09/07/23 第51回厚生科学審議会科学技術部会議事録 ○ 日  時 平成21年7月23日(木)15:00〜17:00 ○ 場  所 厚生労働省 省議室(9階) ○ 出 席 者   【委  員】永井部会長         石井委員   岩谷委員   川越委員   木下委員         桐野委員   末松委員   廣橋委員   福井委員         南(砂)委員 宮田委員   宮村委員   森嶌委員 ○ 議  題  1.厚生労働省の平成22年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評    価)について  2.ヒト幹細胞臨床研究について  3.その他 ○配布資料  資料1−1.平成22年度科学技術関係施策及び重点事項について(案)  資料1−2.厚生労働省の平成22年度研究事業に関する評価(案)(概算要求        前の評価)  資料2.  ヒト幹細胞臨床研究実施計画について  資料3−1.ヒト幹細胞臨床研究実施計画書の修正について  資料3−2.エイズ予防のための戦略研究「研究課題2:都市在住者を対象と        したHIV新規感染者及びAIDS発症者を減少させるための効果的な        広報戦略の開発」の検証結果について  資料3−3.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて  資料3−4.遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について  参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  参考資料2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料  参考資料3.国の研究開発評価に関する大綱的指針(平成20年10月31日内        閣総理大臣決定)  参考資料4.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成20年4月1        日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定)  参考資料5.厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価(平成20年度報        告書) ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしており ます注意事項をお守りくださるようお願いいたします。  定刻になりましたので、ただいまから、第51回厚生科学審議会科学技術部会 を開催いたします。委員の皆様には、ご多忙のところお集まりいただき御礼申 し上げます。本日の委員の出席状況について報告いたします。本日は金澤委員、 佐藤委員、竹中委員、西島委員、橋本委員、松本委員、南(裕)委員、望月委 員からご欠席の連絡をいただいておりますが、委員22名のうち、出席委員は過 半数を超える予定です。途中退席される先生や遅れて出席される先生もいらっ しゃる都合で、本日は審議の順番を少し調整させていただきたいと考えており ます。  次に、委員の変更についてご報告いたします。菊川委員が任期満了となりま して、新たに森嶌治人委員にご就任いただいております。  続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。議事次第をご覧く ださい。配付資料の一覧がございます。資料1-1が「平成22年度科学技術関係 施策及び重点事項について(案)」。資料1-2が「厚生労働省の平成22年度研究 事業に関する評価(案)」。これは少し分厚い資料で、概算要求前の評価です。 資料2が「ヒト幹細胞臨床研究実施計画について」。資料3-1が「ヒト幹細胞臨 床研究実施計画書の修正について」。資料3-2が「エイズ予防のための戦略研究 の検証結果について」。資料3-3が「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指 針の見直しについて」。資料3-4が「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設から の報告について」。本日は、その他参考資料を5点お配りしております。資料は よろしいでしょうか。それでは部会長、議事の進行をよろしくお願いいたしま す。 ○永井部会長  ただいまのところまだ定数に達しておりませんので、本日は報告事項から始 めたいと思います。まず議事3のその他報告事項の「(1)ヒト幹細胞臨床研究実 施計画について」、事務局からご説明いただけますか。 ○研究開発振興課  研究開発振興課から、ヒト幹細胞臨床研究実施計画について、資料3-1を用 いて説明させていただきます。ヒト幹細胞を用いた臨床研究に関する指針に基 づいて、ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で審議・了承されまして、前 回第50回の厚生科学審議会科学技術部会にてご質問がございました案件につい てご報告を申し上げます。  2頁をご覧ください。これは前回の部会にて報告いたしました大阪大学医学部 附属病院の実施計画書です。研究課題名は重症心筋症に対する自己由来細胞シ ート移植による新たな治療法の開発。研究責任者は澤芳樹教授。対象疾患であ る重症心筋症(拡張型心筋症及び虚血性心筋症)に対しまして、自己の骨格筋 から単離した筋芽細胞を温度応答性の培養皿を用いてシート化し、心臓外壁に 移植するという研究です。  次頁の下段に「7.観察・検査・評価項目及びスケジュール」がございます。 さらにその次頁には、血液検査・尿検査の項目が下段にございますが、CK、CK アイソザイムの追加がなされております。  1頁に戻っていただきますと、疑義の内容と回答がございます。生化学検査項 目にCK、CKアイソザイムがないとのご指摘を末松委員から前回の部会にていた だきました。そこで申請者に確認し、回答と修正をいただいております。本研 究はシート移植をする治療で、心筋細胞には侵襲が比較的少ないと考え、心機 能の評価のための項目を主に選択していたのでCK、CKアイソザイムは入ってい なかったということです。ただ、ご指摘にありましたように、安全性を評価す る上でCKやCKアイソザイムを測定することは、もちろん有用です。また、心 臓手術の全症例で事実上は測定しているということから今回の実施計画書に追 記されております。  また、1頁の下にあるように、委員長からご指摘のありました誤字につきまし ても修正いたしております。これらの修正に関しましては、ヒト幹細胞臨床研 究に関する審査委員会に確認いただき、さらに末松委員の了承を既に得ており ますことをご報告させていただきます。以上です。 ○永井部会長  CKの測定と誤字の問題ですが、よろしいでしょうか。次は「戦略研究につい て」、事務局からご説明をお願いいたします。 ○矢島厚生科学課長  戦略研究についてです。これは前回にもご説明をさせていただいたものなの ですが、今般中止となった事例がございました。「都市在住者を対象としたHIV 新規感染者及びAIDS発症者を減少させるための効果的な広報戦略の開発」とい う戦略研究について前回中間報告をさせていただきましたが、これについて報 告させていただきます。  この戦略研究は、平成18年度から厚生労働科学研究費に設けられております 大型の臨床研究の枠組みでございます。この課題の設定につきましては本部会 にもお諮りし、本部会でもご議論をいただき、それを基にして行われたわけで す。がんとAIDSに関する戦略研究について、4月15日の科学技術部会において、 中間評価を行ったところですが、その中に、中間評価の時点で戦略研究が中止 になった事例がございました。中止になった事例につきましては、戦略研究の 検証小委員会において検証を行うこととしまして、その進捗につきましては前 回の科学技術部会で中間報告をさせていただきましたが、今般報告書が取りま とめられましたので、簡単にご報告をさせていただきます。  資料の4頁に検証結果があります。今回の研究の中止ですが、戦略研究に対 する研究関係者の理解が不十分であり、役割・権限の分担が不明確のまま、関 係者間のコミュニケーションが不足していたため適切な運営等を行うことがで きなかったことや、研究体制構築に当たっての研究リーダーの力量不足に加え、 実施団体であるエイズ予防財団のマネジメント能力や、所管課である健康局の 疾病対策課の研究への関与不足があいまって引き起こされたものと結論づけて おります。  今後の戦略研究に向けての提言としては、まずは中途で終了した本研究の成 果の提出を研究リーダーに強く求めた上で、今回の経験を戦略研究ガイドブッ ク等に反映し、関係者にその内容の周知徹底を図っていくべきであるとされて おります。また、監査システムの拡充などモニタリング機能の見直しも検討し、 研究マネジメントシステムの充実を図るべきであるとの提案も受けました。  私どもといたしましては、本検証結果を真摯に受け止め、国民の健康づくり に還元し得る戦略研究の成果を確実に出していけるようマネジメントなどの見 直しを図っていきたいと考えているところです。説明は以上です。 ○永井部会長  ただいまのご報告についてご質問、ご意見はございませんか。 ○宮田委員  私は、この調査に参加させていただきました。概要に関して、また結論もこ のとおりなのですが、これは是非皆さんによく読んでいただきたい。失敗から 学ぶというのは実は重要であります。戦略研究というものが今までの競争的な 研究とは違うということを何回言っても、研究者とのコミュニケーションギャ ップというか、認識ギャップみたいなものがあって、これが定着するまでにあ と5年ぐらいかかるのではないかと思いますので、是非この委員会においても、 皆さんのご協力を得ながら、この戦略研究できちんと国民のために臨床研究の 成果をお返しすることができるようなシステムとして、さらにポリッシュして いかなければいけないだろうと考えております。  この調査に関しては、皆さんがちゃんと当事者に直接ヒアリングをしており ますので、貴重な記録が残ると考えております。今後はこのように途中でやめ るというようなことがないことを祈りますが、もしあった場合に必ずこのよう な検証作業をして、私たちの共通の知識として溜め込むことが必要だろうと考 えております。 ○永井部会長  ありがとうございました。ご質問はよろしいでしょうか。それでは、ただい まのご報告を了承したということで進めさせていただきます。議事3の「(3)厚 生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて」、事務局よりご説 明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料3-3について説明いたします。本日の参考資料として、3と4という関係 するものもお配りしております。参考資料の4が、厚生労働省の科学研究開発 評価に関する指針でございまして、平成20年4月1日が直近の改定ということ になっております。参考資料3ですが、平成20年10月31日に総合科学技術会 議における検討を経まして「国の研究開発評価に関する大綱的指針」が改定さ れております。これは内閣総理大臣決定でございまして、研究開発を実施又は 推進する各府省において、その特性や研究開発の性格に応じて、改正された大 綱的指針に沿った評価を実施することが求められております。また、厚生労働 行政の在り方に関する懇談会におきましても、厚生労働科学研究費の在り方に ついての指摘もあり、これらも踏まえて、今後、「厚生労働省の科学研究開発評 価に関する指針」について見直しを行う方針としており、その説明資料となっ ています。  見直しの内容等については今後詰めていくこととしており、本日は見直しを 行うということについてのご説明にとどまりますが、この資料にございますよ うに、大綱的指針の改定の方向としましては、優れた研究開発の成果を創出し、 研究開発成果の国民・社会への還元を迅速化する、的確で実効ある評価の実施、 あるいは、過重な評価作業負担を回避する、機能的で効率的な評価を実施する こと、それから、国際的な視点から評価を実施などがあり、そういった点も踏 まえた検討を今後行うことを予定しております。  スケジュールといたしましては、平成22年度の研究課題の事前評価から、新 しい「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」による評価を導入するこ とを一つの目標としておりまして、目途としては年内ぐらいと考えております。 今後こういう指針の見直しを行うということのご説明をさせて頂きました。 ○永井部会長  ただいまのご説明につきまして、ご意見等がございましたらお願いいたしま す。よろしければ先へ進ませていただきます。その他の報告事項として、「(4) 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、事務局よりご説明 をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料3-4について説明いたします。筑波大学からの遺伝子治療臨床研究、課 題名「同種造血幹細胞移植後の再発白血病に対するヘルペスウイルス・チミジ ンキナーゼ導入ドナーTリンパ球輸注療法の臨床研究」に関しての報告です。  3頁の真ん中辺りに「重大事態等の内容及びその原因」というところがござい ます。そこの冒頭にありますように、遺伝子治療が行われた患者さんがお亡く なりになったとの報告で、死因は、原病である白血病の増悪とそれに伴う肺炎 です。  その下に経緯が記載されております。平成12年に発症され、平成17年11月 と18年3月に遺伝子治療を受けられました。その後も遺伝子治療ではない白血 病の治療は継続されまして、初回の遺伝子治療から1,076日後にお亡くなりに なったという報告です。合併症につきましても、本遺伝子治療の関与を示す所 見はないということです。  4頁の「その後の対応状況」の欄にございますように、病理解剖も行われてお ります。病理解剖所見において、全身諸臓器への白血病細胞の浸潤があり、心 及び左肺を主体として、浸潤性アスペルギルス症及び肺炎・肺出血梗塞があり、 これによる呼吸不全・心機能不全が死因と考えられる、また、生殖器系及びそ の他の臓器を含めて、活動性を有する感染を示唆するような、明らかなウイル ス封入体などは認められなかったということです。  また、増殖性レトロウイルスの出現を示す所見は皆無ということですし、病 理解剖時に採取した各臓器の組織をPCRで検索しておりますが、HSV-TK遺伝子 及びenv遺伝子は検出されていないということで、さらに、剖検時に見られた 白血病細胞は発症時のものと同じ形質を示し、遺伝子治療との関連性を示す所 見は認められていないということです。  少し戻っていただき、2頁の下の方に筑波大学の審査委員会の意見もございま すが、「今回の死亡については、遺伝子治療による直接の因果関係は認められな いが、今後も安全性の確認、治療効果の把握並びに有害事象が起きないよう遺 伝子治療を継続願いたい」ということでございます。  病理解剖所見の最終的な取りまとめや、それを踏まえた大学での倫理審査委 員会の審査に時間がかかったケースですが、本件につきましては、速報をいた だいた段階からその内容について作業委員会の先生方に確認をいただいており まして、今の段階で特段の対応の追加等を行う必要はないと考えております。 また必要に応じまして今後も関連情報等のフォローを実施することを予定して おります。本件に関する説明は以上です。 ○永井部会長  いかがでしょうか。 ○岩谷委員  ちょっとお聞きしたいのですが、これは重大事故が起きて、その原因がこの 治療とは関係ない、そういうことの報告だったと思うのですが、この研究自体 は、新しい遺伝子治療が有効であったかどうかという、その辺の判定は含まれ ているのでしょうか。 ○坂本研究企画官  指針上、死亡等の事態、これを「重大事態」と呼んでいるのですが、そうい ったときに報告を出すようになっておりまして、研究の取りまとめを今回行っ たというものではございません。個別のご報告をいただいたということです。 ○宮田委員  全体のプロトコルを教えてほしいのですが、何人ぐらい患者さんを登録なさ って、いま何例目ぐらいまで来ているか。今日ここで了承されると、それ以降 の症例も登録されていくということになると思うのですが、全体の構図を見せ ていただけませんか。 ○坂本研究企画官  正確な数字はいま手元にございませんが、たしか5例程度登録がされており まして、新規の登録はここしばらく行われていなかったと記憶しております。 なお、プロトコールの修正を検討しているという話を聞いておりまして、そう いう相談もございますので、今後、プロトコールの変更報告があろうかと思わ れます。 ○宮田委員  次に患者さんを登録なさる前にはもう一回ここで情報が開示されるというこ とですか。 ○坂本研究企画官  現時点ではそのような動きになっております。 ○森嶌委員  発生してから報告書が出るまでに8カ月か9カ月ぐらいかかっていますね。 いついつまでに報告をというような取決めは何かございますか。 ○坂本研究企画官  速報は早い段階でいただいておりまして、その段階で、この部会の下の専門 の先生方に集まっていただいている作業委員会の先生方には内容を見ていただ いております。病理の解剖等で時間がかかっているということで、我々の方か らも、できるだけ早くということは言ってきたのですけれども、ご指摘のよう に時間がかかっております。今の規程上、いついつまでにという特段の数字の 規定はございませんが、ご指摘のように、できるだけ早く出していただくべき ものですので、申請者側にはその旨今後も伝えていきたいと思っております。 ○森嶌委員  これは何例か並行して行われているスタディーなのですか。 ○坂本研究企画官  先ほど申しましたように、規模はそう大きいものではございません。 ○森嶌委員  他の同じようなスタディーを止める必要があるか無いかというのも、審議を 早い段階でされたということですか。 ○坂本研究企画官  早い段階で、症例の経過については作業委員会の先生方に見ていただきまし た。病理の最終報告の確認とか、そういうことは当然ありましたが、その段階 で何かを止めるという状況ではない、遺伝子治療後時間も経っておりますし、 遺伝子治療との関係についてネガティブなデータもあるといった点の確認はし ております。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。もしご質問がなければ、ご了承いただいたということ にいたしたいと思います。