09/07/08 第38回労働政策審議会障害者雇用分科会議事録 第38回 労働政策審議会 障害者雇用分科会議事録 1.日時    平成21年7月8日(水)10:00〜12:00 2.場所   厚生労働省 省議室(9階) 3.出席者  ○ 委員 (公益代表) 今野委員、菊池委員、佐藤委員   (労働者代表) 中島委員、野村委員、花井委員、矢鳴委員   (使用者代表) 飯ヶ谷委員、大島委員、斉藤委員、新澤委員、高橋(弘)委員   (障害者代表) 川崎委員、鈴木委員、副島委員  ○ 事務局  岡崎高齢・障害者雇用対策部長、吉永障害者雇用対策課長、藤井地域就労支援室長、 渡辺障害者雇用対策課調査官、佐藤障害者雇用対策課主任障害者雇用専門官、  川口障害者対策課長補佐 4.議題 (1)障害者権利条約をめぐる状況等 (2)労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整理) 5.資料  1−1 障害者権利条約をめぐる状況等 1−2 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会につ いて 2−1 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整理) 2−2 研究会における主な意見 2−3 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整理)(案)へ の意見((財)全日本ろうあ連盟) 2−4 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整理)に対す る意見((社福)全国社会福祉協議会・全国社会就労センター協議会)  参考資料   労働政策審議会障害者雇用分科会委員等名簿(平成21年4月27日現在) 6.議事録経過  ○障害者雇用対策課長  ただ今より、第38回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。委員の 皆様方におかれましてはお忙しい中ご参集いただきまして、誠にありがとうございま す。本日は、委員改選後初めての分科会となりますので、議事に入ります前に、分科 会委員の交替につきましてご報告を行わせていただきたいと思います。お手元の参考 資料として労働政策審議会障害者雇用分科会委員等名簿を配布しております。名簿順 に新しく委員にご就任された方々につきましてご紹介させていただきます。  まず、労働者代表の委員でございますが、全日本自治団体労働組合健康福祉局長の 中島圭子委員でいらっしゃいます。次に、UIゼンセン同盟労働条件局長の矢鳴浩一 委員でいらっしゃいます。続きまして、障害者代表の委員でございますが、特定非営 利活動法人全国精神保健福祉会連合会理事長の川崎洋子委員でいらっしゃいます。よ ろしくお願い申しあげます。  なお、本日は、岩村委員、平木委員、松矢委員、高橋睦子委員及び松井委員がご欠 席でいらっしゃいます。  次に、分科会委員改選後初めての分科会となりますので、分科会長を選任すること となりますが、労働政策審議会令第6条第6項の規定に基づき、分科会長は本分科会 に属する公益を代表する労働政策審議会本審議会委員のうちから本分科会に属する労 働政策審議会本審議会委員が選挙することとなります。本分科会につきましては、今 野委員と岩村委員のお二人が労働政策審議会本審議会の委員であり、かつお二人とも 公益を代表する委員でいらっしゃいます。お二人に予めご相談いただきました結果、 今野委員が引き続き分科会長にご就任されることとされております。それでは、これ から、今野分科会長に進行をお願いいたします。分科会長、よろしくお願い申し上げ ます。  ○今野会長  議事進行を担当させていただきますので、よろしくお願いします。それでは、まず 分科会長代理の選任からさせていただければと思います。労働政策審議会令の第6条 第8項の規定に基づきますと、分科会長代理は公益を代表する委員または臨時委員の 中から分科会長が指名するということになっております。そこで、私から指名させて いただきたいのですが、本日ご欠席ですが、岩村委員にお願いをしたいというふうに 思っております。いかがでしょうか。  (異議なし) よろしいでしょうか。それでは岩村委員にお願いをしたいと思います。  では、議事に入ります。本日の議題は2つです。1つは、「障害者権利条約をめぐる 状況等」について、もう1つは、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に ついて(中間整理)」となっております。では、まず議題1から入りたいと思います。 事務局から説明をしていただいて議論をしたいと思います。よろしくお願いします。  ○事務局  事務局でございます。それでは、障害者権利条約をめぐる状況等についてご説明い たします。  資料1−1は、障害者権利条約をめぐる状況等、それから、資料1−2は、昨年4 月から開催されております労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方 に関する研究会の開催要綱となっております。  まず、資料1−1。1の条約採択の経緯でございますが、2001年12月の「障害者の 権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約」決議が国連総会で コンセンサス採択されたことを受け、2002年に障害者権利条約アドホック委員会第1 回会合が開催され、2006年8月の第8回アドホック委員会で基本合意されました。そ して、2006年12月に、第61回国連総会本会議におい障害者権利条約が採択されるに 至っております。我が国としましては、2007年9月に閣議決定の上、本条約に署名を 行ったところでございますが、今後の政府の対応として、条約の締結、批准に向けて、 国内法制の整備等を進める必要がございます。  2の条約の概要でございます。資料1−1の3ページ、4ページに、条約の仮訳を 抜粋したものをお付けしてございますので、適宜参照いただければと思います。障害 者権利条約につきましては、障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・ 総合的な国際条約でございますが、[1]一般的義務として、障害を理由とするいかなる 差別もなしに、すべての障害者のあらゆる人権・基本的自由を完全に実現することを 確保・促進すべきこと、[2]身体の自由、拷問禁止等の“自由権的権利”及び教育、労 働等の“社会権的権利”について、締約国が取るべき措置、[3]条約の実施を促進・保 護・監視するための枠組みを維持、強化、指定又は設置すること等を定めております。  また、雇用分野については、公共・民間部門での雇用促進等のほか、[1]条約第27条 の第1項(a)に定められておりますが、あらゆる形態に係る全ての事項、これには募集、 採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全・健康的な作業条件を含みますが、 これらに関する差別の禁止、[2]同項bの公正・良好な労働条件、安全・健康的な作業条 件及び苦情に対する救済についての権利保護、[3]同項iの職場において合理的配慮が提 供されることの確保等のための適当な措置をとることにより障害者の権利の実現を保 障・促進することとされております。  この合理的配慮につきましては、条約第2条におきまして、障害者が他の者と平等 にすべての人権及び基本的自由を共有し、又は行使することを確保するための必要か つ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、 均衡を失した又は過度の負担を課さないものとされており、これまで我が国になかっ た概念となっております。  本条約上、雇用分野を含めた経済的、社会的及び文化的権利に関しては、締結国は、 その完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段を最大限に用 いること等により措置をとるとされております。このため、必ずしも条約で規定され たとおりの措置を即時に講ずることまで義務付けているものではございませんが、国 内法制の整備の可否又は是非について整理した上で、現時点で対応可能な事項につい ては速やかに法的整備を図る必要があるところでございます。  これにつきましては、平成19年12月の審議会の意見書におきまして、障害者雇用促 進法制における措置について、特に合理的配慮の提供というこれまで我が国にはない 概念であり、十分な議論が必要であることから、労使、障害者団体等を含めて、考え 方の整理を早急に開始し、必要な環境整備などを図っていくことが適当とされており ます。  こういった状況を踏まえまして、昨年4月から厚生労働省高齢・障害者雇用対策部 長の研究会として、労使、障害者団体等の関係者からなる「労働・雇用分野における 障害者権利条約の対応の在り方に関する研究会」を開催し、障害者権利条約の締結に 向けた環境整備を図るため、職場における合理的配慮その他の対応の在り方について 検討を行ってきたところでございます。本研究会要綱につきましては、資料1−2を ご参照いただければと思いますが、研究会委員の構成といたしましては、今野委員に 座長を務めていただき、公益、労使、障害者団体からお願いをしているところでござ います。  