09/07/14 平成21年度第2回目安に関する小委員会議事録 平成21年度第2回目安に関する小委員会議事録 1 日時  平成21年7月14日(火)10:00〜11:00 2 場所  厚生労働省共用第7会議室 3 出席者   【委員】 公益委員  今野会長、勝委員、野寺委員、藤村委員    労働者委員 石黒委員、田村委員、團野委員、萩原委員        使用者委員 池田委員、小林委員、高橋委員、横山委員、   【事務局】厚生労働省 氏兼勤労者生活部長、吉本勤労者生活課長、 山口主任中央賃金指導官、伊津野副主任中央賃金指導官、 平岡課長補佐 4 議事内容 ○今野委員長  第2回の目安に関する小委員会を開催いたします。まず事務局から賃金改定状況調査につ いての資料の説明をお願いします。   ○吉本勤労者生活課長  それでは御説明します。  資料No.1を御覧ください。「平成21年賃金改定状況調査結果」です。まず表紙で概要を記 させていただいております。例年どおりの調査概要ではありますが、県庁所在都市と、原則 人口5万人未満のうちから選んだ地方小都市が対象となっております。県庁所在都市につき ましては製造業、卸売業,小売業、宿泊業,飲食サービス業、医療,福祉、その他のサービス 業とありますのはその下に注書きをしているとおりですが、これらの業種を対象としており まして、地方小都市につきましては製造業のみです。なお、既に委員の皆様方からは御了承 いただいておりますが、先般の日本標準産業分類が改定されたことに伴いまして、5つの分 類に変わりはありませんが、その表記の仕方を若干変更しております。  調査事業所につきましては、常用労働者が30人未満の企業で、1年以上継続して事業を 行っているものということで、対象事業所数は、県庁所在都市については約3,000事業所、 地方小都市が約1,000事業所、合計で約4,000事業所、労働者数にすると約3万1,000人と いうことです。調査事項としましては、6月1日現在における事業所特性、労働者特性、主 に昨年6月と今年6月の所定労働日数、所定労働時間数、所定内賃金額をお尋ねしておりま す。  次の頁の第1表は今年の1〜6月の賃金改定の状況について、事業所ごとの状況を尋ねた ものです。まず一番左の産業計、ランク計を御覧いただきますと、1〜6月までに賃金引上 げを実施した事業所の割合が29.0%、括弧内が昨年で39.9%ですので、10ポイント以上、 下がっている状況です。ランク別ではAランクが36.4%と一番高く、ランクごとにだんだ ん低くなるといった状況です。1〜6月までに賃金引下げを実施した事業所の割合が5.2%、 昨年は1.1%ですので、ここは大きく増加しております。賃金改定を実施しない事業所の割 合は56.9%、昨年は49.3%でしたので、これは上がっている状況です。7月以降に改定を 実施する予定としている事業所の割合は8.9%となっております。産業別に見ますと、引上 げを実施した事業所の割合が大きいのは、医療・福祉の60.3%で、逆に製造業では20.1% と低くなっております。  次の頁の第2表は「事業所の平均賃金改定率」で、事業所単位の集計をしたものです。一 番左が賃金引上げ実施事業所の平均賃金改定率です。産業計、ランク計で御覧いただきます と2.4%、昨年が2.7%でしたので0.3%下がっております。真ん中の四角の部分、賃金引 下げを実施した事業所の平均引下げ率を見ますと、-10.1%、昨年は-6.2%ですので、これ は大きくなっております。一番右の四角の欄は、改定を実施した事業所と凍結した事業所を 含めた全体の加重平均の改定率ですが、産業計では0.2%、昨年が1.0%ですので、ここは 下がっております。  第3表の「事業所の賃金引上げ率の分布の特性値」は、賃金引上げを実施した事業所につ いて、その引上げ率の分布を見たものです。産業計を見ると第1・四分位数が1.1%、中位 数が1.7%、第3・四分位数が2.7%、分散係数は0.47ということで、昨年より若干ばらつ きが縮まっている状況です。  第4表は「一般労働者及びパートタイム労働者の賃金上昇率」です。これも産業計、男女 計、ランク計の所をまず見ていただきますと、昨年6月の時間当たり賃金額が1,367円、今 年6月の時間当たり賃金額が1,364円、-3円で率にすると-0.2%です。ランク別ではAラン クが-0.3%で、以下B〜Dランクまでは-0.2%となっております。男女別で見ますと男性が -0.7%、女性が0.5%といった改定率になっております。また、産業別で見ますと医療,福 祉を除き、マイナスの改定率ということになっております。  次の頁以降は参考資料です。参考1は「賃金引上げの実施時期別事業所数割合」です。1 〜6月に賃金引上げを実施した事業所を100とした割合で、変わらないとするものが最も多 く、ほとんどですが、県庁所在都市と地方小都市に分けて比較すると、若干地方小都市で遅 いとしている所が多くなっている状況です。  参考2は「事由別賃金改定未実施事業所割合」は、今年6月までに賃金改定を実施してい ない事業所について、下の方の注にある1〜5の事由をお聞きしたもので、事由1、事由2、 事由5が今年7月以降に実施する予定があるというもので、事由3と事由4は、今年は凍結 あるいは実施しないというものです。これも産業計のランク計の所で見ますと、一番多くな っているのが事由4「昨年は実施していないし、今年も実施しない予定」というのが64.4%。 また事由3「昨年は実施したが、今年は凍結の予定」が22.0%ということで、昨年と比較し ても上がっている状況です。事由1「昨年同様、7月以降実施の予定」というのが8.2%。 事由5「昨年は実施しなかったが、今年は7月以降実施の予定」というのが3.1%となって おります。  