09/07/21 平成21年度第3回目安に関する小委員会議事録           平成21年度第3回目安に関する小委員会議事録 1 日時  平成21年7月21日(火)15:00〜 2 場所  厚生労働省第二共済組合茜荘 3 出席者   【委員】 公益委員  今野会長、勝委員、野寺委員、藤村委員    労働者委員 石黒委員、田村委員、團野委員、萩原委員        使用者委員 池田委員、小林委員、高橋委員、横山委員、   【事務局】厚生労働省 氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、              山口主任中央賃金指導官、伊津野副主任中央賃金指導官、              平岡課長補佐 4 議事内容 (第1回全体会議) ○今野委員長  それでは、第3回目安に関する小委員会を始めたいと思います。  最初に、前回の目安に関する小委員会で石黒委員、池田委員、高橋委員から御依頼のあ りました資料について、事務局から御説明をお願いします。   ○吉本勤労者生活課長  お手元にあります第3回目安に関する小委員会資料を御覧下さい。資料No.1からNo.4まで あります。まず資料No.1は、生活保護と最低賃金の乖離額の変動の要因分析をすべての都道 府県について行ったものです。表について、左から申し上げますと、最新の平成19年度の データで計算したときの乖離額を時間額で見たもの、その隣に平成20年度の地域別最低賃 金引上げ額が並んでおりまして、それを差し引いたものを「残された乖離額」というところ に示しています。生活保護が最低賃金を下回っている県については、マイナスで表示してい ます。同じような形で、平成18年度の時点で比較した場合の乖離額を横に示しており、3 つ目と4つ目の差し引きが乖離の拡大した分ということになります。それについて要因分析 を行いましたが、乖離拡大の大きな要因は、前回の第2回目安に関する小委員会で申し上げ ましたとおり、1つが住宅扶助の実績値が変動したこと。もう一つは可処分所得比率が、 0.864から0.859に変動したことによるものです。住宅扶助の実績値につきましては、ほと んどの県で上がっているところですが、下がっているところもあります。可処分所得比率が 減少したことによる影響は、もともとの最低賃金額によって若干の多寡がありますが、3円 〜4円の影響が出ています。  次に、資料No.2ですが、可処分所得比率0.859の計算根拠を示したものです。平成19年 度における一番低い最低賃金額の618円で月173.8時間働いた場合を前提としています。そ れに基づきまして、所得税、住民税、社会保険料、雇用保険料を計算したものです。詳細は 割愛いたしますが、所得税率、住民税率も、それぞれ変わっている中で、一番影響の大きか ったところは社会保険料です。平成19年度は、月額11万円は標準報酬月額第7等級という ところに当てはめられていましたが、昨年はこの等級が1つ低く、10万4,000円でしたの で、1等級上がったことになります。また、雇用保険料も変わっています。それぞれを計算 した結果、0.864から0.859になっています。  資料No.3は、最低賃金に関する基礎調査についての概要をまとめたものです。地方最低賃 金審議会における審議の参考とするために、低賃金労働者の賃金実態を把握することを目的 としています。調査時期については毎年6月、調査対象産業につきましては(1)製造業か ら(8)サービス業(他に分類されないもの)です。また、(1)製造業、(2)情報通信業の うち新聞業・出版業については常用労働者数が100人未満の事業所、(3)卸売業,小売業以 降は常用労働者数30人未満の事業所を対象としていまして、対象事業所数は約6万事業所 になります。  最後に、資料No.4です。賃金改定状況調査の第4表の一般労働者及びパートタイム労働者 の賃金上昇率の推移を改めて昭和53年度から整理したものです。特に説明はございません が、御覧いただければと思います。事務局からは以上です。 ○今野委員長  ありがとうございました。ただ今の説明について御意見、御質問がありましたらお願い いたします。よろしいでしょうか。資料は後でじっくり見ていただいて、御質問があれば。 それでは、議論に入りたいと思います。まず、前回労使からそれぞれの目安についての考え 方を表明していただきましたが、こちらでお考えを整理しましたので、最初に御紹介したい と思います。  まず、労働者側からは、最低賃金の水準は時給900円を超える水準にすべきであり、 この水準に向けて中期的に引き上げるため、本年度についても生活保護との乖離解消はもと より、賃金の底上げにつながり、生活できる最低賃金の確立に向けて、その目的に合致した 水準の引上げを図ることが不可欠であるという御主張がありました。