本研究会の実施状況といたしましては、これまで11回開催をしておりまして、海外 制度に関するヒアリング、また研究会委員以外の障害者団体からもヒアリングを実施 しながら、各論点に関する検討を行っておりまして、今般中間整理をとりまとめてい ただいたところでございます。以上でございます。  ○今野会長  ありがとうございました。それでは、今の説明にご質問、ご意見がありましたらど うぞ。  ○大島委員  どういうふうに議論を進めていくかという質問なのですが、研究会の中間整理は大 体ですよね。それと並行して議論を進めていくのかどうかということですが、その場 合、分科会の議論と研究会の議論の関係はどういうふうになっていくかということを ちょっとご質問したいと思います。  ○障害者雇用対策課長  研究会での議論につきましては、この後にご説明させていただきたいと考えており ますが、研究会での議論の中で様々な障害者団体等からのヒアリングを受けて、障害 者雇用促進法制においても権利条約を踏まえた制度改正が必要ではないかというとこ ろが、中間整理ではありますけれども、1つ結論としていただいているのではないか というふうに思っております。具体的な法的整備をどういう形で行うのかということ につきましては、研究会というよりは、むしろ審議会の責務だろうというふうに考え ております。そういう意味で、審議会の中でどういうフレームワークが適当かという ことを、もちろんその是非も含めてということにはなりますけれども、ご議論いただ きたいというふうに考えております。  一方、これからご説明する研究会の中間整理の中にも何カ所か出てまいりますけれ ども、フレームワークはフレームワークとして、例えば、今ほど若干触れました合理 的配慮という考え方がどういうものか、あるいは過度な負担というものがどういうも のなのか、予め明らかにしておくということが、フレームワークの問題とは別に必要 ではないか、具体的にどういったものが該当するのか、しないのかということについ て、それについて責務を負う事業主の方、あるいはそれについて合理的配慮を請求す る側の障害者の方からみても必要ではないかというような議論がありました。そうい う中で、具体的な合理的配慮の在り方につきましては、引き続き研究会の方でご議論 いただくことになるのではないかというふうに考えているところであります。いずれ にしても、フレームワークの議論につきまして、今回の審議会でご議論いただければ と事務局としては考えているところでございます。以上でございます。  ○今野会長  よろしいですか。他にございますか。  ○高橋弘行委員  他の国々の批准の状況等、海外動向について教えていただければと思います。  ○今野会長  どうぞ。  ○障害者雇用対策課長  ちょっと直近かどうか確認しておりませんけれども、今月6月の中頃の段階で58カ 国が批准しております。その中で、先進国としては、例えばイギリスでありますとか、 あるいはドイツ、スウェーデン、オーストラリア、ニュージーランド、スペインとい った国々が批准しておるという状況でございます。アジアでみましたら、中国であり ますとか、韓国でありますとか、そういう国々が批准しておるという状況になってお ります。国連加盟国全体から見ると、まだ半数という状況ではありませんけれども、 それなりに批准が進んできている状況にあると考えておるところです。  ○今野会長  他にいかがですか。よろしいですか。それでは、次の議題に入りたいと思います。 先ほども申しましたが、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応についての 中間整理ということです。これは私が座長を務めたのですが、今日の説明はとりあえ ず事務局から行っていただいて、それで議論をしたいと思います。それでは、よろし くお願いします。  ○事務局  それでは事務局より、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について、 ご説明いたします。資料2−1が研究会の中間整理、資料2−2、これは研究会にお ける主な意見でございますが、内容的には中間整理に反映しておりますので、参考と してお付けしております。また、資料2−3、2−4につきましては、研究会でのヒ アリング実施団体のうち、全日本ろうあ連盟、全国社会就労センター協議会からいた だいた中間整理へのご意見を報告させていただくものでございます。それでは、資料 2−1をご覧いただければと思います。  まず、この中間整理につきましては、障害を理由とする差別の禁止、それから合理 的配慮等に関するこれまでの研究会での検討の結果として、概ね意見が集約しつつあ る事項と、まだ意見が分かれている事項がございますが、後者については併記する形 で、現段階における検討状況の整理を行ったものでございます。  次に、2ページの「第1 基本的枠組み」として、差別禁止のうち合理的配慮の提 供を我が国の法制度に位置付けるに当たっての基本的な枠組みと対象範囲に関するご 意見が整理されております。  「1 枠組みの全体像」でございますが、意見が集約されつつあるものといたしま しては、障害を理由とする差別の禁止や職場における合理的配慮の提供について、実 効性を担保するための仕組みを含めて国内法制に位置付けることが必要、合理的配慮 を実際に確保していくためには、関係者がコンセンサスを得ながら障害者の社会参加 を促すために必要な配慮として捉えることが必要、また、障害者の社会参加における 合理的配慮の重要性やどのような配慮が求められるのか等についての理解を深め、こ れを定着させていくことが重要、さらに、実効性を担保するための仕組みとして、差 別があったか否か、合理的配慮が適切に提供されたか否かを、例えば行政委員会によ る命令のような準司法的手続で判定的に行うよりも、どのような配慮が適当で、差別 が生じていた場合にはどのような措置を講ずることが適当かという観点から、第3者 を間に入れてあっせんや調停などにより調整的に解決を図ることが適当、とのご意見 が大勢でございました。  また、差別禁止等を法律上位置づける場合、労働・雇用分野における差別を禁止す るための法律が必要とのご意見、それから、分野横断的に差別禁止法を制定すべきと のご意見がそれぞれございました。さらに、差別を禁止するための法律には、障害を 理由とした差別は無効である等の効果を持たせるべきとのご意見もいただいておりま す。  差別禁止と障害者雇用率制度の関係につきましては、差別禁止の枠組みとは矛盾し ない積極的差別是正措置に当たるとの意見が大勢でございました。また、採用段階で 差別禁止がなされるのであれば、将来的には雇用率制度を廃止することも考えられる のではないかというご意見と、採用段階での差別禁止が確保されても、障害者雇用促 進の観点からは雇用率制度が必要とのご意見がそれぞれございました。  3ページの「2 差別禁止等の枠組みの対象範囲」でございますが、まず障害者の 範囲として、雇用率制度の対象となる障害者に限定せず、広範な障害者を対象とすべ きとの意見が大勢でございました。また、雇用率制度は積極的差別是正措置として対 象を限定するとしても、差別禁止については条約上全ての障害者を対象としており、 対象を限定とすることは適当ではない、広範な障害者を対象とする場合、対象に該当 するか否か全て手帳等による判断を行うことは困難であることから、対象者の確定方 法について検討すべき、条約上の障害者の定義には、機能障害だけでなく社会的環境 上のバリア等「様々な障壁との相互作用」によって問題が生じている者も含まれてお り、過去に障害があったことにより差別的取扱いを受けている者や、家族の中に障害 者がいる者についても、合理的配慮の対象になるのではないか、等のご意見がござい ました。それから、事業主の範囲につきましては、フランス、ドイツと同様に全ての 事業主を対象にすべきとのご意見がありました。  雇用の範囲につきましては、条約上はあらゆる形態の雇用が差別禁止の対象とされ ており、一般就労と福祉的就労の垣根をなくしていくことが方向性として考えられる のではないかとのご意見、これに対し、福祉的就労にも最低賃金の支払い等の労働関 係法令を適用するとした場合、現実問題として事業が困難になり、福祉的就労の場が 失われるのではないかとのご意見をそれぞれいただいております。  4ページの「第2 障害を理由とする差別の禁止」でございます。「1 差別の定義」 につきましては、条約上「障害を理由とする差別」には直接的な差別的取扱いのほか、 合理的配慮の否定がこれに含まれることが明記されておりますが、「間接差別」や「労 働能力に基づく差異」が差別に該当するのか、また合理的配慮の否定について、法制 上どのように位置付けるか、という論点がございます。間接差別、これは外見上は中 立的でも、職務とは関連がない等合理性がない条件を設定し、実質的に障害者を差別 するものとしておりますが、これについては条約上明文の規定はないものの、差別の 定義に鑑みて差別に該当するのではないか、また、間接差別の判断基準等については、 実際にはかなり難しい問題があるのではないか、とのご意見がございました。また、「労 働能力に基づく差異」、これは労働能力を評価した結果として、賃金や人事等に差が生 ずるということでございますが、これについては、合理的配慮が提供された上で、労 働能力が適切に評価された結果として生じた差であれば、差別に該当しないのではな いか、とのご意見がございました。さらに、合理的配慮の否定の法制上の位置付けと いたしまして、合理的配慮の否定自体を、実際に差が生じていなくても、直接・間接 差別と合わせて第3の類型の差別という形にするのか。