09/03/16 平成21年3月16日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会議事録 日時 平成21年3月16日(月)13:30〜 場所 中央合同庁舎4号館 全省庁共用108会議室 審議事項  (1)平成19年食中毒発生状況の報告について  (2)平成20年食中毒発生状況(速報)の報告について  (3)その他 出席委員 五十君靜信、犬伏由利子、今村知明、熊谷進、小西良子、谷口清洲、丹野瑳喜子、 寺嶋淳、西渕光昭、前田秀雄、◎宮村達男、山本茂貴、吉川さなえ(敬称略)   注)◎部会長 事務局   石塚食品安全部長、塚原大臣官房参事官、加地監視安全課長、熊谷課長補佐、   蟹江課長補佐 ○熊谷監視安全課長補佐 皆さん、お忙しい中、ありがとうございます。先生方、皆さ んお集まりになられておりますので、定刻より少々早い時間ですけれども、始めたいと 思います。よろしくお願いします。  本日は、「薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会食中毒部会」を開会いたします。  開会に当たりまして、石塚食品安全部長から御挨拶申し上げます。 ○石塚食品安全部長 食品安全部長でございます。本年の最初の食中毒部会でございま して、何卒よろしくお願い申し上げます。開会に先立ちまして、一言御挨拶申し上げま す。  年度末、大変御多用の中、当部会に御参加いただきましてありがとうございます。ま た、日頃から委員の先生方におかれましては、食品衛生の推進に当たりまして格別の御 高配と、また御協力を賜っているところでございます。重ねて御礼申し上げる次第です。  実は、前回の食中毒部会でございますが、一昨年の9月に開催ということで、大分間 が空いてしまったわけでございますが、前回の部会におきましては、平成18年の末から 19年初めにかけて、ノロウイルスの集団食中毒というものが多発したということを受け まして、このノロウイルス対策につきましてさまざまな御議論をいただいたということ でございます。その御議論の結果というものを提言としてとりまとめていただいたとい うことでございまして、本日、その提言を踏まえた対応についてご説明させていただく ということでございます。  また、本日の議題は、昨年、19年の食中毒の発生状況と、20年、昨年の速報値でござ いますが、これにつきましても御報告をさせていただきまして、さまざまな角度から御 議論を賜ればと考えているところでございます。  実は、本年1月に委員の改選がございまして、今回、新たにこの部会の方に御参加い ただきました先生方もいらっしゃるわけでございます。新しい視点から、今後の食中毒 体制のあり方につきまして忌憚のない御意見を賜ればと考えている次第でございます。  本日は食中毒に関係しますさまざまなテーマということで御議論をいただくわけでご ざいます。食の安全につきましては、国民の関心も大変高まっているところでございま す。非常に重要なテーマも中に入っていると考えております。大所高所から、また専門 の立場から、貴重な御意見を賜ればと考えておりますので、何卒よろしくお願い申し上 げまして、挨拶にかえさせていただきます。 ○熊谷監視安全課長補佐 ありがとうございました。  本日は、塚原大臣官房参事官にも御出席いただいております。 ○塚原大臣官房参事官 よろしくお願いします。 ○熊谷監視安全課長補佐 それでは、今年の初めに委員の改選がありましたので、今回 初めて御出席される委員の皆様もいらっしゃいます。ここで委員の皆様方の御紹介をさ せていただきたいと思います。  山本委員から時計回りで御紹介させていただきますのでお願いします。  国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長の山本委員でございます。 ○山本委員 山本です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 京都大学東南アジア研究所教授の西渕委員でございます。 ○西渕委員 西渕です。よろしくお願いします。 ○熊谷監視安全課長補佐 埼玉県川口保健所長の丹野瑳喜子委員でございます。 ○丹野委員 丹野です。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部長の小西委員でござ います。 ○小西委員 小西でございます。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 奈良県立医科大学健康政策医学講座教授の今村委員でござい ます。 ○今村委員 今村でございます。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部第一室長の五十君 委員でございます。 ○五十君委員 五十君でございます。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 国立感染症研究所長の宮村委員でございます。 ○宮村委員 宮村です。どうぞよろしくお願いします。 ○熊谷監視安全課長補佐 消費科学連合会副会長の犬伏委員でございます。 ○犬伏委員 犬伏です。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 東京大学大学院農学生命科学研究科教授の熊谷委員でござい ます。 ○熊谷委員 熊谷です。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 国立感染症研究所感染症情報センター第一室長の谷口委員で ございます。 ○谷口委員 谷口でございますよろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 国立感染症研究所細菌第一部第一室長の寺嶋委員でございま す。 ○寺嶋委員 寺嶋です。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 東京都健康安全研究センター所長の前田委員でございます。 ○前田委員 前田と申します。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 長野県教育委員会事務局保健厚生課主査管理栄養士の吉川委 員でございます。 ○吉川委員 吉川と申します。よろしくお願いいたします。 ○熊谷監視安全課長補佐 なお、本日は、社団法人日本医師会常任理事の内田委員、北 九州市保健福祉局保健医療部保健衛生課長の江副委員、東北大学大学院医学系研究課内 科病態学講座感染制御・検査診断学教授の賀来委員、自治医科大学地域医療学センター 教授の中村委員、4名の委員が欠席ということでございます。  本日の食中毒部会は、17年の委員のうち過半数の委員に御出席いただいておりますの で、薬事・食品衛生審議会の規定に基づきまして成立していることを御報告いたします。  