使用者側からは、昨今 の極めて厳しい経営環境を踏まえれば、今は最低賃金を引き上げる状況にはなく、中小零細 企業の置かれている現状を端的に表している賃金改定状況調査結果を十分に踏まえて慎重 に議論を行うべきだという御主張がありました。  また、生活保護との乖離解消についても、それぞれ御意見がありました。労働者側から は、昨年、公益委員見解として示された内容に基づき、清々かつ着実に解消していくことを 強く求めるという御主張、また、残された年数において公労使で鋭意努力して解消すること が必要不可欠であるという御主張がありました。使用者側からは、未曾有の経済危機が発生 したことと、目指すべき乖離解消額がさらに引き上がるという二重の意味で想定外の事実が 発生した以上は、昨年定めた乖離解消の方法について見直しが避けられないという御主張、 また、特に基準年度の変更に伴う乖離解消額の大幅変動問題について、今後、本質的な対応 も必要ではないかという御主張がありました。  ということで、前回はそういう御主張でありましたが、今日改めて追加される主張があ りますでしょうか。 ○團野委員  先ほど、今野委員長から生活保護水準について、残された年数において公労使で鋭意努 力して解消することが必要不可欠であると言われましたが、その前段で、昨年度の公益委員 見解の内容について申し述べた後、そのように申し上げておりますので、誤解のないように お願いしたいと思います。  それから、前回、基本見解5点について述べましたが、何ら変更はございません。ただ、 7月14日の第2回目安に関する小委員会で主張しましたのは、使用者側の厳しい状況につ いては我々も認識しているけれども、企業会計と比較すれば、我々の一般家計もそれ以上に いたんでいるということを主張させていただきました。この観点から少し申し述べたいと思 います。  今年4月に連合総研が勤労者短観という調査をしております。その中で、全体の8.5%の 家計において、何らかの形で支出を切り詰めていたり、あきらめているという結果が出てお ります。外食、趣味・レジャー、衣料費、理容・美容、その他でありますが、これを属性別 に見ると、低所得者層や技術・短時間労働者において節約志向が高いという結果が出ており ます。また、違った観点から見ると、低所得者層の12.9%が医療費も切り詰めているとい う厳しい生活実態が浮き彫りになりました。こういう結果を我々なりに分析させていただき ますと、やはり、賃金の低廉な労働者の賃金を保障することによって労働条件の改善を図り、 生活の安定及び事業の公正な競争を確保するという最低賃金制度の目的に資するという重 要性を、こういった実態から再認識したところであります。最低賃金制度の実効性をより高 めて、十分に機能するような目安を本年度も示すべきであることを強く主張しておきたいと 思います。以上です。 ○田村委員  賃金は、生活できる賃金を補完した上で仕事に見合う賃金が上乗せされるものだと思っ ていますので、そもそも生活できる賃金がなければ、その企業にいても生存そのものができ ない。そこで、最低賃金の水準を議論しなければならないと思っていますので、そもそも賃 金とはいったい何だ、仕事によって得る賃金とは何だ、というところで議論を深めていきた いと思っています。第4表の数字、これが非常に大事だと言っておられるのは事実ですし、 今回−0.2%というのは大きな減少ですが、中身を見ますと、産業計・男女計ではマイナス ですが、女性の方は全てのランク及びランク計も含めてプラスです。男性の方はマイナスで す。さらに、第3表事業所の賃金引上げ率の分布の特性値を見ても、賃金の下の方と上の方 のばらつきが縮まっているということは、賃金カットを含めて男性を中心に上の賃金は下が ったけれども、女性を中心に賃金の底は上がったという認識を持っていますので、第4表だ けを一つの指標にするのは不適切であると考えています。以上です。 ○今野委員長  使用者側はいかがですか。 ○小林委員  2点ほど資料を用意させていただいております。一つは6月の中小企業月次景況調査です。 これは今日午前に集計結果が出たものです。もう一つが平成21年度中小事業所の賃金改定 状況(速報値)です。これは29人以下の事業所についての賃金改定状況です。  最初に、月次景況調査を御覧ください。時間がたっていますが、みなさんにも読んでい ただいて、委員の方からも、景況感等については認識しているということで、表紙のグラフ を見ていただきますと、一度、平成14年1月でかなり景況が悪化していて、また今回の100 年に一度の経済危機によって平成21年2月が言わばボトムというか、一番落ちた所でござ いまして、若干の回復はしていますが、次の頁にあります過去の景況について、平成10年 9月、平成14年1月、平成21年6月を比較すると、平成14年1月のボトムがかなり低い 所にあります。