また、合理的配慮が提供され ていないことに起因して、実際に差が生じている場合に、直接差別に組み込んで考え るか、についても検討すべきとの意見がございました。  「2 差別が禁止される事項」でございますが、条約上は雇用に係る全ての事項を 対象としておりますけれども、実際に問題になる主な事項として、[1]募集・採用、[2] 賃金その他の労働条件、[3]昇進、配置(人事)その他の処遇、[4]教育訓練、[5]雇用の 継続・終了(解雇・雇止め等)が挙げられておりました。このうち、採用については、 事業主に広範な裁量があることや他の応募者がいることなどから、差別の立証や差別 があった場合の対応が難しいとの問題はあるが、条約上は差別が禁止される事項とし て明記されていることから、立証可能なものまで除外することは適当ではなく、差別 禁止の対象から除外すべきではないのではないか、また、裁判所は採用の事由を重視 しており、企業も採用の制限に関しては抵抗があると考えられ、例えば差別があった 場合の採用命令等を設けることなどを考えると難しい問題ではないか、とのご意見が ございました。  5ページの「第3 職場における合理的配慮」でございます。「1 合理的配慮の内 容」の基本的考え方といたしまして、先ほど申し上げましたように、障害者の社会参 加を促すことができるようにするために必要な配慮、すなわち社会参加を促進するた めのアプローチ、位置付けとして捉える必要があるとの意見が大勢でございました。 また、合理的配慮は個別の労働者との関係において必要とされるものであり、個々の 労働者が必要とする配慮について主体的に要求することが必要、必要とする合理的配 慮について具体的に説明・要求できない障害者については、第三者が説明してくれる ような仕組みが必要ではないか、とのご意見がございました。さらに、合理的配慮は、 個別の労働者の障害や職場の状況に応じて、使用者側と障害者側の話し合いにより適 切な対応が図られるもので、本来的には企業が十分な理解の上で自主的に解決される べきとの意見が大勢でございました。これについて、採用の際に企業と本人との間で 必要な合理的配慮の内容について一定の合意をする、または、企業内に使用者、労働 者、障害者からなる配慮推進会議など定期的に意見交換をする場を設けてはどうか、 等のご意見がございました。  合理的配慮の法制度への位置付けに関しましては、合理的配慮の内容は個別の労働 者の障害や職場の状況によって多様であるため、法律においては合理的配慮の概念を 定め、その具体的内容は指針で定めてはどうかとの意見が大勢でございました。また、 刑罰法規である労働基準法等でこれを位置付けるような場合、合理的配慮の範囲を厳 格・明確に定める必要があり、かえってその範囲が縮減されるのではないか、それか ら、制裁を背景に合理的配慮を進めることは適切かどうか、とのご意見もございまし た。  次に、合理的配慮の基本的内容といたしましては、障害の種類ごとに重点は異なる ものの、大まかには[1]通訳や介助者等の人的支援、[2]定期的通院や休暇、休憩等の医 療面での配慮、[3]施設や設備面での配慮が必要であるとの意見が大勢でございました。 また、障害の種類ごとに特に必要かつ重要な配慮については、次のようなご意見をい ただいております。視覚障害者、聴覚障害者及び盲ろう者につきましては、点字、拡 大文字、補聴システム等の機器や通訳者、援助者等による情報保障・コミュニケーシ ョン支援、内部障害者、難病のある方につきましては、定期的な通院や休憩・休暇・ 疾患管理への配慮、フレックスタイム等柔軟な勤務態勢、知的障害者につきましては、 身近に気軽に相談でき、また、苦情を訴えられるような窓口の配置、それから、精神 障害者につきましては、対人関係・コミュニケーションが苦手であること、疲れやす いことといった特性を踏まえ、グループ就労や短時間労働等による仕事の確保や職場 環境の整備、日常的な相談ができるような窓口の整備、発達障害者につきましては、 本人に代わって必要な配慮を代弁できるような身近な支援サポーターの配置・支援、 中途障害者につきましては、勤め続けられるための配置(ポスト・職務)の見直しと いうものがそれぞれ挙げられております。  その他につきましては、合理的配慮の提供を求めたことを理由とした不利益な取扱 いの禁止、それから、採用試験における合理的配慮としてコミュニケーション支援が 必要、また、長時間の試験は避ける等能力を正しく判定できるような環境を整備すべ き、とのご意見がありました。  また、通勤時の移動支援や身体介助でございますが、合理的配慮というより、むし ろ福祉的サービスとして行うべきとのご意見、一方、労災では通勤も対象となってお り職務と連動するものであることを踏まえ、今後は労働政策として企業に義務づけた り、助成措置を設けたりすべき、とのご意見もございました。  さらに、相談窓口に関するご意見といたしましては、障害者が気軽に相談でき、苦 情を訴えられる窓口として、現行の障害者職業生活相談員の機能の見直しや相談員が 選任されない中小企業における窓口整備が必要ではないか、それから、職場内のみな らず生活面の支援も重要であり、障害者就業・生活支援センター等による支援の充実 が必要、またナチュラルサポーターを支援していくことが必要というものでございま した。  7ページの過度な負担の基準に関しましては、企業規模、業種、従業員数、環境の 特性、地域の文化・慣習等を参考にして判断すべきであり、事業規模もある程度考慮 せざるを得ないのではないか、また、納付金制度の特別費用の額を参考とすることも 考えられる、それから過度の負担についても具体的な指針を定めるべき、といったご 意見がございました。また、公的助成との関係に関するご意見としては、現行の納付 金制度に基づく助成金は合理的配慮として行うこととなるものが対象となっており、 助成金の見直しにより合理的配慮を実効あるものにできる、フランスのように助成金 を活用して合理的配慮に必要な経費をカバーするには、我が国の現行の納付金制度や 法定雇用率では足りないのではないか、雇用率制度の対象でない事業主も含めた全事 業主を対象とする場合に、合理的配慮に対する財政支援をどのような形で行うかが問 題となる、現行の助成金等には期限があるが、合理的配慮の前提として期限のない制 度を確立すべきではないか、というものでございました。  8ページの「第4 権利保護(紛争解決手続)の在り方」の「1 企業内における 紛争解決手続」についてのご意見でございますが、先ほどありましたように、合理的 配慮は個別の労働者の障害や職場の状況に応じて企業の十分な理解の上で使用者側と 障害者側の話し合いにより実質的に解決されるべきものであること、また、合理的配 慮の提供については、障害者が不十分と考える場合、直ちに外部の紛争解決に委ねる のではなく、企業内で当事者による問題解決を促進する枠組みが必要、とのご意見が 大勢でございました。「2 外部機関等による紛争解決手続」につきましては、訴訟に よらなければ解決しない仕組みというのは適切ではなく、簡易迅速に救済や是正が図 られる仕組みが必要、それから、先ほどもありましたように、提訴による手続きより は、あっせんや調停など調整的に解決を図ることが適当ではないか、との意見が大勢 でございました。また、国・行政から独立した機関、第3者機関として紛争を処理す る機関を新たに設ける必要があるとのご意見、一方、既にある労働審判や紛争調整委 員会等について、権限の強化や体制の強化をした上で活用した方が良いのではないか、 とのご意見もございました。さらに、労働法の専門家や障害者も入って調整機能を果 たすような形がよいのではないかとのご意見、また、紛争解決機関とは別に、差別事 例やその救済状況等条約の実施状況を把握し、又は周知等を行うモニタリング機関に ついても検討すべき、とのご意見もいただいております。  9ページの「第5 その他」として、障害者雇用率制度につきましては、積極的差 別是正措置として存続させるべきであるとの意見が大勢でございました。その他、雇 用率制度の在り方に関するご意見としましては、雇用率制度の障害の定義については、 医学的・機能的観点からの障害者等級によっており、職業能力に応じた障害者等級を 創設する必要があるのではないか、法定雇用率について、視覚障害、聴覚障害、肢体 不自由、内部障害、知的障害及び精神障害それぞれの枠を定めるべきではないか、障 害種別で雇用率を設定することは難しいのではないか、法定雇用率を引き上げるべき、 精神障害者を雇用義務の対象とすべき、就労継続支援事業等に優先発注した場合に実 雇用率に算入すべき、雇用率達成を公契約の要件とすべき、障害者雇用納付金の額に ついて、最低賃金とリンクさせることが考えられないか、というようなご意見がござ いました。また、重度障害者に対するダブルカウントについては差別を感じる障害当 事者の立場に立って廃止の検討をすべきではないかとのご意見、一方、重度障害者の 雇用促進のためにいろいろと知恵を絞ってやってきており、廃止は難しい問題ではな いかとのご意見がございました。さらに、雇用率がポジティブアクションだとしても、 運用上かえって一般社員への門戸が狭まったり、一般社員との職場の分離が定着する ことのないようにすべきとのご意見もいただいております。  それでは、資料2−3をご覧ください。全日本ろうあ連盟からの中間整理へのご意 見でございます。