本部会の部会長には、国立感染症研究所長の宮村先生にお願いしております。また、 部会長代理には、国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部長の山本先生してお願いし ております。  それでは、議事の進行を宮村先生にお願いいたします。 ○宮村部会長 宮村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  早速、議事進行に入りますけれども、よろしく御協力をください。  それでは、初めに、事務局で配付資料がありますので、その御説明、御確認をお願い いたします。 ○蟹江監視安全課長補佐 事務局、監視安全課の蟹江でございます。よろしくお願いし ます。  まず、配付資料の確認でございます。  まず、議事次第が1枚ございます。それから、食中毒部会委員名簿、これも1枚でご ざいます。それから、本日の座席表。配付資料の一覧。配付資料といたしまして、資料 1「平成19年食中毒発生状況」、資料2「平成20年食中毒発生状況(速報)」、それから 参考資料1冊。それから、前田委員の方から提出のございました、「東京都健康安全研究 センターノロウイルス対策緊急タスクフォース中間報告」が1冊ございます。御不足等 がありましたら、おっしゃっていただければと思います。 ○宮村部会長 資料はよろしいでしょうか。  それでは、早速、今日の議題に入りたいと思います。  最初の議題は、「平成19年食中毒発生状況について」ということでございます。  まず、事務局から報告をお願いいたします。 ○蟹江監視安全課長補佐 すみません。先ほどの資料の確認でございます。資料3「ノ ロウイルス食中毒対策について提言を踏まえた対応」という1枚、両面コピーでござい ますが、これが抜けておりまして、失礼いたしました。  それでは、「平成19年食中毒発生状況」につきまして、資料1に沿いまして御説明を したいと思います。  まず、1ページ目でございますが、「年次別食中毒発生状況」、一番下が平成19年と なっております。平成19年、事件数1,289件。18年から202件減となっております。 それから、患者数でございますが、3万3,477名、平成18年と比較しますと5,549名の 減となっています。それから、死者数でございますが、7名、これは平成18年から1名 増加となっております。それから、1事件当たりの患者数26.0。それから、10万人当た りの罹患率26.2人という数字でございます。  2ページ目でございますが、「年次別食中毒事件数」と「患者数」をグラフで表して おります。事件数を見ていただきますと、平成10年をピークに減少傾向にございます。 それから、下の患者数の方でございますけれども、平成13年以降、患者数2万5,000 名から4万人の間で推移していることがわかります。  3ページ、4ページ、5ページ、6ページにつきましては、「都道府県別食中毒発生 状況」を平成17年、18年、19年、3年間分整理をしておりますけれども、特に大きな 変化のあるというような傾向は見られておりません。  7ページ目に移らせていただきます。「患者規模別発生状況」でございますけれども、 1事件当たり1名から10名の事件が一番多くなっておりまして、患者数が多いほど事件 数が少ないという傾向で、これは毎年同様の傾向でございます。  それから、8ページ目でございます。「患者数500人以上の事例」でございますけれ ども、5件ございました。ノロウイルス1件、ウエルシュ菌による事件が2件、それか ら腸炎ビブリオ、それからサルモネラ1件ずつ、合計5件でございます。1番、2番、 3番、5番につきましては、給食とか、あるいは弁当が原因食品となっておりまして、 調理を原因とするものでございます。  4番の宮城県で発生いたしました「いかの塩辛」による食中毒事件でございますけれ ども、参考資料の1ページ目をごらんいただければと思います。この事件を受けまして、 監視安全課長名で都道府県の方に関係事業者への監視指導の徹底について通知をしてお ります。このいかの塩辛でございますけれども、通常の伝統的ないかの塩辛というより は、塩分濃度が低くて、冷蔵で流通するような形態のものでございまして、食中毒調査 の結果、何らかの形で腸炎ビブリオの汚染がありまして、その冷蔵施設の不備、空調が 故障したということもございまして、一定期間温度が上昇し、その間に腸炎ビブリオが 増殖をして食中毒が発生したというような調査の結果になっております。そこで、1ペ ージにもございますとおり、食中毒菌による汚染防止ということで、原材料の洗浄とか、 あるいは施設内の衛生管理、それから製造加工ラインの洗浄消毒の徹底。2ページ目に 「食中毒菌の増殖防止」ということで、10℃以下の保持、それから、適切な期限表示の 徹底、それから、伝統的な塩辛と混同することがないようにということで、都道府県を 通じて関係事業者に指導をしております。  資料1に戻りまして、死者が発生しました食中毒事例、平成19年は7例ございまし た。病因物質につきましては、すべて「自然毒」によるものでございまして、動物性あ るいは植物性となっております。一番上にフグの食中毒が発生しておりますけれども、 参考資料の5ページからになります。毎年、フグによる食中毒が発生していることもご ざいまして、平成19年12月には都道府県あてに監視等の徹底の通知を出しております。 6ページ目は、これまでの事例をこの通知の参考に添付して都道府県の方に示しており ます。それから、7ページ目と8ページ目でございますが、注意喚起として、厚生労働 省のホームページに情報を掲載して、一般の方に対しても、あるいは釣りをされる方に 対しても、注意喚起の内容を示しております。それから、9ページでございますけれど も、これは今年に入って、10ページに山形県事案、大分県事案ということで食中毒事案 概要がありますけれども、実際の山形県あるいは大分県で定められた規則、要綱とか条 例になるわけですが、そういったものを遵守せずに発生した食中毒が続きましたので、 事業者への指導の徹底ということで、今年の1月29日に、再度、制度全体の周知という ことで、都道府県あてに通知をしております。  続きまして、資料1の9ページでございます。「月別発生状況(事件数)」でございま すけれども、平成19年につきましては、9月が一番多く149件、続きまして8月の142 件、その次が10月の135件ということで、夏場に発生件数が多いという傾向がございま した。18年を見ていただきますと、かなり冬、11月、12月の発生件数が多かったので ございますが、19年は夏に多い傾向ということがわかっております。19年につきまして も、12月、それから1月につきましては、夏場より少し低いレベルで事件が発生してい るという傾向でございます。  