事官 続きまして資料1−2で、「平成22年度労働政策の重点事項 (案)」についてご説明いたします。まず、ご説明の前に、基本的な考え方ですけれども、 当然今のような厳しい状況を踏まえて緊急雇用対策を実施しておりますが、それだけではな く中期的な観点からも危機の克服をやっていかなければいけないということで、これまでも 「安心社会実現会議」ですとか「骨太の方針2009」で雇用を軸とした安定社会の実現という ものが謳われております。そのような線に沿って今回の対策も講じておりますし、また、さ らに基本といたしまして本審議会で平成19年12月に建議をいただいております。その建 議の中でも、中長期的に一貫性の高い雇用労働政策を行っていかなければいけない、その考 え方としては「公正の確保」「安定の確保」「多様性の尊重」という3つの原則というもの を尊重していくべきであるとご指摘いただいております。今回の施策の検討におきましても、 そのような考え方に基づいて実施をしております。  今回の重点事項ですけれども、大きく3つの分野、3つの柱に分けて組み立てております。 その1つが1頁以降ですけれども、「安心・活力の実現に向けた雇用対策の推進」、いわゆ るセーフティネット対策でございます。それから2番目が8頁以降でございますが、「働き 方の改革等」、仕事と生活の調和ですとか労働基準の遵守です。先ほどの柱で言いますと、 雇用対策のところは「安定」ということだと思いますし、働き方の改革というのは「公正」 ですとか「多様性」に相当するものだと思います。最後に11頁ですが、「国際社会への対 応等」、その他の対策をまとめております。それではそれぞれについてご説明いたします。  雇用対策は主に5つの柱で構成しております。1つ目が当面の対策としての緊急雇用、残 りの4つは中期的な対策ということで、人材への投資、雇用創出、若年・女性・高齢者・障 害者の雇用、非正規労働ということになっております。  まず「緊急雇用」の関係でございますけれども、先ほどご説明いたしましたとおりの内容 がほぼ書いてございますが、雇用調整助成金の活用によりまして事業主の支援を実施してい く、あるいは「緊急人材育成・就職支援基金」に基づいて訓練の拡充、あるいは訓練期間中 の生活の安定を図るための給付を支給していくというようなことを取り組んでまいります。 それから、雇用創出対策としては先ほどの交付金事業、あるいは緊急雇用創出事業による雇 用創出を図ってまいりたいと考えております。1頁目の下で、いわゆる育休切りへの対策に ついてもきちんとやっていきたいと考えております。2頁目ですが、未払賃金の立替払い、 だいぶ未払賃金も増えているということですので、制度の円滑な運用を図ってまいりたいと 考えております。  続きまして雇用対策の2番目の柱ですが、「人材への投資」ということで、新分野、ある いは成長を見込まれる医療、福祉、農業等の分野に重点を置いた訓練を行ってまいりたい。 その中でも保育士ですとか介護労働者に関する訓練あるいは相談・援助等を行ってまいりた いと考えております。それから、産業間の労働移動についてもきちんと行って、失業なき労 働移動を促進してまいりたい。ひとり親家庭については、職業訓練ですとか生活支援、こう いったものを組み合わせて再就職支援に取り組んでまいりたいと考えております。それから ここのところ活用しておりますジョブ・カード制度でございますけれども、定着に向けて色 々と努力してまいりたいということで、更なる制度の充実としてキャリア形成のキャリアマ ップを作成するですとか、あるいは各種検定を行い、モデル評価シートを作る、キャリア・ コンサルタントを育成するということで、ジョブ・カード制度をより実のあるものにしてい きたいと考えております。能力評価のインフラ整備ということで技能検定、非正規労働者に ついての評価についても整備してまいりたいと考えております。これの3番目にございます が、教育訓練における国際標準化、いわゆるISO化の動きがございますので、これについ ても積極的に対応してまいりたいと考えております。その他、3頁目にございますが、学校 教育との連携によるキャリア形成の支援ですとか、中小企業における訓練、あるいはものづ くり立国の推進等に取り組んでまいりたいと思います。  3番目が「雇用の創出」ということで、先ほど申し上げました交付金事業ですとか、緊急 雇用創出事業、あるいは地域の雇用改革関連事業をきちんと行っていく。それに当たって、 これまで色々とノウハウを蓄積しておりますので、そういったものを活用してまいりたいと 思います。時間の関係で大分省略させていただきますが、その他、介護、農林、漁業、ある いは中小企業の雇用安定のための支援に取り組んでまいりたいと考えております。  4頁目ですが、雇用安定の第4の柱として「若者・女性・高齢者・障害者等の就業実現」 ということで、若者については自立を促進するということです。色々な方がいらっしゃいま すので、ここで大きく学卒者、フリーター、ニートというふうに分けております。学卒者に つきまして、来年は特に厳しくなることが想定されますので就職支援というものをきちんと 行う、そのための全国ネットの拠点、支援拠点を充実させてもらいたいと考えております。 フリーターにつきましては、正規雇用化のための各種施策をやっておりますので、これに基 づく正規雇用化の推進を進めてまいりたいと考えております。それからニートの自立につき ましては、若者サポートステーションの拡充等によって自立支援を強化してまいりたいと考 えております。  女性の関係ですけれども、女性の就業希望を実現するために仕事と家庭の両立支援という ことで、育介法が改正されて短時間制度が義務化されましたので、その定着を図っていく等 の措置を講じてまいりたいと考えております。女性のキャリア継続ということで、均等法の 履行確保やポジティブ・アクションを進めるためのノウハウ提供等、それから、支援拠点に なりますマザーズハローワークの拡充等を図ってまいりたいと考えております。  5頁目ですが、いくつになっても働ける社会ということで、希望すればいくつまでも働け る高齢者雇用の促進、「70歳まで働ける企業」への取組の奨励等を図ってまいりたいと考 えております。高齢者に関しては、起業とか社会貢献活動とか色々な働き方がありますので、 そういったものについての支援も進めてまいりたいと思います。  次に障害者ですけれども、障害者の権利条約の批准に向けまして、ここでは職場における 合理的配慮ということが求められておりますので、そういうことも踏まえながら障害者雇用 促進法の改正について検討してまいりたいと考えております。その他「チーム支援」とか発 達障害者に対するカウンセリングの強化、こういったものについて努めてまいりたいと考え ております。それから生活保護世帯につきましても「就労支援チーム」による就労支援を進 めてまいりたいと考えております。  続きまして6頁でございますが、「非正規労働者への総合的対策」ということで、これに つきましては色々とご議論いただいてきておりますが、パートタイム労働者の正社員との均 衡待遇の確保、あるいは正社員転換の促進、これについて事業主の支援等を行っていきたい と考えております。有期契約労働者の雇用管理につきましては、様々な助成制度もあります けれども、更に今後の制度の在り方について検討してまいりたいと考えております。  派遣労働者につきましては、法令遵守に加え、2番目のポツにもありますけれども、派遣 法改正法等が廃案になりましたので、製造業の業務派遣、あるいは登録型派遣、特定労働者 派遣の在り方等について、改めて検討してまいりたいと考えております。  それから能力開発の支援ですけれども、非正規労働者に対するキャリア・コンサルティン グの推進ですとか、ジョブ・カード制度の活用、こういったものを進めていきたいと考えて おりますし、住宅を失った方についての支援等もきめ細かに行ってまいりたいと考えており ます。  それから7頁で、非正規労働者の方全般の総合的な支援体制ということで、現在も支援セ ンターがありますけれども、これに生活支援の機能等を充実させまして総合支援センターと して設置、拡充してまいりたいと考えております。以上が雇用関係でございます。  次に2番目の「働き方の改革等」です。こちらは大きく4つに分けてございます。時間の 関係で大分端折らせて説明させていただきます。1つ目は「安心して働ける社会を実現する ための基盤整備」ということで、総合労働相談コーナーを充実させるとか、あるいは労働条 件の改善、特に必要な業種等への指導等を実施してまいりたいと考えております。そのほか 労働条件に関する情報提供、あるいは労働保険の適用促進、雇用機会均等の実現等に努めて まいります。  2番目は「仕事と生活の調和の実現」ということで、「働き方改革プラン」(仮称)を推 進してまいりたいと考えております。具体的には、長時間労働の抑制ですとか、年休の取得 促進とか、そういったものに向けて取り組んでいただく企業を支援していく、あるいは景気 回復した際に残業がまた増えたりしないように取組を進めてまいりたいと考えております。  それから基準法につきましては、割増賃金が引き上げられましたので、引き続きその履行 確保に努めてまいりたいと考えております。その他、男性の育児休業の取得促進ですとか、 短時間正社員制度の導入・定着、あるいはテレワークの普及、これは引き続き大事な仕事で ありますので進めてまいりたいと考えておりますし、在宅就業につきましても、仕事と生活 の調和という観点から重要な課題でございますので、必要な支援策を検討してまいりたいと 考えております。