09/01/15 第48回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第48回厚生科学審議会科学技術部会 議事録 ○ 日時 平成21年1月15日(木)15:00〜16:20 ○ 場所 厚生労働省 省議室(9階) ○ 出席者   【委員】 垣添部会長         石井委員   今井委員   岩谷委員   川越委員         北村委員   木下委員   笹月委員   佐藤委員         竹中委員   永井委員   西島委員   福井委員         松本委員   南(砂)委員 宮田委員   宮村委員         望月委員 【議題】  1.平成21年度厚生労働省科学技術関係予算(案)について  2.ヒト幹細胞臨床研究について  3.その他 【配布資料】  資料1.平成21年度厚生労働省科学技術関係予算(案)について  資料2−1.ヒト幹細胞臨床研究実施計画の変更について  資料2−2.ヒト幹細胞臨床研究実施計画について  資料3.国立社会保障・人口問題研究所の評価報告書等について  参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿  参考資料2.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料  参考資料3.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成20年4月        1日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定) ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせします。傍聴にあたっては、既にお配りしています注 意事項をお守りくださいますようお願いします。  定刻になりましたので、ただいまから第48回「厚生科学審議会科学技術部 会」を開催させていただきます。委員の皆様には、ご多忙の折お集まりいただ きまして御礼申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。本日は、 金澤委員、菊川委員、末松委員、南裕子委員から欠席のご連絡をいただいてお ります。少し遅れている先生もいらっしゃいますが、委員22名のうち、出席 委員は過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことをご報告いた します。  会議資料の確認をお願いいたします。議事次第をご覧ください。配布資料と して、資料1「平成21年度厚生労働省科学技術関係予算(案)について」、資 料2-1「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の変更について」、資料2-2「ヒト幹細胞 臨床研究実施計画について」、資料3「国立社会保障・人口問題研究所の評価報 告書等について」がございます。参考資料として「厚生科学審議会科学技術部 会委員名簿」、「ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料」、 「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」がございます。よろしいでし ょうか。  それでは、以降の議事進行は垣添部会長にお願いいたします。 ○垣添部会長  本年第1回の科学技術部会ですが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げま す。議事に入ります。「平成21年度厚生労働省科学技術関係予算(案)につい て」、事務局から説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料1に基づいてご説明いたします。1枚めくった横長のものは、平成21 年度に向けた科学技術関係施策の動向ということで4点記載しております。上 のほうから、社会還元加速プロジェクト、革新的技術戦略といった総合科学技 術会議が中心となって提唱されている動きがあります。それから、革新的医薬 品・医療機器創出のための5か年戦略については、平成21年度が3年目にな ります。いちばん下ですが、平成20年7月に健康研究推進会議が開催され、 内閣府、文部科学省、経済産業省とともに研究の推進を図ることになっており ます。  この頁の上のほうに、平成21年度予算(案)の金額を記載しております。 科学技術関係予算については1,351億円と、昨年度から約1%減っております。 対前年度約13億円の減額となっておりますが、その主な要因としては、平成 20年度の第2次補正予算において、先端医療機器等の整備の予算を約56億円 前倒しして計上したことがあります。科学技術関係予算のうち、厚生労働科学 研究費補助金は484億円となっていて、こちらについては前年度から約56億 円、率にして13.1%の増額となっております。  2頁に、厚生労働科学研究費補助金における新規施策及び主な拡充施策につ いてお示ししております。新規施策については、地球規模の保健課題の解決(地 球規模保健課題推進研究(仮称))があります。技術移転に関する研究や、革新 的技術の一つとして取り上げられておりますマラリアワクチンの開発といった 研究や、人材育成に関する研究などを行うほか、日中韓で医薬品の民族差に関 する国際共同臨床研究などの研究を行うための予算です。  主な拡充施策については、先端医療開発特区の推進等、それから難病に関す る調査・研究の大幅な拡充、新型インフルエンザ等新興・再興感染症の研究、 肝炎関係の研究、認知症関係の研究があります。ここで括弧内に書いてありま すのは、平成20年度の予算額です。予算の査定については、厳しい財政状況 の中、総合科学技術会議の評価を踏まえて行われたもので、メリハリの付いた 形となっています。  3頁には、科学技術関係予算額(案)の概要があります。こちらは研究費補 助金のほか、関係する予算を示しているものです。4頁には、平成21年度の厚 生労働科学研究費補助金の予算額(案)の概要ということで、細かい数字の表 を載せています。資料1の説明に関しては以上です。 ○垣添部会長  これまで議論してきた内容と大きく変わるところはないかと思いますが、平 成21年度の厚生労働省科学技術関係予算(案)についてご発言はありますか。 56億円前倒しというのをもう少し説明していただけますか。 ○坂本研究企画官  これは補正予算について、平成21年度予算要求の中でできるものを先にと いうことがありましたので、先ほど申しましたようなものについては、平成21 年度予算ではなくて、補正予算の方に持ってきたということです。 ○垣添部会長  それを加えるとマイナス1%というのはむしろ増えることになりますか。 ○坂本研究企画官  平成20年度の補正予算ですので、平成21年度に足すことはできないのです が、そういう状況の説明ということになります。 ○垣添部会長  よろしいでしょうか。 (異議なし) ○垣添部会長  続いて議題2「ヒト幹細胞臨床研究について」です。臨床研究の申請につい て審議をしていただきます。東海大学医学部からの計画について、10月8日に 厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会に付議されております。また、東 海大学の件についても、審査委員会での検討が行われております。信州大学医 学部と三つの機関からの審査委員会の結果についてもご審議いただきたいと思 います。  なお、国立循環器病センターの審議においては、北村委員には発言を控えて いただきます。それから、末松委員は本日急遽ご欠席になられましたが、慶應 義塾大学の審議に関してはご参加いただかないということでお願いいたします。 事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○研究開発振興課  議題2については、資料2-1及び資料2-2を用いてご説明いたします。ヒト 幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に基づいて申請された、ヒト幹細胞臨床 研究実施計画については、今回新たに諮問、付議が行われた申請が1件、そし て専門委員会でありますヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会でご審議いた だきました結果、指針への適合性が了承されました申請が5件ありますのでご 報告申し上げます。  資料2-1です。今回新たに申請がありましたのは、既に了承済みの東海大学 医学部からの実施計画の変更届です。1頁、2頁が本変更申請に関する諮問書、 付議書です。平成20年10月8日付で諮問、付議をされております。3頁は変 更報告書です。4頁は本実施計画の概要です。研究課題名は自家骨髄間葉系幹 細胞により活性化された椎間板髄核細胞を用いた椎間板再生研究。対象疾患は 腰椎椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎椎間板症などです。  概要は、腰椎の椎間板変性疾患の手術例において摘出した椎間板の髄核細胞 を取り出して、別途採っておりました自家骨髄間葉系幹細胞と共培養させる。 共に培養させることによって活性化を起こして、変性の進行した、手術摘出し た隣接する椎間の椎間板に経皮的に注入し、変性の進行抑制効果を検討すると いう研究です。  今回申請された変更点は、細胞調製の際に用いられます試薬のコラゲナーゼ の製品変更です。変更理由に関しては資料の7頁の中ほどの変更理由のところ です。当初了承されておりました計画では、ロッシュ社のコラゲナーゼPとい うコラゲナーゼを用いる予定でしたが、製造精製の過程においてウシの脳由来 の抽出物が用いられている可能性が否定できないということが示唆され、2007 年の春に厚生労働省より使用自粛が通達されたことを受けております。本実施 計画の了承後に、計画開始までにはウシの脳由来の抽出物を使わない製品がロ ッシュ社より販売される予定でしたが、いまだに販売の目処が立っていないこ とから、申請者より変更届が出されました。申請者の検討の結果、ロッシュ社 のコラゲナーゼと同等の安全性と品質を持つと考えられるワーシントン社のコ ラゲナーゼに変更したいというものでした。  こちらの変更に関しては、垣添部会長より事前に了承をいただき、ほかの課 題と併せて昨年10月14日に開催された第6回審査委員会にて先行で審議をさ れております。  続きまして、これまで幹細胞の審査委員会のほうで適合性が認められた五つ の申請、これにはただいまの東海大学の申請も含みますが、資料2-2に基づい てご説明いたします。今回ご報告申し上げますのは表紙にありますとおり、信 州大学医学部附属病院から二つの申請、慶應義塾大学医学部からの申請、国立 循環器病センターから変更の申請、それから東海大学の変更申請です。それぞ れについて、実施計画の概要と、審査委員会での審議経過について順にご報告 申し上げます。  資料2-2の1頁は、信州大学医学部附属病院からの申請です。「青壮年者の四 肢良性骨腫瘍および骨腫瘍類似疾患掻爬後の骨欠損に対するβ-リン酸三カル シウムを担体としたヒト培養自己骨髄間葉系細胞移植による骨欠損修復研究」 です。ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会の永井委員長からの報告です。  2頁は実施計画の概要です。研究の責任者は、信州大学医学部附属病院整形 外科の加藤博之教授です。対象疾患は内軟骨腫、単純性骨膿腫、動脈瘤様骨膿 腫などご覧いただくとおりです。  治療研究の概要ですが、良性骨腫瘍の摘出後に生じる骨欠損で、骨折を生じ る危険性の高い症例について、あらかじめ自己骨髄液から採取し、培養して得 た骨髄間葉系幹細胞を付着させた人工骨を骨欠損部に充填するということで、 早期の良好な骨形成を図るという治療法を検討するものです。培養骨髄間葉系 幹細胞と人工骨を組み合わせて作製した、いわゆる再生培養骨の研究に関しま しては、既に産業技術総合研究所や、奈良医科大学、大阪大学などで臨床応用 の例が報告されておりますけれども、信州大学医学部附属病院内のセルプロセ ッシングセンターを用いて、単独で信州大学が臨床研究を行うというのは今回 が初めてでして、新規性とともに審議の必要性を認めております。  3頁から5頁までが審議の概要です。審議のポイントは、まず確認事項とし て出されましたのは3頁中ほどにまとめてあります。被験者の予定人数は、い わゆる生物統計学を基に充当必要数を算出すべきではないか。それから、複数 の人工骨を当初は支持体として選択するということでしたが、少数例の検討の 中で複数のものを用いるのはどうか、一つの種類に絞るべきではないかという 問題意識。いちばん下にあります、当初信州大学では10代の被験者も含めて やりたいということで申請を出しておりましたが、安全性・有効性等の十分な データが揃っていない段階で10代を含めるのはいかがなものかというご意見 でした。4頁に第3回審議とあります。その際に出された従来法との比較で、 メリットやデメリットについてやや誇張があるのではないかというご意見。こ うしたご意見が出され、計4回の審議を経ております。  その結果、4頁の3.にありますように、こちらに最終的な委員会の意見等を 踏まえた変更点があります。被験者の範囲の変更、それから利用する人工骨を 1種類に限定する。それから、統計学を基にした症例数の設定等変更を加えて いただいて了承されております。  6頁以降に、提出された申請書、実施計画書、被験者に対する説明文書、同 意書類等がありますので、適宜ご参照いただければと思います。  