09/03/05 第9回労働政策審議会勤労者生活分科会議事録            第9回労働政策審議会勤労者生活分科会        日時 平成21年3月5日(木)        10:00〜        場所 中央合同庁舎第7号館1114会議室 ○伊藤分科会長  おはようございます。定刻になりましたので、第9回労働政策審議会勤労者生活分科会を 始めたいと思います。本日は田沼委員がご欠席でございます。  議事に入ります前に、前回の分科会以降新しくこの分科会の委員にご就任いただきました 方々をご紹介させていただきます。名簿は資料1でお配りしていますが、これからご紹介さ せていただきます。まず労働者側の代表といたしまして、全国労働金庫協会常務理事の秋山 久美雄委員、全国生命保険労働組合連合会中央書記長の加藤大典委員、労働者福祉中央協議 会事務局長の高橋均委員です。次に使用者側の委員の方をご紹介させていただきます。日本 経済団体連合会労政第二本部副本部長の遠藤寿行委員、三菱電機人事部労政福祉グループマ ネージャーの黄檗満治委員です。  それでは最初に氏兼勤労者生活部長からご挨拶を賜ります。 ○氏兼勤労者生活部長  皆さん、おはようございます。本日は大変お忙しい中ご出席を賜りまして、御礼申し上げ ます。勤労者生活分科会におきましては、主として財形制度についてこれまでご審議いただ いております。財形制度はご案内のように昭和46年に発足しまして、この分科会でも有意 義なご意見をいただきながら発展してまいったわけです。他方で昨今の財形制度を取り巻く 状況が大きく変化しておりまして、一連の行政改革の流れの中で昨年末に閣議決定がなされ、 雇用・能力開発機構の廃止が決まっています。これまで雇用・能力開発機構において実施さ れてきました財形融資業務についても、スリム化を図ったうえで独立行政法人勤労者退職金 共済機構へ移管することが決定されました。詳細につきましては、後ほど私どもの企画課長 のほうから説明しますけれども、本日のご審議を踏まえ、今後必要な法的整備や円滑な移行 を図ってまいりたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。  さらに、本日は価値総合研究所の村林正次先生をお招きしまして、「住宅資産価値創造に よる資産形成」というテーマでお話をしていただくことにしています。勤労者にとっておそ らく最大の資産形成というのは持家の取得ということであろうかと思いますが、住宅資産の 動向、非常にいま経済が厳しいときですけれども、勤労者生活にも大きなかかわり合いがあ ると思っています。今後、財形融資制度につきましては、住宅融資に特化する形で移管され るということで、一つの大きな節目を迎えることになります。皆さま方のご意見を踏まえな がら、財形業務の的確な推進に努めてまいりたいと思いますので、今後ともどうぞよろしく お願い申し上げます。それでは、本日はよろしくお願い申し上げます。 ○伊藤分科会長  どうもありがとうございました。それでは議題に入りたいと思います。お手元の資料のよ うに本日の分科会のテーマは5つありますが、まず先ほど氏兼勤労者生活部長のご挨拶にあ りましたように、独立行政法人の整理合理化計画を受けて、昨年末に雇用・能力開発機構の これからの有り様について閣議決定がなされております。そのことを受けました財形業務の 見直しから入りたいと思いますが、議題の1、2、3が関連しておりますので、一括して、 事務局のほうからまず説明をお願いしたいと思います。 ○小林企画課長  それでは資料に基づきましてご説明をさせていただきます。まず資料2-1で「雇用・能力 開発機構の廃止について」という閣議決定の文章を付けています。雇用・能力開発機構の関 係につきましては、一昨年の独立行政法人整理合理化計画で事務・事業の見直しということ が取り上げられて以来、様々な議論が行われてまいりました。これはご案内のとおりかと存 じますけれども、単なる事務・事業のあり方の見直しということにとどまりませんで、法人 の存廃を含めて議論になったところがあります。いわば一つの象徴的な形で取り上げられた 面もありまして、年末ぎりぎりまで様々な紆余曲折を経てという経緯がありました。そうい ったことで途中の経過を極力お伝えはしてまいりましたが、分科会という形では今日に至っ てしまったということで大変申し訳なく思っておりますが、その辺の事情はぜひご理解いた だければと思っております。  内容ですが、財形に関係します部分に下線を引いています。この資料の2頁目をご覧いた だきますと、IIで「法人の廃止」ということが書かれております。「独立行政法人雇用・能 力開発機構は廃止する。(1)職業能力開発業務は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に 移管する。(2)その他の業務は、廃止又は独立行政法人勤労者退職金共済機構等へ移管する」 ということです。財形業務につきましては3頁をご覧いただきたいと思いますが、「業務・ 組織の見直し」のうちの「その他の主な業務」というところで取り上げられております。こ の能力開発もそうですが、移管を図るに当たっては、業務の廃止あるいはスリム化を極力図 ったうえでということが前提とされているところで、財形業務に関しては(2)にあります が「財形住宅融資業務は独立行政法人勤労者退職金共済機構へ移管し、財形教育融資業務は 廃止する」ということで、この移管の話に加えて全体のスリム化という流れの中で、教育融 資のほうが実績が乏しいということで廃止が決定されたという形に、残念ながらなっており ます。それから最後の「実施時期」では、「以上の改革に必要となる法制上の措置について は、平成22年度末までを目途に講ずる」ということです。これを単純に読みますと次次期 の通常国会への提出とも読めるわけですけれども、行革の趣旨あるいはその実施に当たりま して、一定の時間を要するというようなことを考慮しまして、現在のところ次期通常国会へ の提出というのが一番有力な選択肢になっています。それから実際のその法律の実施の時期 ですが、平成23年4月が想定されているということで、これはこの財形業務だけではあり ませんで能力開発業務、あるいは雇用・能力開発機構以外に独立行政法人の見直しで取り上 げられている所がありますが、いずれも平成23年4月の実施ということでこれから進めて いこうという状況になっているところです。以上が閣議決定の文章です。  その次に資料2に付いていますのは、いまご覧いただきましたものを図にしたもので、下 から2つ目に勤労者財産形成業務がありますが、住宅融資の移管と教育融資の廃止が書かれ ています。  資料2-3をご覧いただきたいと思います。財形制度の全体像を色分けして表したものです。 実は財形のほうは、先に融資あるいは特に助成金の見直しをしており、現在経過措置となっ ている部分があります。それを移管の時期として想定しております平成23年4月との関係 で色分けで示したのがこの図です。左側に助成金制度とありますが、助成金制度は左の2 つの助成金で、こちらの経過措置が平成20年度あるいは平成21年度で終了するというこ とですので、平成23年4月の移管の前にこちらは経過措置が終了という形になります。そ れからピンクのところは、財形助成金と財形持家分譲融資ですが、財形助成金の経過措置は、 財形助成金は7年間にわたる措置ということがありますので、最長で平成26年度まで、財 形持家分譲融資は現在のものの最長のものをみますと平成44年度までですので、移管後も この経過措置を新法人のほうで行っていく必要が出てくるということです。一番右側の黄色 の財形教育融資制度ですが、今般の閣議決定で廃止と設定されたわけです。こういったこと を踏まえますと、新法人に移管する平成23年度までに廃止ということになるわけですので、 平成22年末で申請を締め切り、実際の貸付までに一定のタイムラグがありますので、平成 22年度中に貸付が終了して、平成23年度以降は回収業務だけが残るという形にしたいと思 っております。こちらは償還期間が教育融資は最長10年という形になっておりますので、 平成22年末で廃止しますと回収は最長で平成32年度までということですので、新法人は この回収業務を行うという形で整理をさせていただければと思っております。残る右側の真 ん中に財形持家個人融資制度と書いてありますが、こちらが新法人におきます中心業務とい うことになるわけです。以上が資料2-3です。  続きまして資料3をご覧いただきたいと思います。資料3は財形貯蓄あるいは融資の実績 をまとめたものです。1頁目は財形貯蓄の推移ということで、下の表の右端をご覧いただき ますと契約件数と貯蓄残高が書いてありますが、平成19年度末で1,034万6,000件、貯蓄 残高が17兆2,300億円余ということになっています。2頁目は財形給付金あるいは財形基 金で、勤労者の貯蓄形成のために事業主が拠出をする制度ですが、財形給付金のほうでご覧 いただきますと、平成19年度末で実施企業数が1,742社、総資産高が455億円余になって います。3頁目が財形持家融資ですが、上の折れ線グラフをご覧になるとおわかりいただけ ますように、最近の住宅ローン市場全体の動向、あるいは非常に低金利で推移している中で、 財形は5年固定という形ですが、長期の固定ローンのほうがより選好されている状況の中で 減少傾向で推移しております。平成19年度の融資残高が、件数は書いてありませんが約18 万件で、融資残高は2兆700億円余です。最後の4頁目は財形教育融資の実績です。こち らはその表にありますが貸付件数が19年度末の実数で34件、残高全体の件数も平成19年 度末で389件ということで、こういった実績を踏まえて今般の閣議決定で廃止という形で 決定されたということです。以上が財形制度の関係です。  次に、移管先となります独立行政法人勤労者退職金共済機構の関係で、それが資料4-1 でお付けしております。下線が引いてありますが、平成15年から独立行政法人の形を取っ ております。一般の中小企業退職金共済、これは通常の中小企業の従業員の退職金共済です が、それとともに合わせて特定業種の退職金共済ということで、建設業、清酒製造業、林業 というものを行っております。それぞれ事業本部が置かれており、区分経理がなされている 状況です。それから資料4-2に現行の退職金制度の概要をお付けしております。