09/03/13 第6回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会議事録 第6回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会議事録 1.日時:平成21年3月13日(金) 15:00〜17:00 2.場所:厚生労働省共用第9会議室 3.出席者: <五十音順> 安西信雄委員、大川弥生委員、大橋謙策委員、木村隆次委員、齊藤秀樹委員、佐藤修一 委員、佐藤久夫委員、藤田伸輔委員 事務局  人口動態・保健統計課長、疾病傷害死因分類調査室長、国際統計標準分類専門官 4.議題  (1)事例報告  (2)国際生活機能分類の変更すべき用語について  (3)その他 5.議事内容 ○疾病傷害死因分類調査室長  それでは、そろそろ予定の時刻になりますので、第6回社会保障審議会統計分科会生 活機能分類専門委員会を開催したいと思います。  お集まりの委員の先生方、お忙しいところご出席いただきまして、ありがとうござい ます。  それでは、早速ですが、お手元の資料のご確認をさせていただきたいと思います。議 事次第、資料1−1「事例報告(安西信雄委員)」、資料1−2「事例報告(木村隆次 委員)」、資料1−3「事例報告(佐藤修一委員)」、資料1−4「事例報告(佐藤久 夫委員)」、資料2「国際生活機能分類の変更すべき用語について」、資料3「共通言 語としてのICFの教育・普及を目的とした会議の開催について(案)」でございます 。   なお、本日の欠席は大日方委員、河原委員、中川委員からご連絡をいただいてござい ます。  なお、大日方委員ですが、今アルペンスキーのワールドカップということでウィスラ ーで大会が開催中で、実はワールドカップで昨日、優勝されたという報道がありまして 、この場を借りておめでとうと述べさせていただきたいと思います。  それでは、大橋委員長、議事進行をよろしくお願いいたします。 ○大橋座長  改めましてこんにちは。年度末の大変お忙しい中をありがとうございました。  それでは、第6回生活機能分類専門委員会を始めたいと思いますが、前回に引き続き まして大変お忙しい中を今日は安西委員、木村委員、佐藤修一委員、佐藤久夫委員の4 人の方に実践研究分野でどのような事例を持っていらっしゃるのかご報告いただきたい と思います。そのことに関して、その他のことで少しかかわらせて話をさせていただけ ればと思います。  それでは、早速ですが、あいうえお順ということで申し訳ございませんが、安西委員 、どうぞよろしくお願いします。 ○安西委員  国立精神・神経センター病院の安西でございます。少し前まで私どもの病院は「武蔵 病院」と言っておりましたけれども、去年4月から「武蔵」という2文字がなくなりま した。国府台病院が国立国際医療センターに移りましたので、病院が従来武蔵と国府台 と2つあったのですけれども武蔵だけになってしまいましたので、国立精神・神経セン ター病院となりました。「武蔵」が消えたのは私はちょっと寂しいのですけれども、時 代の流れかなと思っております。  トップバッターの名誉を与えていただきまして、ありがとうございました。レポート を拝見しますと皆さん非常に具体的にいろいろやっておられるのですけれども、精神に つきましてはこれからというところが主です。いろいろ新しい試みを始めようとしてい るところですので、トップバッターということでむしろちょっとほっとしたかなと思っ ております。よろしくお願いします。  パワーポイントでご説明させていただきます。  「精神障害領域におけるICFの活用に向けて」というタイトルにさせていただきま した。お話の内容としては、背景と実際の取り組み、取り組みの結果、現状の課題と今 後の取り組みということで、いただいたフォーマットがそうなっておりましたので、そ れに合わせてご説明させていただきます。  まず、背景ですけれども、これは先生方皆さんよくご存じのとおりだと思いますが、 精神障害分野というのは、全体の施策としてはかなり遅れたところがございまして、第 一に問題なのは諸外国と比べて格段に多い精神科の在院患者さんの存在です。人口万対 の病床数がアメリカやイギリスでは5〜10床ぐらいですけれども、日本では28床となっ ておりまして、数倍の病床があります。しかも、九十何パーセントの病床利用率です。 しかも、そういう方々が大体私と同じような世代といいますか、団塊の世代かその後ぐ らいの人たちが20〜30年前に入院して、退院できないで中高年、これから高齢を迎えよ うとしているということがございます。厚生労働省から改革ビジョンを2004年に出され まして、入院医療中心から地域生活支援中心に切り換えるという転換の時期を迎えてお ります。  第二に医療の中身といたしましては、従来、入院中心という流れがあったのは事実で ございますが、80年に出されたICIDHが精神科医療にインパクトを与えました。従来、 精神症状が治ってから退院しましょうねという流れが中心だったのですけれども、患者 さんを診るときに能力障害とか社会的不利といった多元的に診る必要があるということ がICIDHから提起されました。  これは精神科医に対して大きな影響を与えまして、当時、障害構造論が80年代から90 年にかけて非常に活発に議論されました。流れとしては、症状だけではなくて生活面を 取り上げて、それに注目する必要があるということでございます。  第三に日本だけではなくて国際的にも治療目標を従来の精神症状改善からQOL、生 活の改善に向けるべきだという流れがかなり明確になってきまして、第四にそういった 中で治療方法として対人関係の改善に注目する、私はSSTというのをやっているので すが、あと認知機能の障害に働きかける認知リハとか認知行動療法といったものが、だ んだん日本でも活発になってきています。  第五に、精神科治療ということを考えるときに、ご本人の主体的な参画といいますか 、ご本人が病気を理解して治療に積極的に加わる、あるいはご本人の自分が人生をもう 一回やっていこうという意欲とか、実存といったものを重視するアドヒアランスとかリ カバリーの流れが大きくなってきまして、こういうものがICFとうまくかみ合ってく れるといいかなと思うのですが、現状ではまだしっかりかみ合っていなくて、かみ合う 可能性を秘めているという状況かと思います。  第六に佐藤先生にもご協力いただいて、介護ニーズの評価とか、障害程度区分とかい ろいろやっておったのですが、そういう中で精神障害に関してもADL、IADLの評価と か、こういった社会的機能水準といったものの評価をきちんとやらなければいけないと いうことがありまして、従来の検討の過程でICFも使わせていただいたという経過が ございます。  先ほどの人口万対の病床数が多いということで、これは皆さんよくご存じのことかと 思いますけれども、補足してご説明させていただきます。米国は黒線でございます。米 国は1955年ごろ人口万対55床でピークだったのです。「カッコーの巣の上で」というあ の時代ですけれども、1963年のケネディ教書の辺から急激に病床を減らしまして、現在 5〜6床と言われています。人口万対の病床数は諸外国では減っていたのですが、日本 では増え続けてきまして、人口万対28床、英米の2〜3倍以上といわれています。よ うやく最近減りつつあるという状況です。  改革ビジョンはご承知のように、入院医療中心から地域生活支援中心へと転換すると いうことで、これはかなり現場に大きな影響を与えまして、総論としては誰も反対する 人はいないという状況です。  実際の取り組みということで、今回ご紹介させていただきたいのは5点でございます 。  1番目の福島県立医大の丹羽真一先生は、非常に熱心にICFをやっておられます。 丹羽先生はお会いするたびに「ICFをしっかりやりなさい」と励まして下さいます。 認知機能の研究をずっとやっておられて、そういった流れでICFを活用していくとい う方向は非常に重要だということを認識して推奨しておられます。  2番目に長崎の教授を長く勤めておられた中根先生、ICFを導入してICD−10とI CFを結びつけたチャートをつくっておられますので、それをご紹介させていただきま す。  3番目が、私どもの病院の作業療法室の仕事です。作業療法士の皆さんにICFは重 要だから作業療法の客観評価にICFを使えないかと提案しましたら、試案をつくって くれまして、自分たちでトライアルをやってみた感想を聞いておりますので、ご紹介さ せていただきたいと思います。  4番目は医療観察法の評価の中で、例えば、「入院時基本情報管理シート」とか全国 で統一的なフォーマットがあるのですけれども、その中にICFが使われております。 それをご紹介させていただきます。  最後が、精神保健研究所の岡田先生のお仕事です。司法研究所の先生ですけれども、 ICFに基づく「精神医療実施計画書」というのをつくっておられますので、それをご 紹介させていただきたいと思います。この順番に進めたいと思います。  ちょっとスライドが汚いですが、これは丹羽先生が作成されたものです。ICFを用 いた精神障害患者の生活状況の評価ということで、左側に具体的な事例が書いてござい まして、右側の方が評価項目でICFの項目が書かれています。プラスと書かれたのが 問題なくやられていると。マイナスは障害ありという評価になっております。  ちょっと読みにくいのですけれども、男性56歳、もともと真面目で素直な性格の方で すが、会社在職中に統合失調症を発症しまして、精神科に2回の入院経験がございます 。両親が亡くなられて生活に支障を来しています。ケースワーカーを紹介されて生活支 援が開始されたということです。右側に健康状態としては統合失調症があって問題があ る。資産として持ち家はあるということです。コミュニティ、地域生活に問題がありま す。  2番目の欄ですけれども、保健師が訪問してみると、庭木は茂り、家には新聞紙とご みが散在いうことでホームヘルパーを入れることになったということです。右側に保健 の専門職がプラス、家庭用品の管理がマイナス、調理以外の家事マイナスというように 具体的に詳細に症例を評価して、ICDの項目に当てはめて評価するということを綿密 にやっておられます。  3番目は、発音が不明瞭でコミュニケーションがうまくいかない。  4番目は、ごみ出しが難しい。この統合失調症をはじめ地域で生活している精神障害 の患者さんにどういうケアが必要かということで、我々はタイムスタディとかいろいろ やってみたのですけれども、ケアに一番時間がかかっているのはごみ出しですね。いか に地域で生活する上でごみ出しが難しいか、近隣とのトラブルのもとになっているかと いうのがよくわかります。精神障害の人が一番苦手な分野です。整理以外の家事がマイ ナスとなっております。  一番下は、ごみがいっぱいになるとどうしていいかわからなかったということです。 ホームヘルパーさんが来てくれて何とかやれるようになったということで、右側に保健 サービスがプラスとなっております。  こういった事柄をこの人の地域生活ということで丹羽先生たちが要因を求めまして、 一番左がICFの機能水準、「機能」に関係したところで、真ん中が「参加と活動」。 下の方が「環境」になっています。こういった要因間の関連を明らかにするということ です。  この人がちゃんと生活できるように支援するために、ごみの問題についてはソーシャ ルワーカーが生活の構造化の支援をする。ホームヘルパーが掃除とかごみ処理をやって 、サポートをする。一番左の機能障害に関しましては、精神科医療で対応するというこ とで、機能障害の内容としては注意機能とか情動機能、思考とか高次認知機能といった ものの障害がございます。  