概要を申し上げますと、障害者雇用率制度の位置付けについて、身 体障害者の雇用率をそれぞれの障害別に実雇用率が分かるようにすることが必要、ま た、合理的配慮につきましては、聴覚障害者の場合は、必要な時に手話通訳等が保障 されることを合理的配慮としているが、その前提として、手話通訳の保障だけでなく、 職場での聴覚障害の正しい理解や日頃の協力関係の構築といった職場環境づくりが大 切であること、就労の際、合理的配慮を確保するための使用者側と障害者側の話し合 いにおいても、手話、要約筆記等によるコミュニケーション保障が必要であることに 留意すべき、聴覚障害者のコミュニケーション保障のためには、職場内での合理的配 慮の他に、公共職業安定所の手話協力員の配置ですとか、大阪府の聴覚障害者ライフ ワーク支援事業等のように制度的な整備が不可欠というご意見をいただいております。   続いて、資料2−4の全国社会就労センター協議会からの中間整理へのご意見で ございます。これにつきましては、一般就労のみでなく、福祉的就労・保護雇用の両 方を重視することが必要であり、この両輪で就労支援全体の底上げを図るという視点 が重要、また、現行の福祉的就労・保護雇用の場における利用者負担の発生や労働者 性の問題等の根本的問題の解決を目指して、障害者の就労支援に関する労働施策と福 祉施策のあるべき方向について検討を進めていくことが必要、といったご意見をいた だいているところでございます。事務局からは以上でございます。  ○今野会長  ありがとうございました。それでは、ご意見をお願いいたします。  ○副島委員  何点か確認を含めて意見を言わせてください。まず1つは、3ページの対象範囲の ところです。障害者の範囲のところで、障害者は広範な障害者を対象とすべきという ことで、全ての障害者が対象になることはいいと思うのですけれども、どのようにし てその対象者を確定するのか。そのセットの仕方、線引き、基準といいましょうか、 特に自立支援関係でもまだ十分そこまではいっていないと思うので、そのところをど ういうようにされるのかということが1つです。  それから、雇用の範囲のところで、「あらゆる雇用」に関する差別禁止を定めている ということですけれども、一般就労と福祉的就労の違いをどう考えていくのか。特に、 福祉的就労の中には、就労継続支援事業B型と就労継続支援事業A型がありまして、 就労継続B型の場合には利用契約だけがあるわけですが、就労継続A型の場合には、 雇用契約と利用契約がある。このように、雇用という形で位置付けられているものと、 ある意味では訓練的なものとして位置づけられているものとの整理をどうするのかと いうことが2点目です。  それから、4ページの最後に、「差別が禁止される事項」のところで、賃金その他の 労働条件とかあります。実は、障害がある方々には、年金をもらっている方と、年金 をもらっていない方がいます。年金を全部の方がもらっているのであれば、ある程度 同じような見方で、その内容が吟味されると思うのだけれども、年金をもらっていな い人に対してと、もらっている人に対する見方をどういうふうにするのかということ も問題ではないかと思います。  それから、7ページ目に、通勤時の移動支援、身体介助のことがあります。これは、 知的障害といえども、やはり通勤についての補助もしくは介助というのは大変大事な のですが、これを福祉的サービスとして行うという方法と、それから、企業に義務付 けるということが書かれていますけれども、企業に義務付けた場合には、企業は負担 になって、なかなか就労に結びつかないということにならないかと思うのです。その 時に、やはり、もし企業に義務付けるのであれば、そこに助成金がセットされないと、 なかなか先にはいかないのではないかと思います。  それから、相談窓口もあります。相談窓口については、知的障害がある人は気軽に 相談でき、苦情が気楽に言えるような窓口が絶対に必要です。時には代弁も必要です。 そのようなところで、やはりこれも企業の中に位置付ける必要があると思うのですけ れども、企業に独自に位置付けるということは大変難しいと思うので、やはり助成金 を絡めながらこれを位置付ける必要があるのではないかと思います。  また、今のこととラップしますけれども、8ページ目の公的助成との関係で、確か に就労というものを企業の中に位置付けるためには、企業だけに責任や義務を転嫁す るというだけでは、進みません。やはり、法的な助成制度でカバーしていただかなか ったら、なかなか前に進まないと思いますので、その点はちょっと疑問だと思ってい ます。以上です。  ○今野会長  それでは、課長からお答えしますか。どうぞ。  ○障害者雇用対策課長  かなり広範なご指摘を頂戴いたしました。まず、障害者の範囲についてですが、基 本的に現行の障害者雇用促進法の枠組みとして、雇用率の対象となる者について、法 定雇用率の算定に当たっては身体障害者と知的障害者、実雇用率の算定に当たっては 精神障害者も入れるという枠組みになっています。一方で、職業リハビリテーション の対象の方につきましては、三障害に限らず、幅広く、雇用に関して労働能力を損傷 しているような方について、現状でも幅広くサービスを提供するという枠組みになっ ております。  そういう意味で、基本的に現行の法体系の中でも幅広い障害者の方に一定の、そこ は障害によってでこぼこがある部分はありますけれども、一番広範なサービスにつき ましては提供できていると考えております。基本的な枠組みとしては、そういうもの を参考にしながら、具体的に狭間になるようなものがないかどうかというあたりにつ いては、検討していく必要があるだろうと思っております。  2点目の、雇用の範囲についてでありますが、副島委員からご紹介していただいた とおりの状況でございます。就労継続支援事業のA型とB型があり、A型については、 雇用契約があるという状況であります。そして、B型については、法制度上も訓練と いう整理の中で運用がされているという状況にあります。そういう中で、今回、障害 者雇用促進法あるいはこの権利条約の雇用・労働への射程距離をどこまでどんなふう に考えるか、慎重に議論が必要だと考えていますが、私どもとして、一番単純化して いえば、雇用契約がある世界は少なくともこの条約の対象にもなるし、私どもが考え ております制度改正の中でも対象になるだろうというふうに思っております。それを 超えてその対象にしていくかということにつきましては、慎重な議論が必要ではない かというふうに考えているところでございます。  また、差別に関して、所得をどう考えていくのかというような議論がございます。 障害者の方でも、年金をもらっている方、もらっていない方がいらっしゃいます。障 害年金をもらっている方であれば、場合によっては、最低賃金と合わせて月20万円ぐ らいの収入があって、何とか生活していただいている。一方で、年金の支給の考え方 からして、働ける方は障害がそれほど重くはないという判定から年金が出ないという ような整理もあると思います。この辺りは、どういう形で、全体としての所得保障を 考えていくのかということは重要だろうというふうに思っております。ただ、その議 論とは別にして、障害者に対する就労・雇用というものを考えた場合に、最低賃金の 減額のような枠組みがありますけれども、基本的には、最低賃金以上の賃金を得て働 いていただく、そういう環境を作っていくことが重要ではないかと考えております。  次に、移動支援についてのご質問がございました。障害者が、特に障害の重い方が 働くに当たって、通勤というのは非常に大きな課題なのだろうと思っておりますし、 それについての支援をどういう形で考えていくのかというのは非常に重要だろうと思 っております。現行は、企業は全ての会社ではありませんけれども、従業員、労働者 の方に通勤手当を支給しているような会社はそれなりに多いというふうに思っており ます。ただ、その範囲というのは、会社によってでこぼこがあります。一方、私ども の助成制度の中では、例えば企業が障害者の通勤のために車を買うような場合、ある いは、通勤のためのバスを購入するような場合については、助成制度というものがご ざいます。そういうような既存の制度がある中で、最終的に企業の負担をどこまで考 えていくのか。あるいは、公的な負担をどう考えていくのか。一方で、これまた市町 村によって取扱いが違いますけれども、地域生活支援の中での移動サービスというも のもあります。そういうものとの組み合わせで、どういう形で移動支援を実現してい くのか。どういうものが適当かということにつきまして、議論が必要だろうと考えて おります。  あと、相談窓口についてのご指摘がございました。ご指摘のように、特に知的障害 者の方は、例えば、いろいろ合理的配慮についてこういうものが欲しいといっても、 なかなか提供が難しいというようなものもございますし、そもそも合理的配慮がない からというところのご理解がちょっと難しいというふうに思いますので、相談がきち っとできる体制をつくっていくことが必要だろうと思っております。現行の障害者雇 用促進法の枠組みの中でも、障害者職業生活相談員というような制度があって、5人 以上障害者を雇用している人のところには置いていただくようになっておりまして、 担当の方を決めていただくというようなことをやっております。それがうまく機能し ているのかどうかというのはきちんと見ていく必要がありますけれども、こういうよ うな既存の施策というものをどういう形で発展的に活用していくのかということと、 あるいは、そういう制度のない中小企業において、そういう枠組みをつくっていくの かということ。そういうようなものを軸に、公的な助成の在り方も含めて考えていく 必要があると思っております。  