報告事項は全部終わりましたが、どういたしましょ うか。 ○坂本研究企画官  20分位遅れそうだというご連絡をいただいている先生がいらっしゃいまして、 まだお見えになっていないようですが、資料の説明だけ先に始めてしまってよ ろしければ、議論の途中からご参加いただくということにしてはいかがかと思 いますが。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。では、そういうことでお願いいたします。「厚生労働省 の平成22年度研究事業に関する評価(案)(概算要求前の評価)について」、科 学技術部会として評価に関する報告を取りまとめる必要があるということです ので、ご審議をお願いしたいと思います。まず、事務局より説明をお願いいた します。 ○坂本研究企画官  資料1-1と資料1-2に基づきましてご説明いたします。なお、本件につきま しては資料以外にご意見の記入用紙をお手元にお配りしております。  毎年度、研究費関係の予算の概算要求を行う前に、基本的な考え方につきま して当部会でご審議いただいております。本日の段階では予算要求の数字など は調整中であり、お示しできておりません。また、今後の予算編成作業におい て事項等の修正もあり得ます。本日は、大きな方向や留意すべき点などについ てご指摘、ご審議いただき、それを踏まえて、今後、総合科学技術会議のいわ ゆるSABC評価への対応なども含め、来年度に向けた作業を進めていきたいと考 えておりますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。  まず資料1-1ですが、1頁の上の方にございますように、厚生労働科学研究に おいて取り組むべき課題には、さまざまなものがございます。疾病や障害等の 克服、健康や安全に関する懸念の解消、国民の多様なニーズへのきめ細かな対 応、そういったものが必要であり、安全・安心で質の高い健康生活の実現に向 けまして、厚生労働科学研究により科学的根拠が提供されることが求められて います。  次頁は、平成21年度(今年度)の科学技術関係施策の動向です。平成21年 度の厚生労働省の科学技術関係予算は1,351億円です。うち厚生労働科学研究 費補助金は484億円です。大きな動向といたしましては、内閣府が中心となっ て進めている、社会還元加速プロジェクトや革新的技術戦略、そして当省を含 めて4府省で進めている「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」、 あるいは健康研究推進会議、こういったものがございまして、これらの動きは 「健康国家への挑戦」へ結びつくものです。  3枚目に、総合科学技術会議が6月に示した「平成22年度の科学技術に関す る予算等の資源配分の方針」のポイントをまとめたものをお示ししております。 前回の部会でこちらの概略についてのご説明をしておりますが、最重要政策課 題として、低炭素社会の実現、健康長寿社会の実現、革新的技術の推進、科学 技術外交の推進、社会還元加速プロジェクトの推進、地域科学技術施策の推進 が示されています。  4枚目です。内閣官房に設置されました「厚生労働行政の在り方に関する懇談 会」の最終報告におきまして、「政策が多くの国民の理解と納得が得られるよう、 企画立案の裏付けとなるような研究を推進することが必要。また、研究の成果 を政策立案に的確に活かす仕組みと体制を確立すべき」、そういったご指摘がご ざいました。  政策の企画立案を見据えた研究課題の設定等につきましては、これまでも取 り組んでまいりましたが、研究者を指定して研究を行っていただく、指定型の 研究という枠組みが厚生労働科学研究にはございまして、この指摘に応えるツ ールとしてこれを活用すべく、来年度は各分野において指定型の研究の拡充を 図るべきと考えております。この辺りにつきましてもご意見をいただければと 思います。  また、この頁の下の方にありますように、総合科学技術会議では第3期科学 技術基本計画のフォローアップの中で、食料、健康に関わるものなど直接多く の人々の幸福につながるような研究開発を中心に集中投資すべきといったご指 摘がございます。その他、安全・安心が重要であるとか、人財育成も含め、適 切に資源配分をといったご指摘、課題設定に関するご指摘、評価人財の育成が 重要といったご指摘もございます。  人材の育成に関しまして、厚生労働科学研究に参加する研究者の層、特に若 手の研究者を増やす観点から、来年度は各分野において若手育成型の研究の拡 充を図りたいと考えております。  続いて資料1-2、報告書の案です。できるだけ簡潔にということを心がけて資 料作成しておりますが、大部の資料となっておりますので、本日は要点に絞っ て説明させていただきます。  1頁に目的や評価方法がございます。「2.評価方法」の「2)評価対象」ですが、 本年度は厚生労働科学研究費補助金の各研究事業、それから独立行政法人医薬 基盤研究所運営費交付金のうち基礎研究推進事業費を評価対象としております。  4頁から「3.厚生労働科学研究費補助金」です。まず研究事業の表がございま すが、大きな研究分野といたしましては、行政政策、厚生科学基盤、疾病・障 害対策、健康安全確保総合、こういったものがございます。その右の研究事業 は現時点の案で、特に(5)の「成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業」はまさ に仮称でして、これは従前の「子ども家庭総合研究」を来年度に向けて組替え を行おうとするものです。その他にもいくつか事業の整理・統合を行っており ます。例えば(8)の「長寿・障害総合研究事業」の下に従前の「こころの健康科 学研究」も含めて事業を統合して「障害者自立支援総合研究(仮称)」を設けよ うということになっております。個別のご説明は後ほどいたしますが、このた め、全体の事業数は昨年度から一つ減りました。整理・統合してわけです。な お、この表の上にございますように、新規の事業等については、様々な観点か らの検討が必要であり、今後、変更があり得る状況であるという点については ご留意いただきたいと存じます。  4頁の半ばからはIの「行政政策研究分野」です。先ほど申し上げた在り方懇 のご指摘もございまして、厚生労働行政施策の企画立案及び推進に資すること を目的としたこの事業の重要性は一層大きなものとなっていると考えておりま す。8頁に、この事業の総合評価がございますが、多くの研究が喫緊の行政ニー ズを反映しており、それらの成果が、厚生労働行政に活用されている等の記載 があり、今後とも、厚生労働行政の企画立案、効果的運営のため、本事業の推 進が必要といった評価となっております。  9頁から、「地球規模保健課題推進研究」です。これは表の「事業名」にあり ますように「地球規模保健課題推進研究」と「国際医学協力研究」の二つの事 業からなります。13頁の下の方に総合評価がございます。保健分野において国 際的に貢献し、日本のプレゼンスを高め、最終的には、国民の健康と安全を守 るための研究である、あるいは、国際協力・貢献の観点からも意義あるものと 評価できる等の記載がございます。  15頁の(2)が「厚生労働科学特別研究」です。緊急性が高く、社会的な要請が 強い研究課題につきまして機動的に研究を行うための事業で、16頁の下の方に 総合評価がございますが、PDCAサイクルを意識した研究課題の設定等に留意す る必要もあるとされ、在り方懇の指摘に対応し得る研究事業であり、適切に推 進する必要があるとされております。  17頁の真ん中から下の方がiiの「厚生科学基盤研究分野」です。(3)の「先端 的基盤開発研究」の創薬基盤推進研究ですが、23頁の上の方に、平成22年度に おける主たる変更点という項目がございます。この中の事業を統合いたしまし て「創薬総合推進研究」を新設するということです。そして21頁に「事業の内 容」がございますが、ヒトゲノムテーラーメイド研究、創薬バイオマーカー探 索研究、政策創薬総合研究、創薬総合推進研究からなる事業です。24頁の評価 結果の「研究事業の必要性」の冒頭にありますように、「創薬、創薬に必要な各 種技術及びその資源の確保等を目的とした事業」です。27頁に総合評価がござ いますが、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」にも関連する研 究であり、推進すべきとなっています。28頁以降に各事業の概要図がございま す。  31頁から「再生医療実用化研究」と「医療機器開発推進研究」です。35頁に 主たる変更点がございます。医療機器開発推進研究事業の中で既存事業を統合 し、医療機器開発全般を推進するための研究事業として「医療機器総合研究」 を新設するということが主たる変更点です。37頁の下の方から総合評価がござ いますが、「革新的医薬品・医療機器創出のための5か年戦略」あるいは「社会 還元加速プロジェクト」と関係のある分野で推進すべきとされております。再 生医療は、これまで完治が困難とされている疾患への応用が期待されており、 また、ナノテクの応用により、効果的で侵襲性の低い医療機器等の開発は評価 でき、さらに人材育成の成果もあり、評価できるといったことが記載されてお ります。  40頁からは「(4)臨床応用基盤研究」の「医療技術実用化総合研究」ですが、 これは5事業から構成されております。44頁に主たる変更点がございます。