詳細は省略 しますが、事業主の方から掛金を払い込んでいただき、従業員が退職した際に退職金の形で 機構のほうからお支払いするというのが基本的な形になっています。資料はお付けしており ませんが、今般の財形業務の移管に当たっては、財形業務の円滑な移管と円滑な業務運営に 支障を来さないように万全を期してまいりたいと考えております。まず現行の財形業務は雇 用・能力開発機構で行っておりますが、この運営の枠組みはそのまま承継をします。したが って債権・債務関係はそのまま承継をします。それから、退職金と財形とは当然ながら区分 経理を行うという形になります。新法人におけます運営体制をしっかりさせていきたいとい うことで、人員組織体制は現行の体制を維持するとともに、独立行政法人ですので、運営費 については国から必要な運営費の交付を行うということになります。円滑な業務運営がなさ れますように業務引継ぎを徹底しますとともに、金融機関を始めとします関係者の皆さまに は周知徹底を図ってまいりたいと思っております。  以上が閣議決定と財形の現状、移管先の勤労者退職金共済機構の概要ですが、これからさ らに詳細な検討を深めてまいりたいと思っております。最終的には法律改正事項ですので、 雇用・能力開発機構法はもちろんですが財形法、それから中小企業退職金共済法等の改正が 必要になります。その段階で、また改めて委員の皆さまにはお諮りを申し上げてご意見をい ただいて、円滑な移管に努めてまいりたいと思っております。説明は以上です。 ○伊藤分科会長  どうもありがとうございました。議題の1から3まで一括してご説明を願いました。これ から意見の交換等に入りたいと思います。委員の皆様からご意見、ご質問等がありましたら お願いいたします。 ○村井委員  1点教えていただきたいのですが、移管に当たって組織体制はできるだけ維持をしたいと いうお話がありましたが、もう少し具体的にお話をいただけますか。 ○小林企画課長  組織体制は、雇用・能力開発機構のほうに現在勤労者財産形成部という担当の部が置かれ ておりまして、職員数が約20名強ありまして、これと同規模の体制を勤労者退職金共済機 構に置きたいと思っております。ただ、勤労者退職金共済機構につきましては、新たな業務 ということになりますので、いまノウハウを持っておりますのは、雇用・能力開発機構です から、業務の円滑な移行ができるように、あらかじめ、あるいは移管後につきましても、う まく人的な関係等を考慮しながら、円滑な移管を図ってまいりたいと思います。 ○勝委員  1点質問させていただきます。その運用費についてなのですが、先ほどのご説明ですと、 国から資金が出るというお話でしたが、貸出しをするということはかなり利益も出るわけで すが、現状の運営費はどのぐらいの規模かを教えていただければと思うのですが。 ○小林企画課長  現在、雇用・能力開発機構に対しまして、もちろん雇用・能力開発機構は能力開発のほう がメインの業務ですので、全体規模はものすごい額になるのですが、そのうち財形に関しま しては7億円弱の規模でございます。 ○勝委員  利益も出ているわけですよね、貸出し、融資をしているということで。利益といいますか、 融資をすることに伴って、ある程度の利ざやというか、そういったものは。 ○小林企画課長  現在の財形の仕組みは、金融機関に勤労者が財形貯蓄をしていただくわけですが、それを この機構が一括調達いたしまして、最終的にはその勤労者のほうにお貸しをして、また回収 をしていくということです。現在、調達金利に一定のスプレッド等のプラスアルファーの分 を上乗せしてお貸しするという形を取っておりますので、各年度一定の剰余が出るような形 となっております。 ○氏兼勤労者生活部長  財形については累積欠損があるわけです。 ○小林企画課長  平成19年度末で225億円ほど累積欠損金を抱えております。これはかつて調達金利より も低い金利で貸していたという逆ざやの時期がありまして、現在は調達金利がプラスアルフ ァー分を上乗せしていますので、逆ざやの出ない形になっているのですが、19年度末で約 225億円の累損を抱えております。いまは剰余が出る形になっておりますので、段階的にそ れで解消をしてきている状況です。累損のほうは、あと数年ぐらいで解消されるという見通 しになっています。 ○伊藤分科会長  よろしいですか。 ○西村委員  財形のあり方については、ポータビリ性がないとか、バリアフリーにするためのリフォー ムに対して使えるけれども、ものすごく審査が厳しいとか、あり方についていろいろあった と思うのですが、その辺の中身は変わらずに、とりあえず移管をするというようなことなの でしょうか。 ○小林企画課長  今回の場合はまず業務自体を移管するということですので、何より業務の移管に支障を来 たさないようにするというのがいちばんの最重要課題だと思っております。ただ、せっかく 移管をするということですので、それを機に改善できる部分については改善をしていくとい うのは重要なことだと思っています。財形の場合、税制上の優遇措置等を伴っておりますの で、簡単に制度を変えるというのは、なかなか難しい部分がありますが、今度は移管される 先が、勤労者退職金共済機構という中小企業を相手にやっている独立行政法人ですので、よ り中小企業の方にも活用していただけるような制度にしていくとか、そういった方向性で、 合わせて見直しを図れる部分については図っていく必要があろうと思っています。 ○遠藤委員  すでに課長のほうから説明があったところですが、新しい独立行政法人で、資金面、経営 面できっちり区分経理をするということは、しっかりやっていただきたい。執行実務の面で も、しっかりと隔壁を設けるような形で運用していただきたいと思います。  それから仮にこの新しい独立行政法人に業務が移った場合、評価が問題になると思うので すが、それについては評価委員会が別途あると思いますので、そちらのほうでどのような執 行状況になっているかについても、きっちりモニターしていただいた結果を、この分科会な どで報告をしていただければありがたいと思います。以上、要望2点です。 ○小林企画課長  当然ながら区分経理はきちんと行ってまいります。運営状況につきましては、委員の皆様 方にも随時ご報告をさせていただきたいと思いますし、評価委員会等ございますので、そち らのほうでも厳正にチェックがなされる仕組みになっています。 ○勝尾委員  いま企画課長からもお話があったことなのですが、やはりお願いなのですが、勤労者退職 金共済機構のほうに移管されるわけですので、先ほどもお話がありましたように、中小企業 に勤める人の財産形成がいままで少しおろそかというわけではありませんが、少なかった、 どちらかというと利用が大手に限られてきたという実績がありますので、これを機に中小企 業に勤める人の財産形成に努めていただければありがたいと思っています。 ○小林企画課長  ご指摘を踏まえてまたご相談させていただきます。 ○伊藤委員  ちょっと重複することもあるかもしれないのですけれども、この移管を機に制度の内容そ のものについても、いろいろ検討していただくというお話がいまありました。運営、仕事の やり方、効率化のほうも合わせて検討していただきまして、7億円かけてやっているものを、 ただ持っていって7億円でやるということだけではなくて、是非、効率的な仕事の運営もご 検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○小林企画課長  雇用・能力開発機構の見直しも、そのような趣旨が根底にありますので、効率化できる部 分は効率化し、円滑な運営に支障を来たさないことにも留意しながらやってまいりたいと思 います。 ○新村委員  大変な変化が起きたことで、皆様ご苦労様でございます。今回は先ほどのご指摘等にもあ ったように、とりあえず現行制度をスリム化して移行するというご報告のみであったのです が、この分科会ではかなり以前からもう少し根本的なところを議論してまいりました。もち ろん事務的にいま非常に大変であるとは思うのですけれども、事務局の方に是非要望したい のは、労働市場や何かが非常に大きく変わっている中で、財産形成制度がどういったもので あってほしいかということを、根本から考えていただきたいと。そして何か新しい制度の誕 生に結び付くような議論をしていただきたいということを要望したいと思います。  中小企業への普及についてもかなり長いこと議論されてきましたが、実効を上げてこなか ったことでございまして、今回中退金のほうに移行するということで期待をしておられると いうご発言がありましたが、中小企業を対象としているところだから自動的に中小企業に普 及するかといったら、そんなことはないのでありまして、やはりそれなりの政策手当てをし ないと無理であろう。私も長いことこの分科会に携わってきて、ずっとお題目のように、中 小企業の人がちっとも入っていませんねというような議論をしてきたことを思い起こしま すが、やはり制度自体を大風呂敷でもいいから、基本的なところから考えて、スリム化した ことを1つの一助として、余裕ができたらそちらのほうも考えていただけたら嬉しいと思い ます。 ○伊藤分科会長  ただいまお話がありました点は、この分科会でも大企業以外になかなか利用が進まない問 題、また雇用就業構造が変化している中での有り様とか、根本の議論があって、議論を深め ていこうというお話が以前からなされておりますので、今回は、雇用・能力開発機構という 大法人がそちらへ移行していくことで、物理的にも大変な作業があるのだろうと思いますが、 議論を深める機会を是非今後、厚生労働省事務局も将来の課題としてそういう点を念頭にお いていただければと思っています。  先ほど遠藤委員からお話があった中で、評価委員会の評価結果等についても、この分科会 で開示願いたいというお話がありましたので、そのことも念頭においていただければと思い ます。ほかにご意見はございますか。 ○藤田委員  お話は伺ったのですが、いまありましたように、この審議会は政策審議会の一環をなして おりますので、政策的な問題を取り上げていくべきだろうと思います。そういう意味で質問 させていただきます。従来、財形貯蓄、財形年金、財形住宅と3本柱できたわけですが、そ の中で住宅だけが残る、それも一部になるわけです。