参考3は、先ほど第2表で、事業所で見た平均賃金改定率を御覧いただきましたが、それ を県庁所在都市と地方小都市に分けて見たものです。賃金改定実施事業所、凍結事業所の合 計で御覧いただきますと、県庁所在都市の産業計の所は0.3%、同様に地方小都市、一番右 の下を御覧いただくと-0.2%ということで、地方小都市の方が改定率が低く、マイナスとい うことになっております。  参考4は、先ほど第3表で賃金引上げ率の分布の特性値を御覧いただきましたが、これを 県庁所在都市と地方小都市に分けて見たものです。地方小都市の方が若干、分散係数が大き いという結果になっております。  次の頁の参考5は、先ほどの第4表の賃金上昇率について県庁所在都市と地方小都市に分 けて見ております。県庁所在都市の産業計、男女計で見ますと、賃金上昇率は-0.1%、それ に該当する地方小都市が-0.5%で、県庁所在都市より低くなっているという状況があります。 最後に付表です。まずパートタイム労働者比率です。平成20年は24.4%だったものが平成 21年は25.7%と、1.3ポイント増加をしております。集計に当たりましては平成16年の目 安制度のあり方に関する全員協議会で決めていただいたとおり、平成20年のパートタイム 労働者比率の変化を除去して計算しております。それから男女別労働者数の比率は、女性が 44.6%となっております。また、年間所定労働日数については1.4日減少しております。賃 金改定状況調査については以上です。 ○今野委員長  ありがとうございました。何か御質問、御意見がありましたらどうぞ。よろしいですか。  それでは次にいきましょうか。次は生活保護と最低賃金の関係と、もう1つは、前回各委 員から要望があった事項がありますので、それに関連する資料を事務局から説明してくださ い。 ○吉本勤労者生活課長  資料No.2を御覧ください。「生活保護と最低賃金」とありまして、1枚目をお開きいただき ますと、これは生活保護水準と最低賃金額の関係を表したグラフです。これは昨年度の公益 委員見解で示された比較の考え方に基づきまして、最新のデータである平成19年度の生活 保護水準と、手取り額で見た平成19年度の最低賃金額を比較したものです。右上の四角の 所にグラフの説明がありまして、△が生活保護水準で、括弧書きは都道府県人口加重平均値 です。その下にある◇が最低賃金の手取り額。これは月の法定労働時間である173.8時間を かけて、社会保険料等を考慮した、いわゆる可処分所得比率0.859を掛けて算出した数字で す。△が◇より上の都道府県が、生活保護の方が最低賃金の手取り額を上回っている状況に あるわけです。  グラフを御覧いただく上で、2点ほど御留意いただきたい点を申し上げますと、1つは生 活保護水準の取り方です。昨年度の公益委員見解で示されたとおりですが、住宅扶助につい ては実績値を取っております。住宅扶助の実績値は、都道府県ごとと政令市、中核市ごとに その実績値が取りまとめられておりまして、今年については、入手可能な最新のデータであ る平成19年度のものを新たに使用して計算しております。  この住宅扶助の実績値が、昨年平成18年のデータと比較してほとんどの地域で上昇した 結果として、この生活扶助基準の値は上昇しているということです。2点目は、この手取り 額を算出するに当たっての可処分所得比率です。これも昨年の公益委員見解で定められたと ころです。全都道府県の中で最も低い最低賃金額、平成18年度は610円だった所が平成19 年度は618円になっており、それを基にして月に173.8時間働いた場合の税、社会保険料等 を考慮して算出しています。ただ今申しましたように、最低賃金額が上がったことに伴い、 主たる要因としては、厚生年金の標準報酬階級が1つ上がったこと等によって、可処分所得 比率が減少しております。このためにその月の手取り額で見た最低賃金額の割合が、昨年度 と比べて減少するという状況になっております。以上が1枚目のグラフの説明です。  2枚目は、ただ今御覧いただいたグラフで、生活保護水準が最低賃金額を上回っている13 の都道府県について、具体的な乖離額を示したものです。一番左のA欄、これはただ今御覧 いただいたグラフの乖離額、これは月額でしたが、これを時間額に直したものです。乖離額 を議論するに当たりましては、昨年度平成20年度の引上げ額を控除する必要がありますの で、Bの昨年度引上げ額をAから控除したCが残された乖離額ということになります。なお、 一番右に示させていただいておりますのが、昨年度のデータで比較して、平成20年度引上 げ分を控除した残りの乖離額です。以上のような状況になっております。  続いて、前回御意見をいただきました資料をお出ししておりますので簡単に御説明します。 資料No.3は、勝委員から御要望があった資料ですが、ランクごとに地域別最低賃金額の未満 率、影響率の推移を見たものです。平成20年度の所が新たな数字として入ったわけですが、 未満率はAランクが0.6%、Bランクが1.3%、Cランクが1.6%、Dランクが1.8%。影響率 はAランクが1.9%、Bランクが2.8%、Cランクが3.2%、Dランクが3.7%。合計して未満 率1.2%、影響率2.7%という状況です。  次に資料No.4は、前回高橋委員から御要望があった資料で、昨年、一昨年もお出ししてい るものと同様の資料です。一番新しい平成20年の賃金構造基本統計調査の結果を基にして、 各都道府県の賃金の分布を見たもので、一般・短時間労働者の合計と、それぞれ分けたもの をお付けしております。1頁以降、まず一般労働者、短時間労働者の合計で、ランクAから 順に並べております。改めてこのグラフの見方を補足させていただきますと、1枚目の東京 で御覧いただきますと、横軸が1時間当たりの賃金額で10円刻みです。