丹羽先生のコメントとしては、「ICFが生物学的、個人的、社会的観点における健 康に関する首尾一貫した観点を提示しているということで、再発予防とか生物・心理・ 社会的、アプローチ、チーム医療をやりやすくなっている」ということが述べられてお ります。以上が丹羽先生らの分析のご紹介でございます。  2番目に、長崎の中根允文先生ですけれども、中根先生が精神疾患に特に関係がある ICFの評価項目として、スライドのようなものがありますよということを挙げられて おられます。心身機能、精神機能の全般的精神機能とか個別的精神機能。活動と参加に は、学習と知識の応用とか一般的課題、コミュニケーションといった項目がございます 。  中根先生はこのように表にまとめておられまして、ICDの評価として、第1軸に臨 床診断、第2軸に臨床診断にかかわる背景因子を挙げておられます。第3軸としてIC Fを挙げたらどうかというご提案です。生活機能と障害の中に下位項目として、心身機 能、身体機能、活動・参加、環境因子の項目があります。先ほどの項目の中から該当す るものをここに書いてくださいということで、第1、第2、第3評価を入れてください となっています。慣れていないと書きにくいかなという感じはありますけれども、慣れ た方にはICDとICFがまとめられているのは簡便ではないかという気がいたします 。  3番目に、私どもの病院で作業療法士が現在取り組んでくれている作業療法の指示箋 へのICF評価項目の組入れの試みです。これは定期的に評価していって、作業療法を やってから進歩しているかどうかということを見られないかということをやりたいわけ です。  左側の一番上に、情動機能とか活力と活動、これは従来から評価していた項目は残し たいということで挙げています。その下にございますセルフケアとかコミュニケーショ ンといったところがICFの項目です。右側には家庭生活とか学習の評価がございます 。作業療法に関連していると思われる項目を作業療法士がピックアップして挙げている わけです。大項目と小さな文字で書いてあるのが中項目ということになります。  これを実際にそれぞれ何例かずつ評価してもらいました。その結果が右にございます 。種目によって評価できるものとできないものがあるというのが第1でして、スポーツ ではコミュニケーションや対人関係は評価できるけれども、学習というのは評価が難し い。2番目に、同じ統合失調症でも作業療法の目的やターゲットが違うので、必要な項 目に絞っていくのはどうしたらいいだろうかということです。3番目に作業療法におけ る評価は実行状況といいますか、支援なしでの実行を評価しているわけです。こういっ た項目の評価を検討していく中で、作業療法(OT)だけで評価するのではなくて、治 療計画を考えるときに、多職種で出し合って評価した方がいいですねという話がござい ました。それから、こういった項目を反映するテストバッテリーをつくって、継時的に 評価できるといいかなという議論がございました。  最後に2つほど紹介させていただきます。  医療観察保護病棟の研修のガイドラインがございまして、「基本情報管理シート」に ICFの項目が取り入れられています。真ん中の部分にセルフケアと社会的な適正、対 人関係、日課の遂行、ストレスとその他の心理的要求への対処、経済生活という項目が あります。現在、精神障害を持っていて重大犯罪を犯した方々、四百数十名が全国で入 院しておりますが、統一的なフォーマットで評価されています。こういった評価が入院 時と退院時と通所中もこの評価が行われています。これは将来、集計できることがある かなという気がいたします。  これは最後のご紹介ですけれども、国立精神・神経センターの精神保健研究所司法部 の室長さんの岡田先生が『精神医学』に出しているものです。「ICFに基づく精神医 療実施計画書」です。岡田先生たちはこういった司法病棟での評価にICFを使ってみ ようということでしたが、一般医療にも使えるのではないか、そういうものをつくりた いということで、こういうふうにつくられました。  左側が表面、右側が裏面ということになります。裏面は学習と知識の応用とか、一般 的な課題と要求。参加と活動に関連する項目が挙げられておりまして、例えば、一番上 の学習と知識で見ますと評価が3つございます。「実行状況」と「能力マイナス支援」 、支援のない状況での能力。それから、「能力プラス支援」というのは支援のある状況 での能力ということになります。通常は実行状況、例えば、入院している患者さんは病 棟内での行動を見るわけですけれども、ナースなどの支援がないときにどうなのか。退 院したらその人がどう行動できるかというのが、能力マイナス支援ということになりま す。ソーシャルワーカーとか訪問看護をつけた場合にどうなるかというのが「能力プラ ス支援」ということになります。  それぞれ例えば病院生活、社会生活を通じて自分から本を読んだりすることはないと か、援助すればできるとか、そういうことが書かれております。この評価方法はうまく やれると非常に可能性があるかなと思うわけです。能力のない状況、支援がない状況で 落ちている、そのことがどうしても退院後、自立生活に必要であるものはリハビリテー ション等で能力を開発する必要がある。しかし、どうしても能力開発ができないものに 関しては、訪問看護とかヘルパーなどで援助をしていく。そういった示唆を与える評価 になるかなと思いました。  岡田先生に「これを実行していますか」と聞きますと、残念ながら実行できていない といところでした。今後の取り組みとしましては、こういったアイデアをどうやって現 場で使うかということが重要だと思います。  ICF導入による活動の改善の事例はまだ余り明確ではないのですけれども、今後使 えるかなと思います。  1つは、ICFを使うことで系統的な評価ができて、大きな見落としを防げるのでは ないかということです。2つ目に、本人の希望を聞き出す、ニュートラルな表現で特性 を表現できるということです。ご本人とこのシートを見ながらこの点はどうだろうねと 聞くときに聞きやすいですね。「感情が平板」とか、「自己中心的」とかそういう評価 項目があると、ご本人と一緒に評価できないですけれども、ICFはニュートラルです から、評価を見ながら評価できる。それから、4番目、実行状況とともに「能力マイナ ス支援」、「プラス支援」を区別して評価することで支援の必要性とか改善可能性を示 すとか、リハビリテーションの必要性と同時にケアにおける援助ニーズを明らかにする ことができるのではないかということです。  最後のスライドです。現状の課題と今後の取組みです。理念としては皆さんICFが 重要だと、精神科医はほとんど皆そう言うわけですけれども、現場で実践するのは大変 です。この辺のバランスをどうするかというのが課題かと思われます。  統合失調症における生活障害と認知機能障害については、最近ますます重要性が認識 されているのですけれども、まだスタンダードがないのですよね。スタンダードがあれ ばそれをICFとくっつければいいのですが、何が基本的なものかというのはまだ検討 中です。アメリカではマトリックス(MATRIX)というのがあります。従来、薬効 評価は動物実験でやっていたのですけれども、認知機能の評価を正確にやって薬効開発 に役立てたいという流れがございます。それは精神障害を持つ人の本質的な特性を反映 する指標は何かと関連します。ICFの評価項目の中のこれが本質的な特性に関連する ので、特に重要というのを選び出してコアセットとして評価に役立てるという方向性が あるかなと思います。現場では余り網羅的な評価はできないので、「これは関係がある よ」という項目を抽出してくるという作業がどこかで必要ではないか。こういったこと を治療計画に生かしていけると効果が上がるかなと、そういう期待感を持っております 。  以上でございます。 ○大橋座長  どうもありがとうございました。  質疑応答をいろいろやりたくなってしまいますけれども、どうしましょうか。少し時 間を取りますか。何かご質問ありますか。 ○佐藤(久)委員  後で述べる私の資料の中でも岡田先生を紹介して、日本で初めての本格的なICFの 活用と言えるのではないかと。概念モデルだけではなくて、第1レベルの項目を並べて 、かつ、第2レベルの項目を参考までに書いていますよね。それで実行状況と支援なし の能力と支援ありの能力ということで整理して、プラスとマイナスも両方とも見るとか 、そういう点でモデルと分類といろいろな要素を総合的に活用しているという点で非常 に期待をしているのですけれども、2007年1月の『精神医学』に出して以降、ずっとよ く見ているのだけれども、その後がいつ出てくるか、いつ出てくるかと思っているので すが、その後使われていないというのはどういうことなのでしょうか。 ○安西委員  昨日、岡田先生にお会いして話を聞いてきたのですけれども、その理由としてはやは り現場に勧めてもつけるのは大変だということでした。現場の方はなかなかやりましょ うとはならないというところじゃないでしょうか。 ○佐藤(久)委員  時間がかかり過ぎるということですか。 ○安西委員  慣れれば1時間ぐらいでできるのではないか。あるいはもっと慣れれば、もっと短く なるかしれないというお話でした。 ○大橋座長  私どもも1995〜1996年に自己実現サービスアセスメントシートというのをつくったこ とがあるのですね。そこでは実行状況と能力と生活の必要性と本人の意欲ということを 意識してアセスメントシートをつくったのですね。今の話の中では必要性のところがも う一つ十分ではないのかもしれませんが、やはり必要性があるかないかというのは大き いですよね。それは多分、能力プラス支援の支援をどう考えるかということにもなって くるのかもしませんが。  それから、意欲の問題というのもあるのだろう思いますね。同じようにアセスメント シートをやったら膨大になりまして、何回かやりましたけれども、正直なところちょっ とくたびれたのです。だから、それは簡略化しないとならないとは思っているのですけ れども、多分岡田先生も同じような思いなのでしょうかね。膨大過ぎて、なかなかアセ スメントしにくいということなのですかね。 ○安西委員  1つは、従来、精神科で入院医療が中心で、自分で地域で生活できる人は地域で生活 しているけれども、援助が必要な人たちがかなり病院の中で生活している。手をかけて 外で生活させるといいますか、支援するというのが十分行われていないということと、 こういう手間のかかるアセスメントは皆さんなかなかやらないということと関係がある かもしれないですね。手間をかけても重要だということであれば、あるいはこういった アセスメントが例えば、診療報酬とか何かにつながるということであれば、もっとみん なやると思うのですけれども。 ○佐藤(久)委員  その関連で、支援なしでの能力と支援があればこういうことができるというものが並 べられていましたけれども、訓練とか治療によって将来支援なしでできるであろう能力 というか、そういう4番目の評価点みたいなものが必要なんじゃないでしょうか。それ がないと、計画的に治療しようとか訓練しようという実践につながらないのかなと。 ○安西委員  4番目といいますと。 ○佐藤(久)委員  あと何か月とか1年とか入院期間中にこういう支援、こういう治療、訓練をすれば、 支援なしでも1人でこういうことができるという、大川委員は前からそういうことを言 われていたと思うのですけれども。 ○大橋座長  今の問題は全体に絡むことで、多分木村委員はまさにそのポイントになってくるので 後でやりましょうか。とりあえず先へ進めさせていただいてよろしいでしょうか。どう もありがとうございました。  それでは、木村委員、よろしくお願いします。 ○木村委員  私の資料は1−2−1と資料1−2−2です。スライド編が1−2−1で、文字にし たものが1−2−2です。  イメージだけとらえていただければと思います。