年金がなくなって、しかも中退金へ機 構そのものが移行するという、何かちょっとちぐはぐな感じがするのですが、格差が非常に 生まれている時代でありますので、貯蓄のほうもフローそのものがなかなか貯まりにくい。 ですからストックまでになかなかいかないのではないかという感じがしておりまして、今後、 金融資産の形成というようなことも、考えていかなくてはいけないのではないか。ですから 相当範囲が狭まって、機構の移行ということをいまおっしゃったわけですが、政策的な議論 としてこれからの財形のあり方を、機構の変化に伴う議論の中で、どのように展開されて主 張されてこられたのか。あるいは厚労省としては、今後の財形政策として、どういうことを 考えておられるのか。範囲が狭まった中で、窮々としていくことでいいというような内閣あ るいは政治の判断があろうかと思いますが、厚労省としてはそれなりの主張を持っておられ ると思いますので、その点をお聞きしたいと思います。 ○小林企画課長  今般、財形教育融資を廃止して財形住宅融資に特化する形になるのですが、いま委員から お話があった貯蓄のほうは一般財形、住宅貯蓄、年金貯蓄ということで、年金の貯蓄は残り ます。今後高齢化が進む中で、いま年金制度のほうも整備されてきていると思いますが、財 形年金はいわば自助努力を支援する意味で、今後の高齢化に対する備えという意味では、引 き続き重要性を持っているのではないかと思います。  財形制度そのものについては、確かに件数が減少してきているのですが、総論として申し 上げれば、先ほど分科会長からお話がありましたように、いま非常に雇用慣行などが変わっ てくる中で、職業キャリアの展望を非常に持ちにくい、同じように資産形成の展望を持ちに くい状況になりつつあるのだと思いますが、財形制度は労使が協力し合って、若いうちから 計画的に貯蓄形成していこうということですから、いまの社会情勢の変化を考えますと、逆 に今日的に評価されていい部分はあるのではないか。ただし、先ほどもご指摘がありました ように、格差のことを言われる中で、中小企業の問題をどうするかというようなものを、こ の機に考えていく必要があるだろうと。ただ、具体的にうまい方法がすぐに思いつくかとい うと、これはまた難しい部分があると思うのですが、総論としてはそのような認識を持って います。 ○藤田委員  もう1点、やはり企業の体力がなくなってきて、企業福祉全般が後退しているという感じ がするのですが、ある意味では財形は企業福祉の一翼を担っているわけですから、体力が減 退してきたということと、もう1つは、労働市場あるいは雇用政策が流動化して、非正規雇 用の拡大という局面があると思うのです。  財形というのは、前提としては長期雇用でありまして、長期雇用を前提として企業福祉を 活性化してきたという経緯があったわけですが、雇用の流動化に伴って、企業福祉全体が低 下せざるを得ない状況にあると思います。その中で雇用の見直し、例えば財政白書の中でも、 新しい日本的経営の復活が1つの課題になってくるということが取り上げられております が、そういうことになれば、企業福祉の再生、新しい活動のあり方が出てくるのではないか と感じています。問題が非常に大きく、日本経済の動向と絡んでいるわけですが、企業福祉 のあり方を1つの切り口にして、是非厚労省でもご検討いただきたい。また、この分科会で も当然、議論していかないといけないだろうと思います。 ○伊藤分科会長  大変大きい課題でもあろうと思います。今回の一連の経済情勢、またそこから出てくる雇 用の問題等々で象徴的に、もう一度立ち止まって考えようという課題もたくさん出てきてい ると思います。雇用・就業行動の多様化、それぞれの企業のビジネス事業のサイクルも短く なりつつある中で、勤労者の生涯にわたる生活設計をどう考えていくのか、それを支える福 祉面もそうですし、能力開発等々も十分なされていなかったところに、今回の多様化した就 業形態の中で、いろいろ問題が出てきていることも事実だろうと思います。今回も雇用・能 力開発機構の中心は、能力開発等々の移管の問題が大変大きいわけですが、組織の変更だけ ではなくて、実際それがこれからの勤労者の生活設計等をどう作っていくかということに結 ぶ形で、組織論だけではなくて議論が深められていくことが大事なのだろうと思います。財 形の問題に限らず、これもまた氏兼部長のほうで、将来にわたっての勤労者の生活を支えて いくための議論をどのように展開していくか、また受けとめていただければと思いますので、 よろしくお願いいたします。  ほかにございますか。よろしいですか。では議題の1から3につきましては、ただいまご 意見をいただきましたので、そういうことを念頭において次の通常国会の法改正に向けて準 備を進めていただければと思います。議題4の、財形住宅融資を行う福利厚生会社の登録制 への移行の問題について、事務局から説明をお願いします。 ○小林企画課長  それでは資料5-1です。「財形住宅融資を行う福利厚生会社の登録制への移行について」 です。こちらのほうも行革関係の話でございまして、国の関与等の見直しということで、指 定制という形が取られているものを、この際登録制に移行していくということです。これは 財形だけではありませんで、我が局の関係でいえば、例えば安全衛生のコンサルタント試験 の指定講習機関を登録制に改めるとか、いろいろな指定制が取られているものを登録制に移 行をしようということです。指定制の場合、行革の観点からいいますと、もちろん基準が定 められているわけですが、最終的には大臣の裁量の余地が残るのではないかということで、 登録制であれば登録基準を満たせば登録できるということで、裁量の余地を極力減らしてい こうということが、考え方の基本です。財形の福利厚生会社につきましても、そういった観 点から登録制への移行を図る必要があるということです。  まず福利厚生会社ですが、財形法に根拠がありまして、財形はご案内のとおり、企業の社 内融資の補完といった観点で、企業が機構から資金を借りて従業員に転貸をするという形に なっています。そうなりますと、企業が長年にわたって債権管理等々を行っていくというこ とになりますので、企業によってはそこが非常に大変であり、利用しにくい部分があります。 それを代わりに行うということで、この福利厚生会社の制度が設けられています。この福利 厚生会社につきましては、企業グループの福利厚生部門を独立させたクローズド型は指定は 必要ありません。もう一方が広く出資を募って、財形住宅融資を業として行うオープン型が ありまして、こちらのほうが大臣の指定を受けた法人であることが必要ということになって います。  この指定に関する具体的な規定が財形法施行規則に書かれています。今回、規則を改正し まして、指定制から登録制に移行するということです。具体的な省令の改正の条文につきま しては、後ろに新旧対照表を付けてありますが、非常に技術的になりますので、詳細は省略 をさせていただきますが、資料5-1に○で項目を掲げています。登録制に移行するに当たっ て、この○にあるような項目に関する規定の整備を図る必要があるということです。これは、 先行して登録制に移行をしている例えば医療法、水道法といったところがありますが、既に 登録制を取っているところの規定に準拠するとともに、現在指定制のもとで一定の基準が設 けられておりますので、それを踏まえて規定の整備を行うというものです。この省令につき ましては、平成20年度中に措置というものが行革本部決定で掲げられていまして、3月27 日に改正省令を公布いたしまして、年度末ぎりぎりですが、3月31日に施行を予定してい るということです。以上です。 ○伊藤分科会長  どうもありがとうございました。それでは皆様からご意見、ご質問等がありましたら、ど うぞお願いいたします。  これは一種の規制緩和の一環として行われるのでしょうけれども、登録制に移行すること によって、新規参入等が予想される情勢はあるものでしょうか。 ○小林企画課長  基本的には登録基準に合致をすれば登録できるということですので、そういう意味では新 規参入の機会は拡大するということになろうと思います。現在指定対象となっておりますの が、財形住宅金融株式会社の1社のみが指定されている状況でございます。今後についてと いうことですが、実際には勤労者に対する住宅融資の貸付けを主として行う会社であるとい う、基本的な基準は設けざるを得ないと思いますので、そういうことを主としてやってくれ る会社がどれぐらいあるのかということを考えますと、たくさん手が挙がるということには おそらくならないのかもしれませんが、形としては透明化が図られるということです。 ○新村委員  質問ですが、第1号と第2号の残高の比率はどのぐらいで、いま指定法人がどのぐらいの シェアを取っているのですか。 ○小林企画課長  クローズド型とオープン型ということですが、クローズド型は実は現在大手電器メーカー 系列の2系列だけです。それ以外はすべてオープン型の財形住宅金融株式会社をご利用いた だいています。 ○新村委員  ほとんどがこちら。 ○小林企画課長  それが実態です。 ○新村委員  そうですか。結構残高があるわけですよね。 ○小林企画課長  はい。 ○西村委員  1つ確認をよろしいですか。融資をする場合には、会社は必ず指定を受けなければいけな いのですか。いまの状態で、登録制に移行しますけれども、指定を受けないでも融資なり財 形の業を行うことはできるのですか。 ○小林企画課長  基本的には、個別の事業主が、この融資制度を企業内で設けていただいて、従業員に貸し ていただくことは全く自由なわけです。ただそれは、実際に勤労者に何十年間にわたって債 権を管理するということになりますと、企業のほうの負担も相当出てくるだろうということ で、財形住宅金融株式会社を指定しておりまして、ここを使っていただくのはもちろん自由 ですし、企業の中でそういう仕組みに基づいて貸付けをやっていただくのも、これもまた自 由でございます。 ○伊藤分科会長  よろしいですか。登録制への移行について報告を受けたということにさせていただきます。  それでは本日の5番目のテーマに移ります。本日は価値総合研究所取締役の村林正次様を お招きしておりまして、住宅資産の問題につきまして、ご講演をいただくことを予定してお ります。氏兼部長の当初の挨拶にありましたように、勤労者にとって最大の資産形成は家を 持つということですし、生涯の生活設計にも大きくかかわってくる問題です。