10ページ目でございますが、これは「月別発生状況(事件数)」で、2人以上の事例 が上のグラフでございます。1人の事例が下のグラフになっておりまして、2人以上の 事例につきましては夏場と冬場にピークが見受けられます。1人事例の場合ですと、通 常は夏場がピークで、特に17年、18年は夏場がピークだということが顕著にわかると 思います。19年につきましては、それほど大きなピークは見受けられていません。  11ページになります。これは月別の患者数でございますけれども、19年につきまし ては、1月と12月が4,995名ということで、患者数多い月になっております。9月に 4,660名という患者数がございますけれども、これは500名以上の食中毒事件が2件ご ざいました関係で、この月は多くなっているということでございます。  それから、12ページ目でございますが、上段が2人以上の事例の患者数、下が1人事 例の食中毒事件の患者数になっておりまして、2人以上の場合ですと、冬場が多い傾向 がございます。1人事例の場合ですと、夏が多いという傾向が見受けられます。  13ページでございます。「原因施設別発生状況」の表でございますけれども、一番左 に原因施設の種類がございまして、その次に事件数がございます。事件数で見てみます と、一番多いのが「飲食店」582件、次に「家庭」128件、それから「旅館」103件、「仕 出屋」69件、「事業場」39件、これが上位5施設になりまして、これをトータルします と大体71%ぐらいを占めます。それから、患者数でございますが、これは「飲食店」1 万3,625名、「仕出屋」6,254名、「旅館」5,396名、「学校」2,252名、「製造所」で1,991 名、これで88%の割合を占めております。  14ページ目から17ページ目までは、原因施設の数字をグラフにしたものでございま して、大きな特徴は過去と比べて見受けられない状況です。  18ページ目でございますが、「原因食品別発生状況」ということで、一番多いところ でございます。「その他」になるわけですが547件、「複合調理食品」95件、「肉類及び その加工品」が83件、「野菜及びその加工品」が78件、「魚介類」が68件ということで、 これで約67%を占めています。それから患者数でございますが、患者数も「その他」に なるわけですけれども2万754名、「複合調理食品」3,939名、「野菜及びその加工品」 1,242名、「魚介類加工品」1,080名、「菓子類」984名、これら上位を足しますと約83% になります。  19ページ、20ページ、21ページ、22ページは、これをグラフにしたものでございま す。  23ページでございますが、「病因物質別発生状況」の表でございます。事件数で一番 多いのは「カンピロバクター・ジェジュニ/コリ」416件、それから「ノロウイルス」 344件、3番目は「サルモネラ属菌126件、次は「植物性自然毒」74件、「ぶどう球菌」 70件ということで、これで約8割を占めております。患者数を見ますと、「ノロウイル ス」の1万8,520名、「サルモネラ属菌」の3,603名、「ウエルシュ菌」の2,772名、「カ ンピロバクター・ジェジュニ/コリ」の2,396名、「腸炎ビブリオ」の1,278名。上位5 つの病因物質で、患者数ですと85%を占めております。  24ページ目以降は、今の病因物質別のグラフで、最初の4ページ、27ページまでが 今の数字をグラフにしたものでございまして、28ページ、29ページが病因物質の中の細 菌の部分をピックアップして整理したグラフでございます。大きな変化があるようには 見受けられておりません。同じような傾向で推移していると思います。  以上、19年の食中毒発生状況でございます。 ○宮村部会長 ありがとうございました。今のは、平成19年の食中毒発生状況の全体的 な報告です。まず、全体的な傾向についてのただいまの説明について、御意見、御質問 はありますか。 ○前田委員 2ページの上が「食中毒事件数」で、下が「患者数」ですが、事件数の方 は12年以降、10年、11年以降、徐々になだらかに下がってきておりますが、食中毒患 者数の方で14年辺りから横ばいであるのと、あと、18年にかなりピークが見られるの ですが、この辺はどのように解釈されていますか。 ○蟹江監視安全課長補佐 資料1の26ページをごらんいただければと思います。これは、 食中毒患者数の年次推移の病因物質別のグラフでございますけれども、青いラインはノ ロウイルスでございますが、平成17年、18年シーズンにはかなり患者が発生しており まして、ノロウイルスによる増加になっております。それから、平成18年につきまして は、500名以上の食中毒事件が6件ございますけれども、すべてノロウイルスという状 況がございまして、その関係で患者数が急激に増加したということだと思います。 ○前田委員 すごい大規模のがあったからというのがあると思うのですけれども、ノロ ウイルスの食中毒患者さんについて、食中毒患者というのは医師が診断をして食中毒と して届け出るわけですね。それと、事件は事件として取り上げられるわけですけれども、 その辺に何か乖離があるということはないでしょうか。私どものところでも、ノロウイ ルスはそれほど減っていないのですが、集団発生としていろいろ届け出られることが何 となく少なくなっているような印象も受けるのですけれども、特にそういうことはござ いませんか。 ○加地監視安全課長 私の方からちょっとコメントさせていただきたいと思います。先 生の今の御指摘、まさにこの食中毒部会でノロウイルス対策の提言をしていただいて、 その提言をしていただくきっかけになったのが、ノロウイルスによる患者さんを、何も 考えずに全部食中毒患者ということで報告をしていたきらいがあるのではないか。それ で、営業者の方からも、大分非難の声が出ておりまして、これは人から人へうつった、 あるいは人から何か食べ物以外のものを介して感染したものも全部ひっくるめてノロウ イルス食中毒という件数に、人数にカウントされているのではないか。そういうことで、 まさにこの部会で先生方に御協力いただいてあの提言をつくっていただいて、また調査 の中で疫学的に透明性を保ちながら、営業者にもきっちりと、食品を介して来たものか、 あるいは人から人へ来たものか、そこをはっきり区別できるような疫学調査をきっちり やりましょうということで提言を受けて、それからその疫学調査のマニュアルもつくっ ていただいて、それを各自治体に配付をさせていただきました。その結果、非常に楽天 的に考えると、それが効果を持ってきたのかなと思っています。 ○宮村部会 ありがとうございました。どうぞ。 ○今村委員 奈良医大の今村ですけれども、ちょっと教えてもらいたいのですけれども、 2ページの食中毒の件数のところで、10年にピークがあって、そこからどんどん落ちて いっていますね。