27頁は、同じく信州大学医学部附属病院からの申請です。「青壮年の有痛性 関節内軟骨障害に対するI型コラゲンを担体としたヒト培養自己骨髄間葉系細 胞移植による軟骨再生研究」です。こちらに関して、永井委員長からの報告で す。  28頁は概要です。研究責任者は同じく整形外科の加藤博之教授です。疾患の 対象は、青壮年の肘、膝、足関節に発症した離断性骨軟骨炎・外傷性骨軟骨障 害・膝蓋骨軟骨障害です。概要としては、治療困難であり、自然修復が期待で きない重症化した上記軟骨疾患を対象者として、患者の骨髄液から採取した骨 髄間葉系幹細胞を増幅した後、担体であるコラーゲンに包埋させます。採取よ り数週間後に軟骨欠損部に外科的に移植をし、表面を骨膜でパッチをすること によって早期修復を図るというものです。  これまで、骨髄間葉系幹細胞による軟骨再生の臨床研究は、国内では産業技 術総合研究所を中心に行われ、信州大学医学部附属病院も共同研究により行っ ていたということですが、今回先ほどの骨の再生と同様に、自施設内でのセル プロセッシングセンターを利用した臨床研究を行う、ということで審議の必要 性が認められているところです。  29頁から31頁が審議概要です。29頁の中ほどに、委員会で出された疑義、 あるいは確認事項がまとめてあります。こちらでも、いわゆる生物統計学に基 づいた予定人数設定の必要性。当初、信州大学では野球肘を中心とした10代 の被験者を是非エントリーしたいということで申請を出しておりましたが、該 当患者数が多いというだけで、こうした未確立の治療法に関する臨床研究にエ ントリーするのはどうかというご意見等が出されておりました。こちらも計4 回の審議を経て、最終的に31頁の3.にあるような計画の変更を経て、指針へ の適合性が認められたということです。こちらも、今回は未成年に関しては除 外。統計学的な人数設定がなかなか難しいということで、今回は安全性のみを 確認する目的に限定し、症例数を5例と設定しております。  32頁以降には、同様に申請書、実施計画書、説明同意文書等が掲載されてお りますので適宜ご参照ください。  50頁は、慶應義塾大学からの申請です。「角膜上皮幹細胞不全症に対する培 養上皮細胞シート移植」です。こちらに関して、ヒト幹細胞臨床研究に関する 審査委員会の永井委員長からの報告です。  51頁は研究概要です。研究責任者は慶應義塾大学医学部眼科の坪田一男教授 です。対象疾患はスティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡、角膜化学 傷/熱傷、膠様滴状角膜変性症、先天性無虹彩症となっています。研究の概要 は、同種の角膜輪部にある上皮細胞、こちらは海外ドナーから由来するものを 用いるということですが、こちらを採取して、同種骨髄間葉系幹細胞をフィー ダー細胞として、フィブリンで作りましたコートウェルの上で培養してシート 状にしたものを角膜欠損部に移植するということです。  こうした培養の角膜上皮シートを用いた眼表面再建に関する研究というのは、 国内グループも含め、いくつかの臨床利用例や研究例が報告されておりますけ れども、今申請に関しては、いわゆるフィーダーとして異種細胞移植であるマ ウスの3T3細胞を用いないなどの点で新規性が認められるということで、今回 審議対象となっております。  52頁から53頁が審査委員会における審議概要です。52頁の中ほどに、審査 委員会から出された主な疑義・確認事項がまとめてあります。以前にこちらの 科学技術部会でもご指摘をいただいたところですが、当初、自己の健側の角膜 と海外ドナー同種角膜を用いる両方をまとめて研究として行われるというプロ トコールでの申請でしたが、こちらは少なくとも別々にするほうがよい。さら には、まずautoで5例やって、その後にalloを次の段階として申請すること も議論すべきではないかというご指摘をいただきました。また、海外から入手 する角膜や幹細胞に関して、これらを原材料として考えた場合にどのように安 全性や品質を評価するかがまだ不十分ではないかという点。それから、倫理審 査委員会に関する審議の書類にも不備があったということなどが疑義・確認事 項として指摘されておりました。  これを踏まえて53頁の3.にあるような変更がなされております。使用角膜 を海外ドナーに由来する角膜のみに限定するということです。その理由として、 申請者から出されたのは、両眼症例のほうがより視機能障害が高度であるとい う点、本臨床試験の有効性・安全性が確認できるまでは健側の本人の幹細胞に 関しては温存したいということで、海外ドナーのみに今回は限定するとなって おります。ドナー角膜、フィーダーとして用いる同種間葉系幹細胞のいずれに ついても、慶應義塾大学の医学部において受入試験を実施することといたしま して、その受入基準をきっちり設定していただくことを明記していただきまし た。以上を受け、指針への適合性が確認され、了承されました。54頁以降に申 請書、計画書の概要、患者説明文書等を添付しておりますので適宜ご参照くだ さい。  残り二つについては変更申請です。68頁は「国立循環器病センターから申請 のあったヒト幹細胞臨床研究実施計画の変更に係る意見について」ということ で永井委員長からの報告です。69頁は概要です。急性期心原性脳塞栓症患者に 対する自己骨髄単核球静脈内投与の臨床応用に関する臨床研究です。研究責任 者は国立循環器病センターの脳血管内科の成冨博章部長です。対象疾患は心原 性脳塞栓症です。こちらは、一昨年11月に既に了承を得た実施計画ですが、 脳梗塞発症7〜10日後の重症心原性脳塞栓症患者に対し、自己骨髄細胞を採取 し、骨髄単核球分画を精製の上、静脈内へ投与を行い、その神経機能回復効果、 及び安全性を検討することが目的です。  今回申請されました主な実施計画変更点は、当初、細胞調製を行いますのは 共同研究施設である産業技術総合研究所のセルプロセッシングセンターを用い るということでしたが、この度は自施設内に新しく設置されたセルプロセッシ ングセンターに変更したいという申請です。  70頁から71頁が審議概要です。70頁の中ほどに、審議の中で委員の先生方 から出されました意見がまとめてあります。製造管理責任者と品質管理責任者 が同一人物であるなど、GMP基準と相容れない部分が若干見受けられた。変 更前のセルプロセッシングセンターを所有している産業技術総合研究所から、 きちんと技術移転を受けていただきたいというご指摘。それから、細かなその 他のご指摘等がありまして、こちらに関しては申請者に回答を求めております。  71頁の3.のところで変更内容が記載されています。先ほどからご指摘の点、 GMP基準に沿うよう任命が行われるなど、技術移転が行われたことを確認し、 委員会としても適合性が認められたので了承したということです。72頁からが 変更報告書、その内容、被験者に対する説明文書、同意文書等がありますので 適宜ご参照ください。  