また先ほどこ れからの財形制度等々の根本的な議論の必要性も指摘がございました。これからの議論に役 立てていく意味で、村林先生にご講演をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○村林氏  ただいまご紹介いただきました価値総合研究所の村林でございます。今日はお招きいただ きましてありがとうございました。タイトルにありますように、「住宅資産価値創造による 資産形成」に関して、1時間ぐらい時間をいただきましたので、お話をさせていただきたい と思います。  画面のプロジェクターで説明したいと思いますが、お手元にもカラーコピーをご用意して ありますので、若干細かい字のところもありますが、両方見ながらお聞きいただければと思 います。  お話する前に簡単に自己紹介をさせていただきたいと思います。今日の配付資料の中に、 価値総研と書いてある封筒が入っていると思いますが、その中に会社概要と、機関誌の事例 ということで19号だけ入れてありますので、細かい内容はあとで時間があるときに読んで いただければと思います。私どもの会社は価値総合研究所という仰々しい名前を付けており ますが、もともとは、25年前に長銀経営研究所として発足した会社です。その間、何度か 組織を変えてきましたけれども、10年前の長銀問題の際に、新生銀行・アサツーさんの資 本参加を得、併せて価値総研に改称して再スタートした会社です。その後新生銀行さんの上 場に当たって、役職員で株を引き取らせていただきまして、いわゆるMEBOですが、今は 私も含めた役職員で会社の株を持っておりまして、文字どおり独立系のシンクタンク、ある いはコンサルティング会社ということになっております。  私は30年以上、都市政策や住宅政策等にかかわる調査・研究や企業のコンサルティング をやってきましたが、特に住宅については、ずっと継続的に様々な分野でやってきています。 特にこの10年ぐらいは、「価値総研」という名称の会社に在籍していることも念頭に、住 宅の資産価値に着目して検討してまいりました。  ご存じのように2006年に住生活基本法が公布されまして、その後2007年の4月に、住 宅金融公庫が住宅金融支援機構となりまして、日本の住宅政策も新しい段階に入っておりま す。その後、超長期住宅に向けていろいろな政策を展開しております。個別には非常に意味 のある政策を次々に打たれていると思っておりますが、住宅政策の目標として、住宅購入を、 投資、即ち住宅を資産として価値を向上させるという視点がもうひとつ明確になっていない のかなという気がいたします。バリアフリー、環境負荷低減、耐震性だとか機能・性能につ いては、非常に高いレベルで取り組まれていると思いますが、それだけでは住宅の資産価値 が生まれないということだと思います。少し仰々しいタイトルですが、今日は貴重な時間を いただきましたので、いまのようなことを念頭におきながら、住宅資産の価値向上にかかわ るいくつかの項目について、ポイントを提示させていただきますので、これから検討するに 当たって、何らかの参考にしていただければありがたく思います。  今日お話するのは、限られた時間なのですが、配布した資料のAからIまでの項目を考え ております。住宅については非常に多様な要素が関連していますので、いろいろな切り口が ございます。まとめてお話しようとすると、まだまだ多くの切り口があるのですが、本日は、 とにかく住宅の価値をどう考えるか。いまどういう状況になっているのか。これからどうす ればそれを作っていけるのかというようなことを中心にお話させていただきたいと思いま す。  まず、そもそも住宅の価値創造とは何かという基本的な話です。ここに書いてありますよ うに、住宅についての価値は人によっていろいろあるわけですけれども、基本的には、いつ でもある一定の価格で売却できるということに集約されるのではないかと思っております。 価格はいろいろありますが、少なくともローンを払った分はちゃんといつでも市場では売れ るものが、初めて資産になっているということだと思います。  ちょっと見にくいですが、5つ項目を挙げていますが、こんな項目が必要かなということ で、このあとこれに関連するいくつかの話をさせていただきたいと思います(P3,4)。モーゲ ージローンとしての一貫した金融システムと、日本の文化・技術・素材・デザインを合わせ て、新たな日本のシステムと書いてあります。これは住宅金融が住宅金融支援機構により民 間主導のアメリカ型に、すでに移行して運用されております。アメリカについては社会情勢 や文化的な背景も違いますが、住宅金融のローンとしては、非常によくできたシステムだと 思っております。その方向で、日本のシステムは動いていますので、アメリカのモーゲージ ローンのシステムをきちんと活かした上で、あとは日本独特の状況を反映して、新しい日本 のシステムをつくっていくということかと思います。では、こういう題目を念頭に置きなが ら話を進めたいと思います。  住宅価値、住宅にかかわる関連要素は実は非常に多くて、しかもそれぞれが非常に大きな テーマになっております。いちばん難しいのは、個々の課題について部分的な最大効用を挙 げても、必ずしも全体の最大効用にはならないことです。どんな課題でもそうでしょうけれ ども、特に住宅の価値を考えるに当たっては、そういうことが言えるかと思います。個別に 非常に多くの分野での専門家や業界の方もいらっしゃいます。ただ全体を常に俯瞰して見な いと、なかなかこの議論は進みませんので、このことが住宅資産価値の議論の難しい面では ないかと思っております。  この切り口はいろいろありますが、主要な項目が青い色の部分です(P5,6)。まず、住宅 マーケットの項目がいちばん左にあります。あとはそれどう作っていくか、それをどう設計 していくか、住宅の価値や評価をどうするか、それを支える住宅の金融システム、既存住宅 の流通をどう考えるか等がありますが、これら全体をマネジメントするシステムは何かとい うのは、常にこれらが相互に関連していますので、常に同じ土俵で議論することが必要かと 思っています。  この中で、特に住宅地のマネジメントが重要かと思っております。右下のほうに大きな矢 印で、「サステナブルハウジング・モデルプロジェクト」と書いてあります。これはいちば ん最後にいろいろな課題を整理した上で、パイロット的なモデルプロジェクトが1つ必要で はないかということで書いております。この場合のサステナブルというのは、もちろん環境 や省エネの話もそうですが、時代を越えて価値が持続する、いつでも売れる住宅をどう造っ ていくかという意味で用いております。この辺を常に頭に置きながら、個別各論の話をお聞 きいただければと思います。  今、住宅資産の議論をしているわけですが、この住宅資産というものをどう考えたらいい かということです。これはあえてというところもあるのですが、まずは今、住宅の資産価値 は本当にあるのか、実は償却財としての住宅を買っているのではないかということを念頭に 置いた方がいいのではないかということで、3つぐらいの観点で書いております(P7)。ご承 知のように住宅の「量から質へ」というのは、随分前から言われています。実は、統計上は 40年前の1968年時点で、住宅戸数はもう世帯数を上回っておりますし、空き家の問題な どで、皆さんもご承知かと思います。そのころから「質への転換」と言われていたわけです が、本来、そこまでの世帯数を戦後あっという間に造ってきたというのは、ものすごいエネ ルギーだったのです。しかし、それを達成した後の政策目標としては、資産価値を上げると いう観点が重要視されてこなかったと思っております。  最初に、償却財としての住宅の意味合いです(P8)。家計の資産の大半は不動産資産で、 そのさらに大半が土地の資産というのは、ご承知のとおりかと思います。昨今、土地の価格 がどんどん下がって、土地の資産額もかなり下がってはおりますが、絶対額としてはまだま だ高い水準にあります。しかし土地も、上物をきちんと造らないと、土地だけで価値が付く という時代は、もうすでに終わっていると思いますので、土地にまだ資産があるのではない かという話自体も、これからは少し考え直す必要があるだろうと思っております。  肝心な上物ですが、住宅は特に一戸建ては既存住宅としてはほとんど売れなくなるという 意味で、価値がなくなると考えられます。もちろんリフォームをして価値を付加したりする ことは、個別にはありますけれども、全体としてはどんどん価値が低減していくというのが 実態かと思います。ですから一生をかけて、数千万円もかけて住宅を購入しても、いざ売ろ うと思うとほとんど値段が付かないというのが実態です。ですからこの実態は、償却財とし ての住宅を買っていることを示しているといいことをまず理解をしたほうがいいのではな いかと思っております。  先ほど、資産価値の大半が土地にあって上物分が少ないという話をしましたが、いまの上 物の価格というか、上物の価値がどのくらいあるのか。日本は土地が高いのでほとんど土地 が占めていて、アメリカは土地が安いので上物にあると一般的に言われているわけです。実 際にそれを具体的に証明するストレートな統計はなかなかないのですが、2つぐらいの統計 で日本とアメリカを比較しております(P9)。  日本の場合は「全国消費実態調査」から、不動産の資産価値が推計されております。推計 というのはご存じのように「全国消費実態調査」では、個別世帯にどのぐらいの広さの土地 があって、どのぐらいの建物をいつ取得したかということを聞いております。それをもとに 土地は公示価格をベースに、建物は建築費×償却率ということで推計しております。償却率 で掛けていますから、ある意味では形式的な数字ですが、建物は実際に経年減価をしており ますので、場合によっては償却率より早く劣化する、減価することもあります。したがって、 大きくずれてはいないだろうと思っております。これで見ますと、建物の比率は約2割にな ります。  これは別の統計ですが、アメリカの場合はまずマーケット価格をベースにして、上物は推 定再建築価格でほぼ再現できます。経年減価もほとんどしませんので、推定建築価格をベー スにして、残った価格が土地価格という推計をされております。いま出ている右のグラフに は、経年的な数字が書いてあります。おおむね70〜75%が上物の価格の評価という流れに なっています。