そこに何人いるか、 もちろん1,500円以上の方もたくさんいらっしゃるわけですが、最低賃金付近ということで、 それ以上のところは割愛させていただいております。また、人数は賃金構造基本統計調査の 復元後の人数で表しております。この調査時点は昨年の6月ですので、昨年の最低賃金の改 定前ということで、改定前の最低賃金額の所で線を引かせていただいております。個別には、 ここでの御紹介は割愛させていただきますが、これからの御議論の中で個別に御参照、御活 用していただければと思います。よろしくお願いします。 ○今野委員長  ありがとうございました。それでは御質問、御意見をお願いいたします。   ○高橋委員  資料No.2に関して補足の資料を次回までに御提出いただきたいと思っております。と申し ますのは今回、2枚目の一覧表を見れば明らかなとおり、昨年の乖離額から相当大幅に乖離 額が上がっているわけです。私が具体的に望みたいのは、乖離額が上昇した場合の要因分解 です。可処分所得比率の低下に伴うものが何円ぐらいの寄与で、それ以外の部分、住宅扶助 の実績値による影響が何円なのかというような形で、都道府県ごとに御提示いただきたいと 思います。  さらに、この12都道府県、沖縄がこの表に入っているから13都道府県なのかもしれませ んが、それ以外の残りの県についても、同じように平成19年度データに基づく乖離額と平 成18年度データに基づく乖離額がどのように変化しているのかということについて、御提 示をいただきたいと思います。  さらにもう1点。可処分所得比率ですが、昨年は0.864だったと思います。今年は0.859 と低下していますが、この0.859になっている具体的な根拠を資料で示していただきたい。 今、標準報酬のブランケットの話をいただきましたが、もう少し具体的に資料で、こういう 形で算定すると0.859になるという資料を是非お出しいただきたいと思います。以上です。 ○吉本勤労者生活課長  よろしければ準備をして次回にお出しするようにさせていただきたいと思いますが、確 認させてください。  1点目は、その13都道府県における生活保護との乖離額拡大の要因について、可処分所 得比率の低下とそれ以外についての要因を分けた額をお出しするということでしょうか。 ○高橋委員  はい。   ○吉本勤労者生活課長  2点目につきましては、その残りの県。   ○高橋委員  乖離が無い県についても、住宅扶助の実績値の変動によって、どの程度乖離幅が変動し ているのか。要するに乖離は無いのだけれど、その金額自体がどう変動しているのかを見た いということです。   ○吉本勤労者生活課長  同様に変動幅を分解するということですね。   ○高橋委員  はい。 ○吉本勤労者生活課長  わかりました。今イメージで申し上げますと、可処分所得比率の低下による影響が4円か ら5円程度乖離を広げる効果が出ております。ですので、都道府県ごとに乖離の増加の度合 が違うわけですが、そのうちの4円から5円は可処分所得比率の低下で、残りの部分が住宅 扶助の実績値の変動であると。住宅扶助の実績値は先ほど申し上げましたように、ほとんど の所で上がっているのですが、埼玉県では減少している、といったところがおおよその状況 です。また数字はお示ししたいと思います。   ○今野委員長  今おっしゃられた前半の方ですが、全都道府県でなくてもいいのですか。   ○高橋委員  全都道府県でお願いしたいと思います。 ○今野委員長  全都道府県ですね。エクセルでやれば後は自動でしょうから。 ○吉本勤労者生活課長  可処分所得比率の方も、もう少し具体的な計算根拠をお示しするということでよろしい でしょうか。 ○高橋委員  はい。 ○今野委員長  ほかにいかがですか。 ○石黒委員  資料No.3で今回またお示しいただいた未満率と影響率の推移の資料出所が「最低賃金に関 する基礎調査」なのですが、その調査の概要というか、母数とかそういったところを教えて いただければと思います。 ○今野委員長  事務局でどなたか資料を持っていますか。では調べ終わったら教えてもらいましょう。 ほかにありますか。 ○池田委員  賃金改定状況調査の第4表、今年は産業計でマイナスが出ています。これは非常に大きな 数字だと思うのですが、年度ごとの推移を示した資料はどこかにあるのでしたか。 ○今野委員長  もらった資料には入っていませんでしたか。 ○吉本勤労者生活課長  お出ししていないようですので次回お示しします。 ○今野委員長  では用意してもらいましょう。 ○池田委員  もう1点、資料No.4の賃金分布ですが、これは去年の分布ですね。昨年度の生活保護との 関係でこのグラフがどういうように動いたかというのが全然分からないです。昨年度の引上 げ後、全体的なこの構成がどういうように変わったかが分からない。 ○今野委員長  これが最新データのようです。これは去年の6月の賃金構造基本統計調査ですね。もう1 年お待ちください。先ほどの最低賃金に関する基礎調査の件は分かりましたか。 ○吉本勤労者生活課長  調査対象事業所数が、かなり大きくなっておりまして5〜6万事業所、また、調査対象産 業における規模は、一般的には100人未満の事業所です。ただし、卸売業,小売業、宿泊業, 飲食サービス業、医療,福祉、その他のサービス業については30人未満といった違いがあり ます。 ○勝委員  いろいろ資料の追加ということで、仕事が増えてしまっているようですが、第4表につい てお伺いしたいと思います。これは男女別、ランク別で賃金上昇率が算出されているわけで すが、調査票には一般労働者とパートタイム労働者の区分があると思うので、データの中で そういった数字が出るのかどうかというのをお伺いしたいのですが。 ○吉本勤労者生活課長  特別に集計をすれば、もちろん区分が明記されているのでできるのですが、そういった 集計でお出しすることは例年しておりませんので、それをお出しするとすれば、目安制度の あり方に関する全員協議会の場なりで御議論いただくということになります。 ○勝委員  分かりました。というのは、最低賃金の水準で一番影響を受けるのはパートタイム労働 者の部分なので。女性と男性で分かれてしまうと、そこの部分は見えにくいかなと思ったの で。ただ、従来出していないということで出さないということですね。 ○吉本勤労者生活課長  御推測のとおり、もちろん女性の方が相当程度パートタイム労働者は多く、そこの部分 の改定率が高いといった傾向は申し上げられると思います。 ○今野委員長  今のは、是非とも資料として欲しいということですか。   ○勝委員  いや、無理は言いませんので。ただ、あった方がもう少し見やすいというか、正規労働 者と非正規労働者の賃金上昇率の違いが分かるのではないかなと思って申し上げたので。目 安制度のあり方に関する全員協議会の方で議論するということですので、それは特には。 ○今野委員長  ほかにありますか。 ○池田委員  資料No.3の未満率と影響率の表ですが、例えばDランクが平成20年度は影響率が3.7に なっていますよね。これは、最低賃金を守ってない所が異常に増えてきているという見方で いいのですか。   ○吉本勤労者生活課長  そうではありません。未満率というのは、最低賃金額を改定する前に、最低賃金額を下 回っている労働者の割合を言っておりまして、影響率は、最低賃金額を改定した後にそれを 下回ることになる労働者の割合ということなので、最低賃金を引き上げたとすると、その後 に影響を受ける人たちの割合ということです。ですから、法違反の状況が既にそこに現れて いるということではありません。 ○池田委員  未満率が増えることがいけないということですか。ということは、そんなに増えていな いということですか。 ○吉本勤労者生活課長  そうですね。未満率はそれほど増えてないです。そういった違反の状況を御覧いただけ るのは、前回お示ししました最低賃金の履行確保を主眼とする監督指導結果になります。そ れによりますと、最近の大幅な改定によって特に違反率が上昇しているといったことは見受 けられないと考えております。 ○池田委員  生活保護との関係で大幅に引上げたところの未満率が、特に上がっているとかそういう データは来年にならないとないということですか。 ○今野委員長  未満率を県別に出せということですね、今のお話は。先ほどと同じで来年の今頃分かる ということになりますね。 ○高橋委員  先ほど池田委員御指摘の資料No.3の未満率に関する議論がありましたが、未満率はすべて 違反しているというようなことではないですよね。最低賃金法第7条の減額の特例がありま すので、減額特例をされている方を含む数字だという理解でよろしいですね。 ○今野委員長  そういうことです。ほかにありますでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは次にまいりたいと思います。前回の目安に関する小委員会でお願いしましたが、 本年度の目安について労使双方の基本的な考え方を表明していただきたいと思います。まず 労働者側からお願いできますか。 ○團野委員  私の方から大きく分けて2点について見解を申し上げたいと思います。まずは本年度の地 域別最低賃金の目安の審議に当たっては、昨年施行されました改正最低賃金法の趣旨である セーフティーネット強化の観点、並びに成長力底上げ戦略推進円卓会議における合意を踏ま えながら、制度の実効性を高め、十分に機能するような目安を決定すべきであると考えてい ます。このような観点から、本年度の審議においては、生活保護水準を上回ることはもとよ り、賃金の底上げにつながって生活できる最低賃金を確立するための目安を示すことが必要 である、こういう観点に立って、以下2点にわたって具体的な考え方を申し上げたいと思い ます。  まず、最低賃金の役割です。現状、前回も使用者側の方から取り巻く状況について言われ ましたが、日本の経済は企業の在庫調整も進み、景気悪化に歯止めが掛かりつつあると言わ れております。しかし、雇用や消費関連の指標は悪化を続けており、予断を許さない状況と なっていると認識しています。しかし、2002年以降の景気拡大局面においても、その成長 成果は労働者に対して十分に配分されないまま現在に至っている、このように認識しており ます。企業会計に比べますと、個人の家計収入は疲弊したままとなっているというのが労働 者側の認識であります。さらに急激な景気の悪化によって、多くの勤労者が生活の先行きに 不安を抱えている。そして消費の低迷が企業の売上げの減少、経済の縮小という悪循環へと つながることも懸念されている。今後、日本経済が本格的な回復へ向かうためには、勤労者 生活の安心・安定を確保して個人消費の落込みに歯止めをかける必要があると考えておりま す。厳しい経済状況にある今だからこそ、最低賃金の引上げによって賃金のセーフティーネ ットを強化しなければいけないと考えます。これが1つ目の役割、考え方です。  2つ目。賃金格差が拡大して、低賃金労働者が増大する中での役割について申し上げたい と思います。非正規労働者の割合ですが、雇用労働者の約3分の1を越えるまで拡大してい ます。かつて、この非正規労働者は家計補助的な働き方が主流でしたが、現在では非正規雇 用労働者のうち、男性の77.2%、女性の26.7%が自分の収入を主たる収入として生活して いる状況です。一方で、年収200万以下という労働者が1,000万人を越えるところまで増加 しているわけです。低賃金労働者が増大しているのが現状です。  