それから10頁ですが、生涯キャリア形成の支援ということで、キャリア を企業あるいは個人のキャリア形成の仕方について診断をする、キャリア健診といったもの を進めてまいりたいと考えております。  次に(3)の非正規労働者の待遇改善は、先ほどと重なりますので説明を省略いたします。  4番目の柱としては労働災害、あるいはメンタルヘルスということで、企業におけるメン タルヘルス対策ですとか、重篤な労働災害の防止に力を入れてやってまいりたいと思います。 また化学物質、あるいはアスベスト、こういったものの障害の防止等に努めてまいりたいと 考えております。  11頁です。「国際社会への対応等」ということで、そのほかまとめてございます。2番 目にございますように、外国人労働者問題への適切な対応、大変雇用情勢が厳しくなる中で しわ寄せを受けている部分でもございますけれども、大きく分けまして外国人技能実習生、 あるいは日系人、高度外国人材です。技能実習の関係につきましては、入管法が改正されま して研修ですとか実習のやり方が変わりまして、当初から雇用ということで位置付けており ますけれども、その改正の趣旨を踏まえましてガイドラインの改正、あるいは最初に行いま す講習、こうしたものを確実に実施していきたいと考えております。日系人につきましては 相談・支援体制を強化する、通訳ですとか相談員の配置に努めていきたいと考えております。 それから高度人材につきましては、例えば留学生の方がいちばん大きな予備軍でありますけ れども、そうしたところのインターンシップの推進ですとか、あるいは受入体制の整備に努 めてまいりたいと考えております。その他ございますけれども、時間の関係で省略いたしま すが、11頁の下の方には各独立行政法人の見直しを掲げております。  以上、労働政策の重点事項でございます。以下の資料は時間の関係もありますので、ご紹 介だけにさせていただきます。資料1−3が経済財政改革の基本方針、いわゆる骨太方針で ございます。こちらでも抜書きの1頁にございますように「雇用を軸とした安心社会」とい うものがはっきりと謳われているということでございます。それから資料2はこれの基にな りました安心社会実現会議報告(6月15日付け)でございまして、こちらでも例えば2頁 で、やはり安心社会の基本は働くことが報われる社会であること、あるいは働いて生活する ことを共に支え合う社会であること等が謳われておりますし、3頁の一番下のところで、雇 用の安心こそが5つの安心、5つの安心というのはその他子育てとか教育とか健康とか老後 とかありますけれども、そうした中の要であると位置付けられております。  このような考え方に沿って、今回の労働政策の重点事項を検討してまいりました。以上で ございます。 ○諏訪会長 どうもありがとうございました。ただ今の一連の説明につきまして、ご質問、 ご意見等がございましたら、ご自由にご発言をいただきたいと思います。 ○古賀委員 平成22年度の労働政策の重点事項について、個別の課題を、後ほど労働側メ ンバーが提起いたしますが、緊急雇用対策とともに、「雇用を軸とした安心社会の実現」と いう大きな構え、柱については、私どもが今まで主張してきたことでございますので、それ らのことをご反映いただいたとして評価をしたいと思います。  その上で、私からは、足下の対策として2点少し課題提起をさせていただきたいと思いま す。1つは、先ほどの報告でもございましたように、雇用失業情勢はより一層厳しさを増し ています。企業による雇用維持の支援であるとか、あるいはセーフティネットの拡充という のは、極めて重要ですが、その根っこにあるより積極的な求人開拓をして、そして再雇用、 再就職に結び付ける。そういうところにより力を置くべきではないかという点が1点です。  2つ目は、重点事項の中にもありますが、安心して働ける社会を実現するための基盤整備 として、指導監督の徹底とか、あるいはワンストップ相談体制の整備というものが個別課題 として掲げられており、それらのことは極めて重要なことだと思います。  ただ、現場からは、総合労働相談コーナーの相談員について、必ずしも親身に、丁寧に対 応がされていない等の声が寄せられております。大変な状況の中で繁忙を極め、窓口も大変 だと思いますが、相談員の数の確保も重要ですが、研修等によって質の向上にも努めていた だきたい。これらの課題に厚労省、労働行政としても是非努力をいただきたい。このことを お伝えしておきたいと思います。以上です。 ○土屋委員 私の方からは、「安心・活力の実現に向けた雇用対策の推進」に関連して、緊 急雇用対策の推進について意見を申し上げたいと思います。  まず、私どもとしても、これまでの一連の緊急雇用対策につきましては、一定の評価をい たしているところです。しかし、一方では、昨年の秋からの急激な雇用の環境変化という背 景があったにせよ、全体的には、対症療法的な対策であった感が否めないという印象を持っ ております。したがいまして、このことの反省すべき点については、真摯に受け止めるべき だと考えております。例えば、資料1−2にある再就職・能力開発対策に関して言えば、実 質的な制度運用の開始までの間に、雇用保険の失業給付の受給期間が終わってしまうケース も出てくるということが想定されるということです。つきましては、難しいことでもありま しょうが、恒久法の創設等についても検討すべきではないかと考えております。同じく資料 1−2の雇用創出対策に関して言えば、具体的対策とフォローがなければ、折角、予算措置 をしたにしても、無駄になってしまうということを大変危惧してございます。そういう意味 では、今後に向けては、このような課題についても洗い出しを行っていただいて、具体的な 対策への検討を行っていただくように要請したいということです。以上です。 ○西原委員 私のほうからは、2頁の「人材への投資」に関連して何点か要望を申し上げた いと思います。  人材への投資の2項目で、産業間労働移動の促進というものがございます。今後の日本の 経済構造を考えても、かなり産業構造の転換等を含めて、加速していくのではないかと受け 止めております。私は自動車の関係ですので、そういったものはひしひしと感じている状況 もございます。  そのような中で、産業間労働移動の促進に関して、ここでは「出向等あっせん機能の強化 や助成金の活用など」と書かれておりますが、それ以前の問題として、例えば、産業情勢の 見極めであるとか、人材ニーズの明確化であるとか、雇用創出の可能性の把握、基本は産業 構造転換の方向性などが重要です。例えば、低炭素社会に向けた新産業創出等の、いわゆる 産業政策との整合性等、かなり総合的に考えていかなければならない課題ではないかと思っ ております。そういった面では、いわゆる縦割を廃して、関係省庁間での政策連携というの が極めて重要な施策ではないかと思っております。そういった観点での取組を是非重視して もらいたいということです。  もう1点は、この関係では地域を基点とした形での取組というのが、やはりポイントでは ないかと思います。働く人の立場から見ても、なかなか地域を跨ってというのは、非常に難 易度が高い部分でもあります。いま各地域において、ものづくりの関係でいくと、基盤技術 や先端技術を活用した産業クラスターの形成や、地場産業の活性化等の取組もなされつつあ る状況にございます。したがって、この種の取組みについては、是非、地方ごとの実態を踏 まえた、ある意味、地域を基点とした形で活動の強化を図っていただきたいということです。  この項目の4つ目にジョブ・カードの関係があります。これについては、本格実施後、約 1年を経過したと認識しておりますが、経済環境の厳しさもありまして訓練生の受入れ等、 かなり関係者の方は努力されていると思うのですが、なかなかその辺の促進という部分では まだまだ課題があるのではないかと思っております。ハローワークとの連携とか、ある意味 雇用の受け皿づくり、制度内容の浸透等を含めて、様々な課題があるかと思いますが、これ については総合的な力で、何としてでも強化していっていただきたいということで要請です。  最後に、ジョブ・カードの関係で、主に職業能力評価インフラ整備の推進というのがあり ます。この職業能力評価のインフラ整備というのは、特に、非正規労働者の処遇改善、均等 待遇を目指していく上でも、大変重要な施策ではないかとも考えております。ある意味、企 業間を超えて雇用を維持するといった観点で、例えば、同一産業内での出向とか、業務運営 等を行っていく際にも効率的にこのことに寄与する施策につながっていくのではないかと思 っております。  これは実は、私どもの関係でも取り組みましたし、職業能力評価に係る評価基準自身は、 各産業、職種ごとにかなり拡大していることも事実です。一方で、自らを振り返ってみても、 どこまでこれが活用できているのかということについては、作るところまではかなり進んで いるのですが、一部の業種、職種を除いて、なかなか十分活用されていないのではないかと いう受け止めもしております。好事例の紹介も含めて、現状はいったいどうなっているのか、 一度、いま現在での状況を振り返りながら、引き続き並行して活動の強化に努める、こんな 形で進めるべきではないかと思っております。是非、要望ということでご検討をいただけれ ばありがたいと思っております。以上です。 ○諏訪会長 それでは今3人の労働側の委員の先生方から、いくつか質問が出ましたので、 まず、このお三方をまとめて、事務局側から何かご意見があればいただきたいと思います。 ○森山職業安定局長 いくつか局に跨がっている意見がございますが、職業安定関係のこと でご説明をさせていただきます。