研 究事業の見直し、統合を行って、我が国で実用化されていない治療法、適応外 使用、重大疾病、統合医療等の臨床研究を推進するための研究事業として「臨 床研究推進研究」を新設するということです。48頁から総合評価がございます。 「臨床研究基盤整備推進研究」、「臨床疫学基盤整備研究」及び「臨床研究支援 複合体研究」により、臨床研究を実施する体制等インフラの整備を進めつつ、「治 験推進研究」及び「臨床研究推進研究」により、特色に応じた研究開発の支援 をすることで、効率性の高い総合的な取組みとなり、その成果の国民への迅速 な還元が期待されると記載されております。49頁以降に概要の図がございます。  52頁からがIII「疾病・障害対策研究分野」です。「(5)成育疾患克服等次世代 育成基盤研究(仮称)」は、53頁の事業の内容の下の方にありますように、生殖 補助医療、周産期疾患、小児難治性疾患、関連する生命倫理、母子保健、児童 福祉の六つの領域について、次世代を担う子どもの健全育成等を支援するため の社会基盤整備に関する科学研究を加速度的に推進しようとするものです。そ の下が主たる変更点ですが、このものは、「子ども家庭総合研究事業」を発展的 に組替えたものです。55頁に総合評価がございますが、「子どもが健康に育つ社 会、子どもを生み、育てることに喜びを感じることができる社会」の実現のた め重要な基盤研究であり、事業の強化・充実を図るべきといった評価が記載さ れております。その後にこの研究の概要図が付いております。  58頁の真ん中から(6)の「第3次対がん総合戦略研究」です。がんによる年間 死亡者数は約34万人で、死因の第1位であり、戦略重点科学技術においても、 標的治療等の革新的がん医療技術がテーマとしてございます。62頁に「総合評 価」がございますが、平成19年6月に「がん対策推進基本計画」が策定されま して、研究を一層推進していくこととされていることなどが記載され、重要な 研究事業という評価となっております。  63頁の半ばからが「(7)生活習慣病・難治性疾患克服総合研究」です。循環器 疾患等生活習慣病対策総合研究、免疫アレルギー疾患等予防・治療研究、難治 性疾患克服研究、腎疾患対策研究からなるものです。65頁の下の方から主たる 変更点がございます。循環器疾患等生活習慣病対策総合研究では、対策の医療 費適正化効果についての研究も行うことを予定しております。69頁から総合評 価があり、70頁に研究全体のイメージの概要図がございますが、全体として、 効果的な疾病予防及び治療成績の向上による死亡率の減少及び健康寿命の延伸 等が期待される成果として示されている研究です。  71頁から「(8)長寿・障害総合研究」です。これは「長寿科学総合研究」、「認 知症対策総合研究」、それから「障害者自立支援総合研究(仮称)」からなるも のです。74頁の上の方に主たる変更点がございます。「障害者自立支援総合研究 事業(仮称)」は、障害者自立支援法等の制度改正を踏まえた、施策立案の基礎 的調査や施策の効果を検証等する行政的指定研究とイノベーション25等を踏ま えた技術開発をバランスよく実施するため、従来の障害保健福祉総合研究事業、 感覚器障害研究事業、こころの健康科学研究事業を統合して設けることとして いるものです。77頁から総合評価がございます。「長寿科学総合研究」と「認知 症対策総合研究」については、現在、高齢者の7人に1人の要介護者を10年後 までに10人に1人にまで減少させるという研究であり、重要かつ有効といった 記載がございます。「障害者自立支援総合研究(仮称)」につきましては、平成 22年度から障害保健福祉総合研究、感覚器障害研究、こころの健康科学研究の 3事業を統合して一つの事業として実施する予定であり、研究企画・進行管理の 一元化により、一層の効率化が期待できるといった評価が記載されております。  79頁からが「(9)感染症対策総合研究」です。新型インフルエンザ等新興・再 興感染症研究、エイズ対策研究、肝炎等克服緊急対策研究の3分野からなるも のです。81頁の下の方に主たる変更点がございます。今般の新型インフルエン ザの発生を受けて、新型インフルエンザ対策の研究の強化、推進を予定してお ります。85頁の下の方から総合評価がございます。新型インフルエンザ等新興・ 再興感染症研究の推進によって感染症対策の充実が図られる。エイズ対策研究 につきましては、全世界的な問題であり、研究を推進する必要がある旨、それ から肝炎等克服緊急対策研究につきましては、「肝炎研究7カ年戦略」を踏まえ、 研究の推進が必要であるといった記載がございます。  88頁からIVの「健康安全確保総合研究分野」です。(10)が「地域医療基盤開 発推進研究」です。89頁に主たる変更点がございます。社会保障国民会議中間 報告等々色々なところで指摘があった、地域医療の基盤が脅かされる要因とな っている医師不足・萎縮医療等を解決するため、周産期・救急医療体制の充実、 医師の勤務環境の改善等々の課題について重点的に研究を推進する方針です。 在り方懇の指摘も踏まえて、政策課題や目的等が明確で、できるだけ早く施策 に反映させる必要がある課題に対しては、指定型研究として実施する方針です。 90頁に総合評価がございまして、良質な医療提供体制の整備については、既存 の医療体制の評価研究や新たな課題の解決を図る研究等を推進する本研究の充 実は不可欠、特に、妊婦の救急受入困難事案や医師不足問題等、国民の意識・ 関心の高い分野に関して政策課題対応型の研究を重点的に推進する必要がある とされています。  91頁からは「(11)労働安全衛生総合研究」です。この研究は、職場における 労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成等を図ることを目的として おります。94頁に総合評価がございますが、本研究事業は、行政が必要とする 科学的知見の提供、具体的手法の開発等を担うなど、その推進に重要な成果を 上げているといった評価です。  94頁の下の方からは、「食品医薬品等リスク分析研究」です。まず、「食品の 安心・安全確保推進研究」については、国民の関心が高く、また、国民生活へ の影響の大きい食品の安心・安全に関する研究で、リスク・コミュニケーショ ン等の課題もございます。97頁の上の方に総合評価がございますが、種々の施 策を実施していく上での根拠となるデータの作成・収集が可能となる等の評価 が記載されております。その後に概要図がございます。  101頁からは「医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究」です。 103頁から、平成22年度における主たる変更点がございます。「薬害肝炎事件の 検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討会」の提言を踏まえ、新た な科学的安全対策手法の導入についての研究の充実強化等を行う方針が記載さ れております。105頁に総合評価がございまして、民間では実施しにくい研究分 野を取り扱う必要不可欠な研究事業や、新技術に対応した製品の承認審査基準 の策定のための科学的下支えといった位置づけもあるといったコメントがござ います。  107頁からが、「化学物質リスク研究」です。109〜110頁に主たる変更点がご ざいますが、ナノマテリアルの毒性メカニズムの解明や体内動態の把握等の研 究が予定されております。111頁の下の方から総合評価がございます。化学物質 の安全確保のための行政施策の科学的基盤として有害性評価手法の開発等の研 究を実施しており、国民生活の安全性確保に大いに寄与する不可欠な事業等の 評価が記載されています。  113頁からが「(13)健康安全・危機管理対策総合研究」です。これは個別の疾 病等に対する対応策を研究するものではありませんで、公衆衛生行政システム の活用に関する研究を行おうとするものです。117頁の下の方に総合評価がござ いますが、研究の結果は健康危機管理の対策として活用されるとともに、ガイ ドラインの策定等の科学的根拠として活用されており、有用であり、国民の安 全・安心と健康を確保するために引き続き推進すべきといった趣旨が記載され ております。  118頁から「4.基礎研究推進事業費」ですが、人工万能細胞に関する研究等社 会的注目度の高い研究成果もございます。122頁の総合評価で、画期的な医薬品 や医療機器等の開発に結びつく可能性の高い研究課題を選定し、適正な事業の 運営に努めていると考えられ、その有用性も高く評価できるといったことが記 載されております。  かなり駆け足でご説明いたしましたが、全体といたしましては、指定型研究 や若手育成型の研究を充実するとともに、本日ご覧いただきましたように、厚 生労働科学研究の研究の範囲は非常に幅広く、国民の健康、国民の安全確保の ために必要不可欠な課題も多く、重点化によるメリハリは付けつつも、厚生労 働科学研究全般をできるだけ着実に推進していくべきと考えているところです。 説明は以上です。ご審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○永井部会長  非常に大部な資料ですが、ただいまのご説明にご質問、ご意見をお願いいた します。 ○岩谷委員  資料1-1の1頁に障害者の人数が約348万人と書かれておりますが、これは 身体障害者に限りますね。精神障害者も全部入れると、348万ではないと思いま すが。 ○障害保健福祉部  障害保健福祉部ですが、これは岩谷総長のご指摘のとおりです。