最後に、全般的な考えとして、主として企業に義務を求めれば求めるほど、障害者 の雇用というものが厳しくなるのではないかというご指摘でございます。全般的に、 障害者権利条約の中で、雇用・労働ということで考えますと、障害者と企業との関係 で、どういう形で調整するのかということだろうと思っております。そういう意味で、 現行の助成制度でも、一番典型的には機械設備について、障害者の方のためにアジャ ストする、あるいは、新たな機械器具を購入するような場合について、最高450万円を 出すような助成制度がございます。この金額をどのように評価するのかということは、 議論としてはあるのかなと思っておりますけれども、諸外国の例を見ても、その合理 的配慮の考え方が、相当高い水準ではないような国もあるようでございます。このよ うな助成制度をどういう形で再構築するのかという議論は必要だと思っておりますけ れども、その上で、企業に過重な負担のないような形での障害者雇用が進むような形 での合理的配慮、あるいは、差別禁止の法制というものが必要ではないかと思ってお ります。  また、企業に対する一般的な支援につきましては、多数障害者を雇用していただい ているような企業につきましては、障害者雇用納付金制度に基づく調整金を月に1人 につき27,000円支払っているというようなものもございます。このあたりの経費とい うものは、障害者を雇用するための、普通の方よりは経費がかかるということで、経 済的な負担の調整という観点から導入されている制度でありますけれども、合理的配 慮というものが今後新たに出てくるというものではなくて、現在の企業の中でも、あ る程度雇用管理の一環としていろんな配慮をしていただいています。そういう観点か らすれば、そういう調整金の経費というものは、まさにそういうものとして使われて いるものだろうと思っております。そういう意味で、今後、企業にご負担がかかるこ とはないというつもりはございませんけれども、現状でも、その企業が障害者の雇用 に当たって、様々に雇用管理をしていただき、それについて、費用を一定程度支出し ているという状況のものをきちんと再構築していくというものが、今回の条約を考え ていく上で非常に重要な議論ではないかなと考えているところでございます。以上で ございます。  ○今野会長  よろしいですか。他にございますか。どうぞ。  ○鈴木委員  合理的配慮という部分と、それから、いわゆる雇用率の、特に重度という部分の相 関といいましょうか、いわゆる合理的配慮が非常に必要な障害のある人が、いわゆる 雇用率の制度の中でいうダブルカウントの重度という見方となるかどうかということ は、今後だと思うのですけれども、簡単にいうと、障害者手帳の1級だからといって、 合理的配慮が非常に必要かという議論が出てくると思います。例えば、端的な例を挙 げると、車椅子の人がいらっしゃって、1級だと思います。でも、場合によっては、 勤めるところによっては、今はほとんどエレベータや段差がなくて、配慮すべきとこ ろがあまりない場合もあるかもしれませんが、逆に、視覚障害でも、弱視で3級程度 の人の場合は、歩くことには不自由はないかも知れないけれども、いわゆる事務など をやった場合、音声ソフトだとか拡大をする必要があるというような部分での配慮が 出てきたりということがあろうかと思います。今後、合理的配慮をみていく中で、具 体的にいろいろ事例を出して、それに伴って、その合理的配慮の配慮率というか、そ れが高い人がいわゆる雇用率でいうところの重度というところとリンクさせていかな いと、雇用率では重度の人でも、実際に合理的配慮がないという人たちも出てくると いう可能性があるので、その辺のところは今後見ていかなければいけないかなという のが1点です。  それから2つ目ですが、合理的配慮をする時に、元々そういう条件で採用しましょ う、試験をしましょうという部分のところと、今まで勤めていた人が障害になって、 その人に対しての配慮をしていくというところでは、ちょっとニュアンスが違ってく るのかなというような部分を考えていかないといけないし、それは企業にとってどれ ぐらいの補助をしていくべきものかということを考えないといけないかなと思います。  それから、3点目として、移動支援のところの通勤です。先ほどおっしゃっていた ように、いろんな意味での会社に対する助成というところと、それから、福祉として の通勤です。訓練すれば、中途で視覚障害になってしまった人がちゃんと通勤できる かというところを考えると、難しい部分も出てくるので、その辺のところが、どこま での、いわゆる福祉と労働の部分での折り合いをつけることが必要かなというふうに 思います。  それと、どうしてもこれは企業の中での雇用ということで捉えられがちなのですが、 私どもの仲間ですと、自営をしている人たち、そういったところへの、いわゆる自営 の部分でのいろいろな仕事をしていく上での設備投資だとか、そういった部分での合 理的配慮をする上での補助金なり、そういった資金的な支援というようなのも今後は 考える必要があるのではないかなというふうに思うところです。以上です。  ○今野会長  ありがとうございました。いろいろ問題提起をされました。研究会でも同じような 論点は出ていて、研究会というのはそこで結論を出すというか、それに対する考え方 はこういうのがあるねというので整理をしたというのが研究会ですけど、一応何かあ りましたらどうぞ。重要な問題提起はしていただきましたので。  ○障害者雇用対策課長  会長がおっしゃられたように、重要な問題提起があったと思います。1点目に、特 に重度のダブルカウントとの関係も含めて、重度というものと合理的配慮の必要性と いうものをリンクさせていくべきではないかというご指摘でございます。研究会の報 告書の最後のページで触れてある部分がございますが、現行の雇用率制度の障害の定 義については、手帳に拠っている部分が多いという中で、いわゆる医学モデルをベー スにしているという状況がございます。一方、ご指摘になられたような形で医学モデ ル上は重度の方であっても、労働能力上、今となってはあまり重くないと判断される ような方も出てきている。一方、医学モデルとしては重くはないけれども、労働能力 としてはやっぱり重い方もいらっしゃる。この辺りをどう考えていくか、職業能力に 向いた形での障害等級について考えていくべきではないかという議論が、研究会の中 でもございました。また、このことについては、従来からご指摘いただいているとこ ろであり、私どもとしての基本的な考え方については、そのとおりだろうと思ってお ります。基礎的な研究については、続けているところでございますが、今回の議論と リンケージさせていくものかどうかということとは別にしまして、そういうものがう まくできるかどうか。ある意味、医学モデルは明確に基準が示せるというメリットは ありますが、一方、職業能力に応じた障害等級は、いわゆる社会モデル的な議論もあ りますけれども、その方の置かれている状況によって全く違ってくるので、その評価 は難しい。スケールが作り難いというというようなこともございます。そういう中で、 私どもとして、課題として認識している中ではありますが、ただちに解決するような スケールがなかなか作れていないという状況があるということでございます。  もう1点目が、中途障害者に対する支援をどうするのかということについてのご質 問がございました。ある意味、権利条約の関係で一番の議論というか、その合理的配 慮が提供されるべき対象といいますのは、中途障害者の方ではないかというふうに思 っております。条約の条文の中でも、雇用の継続という言葉が入っております。雇用 の継続について、一定の配慮をしなければ差別になるという考え方が、条約の中では 明確にあるわけであります。そういう意味で、新規の雇用に際して、予め個別の労働 条件あるいは様々な機械器具の配置等々について調整した上で採用されるケースと、 あるいは、企業の中で中途障害を負った方の雇用をどういうふうにしていくのかとい う議論をした場合に、むしろこの辺りについて、条約をうまく活用するような枠組み というのが必要ではないかというふうに思っております。この辺りは、もちろん、現 行は先ほど申しましたような、機械器具等を購入する助成制度というのは、当然中途 の障害者の方にも活用できますし、そういった既存のものも活用しながら、更にそれ を中途障害者の方が使いやすいような形で、条約が中途障害者の方を対象としている ということをきちんと反映できるような形にしていきたいと思っております。  それから、移動支援について、今おっしゃったような形で、どこまでが労働分野の 所管かという議論がございます。今でも、重い障害をお持ちの方が通勤する場合に、 当初、最初の慣れるまでの間に人的な介助者を付けるという助成制度は私どもは持っ ております。ただ、やはりそれは最初の導入のところだけで、慣れてしまえば、その 範囲ではご自分なり、そのルートの中で通勤していただくという枠組みになっており ます。この辺りを、企業が様々な形で、通常の労働者の方の通勤について支援をして いるということと、一方で、その障害者の方について配慮をしていくということにつ いて、先ほど申しましたように、あるいは地域生活支援の中でどういうふうにもって いくのかということについては、考えていくべき問題だろうというふうに思っており ます。  また、最後に自営の関係のご指摘がございました。このあたりは、研究会の中でも 笹川会長から強くご意見を頂戴したところでございます。