介護保険は、平成18年に大胆な改革 をしました。介護保険が平成12年に始まって、当初はどちらかというと予防給付、つま り要介護認定で言えば要支援者。それから、介護給付、要介護1から5の方々だけにサ ービス提供されているという制度だったのですね。それを右から2つ目の要支援状態に ある人たちにならないように、どういう手を打つかということも平成17年に議論されま した。その1つ前が特定高齢者という名称で、一番左がとても元気な高齢者という感じ です。我々ケアマネジメントをやっている立場からすると、できるだけ左側に、左側に いるようにということをやったわけです。  今日紹介するのは、右から2つ目のケアマネジメントのやり方といいますか、プロセ スといいますか、それを国が様式統一して前に進めようというのが今日紹介するもので す。これを開発するための研究班に大川委員も一緒にいたので、私の足りないところは 補足していただければと思ってまいりました。  では、どういうことかという構造的な話をしますと、一番上に地域の高齢者がいます 。介護サービスが必要だと考えれば、当然本人の申請もありますけれども、近くにいる ケアマネージャーほかいろいろな方々の手続で右側の要介護認定を受けようとします。 要介護1〜5となりますと右に落ちていきますので、居宅介護支援事業所のケアマネー ジャーがケアマネジメントをします。要支援者に落ちてきますと、今は、地域包括支援 センターにいる(ここはケアマネージャーとは言わずに課題分析者という名称をマニュ アルの中では使っています。箱は地域包括支援センターなのですけれども、正確に法律 用語を使うと介護予防支援事業所というものが二枚看板で中にあります。)課題分析者 たちが、まさに介護予防ケアマネジメントをやっています。その人たち用につくったの がこのマニュアルであるという位置付けで考えていただきたいと思います。  ですが、今、右の流れを言いましたけれども、地域の高齢者で少し弱っている人たち をスクリーニングかけましょうということで、25項目の基本チェックリストをつくりま した。原則地域の65歳以上の高齢者全員にチェックして、自分自身、自覚してどこの機 能が弱ってきたかということですが、これも領域が1〜5番は社会とのかかわりとか、 6〜10番がいわゆる運動機能ですね。11〜12番が栄養とか、13〜15番が口腔機能、16〜 17番が閉じこもり。18〜20番がいわゆる認知能というものを見ていると。21〜25番がう つということですね。まさに生活機能全般を自覚するチェックシートをつくったわけで す。そういうものを左上のスクリーニングのところで使っていって、ある程度機能が落 ちてきているのではないかという方々を地域包括支援センターにつないで、今日お話し するケアマネジメントを展開しようという話です。  そういうことで、少し前段が長くなりましたけれども、資料1−2−1の資料のポイ ントのみ説明します、全部やると1時間ぐらいかかってしまうので。特に重視したのは 、アセスメントの視点です。そういうことで、まずアセスメントをしっかりやっていこ うと。いろいろな領域から見ていこうということで、まず構造的につくりました。  目的は介護予防マネジメントとはということですけれども、要介護状態になることを できる限り予防するために、本人ができることはできる限り本人が行うことを基本にと いうことなのです。この改革の前は、私どもケアマネージャーは何をしていたかという と、できないことを補ってしまっていたのですね、ここを改めるべく。そうではなくて 、本人にやらせてみたらできる、そういうものを見つけて、まずご本人がやる、いわゆ るセルフケアですね。そこに着目してやろうということです。本人ができることを基本 に、そして、利用者の生活機能の向上に対する意欲を引き出そうということで、サービ ス利用後の生活を具体にわかりやすくする。例えば、資料の中には入っていませんけれ ども、当時は10mを何秒で歩いて、それがどんどん縮まっていったらいいということで すね。それは手段なのですけれども、目的はきっちり歩けるようになって階段の上り下 りができたら旅行に行けるよねとか、例えば、大都会にいる孫の顔を見に行けるよねと か、そういう具体的なイメージですね。要するに、運動をして10m歩行を何秒縮めるか ではなくて、その先にある、それができるようになったら何ができるようになるかをイ メージしてやれるようにしましょうということで、具体的な日常生活における行為につ いての目標を明確にして、まずはセルフケア(自動)。次に地域のインフォーマル・福 祉サービス(共助)、そして、それでもだめだったら公的な介護保険サービス(公助) という順番でいこうということで、達成状況をきっちり評価していくということも計画 の見直しをするための、いわゆるモニタリングということでありました。今ほど話した ことは、このスライドでその当時の問題点が上でして、やはり目指すべきは利用者の自 立に向けた目標志向型のプランだよねということで、その当時の研究班で考えてやりま した。  ポイントは3つあるのだと思います。今言いました目標の共有ということですが、や はりご本人がわからないのですね。ただサービスを入れてもらって買い物できないから 買い物してきてもらえれば楽だとか、そういうものではなくて一緒に買い物に行きまし ょうとか、サービスを提供する側も助けるだけではなくて、ご本人にやってもらうとい うことの情報を共有する、目標を共有するということが大事ですよねということがまず ありました。  それから、この後説明します将来の改善の見込みに基づいたアセスメント。例えば、 今もそうなのですけれども、ここにいる分析する人たちは保健師であり、主任介護支援 専門員であり、社会福祉士でありという3方向からの視点ということを入れるという新 しい制度ができましたけれども、その当時はやはり介護福祉士を中心とする介護職の方 々が多かったので、今ほど説明がありました医療的なニーズのところとかはなかなか見 ようとしません。具体的に何か手伝ったらいいのではないかと、そんな感じの角度でや っていたということがありますので、そうではなくて、いろいろな個々の利用者ごとに それぞれのいわゆる生活機能をきちんと見ていくという視点を入れていきましょうと。 それから、3番目にありますけれども、先ほど議論がありました、明確な目標を持つに は時間軸も入れようと。例えば、いつまでにどの程度に向上するのかというものを具体 的にご本人に話をして、サービス提供者、ご本人と目標を共有して前に進めようと、こ れをまさにポイントとしてやろうねということで進みました。  当然、ケアマネジメントのプロセスですので、アセスメントからケアプランを作成し 、そしてサービスを提供していって、その後にきちんと評価をしようと。今回この仕組 みとしていいなと思っているのは、課題分析した後にサービス事業提供するわけですけ れども、その評価は地域包括支援センターにいる保健師であり、主任介護支援専門員、 社会福祉士であると、第三者評価を入れるような形にしてあるのですね、この国の仕組 みは。そういうことで非常によかったと思います。  スライドには出てこないことで言いますと、最初の2枚ぐらいの図をイメージしてい ただきたいのですが、当時切り替えのときに要介護1の一部の人たちが要支援者になっ たわけです。そうしますと、当時のケアマネージャーがつくっていたケアプランという のは、やはりお手伝いするケアプランばかりだったというのが、その後地域包括支援セ ンターでしっかりモニタリングというか、評価した人たちから聞こえてきました。です から、今回統一した介護予防マネジメントの手順とかアセスメントの方法とかそういう ものをやって、当時言われた生活不活発病というものを防止するということでは非常に 効果的だったのではないかということが言われています。  ただ、更に予防の中で新聞等でごらんになった方々もおられると思うのですけれども 、個別でいきますと口腔機能向上とか栄養改善のところはアセスメントの視点がどうし ても抜けてしまって、まだまだ宿題として残っているだろうということはあります。で から、そこのところを今回の改正で徹底して口腔機能も栄養改善もしっかり見て、いわ ゆる運動機能ばかりを見るのではないということも今回2年半やってきて反省している ところです。  そういうことでずっと進めていきますと、こういうシートが出てまいります。これが 統一したフォーマットなのですが、今日お話ししたいのは一番左側に領域ごとにしっか り視点を当ててやりましょうということで、お手元の資料1−2−2の1ページの下か ら「健康状態について」ということで主治医意見書とか生活機能評価、基本情報からと ってくるようにマニュアルがなっておりますし、それから、2ページにまいりまして、 真ん中ほど下に「運動・移動について」、それから、下の段に「日常生活(家庭生活) について」。それから、3ページ目の隣の上から6行目ぐらいのところに「社会参加、 対人関係・コミュニケーションについて」、その次に「健康管理について」ということ で、四角の枠でチェックするようにしますと16項目ほどあります。これはまさにICF にあります身体機能から活動から社会参加の流れで、そういうことをまさにいろいろな 領域、角度からアセスメントをし、その中でご本人がどういう意向を持っているかとい うことを左から順番に右に流れていくのですけれども、最初の左側の部分だけ飛び出し ているのを持ってきましたが、その領域をいろいろな角度から見ていって、生活機能低 下の原因を本人・家族からいろいろ聞きながら、そして、ご本人のやる気を聞きながら 課題を見つけ出して総合的にどうするかということですね。そして、具体的に目標を決 めてサービスをどういうふうに組み合わせていくかという流れになっています。  今日の中に入っている事例は、入院期間が非常に長くなった女性なのですけれども、 自分で料理をつくりたい、そして、自宅で暮らしたいという形のことが見えてくるので すね。娘さんがいて、ちょっと離れて暮らしているのですが、結果としてデイサービス 等を使って調理はトレーニングしていくのですけれども、やはり誰か一緒にご飯を食べ てくれる人がいないとつくらないよねという話で、お嬢さんが帰ってきたときに一緒に つくって、一緒に食べるとか、そういう自分だけでもやりたいけど何か不安がある。そ のときにヘルパーさんが横にいて一緒につくって食べてみたい。たまには娘さんが帰っ てきて一緒につくったりということで、まさにご本人の自分で調理して自分で食べてい きたい、そういう総合的な課題に対して解決していくプロセスを事例として紹介して、 研修会の中で展開していっているところです。地域包括支援センターに勤務する人たち は、必ずこの研修を受けなくてはいけなくなっております。  また、この様式の開発には時間がない中での大変な作業で、時間軸でいいますと、平 成17年夏に2回、1泊2日の合宿をしてこの方向をまとめていって、11月ぐらいに形を 決めて、12月辺りから地域包括支援センターに勤務する予定の方々を全国6か所だった か7か所に集めて、今みたいなことをもっと時間をかけて丁寧に、丁寧に進めていって 今に至っているということです。  やはりケアプランの作成のときに、総合的な観点から根本的な課題、例えば、テーブ ルを雑巾でふくということができないとします。そうすると掃除をしたくないというの かとか、やりたいのだけれども、ひざが痛くて、腰が痛くてできないとか、そういう根 本的なところをきっちり見ていこうという話であります。では、今は膝が痛いけれども 、痛み止めを飲んだりとか、リハビリテーションをやってそれをとって、テーブルをき れいにふくようになる。つまり、セルフケア、本人ができることが多くなるように、そ れを形としてできるようにプランをつないでいくということをやっていくということに なります。  