知的障害者 と精神障害者を加えると数字が変わると思います。 ○川越委員  資料1-2の44頁、(8)で変更点というのが記載されております。いくつか書 いてありますが、後ろの方に、我が国で実用化されていない治療法とか、適用 外使用とかと書いてございます。これは、いくつか思い当たるものもあるので すが、具体的にはどういうことが問題になっているか、分かったら教えていた だきたいのです。 ○千村研究開発振興課長  具体的にとおっしゃいましたが、もう少しそのポイントをお話しください。 ○川越委員  例えば抗てんかん薬を痛みの補助薬に使うなどは我々の分野ですので、そう いうことではないかと思いながら伺っていたのですが、他にもそういうことが あるのか。確かに適用を拡大するということの検討も必要ですし、認定の仕方 によっては、ある意味で非常に危険を及ぼすということもあって慎重にしてい ただきたいというのがありますので、その内容について、もし具体的に想定し ているものがございましたら教えていただきたいのです。 ○千村研究開発振興課長  例えば治療分野であるとか、疾病分野であるとか、ピンポイントにどこかの 分野にしようということを意図的に考えているわけではございません。 ○宮田委員  まず大枠なのですが、まだ予算の配分が決まっていないから議論できないか もしれませんが、これだけ大部の報告書を作って、一体全体、もっと予算を増 やすべきだと主張するのかどうかというのを伺いたいのです。私の個人的な意 見からすると、もっと増額を要求してもいいのではないかと思うので、個別の 案件として議論するのではなくて、大枠として、なお国民の健康問題に対する 研究開発要素が残っていますので、それに関して予算をもう少し手厚くすべき だというような最初の章があった方がいいのではないかと実は思っているとい うのが1点です。  あとは結構個別になってくるのですが、例えば28頁のヒトゲノムテーラーメ イド研究に関しては、アメリカもNIHの長官にフランシス・コリンズを任命し て、いよいよテーラーメイド医療を、オバマ大統領の下で強力に推進する体制 を作りました。そこで当然日本もここを強化していかなければいけないと思う のです。これに関してプロテオームとか、エクスプレションプロファイルだけ に偏っているような印象を持ってしまいますが、機能性のRNAのような新しい バイオマーカー、あるいはエピジェネティックスのバイオマーカーみたいなも のが出てきています。メタボ論もそうでしょうけれども、ここではもう少しオ ミックスを広く書き込んでおいた方が今後の研究のためであろうと思うという のが2点目です。  3点目に、事業の数を減らしたいということはよく分かっているのですが、63 頁の「(7)生活習慣病・難治性疾患克服総合研究」。総合研究化をあまりやりす ぎると、それぞれの疾患に特有な事情というものに対する配慮が失われてきて しまうのではないかと思って、なぜここをこのような形で合わせたのかという 意図を説明していただきたい。  4点目に、49頁の「治験推進研究」、これは大いにやってほしいと思います。 特に先々週、アメリカ大使館が日本のがん研究者の内輪の研究会を開きまして、 NCIから「CTEP」というプログラムで、日本の臨床研究に対してアメリカ政府が お金を出すという話が実際に出てきて、呼びかけられているのです。臨床研究 をする研究基盤に対する予算配慮は、ここのところ随分進んでいると思うので すが、その基盤を作ったとしても、実際に臨床研究を課題として取り上げるよ うなことがないと、折角作った基盤とか人材は活かされないのです。具体的に 国民のための臨床研究、それぞれの企業のための臨床研究ではなくて、同じ創 薬標的に対して、本当にA剤、B剤という医薬品が出てきたときに、日本人のこ の疾患のときにはA剤、B剤どちらがいいのかというヘッド・トゥー・ヘッドの 臨床試験みたいなものも、国が資金を提供すれば可能になると思っているので、 臨床試験をするときに、医師主導の試験だけではなくて国策的に、例えば、日 本ではこういう薬が必要であろうということで、そのためのエビデンスを取る ような、もう少し積極的な臨床研究の支援が必要になってくるのではないか。 是非NCIの「CTEP」というプログラムを勉強していただきたいと思っています。  5点目、これは些細なことですが、82頁の感染症のところです。「他省庁及び 厚生労働省内での関連事業との役割分担」というところについてです。文科省 が第2期の新興・再興感染症のプログラムを来年度から立ち上げます。これは アフリカとかアジアに研究拠点を持って新興・再興感染症の研究を進めて、モ ニタリングもしますし、実際に、例えば抗ウイルス薬の臨床試験もそこでやる というような非常に良いシステムが出来ていますので、そこと厚労省のこうい った研究とをリンクすることを是非考慮していただきたいと思います。同じ国 税から出ていますので、それをうまくリンクすることによって、新興・再興感 染症に対する万全の対策というものが一層充実するだろうと思っています。 ○坂本研究企画官  では、お答えできるところから、3点目だったかと思うのですが、事業の統合 をやりすぎると、というご指摘がございました。ご指摘の分野は前回から統合 してそういう形になっております。そして、今回もそれを継続するものです。 以前から総合科学技術会議からは、細切れなのはまずいといったご指摘もあっ て、色々検討して統合できるところは対応してきたという流れがございますが、 ご指摘のとおり、そこはバランスだと思っておりますので、これからもこうい うやり方で行って、事業の運営上支障を来たしているというようなことがあれ ば見直しを考えますが、今の段階としては、やりはじめましたものを今回すぐ に直すということはないのではないかと考えております。 ○宮田委員  それに関しては理解しましたが、評価の中に、それはうまくいったのかとい う評価を盛り込むべきだと思います。 ○坂本研究企画官  評価につきましては、まさに前回から立ち上げたもので、これからでござい ます。また、今後問題点等が評価のところで出てくれば、次の事業の展開に反 映させるのは当然のことと考えております。 ○永井部会長  私から、よろしいでしょうか。在り方懇談会で政策研究の重要性がかなり強 調されているのですが、実際には資料1-2の評価(案)あるいはこれまでの予 算額の推移を見ると、例えば54頁の子ども家庭総合研究、あるいは89頁の健 康安全、93頁の労働安全衛生、115頁の健康安全確保など、このようにかなり 政策的な研究事業に対して、相当厳しい削減が行われてきているようです。こ の辺の最終報告案にある政策研究推進と、実態とをどのように考えたらいいの か、ご説明いただけますか。 ○坂本研究企画官  まず、在り方懇の提言を受ける前の状況であるということはご理解いただき たいと思います。これについては、これまでも総合科学技術会議のSABC評価等 を踏まえた予算の査定等があって、結果としてこのような形になってきている ということです。したがいまして、今後、平成22年度に向けましては、在り方 懇の指摘も踏まえたところへの重点化を図るべきだということで、省内で検討 を行っておりますし、本日そのいった点についてご指摘等がありましたら、そ れを踏まえた検討を今後進めていきたいと考えています。  先ほど宮田委員からご指摘がございましたが、研究費はできるだけ増やそう と頑張って来ているのですが、財政的にも色々な諸制約がありまして、政府全 体の調整の中で、これまでの予算の仕上りとしてあのような形になってきてい るとしかご説明のしようがないのですが、そういった中でできるだけ必要性を 主張して、厚生労働科学研究として確保すべきところは確保していきたいと考 えています。 ○永井部会長  一つには、このような政策研究というのがSABC評価において結構厳しい、い わゆる科学学術研究としては、あまり華やかさがないということになるのかも しれないです。そのような影響が出ているということなのでしょうか。 ○坂本研究企画官  何ともそこは言いにくいところがあります。逆に、我々としては、どのよう にその必要性を各方面に訴えていくかが課題だと思っています。その辺の理解 が得られないと、予算の仕上がりには結び付き難いところがありますので、そ の必要性を関係者にどうご理解いただくかが課題だと思っています。 ○千村研究開発振興課長  宮田委員からのご指摘について申し上げます。まず、「オミックス研究全般に ついて考え方の整理をし直せ」というご指摘ではないかと思います。ここに今 回お示ししているのは、ある意味ではこれまで継続的に研究を推進してきてい て、成果が上がりつつあるものを今後さらに進めていくという観点で整理して いるものではあります。一方で、いまご指摘のようなこともあるので、いろい ろとお話を伺って、今後どう考え方を整理するかは考えていきたいと思ってい ます。  もう1点ご指摘のあった49頁の治験推進研究に関連することです。この治験 推進研究自体は医師主導治験を進めるということで、整理をさせていただいて います。  その他にご指摘のように、治験・臨床研究の基盤整備的なものに対する研究 費の支出も、この他にも行っています。それから、もう一方で、臨床研究推進 研究のような、ある意味では個々の分野の臨床研究に対して、研究費を出すよ うなところも整理をしているので、こういったものを総合的に活用して、日本 における臨床研究を推進していくことは、基本的に考えたいと思っています。  