まず、古賀委員からお話があった求人開拓の件です。その 前に、厚労審からお話がありましたように、大変厳しい雇用失業情勢ということで、生産が 上向きとは言え、なかなか失業率は遅行指標でございますので、今後の厳しい情勢を懸念し ているところです。  そういう中で、求人開拓ですが、まさにこれは非常に重要であるということです。これは ハローワークのマッチングの基本です。私どもはこれを重要ということで、平成21年度当 初の185人を配置していた求人開拓推進員を大幅に拡充させていただきました。現在のとこ ろ1,400人まで拡充しておりまして、すでにハローワークにおいて地域と密接に求人開拓を 強力に展開していこうということです。まさに古賀委員からお話がございましたように、私 どももこの点の強化に色々な工夫を行ってまいりたいと考えているところです。  土屋委員から、雇用緊急対策の恒久化というお話がございました。3年間の基金でやって おりますので、これを私どもは着実に推進をしていく、実効あらしめるようにしっかりとや っていきたいと考えているところです。そういう施行状況等、そして、いろいろな方々のご 意見等を踏まえながら対応していきたいと考えております。まずは、やはり、この基金を何 としても迅速に、この政策を展開していきたいと考えているところです。  西原委員からお話がありました、将来の産業見通し、こういうものを持ってしっかりやっ ていく、これはまさに私どもも重要であると思っております。これは今の政策を展開する中 でも各省庁と色々な関係がございます。例えば、農業分野であれば農林省と、あるいは経産 省等とです。農林省の関係では、農林の職業開拓等も含めて、今はこの正式な会議を設けて おりまして、連携も強めているところです。今後とも、各省とも連携を取りながら進めてい きたいと考えているところです。とりあえず、いま安定局関係ではそういうことで、お答え させていただいたところです。 ○小野職業能力開発局長 人材育成の関係でお話がございました。特に、西原委員の方から お話があったかと思います。産業間の労働移動を進める、あるいは、あっせんするというだ けではなくて、当然そこに職種が転換するということが伴うわけですので、やはり、そうい う人たちに対して、職業訓練をセットにして、色々なサービスを提供していくということが 当然必要だろうと思います。  その時に、先ほどお話が出ましたが、特にこれから成長が期待できる分野に雇用を吸収し てもらうということですから、そういう産業ニーズに伴った実効のある職業訓練を実施して いくという点は、官民含めて取り組んでいきたいと思っております。  ジョブ・カードにつきましては、商工会議所さんにも色々とご協力をいただいて、色々な ご意見をいただきながら、今はちょうど10万強と、かなり交付件数が増えてまいりました。 特に正規雇用の経験が少ない方を対象にして、能力評価も含めて就職あっせんにつなげてい くというプランでやっております。雇用型の訓練、実際に雇用をしていただきながら訓練を していく。あるいは、委託型の訓練ということで、これも雇用の吸収力のある分野に向けて ジョブ・カードを活用して、対応していきたいと思っております。  また、非正規の方だけではなくて、先ほど職種転換のお話が出ましたが、すでに正規社員 の経験のある方に対しても、やはり、職種が転換をする場合にはジョブ・カードを活用して もらって、訓練を受けていただくという形で進めていきたいと思っております。  非正規の労働者の処遇改善との関係で、特に能力評価制度のインフラ整備は非常に大事だ というご指摘をいただきました。これは私どもも全く同じ認識でございまして、いま能力評 価基準は42職種まで拡大して、これは業界団体の方、関係者の方にも委員として入ってい ただいて、能力評価がきちんとできるように、それを踏まえて職業訓練、具体的な就職促進 に結び付けていくということで、中央職業能力開発協会の方で策定しているものです。何よ りも、現場でこれが使われるということが必要ですので、来年度は一歩踏み込みまして、こ ういう評価基準を策定した業種を対象にして、先ほど説明がありましたが、モデル事業を実 施して、その中で具体的なキャリア形成のプロセス、キャリアマップの作成、キャリア・コ ンサルタントの育成などを通じて、こういうものが実際に企業の労務管理の中で、あるいは 処遇に活かされていく形で使えるように、今まで以上の取組をしていきたいと思っておりま す。  地域レベルで、特にものづくり等、訓練については具体的な対応をしていくべきではない かというお話がございました。やはり、訓練を行う場合、先ほども申しましたが、産業界の ニーズ、企業のニーズ、地域の色々なニーズに応えていくような訓練を実施していかないと 就職に結び付けていくことはできないということで、これは中小企業も含めて、関係機関、 労働局、雇用・能力開発機構、色々な機関に入ってもらって、実際に行っている訓練という ものが具体的にどういう形で就職に結び付いているのか、各地域ごとに就職率も点検する。 あるいは今やっている訓練の内容が本当にその地域のニーズ、あるいは産業に応えられてい るのか。PDCAサイクルの中で、これを逐次見直していくという協議会を地域ごとに持ってお りますので、そういう形で地域のニーズに合った訓練を実施していける仕組みをしっかり活 用しながら、具体的な能力開発を進めていきたいと思っております。以上です。 ○岡崎総括審議官 総合労働相談の関係ですが、相談員につきましては、社会保険労務士の 方とか、あるいは企業で労務管理をやっておられた方等を中心にお願いしております。これ までも研修はやってきたつもりですが、古賀委員からご指摘のような、まだご批判があると いうことであれば、その研修も十分やって対応していきたいと思っております。今般、総合 労働相談に限らず、職員、相談員を増やしますので、これは研修も十分やって、皆様方から ご批判のないような対応ができるように十分努めてまいりたいと考えております。 ○諏訪会長 それでは、他の方々からのご意見をいただこうと思います。 ○市川委員 中小企業の立場から2点ほどお願いをしたいと思います。1点目は、3頁にあ るように、中小企業に対する雇用安定のための支援、また職業訓練の支援という項目を立て ていただいておりまして、ありがとうございます。必要に応じ、私どもの団体でも、是非協 力をさせていただきたいと考えております。  しかしながら、それに反して、6頁の派遣労働者のところで、製造業務派遣の在り方につ いて検討するということです。巷間言われていますように、製造業派遣については原則禁止 というような方向になるとすれば、これは中小の製造業に対して甚大な影響があるものと懸 念をしておりますので、是非この点は慎重なご検討をお願いしたいと考えているところです。  2点目は、雇用保険二事業についてです。最近ややもすると、非常に幅広く雇用保険二事 業を活用しているという感は否めないと思います。もちろん、次世代育成支援なり、介護な り、そうした施策に対して支援するということの必要性については、論を待たないと考える わけです。それに対して、雇用保険二事業で対応するのがいいものかどうか。これは是非、 一般会計からの支出ということを念頭に進めていただければと考えております。雇用保険の 方も、おそらく数年もすると、財政状況が非常に逼迫するのではないかという懸念を持って おりますので、是非、よろしくお願いいたします。以上です。 ○大橋(洋)委員 私の方からは、労働政策の重点項目にある1頁から2頁の雇用対策に関 する部分について申し上げたいと思います。  今、新聞報道でもありますように、ようやく景気の底打ちが見えてきたと言われておりま すが、実際は、依然として経済活動の水準は低位にとどまっております。先ほどからのご説 明にもありますとおり、雇用失業情勢もさらに悪化するということが見込まれます。今回、 重点項目の最初の項目として挙げられている「緊急雇用対策の推進」については、いずれも 非常に重要な施策であると思います。特に、「緊急人材育成・就職支援基金」による職業訓 練の拡充と、生活保障の給付は、労使で3月に発表した共同提言で求めていたもので、それ を具現化していただいたことについては、大いに評価をいたしております。  やはり、技術、技能の習得を通じて、労働者個々人の能力を向上させていくということは、 結果的に安定した雇用に結び付くものであって、7月から訓練等が具体的に順次開始されて いるということですが、実施状況をきちんと精査していきながら、効果的な形での事業の遂 行に努めていただきたいということが1点です。  特に、今回の基金事業においては、職業訓練の内容の充実が非常に重要になろうかと思い ます。また、基金事業における訓練に限らず、職業訓練全般について、2頁(2)の「人材 への投資」にあるように、新分野や成長分野を見据えて、充実させていく方向性で大いに進 めていただきたいと思います。これが2点目です。  その際に、ここで掲げられている医療、福祉、農業に限らず、労働者や産業界などのニー ズを的確に汲み取って、効果的な職業訓練施策を構築していただくようお願いしたい。これ が3点目です。以上です。 ○岡田委員 私の方から2点ございます。1点目は、4頁の「若者の自立の実現」というと ころです。先ほどのご説明のとおり、政府の方針としても、雇用を軸とした安心社会の実現 ということが、大きく掲げられているかと思います。やはり、中長期的に見た場合に、若年 層の就労の意識の醸成であるとか、就労の支援、そして経済的な自立というものが、社会の 基盤として非常に重要であろうと考えます。  