現行の枠組みの議論は、私 どもが研究会で議論してきた中では、やはり雇用契約、労働契約の中での議論として、 その事業主の方がどういう形で配慮すべきかということを中心として議論をしてまい りました。残念ながら、自営の方ですと、通常の場合、まさに障害者の方が事業主に なられるという状況の中で、基本的な今の枠組みからすると、なかなか自営の働き方 をされている方について議論が及ぶというのは難しい面があるのだろうと思っており ます。ただ、もとより権利条約自体は、様々な働き方を考えているわけでありますの で、そのような支援の在り方については、政府をあげて考えていくべき議論もあるだ ろうと思っております。以上でございます。  ○今野会長  はい、どうぞ。川崎委員。  ○川崎委員  精神障害者の家族の者です。実は相談についてなんですけれども、やはり障害者に とりまして、相談できる場があるということは大変必要なことだと思っております。 しかし、障害者の雇用をみる場合、職場といいますか、仕事の場だけでなく、やはり 生活面での相談のできるところ、精神障害者の場合について言ってみますと、例えば、 仕事をして家庭に帰って来ても、ご飯の支度から、お風呂に入るところから服薬管理 まで、家族がしている、そういうようなところで雇用が成り立っているということも 言えるのではないかと思っております。実は、今回、自立支援法の中でも地域におけ る相談支援事業の充実、専門職の育成ということが強く謳われておりまして、そうい う地域での相談支援事業との連携といいますか、企業内の相談窓口と地域のそういう 相談支援事業、例えば、先ほど出ておりましたけれども、障害者就業・生活支援セン ターとか、そういう相談の場はいくつか点では存在しているのですけれども、そうい うところを何か連携して、一人の障害者の就労を支えていくというようなことができ ないものかなとちょっと思っておりまして、話をさせていただきました。以上です。  ○今野会長  何かコメントがございますか。何かあればどうぞ。  ○障害者雇用対策課長  ご指摘のように、相談事業をどういう形でするのかということ、あと、障害者の雇 用を進めるに当たって、企業の中のことについては企業が雇用管理という観点で、い ろんな形でサポートしていただくということはもちろんではありますが、企業がその 生活の面まで背負い込むという形になると、逆に企業の負担が高くなってしまって、 障害者の雇用が進まなくなってしまうということもあるんだろうと思っております。 そういう意味で、ご指摘にありました障害者就業・生活支援センターについて、今、 体制整備を図っておるところでございます。一応、三障害をまとめて障害者就業・生 活支援センターが対応するというような形になっておりますけれども、なかなか現行 では全て対応できているところは、むしろ数は少ないのかなというふうに思っており ます。また、全国で今265箇所まで整備する形になっておりますけれども、まだ全国的 な面でも随分遅れているという状況でございます。質と量の両方を整備する必要があ るという認識の中でやっておりますけれども、そういう意味で、ご指摘になられたよ うな形のネットワークづくりが、就職に際しては、個々の障害者に対してチームで支 援するという枠組みは動き出したかなというふうに思っておりますが、それをどうい う形で雇用の継続に繋げていくのかという辺りについて、その就業・生活支援センタ ーを中心としながら、そういう動きをつくっていくということは、1つの課題だろう と思っております。なにぶん、まだ、就業・生活支援センターの方が対応できていな い部分もございますけれども、私どもとしては、就業・生活支援センターを中核とし ながら、福祉のサービスとの連携をして、その生活をサポートして、生活面の問題を 解消しながら雇用に繋げていくということが必要だろうと思っております。  ○今野会長  どうぞ。  ○佐藤委員  5ページと6ページのところの合理的配慮なのですが、まず、ここに書かれている ように、個別的に障害がある方の障害の程度や、職場に応じて個別に議論するような ので、そういうことと、合理的配慮についてコンセンサスを得ながら進めることがす ごく大事だなと思いました。その上で教えていただきたいのは、6ページのところの、 障害の種類とか、仕事をされている職場の状況に応じて、多分、合理的配慮というの は個別に決まるのだと思うのですけれども、この例示を見ると、もう1つ雇用の在り 方といいますか、雇用契約の在り方というのもあるのかどうかです。この中途障害者 については、今まで健常者の方で障害に遭われて、その人について配慮すればどこか で働ける、異動させるというようなことが書かれているのですが、問題はその後なん ですね。ですから、中途障害に遭われた方が障害があっても、その後続けられるよう に、例えば異動して、続けられるような職場に行く、すると、そこには障害をもたれ た方で雇用された方がいらっしゃるとしますね。その職場で、例えば、その仕事がな くなってしまった。そうした時に、仕事の継続なんですけれども、その後、例えば他 に異動すれば仕事ができるというような場合です。この時に、つまり合理的配慮に入 るのかどうかなんです。例えば、中途障害の方、正社員として仕事を定めず、業務を 限定せずに雇用された方ですよね。ですから、当然他の職場に異動して仕事ができる ようにする。さらには、そこでの仕事がなくなっても、当然初めから業務を限定して 雇用しているわけではないですから、さらにまた異動させて、できるだけ配慮しよう というような議論の立て方です。それで、片方は、この仕事でその障害の方は雇われ る。雇用期間はもちろん定めはなしにしてもですね。そうすると、能力があるし、や れるから、その仕事の範囲内で配慮して雇用したという人がいた場合、その仕事がな くなってしまった。そのなくなったというのは合理的な理由でなくなったとした時に、 さらにこの人、後者の方ですね。異動させて仕事を継続できるというのも合理的配慮 に入るのか。そこが議論されたのかどうかなんですけど、ちょっと僕はそこの辺りが 分からなくて。従来もそういうことはあったと思うのですけど、今回特に合理的配慮 といった時に、そういうものも合理的配慮に入るのかどうか。特に、仕事を限定して 雇用していたという場合なんかどうなのか。ちょっと議論があったかどうかだけ教え ていただければと思います。  ○今野会長  多分、議論はなかったと思いますが、どうでしたか。ちょっと出たかも知れないけ れど、それをみんなで議論したという記憶はないですね。  ○障害者雇用対策課長  会長のご指摘のとおり、明確な形でここを論点とした議論というのがなされた記憶 がございませんけれども、1つ議論があったとすれば、障害者の雇用について、障害 者の方は嘱託の身分で働いていらっしゃる方が非常に多いということ、それは、正社 員の画一的な人事労務管理からすると、障害者が行える仕事というのはかなり限られ てしまうけれども、例えば、時間でありますとか、配置でありますとか、仕事の切り 出しでありますとか、そういうことを切り出すに当たって、嘱託という若干イメージ としては、いろいろ議論はありますけれども、個別の雇用管理ができる枠組みという 意味での身分で障害者の雇用は進むというのは、一定程度評価すべきだろうというよ うな議論がございました。  また、もう1つ議論があったのは、過度な負担の議論との兼ね合いになりますが、 裁判例の中で、傷病で休職をして、そのまま退職した場合に、その退職の有効性が争 われたような判例の中で、企業規模でありますとか、配置転換の可能性とか、そうい うものも考慮したような判例があるのではないかというような議論がございました。 これ自体が直ちに合理的配慮とリンクしているかどうかという議論には研究会の中で はなっておりませんけれども、今回の権利条約の中で、差別について雇用の継続なり 配置の議論が入っているということからすると、その辺りも非常に重要なテーマとし て考えていく必要があるだろうと思っています。  ○今野会長  ちょっといい言葉かどうか分かりませんけれども、雇用に対する合理的配慮と、雇 用継続に対する合理的配慮というのは違うので、例えば、ある仕事で雇用する時に、 合理的配慮をして、能力が発揮できるようにしてという時には、その雇用について考 えているんですね。今、佐藤さんが言われたのは、雇用の継続についての合理的配慮 だから、ちょっと概念が違うんですよね。だから、重要な論点だから、どうするかと いうのは議論しなければいけないかなと思います。  ○佐藤委員  結論を出さなくてもいいんですけど、ただ、障害者の方を、中途障害者ではなくて 雇用する場合、多分この業務をちゃんとやっていただけるかなということで、お互い に話し合って雇うという場合が多いと思うのです。他方で、日本の場合は、雇用する 場合に、業務を限定しないで雇用していることがすごく多いと思うのですね。多分、 この辺の関係だと思うのです。特に中途障害の人たちについていうと、業務を限定し ない方が障害を受けて、だけど、ある職場でみると、同じように仕事をされるという。 だから、そこが多分議論を進めていく時、現場では、つまり雇用継続について、合理 的配慮を入れるかどうかは別として、やはりある程度配慮するということの議論が出 てくる人と、そこは、もしかしたらですよ。合理的配慮をしなくていいということが あるかも知れないので、そこはちょっとどうすればいいかは。  ○高齢・障害者雇用対策部長  研究会も昨年4月から1年間やってきて、いろんなヒアリングをしながら進めてき たわけでありますが、どちらかというと、国連権利条約を踏まえてですけれども、も ちろん国として、法的整備をどう出していくかどうか、その場合に、概ねどういう枠 組みかどうかというところは、結構意見が一致した部分もある、そういう報告になっ ています。