ただ、一方で治験・臨床研究を推進する基盤の整備が、まだまだ十分でない というご指摘もあります。そういう中で、今年度が治験・臨床研究推進のため の5カ年計画の中間年に当たるので、この計画の進捗状況の評価と、今後の残 り3年間は、どのようなところに重点を置いていくのかを考えたいと思ってい ます。そういった中でも、治験・臨床研究推進の基盤整備を進めていきたいと 思っています。 ○宮田委員  いまの件は了解しましたが、私が申し上げたのは次のことを考えているので す。日本ではまだ治験の基盤が乏しいことは事実なので、そこを強化しようと いう予算支出は正しいと思いますが、それをばら撒きのようにやってほしくな い。重点化をして、そこの中で国際レベルの治験ができる人材を育てて、その 人たちがさらにサブ拠点みたいなものの人材を育てるという流れをうまくつく ってほしいのです。  それに当たっては、ただ治験をやりましょうという漠然としたものではなく て、例えば政策研究的に、日本はこの疾患が問題だから、こういった薬に関し て国家がスポンサーとした治験をやろうというプログラムは考慮に値するとい うことで、お話を申し上げました。 ○廣橋部会長代理  全体の強化方針として、若手育成型を強化する取組みがあると伺いました。 確かに若手を育成して、より創造的な研究をする人たちを育てていく。またそ ういう研究を発展させていくのは非常に大事なことだと思います。ボトムアッ プの研究で若手を育成するというのは、わりと簡単に理解できるのですが、こ のようなミッション・オリエンテッドな研究あるいはしっかりとしたエビデン スを出すような大型の研究を推進していく中でも、つまり厚労省らしい研究の 中でも、若手を育成することは非常に大事だと思うのです。例えば文科省でい う若手の育成と違った取組みがあっていいのではないかと思うのですが、その 辺の考えはありますか。 ○坂本研究企画官  これまで若手育成型の研究の公募の際、そこら辺は必ずしもしっかりとでき ていなかったようなところもありますので、今後、できるだけやっていきたい と考えています。文科省と違ったというところでは、課題設定が既にかなり違 っていますので、そういったことを公募要項等で、いかに研究者の方々に理解 していただくか、そこはできるだけ書き込むようにしているのですが、まだ十 分ではないところもあると思われますので、今後の公募要項等では、この研究 は何を求めているのかが、研究者の方々によくわかってもらうような記載に努 める必要があると思っています。まずは公募要項の課題かなと思っています。 もし今後はこうした方がいいというご指摘があれば、それも検討させていただ きます。 ○廣橋部会長代理  もちろん独立してやる研究を支援したいと思うのですが、一方で大型の研究 の中で若手が重要な役割を果たすようなものについても、これも若手育成なの だと積極的に評価することを主張されてはどうかなと思いました。 ○木下委員  研究の内容の全体像は見えるように思います、先ほど宮田委員がお話になっ た臨床治験の研究をとか、それはどういうことかというと、次には当然のこと ながら国民医療に反映させるようなものになっていくことが前提だろうと思い ます。ここで再生医療、テーラーメイドの話ですとか、大きく予算を組んで研 究をさせて、実用化にまで向けているところで、研究費を大いに付けて進める ことは大変ありがたいし、そこまできたということは、近々現実的に国民医療 に入ってくるということだと思います。  そういったときに、行政政策研究の中身を見ると、そういった最先端医療が どんどん国民医療に近づいているにもかかわらず、それに対する受け皿に関す る研究は全くないのです。つまり、これだけのものが一気に実用化されたとき に、果たして国民医療、いまの保険医療の中で賄いきれるのか。それでは混合 診療にすればいいのか。そのようなことをしたら、ますますおかしくなってし まう。アメリカが医療の保険制度を入れようという方向にありながら、我が国 は現実的に動いている中で、先端医療がこういったところに大きな研究費を費 やした結果としてのものを、いまから行政政策研究として、そのあり方、受け 皿としての医療費も含めて、どうあるべきかという非常に大きなテーマが目の 前にあるような気がしますが、漠然とした研究テーマで、一体その成果がどう なっているのかがよくわからない。全体として見たときに、これだけのことを やる以上は非常に大事な研究テーマではないかと思うのですが、その辺のとこ ろはどうでしょうか。  一つの問題は、例えばこの前話を聞きましたが、皮膚の再生医療で、ある会 社が新しい製品をつくって、保険採用されました。しかし、それはベンチャー 企業を育てるような価格設定はあり得ないような安いものです。そのようなこ とをやっていたら、ベンチャー企業はみんな潰れていってしまう。世界を相手 にして、そっちへ行ってしまえばいいではないかと言うけれども、国民はどう なっていくかとなると、本来そういった製品は、国民医療に普通に適用される べきものであろうと思いますが、とてもそれではできないだろうというのがあ ります。そういったことが現実に起こっているときに、役所として全体を考え たときに、どのようなスタンスでこれを国民に提供していくのか。例えば先ほ どの臨床治験もそうですが、それが次々に出てきたら、本当にそれが保険医療 で賄いきれるのかという問題も出てきます。そうすると、もとの保険医療財政 をどうするかという問題もあります。その辺のことも含めた大きな議論もしな くてはならない時期にきているのではないかと思います。そういった視点で質 問したわけです。 ○矢島厚生科学課長  いまご指摘いただいた問題は、医療全体の問題も大きくかかわっています。 私どもは先生がご指摘のようなレベルまで、思いが至っておりませんで、まず できるところの研究で、現場で大事だと言われる研究に、なるべく多くのお金 を確保したいと思っていました。先ほど部会長からもご指摘があったのですが、 本当は重要なのに減らされている研究もあるではないかとありました。私ども も、どちらかというと、そちらに目がいってしまいまして、先端医療と、本来 厚生労働省としてやらなければいけないけれども、なかなか評価されなくて、 進めなければいけないのだけれども、うまく進めるためにはどうしたらいいの だろうかということで、物事を考えていまして、大変反省しなければいけない と思っています。我々ができるところから研究を進めさせていただければあり がたいと思っています。申し訳ございません、そのレベルまでの議論が私ども はできていない現状があることを申し上げました。 ○宮田委員  木下先生がご指摘なさった話はすごく重要で、矢島さんが懺悔なさるのもい いのですが、これは医療経済的な研究です。つまり、日本のいまの問題は、日 本の国民医療のための技術革新がうまく入っていかないのです。ですから、そ の技術革新を、いまの国民皆保険と矛盾なくどうやって入れるかの基礎研究を、 政策研究として取り上げるべきで、そのためには医療経済的な、イノベーショ ンの結果、医療経済がどのような影響を起こすかをきちんと研究できる人材も 育てていかなければいけません。まず小さな1歩でもいいですから、何かその ような研究のご配慮もしていただけると、ありがたいと思います。 ○谷口技術総括審議官  大きな問題提言をいただいています。先ほどどちらかの先生がおっしゃいま したが、総合科学技術会議における評価の問題に触れられました。ざっくばら んに私からそこについてお答えしますと、いまご指摘のようなところが、これ までは研究として評価されないというジレンマもありました。そのような評価 をされているのです。ですから、資料1-1でも述べましたように、「厚生労働行 政の在り方に関する懇談会」の中で、厚労省の行政の企画立案の裏付けとなる ような政策研究を推進するように、これが大事であるというご提言をいただき まして、私どもは、これは我が意を得たりという感じがいたしています。  木下先生のご提言の中には、多分に医療経済の話も含まれていると思います が、実は最新の医療技術、研究の成果が、国民の皆さんに経済面だけではなく、 メディカル・エシックスというか、倫理の面で受け入れられるのかどうかとい う問題もあるわけです。ただ新しい技術を開発すればいいのかという、省とし ての問題意識もあります。そういった部分をやってはきているのですが、そこ はほとんど評価されないこともありまして、そこを今後もっとしっかりやって いかなければいけない。経済、倫理も含め、国民の皆さんに厚労行政をどうや って受け入れていただけるか、そのような研究を進めていくことを心に命じて、 今後やっていきたいと考えています。 ○岩谷委員  73頁に「障害者自立支援総合研究事業」というものがあります。自立支援法 が成立して、共生社会をつくろうというのが、いまの我が国の方針になってい ます。ここに書かれていることは、「予防」、「診断」、「治療」法の研究開発、ど ちらかと言えばメディカルな部分が多いわけですが、実際に精神障害者の診療 の現場に行くと、病院から出られない、その人たちがどうやって社会で生活す るかが非常に大きな問題になっているわけです。それは医療のシステムの中で はもう解決できないことになっているわけです。  もう一つは、国際的には障害者権利条約が、まだ批准はされていませんが採 択されて、これを批准する段階になったときに、リーズナブルアコモデーショ ンとしてどこまでするのか、リーズナブルと考えるのかというのは、非常に大 きな問題になってきます。