そのときに、フリーターやニートの問題が社会問題化してから、すでにもう10年以上経 っているわけです。その間に行われてきた政策、施策による効果や、今どういった方向に向 かっているのかといった辺りについて、是非、教えていただきたいということが1点です。  2点目は、8頁の「仕事と生活の調和の実現」です。短期的には、足下の雇用の確保とい うことが現実的には大きな問題ですので、ここに触れていくことは非常に難しいとは思うの ですが、やはり、労働基準法が改正されて、来年4月から施行されていくことに併せて、各 社でも対応について色々と図っているところだろうと考えます。そういった法律の要請とい うことだけではなくて、いわゆるワーク・ライフ・バランスの推進というのは、現実的に非 常に難しい部分はありますが、その意義を労使で十分に咀嚼して理解し合った上で長期的な 視点で取り組むべき重要な課題だろうと考えています。  最も重要なことは、労働生産性の飛躍的な向上による個人の生き方や、働き方の価値観、 意識の改革ではないかと考えています。「ワーク・ライフ・バランス」という言葉のニュア ンスだけを聞きますと、弊社でも、そこそこに働いて、楽しく暮らそうという受け取り方を するような従業員もおりますが、そのバランスというのは、当然のことながら、一人ひとり の年齢であるとか、能力、仕事上の目標、人生観、または会社の状況によって変化すべきも のだろうと思います。それをマネジメントできる状態を相互で作っていくことが肝心だと思 っています。多くの就労者、就業者にとっては、1日の多くの時間を仕事に費やしているわ けですので、その時間自体が充実するということは良いことだと思いますし、企業の活力に 関わることだと思っています。  とは言うものの、仕事だけが人生ではないので、住んでいる地域の方々との交流であると か、趣味などを通じた社会との交流や時間の使い方ができるということも重要だろうと思っ ています。ですので、ポイントとしては、メリハリのある働き方が可能なように、企業側と しては要員の適性化を図っていくということ。個人としては仕事の見直しによる生産性の向 上、長く働き続けることができるための心身の健康の維持、それから、いざというときのた めの柔軟性の高い就業の制度づくりや職場づくりが必要だと思っています。  かつては、男性がワークで、女性がライフを主に担っていたのだと思うのですが、やはり、 これからは女性も男性も、個人としてのライフワークマネジメントが必要になってきている と実感しています。  ですので、いずれにしても、中長期的な取組としての経営トップの関与と、従業員一人ひ とりの意識改革を粘り強くやっていく必要があると感じています。政府の方には「働き方改 革プラン」に述べられていますように、社会的気運の醸成や取組み企業への支援の充実など の具体化を期待しております。私の方からは以上です。 ○指田委員 雇用対策について、考え方を申し述べさせていただきたいと思います。現下の 日本の労働経済は、たくさんの問題点を抱えておりますが、そのうち最も重要な事柄という のは、国内の雇用の量をどれだけ確保するか、あるいは伸ばしていくかということだろうと 考えています。もし国内の雇用の量が減ってくることになれば、社会の安定もおかしくなり ますし、行政の支出もものすごく増えてくる。こういうことで、いわば、私ども税金を払っ ている側から言いますと、できるだけみんな働いて、行政の支出を少なくしたいと思うわけ です。  そんな中で、これは皆様もご承知のことだと思いますが、特に日本経済を支えている製造 業について、国内雇用はどんどん減っているわけです。一時ちょっと止まったかと思います が、海外への移転というか、海外への逃げ出しというか、そういうことが非常に増えてきて、 国内の事業場の縮小や閉鎖がずっと続いている。  もう1つ考えてみますと、日本の製造業の中に、海外の企業が入ってこないのです。先進 国でも、もちろん途上国もそうですが、かなり他国の資本が入り、他国の企業が入って、そ こで雇用を増やしているわけです。なぜ入ってこないかと言いますと、これは色々あるでし ょうが、1つは外国企業が日本に来て起業する場合に、非常に手続が複雑で面倒だというこ とが1つの障壁になっているのでしょう。もう1つは、法人税等の税金が非常に高いという ことがあるのだと思います。  もう1点は労働のコストだとか、あるいは経済の動きに従って雇用を調整することが、海 外で事業をやっていくことと比べると、ものすごく大変なのです。企業にとって負担になる わけです。  そういうことを考えたときに、やはり、非正規労働者というものについて、国全体の役割 をしっかり捉えていかないといけない。そのことを前提に考えたときに、今後の少子・高齢 化の進展による労働力の趨勢的な減少や労働者の意識の問題、働き方に対するニーズの多様 化を踏まえると、労働市場において多様な働き方、あるいは柔軟な働き方を促進して、雇用 機会の選択肢を広げていくことがますます求められると考えています。  一方、企業としては雇用の安定を何とか確保しなければいけないということで、例えば中 途採用や転換制度の整備など、長期雇用を望む労働者への門戸を開いていくといった取組な どを進めております。また、働き方に応じての均衡処遇というのは世界的な趨勢ですから、 考えて充実していかなければと思います。今ご説明いただきましたが、政府におかれまして は、企業が自主的にものをやっていく、自主的に考えてやっていくという、現実的な取組を 一層後押しするという基本方針の下で、能力開発や職業紹介、あるいは再就職支援など様々 なセーフティネットについて、支出もかなり要しますが、そこは支えていただいて、国内の 雇用を確保することについて、私どもも頑張りますが、労使双方で互いに話合いをしながら 進めていかないと、日本はおかしくなると思っております。  あとでご説明があるかどうかわかりませんが、労働経済白書の最後の方に、将来国民はど ういう社会を望んでいるかというところで、小泉内閣のときには自由競争の社会を望むとい うのが40数%で、その次が30%ぐらいで平等社会だということでした。今は全く逆転してい ます。そうなると、国はものすごく退嬰的になると思うのです。国民も退嬰的になる。バラ ンスは取らなければいけませんが、自由競争でどんどんやっていくような仕組み自体は尊重 していかなければいけないと考えております。 ○諏訪会長 いま4人の委員の方からのご発言がありましたので、ここまでのところについ て、事務局からお答えなりご意見をいただきたいと思います。 ○森山職業安定局長 市川委員から2点ありました。1点は派遣法の関係です。派遣法につ いては、当審議会で色々ご意見をいただき、答申をいただいて国会に提出したわけですが、 残念ながら廃案になりました。ただ、その当時ご議論いただいた日雇い派遣、あるいは偽装 請負等の問題はまだ残っているわけで、私どもとしてはこの法的整備も含めて引き続き検討 していかなければいけないと思っております。その際に、先ほどもありましたような製造業 派遣等の問題の在り方については、まさに様々なご意見があることは承知しているわけで、 十分に皆様方のご意見を踏まえながら対応していきたいと考えております。  2点目は雇用保険二事業、一般会計との関係です。これもご案内のとおり、雇用対策につ いては雇用保険二事業によって被保険者等についての雇用の安定、能力開発を図るとともに、 一般会計においては被保険者以外の求職者についても能力開発、あるいは就職支援を行って おります。例えば、一般会計についても、先ほどご説明しましたが、平成21年度の補正予 算において非正規労働者等の一時的な雇用・就業機会の創出を図る「緊急雇用創出事業」の 3,000億円規模の拡充を図ったところで、これはまさに一般会計で行ったものです。今後と もそれぞれの趣旨を踏まえながら、雇用保険二事業と一般会計による事業と相まって、より 良い雇用対策が進むように取り組んでいきたいと考えております。引き続きご指導のほどよ ろしくお願いします。  岡田委員から、フリーターやニート等についてどういう実績が上がっているのかというお 話がありました。手元の数字だけですが、平成20年度はフリーター等について常用雇用化 プランを進めてきております。もちろん平成21年度もやっておりますが、平成20年度に おいては、ハローワークによるフリーターの常用就職支援ということで、就職者数が18万 人強です。ジョブ・カフェというのもやっておりますが、ジョブ・カフェによる常用就職支 援で4.4万人の就職者数を上げております。トライアル雇用においても色々やっております が、これも3万人弱の活用をいただいております。ジョブ・カード制度による若者の職業能 力開発の提供等についても、1万人を超える若者に活用いただいております。これは大変重 要なものですので、引き続きフリーター、ニート等も含めた若者の対策を進めていきたいと 考えております。その際、当然こういうものを分析し、それに則った対策を進めていきたい と考えております。  指田委員のお話ですが、今日お配りしているような形で、この労働政策審議会から「今後 の雇用労働政策の基本的考え方について」ということで、平成19年12月にいただいてい るわけです。この中では、まさに指田委員がおっしゃったように、「我が国における少子化、 あるいはグローバル化等の問題を踏まえてこれらの問題を解決し、労働者生活の安定と生産 性の向上による企業競争力の強化を同時に実現するとともに、労働者一人ひとりの仕事と生 活の調和を実現し、働く希望を持つすべての人が自ら希望する働き方により安心・納得して 働けることを目指し、就業率を向上させ、経済社会の持続可能性、安定性を高めていくこと が必要である」ということで、以下のような基本的考え方に立って今後の雇用政策を進めて ほしいということを労働政策審議会からいただいております。