ちょっとずれているのは、季節調整をしている、していないという統計上の ことですので、くっつけて見ていただければと思います。  これを見ておわかりになるのは、アメリカにも2002〜2005年ぐらいに住宅のバブルがあ りました。そのときに上物よりは土地がバブル的に上がったことがあって、その期間だけ上 物の比率が下がっています。このグラフで少し下がっている部分です。ここは住宅価格が非 常にバブル的に上がったということで問題になった時期です。そういうことを考えますと、 やはり住宅は安定的に上物価格の価値があって、景気に特殊な状況があったときは、それが 土地に転嫁されて全体の価格が上がって、それが今調整されているということだと思います。 この数十年間、概ね70〜75%が上物価格ですから細かい数字の違いはあるかもしれません が、日本では5分の1ぐらい、アメリカでは4分の3ぐらいが上物の価値というように、こ れを読み替えていいのではないかと思っております。  それから、住宅に価値がないということを、あえていろいろな形で表現していますが、こ れは典型的な例として住宅の流通状態についてアメリカ等と比較したものです(P10)。我 が国ではマーケット的には圧倒的に既存住宅流通が少ないわけです。日本の場合、ここのい ちばん左側にありますように、新築の件数がアメリカとほぼ同じぐらいあるにもかかわらず、 既存住宅の中古の流通は非常に少ないという数字になっています。この折れ線グラフがその 比率です。アメリカの場合は逆に、新築着工が非常に少なくて、ほとんどが既存住宅マーケ ットで取引されています。ですから、しばらく時間が経って売ろうと思ったときに、既存住 宅マーケットですぐに売れるし、買おうと思ったときには新築もさることながら、中古の住 宅を買えるという状況になっております。  いつも議論になるのは、日本は古いもの、そもそも人が使ったものを嫌うのではないかと いう議論があります。これは住宅の価値に関係なく、価値観として新築を選好していて、そ の結果こうなっているという言い方もあります。また、住宅を買う目標が資産形成ではなく、 とにかく買えば最終的に死ぬまで住居費をかけないで住める、どんなあばら屋でも住宅さえ 持っていれば、最後まで住めるという安心を買っているという議論もあります。それはそれ であると思います。  ただ、すべての方がそういうことではない。きちんと資産化して売れるものであれば売っ たり、貸したり、借りたり、いろいろなことができます。終の住処と思っている方とか、と にかく新しい好きな建物を建てたいという方も相当いらっしゃると思いますが、基本的には そういうことも含めて、いつでも流通できる住宅にしておくことは、国民の基本的なニーズ というように理解していいのではないかと思っております。  それにも関連しますが、では持家はどのくらいの比率なのかということです(P11)。日本 は戦後以来、ずっと持家政策を採っていました。皆様も大半は持家だと思います。それでも 2005年の「国勢調査」では全国平均で64%、大都市の東京は非常に低い数字になっており ます。ただ、64%というのは、先進国レベルですし、持家政策の結果として、その成果が 上がっているということだと思います。  ヨーロッパは、ここには書いてありませんが、例えばスペインなどは80%ぐらいの持家 率ですし、かつて公営住宅が主流だったイギリスも、1980年代には60%を超えていて、近 年では70%になっています。  アメリカは言うまでもなく、住宅を所有することがアメリカンドリームですので、数少な い国の役割の中で、住宅というのは国の大きな責務ということで取り組んだ結果、2000年 当初までには、60%後半までいきました。しかし、それから少し伸び悩んでしまいました。 その理由は、マイノリティーがなかなか住宅を持てなかったからです。後ろのほうにグラフ がありますが、マイノリティーは50%を超えなかったのです。これにはいろいろな理由が ありますが、マイノリティーにも住宅を所有させるための促進施策が2000年前半にあった わけです。これを背景にして、サブプライムローンみたいなものも絡んできましたが、結果 としては今では68%ぐらいまで高まっています。その後伸び悩んでおりますが、白人は 75%ということで、ほとんどの白人が住宅を所有しています。あとは持家を持たない志向 もありますので、当然100%はありません。目標としては75%ぐらいが限界かと思います。 このような中で日本の持家政策も成果は上げているのですが、もう少し高くてもいいのでは ないかという気はいたします。  住宅の寿命も最近、いろいろな所で話題になっています(P12)。実は1980年頃から標 榜されており、その頃は「100年住宅」と言われていたのですが、いまは「200年住宅」と いわれています。100年というのは超長期の象徴としての数字ですが、100から200へとだ んだん多くなってきています。では、超長期というのはどのぐらいを目指すのか、今の住宅 はどのぐらいの寿命があるのかが問われます、実は、直接的な住宅の寿命の統計はありませ ん。よく出ているのがこの上の2つです。耐用年数というのはストックを着工戸数で割って、 何年経てばそれが入れ替わるかという数字です。それと滅失期間です。滅失した住宅が一体 何年で壊されているかという統計です。この2つで議論されていると思います。日本では概 ね30年ぐらいと言われています。アメリカでは100年とか、イギリスでは140年と言われ ております。  寿命ということではもう1つ、人の生命、平均余命的な考え方で推計されている方がいら っしゃいます。まさに人の寿命の推計の仕方に近いわけですが、残存率が50%になる時期 は41年のようです。これは推計時期がやや古い等、必ずしも統一的ではないのですが、30 年なのか32年なのかという議論は、ここではあまりできません。少なくとも1世代、長く とも40年しか持たないというのは、いろいろな見方で見てもわかるのではないかと思いま す。感覚的にもそうですが、この3つぐらいの数字を見ても、そういうことが言えるかと思 います。私もそうですが、30代後半で買って、あとはよほど転勤などがない限りはそのま まずっと住んで、相続のときには相続者が壊して新しいものを建てるという繰り返しになっ ていると思います。  先ほど住宅の価格の減価償却の法定の話と、実際のマーケットの話を少ししましたが、で は住宅の価値はどのぐらい目減りしているのか(P13)。実は、これもきちんと厳密に計算 するのはなかなか難しいのですが、国のほうでかなり多くのデータを使って、きちんと調査 をやられていますし、関連団体でもやられています。それによると、やはり一戸建住宅の場 合は20年もすると、ほとんど価値がなくなるという結果になっています。マンションの場 合、立地によっては収益還元的な価格が付きますので、古くなってもある一定の価格を保っ ているマンションも相当あります。それでも、やはり経年的には減価していきます。  新築から中古になったとたんに、一気に10%、20%下がってしまう。それを「新築プレ ミアム」と呼んでいるようですが、本来、そういうことがあってはなりません。ほとんど時 間が経過していないのに「中古」という言葉になったとたんに、ドカンと何割も下がるとい うのは、本来的な資産ではないことを示しています。もちろん場所によって違いますが、お しなべて見ると、こういうことが統計的にも計量的にも検証できると思います。それは感覚 的にもそう思っているわけで、それをいくつかの統計等でお示ししたわけです。  この原因は何だろうかということです(P14)。先ほども申し上げたように、これには様々 な要素が絡んでいて、誰かが悪いということではなく、それぞれの立場のそれぞれの人たち が、良かれと思ったことの全部寄せ集めた最後の結果が、今こういう状況になっているとい うことです。それだけに解決の糸口が難しいのです。私としては事情があるにせよ、金融機 関が担保価値以上のものは融資しないという本来の融資をきちんとやっていればと思いま す。きちんと信用リスクをチェックしながらも、いざという時にデフォルトしたら、その土 地を売却したことによってそれが回収できるという、最も基本的な融資の考え方を全うして いれば、こういう状況にはならなかったのではないかというのが1つあると思います。  あと、これは企業行動としては合理的なのですが、住宅メーカーやディベロッパーも短期 的な利益を確保していくということで、売ってはその資金で建てていったということの繰返 しが続き、本当に価値のあるものを供給することをおろそかにしていたこともあると思いま す。また、何よりも購入者が住宅を資産として、きちんと認識して買っていたかということ が大きな要因だと思います。購入者が資産として認識をするにはマーケットがそうなってい ないので、一般の人はそれを非常に認識しにくいということもあったかと思います。その時 代その時代でいろいろな事情があったと思いますが、その結果、新築時が最大価値になって、 だんだん経年的に減価するという、負のスパイラル的な状況になっていると思います。先の 資料はこの感覚的な認識を、定量的に整理してみたものです。  では、住宅の価値とは何でしょうか(P15)。住宅に限らず、「価値」という言葉は非常に使 いやすいのですが、非常に曖昧に使われているところがあります。資産価値というのは、基 本的には価格で表現される経済的な価値だと思います(P16,P17)。その経済的な価値の裏 づけとして、使用価値としてどれだけのものがあるかということで、デザインと機能と性能 という3つぐらいで、整理をしています。それぞれ3つの効用がきちんと高くできているか ということで価値が決まって、それが価格になると思います。  住宅の3つの効用ということで、ここにデザインと機能と性能というのが書いてあります (P17)。機能と性能については、以前から政府のほうでも相当な政策を打っていますので、 戦後すぐの建物はともかく、この10年、20年ぐらいの建物は非常によくできています。個 別的にはハード面ではアメリカや諸外国に比べて、水準が高いと思っています。ただデザイ ン面では大いに欠けています。 それぞれの機能や性能についても、資産を形成するような造り方、逆に負債になってしま うような造り方もあるわけです。 デザインについてもいろいろ言われていますが、ここでいうデザインとは感覚的なもので はありません。