これは、多分、広島の単発事例の報告があるので、患者数の数がない のにこれだけの件数が増えてきていると思うのですけれども、これがどんどん減ってき ているのは、基本的に広島からの報告が減ってきているからこのように減ってきている のか。そもそも件数全体が減ってきているのかということを教えていただきたいのと、 件数が広島にパラレルであるとすると、例えば14ページとかの食中毒の年次推移の原因 不明のものがどんどん減ってきているようなこの図は、広島の傾向をそのまま素直に反 映させたものが、この変化として表れているのかどうかというところですね。広島の分 を除外したら、傾向として、同じ傾向なのかどうかというのを教えていただければと思 います。 ○蟹江監視安全課長補佐 3ページ目の「都道府県別食中毒発生状況」を見ますと、広 島県のところ、平成17年が事件数で542件、患者数で1,209名、18年が294件の773 名、19年が259件の1,489件、事件数は減ってきておりますけれども、患者数は増えて いるという状況で、これは統計上の状況でございますが、広島の対応が特段過去と変え たというような報告はもらっておりませんので、広島は通常どおり対応してきているの だと思います。  それから、28ページに病因物質別の事件数の推移がございますけれども、平成10年 の辺りを見ていただきますと、「腸炎ビブリオ」と「サルモネラ」がかなり多く発生した 時期でございまして、これにつきましては直接的な効果は検証できていませんが、「腸炎 ビブリオ」と「サルモネラ」につきましては、「サルモネラ」ですと卵関係の規格基準を 策定したり、「腸炎ビブリオ」ですと生食用の鮮魚貝類の「腸炎ビブリオ」の基準を策定 したりですとか、そういう対策も講じられておりますので、その部分で減少してきてい るということで、広島の事例は、1人事例、「カンピロバクター」の事例でございますが、 「カンピロバクター」の事例につきましては、このグラフのとおり、大体同じような推 移を示しておるということがわかると思います。 ○今村委員 多分、平成10年ごろにバッと増えた。増えた原因が、多分、広島、それも 広島市の単発事例の報告が増えたのだと思うのですね。当時、1,500ぐらいはあったよ うな記憶があるのですけれども、今、200ぐらいまで減ってきているので、かなり減っ てきているなという印象があって、それで、広島の単発事例の原因究明できた分の結果 がさっきのグラフに非常に色濃く出ているのではないかなと思ったので、「カンピロ」は 多分そうだと思うのですね。原因不明も減ってきているという理由が、広島かというよ うにちょっと思えて、その辺のところ、もしまた後日でも、わかれば教えてもらえれば と思います。 ○宮村部会長 よろしいですか。今データとして出ているのは、県別の食中毒発生状況 17年、18年、19年とあって、10年のもののプロファイルというのはどこかにあるので すか。それも確かに広島が断トツであったわけですか。 ○蟹江監視安全課長補佐 手元にあるのは、一番古いものは14年になるわけですが、14 年を見てみますと、広島県、事件数で720件、患者数が1,925名ということで、これに 比べるとかなり減ってきているというのが統計上、明らかになっています。 ○加地監視安全課長 この事例は毎回この部会で議論になって、我々も説明に窮するも のでございまして、そこのところは広島市の特殊事情ということで御理解いただかなく てはいけないのと、2人以上の数字はまた別途とっていますので。ただ、類推するに、 当時、最初に1人事例を報告しなければいけないと言われた時期から、だんだん熱が冷 めてきたというきらいはあるのだろうと思っています。実際の本当の1人事例が減って いるということを反映しているものではちょっとないような気がします。 ○宮村部会長 では、私から一つ質問。8ページを見ていただくと、食中毒の場合に深 刻な事例は、患者数が多いことと、死者が出たということだと思います。平成19年は、 患者数500人以上の例が5件あったと。それから死者の出たケースが7件あったという ことですが、これはほかのマーカーでいろいろ年次別にプロファイルを説明されていま すけれども、平成19年の患者数の多かった500人事例、それから死者の出たケースとい うのは、連年に比べてどうだったのでしょうか。 ○蟹江監視安全課長補佐 まず、500名以上の事例でございますけれども、平成19年が 5件、平成18年が6件でございます。それから、平成17年が2件、平成16年がゼロ、 平成15年が2件ということで、毎年1桁程度の発生がございます。  それから、死者数でございますけれども、1ページ目をごらんいただければと思いま す。平成19年が7名、18年6名、17年7名、16年が5名、15年が6名、14年が18名 となっておりますが、たしかこれは社会福祉施設での集団発生だった思います。平成13 年が4名ということで、死者数も通常1桁の発生で推移しているということです。 ○宮村部会長 ありがとうございます。それですと、19年の例えば500人以上の場合の 原因食品が特定されたのは幾つかあって、結局、不明もあるわけですけれども、宮城県 の「いかの塩辛」のケースについては、厚生労働省から通達が出たり通知が出たりして いますが、ほかのケースでは何か行政的にリアクションされた、そういうことはあるの でしょうか。 ○蟹江監視安全課長補佐 平成19年の5件のうち、4番目の「いかの塩辛」については、 先ほどの通知を示しております。その他4事例につきまして、その都度、通知を出して いるわけではございませんが、これは大量調理施設ということで、通常その大量調理施 設マニュアル、先日、ノロウイルスの関係で改正しましたものですから後ほど御説明い たしますが、そういったマニュアルの遵守が都道府県の方から、関係事業者の方に指導 されております。 ○宮村部会長 ありがとうございます。ほかに先生方から何かございますか。 ○寺嶋委員 5ページに「参考」とあるので余り大事ではないのかもしれませんが、国 外例が随分増えているみたいなのですが、最近、就学旅行等で発生する事例があるよう に思うのですけれども、例えば平成18年の患者数191から平成19年で335に増えてい ますが、そういうものを反映しているというように考えてよろしいのでしょうか。 ○蟹江監視安全課長補佐 手元にあるデータで恐縮でございますが、国外の4例につき ましては、病因物質が「サルモネラ属菌」「カンピロバクター・ジェジュニ/コリ」「ク リプトスポリジウム」「腸炎ビブリオ」ということになっていまして、どこで感染したか、 修学旅行だったかどうかという情報が手元にないものですから、もしわかれば、また後 ほど御連絡するようにいたします。  患者の発生は4件で、168名の事例と、110名の事例と、23名、34名という事例でご ざいまして、集団発生の事例だと思います。 ○谷口委員 今出た話題の追加のようになりますが、国際事例は、多分これはIHRの 報告のアルゴリズムに入ってくるような気がするものですから、多分、今後こういうの はIHRの報告を検討するというのが一つ必要ではないかというのが1点。  あと、先ほど今村先生のおっしゃられた広島の話なのですが、後から全体のナショナ ル・サーベイランス・データとして見たときに、このデータはかなりミスリーディング だと思います。一つの原因場所とか原因のところを見ると、ほとんど、原因物質はわか っているけれども、場所とかそういうところはわかっていない事例だと思うのです。場 所もどこもわかっていない事例が多いわけですから、そうすると、何で食中毒とわかっ たのかなという気もするのですね。これは食中毒の定義ということだろうと思うのです が、そこをちょっと考えて、全体で400例あって、そのうちの200例が1例報告でとい うのは、かなり全体に響いてきますので、ちょっとその報告の定義は改めて考えた方が いいのではないかなと思いました。 ○宮村部会長 これは2つ、大事なコメントだと思います。何かありますか。 ○加地監視安全課長 御指摘のとおりでございまして、IHRについては、また先生方 に御相談させていただいて、フォームを決めて検討したいと思います。  それから、広島市の場合については、長年の経緯がございまして、ずっとこういう形 でやっているのですけれども、そろそろ見直す時期か、あるいはそれとも別に枠を設け て、これも多少はやっているのですけれども、その辺、ミスリードしないようにさせて いただきたいと思っています。 ○宮村部会長 ほかに。はい、どうぞ。 ○吉川委員 先ほど、宮村委員さんの方から、500名以上の事例ということで、「いかの 塩辛」については厚生労働省の方から通知が出たということだったのですけれども、や はり文部科学省の方からも、鳥取県の事例を受けて、私もちょっとうろ覚えですけれど も、たしか通知が出て、そのとき、ノロウイルスによる食中毒が近年にない流行の時期 だということで、県の方でも何回か通知を出させていただきました。やはりそういう情 報は、常に現場の方に流していただくと、学校給食施設等の給食現場の方に流れやすい のかなと思いますので、常にそういう情報をいただくとありがたいなと思っております。 ○宮村部会長 よろしいでしょうか。それでは、次に移りたいと思います。  次は、今日の2番目の議題ですけれども、「平成20年食中毒発生状況(速報)」につい て、事務局から報告をお願いいたします。 ○蟹江監視安全課長補佐 それでは、「平成20年食中毒発生状況(速報)」の御説明をい たします。  先ほどと同じような形で御説明をしたいと思います。  まず、1ページ目、平成20年は1,369件、これは19年に比べますと80件増加して おりますが、1,369件の食中毒事件が発生しています。患者数でございますが、2万4,303 名、前年に比べますと9,174名の減。それから、死者数が4名、これは3名減になって おります。1事件当たりの患者数は17.8ということと、10万人当たりに換算しますと 19.0人という発生状況でございます。  2ページ目のグラフは、先ほどと同じ傾向でございます。  3ページ目から6ページ目までが「都道府県別食中毒発生状況」でございまして、大 きな変化は見られておりません。  続きまして、7ページでございますが、「患者規模別発生状況」、これも毎年同じ傾向 になっております。  それから、8ページ目でございますが、「患者数500名以上の事例」が1件、ノロウ イルスでございました。それから、「死者の出た食中毒事例」ということで、4件ござい ます。3件がフグの関係、それから一番下の1件、セレウス菌による食中毒事件という ことで、4件ございました。  9ページ目でございますが、「月別発生状況(事件数)」になっております。一番発生 の多かった月が10月の157件、続きまして8月の149件、9月の143件と続いています。 夏場が多いという傾向になっております。  10ページ目でございますが、これも先ほどと同じ御説明になるかもしれませんが、2 人以上の事例ですと夏場が多い傾向を示しております。1人事例の場合も、20年の速報 につきましては夏場が多いという傾向でございます。  11ページ目でございますが、「月別発生状況(患者数)」でございますけれども、患者 数につきましては、1月が一番多く3,871名、続きまして2月になります、2,418名、 それから12月2,317名ということで、冬場が多いという傾向でございます。  12ページ目でございますが、上が2人以上の事例の患者数、下が1人事例の患者数で ございますが、上の2人以上の事例の患者数は、冬場が少し多い傾向になっておりまし て、1人事例の場合ですと夏場が多いという傾向でございます。  13ページ目でございますけれども、「原因施設別発生状況」。20年の速報では、「飲食 店」が一番多くて634件、それから「家庭」での事例151件、「旅館」78件、「仕出屋」 が62件、「事業場」48件ということで、上位5つを見ますと、これで71%ぐらいを占め ております。それから、患者数でございますが、「飲食店」1万2,034名が一番多く、そ の次に「仕出屋」4,615名、それから「旅館」2,844名、それから「事業場」1,632名、 「製造所」735名ということで、この5つの分類を足しますと約90%を占めております。  14ページ目から17ページは、グラフになっております。  18ページをごらんいただければと思います。「原因食品別発生状況」でございますが、 「その他」が531件、「魚介類」106件、「複合調理食品」103件、「肉類及びその加工品」 96件、「野菜及びその加工品」が87件、これで約67%を占めています。患者数につきま しては、「その他」が1万3,764名、「魚介類」925名、「複合調理食品」3,646名、「肉及 びその加工品」1,412名、「魚介類」925名、「菓子類」726名ということで、この5つを 足しますと約84%になります。  19ページから22ページはグラフでございます。  23ページ、「病因物質別発生状況」でございますが、「カンピロバクター・ジェジュニ /コリ」が509件、続きまして「ノロウイルス」303件、「サルモネラ属菌」99件、「植 物性自然毒」91件、「動物性自然毒」61件ということで、上位5つを見ますと約77%を 占めております。患者数でございますが、「ノロウイルス」が1万1,618名、それから「カ ンピロバクター・ジェジュニ/コリ」で3,071名、「サルモネラ属菌」2,551名、「ウエ ルシュ菌」2,088名、「ぶどう球菌」1,424名で、上位5つで約85%を占めております。  それから、参考資料の11ページでございますが、スッポンによるサルモネラ食中毒 が発生しまして、12ページに過去の事例を整理した表がございます。