94頁からは、冒頭にご報告いたしました東海大学医学部の申請に関しても、 先行して審議を行っていただき、永井委員長からの報告です。概要等は省略さ せていただきます。  96頁の中ほどで、意見としては他社との比較において、今回採用するワーシ ントン社のコラゲナーゼに関しては、いわゆる危険部位を用いていないこと、 製造グレードに関して試薬ではありますが、GMPガイドラインに従っている ということ、ISO9001の認証を受けて製造している点、以上のことから今回の 変更に関しては、変更前の製品相当の製品であろうということが認められると いうこと。また、医薬品ではなく試薬ですので、独自に受入試験を実施し、ワ ーシントン社が出しております試験成績と合わせて品質管理をするということ で適切な対応ではないかというご意見です。それから、ロッシュ社のGMPグ レードのものが入手可能になった場合には、またそちらに切り換えるというこ とを条件にすればよいのではないかというご意見が出され、最終的に特に出さ れた計画に変更点はなく、指針への適合性が認められて了承という形になって おります。以上ご報告とさせていただきます。 ○垣添部会長  ヒト幹細胞臨床研究の実施計画について、信州大学、慶應義塾大学、国立循 環器病センター、東海大学医学部から出ております五つの研究計画について事 務局から説明をしていただきましたが、審査委員長として永井先生から追加の ご発言はございますか。 ○永井部会長代理  いまの説明で大体尽きているのですが、なかなか全体像がわかりにくいかと 思います。例えば、信州大学の研究ですが、26頁、49頁の絵をご覧いただき ますと、何をしようとしているのか、どういうアプローチかということが理解 しやすいと思います。例えば26頁では、全血から患者の血清を採り、それを 使って骨髄液から採取した単核球を一緒に培養して、つまりウシの血清ではな くて自分の血清を使って細胞増殖後コラーゲンに混ぜて、腫瘍を掻爬した欠損 部に埋める研究です。  49頁も同じアプローチで、申請者らは最初スポーツ肘、特に少年野球等で傷 めた肘の関節の治療ということで考えていたようです。それぞれ適用が違いま すが、基本的にアプローチは同じかと思います。議論の中で、先ほどの説明に もありましたように、まだ安全性をチェックする段階ですので、20歳以下の子 どもに対してこういう治療を試みるのはいかがなものかということで、今回の 研究では20歳以上ということになりました。  慶應義塾大学の申請も先ほど説明がありましたように、角膜上皮幹細胞のソ ースをどこから得るかというところで議論になりました。二つのソースがあり、 一つは海外のドナーからの角膜を用いて上皮細胞を採取するということ。もう 一つは、患者自身のもう一方の眼の角膜上皮細胞を採取するということでした が、まだこれも安全性をチェックする段階であるということから、まずは海外 ドナーの細胞を採取するというアプローチで進めていただくということです。  変更申請については大きな問題はありませんので省略させていただきます。 ただ、全体の議論を通じて、倫理委員会に病院長が入るのは望ましくないとい う議論が繰り返し出されました。やはり客観性を担保するためには、管理者は 倫理委員会に入っていないほうがよろしいのではないかという意見で、各実施 機関にアドバイスさせていただきました。 ○垣添部会長  明快な説明をありがとうございました。この5題の実施計画についてご発言、 ご質問等がありましたらお受けいたします。 ○松本委員  ただいまの永井先生のご説明の部分なのですが、角膜上皮細胞についての研 究で、海外ドナーのものと自己のものがあるのですが、国内ドナーのものがな いというのは、いま日本では提供ができない状況だからということなのかとい うことが1点です。なぜ海外ドナーのもののほうが安全で、自己の上皮細胞は 安全でないのかというのがよくわからないのです。 ○研究開発振興課  国内ドナーと海外ドナーに関してですが、国内で摘出された角膜は基本的に アイバンク登録されて、臓器移植以外の目的では用いることができない現状が あります。ですから、組織として輸入された海外ドナーを用いるのが選択肢に なるということが一つあります。  それから安全性ということですが、先ほども申請者から挙げられた理由とい うことで説明させていただきましたが、もちろん自己の角膜を用いるほうが、 他家のものを用いるより当然感染のリスク等は安全だとは思いますが、現実的 な問題として対象となるような疾患の方は両眼性の疾患が多いということが一 つです。それから、今回の手法がまだ固まっていないということで、まずは貴 重な自己の細胞よりも海外ドナーから得られたものを使うというのが一つです。  安全性に関しては、供給先の品質管理だけではなくて、受入先である慶應義 塾大学でも十分感染症やウイルスに関する管理、品質に関する基準を設けて、 そちらをクリアしたものだけを用いていただくということで対処していただく ことにさせていただいております。 ○北村委員  いまの件なのですけれども、我が国の臓器移植は角膜も含まれていますから、 細胞採取の原材料としては利用できない。しかし、国際的には去年でしたか、 WHOからorgan transplantationという項目を変えて、organ,tissue,cell transplantationとしました。同種の場合はそれを一つの解釈で動かそうとし ている中で、日本はそれがバラバラで、日本から出た角膜は角膜移植として使 えなければ焼却処分せよとなっている。  一方、こういう再生医療に使おうとなると、今度は米国からお願いすると。 この姿勢は厚生労働省が率先してやらないと、再生医療の原材料としてのヒト からの組織にしても、臓器にしても、これは国際的に見てもおかしなことにな っている。ここは、それを全部統括しているのが厚生労働省だと思いますので、 再生医療を進めるというのが厚生労働省の大きな看板ではないですか。その原 材料を我が国から採取してはならないということを法律で決めているというの は明らかにおかしいこと、やはりそれを解決できるのは皆さんだろうと思うの です。やはり、ここは考えていただきたいと思います。 ○垣添部会長  大変重要なご指摘をいただきましたが、事務局から何かありますか。 ○千村研究開発振興課長  いまのご指摘につきましては、臓器移植の担当課とも十分調整なり何なりを いたしまして、どのような対応が可能なのか検討してみたいと思います。 ○垣添部会長  まさに法律を変えるということだと思いますので、是非前向きに考えていた だければと思います。 ○佐藤委員  幹細胞の話とは直接関係ないのですが、永井先生のお話にもありました、倫 理委員会の構成についてのご指摘は大変適切で重要なものだと思います。そう いうのをちゃんと見ていくような仕組みがないといけないような気がするので す。たまたま永井先生はこの申請書を見られて、ちょっと構成がおかしいので はないかというご指摘を委員会のほうでなさったのだと思います。