デザインというのは後で変えられないのです。機能や性能というのは装置を 変えたり、時代によってはいろいろな物ができてきますので、それごとに入れ替えることが できますが、デザインというのは一度作ると変えられないので、非常に重要です。また、そ のときに良いと思っても、中古で売るときには10年後、20年後になりますから、20年後 の人がそのデザインを良いと思うかということがあります。ですから基本的にはクラシック なデザインというのが、資産価値のあるデザインです。ポピュラーというのは、流行りの住 宅です。そういうものがいま売れても、10年後に売れるかどうかはわからないわけです。 1930年代にアメリカFHAが融資をする条件として、クラシックなデザインということを 条件にしたのは、いま売れ筋の住宅もその後に売れなければ担保にならないからであり、ア メリカではもう1930年代に、そういう認識で政策を進めていたのです。  機能は逆にどんどん変わっていきます。ですから、あまりリジッドなものを造ってしまう と、技術的革新や価値観の変化に取り残されるので、フレキシブルなほうがいいわけです。  性能については、近年、改めて軸組みの在来工法の木造住宅が見直されていますが、新し い材料で新しい工法というのは、30年後にどうなるか分かりません。安定した、検証され た材料や工法というのが、やはり重要になってくると思います。  それらが住宅単体の話ですが、実は住宅地というのがより大事です(P18~P20)。住宅の資 産価値というのは、もちろん単体の先ほどの3つの効用を満足させることが非常に重要です が、最終的には「立地」と「住宅地の熟成」にかかっています。ですから、どんなに立派な 住宅を建てても、周りが駄目なら駄目ということです。ある意味、わかり切った話ではあり ますが、このことが、これからますますはっきりしてくるのではないかと思います。  アメリカでは道路1本隔てた地区が不良になると一挙に駄目になるとか、人種問題を背景 にマイノリティーの方が入ると、一気に住宅地全体が駄目になるという非常にリスクの大き い社会ですので、政府も金融機関も造るほうも、ものすごくこれをビビットに意識していま す。日本の場合は幸いなことに、そういう社会的な不安定さは格段に安定していましたので、 いままでは多少街並みが出来ていない、道路が狭いか、電信柱がどうこうというレベルの問 題でしたので、放っておいてもあまり影響しなかったのですが、これからはそれらの影響が 出てくると思っています。  単体と同じように、デザインと機能と性能というのは、住宅地にも当てはまりますが、最 も重要なのはデザインです。住宅地のデザインというのは街並みのことです。先ほど、住宅 単体のデザインは変えられないと申し上げましたが、街並みこそ、1戸が変なことをやると 一挙に駄目になることがあります。そういう意味で言うと、最初のスタートが非常に大事で すし、その後、それをどう維持するかということです。20年後、30年後にも、こういう街 並みは良いというものを、どう残していくかということにかかわってくると思います。  先日来、まことちゃんハウスという漫画家の楳図かずおの住宅の建設問題が新聞紙面を賑 わせました。結局、裁判所はそれは構わないというように判断しました。それから去年、最 高裁まで行った国立のマンションの話がありましたね。あれも最高裁で、公序良俗には反し ないという判決が出ています。これらは非常に残念なことです。この種の判断を裁判所に委 ねるのもどうかという議論もありますが、安定した住宅地として長い間培ってきた街並み、 街の資産価値を減らすようなものに対して、公序良俗には反しないとの判断がなされてしま うということ、これこそが住宅の資産価値を落としていることの背景にあるかと思います。  もちろん裁判まで行かない手前で、もっといろいろな手当てが取れればよかったのですが、 裁判所ですら今、そういう判断をせざるを得ないところが、ある意味、厳しい、さびしい状 況ではないかと思っています。機能や性能については日本の住宅地は非常に利便性が高い面 があるので、計画的なニュータウンなどは、相当高いレベルで充足しているかと思います。 先ほど来申し上げておりますが、わが国で欠如しているのは、住宅地全体をきちんと維持・ 管理するための、あるいはその価値を上げるためのルールです。今のルールは実は非常に曖 昧であり、それを明確にすることがこれからのポイントだと思っております(P21)。  日本では言うまでもなく、社会的に非常に安定していましたので、このようなルールがな くても、隣近に迷惑をかけないとか、いい意味での町内会等があって、一定のコミュニティ ーが保たれていました。コミュニティーの中で防犯性が高いとか、変なものを建てると隣近 でチェックするとか、そういうことがある時期まであったのですが、今ではそれはまずない と思って考えるべきだと思っています。性善説的な関係だけで資産価値を維持するのは、も う、無理だと思います。アメリカの場合はいろいろな人種、価値観の人がいて、他人を思い やるようなところが十分ではありませんので、一定のルールを持って、それをきちんと排除 しているという形になっています。アメリカの契約書では、ホームオーナーズ・アソシエー ションという組織によるCC&Rs(住宅地経営管理基本契約約款)というルールを守り、そ の費用を払うこと、ということが明記されております。それが、おそらく最大のポイントに なるかと思っております。  少し、話が飛びますが、もし住宅が資産化された場合に、住宅資産をどういうように活用 するかということがあります(P22)。資産になるということは先ほども申し上げたように、 適宜、いつでも一定の価格で売れるということが1つです。もう1つは、リバース・モーゲ ージといわれるもので担保として融資を受ける担保価値ができるということです。さらにセ ール・アンド・リースバックといって、一旦売却し、それをまた借り戻して住むような仕組 みもなくはないのですが、日本ではまだありませんので、日本にある制度、あるいは若干あ りそうなホームエクイティ・ローンとリバース・モーゲージについて、もし資産価値が付け ばどんな状況になるのか、いま日本ではどうなっているのかを簡単にご説明したいと思いま す。  アメリカでのホームエクイティ・ローンというのは、ご存じかと思いますが、購入価格か ら債務を引いた、即ちローンを返却した残りの部分については住宅の純資産価値として価値 があるということで、それを担保に融資を受けることができます(P23,P24)。日本の場合は 残債が残あると、ほとんど担保価値がなくなります。これにより消費社会になって、どんど ん借りて問題だったのではないかという議論もありますが、単なる無担保の消費者ローンで はなくて、純資産価値をベースにした融資ですから、実質的な資産価値の活用ということで 評価すべきだと思います。  アメリカの消費社会を支えていると言われていて、昨今のところまで、ある一定の比率は 占めていたのですが、実はそれで消費の多くを占めていたということはないのです。2002 〜2006年のバブルのときにはさすがに増えて、消費の9%ぐらいまで占めたのですが、そ れも、今は極端に下がって、従前よりも低くなり調整時期になっています。「バブル」前の 安定した時期には純資産を担保にローンをして、貯蓄をするよりは、そのローンを返済して いって、住宅価値が上がったときに適宜、借り替えるという良い循環が起こっていました。  リバース・モーゲージについては、日本でもやっております(P25~P27)。仕組みその他の 細かい説明は省きますが、1981年に武蔵野市が有償福祉サービスに対応するために初めて 開始しました。その後、いろいろな自治体や信託銀行が、1990年代前半ぐらいまで随分や っておりました。しかし、これは住宅自体が担保ではなくて、実は土地だけが担保になって います。アメリカのリバース・モーゲージは住宅が担保ですが、日本の場合は土地が担保の リバース・モーゲージという形になっています。  現状の詳細は割愛し、概略のみお話させていただきます。現時点では公的制度として自治 体プランと国のプランがあります。厚生労働省の長期生活支援資金貸付制度が非常に使いや すいということもあって、自治体プランも直接融資の武蔵野市は継続して残っていますが、 その他はほとんどが金融機関が直接融資をして、自治体が斡旋するという形にしていたのが、 今は、すべて厚生労働省の福祉協議会を窓口としたシステムに一元化されています。もちろ ん、住民税が一定額以下の高齢者世帯を対象とした福祉的な制度ですから、対象は限定され ていますけれども、大都市を中心に大幅に増えています。その他にも建替え資金の融資等が 住宅金融支援機構等で実施されていますが、いわゆるリバース・モーゲージとしてはこの厚 生労働省の長期支援貸付制度が、全国的な制度として普及・定着しつつあります。  民間商品としては、1980年代後半にすべての信託銀行が商品を持っていましたが、バブ ル崩壊以降は融資を止めており、事実上、商品としてはなくなりました。その後しばらくは 動きがありませんでしたが、現在ではここに書いたようないくつかの金融機関とハウスメー カーが金融機関と提携しながらやっています。特に東京スター銀行は、非常に幅広く使いや すい仕組みとしてやっていますし、中央三井信託銀行は信託銀行ということもあって、高額 資産者を対象に運用しています。売らないで資金を得て継続居住ができるというのが、リバ ース・モーゲージの特徴ですが、昨今は老人ホームに移るとか、転居のために使うという用 途も増えているという傾向になっております。  アメリカでは、HECM(Home Equity Conversion Mortgage)という国の制度がありま す(P28~P31)。アメリカでは政策を実験的に、期限を限定してよく行いますが、HECMも 1989年に実験プロジェクトという形でスタートしました。その後、非常に利用勝手がいい ということで、恒久的な制度になっています。いまは約50万件に達しております。日本の 場合は1981年から始まり四半世紀を経ていますが、自治体や民間全部を合わせても、たぶ ん2,000件ぐらいだと思います。その内、厚生労働省の制度が、800件ぐらいまで行ってい ると思います。  アメリカのHECMは当初、実験プロジェクトをやったときはあまり伸びなかったのです が、ある時期から急に伸びてきました。