あとは質疑の方がいいと思いますので、こういう形をやりっ放しではなくて、きっち りモニターする、それが地域包括支援センターの指導的立場の人たちが必ずこのケアプ ランの結果、それから、見直しというところにかかわっていっているというのが、今の 日本の介護保険制度の中の介護予防です。  あと1分ぐらいお時間をいただきたいのですけれども、2週間前に韓国の社会福祉士 の研究をされている教授たちが6人ほどヒアリングという形で我が協会に来ました。介 護予防に物すごい興味を持って聞き取りをして帰りました。地域支援事業の話と予防は なぜ、こういうことを日本という国は一生懸命やっているのだと。この仕組みそのもの も最初は理解するのにすごく難しかったのですけれども、今ほどのことを丁寧に、丁寧 に説明しましたら、なるほどと。いずれにしてもICFとケアマネジメントのまさにコ ラボレーションで、日本の元気な高齢者をいつまでも元気にしていくということでやっ ているのだということをお話ししましたら、韓国にはケアマネジメントがないそうで、 今1年経ってみたら、なかなかうまくいっていないらしく、こういうことを導入するか しないか私はわかりませんが、その参考にはすごくなったと後でお礼状もいただいたと ころです。  ちょっと雑多な話になりましたけれども、日本の介護保険の介護予防のマネジメント のところにはICFがきちんと理念として入って、そういうことで進んでいるというこ とです。  以上です。ありがとうございました。 ○大橋座長  ありがとうございました。  なかなか面白い、大事な報告でした。何かご質問ありますか。 ○木村委員  大川委員、補足していただけますか。 ○大川委員  非常に短い時間で一番大事なところをご報告いただいたと思っています。先ほどの安 西委員に対するご質問とも関係するのですが、実はICFを具体的に使っているという のは既にたくさんあります。ですが、ここにお出になっている先生方でも、御自分の専 門領域以外のことについては衆知が不十分だという状況であることは、まさにこの委員 会が啓発のためにつくれたという目的を生かしているところなのかなとも思いました。  今の木村委員のご報告に補足・追加ですけれども、介護予防と言いましても予防給付 だけではなくて介護保険本体自体でも介護予防が大事だとされました。これまでのいわ ゆる補完、補うだけではなく、もっとよくするという観点でやろうということで、これ はまさにICFのプラスの面、今までのICIDHがマイナスの面だけを見ていたことに対 して、プラスの面を見る、そして、それをもっと引き出すように専門家も当事者も一緒 にやるというところが、ICFを導入されたかなり大きなところだと思います。  また、例えば、ケアマネージャーの試験でICFが出た時にも「できる活動」と「し ている活動」、すなわち「能力」と「実行状況」の差が出題されています。非常にポイ ントをついているなと思っています。  もう一つは、目標を立てるということが大事です。アセスメントは何のためにするの かと言ったらば、現状を把握するためだけではなくて、よくするためにアセスメントを するのだというところだと思います。よくする目標に向かってチームがあって、ケアマ ネさんだけではなくて、いろいろな職種、サービスという利用者に対する人々とご本人 を含めたチーム全体が1つの目標を持って、それに向かってプログラムを進めていく。 そのためには、全体像として把握して、共通言語として話し合っていこうというところ でICFが大事だということです。  これは当時の老健局のケアマネジメントを担当している計画課の香取課長が、なぜI CFを導入するのかというのを『月刊介護保険』で述べていらして、今までのいろいろ なアセスメントに対してICFはそれと同じレベルのものではなく、違う次元のものだ と。どのように違うのかというと、全体像として把握すると。すなわち、今までのアセ スメントはそれが欠けていたと。それと、共通言語として活用するのだというところが ポイントだと。まさに核心を突いているのかなと思っています。そのような経過があっ たということです。  それから、介護支援専門員のいわゆる教科書のICFは、私が書かせていただいてい るのですけれども、最初のときにはICFがなかったのですが、改訂のときにICFが 入ってきて、それは目標設定との関係で追加になったという経過も、非常にわかりやす いことではないかなと思っております。  安西委員が先ほどおっしゃったのですが、「できる」と「している」の両者を明確に 区別することが大事です。そしてその差を生む原因には、よくするためのヒントが物す ごく隠れているのです。だから、非常に大事なことだと思います。  それから、佐藤委員は第4とかおっしゃったけれども、そうではなくて、やはり目標 ということで明確に位置付ける必要があって、目標に向けて現状のアセスメントがある という位置付けは大事ではないかと思います。  あと、アセスメントの手間に関しては、最後にお話しした方がいいかなと思います、 長くなりましたが。追加どころではなくて、自分の意見まで述べていましたが。 ○大橋座長  ありがとうございました。  何かありますか。 ○安西委員  今まで精神の立場から言いますと、「代わりにしてあげるサービス」が介護で、精神 に関しては「本人ができるようにする支援」が精神の支援である。勿論、精神でも治ら ない部分はカバーしてあげる必要があるのですけれども、基本的には本人ができるよう にする支援と私の頭の中では仕分けしていたのです。今の大川委員のお話とか木村委員 のお話で、介護の方もかなりそういうふうに転換してきていると感じたわけですが、そ うなりますと、目標を設定するとか、アセスメントの意味が違ってくるよという今の大 川委員のお話はよくわかるのですけれども、目標を引き出すというのは精神の患者さん の経験から言いますと、かなり専門性が高いといいますか、信頼関係がないとなかなか そこまで話を踏み込めませんし、現実には非常に問題があるわけですよね。そういう中 で、慰めではなくて現実の可能性としての希望を提案していくというのは、かなり専門 性の高い高度な難しいことかなと思うのですけれども、その辺はそういう教育・研修と いうので目標を引き出すとかそういう仕組みはできているのでしょうか。 ○木村委員  課題分析者の元職は福祉職、介護職が多いということも含めてなっていることと、そ れから、教育・養成のときに、いわゆるコーチング(相手の意欲を聞き出す聞き方とい うか会話の仕方)が不得手であったということで、介護予防ケアマネジメントは、特に 中心にやったのが東北大学医学医学部大学院教授の辻一郎先生なのですけれども、東北 大学には出江(いずみ)伸一先生がおいでになって、まさに介護予防マネジメントとコ ーチングというものを合体させて今、研究を始めているところです。つまり、ご本人に 対しての問いかけ方で本人の意欲が全然変わってくると。そして、何をやりたいかとい う答えは本人の考えの中にあるのだと、それをどんどん引っ張り出すことを今研究だけ ではなくて、実践にもそれを活用しながら今始めているところです。 ○大川委員  もう一つ追加です。目標設定をして、それに向かってのプログラムを組むのは非常に 難しいことなのですね。ところが、その難しいことを難しいと認識せずに今までやって きたことも反省すべきことであって、介護では目の前の不自由なことを手伝ってあげれ ばOKだとか、何か社会制度を使えばOKだとか、住宅を改修すればOKだみたいな、 目の前の問題に対する補完を中心に行われていたといえます。だけれども、本当に全体 像をとらまえて、そして目標を立てるというのは難しいことがやっとわかり出したとい えるのではと思います。  では、その目標を立ててプログラムを組むのはどうしたらいいのか。そういうことに 、なれていないし、技量も知識も不十分であるというのが現状といえるでしょう。その ときに木村委員がおっしゃったようなことも勿論やって、ケアマネージャー自体の資質 も向上させなければいけない。もう一つはやはりチームワークだと思うのですね。これ はICFの「共通言語」としての重要性ということで、いろいろな医療面に関してはド クターが、ある場面に関しては誰とか、いろいろな職種、人たちの、それこそ英知を集 めてアセスメントをして目標を立てることだと思うのです。ただ、そのときにパッチワ ーク的に集めればいいものができるかというと、そうではない。やはりICFモデルで 言えば相互関係や相対的な独立性をきちんと把握していないと、ただたくさんいろいろ なものを見たら全体像がわかるというわけではないのです。やはりモデルとしての、把 握の仕方のトレーニングをした上で英知を集めることが大事と思って、私どもはそのよ うにしてやっていっているのですけれども。 ○安西委員  精神科の場合はグループ・ダイナミクスと言いますが、メンバー同士のインタラクシ ョン(相互作用)で、患者さんが動機付けられる。あの人はよくなった、自分は元あの 人と同じような状態にある。だから、あの人がよくなったのだから私もやってみよう。 そういう身近な成功事例と、それから、組織全体としてマクロの成功事例の開発と確認 、普及、知らせるとか、その辺が重要かなという気もしますね。 ○大橋座長  ありがとうございました。  今ICFだけではなくて、ケアマネジメントのプロセスの問題もあるのですが、従来 アセスメントからケアプランで実践してモニタリングとなってしまっていて、私はそれ が問題ではないかと考えているのですね。1つは、アセスメントのときに求めと必要と 合意ということがすごく大事だということと、アセスメントとケアプランの間に今出た 目標の設定というのがすごく大事だと。どうもケアマネジメントのプロセスのところを もう一度見直しておく必要があるのではないかと。  私などは一貫してずっと言っていたのは、ICFを活用した求めと必要と合意に基づ くケアマネジメントの方法を用いて、地域を基盤にしたソーシャルワークの展開という ことを十数年言ってきているわけなので、まさにそういうことなのだと思うのですね。 だから、介護保険の場合のケアマネジメントのプロセスというのはちょっと安易過ぎる ので、もう少しそこは求めと必要と合意で、いかに本人の意欲を引き出すか、気持ちを 引き出すかということと専門家が必要と判断する部分と両者をぶつけて合意形成してい くというインフォームド・コンセント、それから、今言ったように、どういう人生再設 計の目標を設定するかというこの辺のところがないと、単純にサービスを提供すればい いという話になり過ぎていたのですね。そこの見直しが今必要なのでしょうね。 ○木村委員  後ろの方までいかなかったので説明不足でしたけれども、サービス担当者会議をどこ に位置付けさせるのかということだと思うのです。アセスメントをしていく中で、まだ まだ領域が狭く課題分析する人たちがいるとすれば、サービス担当者会議のところで、 例えばリハビリ的なことだったら理学療法士さんを入れてもらうとか、口腔機能だった ら歯科衛生士さんを入れてもらうとか、そういう形の担当者会議で専門家もいて、そこ に本人もいて、そこで合意していく。こうしましょうねと言って実行していくという形 にだんだんなってきていますので、ただ、まだまだ地域に行けば専門家たちをくっつけ られないという形もありますけれども、3年前よりかなり変わってきたという印象はあ ります。 ○大橋座長  ありがとうございました。  それでは、時間の関係もありますので、先へ進めさせていただきまして、続きまして 、佐藤修一委員、よろしくお願いいたします。 ○佐藤(修)委員  お手元に紙で資料を配らせていただきました。今回はテーマをいただいて事例報告と いうことだったのですが、私の領域からは活用が非常に難しいということで、現状をそ のまま説明させていただくことにしました。