その中に公正の確保、安定の 確保、多様性の尊重ということで、先ほど説明したような内容があるわけで、私どもは基本 的にそういう考え方で今後とも進めていきたいと考えております。 ○小野職業能力開発局長 大橋委員から、基金による訓練事業の件でご要望も含めてお話が ありました。7月29日から訓練をスタートさせていますが、先ほどお話がありましたよう に1万件前後の相談もあり、非常に期待が大きい事業だと思っております。この訓練をしっ かりやっていくということで、フォローアップも含めてやっていく必要があろうかと思って います。中央、地方に関係者が集まる協議会を作り、そこで産業別の訓練目標等を立てなが ら、具体的に実施条件に応じて当初の予定どおり訓練が進んでいるのかどうか、その辺りを しっかり関係者の方にも検証していただきながら、より効率的な訓練を行っていきたいと考 えております。  お話があった訓練内容の充実が非常に重要だということですが、私どもも非常に重要なこ とだと思っております。今回の基金の訓練についても色々なコースを設けており、職種横断 的なスキル向上のための訓練、これはITスキルなどを身に付けていただく訓練、基礎的な 力を養成していただく訓練、さらには各業界や職種で求められるより実践的な知識・技能を 付与するコースです。その中で特にこれからの成長分野、情報通信や医療、介護、福祉、環 境分野等、まさにこれから伸びていく分野で目標を立てながら、訓練内容をしっかりとニー ズに合ったものにしていくということで実施していきたいと思っています。 ○金子労働基準局長 労働基準局長の金子です。先ほど、岡田委員から仕事と生活の調和に 関してお話がありました。ご指摘いただいたのは、おそらくワーク・ライフ・バランスが非 常に多面的な要素を含んでいるものなので、総合的に考えていく必要があるだろうというこ とだと思います。ご指摘いただいたように、経営トップの関与や従業員一人ひとりの意識改 革が重要だというのは、おっしゃるとおりだと思います。特に労使の協力の中でこれを進め ていくことが要だと思いますので、私どもとしては社会的気運の醸成や取組み企業への支援 といったものについて、引き続き予算を確保して取り組んでいきたいと思っております。 ○中野政策統括官 指田委員からご指摘があった非正規労働者対策についてお答えします。 先ほどの来年度の重点事項にも盛り込んでおりますが、パートタイム労働者や有期契約労働 者に対しては、正社員転換、均衡処遇に向けての取組といった、先ほど指田委員からお話の あったような企業で進めている取組を支援していこうと考えております。また、キャリア・ コンサルティングなどを十分行った上での職業能力開発支援も充実していきたいと考えてお ります。さらに、組織面の点ですが、来年度、厚生労働省内に非正規労働者対策に一体的に 取り組むための総合的調整を担う組織を設置したいと考えております。このような対策の充 実や組織の整備を通じて、様々な方の能力を活かせる社会づくりに取り組んでいきたいと思 っております。 ○諏訪会長 それでは、他にご質問、ご意見はありますか。 ○河野委員 2点ほどご意見を申し上げたいと思います。2頁の一番最後の「国際標準化等 の動向を踏まえた労働市場の基盤整備に係る総合的取組」というところですが、ISOによ る教育訓練に係る国際規格の発行に向けた検討が現在進んでいるわけで、この中で出されて いるように、これまでの鉱工業分野を中心とした内容から、近年サービス分野における活動 の国際化の規格に向けた発行が検討されてきています。典型的な対象になっているのが民間 の語学学校や職業分野の社会的教育等となっておりますが、全体としてはこうした世界的な 検討が進み、現在、国際規格案の取りまとめ作業が進められて、2010年度にこういった規格 が発行される見通しとなっております。  ここで意見として申し上げたい点は、こうしたISOの認証を求めない規格になった場合 に、規格に準拠した教育過程を経た外国人、例えば語学学校がフィリピンとかインドネシア とか、ほかの国もあるかもしれませんが、そうした所で準拠した教育過程を経た人が我が国 に入国する場合の受入れ基準、これに直接ならないよう、そのような点を十分見極めた対応 を是非お願いしたいと思います。  もう1点は、11頁に国際労働機関(ILO)関係のものも少し出ている点についてです。 私はJAMで、機械、金属、自動車部品等を製造している部隊もたくさんおりますが、いま 海外に進出している日系企業の中で、労使紛争がかなりたくさん起こっています。自動車産 業を初め、電機関係、これは東南アジア、中国、韓国と、中国は国情が違うので別にしても 起こっています。現地で労使紛争でもめた場合、そこの組合は日本大使館に抗議に行くわけ です。つまり、海外における労使紛争の管轄が外務省管轄になっています。ところが、問題 を解決するためには、我々連合側を含めて現地の組合と、あるいはナショナルセンターとの 話をする場合には、当然国内に本社のある日系企業の組合とも連携して話をしなくてはいけ ないということから見ると、厚生労働省も国際労働運動に係る紛争を外務省だけに任せるの ではなくて、厚生労働省としての連合との話合いになるのか、あるいは経団連との話合いに なるのかわかりませんが、そういった情報把握と日本の企業に対する指導を是非やっていた だきたいと思っております。  その最大の理由は、企業の利益幅が少なくなっていくと、日本人マネージャーは引き上げ て、マネージャーを現地化するわけです。そうすると、現地の弁護士や現地の労働コンサル タントが入り込んでいって、労使紛争が起こるケースがかなりあるわけです。そういったも のを未然に防ぐ意味からも、是非、厚生労働省においても情報収集等をやっていただきたい ということが1点目です。  もう1つは、入管法が改正されて、外国人研修生、技能実習制度における研修生も、座学 以外は労働者として扱うことになるわけですが、この間、賃金未払い、人件侵害、単純反復 労働など、色々な問題が起こってきておりますので、そういったことに対して、受入れ事業 場に対して監督署の適切な対応をお願いしたいと思っております。その前に言ったところで 1つ付け加えると、労使の交渉がもつれるのは、先ほども言ったマネージャーの問題もあり ますが、労働組合の結成とか、労働組合ができて役員を解雇するとか、そういった国際的な 労働運動の視点から見てもおかしな事件が結構起こっているので、そういった意味での対策 もお願いしたいということです。以上2点の要望をさせていただきます。 ○南雲委員 雇用創出に関して何点か要望、ご意見を申し上げたいと思います。説明のあっ た医療・介護分野や農林・漁業分野での対策は、連合の「180万人雇用創出プラン」にも含 まれているという意味では歓迎したいと思いますが、現実に雇用創出につなげるためには、 より具体的な課題の掘下げが必要だと思います。特に介護労働者については処遇の問題があ りますし、農林・漁業に関しては、先ほど緊急雇用対策の推進について土屋委員が発言され たときに森山職業安定局長から話がありましたように、経産省、農水省との連携を通じ、も っと課題を洗い出して、大胆な施策を検討することが必要ではないかという気がします。  併せて、ものづくり立国の推進からすれば、現在第一線で活躍している人の啓発や教育も 大切だと思いますが、今の小学校、中学校、高校からの理工系に興味を持たせることを考え ると、文部科学省との政府一丸となった取組も大変重要だと思いますので、要望しておきた いと思います。  雇用創出が景気回復の鍵であると思いますが、8頁の「仕事と生活の調和の実現」にある ように、仮に景気が回復したとしても、従来どおりの産業構造のままでは、長時間労働や外 需依存による急激な景気悪化等の問題が再発しかねません。施策の具体化にあたっては、こ うした短期、中期、長期的観点の時間軸での検討もお願いしておきたいと思います。 ○滝澤委員 私からは2点発言させていただきます。1点目は、中小企業に対する雇用安定 のための支援についてです。今回の雇用対策で、雇用調整助成金を有効に活用することがで きましたが、今後さらに雇用情勢が悪化をするだろうという予測もあります。積立金の残高 も危惧されるところではありますが、助成金の給付期限の延長などについても検討をいただ きたいと思います。  2点目は、働き方の改革についてです。「仕事と生活の調和の実現」のところで触れられ ていますが、ワーク・ライフ・バランスの取組は今後大変重要だと、私どもも思っておりま す。労働時間を短縮して雇用を拡大することは、まさに業績の回復期にこそ行うべきであり、 縮小した事業を元の水準に戻すときの対応が大変に重要だと思います。従来のように時間外 労働を目一杯増やしたり、不足分を労働者派遣や請負によって対応すれば、再び正社員の長 時間労働、あるいは不安定雇用の増加などの問題が発生します。時間外労働を安易に増加さ せることのないように、改正労基法の施行に加えて労働者の健康確保の視点に立って、最長 労働時間の規制や休息時間の規制、時間外割増率の算定基礎の拡充などの取組が今後必要だ と考えております。 ○宮下委員 私からは、「女性の就業希望等の実現」のところで、改正育児・介護休業法の 施行前に、対策強化に関する要望として3点申し上げたいと思います。1点目は、厚生労働 省の皆様には、改正法施行までの周知徹底と法遵守に向けた指導強化を強く求めたいと思っ ています。  