過去にも何例か発 生をしておったということもございまして、このスッポンの取扱いについて、3点ほど、 特に注意を要する部分ということで、都道府県を通じて事業者に指導しているというこ とでございます。  それから、参考資料の13ページ目、これは平成20年赤痢菌による食中毒、統計上は 3件の発生となっておりますが、その調査の段階で、菌株の分析といいますか、菌株に よるデータ収集といいますか、その疫学調査の中で、菌株による、特にパルスフィール ド電気泳動による結果というのは非常に重要ということもございまして、国立感染症研 究所からの要請もございまして、結核感染症課と連名で菌株の送付について都道府県あ てに通知を発出しております。これは赤痢菌だけではなくて、コレラ、腸チフス、パラ チフスについても同様でございますし、以前から続けておりますのが、腸管出血性大腸 菌、それからサルモネラにつきましては従来より菌株の送付について都道府県あてに要 請をしております。  それから15ページ目でございますが、平成20年にアジサイによります食中毒事件が 2件発生いたしまして、病因物質は不明でございますけれども、疫学調査からアジサイ によることがわかっている関係上、注意喚起の通知を発出しております。  以上、20年の発生状況の速報でございます。 ○宮村部会長 ありがとうございました。「平成20年食中毒発生状況(速報)」の全体的 な傾向についてのただいまの御説明について、御意見、御質問をいただきます。いかが でしょうか。 ○加地監視安全課長 私の方から補足しますと、昨年、20年の死亡事例の中に「セレウ ス菌」がありますが、あれは非常に珍しいケースかなと思います。 ○宮村部会長 それは私もそう思います。8ページの平成20年速報の「細菌−セレウス 菌」というのが、今までの自然毒以外の非常にユニークな症例、これはどこかで報告が 出ているのですか。 ○加地監視安全課長 食中毒としては届け出をされたのですが、これは実は家庭内での 事例ということで、遺族の方が非常に悲しまれて、その辺の発表等については自粛をし てほしいという要請がありまして、これは実際には発表はしておりませんけれども、た だ、今後、学問的には、セレウスの毒素なのか、毒素がどれぐらいの量で死亡まで至る のか、その辺のところはもう少し究明をしていかなければならない事例かなと思ってい ます。 ○宮村部会長 このケースは、小さい方が亡くなったわけだけれども、患者さんとして は3人があったという事例ですね。皆、子供ですか。 ○蟹江監視安全課長補佐 これは家庭内で発生しておりまして、家族4名で、そのうち 3名喫食で3名が食中毒になったということで、お子さん2人とその親です。原因食品 でございますけれども、これは大阪府の調査で私どもの方に報告が来ている内容でござ いますが、焼き飯の残りを常温で置いていて、それを室内で一昼夜放置というふうに確 認されておりますが、どうも一時的にストーブ等をつけておって、その日の平均気温は 17度ではございましたけれども、ストーブ等をつけておったために室温が30度ぐらい になっていた可能性があるということと、それから、その残品を検査したところ、セレ ウス菌が10の8乗オーダーで検出されておりまして、それとセレウリド合成遺伝子が陽 性という結果になっております。それから、死亡した方は、風邪気味で少し体力も弱っ ていたと思われるという情報もございます。そういった状況の食中毒の発生であったと いうことです。 ○宮村部会長 ありがとうございました。ほかに。どうぞ、西渕先生。 ○西渕委員 細菌性の食中毒を見ていたら、やはり「カンピロバクター」による症例数 がすごく増加しているのですけれども、世界的にも重要ですが、この部会は初めてなの ですけれども、過去にこの委員会で、「カンピロバクター」について増加傾向はなぜかと いう要因を解析して対策とか、そういうことはこの委員会でやられたことがあるのです か。 ○蟹江監視安全課長補佐 数年前にたしか議論をしていまして、そのときには「カンピ ロバクターQ&A」を整理して、今、それはホームページに掲載しておるのですが、そ ういう対応をとったという経緯があります。それから、現在は、食品安全委員会で、「カ ンピロバクター」につきまして「食品健康影響評価」、リスク評価をしておりまして、そ の結果がとりまとめられますと、関係省庁に通知されるということもございまして、そ れを受けてまた新たな対応をとる必要が出てくるかもしれません。 ○宮村部会長 ほかによろしいでしょうか。なけれは、事務局からほかに追加すること はありますか。 ○蟹江監視安全課長補佐 参考資料の17ページを見ていただきますと、これは平成20 年度の全国厚生労働関係部局長会議の資料でございますが、中国産冷凍ギョウザの関係 の対応につきまして整理をしております。食中毒の速報対象につきまして、食中毒部会 の委員の先生方にも御意見を伺いながら、省令改正をして、重篤な患者が発生した場合 と、それから化学物質に起因する場合、これを速報対象に加えて、既に省令改正をして おります。それから、事業者から保健所への食品に係る健康被害の情報、これも報告体 制を整理するようにガイドラインを改正して対応しているところでございます。  それから、「今後の取組」のところにございますが、平成21年度、4月の予定でござ いますけれども、監視安全課の中に「食中毒被害情報管理室」という部屋を設置して、 食中毒被害情報の集約とか解析体制を強化するという、これは予算関係ですので、予算 が通れば4月から設置されるということでございます。  都道府県に対しましては、引き続き、食中毒事件につきまして、厚生労働省への報告 の徹底をお願いしております。  19ページ、20ページは、私どもの方で作成をしてホームページに掲載しておりますパ ンフレットでございます。特に家庭での食中毒の発生も毎年ございますので、そういう 意味でわかりやすくパンフレットを作成して配布をしておるという状況でございます。  以上でございます。 ○宮村部会長 ありがとうございました。  それでは、次に移りたいと思います。平成19年度、20年度の食中毒発生状況につい て報告をいただきましたが、今日、特別に、平成19年度に本部会においてノロウイルス 食中毒対策に係る提言をとりまとめました。これは非常に大きなことなのですが、その 後、厚生労働省や関係機関における提言を踏まえた対応について、事務局から御報告を いただきたいと思います。お願いします。 ○蟹江監視安全課長補佐 資料3でございます。「ノロウイルス食中毒対策について(提 言)」を踏まえた対応ということで、表と裏で整理をしております。それから、参考資料 でございますけれども、21ページと22ページ、21ページがノロウイルスによる食中毒 の発生状況の推移を示したグラフでございます。