バブルの影響もあって、資産価値が上がったことも あったかもしれませんが、認知度が上がったこともあって急増しております。アメリカの場 合は国の補助金が入っているわけではないのですが、FHAという一般ローンの保険もやっ ている組織が関与していることもあって、実は資産の上限があります。例えば100万ドル の資産を持っていても、この制度を使うためには国の定めた、例えば30万ドルまでしか使 えませんというように頭切りをしています。ですから100%の資産は活用できませんが、あ る一定の範囲であれば、この制度を利用できるということになっています。  リバース・モーゲージを議論するときに、HECMの特徴のひとつとしてご説明するので すが、世界最大のNPOと言われているARRP(全米退職者協会)がカウンセリングの教育 等をやって、カウンセラーが利用者に説明をして、理解をした上でこの制度を使うという仕 組みになっています。日本でも住宅金融支援機構の制度の利用の際に高齢者住宅財団が、そ ういうカウンセリングサービスをしております。 このように、一定の資産価値があれば、売却はもちろん、ローンを返済した部分をまた担保 にしたり、高齢者になったらそれを担保に融資を受けて活用したりという道が、どんどん出 てくると思います。  住宅資産価値形成に係る多くのプレイヤーがいますが、住宅価値をいちばん支えているの が、やはり住宅金融です(P32~P34)。アメリカは「アメリカンドリーム」という言い方で、 国民が住宅を所有することを最大の政策目標の1つにしていますので、かなり手厚く、なお かつロジカルにそのシステムを組んでおります。アメリカの住宅市況はご存じのように、 1929年の大恐慌時に深刻な状況になり、1934年に住宅法を作りました。その後、FHAの 組成やその保険の制度などの仕組みを入れて、言い換えれば、どんな人たちに貸せばいいの かという仕組みを政府で作ったわけです。また、金融機関のほうも貸倒れがあると大変なの で、信用力を客観的に計量化したクレジットスコアーを基に貸し込んでいくということをや ってきたわけです。このようにして1930年代前半には、現在の金融システムの基礎をつく りました。この資料に同じようなことが書いてあります。  アメリカの金融システムを少しベースにして、日本の事情を反映して新たな日本型システ ムを構築すべきというお話を、最初にしましたが、以上がアメリカの金融システムの基本に なっております。 アメリカの住宅ローンノンリコースとよく言われますが、形式的にはリコースローンにな っています(P35)。ただ、デフォルトしたときに抵当権を実行すれば少なくとも元金は回 収できます。アメリカでは信用力をかなりシビアに見た上で、きちんとした担保価値がベー スになっているということで、二重のリスクヘッジというか、ある意味で金融機関としては 当たり前ですが、そういう構造になっています。  よく言われるのは、「アメリカはノンリコースになっているので、借りても返せなくなっ たら渡せば終わりだからいい」と言う方と、「だからモラルハザードが起こる」と言う議論 があります。モラルハザードはどんな場合にもあるかと思いますが、その意味を簡単に補足 しておきます。  ノンリコースかどうかという議論は、ある意味で不毛なところがあります。形式的にはリ コースですが、実質的にはノンリコースになっているからです。私もいろいろな所で、アメ リカではノンリコースになっているという話はするのですが、こういう意味合いです。ただ、 アメリカはご承知のように、州によってかなり違っています。ここに書いてあるような、い ろいろな消費者保護をしていない州もありますし、もっと手厚い所もあったりして、一概に は言えないのですが、非常に整備されている例としてカリフォルニア州とか、違ったやり方 の例として、ニューヨーク州などが紹介されています。  ノンリコース的になっている意味は3つぐらいあります。デフォルトしたときはいろいろ な形で処分される仕組みがあるのですが、競売するときには司法競売と非司法競売がありま す。司法競売の場合は残債を裁判できちんと遡及する仕組みがあります。しかし非常に時間 とコストがかかりますので、事実上それはやっていないということで、ノンリコース的にな っているというところが1つあります。  非司法競売では、州によって3つぐらいの制度があります。まず、不足金を請求してはい けないという制度を持っている州があります。例えば、1万ドルの借金が残っているのに 5,000ドルでしか売れなかったので、5,000ドルはもう追求しないという制度になっていま す。あと、不足金の請求制限ということで、競売した時にものすごく安く落札する場合もあ るのですが、市場価格以下の落札は認めないという制限もあります。それから、競売した後 に一定期間内に買い戻すことができる、ということを制度化している州もあります。これら を併せて考えると、実質上、よほど悪意がない限り、競売になったときに競売価格で債務が 相殺されるのが実態だということで、「ノンリコース的」という言い方をしております。こ れも基本的に物件が経年減価をしないという前提に立った仕組みかと思います。  この資料(P36)は、(1)から(6)までに項目を整理していますが、債務者、融資主体、その他、 こういうことをやっているというアメリカの事例が書いてあります。しかし日本の場合はこ れらが欠如と言うと、ちょっと極端ですが、これらが不十分な対応になっているということ かと思います。  日本の住宅金融も、基本的にはアメリカ型に移行しています(P37~P40)。金融支援機構 がいくつかのやり方で、すでに実施していますし、MBSなども相当な金額を発行しており ます。金融支援機構はすでに昨年末までに10兆円、民間でもやや古いデータですが3年ぐ らい前に3兆円の証券化の実績があります。日本の場合は証券化もそこで止まっていて、基 本的には金融支援機構がリスクを負う形になっていますので、民間金融機関その他にはリス クが非常に少ない形で構築されております。一方で、日本の特徴はこれまではデフォルトが 非常に少なかったということです。しかし今後、長い目で見ると、やはり日本も所得が伸び ず、デフォルトが増えるのではないかという懸念はしております。日本の現状は、最終的に は支援機構がリスクを持つような形で1つの仕組みになっていますが、いまの想定よりはリ スクが高まるのではないかという懸念があると思います。ただ、将来の所得については誰も わかりませんので、何とも言えないところですが、これだけの経済の国際化の中で、いまの 所得がずっと維持できるということは考えないで組み立てた方がいいのではないかと思っ ています(P41)。  この資料(P42,P43)は人種別の住宅所有率や住宅のマーケットが既存と新築とでどうな っているかというのを、参考までに付けておきました。  本日の話のいちばんのポイントは「住環境のマネジメント」ですが、キーポイントとして 位置づけています(P44,P45)。仮に最初にいいものを造っても、10年後にそれが崩れたら意 味がありませんので、単なる紳士協定ではない仕組みによってマネジメントしなければいけ ません。日本の建築協定や地区計画、景観条例も、ある程度法的な効力はあるのですけれど も、全員参加で、きちんとした運営資金を調達して、違反者への罰則規定というこの3つが セットにならないと、本来のマネジメントはできません。そういう意味ではいろいろな制度 があるのですが、足りないのではないかと思います。  P46にありますように、日本でもいくつかの事例があります。住宅地のいちばんのお手本 と言われているイギリスのレッチワースが1903年に開発されましたが、その数年後には日 本人が勉強に行って関西の閑静な住宅地などを造って相当やっています。しかし戦後は、と にかく住宅の短期大量供給が最優先したということもあって、住宅地の管理をするというと ころまで発展してこなかったわけです。エリアマネジメントも今、住宅地だけではなくて、 大規模開発その他の中心市街地など、いろいろな所で言われていますが、先ほど申し上げた ような仕組みには、なり得ていないことが問題だと思っております(P47)。  この資料も後で見てください(P48~P50)。イギリスのレッチワースという借地方式の住宅 地が、計画的住宅地のお手本になっていますが、アメリカに行くと個々が住宅地を所有する ということで、ラドバーンが1929年のアメリカの大恐慌の1年前から開発されました。こ れにもいろいろな経緯はありますが、権利者の組織(HOA)を設営し、経営管理契約約款 を策定し、マネジメントの費用を調達しており、しかも罰則規定もあります。  その結果として、P50に写真がありますような環境が形成されています。実は、これは3 枚の絵が重なっています。上の2つが写真とその図面で、下が拡大図になっています。これ がラドバーンで、非常にきれいな住宅地です。グーグルで見ていただければ分かりますが、 周辺も同じような住宅地になっています。当時はここだけだったのですが、1928年から80 年ぐらい経って、ますます成熟して良好な住宅地になっています。その過程を見てアメリカ でも隣接の住宅地や他の地区の住宅地で、このマネジメントの仕方を援用しています。こう いう住宅地は日本には1つもないと言うと語弊がありますが、ほとんどないというのが実態 かと思います。  このように適正なマネジメントシステムにより住宅の維持・管理をきちんとやらなければ いけない。皆様もお住まいになっているでしょうけれど、集合住宅は管理組合の下で、長期 修繕その他も含めてかなり管理されています。しかし一戸建てについては個々の管理に任さ れていますので、一生でいったいどのくらいの費用が必要か、どんな費用がかかるのかがよ く分かりません。今は修繕履歴その他を整備するという動きがありますので、それは非常に 重要だと思います。ただ、一戸建て住宅のライフサイクルコストはまだ明確に分かっていな い状況にあります(P51)。  例えば、この資料にライフステージに応じて、住宅にはどんなことが必要かということを ポンチ絵で描いてあります(P52)。このようなことをやるためには、計画的な資金の手当て をある程度しておかないといけません。最初の購入時に使えるお金を全部費やして、後は何 もできないということになると、いくら住宅地全体のマネジメントをして(住宅地管理の要 用も十分ではない)も、住宅単体が駄目になれば元も子もありません。