その辺につ いてはちゃんとした仕組みはあるのですか。倫理委員会というのは、かなり自 律的にやっているようにも思うのです。 ○研究開発振興課  ヒト幹細胞指針とは関係ないのですが、臨床研究一般に普遍する臨床研究に 関する倫理指針を定めております。そちらにおいては倫理審査委員会を設置す る者における義務として、教育義務はどうあるべきかという義務を課して、適 切性を図るような指針の改正も行っているところですので、そういうのを通じ て各倫理審査委員会の適切性を今後も一層強化していきたいと考えております。 ○永井部会長代理  特に幹細胞の研究の審査委員会には、いろいろなメンバーが加わっています。 特にそういう点をきちんと見ていた委員からのご発言でした。確かにこれは臨 床研究一般にかかわってくる問題ですが、そういう意味でまだ十分に議論が煮 詰まっていなかった点のように思います。 ○笹月委員  永井先生がおっしゃった、病院長はまずいぞというのは私には理解できない です。倫理委員会は、機関の長の諮問機関です。その中身が病院に所属する人 のテーマであるのでいけないということなのですか。 ○永井部会長代理  自由な議論がされにくいのではないかという意見です。 ○宮田委員  これは別の省ですけれども、30ぐらいの大学、あるいは病院と共同してDNA を集める巨大な研究をやったときにも全く同じ問題が起こっています。その場 合には共同研究契約をするときに、病院長がその契約主体になっていました。 そういう病院長が入っている倫理委員会そのものがおかしいということになり まして、病院長を除いた形の倫理委員会にしていただいて、改めて審査をして、 結局は追認ですけれども、倫理委員会承認という形にした経験があります。  これは5年前からの話ですけれども、佐藤先生がご指摘のとおり、IRBをき ちんとしていかなければいけない状況にまだあると思っております。永井先生 のご指摘は重要であるし、せっかく昨年臨床研究の倫理指針の改定に至ってい るわけですから、それの普及・啓発活動の中で、例えばQ&Aみたいなものを しっかり充実させていく必要があるだろう。その中の一つだと思っています。 ○笹月委員  いまおっしゃったのは、病院長が契約の主体である。ですから病院長はその 課題の中に含まれているわけですから、当然その人が審査に当たるのは駄目だ と思いますが、一般的に病院に所属する者が申請しているのでということでは ないのではないかと思うのです。 ○宮田委員  先生がおっしゃるとおりですけれども、幹細胞の臨床研究の場合に、誰が申 請するか。もし申請代表者に病院長がなっているような場合は問題です。そう いう意味では、ここの委員会でも統一した見解はできないということですから、 Q&Aを充実させるべきだと思います。 ○垣添部会長  Q&Aできちんと答えるというのは非常に重要ではないかと思います。 ○千村研究開発振興課長  これの対応につきましては、まさに永井委員ご指摘のとおりであると我々も 思っております。いろいろご指摘もありましたように、臨床研究の倫理指針の 普及であるといった点を含めて徹底していきたいと考えております。 ○垣添部会長  これも、大変重要なご指摘かと思います。 ○石井委員  やむを得ないのかもしれませんが、申請から本日まで随分時間が経っている ように思われます。できればもう少し審議時間を短くできないものなのかとい うのが1点です。  それに関連して、変更届が出されているのはいずれもいまだ何も始めていな いままで変更が出されている。承認されてもすぐに実施されていないというの が現状なのかという疑問もあります。その変更届は、書式として、もとの申請 がいつ出され、いつ承認されたものであるかがわかるようにしていただいたほ うがよいと思います。 ○千村研究開発振興課長  申請の時期から本日に至るまでの時期についてはさまざまな要因で時間がか かっているものもあるのは確かだろうと思っております。研究者との間のいろ いろなやり取りであるとか、会議の開催スケジュールであるとかいろいろな要 因がありますが、これはできるだけ早く研究を実施していただけるように我々 としても努力していきたいと思っております。  もう1点変更申請についてですが、当初の申請がいつだったかといったよう なこと等々についての情報については、今後同じようなご審議をお願いすると きに、改めてどのような資料をお出しするかということを併せて検討させてい ただいて対応させていただきます。 ○永井部会長代理  1年ぐらいかかっていますけれども、我々としてもかなり慎重に審議してき ました。毎回、相当時間をかけていて、大体3回から4回やり取りしています。 申請書を見ても、申請者がまだ慣れていない印象があります。審査する側もま だ慣れていないこともあり、何が問題で、どういうアプローチで、何を研究し ようとして、目的、ゴールは一体何かという全体のしっかりした枠組みができ ていないように思います。  薬や医療機器の審査ですと、ゴール、目標、目的がはっきりしていますけれ ども、幹細胞移植療法というのはアプローチもさまざまですし、多くの注意す べき点があるように思います。そのために今回は1年ぐらいかかっています。 申請する側も同じフォーマットで、ポイントを押さえた申請書を出してこられ るようになると、審査が迅速になるのではないかと思います。  幹細胞療法は始まったばかりですから、何か問題が起こりますと、再生医療 全体が非常に大きな影響を受けると思います。最初は少し時間がかかるのもや むを得ないかという気がいたします。 ○垣添部会長  ただいまいただきましたいくつかの貴重なご意見を加えまして、審査委員会 からの報告については、科学技術部会としては基本的に了承したことにいたし まして、これを親委員会である厚生科学審議会のほうへ報告することにいたし ます。  次は議題3「その他」です。これは、国立社会保障・人口問題研究所の「研 究開発機関の評価結果等について」ということで、まず事務局から説明をお願 いいたします。 ○坂本研究企画官  研究開発機関の評価については、参考資料3ですが、厚生労働省の科学研究 開発評価に関する指針があります。参考資料3の15頁から研究開発機関の評 価の実施方法という項目があります。研究開発機関は各研究開発機関の評価を 定期的に実施することになっております。その評価報告書については、厚生科 学審議会の科学技術部会に報告されているところです。  今回は、国立社会保障・人口問題研究所の評価結果及び対処方針についての 報告をいただきます。なお、昨年12月に厚生労働行政の在り方に関する懇談 会が中間まとめを出しておりまして、その中に厚生労働省の調査研究分析機能 の強化について記載があり、国立社会保障・人口問題研究所にも言及されてお ります。本日は、国立社会保障・人口問題研究所の高橋副所長にご出席いただ いておりますので、評価結果等については高橋先生からご報告いただきます。 ○高橋副所長  国立社会保障・人口問題研究所の高橋です。資料3に基づいて今回の報告を させていただきます。最初に国立社会保障・人口問題研究所の現在の概況につ いて簡単に説明させていただきます。その後、機関評価に関する評価委員会の 報告、それに対する対処方針について紹介させていただきます。  1頁には、簡単に研究所の概況がまとめてあります。私ども国立社会保障・ 人口問題研究所は、厚生労働省の唯一の政策科学研究機関として平成8年12 月に設置されました。この研究所は平成8年設置ですが、旧人口問題研究所と、 旧特殊法人の社会保障研究所の統合再編によって、平成8年からスタートした ものです。現在の所長は、平成17年4月より京極高宣が務めております。  組織・予算については、平成20年度の場合、所長を筆頭に副所長、政策研 究調整官があり、その下に七つの研究部と、一つの総務課によって構成されて おります。現在定員は54名です。予算は一般会計で約9億2,000万円を頂戴 しております。  主な研究事業については、大きく分けて人口分野の研究と、社会保障分野の 研究があります。人口分野の研究に関しては、将来人口推計に関するいくつか の研究が実施されています。一つは、全国将来人口推計です。それから昨年12 月に公表しました、市町村推計のような地域推計、それから世帯に関する推計 等々です。  全国調査については、全国標本調査を毎年実施しており、出生動向基本調査、 人口移動調査等々の調査を実施し、それらに基づいて人口推計等の基礎データ を得て研究事業を実施しております。  それ以外の研究としては、国際機関との協力のもとに、国際比較パネル調査 を行っています。これは特にヨーロッパで進展している少子化問題について共 通のフレームで国際比較研究調査を行っています。それ以外にも少子化関連施 策と、その効果に関する研究も実施中です。  社会保障研究分野については、我が国の社会保障給付費がいくらぐらいにな っているかという推計事業を毎年実施して公表してきております。さらに社会 保障総合モデル事業という研究事業も行っており、これはマクロ経済モデルを 作り上げ、年金制度であるとか、医療制度などの設計変更等が及ぼす影響効果 の分析を行っております。それ以外にも医療費等の供給体制の総合化・効率化 に関する研究であるとか、あるいは障害者の所得保障と自立支援施策に関する 研究を実施してきています。  それ以外の研究所の事業としては、学術誌を3種類発行しております。それ による普及活動、あるいは研究所のホームページを作成することにより、英文 の「Web Journal」を発行し、海外への情報発信も適宜実施しております。そ れ以外に厚生政策セミナーという、一般向けの我々の研究成果普及事業も行っ ております。  次は機関評価についてです。資料3の6頁にあります委員の先生方によって、 社会保障・人口問題研究所の研究評価委員会が構成されております。立教大学 教授の庄司洋子先生を委員長として機関評価に当たっていただき、2頁から5 頁にあります評価報告書を、当研究所長宛に昨年9月24日にいただいており ます。  短時間で説明するために、報告書を主体にここで縷々述べることはしないこ とといたします。7頁からになりますけれども、特に評価委員会から社会保障・ 人口問題研究所に対して改善を求められた事項についてその内容をご紹介し、 現在当研究所がどのような対処方針を立てているかを説明させていただきます。  7頁ですが、改善を求められた事項の第1は、この囲みの中にありますよう に、我が国においては、現在、少子高齢化、家族形態や労働環境の変化など、 社会経済構造の大きな変化が進んでおります。こうした中で、人口・世帯等や 社会保障の動向把握や将来推計についても、今後、より困難となることが予想 されるとの指摘を受けておりまして、新たな手法の導入であるとか、国際的動 向を踏まえた改善などを進めて各種政策・研究への信頼されるデータ解析など の研究成果の提供・普及という、各方面への期待に応えていくことが必要であ るという指摘を受けております。  また、多くの政策課題を抱える厚生労働行政の推進に資するために、政策当 局との連携の下で政策の企画立案等に資する研究の一層の充実に積極的に取り 組むことが期待されるという指摘を受けております。  これを受け、私どもの研究所では人口あるいは世帯等については新たな推定 手法の開発、あるいは調査分析手法の導入に取り組み、また社会保障給付費に ついては制度改正に対応した集計方法等の改善、それからより包括的な費用把 握を目指すことにしております。国際的な動向にも注視し、諸外国の統計との 整合性の向上など、必要な改善に務めていくことにしております。特にILO基 準であるとか、OECD基準とか、この分類手法にはいろいろありますので、そ れらを整合的に分析するように努めております。  また政策の企画立案等に資する研究については、今後とも積極的に取り組む こととしておりまして、その成果の普及に努め、事実に裏付けられた政策提言 を打ち出すことができるように取り組んでまいりたいと思っております。  8頁は第2に改善を求められた事項です。研究開発分野・課題の選定におい て二つの点に留意する必要があるという指摘をされております。人口問題分野 の研究者と、社会保障分野の研究者との相互協力による研究をさらに進めてい くべきであるというのが第1点です。  第2点は、社会保障において実証的研究が積極的に進められていることは評 価できる、さらに理論的研究も重要であり、両者のバランスをとって進めるこ とが必要であるという指摘を受けております。  対処方針としては、人口問題分野と社会保障分野の研究者との協力による研 究については、これまでも取り組んでおりますけれども、今後さらに両分野の 研究者の参加による研究交流会を開催する、あるいは研究プロジェクトの運営 等を積極的に行っていきたいと考えております。社会保障の研究については、 理論研究にも力を注いで両者のバランスのとれた研究を進めていきたいという 方針でおります。  第3点は、現下の政府における厳しい定員管理の下でも、研究所は主任研究 員の増員や、定員外の客員研究員、分担研究者・研究協力者の活用により、研 究体制の確保に努めていることは一定の評価を得ているところですけれども、 今後も、引き続いてこうした努力を行うことにより、研究の質を高めることが 重要であるという指摘を受けております。当然のことながら、現在厳しい定員 管理の中ではありますけれども、今後とも必要な研究体制が確保できるよう増 員要求、あるいは客員研究員等の活用などの努力を進めていきたいと考えてお ります。  第4の改善点は、当研究所においては、各研究プロジェクトにおける研究活 動や機関誌の編集等が、外部研究者の参加も得て実施されており、また公開の 場において内外の第一線研究者が討論する厚生政策セミナーの開催、外国人研 究者の招聘による特別講演会の開催などの取組みが進められているところであ るという評価を受けております。