私の領域、職業リハビリテーションにおけ るICFの活用ということで、今私のところでやっている仕事は職業リハビリテーショ ンで使うプログラムの開発です。その開発したプログラムをネットで公開するとか、あ るいはうちの団体で各都道府県に職業センターというのがありますので、そこで実施し ています。  職業リハビリテーションとは何かという議論をとりあえず置いて、法律では障害者に 対して職業指導、職業訓練、職業紹介、その他ということで、職業生活における自立を 図るための措置をリハビリテーションと呼んでいます。職業指導とか職業紹介というの はハローワークの業務です。この法律は職業リハビリテーションと呼んでいる部分をみ んな書き込んでいるもので、職業訓練は職業訓練校の業務、うちの業務はその他に入っ ています。それから、障害者の納付金制度のこの法律に含まれています。  支援プログラムとは、新規就職や職場復帰を希望する障害者を支援するプログラムで 、内訳は(2)で書いていますが、実際に何をプログラムでやっているのかというと、就業 の場で障害をもたらす阻害要因を明確にする。それから、軽減策を確定することが目的 なのですね。13〜24週間というのは障害によって違うのですが、通ってきていただく。 多分、プログラムというとその下になお書きで書いていますが、回避や軽減のためのス キル付与を行うことが主目的だとほとんどの方が思われると思うのですが、今はここに 書いてあるような評価が主目的になっています。これは、対象障害がどんどん変化して いまして、今は企業側で何か変えない限り、例えば、職務を変えたり体制を変えない限 り就職できない方が対象となっているのです。ですから、13〜24週間というと4〜6か 月ですけれども、その間でスキル付与の訓練を行って抜本的な改善ができる方はうちの 対象にはなっていないということです。ですから、もう割り切って、先ほどの法律では 例えば職業準備訓練という名前で決まっているものが、実情は評価と軽減策確定を目的 としたものになっているので、プログラムと呼んでしまっています。  2のICFの活用の方法についてですが、モデルとしての活用は、大川委員が前回こ ういう表現をされていましたので使わせていただきました。(1)ですが、プログラム では評価項目が非常に多様です。(1)で、まず阻害要因を明確にするためには、働く場あ るいは働く内容と比較することになりますので、職務における遂行可能性に加えて環境 なり通勤なりあるいは人的支援ができるかという評価を行います。  それから、働くことですので、これは障害のない方と同様に、知識なり技能なり興味 が正面に出ますので、個人因子も評価を行っています。  (2)でプログラムの内容をもう少し細かく見ると、(1)で、(2)障害者には就業阻害 要因を明確にする。これはご本人に提示するのが必須条件です。それから、相互の了解 の上で回避手段や軽減手段は何があるか検討します。非常に多様な内容があり得ます。 作業手順を変えてしまうとか、仕事全体を見てやり方を変えるとか、労働時間を変える 、環境を変える、支援機器・人的支援を前提として考える、あるいは身体障害などは物 理的変更でスロープをつけたり、作業台を変更したりといういろいろな形で、多様な軽 減手段を検討します。当然スキル付与で回避や軽減が可能であれば付与を行います。こ こでは例示として、記憶障害の方に記憶補完ツールの例をあげています。これは手帳形 式のノートをうちの様式でつくっていて、この記入の練習をするということです。  それから、実際に就職なり職場に入ったときの職種と企業側に一体何の配慮をお願い するかということを検討、これはご本人と行います。  (2)ですが、企業側には具体的にこう変えてほしいということを伝えます。いわゆる合 理的配慮と言われるものです。それから、給付金制度の中で援護措置、障害者を雇って いないところは納付金を月に5万円出していただき、それを雇っているところへの調整 金と、それから助成金として配分し直しているのですが、この助成金で援護措置、今の 合理的配慮に使えるような援護措置のお金を出しているのですね。ですから、この助成 金の説明も事業者側にしますし、それから、例えば発達障害の場合などは、障害そのも のが事業所に知られていないので、その説明なり、配慮などの対処の方法などもこちら が協力して説得なり、説明することになります。  それから、合理的配慮は今注目されていますけれども、合理的配慮というのは一定の コストの上限があるのと、それから、可能な範囲が限られています。例えば、障害を持 っている人を雇うために、ここに書いてあるようなその人用のポストなり職務をつくる こととか会社をつくるということまでは要求されていないのですが、我が国では、処遇 の新設とか特例子会社をつくることも企業側に提案します。  (3)で、就職後には、ジョブコーチ派遣をしています。  (3)では、対象障害として書いていますが、最初に説明しましたように、このプログ ラムが必要ない方は対象者としては来られないので、どんどん内容と対象障害が変わっ ています。対象障害は(1)に書いていますが、障害者雇用率、納付金制度、それから、国 がお金を出す助成金の範囲よりは広いです。お金が出るものは限定しているものが多い ので、それよりは広くなります。  それから、ある程度配慮事項が確定している障害は開発の対象には今はならないとい うことですね。では、今何がと言われると、発達障害と精神障害と高次脳機能障害、今 は特に発達障害がうちの開発のマンパワー投入のほとんどを占めています。  (4)で開発中のプログラム例を説明させていただいています。1つ目が、うつ病回復 の方の職場復帰です。これは今、全国の職業センターでリワークプログラムというのを 動かしているのですが、実はリワークプログラムは、原案をうちがつくったのですが、 当初は以前働いていた職務に復帰する人を対象とすることが前提だったのです。同じ職 場、同じ職で。今開発中なのは、スキル付与プラス職務が変わる方を対象とするもので す。  (1)で、グループミーティングでの自分の障害理解の促進なり、復帰後のキャリアプラ ンの検討をし、スキル付与で体調管理、ストレス対応、アサーションを行います。ちな みにどういうことを対人コミュニケーション練習でしたいですかと問うと、一番多いの が残業の断り方です。それから、職務遂行上の自己管理の方法。また、このプログラム のメインになります、復帰職種の検討と配慮事項の確定と、それから、復帰先企業への プレゼンテーションを行います。ご本人と相談して企業とも相談して帰る職務を決める ことが担当カウンセラーのメインの仕事になります。  (5)それから、今一番マンパワーを投入しているのは発達障害に関するプログラム です。アスペルガー症候群とADHD(注意欠陥・多動性障害)の方が対象です。これは期 間が先ほどのうつ病の場合は24週、6か月なのですが、4か月、13週間です。就業の場 での障害特性の表れ方を当方と障害をお持ちの方の間で確認する。それから、希望する 職種を、ある程度のスキル付与なり、あるいは事業所側の変更なりで可能な職種がいろ いろなものがありますから、確定します。それから、就業に必要な配慮事項を明確化す ることがこのプログラムの重点です。  (1)であげていますが、インタビューでのアセスメントでコミュニケーションの特徴と か感覚過敏の方が多いので感覚特性を、それから、パニックの起こりやすさと、どう自 分で対応しているか。それから、このコースはある程度若い方が多いので、いじめを受 けたり失敗経験が蓄積してうつ状態というか治療中で二次障害をお持ちの方がいます。 こういう方に対して、最初にアセスメントを、それから、(2)では、スキル付与プラスア セスメントで、対人場面設定の中で指示理解、学習特性、基本的な対人技能を。作業場 面の中で耐性を。それから、集団場面でパフォーマンスが極端に変わる方がおられます ので、集団で一緒に作業することが苦手な方が多いということですが、共同作業でどう ご本人が変わるかを確認する。  なお、そこに「標準的環境」と書いていますので、ICFの流れの中で言うような、 ある障害の重さなり有無なりを確認するときに標準的環境を目指してと同じと恐らく考 えられると思うのですけれども、我々は、この環境は一般的・標準的なものを求めてい ない。その障害のプログラムにはその障害が一番現れやすい課題をつくってしまうとい うのを方法論にしていますので、なかなか他の障害には一般化できないような環境や課 題が多いです。  この課題や環境を確定することが、結局このプログラム開発の大きな目的になってい るというのが実態です。  (3)では、スキル付与が一番外部から注目されますが、問題解決機能なり作業手順のマ ニュアル化なり、職場対人技能の練習を。それから、実際の事業所で実習してもらって 、本人にいろいろ確認していただく、こういうやり方でいいのかとか職場がどんなとこ ろなのかを確認します。  それから(5)で、一番重要としています、自分自身の障害の現れ方、あるいは適性のあ る職業とか、事業所側にどういう配慮事項をお願いしたらいいのかということを自分で 確認してもらって記録に残すことにしています。内容として基本的な項目は決めている のですけれども、それぞれの方が自分の書きやすいように、表現しやすいように書いて いただくということでナビゲーションブックを作ります。それから、企業側に要請する 事項の例示も内容に入れています。  3の分類そのものの活用ですが、個別の障害についてどんどん入り込んでいっている ので、分類そのものの活用が非常に進んでおりません。アセスメントでは、個々の障害 に特化していますので、非常に細かい項目をとる。障害と関係ない項目は一切とらない ということになっていまして、恐らく身体障害では可能なのでしょうが、精神から発達 障害へと続いていくと、個人測定に関する評価がちょっと難しいかなと。  それから、職業に関する評価をするのですが、職業の項目は個人因子だと思いますが 、例えば、職業スキルのように、活動と参加だと項目で読むとか書くとかあるのですが 、内訳が恐らく違う。何が違うかというと、ないものもあるということと、ICFは日 常生活なのですが、職業に関してはすぐれているという評定が要るので、なかなか難し い。  対象障害によってICFの利用のしやすさはいろいろ変わってくると思いますので、 今発達障害がメインの段階では踏み出せないというのが正直なところです。  当方のプログラム開発内容は、参考のところで書いてありますがネット上に報告書を 公開しております。非常にアクセスが多いです。発達障害に関しては年間10万件ぐらい 、報告書1本が1つのPDFファイルでダウンロードが大体10万件ぐらいいきます。高 次脳機能障害も5万件ぐらいいってます。非常に注目されておりますが、プログラムの 開発は難しくて道が遠いというのが現状です。それから、ICFの活用に関しては、現 状ではモデルではできても、個別はちょっとつらいかなというのが正直なところです。  以上です。 ○大橋座長  ありがとうございました。  何かご質問ございますか。 ○佐藤(久)委員  職業リハビリテーションの領域でのICFの活用というと、私はよくユニバーサル・ ワーク・データベースというのを紹介しているのですけれども、今日この中では紹介し ていないのは、個別の支援ではないからということでしょうか。 ○佐藤(修)委員  そうですね。総論としては出しやすいのですが、事例報告というテーマで載せられる と関連付けが難しいので、機構の業務の中で挙げられるのですが、今回は省略させてい ただきました。個別のプログラム開発との関連での取扱いが難しいのです。 ○佐藤(久)委員  ICF活用の事例報告という、その事例という意味は、もうちょっと個別の臨床的な 活用だけではないかなと思うのですけれども、どうなのでしょうか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  特段何か定義をしたわけではなくて、いかなる活用方法においても研究であれ、臨床 であれ、そういったものを具体的に提示できれば、皆さんの情報共有になるのかなとい う目的でやっております。 ○佐藤(修)委員  データベースは分類そのものの活用の挑戦例です。だから、それを否定しているわけ ではなくて、発達障害のプログラム開発と限定されるとつらい。 ○大橋座長  ただ、アスペルガー症候群とかADHDが10万件だというのですけれども、何かここで緩 やかなアセスメントシートみたいなものを求めているのでしょうね、いろいろなところ で。10万件ヒットした人は自分でやってほしいということなのだけれども、受け入れよ うとする人は学校の先生も非常に困ってしまっているし、ありとあらゆるところで困っ てしまっているわけで、このアスペルガー症候群、ADHDの何かを開発してみるというの は、あるいはあるのかもしれないですね。 ○佐藤(修)委員  そうですね、非常に興味を持たれていますし、障害者自身の方が検索ネットを使うの が常識ですから、若い方も多いですし。ですから、アクセスは多いですね。 ○大橋座長  ある意味では、自分で自分の行動をセルフアセスメントみたいなものをしてもらうよ うなシートを開発するとか、高次脳機能障害も同じようなことでやってみるなんていう ことを少し開発できれば、あとの細かいことはもっと個別に相談なりして、やはり自己 覚知が意外と進んでいなくて、なかなか難しいというのがありますよね。 ○佐藤(修)委員  そうですね。両方とも自己確認が難しい障害ですね。 ○大橋座長  ですから、そういう意味では、自己覚知なり自己確認をしていくための何か一種のセ ルフアセスメントシートみたいなものを今後考えてみるというのもいいかもしれません ね。それは職業リハということではなくて、この分野はすごくそういうことを求めてい るなという感じがしていますね。 ○大川委員  今、先生がおっしゃったことに関係することなのですが、実は私ども、コンピュータ で入力するものもつくったのですけれども、一番大事なことは、結局ICFという考え 方でして、これをきちんと教える前と後を比較しますと、希望の出方とか現状分析が全 く違ってきます。だから、そこはかなり気をつけないと危ないなと思っています。例え ば、リハ実施計画書であるとか、介護予防のアセスメントも全く同様のことなのですけ れども、きちんと理解していただく説明なしにやってしまうと、ただ項目の羅列的に終 わってしまってというのはありますから、そこは注意すべきと思います。  次に、職業リハに関してですが、実は私は幕張に障害者職業総合センターができまし た時からアドバイザーとして関与させていただいた経験があって、その経験も踏まえて 考えますと、実は職業能力に関しての評価法は歴史があっていろいろなものがあります 。むしろそれ以外の例えば、さっきの残業の断り方であるとか、あいさつの仕方である とか、職業能力以外の一般的な項目の方にむしろICFは活用するのがいいのかなと思 います。  それから、例えば、特別支援学級の高等部を卒業した後とかその前に、そこと職業リ ハとの連携も大事なところになると思うのですが、例えば、学校ではこういうふう人と の距離感を持っていたとか、いろいろな情報がうまく伝わるためにICFの項目でいく とこうだというような活用もいいのではないかと思って、実はこの点の検討も今やり始 めたところなのですけれども。 ○大橋座長  いろいろなところでも求めているのではないでしょうか、本当に。 ○安西委員  他の人よりすぐれているという評定が必要ということで、さっきの話でちょっとよく わからなかったのですけれども、他よりもすぐれているという評価が難しいということ ですか。 ○佐藤(修)委員  難しいというよりは、職業領域で使っているものがありますよね。職業スキルみたい な。 ○大橋座長  職業紹介をするときに、この部分は非常にすぐれているとか、そういうことを言わな いとうまくいかないとかそういう意味ですか。 ○佐藤(修)委員  そうですね、既存の評価体系とくっつけてしまおうとすると、例えば、読むという行 動にしてもいろいろありますよね。例えば、職業でやると、SEは読む能力、高い方が いいとなるわけですが、SEが読むものは複雑怪奇なマニュアルですよね。そういう読 むという概念も含んでいるのです。業界で言う職業スキルの中に読むという言葉は、あ れを読めるのも「読む」の中に入るわけですね。でも、ICFで読むと言うと、あれを 含んでいるかいないかという議論が出るでしょう。だから、名前は一緒なのですけれど もくっつけられない、実は内訳が微妙に違っているのが多いのです。対人関係とかも、 読む、書く、話すと同じ用語なのですけれども、いろいろな職業の中で一番できる、そ ういうことを含んでスキルとして判断するようになっているから、1対1にすると難し いのですね。日常生活で話すというレベルで考えられると。 ○安西委員  日常生活と職業場面と違うということですね。 ○佐藤(修)委員  同じ用語でも違う意味で使っていて、それぞれその業界の人はその意味で使っている のですね。だから、間に差があるのですよ。 ○佐藤(久)委員  安西委員が今質問されたのは、プラスの評価がICFだと難しいと。他の人よりすぐ れているという評定がしにくいという部分ですね。お答えになったのは、恐らくICF の項目の概念が職業評価で必要なものとちょっと違うという話ですよね。 ○佐藤(修)委員  恐らく両方あって、すぐれているのもあるし、話すという言葉の中身が変わっていく ものもあるということで、だから、1個1個チェックしてみないとわからない。うちの 領域で引っかかるのは事業所と障害者の方両方、それから、学校の方の相手もしますが 、それぞれ用語が違うのですよね。同じ言葉でありながらニュアンスが全然違うものを やったりしている。それが結構難しいのです。 ○佐藤(久)委員  そういうためにICFは開発されたはずなのだけれども、職業の人たちのニーズを十 分反映していないということなのですね。 ○佐藤(修)委員  反映すべきなのかどうかよくわからないのですね。 ○佐藤(久)委員  ICIDHのときには職業場面で必要とされる特殊能力とか能力障害があったのですけれ ども、それがICFではややコンパクトになったということも影響しているのでしょう かね。 ○大川委員  ICIDHのときは社会的不利、ICFの参加に相当する項目なんて6つとその他で、ごくご く少ないですよ。 ○佐藤(久)委員  能力障害分類の中に1つの独立した項目として職業で必要とされる特殊技能能力低下 という章がありましたが。 ○大川委員  ICIDHの能力低下はICDの活動と比較しましても、ICFの方がはるかに多く 細かい。職業もICIDHの能力低下では、「特殊技能低下」の2つの事項のうちの1 つとして、「仕事を遂行する能力」としてざっくりあるだけです。  ところで先ほどおっしゃったのは、ICFを使うときに、例えば読むといってもプレ ゼンテーションとして読む場合もあるわけだし、それから、読みこなすということもあ る。実はよむというコードよりも、内容的には、コミュニケーションとか、9章の方が 適切という場合がありますかという。ですから、これもやはり一番基本となるところの 定義を踏まえて考えていくことが大事で各章の一番の基本、そしてその大項目、その中 の中項目、小項目というのがあるのだけれども、みんな小項目のところにボンと飛びつ いてしまうので、なかなか難しい、という話になってしまっていることが少なくありま せん。これは私どもが調べた結果でもあります。やはり最初の基本原則を読みこなして 、頭にいれてから使わないと、最初から項目に飛びついていったら使いづらいなという ことはあるのではないと私は思っておりますけれども。 ○大橋座長  また、それは後で論議をさせていただくことにしまして、今微妙なニュアンスの違い という問題提起をされたけれども、ある意味で非常に大きな課題なのかもしれないです ね。ありがとうございました。  それでは、佐藤久夫委員、よろしくお願いいたします。 ○佐藤(久)委員  資料1−4−1と資料1−4−2を用意させていただきました。  まず、資料1−4−1ですが、ICFの活用の経験の報告というよりは、ICFを活 用するように福祉の学生の教育をこんなふうにやっていますというような報告で、ちょ っと皆さんの報告と違って余り役に立たないかなとは思うのですけれども。  最初のページで「はじめに」と書いたのですが、精神障害を持つ人が最近はPSWの コースなどの通信教育などにもかなり参加していまして、障害のある人の事例をICF で分析して支援の課題を述べなさいというようなレポートをよく出しているのですが、 そうすると、私自身が障害を持っているので、私を取り上げますというようなレポート が最近かなり多くなってきているのです。  この人は非常によく整理されているなと思ったので最初に紹介しています。  健康状態はうつ病だとか、心身機能はよくうつ状態だとか、活動は何とか自分の役割 の仕事はこなせている。参加としては就職は何とか維持できているというようなことで 、同じ活動と参加の区分けも仕事を遂行するというのが活動で、雇用が維持できている というのは参加だというような、ちょっとラフかもしれませんけれども、本質的なこと はよく理解しているなと私は思っています。  それから、主観的次元というのも、抑うつ状態という心身機能とすごく近いところで す。この人はとにかく抑うつ気分がとれなくてつらい、人生を謳歌したいのに楽しめな い、何とかうつ病を治したいと思うという、つらさだとか希望というような主観的次元 と、それから、精神機能としての抑うつ状態という心身機能レベルと主観的なレベルと の区分けなどもよく理解していると感心して読みました。  環境についてはいろいろあるのですけれども、人間関係を中心にして述べていて、こ ういう中でこういう点は変えられるけれども、こういう点はなかなか難しいとか自分な りに判断して、どんな援助が必要かということを述べています。  私のICFの教育の中で、学生たちにこういう事例をまず紹介するのですけれども、 最近では障害当事者が自分で自分をICFを使って整理して、こんな支援が必要だとい うことを言うようになってきているので、「君たち、専門職として飯を食おうとする人 は、より正確に計画的にICFを使えないと恥ずかしいよ」というようなことを言って 励ますというか、脅かすというか、そういうことをやって授業に入るというようなこと で使っています。  中身の科目なのですけれども、生活機能構造論などの方が今はいいのかもしれません けれども、昔ながらの障害構造論という名前で15回、半期の2単位科目として福祉士の 大学で2年生を対象にして、選択科目で90人ぐらいがとっています。  前期の科目で障害者福祉論の中で1〜2時間ICFについては説明しているので、基 礎的な理解を得た人たちを後期の15こまでやっているということです。  90名を6人ずつの15グループぐらいに分けて、グループでのICF活用作業を中心に しながら進めています。  授業の流れということで、第1回目から15回目まで主な流れが書いてあります。  まず、最初はグループ分けだとかオリエンテーションをして、第2〜6回目までは3 つの文献のうち主に2番目のICFの序論、これは厚労省訳が厚生労働省のホームペー ジでも、DINFでも紹介されているので、それをダウンロードして印刷して学生に配付し ています。それには、第1レベル分類と第2レベル分類まで資料としてつけて、分類の 方もある程度イメージが沸くようにして、それをテキストとして、何回かにわけてグル ープで読み合わせて議論をして、出てきた質問を紙に書いて私のところまでその日のう ちに出しなさいと。それをまとめて翌週は解説をすると。  