そのためにも今後、 所得が低迷する中で、買うための貯蓄をきちんとやらなければいけませんし、その後のメン テのためにも資金の手当てをしておかないと、資産価値を維持・拡充することはできないと 思っています。  項目のGは参考までに、いろいろな団体などが住宅価値や長寿命ということで提案した 事例をまとめてあります(P53~P61)。これらはすでに発表されたものですので、後で見てい ただければと思います。住生活基本法が成立される直前ぐらいから、様々な団体等から提案 がありました。その中で「住宅価値」という言葉がかなり出てくるようになってきたのが、 このころの特徴です。経済団体なども「住宅価値」という言葉を使っていますが、住宅地全 体のマネジメントとか、資産としてどう使っていくかということでは、今ひとつ表現として 薄いのではないかと思います。やはり大量に供給するという観点に、シフトしているのでは ないかと考えております。ただ、世の中的に、住宅価値に関して様々な議論されていること は、どこに力点が置かれているかは別にして非常に良いことだと思っています。  P62まで飛ばしますが、これは今までお話したようなことをまとめたものです(P62)。資 産としての価値を向上させていくことが、そもそも長寿化という意味合いになります。単に ハードとしていくら保っていても、建て替えられたら意味がありませんので、そういうこと をきちんと認識するということです。これは国民の認識のほうが大事かもしれません。そう いう認識を共有するということです。  その1つのポイントが、やはり美しい街並みです。これは単にきれいだなということで はなくて、長年にわたって定評が得られる美しさというものが、価値であるということです。 それから明確なマスタープランです。最初のマスタープランをきちんと作って、それを実現 して長期的にマネジメントする、その仕組みが必要だと思います。  この3つぐらいを念頭にブレークダウンしたのが、それ以下の何頁かのペーパーです (P63~P68)。4-2に「スタイルの確立」というのがあります。これは単にその場その場の人 気のあるデザインではなくて、長い期間定評が得られるような一つのスタイルとしてのデザ インを、きちんと用意しなければいけないということです。それから、今日はお話しなかっ たのですが、生産性というのもあります。住宅を造ることについて、日本は生産性が高くな いので、そこも相当頑張らないといけないのではないかというのが、この辺の話です。あと 昨今のサブプライムローン問題でアメリカでは問題になりましたが、モーゲージプランナー やローンアドバイザーなどが重要です。多様な住宅ローンの商品が出てきますので、それを 第三者的にアドバイスすることが、大事ではないでしょうか。あとは購入した後のメンテナ ンスをきちんとやらないといけません。また、都市計画の話や関連の法制度の整備、持家政 策を採りながらのセーフティーネットの充実、あるいは持家政策における保険の話などの政 府の役割がまだあるのではないかということです。  最後に、エリアマネジメントをもう一度強調して、英国方式と米国方式とでまとめており ます。  これも繰返しになりますので説明は端折りますが、1930年代に住宅法を制定の上、信用 力をきちんと評価して、担保価値の規準を明確にし、保険制度やノンリーコース的ローンの ための債務者の保護政策を併せて採ってきたところが、非常に参考になるのではないかと思 っています。  関係者の認識の共有というのも重要であり、先ほどから何度も言っていることです(P69)。 やはり消費者としての国民自身が、住宅の購入は資産形成のための投資であるという意識を 持たないといけませんし、資産形成の意味をいろいろな方々が説明するような機会があって もいいのではないかと思います。それぞれの立場で、それぞれ最善を尽くしているのですけ れども、これまでお話したようなことを明確に目標として目指し、関連の施策や対応をもう 一度、この時期に考えていただければと思います。今後10年ぐらいは、まだ年間100万戸 ぐらいの供給が可能だと思いますが、この機にやらないと、その後は住宅の新築が大幅に減 少する可能性があります。そうするとストックの入替えもできなくなりますから、この5 年か10年が、資産価値形成の最後の機会かと思っております。 これまでお話したような住宅や住宅地の実例がありませんので、民間あるいは公的なディベ ロッパーでもいいので、今のような仕組みを含めたパイロット的なモデル事業を官民でやっ て、資産価値のある住宅は実際にはこういうものであるというのを見せることが必要である ということです(P70~P73)。ここでは項目だけを挙げております。  最後に、サブプライム問題です(P74)。今日は特に話題にしませんでしたが、多少関連し ますので、全体の構図だけ参考として付けました。後で見ていただければと思います。「住 宅の価値」という大きなテーマをいただきましたので、多くの話題が発散したかもしれませ んが、最近、いろいろな所でお話させていただいていることをまとめてみました。多少とも 参考になれば、大変うれしく思います。以上でございます。 ○伊藤分科会長  どうもありがとうございました。村林先生にせっかく来ていただいておりますので、いま お話をお聞きしてご質問なりがありましたら、残り時間にどうぞお願いしたいと思います。 ○藤田委員  大変興味深く拝聴いたしました。ありがとうございました。価値ということを考えますと、 1つには住宅の使用価値ということがあります。使用価値と言いますと、マルクス経済学の 使用価値を思い出してしまうのですが、そうではなくて「効用」という言い方もできると思 います。実際に生活の場としての住宅の価値という面があると思います。  もう1つは、マル経で言えばまさに交換価値ということになるかと思いますが、今日のお 話では金融的な資産価値ということだと思います。要するに、主に資産としての価値は、金 融能力を持たさなければ駄目だというお話ではなかったかと感じました。国の政策として、 まず優先されるべきは、私は使用価値のほうではないかと思っております。つまり、住宅の 戸数だけが挙がってくることが多いのですけれども、やはり生活の場として考える場合は、 例えば住宅の規模と言いますか、生活空間がどのぐらいあるのか、具体的には何部屋あるの か、何畳あるのか、そういう利便性の中身を吟味していくべきではないかと思うのです。  使用価値と並んでもう1つは、生活の場として考えますと、交通手段等が挙がってくるか と思います。今日は「街並み」という言葉でご説明になりましたが、そういう利便性と言い ますか、生活のアベイラビリティーをどう享受できるのかという点が大事だろうと思います。 パイロット事業として官民一体でやるべきだというお話は、そのとおりだと思います。そこ で今日のお話で興味深かったのは、イギリスは従来、公共政策として借家を重点的に行って きたということです。良質の街並みを考えた借家方式を重点化していたというように理解し ていたのです。今日、持家率が日本よりも多いということを伺ってびっくりしています。日 本は街並みということでは、いろいろ困難があるのではないでしょうか。  そういう意味でパイロット事業は、いままで大型の団地などを形成してきたわけですが、 そういうディベロップメントの可能性というのは、あまりないかもしれませんが、そういう 街並みや都市計画を入れた良質の住宅を、政府として供給していくべきなのか、あるいは、 財形などは持家主義できているわけで、持家をもっと増やすためのいろいろな方策を検討す べきなのか。これからの日本の住宅政策というのは、その辺で大きな選択をしていかなくて はいけないかと思います。そういう点についてはどういうようにお考えでしょうか。 ○村林氏  持家政策は今後とも基本的な政策だと思います。先ほども申し上げたように、戦後は一貫 して持家政策をとり、一定の成果は上がっているわけです。ただ、持家になった住宅が、必 ずしも資産になっていないというところを、どうクリアするかだと思います。住戸規模は戦 後、ある程度拡大していますし、ハード的・空間的には、かなりいいものにはなっていると 思うのですが、それが単体に終わっている。短い期間で取り壊されてしまっていることが課 題です。そこにエリアでマネジメントするような仕組みが常に入っていないと、いいハード を造って200年は持つけれども、次に売るときにまた壊されるということの繰返しになっ てしまっています。極端に言うと、高コストで造って早く壊すことになってしまうので、も しかしたら前より環境に悪いかもしれないし、資産にもなっていないので、そこのマネジメ ントの仕方が重要だということです。  このことを既存住宅地で実現することは、新規開発に比べると正直言ってなかなか難しい のです。要するに、すでに一定のルールで動いている地区で「街並みを壊したら反則です。 罰則があります。」というような言い方は、なかなかしにくいのです。ただ多くの方が、自 分たちの資産を守るためにはそうしなければいけないと思えば、この動きは受け入れられる わけです。その意味でもある程度のモデルプロジェクトでこういうものになりますというこ とを実際に見せることが、一つの有効なやり方だと思うのです。かつてだったら都市再生機 構が、新しいパイロットプロジェクトとして実行すればいいと思うのですが、いまは残念な がら、そういう方向には動いていません。私は、個人的には、都市再生機構は本当はそうい う役割を果せるのではないかと思っています。民間でも土地を多く保有している企業はまだ あります。現時点では需要は顕在化していませんが、もうしばらくするとまた次の需要が出 てきますので、今のうちに、このようなパイロット事業を準備して、次の機会に、すぐにや って見せることが非常に重要だと思っています。 ○伊藤分科会長  ほかにご意見、ご質問等はありますか。よろしいですか。それでは村林先生、ありがとう ございました。本日のテーマはこれですべて終わりましたので、分科会のほうもこれをもっ て閉会としたいと思います。なお、議事録の署名委員ですが、労働者代表委員は北条委員に お願いします。使用者代表は大村委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいた します。どうもありがとうございました。 照会先:労働基準局勤労者生活部企画課企画係(内線5353)