このような勤労者の所得格差が拡大して、格差が解消されるどころかますます拡大、そし て固定化の度合いを強めているというように認識しています。これまで成長を遂げてきた日 本、そうした日本において、貧困率がアメリカに次いで高水準になっているということは、 生活そのものに困難を極める人たちが増大してきているのだということであります。  こうした現状からして、持続的に安心して暮らせる社会の構築が急務である。社会的な職 業能力開発や就職支援などと共に、ナショナルミニマムとして生活できる賃金水準を保障す ることが必要不可欠であると考えています。  大きく分けて最後の1点ですが、今回の目安決定に当たって申し上げたいと思います。現 在の日本の最低賃金の現状についてです。この現状を見ますと、一般労働者の賃金水準に占 める最低賃金の割合は、38%台であります。諸外国と比較しても低い水準に留まっていると いうことです。  一方、2008年度の全労働者ベースで見た最低賃金の影響率は、2008年度に最低賃金を16 円引き上げたわけですが、その引上げを行ってもなお1.8%に過ぎないということでありま す。先ほどの最低賃金に関する基礎調査の影響率は、100人未満の事業所で働く労働者の場 合で2.7%ということですから、全労働者ベースに直すと1.8%に過ぎない。諸外国の影響 率と比較しても、存在感が乏しいと言わざるを得ない。最低賃金の水準は一般労働者の賃金 実態から見て依然として低い。賃金の底上げにつながる実効性の高い最低賃金を確立してい くことが急務だと労働者側としては認識しているところです。  こうした状況を踏まえれば、今年度の目安審議においては、最低賃金法改正の趣旨である、 雇用形態の多様化の進展、そして低賃金労働者の増大などの環境変化に対応した賃金のセー フティーネットとしての機能強化を実現するために、賃金の底上げの歩みを止めることなく、 その水準の着実な改善を行うことが肝要であると考えております。  具体的には、最低賃金の水準は高卒の初任給なり、一般労働者の平均賃金の50%程度、 または連合が試算をしておりますリビングウェイジ、最低生活費からいたしますと、時給 900円を越える水準にまで引き上げるべきだというように考えております。この水準に向け て中期的に引き上げるために、本年についても生活保護との乖離解消はもとより、賃金の底 上げにつながる、生活できる最低賃金の確立に向けてその目的に合致した水準の引上げを図 る。これが必要不可欠と考えております。  以上2点にわたって、私の方から申し上げました。 ○萩原委員  それでは今の意見に補足をさせていただきたいと思います。  まずこの目安制度ですが、この目安制度の目的は地域別最低賃金の全国的整合性を図るこ とを目的としていると認識しています。整合性を図る上では、やはり全国的な最低賃金の底 上げによって図られるべきだと考えております。ですので、今回も論議になっておりますが、 生活保護との乖離の解消がある地域、あるいはそれがない地域におきましても、全国的な整 合性を図るような観点から、全体的な底上げを図る必要があると考えております。 ○田村委員  前回、委員長の方から生活保護との整合性について意見を述べるようにということでご ざいましたので、意見を申し上げたいと思います。昨年、改正最低賃金法が動き出しました。 それを受けて、昨年の目安に関する小委員会報告の中で、法律上、生活保護との整合性が明 確にされた点を受けて、最低賃金は生活保護を下回らない水準となるよう配慮するという趣 旨と解することができると小委員会報告の中で述べられております。その意味で、昨年の目 安審議においても、一定の整理がされたというように我々は思っていますので、最低賃金と 生活保護との乖離の解消を進めていくというように認識をしています。  労働者側としては、昨年度、公益委員見解として示された答申に基づいて清々と着実に解 消していくことが必要だと、強く求めていきたいと思っております。 ○石黒委員  しつこいですが、第26回中央最低賃金審議会の答申の中で、2つのことが確認されてい ると思います。1つは、公益委員見解としては、残された乖離額は原則として2年以内に解 消すること、著しい例をみないほど大幅になるケースの場合は3年程度、地域の経済や雇用 に著しい影響を及ぼすおそれがあるケースについては5年程度で解消するということが適 当だということ。もう1点は、今後の最低賃金と生活保護の具体的な比較については、その 時点における最新のデータ、今回は平成19年ということですが、最新のデータに基づいて 行うことが適当だということが示されたということです。健康で文化的な最低限度の生活を 営むことを保障している憲法第25条に基づいて改正された最低賃金法の趣旨に鑑みれば、 労働者側としてはできるだけ速やかに解消していくべきだと思っておりますので、原則2 年という中で、残された年数において、努力して解消していくことが不可欠だと思っており ます。 ○今野委員長  ほかによろしいですか。それでは使用者側お願いできますか。 ○高橋委員  それでは、私の方からまず基本的な考え方を述べまして、他の委員の方々にそれぞれ補 足意見を述べていただきたいと思います。  初めに、現在の日本経済の状況について申し上げたいと思います。御承知のとおり、昨年 秋のリーマンショックに端を発します世界同時不況の影響によりまして、日本経済は100 年に一度と言われる大変厳しい状況にあるわけです。この点は、前回の目安に関する小委員 会で提示された各統計資料を見ても明らかなことであります。日本経済の全体の状況、とり わけ地方経済の厳しさについては、ここにおられる委員の間で見解の相違はないと考えてお ります。最近は、在庫調整の一巡でございますとか、中国向けなど輸出の一部の持ち直しと、 あるいは政府による景気政策の効果などによりまして、景気に底打ち感が見られるという指 摘もあることは存じております。