そういう中で出てきた学生の質問・疑問について次のページから大分詳しく私の回答 も含めて紹介しています。こういう説明の仕方は間違いではないかと皆さん思われるこ とがあろうかと思いますので、またご指摘いただければと思います。  ICFの序論の「1.背景」「2.ICFの目的」というふうに項目ごとに整理をし て出しています。19〜20歳ぐらいのまだ専門課程に入っていない学生ということもある のかと思いますけれども、基礎的な疑問がたくさん出されています。  例えば、3ページの上から2番目の質問などは、ICFが利用者の意思決定にかわる と書いてありますが、ほとんどの障害者はICFを知らないのではないでしょうかと。 ここでの利用者というのは福祉サービスの利用者のことを学生は思って、利用者は知ら ないのではないかと言っているのですけれども、ICFの序論での利用者というのはI CFを利用する人という意味なので、英文の方でもユーザーとしか書いていないので、 日本語訳も単に利用者としか書いていません。よく読めばわかるはずなのですけれども 、こんな誤解が出たりしています。  その下は、ICFは原因となる病気に対しては中立的な立場を取るとはどういうこと なのですとか、中立的な立場ということの意味が、やはり学部の2年生くらいではイメ ージが全く浮かばないというようなことかと思います。  ともあれ、ICFをこれからちゃんと理解する上では、序論をきちんと読むと。わか らないところは議論をしたり、先生に聞いたりしながら理解するということが大事だろ うということで、前半の何回かを読み合わせの時間にとっています。  そして、7回目なのですけれども、これは今年初めてやってなかなか面白いなと思っ たのですが、ICFを自分に当てはめるということで、10ページの資料を見ていただき ますと、これは一日だけでやる、グループではなくて各自がやる作業です。A4の1枚 の提出用のシート、全く白紙のシートなのですけれども、それを用意して、それに書き なさいと。現在のことでも過去の経験でもいい、ICFの関連図を使って自分の状況を 落とし込んでもいいし、文章で自分の場合には心身機能はこうで、活動はこうでという ようなことを書いてもいいということで、また、第2レベル分類ごとについて自分の評 価をしてもいいと指示しました。例示として私をまな板に乗せて、例えば、こんなのも ありだよということで出したら、これをまねてみんなが同じようなことを書きました。 佐藤久夫の視覚の低下という心身機能の障害は、眼鏡という環境によって補われて、見 る活動が十分できるようになって、そのために職業が何とかやれているというような例 を示したところ、例えば右にあるように、ストレスや睡眠不足によってアトピー性皮膚 炎が起こり、また、大気の汚染という環境因子と自分の乾燥肌とかアレルギー体質とい う個人因子もあって、活動面や参加面でいろいろ問題があるというようなことを書いて います。これは、よく見れば、アトピー性皮膚炎というのは健康状態だろうし、アレル ギー体質というのも個人因子にするべきなのか、心身機能レベルのことなのか、いろい ろ議論しなければならないのかと思いますけれども、生活機能のいろいろな次元と健康 状態や環境とかいろいろなものを関連させて、自分なりに自分の状態を見る一つの練習 になるのかなと思いました。  Wordの図の張りつけの仕方がよくわからなかったので、もう一つの例も入れておいた のですけれども、それをコピーしたら同じものがここに入ってしまって、一太郎派なも のですから苦労しています。ということで、第2番目の事例は省略します。  授業の一番のメーンは8回目からのグループ作業でICFを障害者、高齢者事例に当 てはめるということです。もうちょっと活用の仕方の標準的なものができていれば、標 準的な事例を示して、これをICFのコードで評価したり、関連図に落とし込んだりし ながらやりなさいと。正解はこういうものですよと示しながらやってもよかったのでし ょうけれども、まだそれができる前の段階かなとも思ったこともあって、とりあえず自 由に自分たちで事例を集めて、それをICFで整理してみなさいと。しかも、ICFの コード分類ではなくて、関連図、概念モデルを活用するというところに焦点を当てた作 業をさせました。  そのオリエンテーションが11ページで、問題を抱えた状態と解決した状態の2つの時 点をそれぞれ1つずつの図を使って示しなさいと。何が健康状態なのか、心身機能なの か、活動なのか、参加なのかという区分けもきちんとしなさい、主観的次元についても 使いなさいというようなことで、マイナスの矢印とプラスの矢印はどう関係しているの かということも描きなさいと。モデルになるようなものとして、12ページの2つの事例 、精神障害を持つWさんの問題を抱えた、退院して独り暮らしをしたいけれども、それ ができないでいる状態と、その人に対する支援の計画を図にしたものと。  下の図は視覚障害の人なのですけれども、視覚障害と骨折を起こして失業、部屋に閉 じこもったというような人、そういう問題を抱えた状態が左側で、右側は奥さんが「私 が働くから、あなたは休んでいてください」というようなことを言ったことをきっかけ にして、こうした妻や子どものためにもう一度自分は頑張ろうと思って、これは国立リ ハの例なのですけれども、三療師の訓練機関なども活用して、心身機能や活動も改善し て再就職を実現したというような一つの事例ですけれども、こういうものも参考にしな がら問題図と解決図あるいは解決予定図をつくりなさいということで、資料1−4−2 の大きさのA4横版の紙を各グループに1枚ずつ渡して、これで提出させて、これを全 部縮小印刷して全員に配って、グループからの発表とそれに対して質問をするカウンタ ーグループをつくって、一定の議論を経た上でグループとして質問をさせると。最終的 に私の方で整理をするようなことをやっています。  このフォームなのですけれども、文章で説明する部分を右側に設けて、左側は関連図 を描かせると。関連図(1)と関連図(2)がありますけれども、関連図(2)の方では使ってみた 感想なども書かせるというようなことでやっています。  そういう作業の前には、12〜13ページにかけての関連資料、先ほど安西委員が報告さ れた岡田先生たちなども紹介して、幾つかの文献も紹介して、いろいろな使い方が今、 試行錯誤でなされつつあるというようなことを紹介しつつ、説明をしています。  13ページはあるグループが出した図なのですけれども、各要素を丸ごと矢印で結んで いるので、この各要素の中のどの部分がほかの矢印の行った先のほかのどの部分に特別 にマイナスやプラスの影響を与えているのかよくわからない、1対1の関係ではなくて 、丸ごとになってしまっているので非常にわかりにくい面もあるのだけれども、ある程 度人との交流に消極的になっていた人が、通所サービスを通じての歩行能力やコミュニ ケーションの改善などをきっかけにしながら、積極的にウォークラリーなどにも参加す るようになったというような例を、それなりにうまく整理しているのかなと思いました 。  こんなことをやっています。まだまだ分類コードの活用というところまではいってい なんいですけれども、おおよその生活機能のどういう次元の違いがあるか、プラスやマ イナスだとか環境との関係だとか、主観的な次元の重要性だとか、そんなようなことを ある程度頭に入れて、3年次からの実習などに入ってもらえればという感じの教育をや っています。以上です。 ○大橋座長  ありがとうございました。  この辺もノウハウがうまくつくれれば、福祉系の大学に全部使えるわけで、それが先 ほどの木村委員さんの報告のアセスメントの分野とうまくつながってくると、またおも しろいかなという感じがしますね。  何かご質問・ご意見ありますか。 ○藤田委員  私は、大学で医学部の学生、薬学部の学生、看護学部の学生、3学部合同の授業を年 間に16時間だけ持っているのですね。その中でチーム医療を教えなくてはいけないので すけれども、ICFのことについては一番授業の最初に約3時間説明するだけで、細か い内容は説明できませんので、最初のところ、それから、レベル1だけを教えて、レベ ル1だけ配っています。その後は、各診療科につくってもらった、退院困難になった事 例を配って、その問題点を整理してごらんと言うと、ちょうど今、佐藤久夫委員が13ペ ージで示されたような絵ができ上がります。どういうわけか、過剰書きにしろと言って もこういう形でほとんどの学生が書くので、何か共通点があって、すごく面白いなと思 ったのと、結局こういう書き方がわかりやすいのかなという感じがして、自分のやり方 はやはり間違っていないのかな、なんて思ったのですけれども。細かいところは入れな いし、入らない方がむしろ学生にとってはわかりやすいような気がして、分類が違うと いうようなことにも触れずに、とりあえず考え方としていろいろ考えてごらんというと ころでいいのかなと思いました。 ○佐藤(久)委員  そうですね、いきなり第2レベル辺りの評価を端からやってごらんと言うと、うんと 時間がかかってあいまいでよくわからないで、時間がかかった割に、これがどう実践に 生きるのかということもよくわからないまま、何か難しい、面倒くさいものだなという イメージになってしまう危険性があるかもしれないですね。こういうことをやってよく 支援の計画づくりなどにも、あるいはコミュニケーションにも役に立つな、しかし、も っと正確にやるために第2レベルくらいまでちゃんと評価してみようかなという、その 後で分類が出てくるのかなという感じがするのですけれどもね。いきなり最初から分類 をやってしまうと、拒否感というか使いにくいということが先に立つのかなという感じ がします。 ○大橋座長  これは是非、社会福祉系大学の学校連盟があるのですが、そういうところへこういう 話をして広めていただくといいですし、また、後でその他議題を取り上げるのですけれ ども、藤田委員が言われたようにIPEのレベルでこういうものを使って作業をやって みるというのはすごく大事なのかなと思います。あるいはこの辺が教育方法的に開発さ れてくると、普及という意味で非常に大事かもしれないですね。 ○安西委員  2次元に展開されているのを3次元にする必要があると思います。精神医学の分野で 流行語になっていますのは、少し前までリカバリー(回復)、つまり病気などで困難事 態にある人が人生の意義を見出して目標を持って頑張る、回復していくということです けれども、最近は流行語になっているのはレジリエンスというもので、これも困難事態 に陥った人がめげないで何とかやりくりして活路を見出していく、しぶとさというもの が流行語になってきているのですけれども、佐藤委員の絵を見て思うのは、いろいろな 要因間の関連というのは確かにこれでわかる。しかし、例えば、どのパラメーター(要 因)が変化するのか、何をやれば回復するのか。回復するのは上にいくか、下にいくか 、3次元で表現したいと思うのですけれども、どの要因はチェンジャブル(変化しうる )で、どの要因はアンチェンジャブル(変化しない)かとか、もう一つは、本人の意欲 とかやる気とか目標とか、それがこの絵の中に十分入ってこないと今後の変化の予測に 役立たない。だから、障害としての変化可能性、それはどうやれば変化するかというこ とも含めて、変化可能性の要因と、もう一つは、本人のやる気とか目標といったものを 組み入れる必要があるので、3次元に展開することをお考えいただけたらと思います。 ○大橋座長  ソーシャルワークでエコマップをつくって、こういうようなことをやるわけですが、 それとこれとが連動すると、あるいはまた変わってくるのかなと思いますが、ただ、そ れはかなり複雑になってしまうので、とりあえずこういうところから入っていくのだと 思います。 ○安西委員  半分冗談ですが、今後できたらいいなと思います。 ○大川委員  ICFの理解をきちんとしてもらうための教育をどうするのかはすごく大事なことだ と思うのですが、現実的に言えば、対象が誰なのかと、どのくらいの時間が使えるのか という2つで決まるところがあると思います。ですが、いずれにしましても、ICFモ デルとして考え方を理解してもらうことが一番大事なことではないかと思うのです。例 えば一見ICFモデル図的なのですけれども、実は問題点の羅列をしている図にすぎな くなってしまうこともあります。だから、やはりICFのICFらしさというところに 指導をおかないと、かなり危険だと思うのです。  私も例えば、介護支援専門員の研修などをあちこちでさせていただいたのですが、や はりまずICFの概念をきちんと説明することに重点をおきます。ただし、私は具体例 を入れながら説明をします。正直言って、佐藤委員が使っていらっしゃる本を主とした プログラムでの理解はなかなか難しいのではないかと思います。私は自分のテキストを 使ってやるのですけれども、その上でモデル図を使う、ICFのモデルの中に項目を自 分がまず気になることを入れていいということにします。ただし、その中でプラスとマ イナスは別の枠で、それと実行状況と能力も明確に区別することが大事で、そういう前 回のプレゼン時に提案した図を私は使っています。  そのときに、現状と過去、そしてできれば目標も含めてそれらをきちんと分けてやら ないと、ごっちゃになってきます。最初にも申し上げましたが、評価はよくするために やるのだと、そして私どもはサービスを提供するためですから、その視点でこれは改善 できるとか、むしろ悪化するだろうとか、そういう要因はどんどん書き込んでいただく 、ということで、実は結構大きな紙に書き込むことをしています。  そして書き込んでもらった後の教育、これが大事でそのポイントというのが幾つかあ るのですが、それを今ここで話をすると時間がかかりますが、やはりきちんと教育をし なければICFのICFらしいところが全然生かされず、一見ICFのモデル図風に書 き込んでいるようでも、今までの既存のマイナス面の羅列になってしまいます。ふつう 教育・研修の途中では大体そういうものが出てくるのです。書き込んである項目にして も例えば、日常生活の動作困難なんて、そんな大づかみでポンと出されてもICFらし いところに生かしにくいわけですから、そういうポイントは幾つかあると思っています 。  いずれにしましても、大橋座長がおっしゃっているように、教育の中にそれを取り込 んでいただくと、結局は一番大事な利用者さんや患者さんにとっていいことができるで しょう。教育のやり方はそれこそ皆さんの英知を集めてやるべきで、ただ、そのときに 私は思うのですけれども、精神科は精神科だとか何科は何科と別々ではなくて、それま での成果を生かせればいいなと思っていますけれども。  以上です。 ○大橋座長  ありがとうございました。  やはり1つの専門委員会の課題としては、普及するためには学生とか養成課程にいる 方々にどういう教育方法として教えていくのか、その場合の教材をどうするのかという ことは一度考えてみる必要はあるかもしれませんね。そういう意味では、厚生科研でも うまくとっていただいて、そういう教材開発あるいは研修マニュアルづくりみたいなと ころへ少し入り込んでいかなければいけないところへ来たのかもしれません。  いろいろ意見はあろうかと思いますが、佐藤委員の報告はそれでおしまいにさせてい ただきまして、本当に4人の委員の方々ありがとうございました。大変勉強になりまし た。  それでは、今日の議題はあと2つでございますが、資料2に基づきまして、前回ご意 見をいただいたことについて事務局で整理しましたので、ご説明をお願いいたします。 ○疾病傷害死因分類調査室長  資料2「国際生活機能分類の変更すべき用語について」でございます。  以前お見せしました資料とほとんど同じですが、1つだけ追加になってございます。 真ん中に「色盲」という言葉がございます。学会による用語の変更に伴うものというこ とで、これを「色覚異常」に変更したいという提案でございます。項目は「b210視覚機 能」という項目名でございます。  説明は以上です。 ○大橋座長  ありがとうございました。  前回のご意見をいただいたことに応えたものですが、よろしゅうございますね。  それでは、資料3、その他の事項でございますが、事務局でご用意したものをご説明 いただきたいと思います。 ○疾病傷害死因分類調査室長  資料3「共通言語としてのICFの教育・普及を目的とした会議の開催について(案 )」についてご説明いたします。  本専門委員会の中でもICF普及・促進を図るための課題、問題点を明らかにするた めに、さまざまな分野の方においてICFの具体的な研究活用事例等の報告をしていた だきました。その中に「共通言語」あるいは「チーム医療」という言葉がたくさん出て きたと思います。今後この取り組みを更に深めたいという思いがありまして、共通言語 としてのICFの普及、研究開発を促進することを目的に、研究会あるいはシンポジウ ムのような会議を開催したいという提案をしたいわけでございます。この会議では、さ まざまな専門職の方々あるいは学生あるいは研究者を参加者として、ここにいらっしゃ います専門委員を含む研究の第一人者等によるICFの活用事例を発表していただくと いうことを想定してございます。  詳細につきましては、日程は今年の秋ごろの予定、あるいは場所、東京またはその近 郊。事務局は、厚生労働省ICD室が務めたいと考えてございます。座長は本専門委員 会の大橋委員にお願いしたいと考えてございます。  資料3の説明は以上でございます。 ○大橋座長  ありがとうございました。  これは前回の事例発表と今日の事例発表を聞いておりまして、私どもだけが聞いてい るのはもったいないのではないかと。それで、できればこれは広く関係者に聞いていた だきたいし、それに基づいて討論したいということで、事務局で何とかならならないだ ろうかと、どこかの研究助成だとかないだろうかということで、いろいろご尽力いただ きました。それが大体めどが立ちそうなので、委員の先生方にまたご迷惑をおかけする かもしれませんが、この委員会で報告いただいたことを中心にしながらご発表いただけ ればありがたいなということで、こういう提案をさせていただきたいと。審議会の専門 委員会がそんな役割までやるのかということがありますが、専門委員会自体が普及・波 及ということを言っているので、是非私としてはやらせていただきたい。私では役目不 足でありますが、多分やれることはそのことかなと思っていますので、こういう企画を させていただきました。いかがでございましょうか、こういうことで進めてよろしゅう ございますか。  これに関して、私がそういう行動をしているということを是非ご了解いただきたいの ですが、1つは3月26日に昨年につくられました保健医療福祉連携教育学会というのが ありまして、その保健医療福祉教育学会の理事長というのが今、新潟医療福祉大学の高 橋先生でございまして、高橋先生に話を持ち込みまして、このICFの普及活用という 問題について是非、連携教育学会と協力してできないだろうかと。状況によってはこの シンポジウム等も連携教育学会と共催することもあり得るのではないだろうか、あるい は連携教育学会とうまく合えば、自主企画シンポジウムなどを持っていただくというこ とで少し考えてくれないかということで、3月26日が理事会なのです。私も副理事長な ものですから、山内室長に来ていただいて、ちょっと説明をいただこうかと。ご了解い ただければ、そこで入ると、例えば来年は札幌医科大が会場でやるのですが、札幌医科 大学でも歯科、薬剤、医学、ソーシャルワークの連携大学院をつくっていますので、そ ういうところに話が持ち込めるということも出てまいります。それから、保健医療福祉 連携教育学会が医学会総会と共催で、医学会総会の中に1つのシンポジウムを持とうか という話も出ていますので、そういうところにも実はICFの考え方を紹介できればと 思っておりまして、やや審議会としては異例かもしれませんが、フットワークのいい、 動く専門委員会ということで、そういう働きかけをしているということをご了解いただ ければありがたいと思っております。  もう一つは、3月23日にソーシャルケアサービス従事者研究協議会、これは介護支援 専門員協会は入っていないので、いずれ入っていただくと大変ありがたいのですが、ソ ーシャルワーク、ケアワークの職能団体と福祉系の学会と養成機関が全部一緒になって おりまして、その会合が23日にありますので、そこにも山内室長に来てもらって、話を してもらって是非、そういうケアワーク、ソーシャルワークの職能団体もこれを活用し てほしいという話をしてもらおうかなと思っているわけでございます。  それから、もう一つは、社会福祉系の大学が集まっている学校連盟がございます。そ こでいろいろ教材開発、教育方法をやっていますので、佐藤委員の今のような話をして いただくとか、必要があれば大川委員にも来てもらいたいというようなことも考えてお りますが、ただ、問題は学会ですから旅費がないので大変申し訳ないのですが、何とか ならないかと事務局に言っているのですけれども、事務局もなかなかという話なのです が、そういうことも含めて何しろ広げていくことによって、だんだん使い勝手が見えて くるのではないかと思っております。そんなことを委員長の名のもとで少し動かせてい ただいて、時には先生方にご協力をお願いすることになるかと思いますが、そんなこと をご了解いただければありがたいということでございます。  事例報告を聞いていてもったいないと、ほかの人に聞いてもらう必要があるというの が私の思いで、この間から事務局にそういう話をしていたところでございます。  以上ですが、それについて何かご質問・ご意見ありますか。よろしゅうございますか 。できれば、今年度の厚生労働省科学研究も終わってしまいましたし、しかし、今度は 文部科研が11月に一新されますが、そういうところも活用するとか、他の研究助成もい ただきながら是非考えていきたいと。そういう意味では、この専門委員会を一種の表看 板・裏看板で、表は専門委員会かもしれませんが、裏の方はICF活用研究会みたいな ものをつくらせていただくことが出てくるかもしれませんが、それはまたご相談させて いただきますので、いずれにせよ審議するだけではなくて、普及・活用するということ でご理解をいただきたいということでございます。  何か事務局からありますか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  ありがとうございます。  この企画につきましては、また、委員長とご相談させていただきながら、随時皆様に 情報を提供させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○大橋座長  それでは、各委員の先生方、ご協力・ご支援いただけるということで、是非よろしく お願いいたします。一々委員会を開いて決定している時間がないかもしれませんが、そ こは委員長と事務局に少しお任せいただくことになるかと思いますが、どうぞご了解い ただきたいと思います。ありがとうございました。  それでは、今日予定した議事は以上でございますが、事務局から何かございますか。 ○疾病傷害死因分類調査室長  特にございません。  以上で、第6回社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会を閉会といたしま す。どうもありがとうございました。 ○大橋座長  どうもお疲れ様でした、ありがとうございました。 照会先   厚生労働省大臣官房統計情報部人口動態・保健統計課 疾病傷害死因分類調査室 電話:(代表)03-5253-1111(内線)7493