下の表1を見ていただきますと、平成21年2月の値が−82.4ポイントと相 当な落込みになっている。回復はしたけれども、前回も申し上げましたとおり、平成14年 1月のときより、まだ平成21年6月の調査時点で下回っており、相当低い落込みになって います。まだまだ回復には時間がかかるのかな、と思っております。細かい所については御 覧いただければと思います。  次に、中小企業の改定状況についてです。1の調査の概要ですが、従業員300人未満の約 5万事業所に対して、平成21年7月1日時点の調査です。こちらは現在集計中のため、今後 数値が変わる可能性もありますので御留意ください。  2は従業員29人以下と、従業員9人以下の事業所についての賃金改定状況について見た ものです。従業員29人以下については、引き上げたのが32.4%、引き下げたところも12.0%、 ほかは御覧のような数値になっております。  例年との比較を見ていただくと、4頁、5頁に昨年度と比較しているものがあります。従 業員29人以下の賃金の改定状況を比較したものを御覧いただくと、引き上げた事業所が平 成20年度は41.3%、平成21年度が32.4%、引き下げた事業所が平成20年度は4.0%、平 成21度年が12.0%となっています。この間、厚生労働省が発表した賃金改定状況調査も、 同じような結果が出ていると思います。 ○今野委員長  ほかにございますか。どうぞ。 ○團野委員  平成21年度中小企業の賃金改定状況について、調査そのものについてどうこう言うこと はありません。こういう状況だろうと思います。先ほど、最低賃金の目的、公正競争の確保 等に資する面から見て、改めて最低賃金の重要性について申し上げました。その中で、賃金 改定をどのように受け止めたら良いのかと思っております。実態として、賃金を引き下げた り、凍結したりして自らの企業を生き残りに加えざるを得ないという厳しい実態を見れば、 そのとおりだというように見なければいけないと思います。その一方で、賃金を引き上げら れる企業は引き上げている。そういうことが望ましいのではないかと。それが今年の例でい くと、引き下げたところが12.0%、7月中に引き下げるというところが3.6%、実施しな いというところが45.8%となっています。そういう観点から見た場合、これをどう見たら 良いのか。  そもそも、中小企業における賃金制度は企業サイド中心でもあり、なかなか政府による制 度整備がなされないままに、結果として賃金が下がってしまうという側面があるのも事実で あります。ですので、この調査結果そのものを否定するつもりは全くないですが、これをど のように見るべきかについては、労働者側としては意見を異にするということだけ申し上げ ておきたいと思います。 ○今野委員長  使用者側はいかがですか。 ○池田委員  第1回の目安に関する小委員会では、全国の商工会議所から寄せられた声を御紹介しま した。雇用情勢の悪化や需要の低迷で、景気が長期低迷しております。また、日本経済は最 悪期を脱したと見られていますが、設備投資が減少している等全体としての水準は依然とし て低く、各地から厳しい景気状況に対する意見が寄せられています。  次に、7月15日に日本商工会議所が発表いたしました地域経済四半期動向の結果を簡単 に御紹介します。これは12大都市で動向調査及びヒアリングを行ったものです。4〜6月の 景況感について、5段階表示で最も厳しい状況を示す「悪い」と回答した商工会議所は12 カ所のうち10カ所となっています。各地から寄せられた主な声を御紹介します。まず札幌 ですが、住宅建設業では、「売上げは昨年から減少の一途。4月には売上が前年比6割減。 今年の売上げは昨年の半分と非常に厳しい。」。次に、京都の食料品卸売業では、「新型イン フルエンザによる影響で観光客が減少し、業務上の得意先がどこも仕入れてくれない。」。製 造業のうち印刷業では、「原材料価格が上昇しております。販売価格に反映できず採算が圧 迫されています。」。福岡の食料品製造業では、「高速道路料金の値下げによる鉄道利用者の 減少に加え、新型インフルエンザによる旅行控えなどの影響もあり、駅での駅弁販売ができ ない。」。以上ほんの一例ですが全国の商工会議所の事業所から悲鳴に近い声が寄せられてお ります。ただでさえ経営環境が厳しい状況に加え、新型インフルエンザの影響で更に打撃を 受けた一例がありました。冬に向け感染が拡大しないよう努めていただきたいと思います。  次に、信用保証制度について申し上げます。今回の非常事態において多くの企業が収支 の圧迫に苦しむ結果、金融負債の増加を招いております。