しかし、それは単に最悪期を脱しているかどうかという話 でございまして、経済活動の水準自体は非常に低い状態に留まっているということだと思い ます。今後の日本経済を見通しましても、世界経済、とりわけアメリカ経済の停滞と、欧州 経済の低迷はしばらく続くというように見られますし、円高の影響もありますので、輸出関 連はなかなか力強い回復が見込みにくい状況になっています。  他方、国内に目を転じてみましても、企業収益の悪化によりまして設備投資が大きく落ち 込んでいますし、雇用・失業情勢の悪化から個人消費や住宅投資も低迷しております。当面 景気のリード役は不在でございます。  その結果、地方経済の回復の見通しも全く立っておりません。日本経済の不況は、長期化 の様相を呈していると申し上げられると思います。  加えて、最近はデフレが急速に進んでおりまして、販売価格の下落が進行しておりますし、 今後は今行われている経済対策の効果が剥落した際に、その反動減を心配する声も強くある わけです。主なシンクタンクの経済見通しを見ましても、軒並み日本経済は大幅なマイナス 成長を見込んでいるという状況にあるわけでございます。  このように、過去に経験をしたことのないほどの厳しい経済情勢を受けまして、企業の支 払能力の源泉でございます企業業績もかつてないほどの深刻な状況に陥っていることは周 知の事実でございます。本年の3月期決算に続きまして、来年の3月期決算についても、赤 字を見込むところが少なくないという大変厳しい状況になっているわけです。  これに関連いたしまして、企業の倒産件数も急激に増加しております。民間調査機関の調 査を見ましても、今年の上半期1〜6月期は、6年ぶりに8,000件の大台を越えるというこ とで、今後も更に倒産件数が高まることが見込まれています。とりわけ最低賃金の影響を大 きく受ける中小企業の倒産件数は前年度比で8%以上の増となっており、倒産件数全体の 99%を占めるという状況になっております。まさに、中小企業は生残りを懸けた危機的な状 況が続いていると言っても過言ではないと思います。  雇用・失業情勢も御承知のとおり日々深刻の度合いが増しているわけでございまして、5 月の完全失業率は御承知のとおり5.2%と5年半ぶりに5%台になっているわけですが、特 に注目すべきなのは、今年の1月からわずか4カ月で1.1%も急速に失業率が悪化している ということです。有効求人倍率も過去最悪の0.44倍まで下落しておりますし、下落傾向に まだ歯止めがかかっておりません。これまでのパターンを見ましても、求人倍率が底打ちを してから3カ月か半年程度経ってから失業率もピークアウト、ボトムアウトすることになり ますので、まだまだ完全失業率の悪化の懸念が強いわけです。  こうした中で、企業は雇用維持に最大限の努力を払っているわけでございまして、雇用調 整助成金に関わる休業状況の実施計画届の受理状況を見ましても、御承知のとおり、例えば 2009年4月時点で対象事業所は6万事業所を超え、対象者数も250万人以上に上っていると いう状況です。しかしながら、いつまでも雇用調整助成金で雇用を維持できるのかというの は、いろいろな御意見があろうかと思います。こうした企業努力には限界があるわけです。 例えば、日銀の6月の短観を見ましても、雇用人員判断のDIは雇用過剰が高まっておりま す。特に中小企業においての雇用過剰感が非常に高くなっているということに注目すべきだ と思います。  以上のような現状認識に基づきまして、今年度の目安における使用者側としての基本的な 見解を述べたいと思います。  先ほど来、再三申し上げましたとおり、日本経済はまさに未曾有の危機の中にあります。 中には二番底の到来を懸念する声すらあるような状況になっています。こうした中で、先ほ ども言いましたが、企業はぎりぎりの状態の中で雇用維持の努力をしているわけです。今、 最低賃金の引上げありきという前提で審議を行うということは、結果として雇用の不安定化 につながりかねないということを懸念するわけです。やはり現在求められることは、何より 企業の存続とそれに伴う雇用の維持や安定に向けて、政労使が一丸となって取り組むことで あると思います。したがいまして、今年度の目安審議に当たりましては、最低賃金の引上げ が経営に大きな影響を及ぼすことになります中小零細企業の置かれている状況を十分に注 視すべきだと思います。そのためには、中小零細企業の現状を端的に表している賃金改定状 況調査結果に基づいた審議を行うべきであると思います。  今回の調査結果では、すべてのランクで賃金の伸び率がマイナスとなっておりますし、 そのマイナス幅自体も、Aランク、あるいは調査計で過去最悪を更新したということは、ま さに異例の事態だと申し上げられると思います。これが現在の地方の中小零細企業が置かれ ている厳しい実態を表しているわけですから、この調査結果を十分に踏まえて慎重に議論を 行うべきだと思います。  次に、生活保護との乖離解消について申し上げたいと思います。乖離解消に向けた方針に つきましては、昨年初めて示されたところですが、その方針については2点申し上げたいと 思います。  1点目は、昨年度乖離解消ルールの設定を行ったときに、今回のような未曾有の経済危機 が発生するということは、全くの想定外であったということであります。  また、生活保護の基準年度の変更によりまして、乖離解消金額自体がわずか1年で大きく 上昇してしまったということもルール設定時には全く想定外のことです。昨年度、乖離解消 のために大変な努力をして大幅な引上げを行ったにもかかわらず、目指すべき乖離解消額が さらに引き上がっていくという事態は、大変理解に苦しむところです。