それから、22ページが、国立感染症研 究所の感染症発生動向調査のデータから、直近5年のものをピックアップして整理をし たものでございまして、いずれも平成18年、19年シーズンにピークが見られていると いうことがわかると思います。  資料3でございますけれども、参考資料23ページ以降が食中毒部会でまとめていただ いた提言になっております。この提言を踏まえて対応した内容になっております。  まず1つ目、19年10月12日におまとめをいただきまして、各都道府県に対しまして、 ノロウイルス食中毒の発生防止に係る関係者への指導、それから食中毒調査の適切な実 施について要請をしております。これは自治体レベルで134カ所に通知をしております。 それから、農林水産省に対しましては、関係機関、特に関係事業者への周知を要請して おります。国土交通省に対しましては、下水道対策についても一部提言の中に盛り込ま れておりますので、それにつきまして要請をしております。それから、文部科学省に対 しまして、学校給食の衛生対策について要請をしております。それから、私どもの方か ら特に関係のあります団体、日本食品衛生協会、全国漁業共同組合連合会、全国旅館生 活衛生同業組合連合会に対しまして、ノロウイルス食中毒対策に取り組むこと、それか ら会員への周知を要請いたしました。それと、6番目ですけれども、提言の内容につき まして、プレスリリースで公表し、ホームページにも掲載をしております。  2番目、「発生及び拡大防止対策並びに発生状況の迅速な把握」ということで、それ ぞれ個別の内容になりますけれども、まず、下水等環境汚染対策でございます。これは 提言の参考資料25ページの中段辺りになりますけれども、下水処理の関係とか、あるい は二枚貝の産地での対応について提言されております。その関係で、まず、国土交通省 におきましては、下水処理場におけるノロウイルス対策として、ノロウイルスを除去す る膜分離活性汚泥法の技術開発を進めておるというように聞いております。それから、 下水処理場におけるノロウイルスの挙動実態の把握に努める予定であるということと、 下水道整備の補助の対象を拡大しながら進めていくということです。  それから、農林水産省におきましては、マガキの生産段階におけるノロウイルス汚染 のリスク低減のための措置を講じているということで、研究事業とか、その研究成果の 情報共有とか、それから生産段階でのノロウイルスの監視体制の強化を目的として、ノ ロウイルス感染症の発生状況の把握とか、カキ養殖場とカキの検査、そういったものに 対する交付金による支援を行っている。それを受けまして、生産地におきましては、自 主検査実施要領を作成し、ノロウイルスの検査、その結果の公表、結果に応じた出荷自 粛や用途の変更というような対応を自主的に取り組んでいるということでございます。  それから、調理施設における対策といたしまして、厚生労働省が作成し、都道府県あ てに通知をしております「大量調理施設衛生管理マニュアル」につきまして、この提言 の内容を盛り込んだ形で改正をしておりまして、これは任意ですけれども、1カ月間の 意見募集、それから、最終的には食中毒部会の先生方にも内容を確認いただいて、改正 をして、都道府県あてに、それから関係機関にも通知をしております。  文部科学省におきましては、学校給食法に基づきまして「学校給食衛生管理基準」を 制定する手続中であると聞いております。その中には、提言を踏まえて、ノロウイルス 対策も含めておるということで、これは学校給食法が改正になりまして、この「学校給 食衛生管理基準」、これは告示になるそうですが、告示での制定ということで、今、手続 を進めておるというように聞いております。  それから、食中毒・感染症調査の適切な実施ということで、これは国立感染症研究所 の谷口先生にお願いをいたしまして、「ノロウイルス集団発生事例に対して感染症及び食 品部局が共同で実施する初期実施疫学調査及び微生物検査のポイント」ということでお まとめいただいて、都道府県あてに通知をしております。このマニュアルでございます けれども、最終的な標準的なマニュアル作成に向けて、現場からの意見ですとか実地テ ストを経て、逐次追加・改訂をしていく予定というように聞いております。  最後、調査研究でございますけれども、「食品中のウイルスの制御に関する研究」とい うことで、国立感染症研究所ウイルス第二部の武田先生に主任研究者をお願いしており まして、食品中の汚染実態調査とか、あるいは調理従事者の不顕性感染実態調査、免疫 学的手法を用いましたウイルス遺伝子の検出及び不活性化条件の検討について調査研究 をしていただいております。  以上が提言を踏まえました対応でございます。 ○宮村部会長 ありがとうございました。今のノロウイルス食中毒対策ということで、 この分科会で平成19年の提言をした後、このようなフォローがなされております。ただ いまの御説明について、御意見、御質問等ありますか。 ○蟹江監視安全課長補佐 本日、前田委員の方から「東京都の中間報告」という資料を 提出いただいておりまして、もし差し支えなれば、少し御説明をいただければと思いま す。 ○宮村部会長 そこのさわりを是非御説明になってください。 ○前田委員 お時間をいただきましてありがとうございます。  私ども東京都でも、平成18年初頭のノロウイルスの集団感染の多発を受けまして、私 どもの研究センターに「ノロウイルス対策緊急タスクフォース事業」が発足いたしてお ります。内容としましては、食中毒に限らず、広く人・人感染も含めて、ノロウイルス の感染とかを予防するための、かなり実務的な内容について調査研究をしていこうとい うことで、例えば吐物をどのように処理することがよいかという点でありますとか、あ るいは発生時等にどのような検査方法を行うかといったさまざまな、本当に現場での対 応に役に立つものということでタスクフォースをつくっております。一応、18年から19 年、19年から20年と、2か年にわたりまして今まで行っておりまして、今年秋までの 3か年計画で実施している事業でございます。  お手元の資料、最初の方は18年から19年にかけての1年度目の中間報告書でござい まして、このときには、1枚開いていただきますと「はじめに」とございますけれども、 目次がございますけれども、18年初頭に発生した集団感染事業の主な分析でございます とか、吐物の処理についての意見書、検査法の確認ということを行っています。  例えばということで、8ページ目にカラー写真が出ておりますけれども、実際、嘔吐 してしまったとき、どこまで実はウイルスが飛んでいるかというようなことで、このよ うな検証実験を行っておりまして、一応、私どもの検証実験では、吐物の中心距離から 2メートルぐらいのところまではウイルスが飛散しているというようなことがわかりま して、施設等で吐物を処理する際には2メートルの周辺から徐々に消毒をしていくとい うことが正しいということですとか、あるいは、場合によって、アイロンですとか布団 乾燥機で何とかなるのではないかというようなことを試される方がいらっしゃいました ので、それをもうちょっと、温度等を検証しまして、推奨される温度まではこれで上が らないので、そういう処理は難しいというような実験をさせていただいております。