他の研究機関とのコラボレーションや、セミ ナー等の公開の場での研究発表の場を増やしていくなど、更にこうした共同研 究や交流の機会を増やしていくように取り組んでいくことが望まれるとされて おりますので、厳しい予算状況の中で大規模な交流の機会の予算を確保するこ とは難しいわけですけれども、各研究プロジェクトにおいて幅広い研究者との 連携を一層深めていくこと。それから、公開のワークショップやシンポジウム を活用していくなどにより、さらに研究・交流の機会を増やしていくように努 めることとしております。  第5として、情報発信についてでありますが、これも3点ほど留意点を指摘 されております。一つは、地域レベルでの政策立案や調整の重要性を踏まえて、 地域レベルの情報のデータベース化、それから地域関連の分析手法の紹介等を 行っていくべきであるということ。また、人口分野の統計資料については、研 究成果を反映した内容の見直しを絶えず行ってもらいたいという指摘を受けて おります。  2番目は、研究叢書や研究資料等の出版を含めて、研究所における各研究者 の研究成果を情報発信する場を積極的に作り出すことが指摘されております。  3番目は、ホームページ等において研究者個人の名を載せたレポートを掲載 するなど、個人研究者の顔が見えるように工夫してほしいという指摘でした。  対処方針については、地域レベルの政策立案等に資するために、地域レベル の情報のデータベース化、地域関連の分析手法の紹介等については、可能なも のから取り組むこととしております。また、人口分野の統計資料については、 最新の研究成果を踏まえ、今後とも適宜その内容の見直しを図っていくことと しております。  研究所における研究成果の情報発信の場の確保についてですけれども、これ は予算面の制約がありますので、出版物のさらなる拡充はなかなか難しいもの がありますけれども、研究叢書の着実な刊行や、ホームページの活用などさま ざまな方策を検討し、こうした要望に応えていきたいと考えております。  個人研究者の顔が見える工夫については、研究所年報において各人の各年度 における研究活動を紹介しているところです。またホームページにおいても、 各研究者が研究成果を踏まえて作成したディスカッションペーパーを掲載する などを行っているところであり、今後ともこうした取組みを進めていって発展 させていきたいと考えております。  6番目として、研究員の在外研究の機会の確保という観点も含め、研究者間 の業務量の適切な配分や、業務量全体の適正化への取組みをさらに進めていく ことが望まれると指摘されております。研究者の業務量の適切な配分や、業務 量全体の適正化については、研究員の在外研究の機会の確保という観点も踏ま え、今後とも研究プロジェクトの企画立案や、プロジェクトの研究組織の編成 に当たり、これを配慮していくとしております。研究所においては、研究計画 委員会を設置し、そこで研究員全体の業務量を把握し、プロジェクトの構成等 を行っているところであり、こうした点を配慮し、今後プロジェクトを作成し ていくことになります。  また、非常勤職員の積極的な活用等によって、研究者の業務負担の増大に対 処するよう引き続き努力をすることにしております。私からの報告は以上です。 ○垣添部会長  高橋先生、どうもありがとうございました。ただいまの国立社会保障・人口 問題研究所の機関評価に関してご質問とかご発言がありましたらお受けいたし ます。 ○竹中委員  十分理解していないところもあるので教えていただきたいと思います。当研 究所は、約10年以上前に統合されて一つの研究所になられたわけです。その 後10年間の変化の中で、もともとあった二つの機能がそのまま分離して研究 されているのか、いわゆる10年間で統合することによって社会保障と人口問 題が一体化されて研究するような方向になっているのか、その10年間の歩み はどのように評価されたか、またどのようでしょうか。 ○高橋副所長  平成8年12月に統合されたわけですけれども、当初は非常にアプローチの 違う二つの研究機関でした。もともと社会保障研究所は社会学、経済学を中心 としてアプローチする、調査・研究を行うという機関であるのに対して、旧人 口問題研究所は、人口統計学をベースにした統計解析を専門とする調査・研究 機関でした。したがって、統合後それらの異なる手法をどのように結び付けて、 現在ある社会問題に対してどう対処するかということが大きな課題でした。  そうした中で、例えば今回1頁にお示ししました人口推計という、従来の人 口問題研究所で行っていた人口推計が、社会保障の研究者と統合することによ って、社会保障総合モデル事業という形で、人口と、その人口変動が年金制度 であるとか、医療制度にどのような構造的な影響を与えるかという計量経済モ デルが作れるようになりました。それが、以前と比べて厚生労働行政に直結す るような幅のある研究事業として広がってきたという点があります。しかしな がら、これは今回の評価委員会の中でもご指摘を受けているように、まだまだ 不十分なところがありますので、より細かく人口研究者と社会保障研究者が統 合し、コラボレーションのある研究に取り組んでいきたいと考えております。 ○木下委員  社会保障の研究所ということは、今日社会保障の問題は非常にクローズアッ プされておりまして、この4、5年の間に経済財政諮問会議等では、むしろ社 会保障の経費その他は削減していけ、1兆円規模で削減していけという方向で 動いています。一方では、社会保障研究所というのはおそらく将来を見据えて 政策提言までしていく。少子高齢化という、極めて世界で類のないような典型 的な国になってきたという中で、社会保障をどうセーフティネットといいます か、国を豊かに、少なくとも社会保障の点で抑えていくという方向性が当然あ るにもかかわらず、その研究成果がどのように活かされているのか。全く活か されない結果としては、経済財政諮問会議の言いなりと申しますか、経済誘導 のためにどれほど大きな損失を我が国は被っているかという事実があります。  その意味で、その内容のことはよくわからないのでありますけれども、これ だけの国立の研究所というのはシンクタンクのはずでありますので、国にきち んと提言をして、それを凌駕するような大きな政策として、本当にそれだけの ことをやっているのかどうかが見えてこないのでありますがどうなのでしょう か。 ○高橋副所長  我々の力不足の面もありますけれども、私どもの研究所では、例えば昨年8 月には「新しい社会保障の考え方を求めて」ということで、ブレア政権下にお けるイギリスの社会保障制度改革を行った方々をお呼びし、その中でさまざま な日本における単なる経済効率ではなく、準市場というような社会保障分野に おける考え方を広く紹介し、それらを政策提言してきています。  