もちろん、改正最低 賃金法の趣旨を踏まえれば乖離解消努力の必要性については理解しています。  しかしながら今回のように、二重の意味で全くのルール設定時には想定外の事象が発生し た以上は、昨年度定めた乖離解消の方向についての見直しが避けられません。昨年度の公益 委員見解によりますと、乖離額につきましては、「最低賃金法改正法の趣旨に鑑みれば、速 やかに解消することが望ましいが、一方で、最低賃金額は労働者の生計費なかんずく生活保 護のみによって定められるものではなく、労働者の賃金や通常の事業の賃金支払能力も含め て総合的に勘案して決定されるべきものであることから、各地域の経済情勢、雇用状況等の 実態を踏まえてこれを解消すべきである。」との考え方が示されているところです。この基 本的な考え方を踏まえまして、未曾有の危機における乖離解消のやり方を、どうあるべきか について議論し、必要な見直しを行うべきだと考えています。特に、基準年度の変更に伴い まして乖離解消額が大幅に変動してしまったという問題につきましては、算定根拠が果たし て適切なのかという疑問を抱きます。そもそも大幅に変動するような乖離額を目指して解消 するというのが良いのかどうかという議論もあろうかと思いますので、これにつきましては、 今後本質的な対応も必要ではないかと考えます。私からは以上です。 ○池田委員  ただ今高橋委員の方から使用者側の意見を申し上げたとおりですが、我が国経済は依然 として極めて厳しい状況が続いております。中小企業、特に小規模事業者は、事業の継続さ え危うい状況に陥っていることは皆様も御存じだと思います。最低賃金の引上げは、本来企 業の生産性が向上し、安定的な収益が得られて初めて可能となるものでありまして、究めて 厳しい経営環境を踏まえれば、今は最低賃金を引き上げる状況にないと考えております。中 小企業基盤整備機構が商工会議所や中小企業団体中央会などの協力で実施しております中 小企業景況調査におきましても、先月発表した4月〜6月期の結果は、中小企業の業況は下 げ止まりの動きが見られるものの依然として厳しい状況とされております。好転の回答から 悪化の回答を差し引いたDI値は、全産業でマイナス43.4ポイントに達しておりまして、特 に北海道、大阪、兵庫ではマイナス幅が高くなっております。いずれも生活保護との乖離が 生じている地域でありまして、特に大阪と兵庫は、全都道府県で最悪のマイナス53.1ポイ ントを記録しております。最低賃金を引き上げれば、中小企業の経営に甚大な悪影響が生じ ることが予想できます。この調査結果は、経営者として私の実感とも一致するのであります が、中小企業の実態が強く反映されていると思います。最低賃金法では、地域における労働 者の生計費、賃金、通常の事業の賃金支払能力の3つの要素により最低賃金を決めることに なっております。日本商工会議所といたしましても、先月、政府などに対し支払能力の観点 から最低賃金を引き上げる状況にないということを申し上げたところであります。  中小企業の厳しい景況感につきましては、東京も例外ではないと思います。昨日発表いた しました東京商工会議所の中小企業の景況感に関する調査、対象は23区内の中小企業、 2,362社、四半期ごとに実施しておりますが、これによりましても、本年4月〜6月期の全 業種の業況DIはマイナス61.3ポイントと以然として業況が悪いとしている企業が非常に 多いわけであります。従業員の過剰感が強まっておりますし、中小企業の民間設備投資は減 少傾向が続いております。また設備の過剰も続いております。今回の調査結果は、東京で事 業を営んでいる自分自身の実感とも一致していまして、東京ですらこうした厳しい状況でご ざいます。他の地域はなおさらだと思います。  もう1点。生活保護との関係ですが、これまで経験したことのないような大変厳しい経済 状況の中で経営者が最も優先すべきことは、1つは雇用の確保だと思います。生活保護との 乖離解消について、昨年度の公益委員見解で2年から5年かけて解消するとされましたが、 その中で乖離額については「速やかに解消することが望ましいが、一方で、最低賃金額は労 働者の生計費なかんずく生活保護のみによって定められるものではなく、労働者の賃金や通 常の事業の賃金支払能力も含めて総合的に勘案して決定されるべきものであることから、各 地域の経済情勢、雇用状況等の実態を踏まえてこれを解消すべきである」との趣旨が盛り込 まれました。その際、「具体的な解消期間及び解消額については、地域の経済、企業、雇用 動向も踏まえ、地方最低賃金審議会がその自主性を発揮することを期待する。」こともうた われています。このような趣旨と現在のいわば非常事態とも言うべき経済状況を考え合わす と、生活保護との乖離解消を一時的に凍結することも含め、それぞれの地域の状況に応じて その取扱いを見直すべきであると思います。以上です。 ○小林委員  私からも幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。先ほど高橋委員から日本経 済の状況、企業の支払能力の状況等について御説明したとおりですが、中小企業にとってみ ますと、昨年来からの不況は本当に大変厳しい状況で、地域に密着した中小企業にとって 由々しき事態であるというところです。その上で目安の関係でいきますと、先ほど事務局か ら説明がありました賃金改定状況調査結果によりますと、最近経験したことのないかなり厳 しい数字が出ておりますけれども、これが中小企業の賃金の改定の現状であるという認識を 持つ必要があると考えております。毎年の最低賃金目安を設定するに当たっては、重要なデ ータとなっているわけですが、軒並みマイナスの状況です。過去の不況時である平成14年、 平成16年がマイナスのときがありましたが、そのとき以上であるというところに目安を出 すに当たって御理解いただけるのかなと思っております。  