そ れ以外にも、その後は、検査法についての検討ということで、リアルタイムPCR法と、 ほかの幾つかの市販の方法がございますので、それの検査感度の比較等をさせていただ いているということをしております。  それから、それぞれの方向についての少し研究論文的な内容でございます。一部のも のについては既に学会誌等に報告させていただいています。  それから、中ほどから後に「第2報」というものがございまして、これが19年から の1年間、昨年秋までの1か年で調査研究した内容でございます。そちらにつきまして は、事例分析でございますとかさまざまなことを行っておりますが、私どもとして一歩 前進したかなと思っておりますのは、この第2報目のつづりの12ページになりますけれ ども、こちらの部会には一番関係しておりますが、食品からのノロウイルスの検出法の 開発を行ってございまして、さまざまな添加物を細菌を添加するといったような方法で 培養するといった検査方法が開発されまして、まだこれは途上の段階でございますけれ ども、今の段階では、私どもが開発した方法ですと、いわゆる通知法よりも数倍高い回 収率が見込めるといったようなデータも出てきております。これにつきましては、検出 法のメカニズム等についても、もう少し検証する必要がございますので、まだ正式な発 表はしておりませんけれども、一応こういう形でやっておりまして、そこにございます ように、場合によりましては、市販の二枚貝から通知法で、図表の2と書いてあります けれども、通知法では検出されないものからノロウイルスが検出されるといった事例も 出てきているということでございまして、今後、こちらについては更に精査してまいり たいと思っております。  以上でございまして、基本的には、この研究は、本当に現場での対策に役立つ実務的 な研究を目指しているところでございます。以上です。 ○宮村部会長 ありがとうございました。私はいつも不思議に思っているのですけれど も、ノロウイルスによる下痢からスタートして、それはある一定の時間ウイルスが排泄 されると思うんですが、どれくらいまで排泄されるか、そういう研究というのはなされ ていますか。 ○前田委員 谷口先生の方が詳しいと思います。 ○谷口委員 日本国内ではよく存じ上げませんが、CDCの報告では2週間、最大2週 間です。 ○宮村部会長 2週間ですよね。そのころは、もう既に症状は治っていますね。その辺 りのところ、自分の同僚にも言っているのですが、なかなか調べるのが難しくて、想像 しているよりも下痢が治った後でも、インフェクシャスなウイルスは排泄され続けてい るのではないかというようなことについて、何かもっときちっとしたデータがいつも欲 しいなと思っています。 ○前田委員 私どもの1年目の中間報告の11ページに、各検査法におけるウイルス数が どれぐらいのところまで検査できるかという表が出ておりますが、基本的にはリアルタ イムPCR法が一番優れておるわけですけれども、いわゆる感染性を持つ、検出限界以 下でも、恐らく感染性は持つと考えられておりますので、恐らくリアルタイムPCR法 で追っていても、そこで陰性となったとしても、感染性がないという証明にはならない と思います。非常にそこら辺は難しいところです。特に、食中毒等発生した後に、食品 従事者の方をいつから従事再開するかといったときには、この辺、非常に厳しい問題が ございます。 ○宮村部会長 ありがとうございました。ほかに、今の事務局からの対応の御説明につ いてコメント等、御意見ありますか。谷口先生。 ○谷口委員 前田先生に教えていただきたいのですが、よく布団に嘔吐してどうしたら いいかという質問がいっぱい来るのですが、これまでの御経験から何が一番いいと思わ れますか。 ○前田委員 専門業者に洗浄に出してくださいということにしております。 ○宮村部会長 ほかに。 ○西渕委員 私も前田先生にちょっと教えていただきたいのです。この御報告の第2部 の12ページの中に図表の2があって、市販二枚貝からのノロウイルスの検出状況という ところがあって、調査された期間が5月から9月になっているのですが、ノロが出るの は主に冬場が中心で、その季節に貝に蓄積されると理解しているのですけれども、この あたりの季節のデータとかいうのは調べられたことはあるのでしょうか。 ○前田委員 この中間報告につきましては、毎年、ノロウイルスの流行時期前に中間報 告を出して注意喚起をするという関係で、9月までのデータを載せさせていただいてお りますけれども、基本的には今年度いっぱい、冬時期も行っております。ですので、こ の時期につきましては、ここにありますように、冷凍で売られていたものと、夏場に売 られております岩ガキ等を調査しているということで、今シーズンに入りまして、更に は生食用のカキにつきましても検査をさせていただいております。 ○宮村部会長 ありがとうございました。  それでは、今日用意しました演題は終わりですけれども、この機会に、例えば今日の 議論を踏まえて、事務局を介して、こんな検討事項を勉強していこうとか、ターゲット にして宿題といいますか、そういうことが委員の先生方からもしありましたら伺って、 事務局からも検討していただき、この分科会で調べたいと思いますけれども、何かそう いうことがありますでしょうか。 ○熊谷委員 今日お配りいただきました資料ですけれども、食中毒の発生状況の統計で、 組み合わせの表が今もあるかどうか知らないのですが、それも資料としてあった方がい いかなというように思います。施設別、原因物質別、それを組み合わせした表です。今 現在はあるのですか。 ○蟹江監視安全課長補佐 今日お配りしている資料は部会用の資料ということで、最終 的な統計資料につきましては、病因物質別、原因物質別も整理をして公表するようにい たしております。例えば、毎年「食品衛生研究」に掲載しております「食中毒発生状況」 がありますけれども、必要であれば、私どもの方から先生方に送付することも可能です。 ○熊谷委員 それが今日の資料にあった方がいいように思うわけなのですが、もしよろ しかったら。 ○蟹江監視安全課長補佐 わかりました。次回からお付けします。 ○宮村部会長 わかりました。それでは、平成20年度の報告は、やがてホームページ等 で公表していくということになります。   それでは、5分前ですが、予定した演題を十分ディスカッションいただきました。 どうも今日はありがとうございました。 −了− 事務局:厚生労働省医薬食品局食品安全部     監視安全課食品安全係(内線2476)