昨年の社会保障審議会の中でも、障害当事者たちと 我々の考えるリーズナビリティには非常に大きなギャップがあって、それを社 会的にどうやって折合いを付けていくかは、これからの非常に大きな問題のよ うに思います。ですから、もう少し医療と、社会福祉がつながるようなところ の研究に目を向けていただきたいと思います。 ○永井部会長  この懇談会の報告にある政策研究的なもの、政策立案に的確に活かす仕組み と体制を確立すべきというのは、具体的にはどのようなプランが考えられてい るのでしょうか。 ○坂本研究企画官  いまのところは、企画立案の裏付けとなる研究の推進の段階です。PDCAサイ クルを回すとか、研究の実際の行政への反映というところがありますので、そ れらを踏まえて、公募要綱の作成のところで、研究を政策にどう持ってくるか の検討を行い、実際のやりかたと体制の検討に今後取り組まざるを得ないと考 えています。いまは研究の公募をするという1歩目の前のところですので、そ の1歩目から、どれだけ公募課題の設定で練れるのか、一つのポイントは、次 の公募のときにどのような形で公募をかけられるか、その公募の先をどれだけ 見据えているかが課題だと考えています。いま申し上げられるのは、そのよう な段階であるということです。 ○永井部会長  いままでもその枠組みはあって、それをいかに運用するかの問題ということ なのでしょうか。 ○坂本研究企画官  はい。いままでもそれぞれの事業担当課は、それを当然考えて研究を進めて いたのですが、より一層、それをいかに明示的に考えていくかが一つの課題だ と考えています。 ○末松委員  資料1-2の49頁です。先ほど宮田委員、岩谷委員、審議官からお話があった ことと関係するのですが、治験の推進研究あるいは臨床研究基盤整備推進事業 のお蔭で、基盤整備が少しずつ前向きに動いているのはありがたいことだと思 います。私が伺いたいのは、これは平成22年度の話なのでしょうけれども、大 きな大学病院とか研究所附属の病院ではなくて、地域の中核病院は非常に財務 的に厳しいです。そこで働いている医師も非常に追い詰められていて、厚労省 が、少し時間はかかるけれども医学部の増員という形で医師増に踏み切ったこ とは、非常に結構なことだと思います。治験や臨床研究の国際競争力が弱くて、 国際共同治験等がなかなか浸透しない理由の一つに、医学、医療を行っている ところのシステムの問題が考えられていないのではないかと思います。  これはいまから手を付けなければいけないと思うのですが、地域の中核病院 まで巻き込んで、治験や臨床研究をやれればいちばんいいわけですが、なかな かそういかない理由の一つに、治験のインセンティブが若手の担当医師に直接 落ちないとか、病院には収入で入るけれども、担当した人にちゃんと落ちる仕 組みができていないとか、それが医師の待遇の問題にもつながってきます。そ れから、医師が非常に忙しいので、インセンティブがあってもできない状態だ と思います。  そのような収入の仕組みがきちんとできていないと国際共同治験にも入れな いし、いろいろな弊害があるのではないかと思います。現場で実際に臨床研究 や治験をやる若手医師の待遇をきちんとしないと、基盤整備をしても、5年、10 年後に増員された医師が、本当にエビデンスをきちんと拾って、どこの病院で もEBMがきちんと出るような仕組みにできるかどうかというと、大きな疑問符 が付きます。  ですから、せっかく厚労省、文科省の連携で医師増が実現したわけですから、 それがシステムとしてきちんと行くべき方向に行くようにするのには、給与シ ステムのことなどにもどんどんメスを入れて、いろいろなところを改めていか ないといけません。地域の中核病院は財務的に追い詰められて、数年で破綻を きたすところもこれから出てくると危惧しています。雑駁な質問で申し訳ない のですが、基盤整備にお金を入れるときに、本当にそういう構造の改革がきち んとできているかどうか、それが地域の中核病院レベルまで及ぶかどうかとい うのは、EBMを取ることがいかに重要かを国民にきちんと知っていただくために も悪いことではないと思うのですが、その辺については、医師増をしてシステ ムもきちんと直す、その両方が組み合わせられないとうまくいかないと思いま す。これから5年くらい先の話になると思いますが、何かお考えはありますで しょうか。 ○千村研究開発振興課長  地域医療システム全般についての議論となると、私の立場では手に余るとこ ろはあります。一方で治験・臨床研究をこれから進めていく観点からすると、 まさにいまご指摘のような観点、治験・臨床研究推進の5カ年計画の中間見直 しの議論が始まっていますが、その中でもいろいろとご指摘をいただいていま す。  それから、つい先日、国立がんセンターの場をお借りして、治験・臨床研究 の中核拠点医療機関の協議会の集まりを開きました。そこで各中核拠点医療機 関の先生方からプレゼンテーションをしていただき、お話を伺いました。そう いった場も含めて、例えば製薬メーカーの方など、いろいろな方からお話を伺 って、これから基盤整備をどう進めていくかを議論し、検討しているところで す。  その中で、まだ問題は数多くありまして、解決すべき点はたくさんあります。 その中の一つとして、いまご指摘の医師に対するインセンティブの問題も指摘 をされています。一方で、例えば治験を考えると、日本では治験の費用が高す ぎるという議論があります。この治験の費用が高いのは、どこに問題があるの かという、もう少しピンポイントの議論がまだできておりません。その辺も含 めて、これから治験・臨床研究の基盤整備全般をどう進めていくかは、いまの ご指摘も含めて、宿題とさせていただいて、これから検討させていただきたい と思っています。 ○桐野委員  治験推進と臨床研究の推進は、米国に比して非常に遅れていることは事実で すが、このような事業が始まり、また戦略研究なども始まったという意味では、 進んだと言えば進んだと言えます。ただ、このような治験・臨床研究を推進す る研究がある程度進んだところで、現状は立ち上げるところが進んでいるだけ で、これをどう持続していくかについての検討はされるのでしょうが、そのた めには治験や臨床研究に投下される研究費の使い方、いろいろな規程を見直さ ないと、容易なことではこれ以上は上がらないという感じがします。  米国のように社会が極めて流動的で、職業の移動が非常に多い国と、日本の ような国では、同じようなやり方でやれば必ずうまくいくというわけにはいか ないので、日本において臨床研究を強化して、広い臨床研究の基盤の上で、治 験がうまくいくためにはどうすればいいかの提案は、すでにたくさんなされて いて、やらなければいけないこともかなりはっきりしているわけです。そうい うことを考えていただいて、このような治験や臨床研究に投下される研究費の あり方については、これから是非検討していただきたいと思います。 ○石井委員  3点あります。一つは、審議官がおっしゃったような全体的な観点から、研究 推進をしていただきたいということです。その点では、安全・安心な社会とし て医療の供給がきちんとなされるよう、医師の養成も含めて、医療制度全体の あり方という総合的な観点からの研究も進めていただきたいと思います。  2点目は、危機管理という部分ですが豚インフルエンザ、新型インフルエンザ として従来考えられていたものとは違うものが起きてしまった中での混乱は、 ある意味ではよい実験ができたともいえます。それを踏まえた今後の体制整備 のための研究もしていただきたい。  3点目は、先ほどから出ている治験・臨床研究基盤と再生医療についてです。 この間、NHKと民報2つの番組で、我が国では再生医療がうまく臨床に応用でき るようになっていないという状況を報道していました。一つは、日本で開発さ れた技術がフランスで治験が行われている、一方でベンチャー企業が破綻して しまったという内容でした。そこでの指摘が正しいかどうかはわからないので すが、治験と臨床研究との関係がうまくいっていないことが指摘されていまし た。せっかく再生医療と臨床研究基盤両方進めようという話なので、そのよう な社会からの問題の指摘に応えられるような研究基盤整備をしていただきたい と思います。 ○谷口技術総括審議官  包括的なご指摘をいただきました。先生も十分にご案内の上でのご発言だと 思いますので、繰り返しはしませんが、厚労省は、保健医療からはじまって、 福祉、労働、さまざまな分野を抱えています。年金についても、国民にどう還 元すればいいのかという研究も、私は厚労省の研究だと思っています。そうい う意味からすると、昨今レギュラトリーサイエンスという言葉が狭い意味で使 われていると思っているのですが、もっと幅広く、厚労省が行うような行政研 究すべてがレギュラトリーサイエンスだという認識を、私自身、認識を持って いますので、そういう視点から国民の幸せに裨益するような観点での研究を包 括的に進めるという意味で、先生からご指摘いただいた3点についても、十分 に検討させていただきます。 ○永井部会長  まだご意見はあるかと思いますが、時間がだいぶ押してきましたので、本日 の議論はここまでにします。もし他にご意見のおありの方はお手元の用紙に記 入いただいて、7月30日(木)までに、事務局にお送りください。事務局で本 日の意見、また後日各委員のご意見をいただいて、それを踏まえて必要な修正 を行っていただきます。  