では、具体的に、個々に合理的配慮をどうするかということについては、 6ページに書いてありますけれども、これは実は、詰めた議論をしてこれがこうだと いうことではなくて、いろんな障害者団体等々から、この障害の種類だとこういうこ とが必要ではないかと言われたようなことを、とりあえず列記したという程度でござ います。今、佐藤先生からあったような話を含めて、では具体的に、もっと詰めて、 本当に法制度化していく場合に、合理的配慮というのは本当にどうするのかという議 論は、多分企業側からしても重要だし、障害者の側からしても非常に重要だろうと思 います。ただ、そこはもう少し、研究会でさらに今度は、大枠のところはある程度整 理しましたので、むしろここのところを審議会での議論と並行して、もう少し詰めて いきたいと思っておりますので、今のご指摘も含めて、もう少し詰めさせていただき たいと思います。  ○今野会長  よろしいでしょうかね。今、部長がおっしゃったとおりです。ただ、雇用継続の合 理的配慮というのは、何となくそれは考えてもこなかったところで、視点を入れてい ただきましたので、それを議論のテーマにしようということになると思います。他に、 どうぞ。  ○大島委員  4点ほどのご意見と、ご質問があるんですけれども、まず第1点目は、今議論にな っております合理的配慮なんですけれども、やっぱりこれは日本に今までなかった概 念ということで、企業側もちょっとこれを理解するのがなかなか難しいもので、理解 できなければ、当然、企業の対応が考えられないので、できるだけ分かりやすく例示 をしていただきたいというふうに思います。この、障害の種類毎にと書いてあるんで すけれども、是非、研究会の方でよろしくお願いしたいと思います。間接差別という 言葉について、これもやっぱり分かりにくいので、同様に、できるだけ分かりやすく 例示をお願いしたいなと思っています。  2点目は、資料の2−2の13ページの下に書いてある過度の負担について、中間整 理において、権利条約第2条で、合理的配慮提供義務を負わされないとされる過度の 負担について、これは判断基準の明確化と事例の蓄積が考えられるというふうに書い てあるのですが、もし現段階で参考になる事例があれば、お教え願いたいと思います。  3年目は、資料が前後して申し訳ないんですけれども、資料の2−1の6ページの 丸の3番目なんですけれども、具体的な内容は指針で定めるとの意見が大勢であった というふうに書いてありますが、この指針というのはどのようなイメージで想定して、 議論をされているのかというのをちょっとお教え願いたいと思います。  4点目は、資料の2−1の3ページの下の方に差別禁止となる事業主の範囲につい てということで、フランス、ドイツと同様、全ての事業主を対象とすべきとの意見が あったというふうにされていますが、この点について、他にも議論がなかったのでし ょうか。下に事例として一応アメリカにおいての事例と書いてありますが、小規模企 業とか零細企業まで含めるのが、本当に現実的なのかどうか、そういうふうな対応が 本当にできるのかどうかというのが、ちょっとやっぱり議論の中で深く掘り下げてい ただきたいなという点がございます。以上でございます。  ○今野会長  合理的配慮と間接差別は分かりにくいので、きちっと説明するようにしてください というのは、本報告の中にはきちっと書く。今回は中間整理ですので、そうさせてい ただくということにして、過度の負担の事例ですが、海外ではこんなことをしている というようなことはありましたっけ。  ○障害者雇用対策課長  アメリカの事例の紹介の関連の中で、過度の負担の上限が5万円程度というような 例があるというようなご紹介があったと記憶しております。  ○今野会長  ということは、あまりいい事例はないという回答ですね。3番目は、具体的なこと は指針で定めるということの、文章の気持ちを説明してくださいということだと思い ますので、コメントをお願いします。  ○障害者雇用対策課長  指針については、法律だと細かく書ききれないので、その具体的な中身を細かくと いうこともあるんですが、基本的には事業主の方がある程度予測可能なような形、あ るいは、障害者の方がどういうものがあるのかということを理解できるような基準、 という観点から、ある程度明確なもので、具体的な参照できるようなものが作れたら いいなと思っておりますけれども、この辺りも研究会の議論を踏まえて、どういう形 で定めるかにつきまして考えていきたいと思っております。  ○今野会長  ついでに最後ですが、事業主の範囲を全ての事業主というふうにということですよ ね。そこはもう少し何か他にはなかったのか。例えば、零細を外すとかですね。そう いう議論はなかったと思いますけど、ですからそうすると、過度の負担の方でそうい う問題は出てくるかもしれないということなので、一応、出発点の基本原則みたいな ところは全事業主ということだろうというのが研究会の合意だと思いますけど。それ でよろしいですか。では、他にどうぞ。  ○高橋弘行委員  これから申し上げることのほとんどはコメントですが、一部質問を途中に挿入させ ていただきますので、質問に対してお答えいただければと思います。まず、何点かご 指摘したいと思いますが、障害を理由とする差別禁止のところで、中間整理において、 条約上、明文の規定がない間接差別の禁止についての言及があるわけでございますけ れども、やはりこの間接差別の禁止については、2006年改正の均等法において我が国 に導入されたわけですが、その際にも、その基準づくりにおいて大変な議論があった わけです。そのことを十分に留意する必要があるのではないかということをいつも思 っておりまして、私の個人的見解ですけれども、障害者雇用において、間接差別を定 義するとすれば、その基準づくりにおいては均等法以上に難しい部分があるのではな いかと思っておりますので、もし間接差別について検討する場合であっても、相当慎 重な検討が求められるのではないかというふうに思っております。  それから、労働能力に基づく差異についての言及が中間整理でもなされております。 合理的な配慮が提供された状態で適正な評価に基づくものであるならば、結果として 賃金等に差が生じたとしても差別に該当しないのではないかという意見が紹介されて いるところであります。これは、仕事、役割、貢献度等に基づいて、適正な評価に基 づいて、結果として合理的な差異が生じるということは健常者の場合でもあることで ございますので、私はこの中間整理に示された意見には全く賛同するところでありま す。  次に、合理的な配慮でございますけれども、基本的な枠組みでも書いてございます し、また、再掲という形で、合理的配慮の内容のところにも、中間整理で書かれてい るところですが、ここはちょっと質問に関わるのですが、障害者の社会参加を促進す るための方法・アプローチとして捉える必要があるとの意見が大勢であったという整 理がされているのですが、この意味がよく理解できないわけでありまして、どういう 趣旨なのかを教えていただきたいということが1点目の質問です。もう1点質問があ りまして、合理的配慮の否定ということに関しましてなんですが、企業側としては配 慮をしたという認識で、そういう判断をして行ったにも拘わらず、結果として一部欠 けた部分があったということが後から分かったというような場合もあるのではないか と思いますが、その場合、果たして差別に該当するものなのかどうかという辺りにつ いて、そういうような議論が研究会であったのか、あるいは、今の中間整理の段階で、 どういうようなお答えがあり得るのか教えていただければということでございます。  それから、ここからは意見なんですが、やはり中間整理においても、合理的配慮の 内容は個別の労働者の障害の程度や職場の状況によって多様であるという多数意見が 紹介されておりますとおり、相当個別性の強い概念であるというふうに言えるのでは ないかと思っております。そこで、そもそも現行法制に合理的な配慮という概念がな いわけでございますし、その基準づくりについては相当慎重な、かつ十分な検討が求 められると思いますし、あまりに過度な規制を課していくというようになれば、結果 として障害者の雇用機会を縮小させることにもなりかねないので、十分配慮をしてい く必要があるのではないかというふうに思っております。この点に関しましては、先 ほどのご議論がありましたけれども、やはり合理的な配慮を行う企業側として、何が 合理的な配慮となるのかということについての予測可能性をいかに高めていくのかと いうことが重要な論点だと思いますので、そのためには、具体的な指針づくりという ものを研究会の方で是非、鋭意ご検討いただけたらよろしいのではないかと思ってお ります。  また、合理的配慮に関連いたしましては、過度の負担は課さないというふうに定義 されていると認識をしております。そこで、ここは質問なんですが、中間整理で、過 度の負担の基準としては、企業規模、業種、従業員数、環境の特性、企業の属してい る地域の文化・慣習等を参考にして判断すべきではないかという意見があったとされ ている部分ですけれども、この地域の文化・慣習というのがどういうものなのかとい うのがよく分からなくて、これについては是非教えていただきたいというふうに思い ます。