生活保護の水準との乖離について一言申し上げさせていただきます。今月に入ってから、 昨年度乖離があった都道府県の中小企業団体中央会の地方最低賃金審議会委員及び他の中 小企業組合の地方最低賃金審議会の委員に電話で連絡をしたところでございます。すべての 委員からの回答というのは、かなり地域の経済が落ち込んでいる実態の報告があります。ま た、中小企業の経営環境が本当にひどい状況の連絡と共に、昨年度の地方最低賃金審議会の 決定時に比べて比較にならない状況にあり、そのまま乖離解消するのはかなり難しいという 意見をいただいています。ですから、先ほど池田委員の発言にもありましたが、乖離解消と いうのはかなり難しいという同様の意見が出ております。  このデータで乖離額が増大したことについて一言。これはまだ地域の方ではこのデータを 見ていないですから、このデータを見ればかなり驚くのかなということと、目標値としてい た平成18年度のデータから増えているということが、目標設定がこれだけ変動していいの かと。目標が変わるということになると、解決の道筋が見えてこないと言うところが出てき ます。平成18年度のデータがある種の目標値となって、何年かで解消しましょうというよ うな形で、今年はいくらの最低賃金の引上げとなっていたものが、また後追いのように増え ていく。乖離が発生しているのが過去のデータに基づいているわけですから、経済環境が右 肩上がりで追っかけていくときに、ここで急にガタンと下がってしまったわけです。そのと きに平成18年度、平成19度年のデータでは乖離額が広がりました。来年度も多分、平成 20年度のデータで、もっと経済は落ち込んだ場合でもまた乖離額が広がってしまうかもし れないわけです。この目標値の設定がこれで良かったのか、もう一度精査する必要が早急に あると思います。両方とも並行して若干の違いで動いていくぐらいの経済発展なり、経済の 落ち込みが無い状況であればいいのですが、その辺をもう一度見直すべきではないかと感じ ています。  失業率の問題について一言申し上げます。失業率の増大という状況は今後も多分拡大して いくのでしょうけれども、やはり企業経営者に聞いてみますと、雇用調整助成金で今まで維 持してきている部分にそろそろ限界があるのではないか。雇用調整助成金をやりながら、な かなか企業を維持できない、我慢の限界に来ているということでリストラ等を行った企業が あるというように聞いております。ですから、そういう意味での雇用維持というのを中小企 業でやっているわけですが、その観点で最低賃金を引き上げることによって、雇用、失業率 等に与える影響があってはならないと感じておりますので、審議に当たっては、失業率等に ついても十分御配慮いただきたいというお願いです。以上です。 ○今野委員長  ありがとうございました。ほかにございますか。 ○横山委員  1点だけ。審議の進め方ということでお願いなのですが、取り巻く経済環境については労 使、当然公益委員も含めてほとんど見解に相違はないだろうと思います。大変厳しい状況で あると理解している。これからどちらに向くのかというのもよく分からないという辺りも一 致していると思います。そういう中で今年も論議を進めるに当たって、昨年、一昨年とかな り特殊な要因が入った形で最低賃金額を論議し、ある程度のところに収束させたという経緯 があるわけですが、その経緯を十分踏まえた中で、その経緯を検証しつつ論議を進めるべき ではないか。例えば、成長力底上げ戦略推進円卓会議での論議を踏まえてこうやりましょう という話だったわけです。その中で、本来の趣旨はとりわけ日本の製造業を支えているのは 圧倒的多数を占める中小企業ではないかと。中小企業の成長力を高めることがひいては日本 の経済の活性化につながっていくと。こういう大きなものがあったはずですが、結局底上げ されたのは最低賃金だけだったという感じがしないでもないのです。最低賃金が引き上がっ たことによってどういう効果が出てきたのか。出てきたというのは、成長力底上げ戦略推進 円卓会議の中で言われたようなことが、どの程度実現できたのか。そういうことも踏まえな がら、十分論議をする必要がある。これまでの論議経過を検証しながら、今年も論議はじっ くりやってみたい、このように思っております。よろしくお願いします。 ○今野委員長  ありがとうございました。それでは労使から御意見を伺いましたので、御意見、御質問 があればお願いします。何かございませんか。公益委員からもないですか。よろしいでしょ うか。それでは、今労使から御意見をいただきましたが、主張には大変大きな開きがありま す。本年度の目安をまとめるためには、例年そうなのですが、歩み寄りが必要だろうと思い ます。次回までに労使それぞれには、改めて御検討いただくようお願いしたいと思います。 今日はこれで終わりにしようかと思うのですが、よろしいでしょうか。吉本勤労者生活課長 から何かございますか。 ○吉本勤労者生活課長  お手元に地方自治体、団体等から出されております意見、要望を配付させていただいて おりますので御覧いただければと思います。 ○今野委員長  それでは今日は終了したいと思います。議事録の署名ですが、團野委員、高橋委員にお 願いいたします。次回の第3回目安に関する小委員会ですが、7月21日火曜日の14時から 茜荘で開催いたします。よろしくお願いいたします。それでは今日はこれで終わりにいたし ます。ありがとうございました。                  【本件お問い合わせ先】                  厚生労働省労働基準局勤労者生活部                   勤労者生活課最低賃金係 電話:03−5253−1111(内線5532)