修正した内容については、部会長一任でよろしいでしょうか。 (異議なし) ○永井部会長  そうしましたら、今日ご欠席の委員にも照会して、最終的な成案として取り まとめます。  議事2の「ヒト幹細胞臨床研究について」、事務局から説明をお願いします。 ○事務局  ヒト幹細胞臨床研究については、資料2をご覧ください。ヒト幹細胞を用い る臨床研究に関する指針に基づいて申請された、ヒト幹細胞臨床研究実施計画 について、審査委員会で審議された結果、指針への適合性が了承された申請6 件について、ご報告します。  今回ご報告申し上げますのは、京都府立医科大学、財団法人先端医療振興財 団先端医療センター病院、多施設の共同研究である東邦大学医療センター大森 病院、国立病院機構千葉東病院、市立函館病院、青森県立中央病院の実施計画 です。  まずは京都府立医科大学です。1頁の審査委員会の永井委員長の意見書に続い て、2頁に本実施計画の概要があります。研究課題名は重症慢性虚血性心不全に 対するヒト心臓幹細胞と幹細胞増殖因子bFGFのハイブリッド自家移植療法の検 討。研究責任者は京都府立医科大学の松原弘明先生。対象疾患は重症慢性虚血 性心不全。  研究計画の概要は36頁のポンチ絵もご参照ください。心筋幹細胞の培養に自 己血清を用いるため、事前に2回に分けて200ccの血液を採取して、血清を分 離します。心臓カテーテルを用い、生検鉗子で5個の生検を用い、心筋組織を 約15〜20mg採取し、心臓幹細胞を分離、培養します。3週間後に規定細胞数に 達した培養幹細胞を、冠動脈バイパス手術の際に、障害心筋組織に直接注入す るとともに、bFGFを含むブタ皮膚由来ゼラチンシートで、注入局所を被覆する 除放シートを併用するという研究です。今回の研究では、その安全性を確認す るというものです。心筋幹細胞を用いた前臨床研究として、ブタの虚血モデル を用いての有効性が、すでに示されています。  3頁から5頁に審議概要が記載されています。主な審議内容は、実施計画に関 して、カテーテルで採取、培養する詳細な手順を記載するように指摘を受けて います。また、生検で得られる組織量、培養細胞数の根拠などについて、疑義 がなされています。さらに、bFGF含有のゼラチンハイドロゲルシートの基礎的 な研究結果を追加するようにと。また、安全性について詳細なコメントを記載 するようにと指摘を受けています。  計3回の審議を経て、議論がなされています。得られた回答と主な変更点は5 頁です。虚血心や弁膜症の患者から実施された生検組織を用いて、幹細胞が分 離培養されることが示されています。また、ブタを用いた前臨床研究の結果で、 bFGF含有のハイドロゲルシートの安全性については、すでに示されています。 さらに、ヒトを対象としたbFGF含有の人工心膜付きゼラチンハイドロゲルシー ト移植術もすでに施行されていて、その結果も示されています。  6頁が計画申請書、7頁から11頁から実施計画書、14頁から同意説明文書で、 36頁は先ほどのポンチ絵です。  続いて先端医療振興財団先端医療センター病院からの申請です。38頁が意見 書です。申請機関に誤字があることをお詫び申し上げます。こちらは先端医療 センター病院からの申請であることと訂正いたします。また、公開される資料 については、訂正資料に差し換えることをご了解いただきたいと思います。  39頁に臨床研究実施計画の概要です。研究課題名は難治性骨折(偽関節)患 者を対象とした自家末梢血CD34陽性細胞移植による骨・血管再生療法に関する 第I・ii相試験。研究責任者は先端医療センター病院の黒田良祐先生。対象疾 患は難治性骨折(偽関節)。  49頁からは要旨ですが、50頁のポンチ絵もご参照ください。5日間のG-CSF 投与により動員した末梢血単核球細胞からCD34陽性細胞を磁気ビーズと CliniMACSという装置を用いて採取分離します。分離したCD34陽性細胞と、ア テロコラーゲンとPBSを培養施設にて混和し、それを手術室にて下肢の骨折部 手術の際に、患部に移植するタイプの治療です。CliniMACSという装置は、日本 では未承認の機器ですが、先端医療センター細胞培養室にて処理が行われ、そ の品質管理試験ではすでに安全性が確認されています。また、下肢虚血患者を 対象とした別の臨床試験にて、同様の安全性が確認されています。  本研究は、CD34細胞を骨折への治療へ応用するという臨床研究である点で、 新規性があります。この前臨床研究としては、骨折ラットモデルに対し、CD34 の同様な陽性細胞を移植し、骨新生が有意に見られ、用量依存性の治療効果が 確認されています。  40頁から42頁までが審議の概要です。計3回の審議を経て、疾患の病型ごと の対象患者の設定をするように、またCD34陽性細胞の作用機序について詳しい 記載をするように疑義がなされています。そこで、非感染性の偽関節及び静止 型の感染性の偽関節患者を対象とし、それぞれ病型別の評価を加えるように、 プロトコールの改善がなされています。また、CD34陽性細胞が、骨芽細胞や血 管内皮細胞に分化することが、前臨床試験で示され、本研究は委員会で了承さ れています。  43頁に申請書、44頁から実施計画書、49頁から52頁が要旨、53頁からは患 者への説明同意文書です。  続いて、多施設の共同研究による四つの申請についての説明です。先ほど表 紙にあったように、東邦大学医療センター大森病院、千葉東病院、市立函館病 院、青森県立中央病院からの4課題は、すべて同じプロトコールによる多施設 共同研究に参加する研究機関ですので、その概要、審議経過については、申請 日の最も早かった東邦大学医療センター大森病院の資料を用いてご報告します。  76頁です。末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植 治療のランダム化比較試験に関して報告があります。  続いて研究実施計画書の概要です。研究責任者は、東邦大学医療センター大 森病院の水入苑生先生。この研究対象は、既存の治療に抵抗性の末梢動脈疾患 (慢性閉塞性動脈硬化症・バージャー病)です。  臨床研究の概要です。90頁のポンチ絵もご参照ください。G-CSF皮下注射か ら4日目に自己末梢血を採取し、アフェレシスを行って細胞を採取します。末 梢動脈疾患の患肢に0.5ccずつ、70〜150カ所の筋肉内に注射をし、末梢血管再 生効果を見る研究です。本研究に用いられる幹細胞、対象疾患については新規 性はありませんが、計19施設が参加する予定の多施設の共同研究として実施さ れ、目標症例数は140という大きなプロトコールで、その新規性が評価されて います。  本プロトコールはすでに行われている科学技術部会にて、札幌北楡病院、北 野病院、湘南鎌倉病院、虎ノ門病院などの申請が了承されています。今回は研 究実施施設基準と、倫理審査委員会の構成などについて審議がされています。  審議の概要です。審議された項目としては、内容にあるプロトコールなどが 最新版になっていないこと、説明同意文書が不備であることが指摘され、こち らは訂正いただき、委員会で了承されています。80頁以降に申請書、実施計画 書、説明文書がありますので、ご参照ください。他の3件の計画についても、 ほぼ同様の経緯で了承が得られていますので、ここでは省略します。以上、ヒ ト幹細胞臨床研究に関する審査委員会で適合性が確認された六つの申請につい てのご報告です。 ○永井部会長  最初の京都府立医科大学の臨床研究ですが、これは先ほどの大阪大学の研究 とは違って、心筋の幹細胞を心筋生検で採ってきて、マーカーがあるわけでは ないのですが、培養条件によって心筋幹細胞と思われる細胞を取り出して、そ れを大量に増殖させて、心筋内に注入します。非常に基礎研究でもしっかりし た論文もありますし、ブタでの研究もありまして、細かい点については議論が ありましたが、大枠としてはいいのではないかということです。日本発の再生 医療研究です。  最後の4件は、前回ご承認いただいた札幌北楡病院が中心となって行ってい る末梢血単核球細胞を用いた血管新生療法で、内容は全く同じものです。ご質 問、ご意見はございますか。よろしいでしょうか。ご質問がなければ了承をい ただきたいところなのですが、いま定足数を切っていますので、これはまた次 回ご説明いただいて、ご了承いただけばよろしいでしょうか。 ○坂本研究企画官  本日の審議については定足数の問題もありますので、一度事務局で整理させ ていただきます。 ○永井部会長  方針が決まりましたら、各委員にご連絡をお願いします。  先ほど報告事項については、すでに終了しているので、その他の点で何かご ざいますか。 ○坂本研究企画官  報告事項ですが、参考資料5として、前回の科学技術部会でご審議いただい た平成20年度厚生労働科学研究補助金の成果の評価に関して、一部修正し、永 井部会長にご承認いただいたものをお配りしています。 ○永井部会長  本日予定した議事はすべて終了しました。次回の予定等のご連絡はございま すか。 ○坂本研究企画官  本日は定足数の問題がありますので、事務局でその辺について一度整理させ ていただきます。次回については別途日程調整させていただきますので、その 際にはよろしくお願いいたします。 ○永井部会長  本日はこれで終了します。どうもありがとうございました。                                −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171