もちろん、現在のこれまでの日本の政策というのは、非常に経済効率主義の 前提で動いておりましたので、私どもの研究は日本の社会の中ではなかなか反 映しにくいという状況がありますけれども、我々は研究者の立場からこうした 地道な研究を放棄しないで積み重ねていくことが重要な役割ではないだろうか と考えております。さらに、この研究評価の中でいただいている政策当局との 連携の必要性の指摘を受けております。我々も現在の京極所長の下で、その点 を重要視し、本省庁との研究交流も続けているところです。 ○木下委員  勉強不足だったのかもしれませんけれども、そこでのデータというか、方向 性というもの、内容に関してはあまりよく知りませんでした。医療界としては、 日本医師会としても小さなシンクタンクを持っておりますけれども、是非この ような所の内容を見つつ、特にブレア政権の例の少子化対策等にとっても、単 に女性の方々が育児をできるようになるという小さな話ではなくて、税制であ るとか、保障であるとか、極めてユニークな政策を採って、ちゃんと成果を出 しているという事実もあるということが、我が国では本当に見えてこないので あります。これから勉強いたしますのでよろしくお願いいたします。 ○高橋副所長  こちらこそ、よろしくお願いいたします。 ○西島委員  情報発信のために英文で「Web Journal」を出されているということですが、 これは、研究所独自のジャーナルとして出されているかどうかということ。こ ういうジャーナルについてはレビューなどをどういう形にしているかというこ と。このジャーナルによる海外等からの反響として、どのぐらいアクセスがあ るかどうかをお伺いいたします。 ○高橋副所長  当研究所の英文ジャーナル「Web Journal」ですけれども、私どもは先ほど ご紹介いたしましたように、厚生政策セミナーといった、外国からの研究者を 招聘して研究事業を展開しています。そこで発表される研究はペーパー付きの 論文でありますので、それらを掲載したり、あるいは編者を立て、2人のレフ リーを付けて、研究員が、あるいは研究所外の方々で社会保障や、人口問題研 究に興味を持つ方に英文の論文を書いていただいて、2人の審査委員を設け、 それをパスすれば論文を掲載するという方式で英文ジャーナルを独自に作成し ています。  アクセス数については手元に資料がありませんのでお答えすることはできま せんけれども、当研究所のWeb全体へのアクセスは相当多いという報告を受け ています。 ○西島委員  このジャーナルには、研究所以外の方も投稿されるということですか。 ○高橋副所長  そういうことです。 ○宮田委員  自分の記憶に基づいて意見を言わせていただきますと、悪いニュースばかり が頭に残るものですから、ちょっと言いすぎてしまうのかもしれません。国立 社会保障・人口問題研究所は50数名の小所帯で、この予算でよくやっている ということを前提にお話させていただきます。2006年のときの出生率の予測値 と、実際の出生率が下方にぶれました。たぶんこの最初のところに指摘してい る、人口の推計モデルみたいなものをもう少し頑張って開発すべきだというの は一つの課題であると認識しています。  もう一つ重要なのは、人口が将来どうなるかという推計値というのは、国が 政策運営をするときのエッセンシャルな数字であります。この数字が、メディ アから言わせると本当に国家の意思を排して、学問的な自由に基づいて公正に 推計されているのか、それをどうやって保証するのかというのがすごく重要な 問題だと思うのです。そういうことを考えると、例えば原資料を個人情報付き で公開することはできないと思いますけれども、大学のほかの研究者に対して、 かなり原資料に近いような資料を公開し、向こう側の研究者に対しても新しい モデルを作り、自分たちの研究所で作ったモデルを比較し、学問として切磋琢 磨するような仕組みを作ることはできないかというアイディアを持ちましたが いかがですか。 ○高橋副所長  人口推計に関しては、将来予測というのはあくまでも現在時点までの趨勢を モデル化して予測を行うという限界を持っていますので、社会科学における予 測というのは現実の社会の変化には完全には対応できないという問題を持って おります。  例えば、私どもが2004年に公表したもの、その後に公表したものについて 見てみますと、現実の日本の出生率の動きは予測値よりも上に行っています。 ですから、研究所が楽観的に甘く見積っているという意図的なことはやってい ないわけです。これは、あくまでもモデルの上に則ってやっています。さらに、 私たちはこれを公正にやるために、いまどういうことを行っているかというと、 ヨーロッパの研究機関と共同で定期的に人口推計に関する評価会議があり、そ れに研究所から職員を出張させ、その研究交流を通じて推計手法について絶え ずコラボレーションしているのが現状です。  さらに国内の研究者に関しては、学会を通じてですけれども、他の研究機関 でも人口推計を行っておりますので、それらとのディスカッションを通じて人 口推計の精度改善をいままでやっているところです。 ○垣添部会長  原資料といいますか、データの公開に関してはいかがですか。 ○高橋副所長  データの公開については、基本的にローデータというのは人口動態統計と国 勢調査ですから、これはすべて公開されているものを、我々は二次利用してい ます。それに対して、例えば出生率に関しては数理モデルを作り、そこでさま ざまな予測手法を用いて当てはめ、それから予測を行っていますから、手続は すべて方法論として研究資料を作成して公表しています。原資料データについ ては誰でも利用できる状態になっています。 ○垣添部会長  ただいま大変貴重なご意見をいただきましたので、これを踏まえて国立社会 保障・人口問題研究所におかれましては、今後の運営の改善に努めていただき たいと思います。本日はご出席いただきました高橋副所長、西山調整官に御礼 申し上げます。ありがとうございました。 ○高橋副所長  どうもありがとうございました。 ○垣添部会長  これで予定いたしました議事はすべて終了いたしましたが、事務局から何か ありますか。 ○矢島厚生科学課長  ご出席の委員の先生方におかれましては、平成19年にご就任をいただき、 まもなく2年が経過し今期の任期が満了ということになります。委員の先生方 におかれましては、2年間にわたりまして種々ご助言、ご意見をいただき誠に ありがとうございました。本日の部会が今期最後の開催となる予定ですので、 この場をお借りいたしまして厚く御礼申し上げます。どうもありがとうござい ました。 ○垣添部会長  私も任期満了ということで、皆様方のこれまでのご協力を心から感謝申し上 げましてこの会を閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。                                −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171