昨年の10月から信用保証協会に よる緊急保証制度が開始されましたが、それ以来、信用保証協会の保証料額は大幅に増加し ております。例年資金需要が大きくなる10月で見ると、昨年10月の場合で前年同月比3.2 倍、直近でも今年4月の保証料額は前年同月比1.8倍となっております。このことは、企業 が借金を大幅に返していること意味しています。融資実行から最大24ヶ月は元金の返済を 背負うことも可能ですが、仮に今後景気が回復し、企業の収支が改善したとしても、これか らも借金は依然として返済していかなければならない。最長の10年で返済するためには、 これから数年間にわたって今回の非常事態に伴う借入金の返済を強いられることになると 思われます。現在、企業がいかに厳しい状態に置かれているか、中小企業の状況を中心に申 し上げましたが、このような状況において、最低賃金を引き上げる状況にはないと考えてお ります。  次に、生活保護制度との乖離解消の問題に関して申し上げます。前回の目安に関する小 委員会でも申し上げましたが、平成20年度の最低賃金の大幅な引上げにもかかわらず、12 都道府県で乖離額が増大するという結果となっております。これにつきまして先週、日本商 工会議所の労働小委員会で議論したところ、このように乖離額が大幅に変動する点につきま して、生活保護費の基準額の算定は単年度が適切なのか、計算方法も含めて生活保護との乖 離を示す基準について改めて検討する必要があるという結論に達しました。このように、極 めて厳しい経済情勢を考えると、生活保護との乖離解消を一時的に凍結することも含めて、 必要に応じてその取扱いについても議論する必要があると考えております。以上です。 ○今野委員長  ほかにございますか。よろしいでしょうか。ただ今、労使それぞれからいろいろと御意 見をいただきましたが、依然として労使の隔たりが大きいようですので、全体会議で詰める のは難しいと考えます。そこで、公労・公使で個別に意見を伺いながら詰めていきたいと思 いますが、いかがでしょうか。 (異議なし) ○今野委員長  それでは、最初に公労会議を行いたいと思いますので、使用者側委員の方は、控え室で お待ち下さい。 (第2回全体会議) ○今野委員長  ただ今から、第2回全体会議を始めたいと思います。結論から言いますと、本日は目安を 取りまとめるべく、午後の早い時間から労使双方の歩み寄りを期待してお話しをさせていた だいてまいりましたが、依然として労使の見解に隔たりが大きいことから、本日中の取りま とめは断念し、次回に持ち越すことにしたいと思います。本日は終了したいと思いますが、 その前に今日の労使の主張について、私の方で整理いたしましたので、御確認をお願いしま す。  今日は大きく2つの論点について議論させていただきました。1つは、通常の引上げの方 の考え方ですが、労働者側は、中期的に900円を超える水準まで引き上げるために、本年度 についても生活保護との乖離解消はもとより、賃金の底上げにつながる、生活できる最低賃 金の確立に向けて引上げを行うことが不可欠であるという御主張でした。  それに対して使用者側からは、昨今の厳しい経済状況を踏まえれば、現在は最低賃金を引 き上げるような状況にはない。賃金改定状況調査結果の結果を踏まえて、慎重に議論を行う べきという御主張でした。基本的には、労使それぞれ具体的な金額には入らなかったという ことです。  もう一つの論点である生活保護の乖離解消については、労働者側からは、昨年度の公益委 員見解で示された内容に基づいて、残された年数で解消することが必要不可欠だという主張 がなされました。  それに対して使用者側からは、未曾有の経済危機が発生したこと及び乖離解消額が更に引 き上がったことという想定外の事象を踏まえると、昨年定めた乖離解消の方法及び期間につ いて、見直しは避けられないという御主張だったと思います。  このように、主張が真っ向から対立しておりますので、今日の取りまとめは断念したいと 思います。今、私が整理した内容でよろしいでしょうか。それでは、本日はこれで終わりに いたしまして、次回に持ち越したいと思いますが、よろしいでしょうか。                    (異議なし) ○今野委員長  それでは、労使各側におかれましては、目安の取りまとめに向けて、次回までに再考を 願いしたいと思います。次回の日程と会場は追って事務局から連絡させていただきます。 以上をもちまして、本日の第3回目安に関する小委員会を終了します。議事録の署名は、萩 原委員と横山委員にお願いいたします。本日はお疲れ様でした。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)