2点目として、100人未満の企業に対して3年間の適用猶予となっている短時間勤務制度 の措置、所定外労働の免除などの義務化、介護のための短期休暇制度の創設に関して、労働 者の立場としては3年を待たずして措置されるように、積極的かつ実効性のある支援を求め たいと思っています。育児・介護に関しては、もうすでに仕事と育児の両立、介護の両立と いう課題に直面している組合員の方も多くいらっしゃると思っています。そこに関しては、 労働者の視点からは、3年を待つことなくというところで是非積極的な支援を求めたいと思 っています。  さらに、今回改正に至らなかった有期契約労働者への休業取得促進に関しては、各制度の 適用に向けた特段の環境整備をお願いしたいと思っています。 ○諏訪会長 それでは、何人かの方々からご発言いたたきましたので、事務局からまとめて お願いします。 ○小野職業能力開発局長 河野委員の教育訓練に関する国際規格化の動きについてのご意見 ですが、いまのお話のとおり、ISOにおいて教育訓練の分野の国際規格化について議論が 進んでいるところです。ただ、現段階ではまだ検討の途上で、お尋ねのような認証を伴う規 格となるのかどうかも含めて、具体的には確定した段階ではありません。今回の趣旨は、あ くまでも教育訓練サービスが分野、レベルに関わりなく、基盤的な品質を受講者に対してい かに保証するかという視点での議論だと、そういう性格のものだと理解しております。  ご懸念の外国人労働者の問題については、従来から政府として単純労働力を受け入れない という方針で臨んでおります。これは今後とも堅持していきたいと思っております。  南雲委員から、ものづくり関係での文科省との連携、学校段階での教育でもっと連携をす べきではないかというお話もありました。中教審でも色々な議論がされていると聞いており ますし、従来から文科省と私どもの間では労働政策と教育政策について、特にものづくり分 野で学校教育での関心を喚起するというか、こういう取組を含めて働きかけを行っておりま すが、このような両省の協議の場を通じて、今後ともよく連携していきたいと思っておりま す。 ○村木総括審議官(国際担当) 同じく、河野委員からの海外進出日系企業の労使紛争の問 題です。基本は現地の国内法に基づいた解決がなされるべきだと考えますが、厚生労働省と しても国際労働財団や日本経団連国際協力センターに委託した事業において、諸外国の労使 関係者を我が国に招いたセミナー、あるいは日系企業が多数進出している国に出向いての現 地セミナーにおいて、各国の労働情勢や労働法制、労使慣行について認識を深めていただい て、それぞれの国の労使関係の安定を図ることを目的とする事業を行っております。  これに加えて、今年度から、このような過去のセミナーの受講者が約3,000人弱になりま すが、これらの方や各国の労使関係者にお願いして、それぞれの国から労働情勢や労使慣行 について情報提供をいただき、これをホームページやメールマガジンを通じて、海外進出企 業の担当者や労使関係者などに広く情報発信する事業、「労使紛争未然防止ネットワーク事 業」を今年度から実施しております。これらの事業を通じて、海外進出日系企業の労使関係 の安定につながるよう、我々としても努めていきたいと考えております。 ○金子労働基準局長 労働基準局から2点ご説明します。1点目が、河野委員からお話があ った技能実習生に対する労働基準関係法令の遵守・指導の件です。お話があったように、入 管法が改正されて、1年目の技能習得活動から労働関係法令が適用されることになります。 私どもとしては、これまでも外国人の技能実習生についてはかなり問題があるということで、 監督指導を重点的に行ってきております。平成19年度に2,633件の監督指導を行いました。 そのうち14件が司法処理、送検としております。こういった状況で、さらに労働関係法令 の適用範囲が広がるということですから、まず法令の周知をよくやって、その上で重点的な 監督指導対象として、労働基準関係法令の遵守に向けた対応をしていきたいと思っておりま す。  労働基準関係法令の問題だけではなくて、従来から人権侵害の問題や、そもそも技能実習 計画にない単純反復作業のみを行わせるという問題があります。これは入管法令上禁止され ていると承知しておりますので、私どもとしては入国管理局とよく連携を図りながら、必要 な対応をしていきたいと思っております。  もう1点、滝澤委員から長時間労働の抑制やワーク・ライフ・バランスのお話がありまし た。長時間労働を抑制していくために、ご案内のとおり労働基準法が改正され、割増賃金率 を月60時間を超えると50%に引き上げるという改正が行われました。私どもとしては、 こういった改正をしていただいたわけですので、このことをきちんと円滑に施行して、その 実効性を上げていくことを第一に取り組んでいきたいと思っております。  併せてご指摘がありましたが、いま大変雇用情勢が悪いということで、雇用を維持するた めに企業でそれぞれ努力をされているということですので、当然時間外労働なども非常に少 なくなっている現状にあると思います。今後景気が回復する過程の中で、元の長時間労働に 戻らないようにするという視点のお話がありました。私どもとしてもそういった視点は非常 に大事なのではないかと思っており、先ほどの重点施策の資料の中にも入れてありますが、 こういった観点からの必要な対応についても、新しい政策として取り組んでいけたらと思っ ております。  その他、労働時間法制の関係でいくつかご指摘がありました。もちろん、直ちに結論の出 る話ではないですし、使用者側委員の方からすれば反対のご意見もあると思います。そうい うことで、労使間で慎重な議論をしていく必要があると思いますが、いずれにしても、長時 間労働の抑制そのものについてはきちんと対応して、仕事と生活の調和を実現していくとい う方向性については大きなコンセンサスがあるだろうと思いますので、こういった文脈の中 で我々としても必要な対応を図っていきたいと思っております。 ○森山職業安定局長 滝澤委員から雇調金のお話がありました。雇調金は大変に活用いただ いておりますが、昨年の暮れに、中小企業向けの雇調金である「中小企業緊急雇用安定助成 金」を創設しました。これについても、これまでの様々なご要望を踏まえて支給要件の緩和、 あるいは助成内容の拡充、申請手続の簡素化等に取り組んでおり、今後とも中小企業におけ る雇用の安定に資する制度になるように、検討を加えていきたいと考えております。 ○伊岐雇用均等・児童家庭局長 宮下委員からご発言のあったことについてご説明します。 育児・介護休業法の改正法案に関しては、この間閉じた国会で、6月24日に全会一致にて 成立しました。これも労働政策審議会において真摯なご議論を賜った結果だと思っており、 この場を借りて厚く御礼を申し上げます。  その法律の施行ですが、施行までの間に、当然のことながらしっかり権利を行使すべき労 働者の方々に法律の内容を知っていただかなければいけないわけで、施行機関である都道府 県労働局雇用均等室においての説明会、あるいは集団指導、個別指導、あらゆる機会を捉え て周知を図る予定としております。企業には就業規則の改訂をしっかりやっていただかなけ ればいけないので、従前から作っている規定例の冊子を改訂し、たくさん配って、それを参 考になるべく早く就業規則の改訂をしていただけるよう、きめ細かく積極的な周知を図って いきたいと考えております。  また、2点目としてご指摘のあった、特に新たに短時間勤務制度の措置義務、あるいは介 護休暇等、新たな労働者の権利となった規定の部分については、100人以下の労働者を雇用 する事業主について原則1年を3年に延長して、公布の日から3年以内で政令で定める日か らの施行となっているところです。このこと自体は、中小・零細企業を含めて、規定を整備 することが自力では非常に難しい事業主への配慮という面があったかと思いますが、そうい う事業主に対しても様々な助成制度があります。例えば、短時間勤務制度等については、現 況持っている助成金制度などの活用によって早期の措置の導入も可能かと思いますので、説 明会や個別相談といった周知に加えて、助成制度などを活用していただいて、施行の円滑化 を図っていきたいと思います。  3点目として、有期契約労働者に係る休業取得促進等について、今回積み残しがあったの ではないかというニュアンスのご発言かと承っております。このことについても、雇用均等 分科会においては、まず現行制度で育児休業の取得が可能な期間労働者がより一層休業を取 得しやすくするために、休業取得要件の周知徹底が重要だという結論に達したと理解してお ります。まず、今後は育児休業を取得できる期間雇用者の方々の要件について周知を進めた いと考えております。今後の話としては、期間雇用者を多く雇用しているいくつかの業種に 関して、実態調査等も予定しております。そういう実態調査を含めて、休業取得促進に向け た様々な対策を考えていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○諏訪会長 まだ色々とご質問、ご意見はあろうかと思いますが、まだいくつも議題が残っ ておりまして、時間が30分しかなくなってしまいました。そこで、この後また多少の質疑 応答の時間は取りたいと思いますので、少し前に進んで、その折にお気づきの点がありまし たら、戻ってご意見を賜れればと思います。それでは、議題3「平成21年版労働経済の分 析」についてご説明をお願いします。 ○酒光労働政策担当参事官 時間も押しているようですので、端折ってご説明します。