いずれにしても、何が過度の負担なのかということにつきましては、単純に企 業規模で、大企業だからいいだろうみたいな、そういう議論でもないだろうと思って おりまして、これにつきましても、やはり具体的な判断をする時、相当慎重な検討が 求められるのではないかと思っております。  最後に、これは意見なのですが、通勤時の移動支援につきましては、中間整理では 意見が両論書かれておるようでございますけれども、やはり企業の合理的な配慮とす るには相当無理なのではないかというふうに考えておりまして、やはり福祉的サービ スと位置づけられまして、企業が自主的な取り組みを行う場合には、政府が後押しを するというような形で整理をしていくべきではないかというふうに思います。私から は以上でございます。  ○分科会長  いろいろコメントいただきましたので、それはお聞きしておくということにさせて いただいて、質問が3つほどあったと思いますので、どなたかからお願いします。  ○事務局  ご質問いただいた点についてお答えいたします。まず、1点目につきましては、中 間整理の中の5ページに、合理的配慮の基本的な考え方として、社会参加を促進する ためのアプローチとして位置付けるという、この意味がどういうことであったかとい うご質問でありました。これは、当初研究会でいろいろ議論していく際に、条約上、 合理的配慮の否定というのが差別なんですというような書き方をしておりましたもの ですから、どうしても差別かどうかとか、かなりそういう議論に傾いていった面があ った中で、ある段階で、むしろ合理的配慮が差別とか、そういう捉え方をするのでは なくて、合理的配慮を提供することによって、少しでも障害者の方が働きやすくなる、 働き続けられるようにする、そういう手段といいますか、アプローチとしてポジティ ブに捉えるといいますか、そういう形で捉えるべきではないかという、そういうご趣 旨のご意見でございました。  ご質問の2点目は、合理的配慮を提供したつもりだったのが、少し足りなかったと いいますか、実は十分ではなかったというような場合ですが、十分に研究会で議論さ れたかというと、そこまで詰めてなかったようにも思われます。ただ、合理的配慮と いうのは、10か0という議論ではなくて、やはり足りないということも含めて、そ こは合理的配慮がされてないといいますか、不十分であるというものではないかとい う、そんな議論があったように記憶しております。  それから、3点目でございますが、過度な負担の基準として、企業規模や業種の他 に、地域の文化・慣習ということが例示されておるわけですが、これが何かというご 質問でございます。率直に申し上げて、研究会ではこういったご意見があっただけで、 それについての詰めた議論というのはいたしておりません。基準としては、地域によ っては通勤のスタイルであるとか、諸々仕事の仕方が違うので、過度の負担の判断に おいても変わり得るのではないかと、こういったことで、おそらく問題提起なされた と思っておりますけれども、具体的にこういうものだという詰めた議論は行われてお りません。以上でございます。  ○今野会長  いいですか。ちょっと私から追加すると、2点目については、おっしゃられたよう な状況によって、駄目じゃないかと訴えて、判定機能に行くという、そういうことよ りは、職場内で何か委員会なんかを作って、そういう問題を内部で対応しながら解決 していくというようなことが非常に重要なんだという、そういう雰囲気が非常に強か ったと思いますね。ついでに追加させていただきました。他にございますか。どうぞ。  ○菊池委員  差別禁止の対象範囲なのですけれども、日本職業リハビリテーション学会では、受 刑者であるとか、あるいは高齢者であるとか、子育て中の母親とか、そういうふうに 広げて対象を捉えているんですけれども、今回はそこまでは考えていないという理解 でよろしいんでしょうか。  ○今野会長  どうぞ。  ○障害者雇用対策課長  現在の障害者雇用促進法の中にも障害者の定義がありますが、身体障害、知的障害、 又は精神障害があるために、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生 活を営むことが著しく困難な者をいうという形とされております。例示として、身体、 知的、精神が書かれておりますが、これに限らず、基本的には障害を原因として職業 生活に相当程度制限を受けている方が対象になるということからしますと、非常に広 い意味での障害という意味であれば、おっしゃったような部分も入るのかも知れませ んけれども、直接的に私どもが障害者雇用促進法でターゲットとしているような形か らしますと、そこまで広げるのはなかなか難しいのではないかというふうに考えてお ります。  ○今野会長  他にいかがでしょうか。  ○花井委員  この度、私どもの方で「雇用における障害者差別禁止法」に関する考え方を取りま とめました。その中で当然、募集・採用から定年退職・解雇に至る雇用の全てのステ ージで差別を禁止しようというものですが、今日は3点だけご報告をし、意見として 述べさせていただきたいと思います。  1つは、採用に関して、募集・採用については企業側に裁量権があるという判例も 出ていると書かれていますが、昨日、大阪で保育士の資格を持っている全盲の女性の 方が採用試験を拒否されたという報道がされています。そういうことが現実に起こっ ていることからも、是非ともその募集・採用からというところは強調しておきたいと 思います。それから先程、佐藤先生がおっしゃいました雇用継続のための合理的配慮 ですが、私たちの中でも結構議論いたしまして、働いている途中で労災などで、例え ば目が見えなくなった、あるいは車椅子が必要になったなど、様々な障害が起こる場 合があります。それには再配置義務ということが合理的配慮の1つではないかという ことで、考え方をまとめております。ただ、様々な議論があるので、私どもも意見を 聴いていきたいと思っております。  3つ目が、合理的配慮の内容ですが、これについては障害の種別・程度によって中 身が相当違うと思います。現実に、自治体の職場で働いている障害者の方たちが、自 分たちがどういう条件が整えば働き続けることができるのかという詳細なアンケート や聞き取り調査を行っております。是非とも、そのようなことも参考にされて、今後 の検討に資することができればと考えております。以上です。  ○今野会長  ありがとうございました。それは、そのうちまとまったら我々に配布されるという ことですか。  ○花井委員  一応まとまりましたので、機会がありましたら配布させていただけたらと思います。  ○今野会長  はい。分かりました。他にいかがでしょうか。どうぞ。  ○鈴木委員  合理的配慮の中で、「過度な」というような、いろいろ議論のあるところなんですが、 何となく個人的な見解になるんですけれども、合理的配慮というのは、ある意味、福 利厚生の延長線上にあるのかなという気がしなくもありません。ある職人さんなり従 業員が、ちょっと不便だな、暗いなここは、といった時に、じゃあちょっと明かりを 1個つけようかみたいなところから、それが障害のある人だったら合理的配慮で、い わゆる障害のない人だったら福利厚生なのかなというところがあって。ある意味で、 何かそんなにものすごいことではないような気がします。そんなに考えなくても、そ の人が仕事上不自由なところできちっと配慮しようかというところを、これではそう 言っているのではないかなと私は気がしていて、それに対して、「過度な」というのは あるのかなと。相当とんでもないことを言わない限り、過度な経費の負担とかという のは、あまりないような気がするような感じがします。これは意見です。  ○今野会長  ありがとうございました。おっしゃられた意味は、福利厚生というか、安全衛生と いうか、そっちに近いですかね。  他にございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、今日は中間整理の報 告をさせていただいて、最初の議論の場でしたので、今後さらに議論を進めていきた いというように思います。それでは、今日の分科会はこれで終わりたいと思います。 次回分科会についてですが、事務局から説明をお願いします。  ○事務局  次回の分科会でございますが、現在のところ、9月頃を目途に開催を検討しており ます。議題につきましては、障害者権利条約その他、についてということで考えてお ります。席上に8月から12月までのカレンダー表をお配りしておりますので、そこに 都合の悪い日程等をご記入の上、今月の17日、金曜日までにファックスまたはメール で返信いただければ幸いでございます。後ほど、電子データの方も送信をさせていた だきます。以上です。  ○今野会長  この審議会では、夏休みというのはないんですか。8月は全部開かないとか、そう いうのはないんですか。  ○事務局  すみません。9月を目途にと先ほど申し上げてしまいましたが、日程調整表上は、 8月も念のため付けております。おそらく9月になるだろうという気はしております。  ○今野会長  分かりました。それでは、配慮して、私も記入するようにします。  さて、今日の議事録の署名ですが、労働者代表が中島委員、使用者代表は高橋委員、 障害者代表は川崎委員で、それぞれお願いをいたします。それでは、今日は終了いた します。 〈照会先〉 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 調整係 〒100-8916 東京都千代田区霞が関1−2−2 TEL 03(5253)1111 (内線5783) FAX 03(3502)5394