資料 3でご説明しますが、本体は参考4ということでお配りしておりますので、あとでご覧いた だければと思います。  今回の労働経済の分析、「労働経済白書」ですが、例年やっている1年間の労働経済の分 析に加え、賃金・物価の動向、雇用動向を分析しております。1頁目に全体のポイントがあ りますが、主にグラフでご説明しますが、2頁目は先ほどご説明した内容と同じですので省 略します。3頁も時間の関係で省略しまして、4頁をご覧ください。今回の物価の動向を見 ると、2007年の冬から2008年にかけて、紫の石油関連、いわゆる原油価格が高騰し、それに 続いて、2008年の第2四半期から青い部分の一般商品、これは主に輸入している原材料ある いは食料品等の価格が上昇したということです。これらが主に物価上昇の原因であったとい うことになります。  5頁ですが、そのようなことを反映して、それぞれの収入階級別の消費バスケットを考え て物価を計算すると、第I階級、いわゆるいちばん所得の低い層ほど物価上昇の程度が大き かったということで、物価上昇が生活必需品的なもので特に高かったということです。  6頁では、賃金と物価との関係で、以前は物価が下がると賃金も下がるという関係でした が、今回は物価も上がったのですが、なかなか賃金は上がっていない現状にあるということ で、その辺りが内需がなかなか強くならない原因ではなかったかということです。  7頁以降は、主に今回の景気変動においてどのように雇用面での対応が図られていたかで す。7頁ですが、景気変動の背景で、それぞれに3つグラフがあります。左に景気拡張過程、 右に景気後退過程とありますが、それぞれいちばん右側を見ると、赤い部分と青い部分があ って、赤い部分が内需、青い部分が外需です。どちらも上がるときも下がるときも外需の割 合が非常に高かったということで、外需主導の景気拡大であったために、外需が下がったと きの景気後退も非常に大きかったということを反映しています。  8頁ですが、これも3つグラフがあって、今回の景気変動、前回、前々回とあります。今 回の景気変動は「第14循環」と書かれていますが、これを見ると、上のグラフではGDP の変動に対して今回は雇用面での変動がさほど大きくなくて、賃金面の変動が大きいことが わかります。下のグラフでは労働投入、雇用か労働時間かどちらで調整しているのかという ことですが、今回の第14循環では労働時間による変動が大きいことがわかります。ですか ら、今回は雇用面よりも労働時間や賃金で景気への調整が図られているということです。  それを裏づけるようなものが9頁ですが、今回の循環で、雇用調整で実際に企業がどのよ うな方法を実施したかを見ると、いつも残業規制は多いことは多いのですが、今回は圧倒的 に残業規制が多いと。逆に、いちばん右側が希望退職者の募集とか解雇といった直接的な雇 用調整ですが、それは比較的少ないということで、残業規制や非正規である臨時、パートと いったところでの調整が多いということです。  10頁ですが、その中で特に今回の雇用調整が若年層に影響が大きかったのではなかろう かという分析です。これもグラフが非常に複雑なのでわかりにくいかと思いますが、年齢別 に棒グラフがいっぱいあって、左から右に年が立っています。15〜24歳で急に右上がり になっていますが、これは若い層で今まであまり非正規労働者がいなかったのに、現在では 非正規労働者が非常に多いということです。どの世代でも非正規労働者は一定割合いたわけ ですが、若年層が急激に拡大しているということを示しております。この背景には、地方に いた方が大都市圏に出ているのではないかということが書いてありますが、逆に言うと、都 市圏に出てきているということで、失業したときに助けてくれる家族がいない、家がないこ とが生活基盤の弱さにつながっているのではないかという分析をしております。  11頁ですが、そういった中で、企業も今後もできる限り多くの社員を対象に雇用を維持 したいということで、まだまだ多くの企業が長期安定雇用を求めているということです。そ のあとに「まとめ」がありますが、結論的に言うと、企業もなるべく雇用を維持しようと頑 張ってきておりますが、非正規の若者等にはどうしても影響が及んでしまっているというこ とと、そういったことが雇用不安、あるいは内需の拡大につながっていかない原因になって いるということですので、そういったものに対しては人材開発等も含めて取り組んでいくこ とが、力強い内需の拡大にもつながっていくのではないかとまとめております。以上です。 ○諏訪会長 ご説明ありがとうございました。何かご質問、ご意見はありますか。よろしい ですか。それでは、議題4「法案の国会審議結果」に入ります。事務局からご説明をお願い します。 ○酒光労働政策担当参事官 資料4をご覧ください。第171回通常国会における法案の審議 結果、本審議会でご検討いただいた法案の結果です。ご覧いただいたとおり、労働者派遣法 については、継続審議となっていましたが、最終的に解散に伴い残念ながら廃案となりまし た。雇用保険法及び育児・介護休業法については、それぞれ成立し、すでに施行しておりま す。以上です。 ○諏訪会長 この点についてご質問、ご意見はありますか。よろしいですか。それでは、以 上の他にご意見、ご質問、要望等ありましたらお願いします。 ○加藤委員 時間ができましたので、先ほどの重点項目で非正規労働者の総合対策について 2、3点申し上げたいと思います。先ほども各委員からご指摘がありましたが、現状の厳し い状況は、不安定で弱い立場にある非正規に及んでいるのは間違いないわけです。したがっ て、大臣告示の遵守の指導だけではなくて、労働契約法第17条の期間途中の解雇禁止につ いてもきちんと取り組んでほしいということです。  また、今後の有期雇用の検討にあたっては、有期雇用の形態も中身もさまざまなので、十 分な把握と分析が必要だと思うのです。その上で、単に有期雇用ということではなくて、入 口・出口規制、均等待遇など総合的な検討を、労働者保護の立場からお願いしたいというの が1つです。  もう1つは、今も報告がありましたが、改正労働者派遣法が廃案になりました。したがっ て、派遣労働者の置かれている状況の改善に水を差してはならないと思います。引き続き派 遣労働者の保護に支障がないよう、とりわけ政治が空白でも、働く方は毎日毎日が続いてい るわけですから、この間行政の方で監督指導を徹底していただきたいと思っております。  もう1つ、総合支援センターの拡充は歓迎したいということですが、問題は設置ではなく 機能で、運用性、実効性がとても重要です。したがって、その方をきちんと支援するために は、実際には厳しい状況にある人がそういう所を利用するわけですから、パソコンを持たな い、携帯を持たない、住居を持たないといった方に対してどうやって周知するのか、きちん としたきめ細かいフォローが必要だと思っております。  最後ですが、ハローワークの皆様も繁忙で大変な対応をやっていただいていると思ってい ます。この間も報道がありましたが、実際、臨時職員がたくさんハローワークにいらっしゃ るわけです。世の中がそうである。厚労省の中のハローワークでさえも、かなりの臨時職員 の方、有期雇用の方がいらっしゃる。そういう意味では、モチベーション等を含めて自らの 足元でどう改善して、モチベーションや処遇改善等を含めてできるのかについてもきちんと して、そのことが他の業種、他の所へ波及するように、是非とも対応をお願いしたいと思い ます。 ○内藤委員 今日初めて参加します内藤です。どうぞよろしくお願いします。資料1−2の 5頁に書かれている点について、2つほど意見を申し上げたいと思います。  最初に、障害者に対する就労支援の推進の関係です。ここに5つの項目に分かれてそれぞ れ具体的な対策が書かれていて、これはこれで結構なのですが、我が国は2007年9月に国連 の障害者権利条約に署名をしており、この条約を早期に締結しなければならないということ になります。そこで、国内法の整備として、ここに書かれている5つの項目も含む、いわゆ る募集・採用から定年退職・解雇に至るまでの障害者の雇用の全ステージにおいて差別を禁 止するという目的の、例えば雇用における障害者差別禁止法たるものを実効性ある形で制定 すべきではないか、それに基づいて具体策を打っていくべきではないかと思いますので、1 点申し上げておきたいと思います。  もう1つは、その上に書いてある「いくつになっても働ける社会の実現」です。この言葉 そのものを否定するつもりはないですし、それは理想的な理念だと思いますが、現実問題と して、いくつになっても働ける人はそうはいないわけで、仮に働けるとしても、一生働き続 けることだけがその人の幸せだとは言い切れない。むしろ働かないこと、働くことを含めた 多様なライフプランを選択できる社会を実現することが大切だと思います。いくつになって も働けるということの裏側には、一定の年齢になったら働かなくても幸せに老後が送れる社 会ができているということが前提で、それができていないのに、いくつになっても働ける社 会を作ろうと目指すのは、私の受け止め方が違うのかもしれませんが、年金政策と絡んでい るのではないかと思わざるを得ないわけです。このような政策は理念的には正しいと思いま すので、進めることについては断じて反対ということはありませんが、言葉の使い方も含め て少し理解を深めるように、しっかりと吟味・検討をいただきたい。また、厚生労働省とい う意味では、厚生側との政策とも十分連携を取って進めていただきたいと思います。 ○土谷委員 先ほどの女性の就業希望等の仕事と家庭の両立支援の中で、1点だけお願いし たいと思います。「事業所内保育施設設置運営等助成金について、中小企業への助成率の引 上げの暫定措置を引き続き実施」とありますが、企業が努力していくことは非常に重要なの ですが、1事業所に対象者が1名、2名の場合、現実的に困難な部分も出てくるかと思いま す。是非、社会基盤のインフラとしての保育所の充実というところも併せて進めていただき たいと思いますので、よろしくお願いします。 ○山口委員 先ほどの労働者派遣政策に戻りますが、派遣労働者の保護の視点に関わるかと 思って発言させていただきます。実は、地方連合会に派遣労働者から労働相談があって、内 容は登録している派遣会社から派遣労働を守るための署名にご協力くださいと、廃案になっ てしまいましたが、署名を促すようなメールが送られてきたというものです。派遣会社がメ ールアドレスを管理するのは、個人情報上は就労に関してのところで、仕事紹介以外に使う ことは法律違反ではないかという相談だったわけです。それは1カ所だけではなくて、数箇 所の地方連合に同じような相談が持ち込まれたということです。  いま申し上げたように、個人情報上の法律上の問題ということもありますが、いま大変就 労が難しくて、それこそ藁にもすがりたいという思いで連絡してくる、特に若者に対して弱 みにつけ込むではないですが、派遣元の事業者がそのような署名の協力を求めるメールを送 るといったことがあってよいのかということに関して、非常に疑念を感じます。是非、実態 も含めて労働行政として適切に対応していただきたいというのが1点です。  また、先ほどの平成21年度の労働経済分析について、このような場も含めて厚生労働省 に様々な苦言を呈したり要望ばかり言っておりますが、ここでは平成21年度の分析につい て大変丁寧な分析をしていただいたということを、感想として申し上げます。ややもすると 2008年の秋以降のいわゆるリーマンショック以降の景気の急激な落込みが強調されているの ですが、ここでは2007年半ばからの高い物価上昇によって実質所得が落ち、消費が停滞し、 そのことによって、その後の雇用情勢に勤労者が直面することになったという2つの局面が 重なっていることを分析した上で、この分析の中にも書いてありますが、雇用の安定を基盤 とした安心できる勤労者生活の実現こそが、マクロ経済も改善するということで、今後の取 り組むべき課題の示唆も含めて提起しているということでは、冒頭も申し上げたように大変 丁寧な分析で、私たちも非常に読み応えがあるというか、きちんと読まなければいけないと 思って読んでおります。是非、今後もこのような丁寧な分析を続けていただきたいという要 望です。 ○川本委員 市川委員から、いちばん最初に雇用保険二事業の件と派遣労働の関係でご意見 があったかと思います。それを少し追加したいと思います。雇用保険の問題ですが、これは 労災保険でも同じですが、いま改めて認識しておかなければいけないことは、これらは保険 制度であるということ、その目的に沿った使われ方をしていくということ、この2点をもう 1回再認識しておく必要があるのではないかと思っております。  もう1点、労働者派遣制度ですが、資料1−2の中に製造業派遣、登録型、特定労働者派 遣の事業の在り方について検討と書かれていますが、これら労働者派遣制度については多様 な働き方を望む労働者のニーズを満たして、かつ幅広い職種で認められてきたということで 雇用機会の確保にもつながってきたと思っております。あるいは、企業側から見ると、必要 な人材の確保が困難な中小企業等にとっては有効な人材確保の手段であったわけで、労働力 の需給調整機能として多くのメリットがあることについても、十分認識していくべきだと思 っております。仮に今後この制度そのものの見直しを行う場合にあたっても、方向性によっ ては企業の労働需要を減退させ、結果として労働市場が収縮する、あるいは産業の空洞化が 進むことになると、現在求められている雇用創出と逆の作用が生じるおそれもありますので、 制度の見直しによる影響等も十分踏まえて検討していくことが必要だと思っております。  いずれにしても、今後の検討にあたっては、今般廃案になった改正法案を検討した際と同 じように、労働政策審議会において産業の労使による現場の実態を踏まえた、慎重かつ十分 な検討が必要だろうと思っております。今日、追加の書類ということで、平成19年12月 に労働政策審議会でまとめた労働政策の基本的考え方についての文書、先ほどご説明があり ましたが、この3頁の結びにおいても公労使三者構成の審議会の議論の重要性について触れ られております。このことの重要性を、改めて意見として述べておきたいと思います。 ○諏訪会長 時間が迫ってきましたので、この辺りで事務局から質問等にお答えいただけれ ばと思います。 ○森山職業安定局長 加藤委員から2点あった派遣の関係にお答えします。法案は残念なが ら廃案になりましたが、法律違反の事案の増加、あるいは雇用失業率の悪化の中で、派遣労 働者の雇用や生活の安定が図られるように、現行法に基づく厳正な監督指導を行っており、 引き続き徹底していきたいと考えております。  非正規労働者総合支援センターの関連ですが、これはご案内のように拡充してきておりま す。ただ、いま委員がおっしゃったようにこの情報をいかに伝えるかということで、ハロー ワークにおける周知はもちろんですが、生活支援を行っている地方自治体等とも積極的に連 携を図るなど、周知の強化に努めていきたいと考えております。  内藤委員から2つありました。1点は障害者の関係で、いまお話がありましたように、障 害者権利条約の中で、あらゆる形態の雇用に関するすべての事項に関して、障害を理由とす る差別を禁止することが求められているわけです。この条約の対応については、この審議会 の分科会である障害者雇用分科会において具体的な検討を開始されたところですので、そこ で労使の皆様方のお話、あるいは障害者団体からもご意見を頂戴しながら検討を進めていき たいと考えております。  高齢者の関係で、これは色々なご意見があると思いますが、老後の生活については自助、 共助、公助と言われております。平成20年11月に出た社会保障国民会議の最終報告にお いては、高齢期の所得保障は自らの勤労所得、財産所得、年金所得の適切な組合せが基本に なると書いております。私どもは、健康年齢を延ばして、65歳までに限らず能力と意欲に 応じて働き続ける社会を実現することも重要であると考えており、多様な就業、あるいは社 会参加を含めた促進に努めていきたいと考えております。  山口委員から派遣のメールの関係についてありました。これも、派遣法24条の3におい ては、「派遣元事業主は、業務の目的の達成に必要な範囲内で労働者の個人情報を収集し、 収集の目的の範囲内でこれを保管し、使用しなければならない」と書いております。今般、 個人情報であるメールアドレスが使用され、署名の要請がなされましたが、署名の内容は派 遣業界への市場の規制に関するものであるために、業務の目的の達成に必要なことであり、 法違反であるとは考えておりません。また、個人情報保護法においては、5,000人分を超え る個人情報を事業活動に利用している者には、個人情報の収集、保管、利用等について取扱 いが定められており、労働者派遣法に加えてこれらの規定を遵守する必要があると考えてお ります。いずれにしても、メールアドレスの目的外利用に係る疑義があった場合には労働局 に申し出ていただいて、法違反が認められる場合には適切な対応を行っていきたいと考えて おります。 ○金子労働基準局長 加藤委員から、有期労働契約の関係についてお話がありました。本年 2月に、学識経験者による研究会を立ち上げました。いまヒアリングや実態調査も行ってお り、ご指摘のように実態をよく踏まえた上での対応を考えていく必要があるだろうと思って おります。今後必要となる施策について、この研究会で検討をお願いしているところです。 ○伊岐雇用均等・児童家庭局長 土谷委員のご指摘の件についてご説明します。労働政策と しては、事業所内保育施設の設置について助成金をご活用の上ご努力をお願いしております が、一方で児童福祉行政としては平成20年度二次補正及び平成21年度補正予算において 計2,500億円の「安心こども基金」というものを作り、保育施設の拡充に努めております。 これら全体で15万人分の受入体制の整備ということで、この基金を使える期間は平成20 年度から平成22年度までとなっていますが、この3カ年の間に新待機児童ゼロ作戦を前倒 し実施するということで努力しており、仕事を持ちながら子どもを育てている方々の支援と 社会的なインフラ整備に努めていきたいと思っております。 ○諏訪会長 以上をもちまして、主要な議題のご議論をいただきました。その他については 特にありませんか。 ○酒光労働政策担当参事官 特にございません。 ○諏訪会長 それでは、ちょうど定刻に達しましたので、本日はこの辺りで閉会とさせてい ただきます。「平成22年度労働政策の重点事項(案)」については、大変活発にご議論を いただき、ありがとうございました。厚生労働省として今後の概算要求の作業を進めるにあ たっては、本日、委員の皆様からご意見があった点を踏まえ、是非取り組んでいただきたい と思っております。  最後に、本日の会議の議事録ですが、運営規程第6条において、会長から2人の委員に署 名をいただくことになっておりますので、労働者代表委員の河野委員、使用者代表委員の伊 藤委員にそれぞれ署名人になっていただきたいと思います。よろしくお願いします。  それでは、以上をもちまして会議を終了させていただきます。ありがとうございました。 (照会先)政策統括官付労働政策担当参事官室総務係(内線7717)